創造的対話

2026年10月17日 (土)

期待が高まる変容する私学(05)なぜグローバル教育が必要か 文化によって違う思考タイプを知る

★ある意味、私立学校においてグローバル教育が当たり前になっています。高度な英語力を学ぶ段階から異文化理解の段階へ、そして高度な英語力を支えたり、文化の違いを生み出したりする思考のタイプの違いをしるところまで来ています。たしかに、どこの学校も高度な英語力を学ぶ授業は行われています。海外研修で異文化理解も進んでいます。しかし、実際のところ、海外の生徒とディスカッションすることによる教育効果を生徒1人ひとりの最高の学びに結び付けている学校は少なく、いよいよその段階に進み始めているというのが現状です。グローバル教育の必要性の理由が、今その段階にあるからということでしょう。

91e8ddtq1l_sl1500_

★その象徴的な本が、2015年に翻訳された「異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養」という本でしょう。2015年段階では、教育の世界では、まだピンとこなかったと思老います。何せ、そのときCEFRや4技能というのは教育の世界では広まっていませんでしたし、探究というプロジェクトも教育の中では行われていなかったのですから当然です。

★ところが、それから10年以上たって、CEFRでC1英語を目指す学校がでてきたり、探究活動が頻繁に実施されるようになったり、STEAMベースのアントレプレナーシップ教育が行われるようになると、このエリン・メイヤーさん(「次世代の最も有望な経営思想家」 (「Thinkers50」2015) に選出。フランスとシンガポールに拠点を置くビジネススクール、INSEAD客員教授。異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学が専門。)の考え方がグローバル教育の軸として大いに参考になってきました。

★特にコロナ以降、オンラインで生徒たちが海外の生徒と対話やディスカッションをするのが当たり前になってきたし、ラウンドスクエアのような国際会議で海外の生徒たちがディスカッションする機会が増えてくると、生活文化の違いだけでなく、その文化を生み出し持続可能にしていくための思考タイプが違うことに気づき始めます。

★日本では、批判的思考は居郁の世界では敬遠されますが、欧米では当たり前です。そして、そのクリティカルな論理の流れも、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカでは違います。

★どれがよいということは実はないのですが、一つの思考タイプがあたかも普遍的な思考タイプだとし、他の思考タイプをなんちゃって思考だという人もまだまだいますよね。それが文化的軋轢を生み、解消しないのだということを、海外で多くの外国の生徒と対話してきたときに気づくてくるのです。

★なぜ対話が必要か?合意形成をするためとか、安心安全をつくるためとか、もちろんあるのですが、思考タイプの違いを明らかにしながら、共通点や相違点を整理しながら互いを理解していくには、オープンに話さないとわからないからです。

★学習する組織を対話によって、瞬間的にそこに作るには、このような思考のタイプの違いを互いに知り、自分の思考タイプを押し付けていたのでは先に進まないとメンタルモデルを変更するということも目的の一つです。

★エリン・メイヤーさんは、経営思想家というのですから、アブダクションのような仮説推理型のような文化としてではなく、新しくプラグマティズムが発見した思考タイプについては多分言及が少ないと思います。パースが当初学問の世界で認めあっれなかったのは、思考のタイプが新しすぎたからですね。

★しかし、今後は、従来の思考タイプを整理しながら、突破口を見出す新しい思考タイプをどうやってつくり広めていくかというイノベーション思考も重要になってくるでしょう。グローバル教育からグローバル探究教育へとシフトしている私立学校も増えてきましたが、それは次の次元に進んでいるのだと思います。

★私立学校はまだまだ変容しますね。それが現状のマーケットにマッチングするかどうかは、また別の問題です。ですから、戦略的な対話が得意な経営者は、現状にマッチングする教育デザインを行いつつ、小さなプロジェクトを走らせているものです。教育の中の余白というのは、この小さなプロジェクトのための余白でもあるのですが、そう考えている学校はどこでしょう。いずれ、タイミングが来たら話しましょう。

|

2026年10月14日 (水)

期待が高まる変容する私学(02)変容のメカニズムを生む5つの対話

★前回は4つの質の循環が時代と共にアップデートしていくということを述べました。建学の精神に基づいた授業にその循環が浸透していくことによって、建学の精神は変わらないけれど質の循環を生み出す教育環境は変わるのであるということです。これは決して教育のソフト面だけではなく、ハード面も変わります。このソフト面とハード面を大きく変えたいとき、経営面も変わるということもありますが、そこまでの変化は、今のところそう多くはありません。だからこそ、そのような学校は注目を浴びるのですが。

5_20261014192501

★さて、4つの質の循環と言いましたが、それが循環するメカニズムは何でしょう。それは前回の循環図のまわりに「対話」という吹き出しが満ちていたのですが、実は、この対話が循環を起こすエネルギー体です。好奇心やモチベーション、意欲、意思決定などは、関係づくりにおいても思考を広げ深めることにおいても効果的な行動を生み出すにしても結果を生み出していく際にも必要です。

★この好奇心、意欲、意思決定などのマインドは問いと回答の永遠の連鎖が生み出していきます。では、この問いと回答の永遠機関は何でしょう?そうですね。それが対話です。

★対話のない授業はありません。対話のない生活はありません。対話はあまりに当たり前のものなのであまり注目されません。あえて授業で対話を強調する必要はないという人もいるぐらいです。その方は当たり前のことで、いわれなくてもそれは深めている。なんで本間はそんなに「対話」を強調するのかというのです。実際その方は授業の達人だったりします。

★しかし、4つの質の循環がアップデートしていく時には、対話の質も変わります。一方通行型講義の達人がいます。彼のスピーチのストーリー展開はスリリングで、聞くものの心や知性を揺さぶります。対話が理解を深めたり新しい発見を促すものだとするならば、一方通行型のスピーチも対話であると言って構いません。

★対話はインタラクティブなものだといわれるかもしれませんが、それは外側のやり取りではなく、内側どうしの見えないやり取りが前提だとすると、型にこだわるのは、これもまた違うでしょう。

★しかし、たいていの場合、一方通行の講義は、対話になりにくいのも事実です。対話は情報の非対称性がある場合、優位にたっている方が、フラットに対話できるファシリテーションなどのサポートをしながら話していく必要があるのです。

★首都圏の私立学校の30%は、高い偏差値の生徒を集めるのは、講義を行っていくとき、この情報の非対称性のギャップが少なかったり、生徒が自分でそのギャップを乗り越えていくメンバーを集めるためです。ここにはあの最近接発達領域のセオリーが隠されています。ここでは、一方通行でも内的対話が成り立っている可能性が高いのです。

★しかし、それ以外は、圧倒的に情報の非対称性の壁があるために、それを払しょくするためにピアで対話したり、教師がファシリテーションしたり、コーチングをしたりする必要があるのです。ですから、その対話は、論理的な対話の前に、共感的な対話を行ったりします。そして、間違っても大丈夫なんだという安心感を前提に、好きなこと、気づいたことを言い合いながら、そこに論理的なスキルも学びながら、地に足ついた創造的な対話を行っていくわけです。

★だから、仮に偏差値が高い生徒(そもそも偏差値は対話の質を測る道具ではないので)でなくても、そのような多様な対話のタイプを組み合わせていくと、関係づくりや思考の深さやってみようという行動と小さな結果を積み上げていくという循環が生まれます。何回もその循環が起こっている学びの環境の中で、その学びが生徒に内面化されコア・ループになって自律分散協調系として回り始めると、いわゆる偏差値が上がったり、探究的活動で賞を取ったりします。そうならなくても手ごたえを感じたり、自信が湧いてきたりします。

★そこまでいけば、自分で設定したゴールをクリアするために戦略的に対話をしていく姿が現れてきます。

★この5つの対話(共感的対話・論理的対話・批判的対話・創造的対話・戦略的対話)を自在に使いこなすには、対話をしながら自分や周りをモニタリングするメタ認知が必要です。思考コードのようなルーブリックと生成AIを活用することで、この自走しながら自走している自分や仲間の言動をモニタリングするメタ認知機能を高める授業実践研究が始まっています。

★次回からは、具体的な事例を見ていきましょう。といっても学者ではないので、簡易に見ていくしかないのですが、それはご了承ください。

|

2026年10月12日 (月)

工学院 グローバル探究学習モデルが生徒1人ひとりに内面化される こんなところがあったんですね

★9日前にZoomで工学院の田中歩教頭と対話をしました。600人以上がアクセスしています。主に中学受験生の保護者対象で、本質的な話をしていく番組なので、爆発的に見に来る番組ではありません。しかし、中学の生徒募集定員105人の同校に対して、これだけ興味と関心を持っている方がいるわけです。教育に対する意識が高い方が多いことに子供たちの未来に光が見えます。

Kgi_20261012202601

(Geminiによる作成)

★工学院と言えば、グローバル(ケンブリッジインター&ラウンドスクエア)と理工系の進路で有名です。海外大学も20人以上合格しているし、国内の難関大学も着々と実績を上げています。重要なことは、このような結果がでていくプロセスです。

★大学合格実績だけを出すことを目的とするならば、余計な学びをしないで、受験勉強に集中するとよいわけです。ですが、私立学校はそういう教育はあまりしないのです。それぞれ創意工夫をして教育環境をデザインします。ですから、そのデザインされたプログラムを見るのがおもしろいのです。

★工学院の場合は、まず教師と教師、教師と生徒、生徒と生徒という関係の質が学習者中心主義的です。心理的安全性を土台に、試行錯誤にどんどん挑戦し、創造性と社会貢献へのマインドが育ちます。

★思考の質も、ケンブリッジ出版の英語の教科書を全員が使いますから、高次思考まで学ぶことが大前提で、それを明快に生徒に共有されています。他の教科や行事でも、工学院はそれを思考コードというオリジナルのメタルーブリックにして共有しています。

★そして、何より外に出てフィールドワークやアントレプレナーのプロジェクトを企画運営する行動の質の密度が高いのです。

★その結果は、大学入試につながるのですが、そこに行くまでに、すでに多くの探究の成果を中学で、高校で全員が出していくのです。それを全員がプレゼンする機会もあります。英語の資格試験のスコアを上げる機会もたっぷりあります。

★英語とIBLとICTが軸となって6年間教科学習と世界的視野の探究活動、海外研修などがトルネードになって大きくなっていきます。

★そして、決定的に他校と違うところは、そのトルネードが教育活動という外側から生徒1人ひとりの内面にコア・ループとして回転するようになるということです。教育活動の中で、動いているだけではなく、その動きが自らの内面から生まれるようになります。

★このコア・ループを内面の軸とするという教育の本質を実践している様子を説明会に訪れた保護者が見て、「こんなところがあったのですね」と感嘆の声をあげるのです。

★教育学の世界でも、まだまだ行動としての学習モデルが中心です。生徒1人ひとりがそれぞれ自分のコア・ループを生み出す実践はまだまだこれからなのです。工学院の説明会や文化祭などの行事に参加して、このことに気づいた保護者は、感動するのです。

|

2026年10月 2日 (金)

工学院 生徒を動かす鮮烈なRSIC(ランドスクエア国際会議)体験

★工学院は、中1から高3まで、毎月のように多くの体験の機会が用意されています。基本的には国内にいようと海外にいようと、じぶん事とみんな事とちきゅう事が循環する体験です。どの体験も生徒の心を揺さぶり動かしはじめます。ただ、体験の機会が多いというのは、どの体験がどの生徒を動かすかは、予測できないからでしょう。学習者中心主義というより生徒中心主義な同校の教育環境デザインは、生徒1人ひとりがコア・ループとして自分の内面で回っている自律分散協調系は、1人ひとり違うのです。

Ideals

★今回同校のブログを読んでいて、この生徒を動かす鮮烈なRSIC(ラウンドスクエア国際会議)体験に感動しました。RSICに参加した生徒は、英語でこう書いています。

RSIC has already given me so many new friendships, perspectives, and ideas. I came here excited for the experience, but I did not expect it to motivate me this much to actually do something when I return. I want to take everything I have learned here back to my school and hopefully make Round Square a bigger and more active part of our school community.(RSICはすでに、たくさんの友情、視点、そしてアイデアを私にくれました。わくわくした気持ちでここに来ましたが、帰ってから実際に行動したいと思えるほど心を動かされるとは、思ってもいませんでした。ここで学んだことをすべて学校に持ち帰って、Round Squareが私たちの学校コミュニティの中で、より大きく、より活発な存在になるようにしたいです。)

★そして、このようなインパクトはなんだったのか。こう書いています。

 One of my favorite things about RSIC has definitely been the people.

★やはり人との出会いであり、それは英語会話のための出会いではありません。カルチュアルイマ―ジョンという、多様な人々の考え方や生活、文化など地球丸ごとの体験だったのでしょう。

★この生徒は、こうも書いています。

 Coming to RSIC has also completely changed the way I see Round Square. Before coming here, I knew about the Round Square IDEALS, but I do not think I fully understood what they could actually look like in real life. Being here and learning about what other Round Square schools are doing made me realize that there are so many possibilities and so much more that we could do at our own school too.(RSICに参加したことで、Round Squareに対する見方もすっかり変わりました。ここに来る前から、Round SquareのIDEALS(理念)については知っていましたが、それが実際の生活の中でどのような形になるのかは、きちんと理解できていなかったと思います。ここで他のRound Squareスクールの取り組みについて学び、自分たちの学校でもできることがもっとたくさんあるのだと気づきました。)

★IDEALSというRSの理念のリアリティを知り、それを工学院に帰ってから共有しようというわけです。そのために自分は動く、RS委員会も作ると別の箇所で語っています。RSの理念をより広く共有したいのだと。工学院は、基本的に一握りのための特別な学びではなく、できる限り全員が体験できる機会を作っています。その工学院の文化と世界各国の私立学校が集結するRSの文化が融合した瞬間ですね。

★いずれにしても、私の話はどうでもよく、まずは、生徒の言葉を直接読んでください。

|

2026年9月29日 (火)

東京私学教育研究所 フージョン教育研究会 「コア・ループ」へ(2)

★コア・ループとは何かについては、田中歩先生と対話を積み重ね、授業実践をしながら、いくつも図式化しています。最近は次のような図を協働して描きました。生成AIでカッコよくデザインしようと思ったのですが、なかなかできないので、いずれまたチャレンジすることとして、いったんこの図を載せます。

Photo_20260929104501

★この図の前に、学びの行動として「読み・書き・そろばん」をベースにした基礎学力についての図を描いて対照するとわかりやすいのですが、ごじゃごじゃするので、コア・ループの図をまずご紹介します。

★読み・書き・そろばんは、反復の行為をし、それを習慣化することで、読み・書き・そろばんの行為を身体化し、自動化することで身につけていきます。いくらいろいろな文章を読んだり、漢字などを書いたり、計算をするという行動をしても、それが身体化・内面化し、習慣化されていないと自分で学んでいくことができません。

★この行動を、どれだけ自分のものにできるのかによって、得点率、つまり偏差値の違いがでてきます。

★基礎学力として、この反復と習慣化の循環は、大事です。

★ところが、これでは、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングにまでなかなか飛べません。

★最近では、未知の世界をどう認識し、まだ見ぬものをどう創っていくかが問われる激動の時代です。そこを突破するための環境や道具として探究と生成AIが登場してきています。

★しかし、これも探究やAIを使う行動だけ一生懸命行っても、生徒自身の内面に根付かなければ、やらされ感満載になります。ですから、好きから始めることは重要ですが、その好きが、自らもっと調べる、仲間と対話し、再編集する自律分散協調系のループにつながっていき、自分の内面で回転するようになって初めて、旺盛になるし、関心は広がります。

★複雑な学びの行動の関係を自分の中で回せるようになるには、言動化と心意化を何回も回していかなくてはなりません。これによって、内側で複雑な学びの行動を結びつけて循環できるようになっていきます。最初は、この循環も小さなつながりですが、言語化と心意化の回転を繰り返していくうちに広がっていくわけです。この環境をデザインするのが教師の腕の見せ所です。あるときは教師、ある時はコーチ、またある時はファシリテーター、またまたある時はプロデューサー・・・・。マルチなロールプレイを楽しめる教師がそこにいることがポイントですね。

★コア・ループとは、言動化と心意化を大車輪にしていくエネルギー体というわけです。このエネルギー体がなく、複雑な学びの行動の関係をやらされているうちは、学びはじぶんごとにもみんなごとにもちきゅうごとにもならないのです。

|

2026年9月27日 (日)

東京私学教育研究所 フージョン教育研究会 「コア・ループ」へ(1)

★東京私学教育研究所の平方邦行所長の諮問機関として「フュージョン教育研究会」が昨年から来年度まで3年間という期間限定のチームが活動しています。その活動の一端をNotionでサイトをつくり発信し始めています。同研究所のサイトで告知されています。

★メンバーは、田中歩先生(工学院大学附属教頭・英語)、山口貴史先生(駒沢学園女子・数学)、本橋真紀子先生(聖学院・数学)です。次期学習指導要領がそうだからということもあるのですが、もともと平方所長は生成AIを教育にどう生かすか考えていました。

Photo_20260927085101

★2015年ごろから、平方所長はシンギュラリティ―を迎える未来の子供の社会を想定し、そこで、子どもたちがどんな才能を発揮できるとよいのか、またその中でもクリエイティビティをどのように生み出すのか、工学院(当時校長でした)の先生方と授業実践の中で試行錯誤されてきました。またそのときからすでに一般財団法人東京私立中学高等学校協会の副会長(当時)として、私学の先生方とも議論してきました。

★そして、コロナ禍を乗りこえるのに、それまでにICTを使って授業を模索していたことが、貢献できたと実感し、さらにイノベーションを教育になじませるにはどうしたらよいのか、多くの私学の先生方と議論し、数々の研修も手掛けてきました。ポストコロナ時代に、急激に生成AIが広まり、それを教育に生かすにはどうしたらよいかを研修のテーマにもしてきました。

★昨年、平方所長は、その発想をいよいよ実現する段階に来たと決断し、フュージョン教育研究会を立ち上げたのです。コンテンツベースでつくっていくと、あまりにも専門的になりすぎるので、3年間では見通しが立ちにくいと考え、まずはコンセプトベースで試行錯誤しようということだったといいます。また、世界の教育はよしあしはひとまず置いておくとして、ケンブリッジの教育やオックスブリッジで研究したメンバーが大きく関わっているので、ケンブリッジ国際教育の日本初の認定校であり、その推進リーダーの一人である工学院の教頭田中歩先生に頼んだということです。

★また、社会課題と教科を結ぶ研究を同研究所の主催する数学の研修委員の姿をみていて、コンセプトベースには数学科がすぐに動けそうだと判断したということです。さらに、英語が堪能である数学の先生はということで、いろいろな縁の中で山口先生と本橋先生に行きついたたということのようです。

★次期学習指導要領では、背景に探究と生成AIがあるということは、昨年の段階で公開されている情報やデータから想定できていたので、シンプルにそれらの根っこ(コンセプトベースな学び)を見出すということが目的だったようです。

★そのコンセプトという種から、様々な探究や生成AIを活用した授業、教育活動等が生まれてくればよいという発想のようです。ただ、それは理論としてつくって実践するというトップダウンのスタイルではなく、あくまで授業実践報告の中からボトムアップ的に生まれてくるというスタイルをとったようです。

★そのため、3人の先生が互いの授業実践を見学したり、報告を聞いて議論しながらできてくるというあくまで仮説の段階のものです。固定された一つのコンセプトというよりは、生徒や教師の具体的な状況に応じて変幻自在に変わるものという感じですね。

★いい加減じゃないかと思われるかもしれませんが、3人の先生方は、転移学習とか圏論なども議論の背景に入れながら模索しています。その理論を前面に出すことはないし、必要もないと思っていますが、システム思考やデザイン思考など世の中で語られている理論ももちろん背景で議論しています。しかし、現場でより実践的な学びとは何かに目を向けています。

★昨年1年の議論の中で、生まれてきたのが「コア・ループ」というキーワードでした。フュージョン教育研究会のサイト第2章「AI時代に必要とされる人物像」を執筆している田中歩先生はこう書いています。

冒頭にも触れたように、「教師」「生徒」の枠組みをこえ、対話をしながら様々な思考スキルを使って学びを変化させてきたように、学びのコアがありさえすれば、その軸をループしていく中にAIを入れ、コア・ループを作ることが環境としてはとても重要になってくる。その環境で学ぶんだ!という、実は生徒たちに求められるのは、本来子どもたちが備えている興味関心・探究心なのではないだろうか。

生徒は小さいころからキラキラした眼差しで物事を見ている。そのキラキラを持ったまま未来へ向かって走っていく、その傍らに教師やAIが並走していく、生徒の走るエネルギーは興味関心・探究心であり、生徒はオープンマインドで対話に飛び込んでいくことが必要となる。 

★この中には、世の中で語られる、学習する組織、コーチング、ファシリテーション、リアリスティックなリフレクション、高次思考・対話、学習者中心主義などたくさんの理論が文脈背景にあって、わかりやすいけれど、圧倒されます。実践とはかくも理論の複合的な密度が高いのだと。理論は、それを分析的に引き出しているだけなのかもしれません。やはり、はじめに実践という経験ありきなのでしょう。イギリス的と言えばそれはそうなのですが。しかし、日本の武道にもまず型ありきだから、シンクロしているような。。。

★それは、ともかく探究や生成AIについては、そのメリットとデメリットは、文部科学省がすでに各国の情報も収集してまとめています。多くの論者が語っている懸念点もそこに網羅されています。

★フュージョン教育研究会の先生方は、それらは織り込み済みで、教師と生徒が授業の中で探究的なエッセンスと生成AIをサポーターとしてどう使っていくかという問題意識で授業実践をしています。そこは、現状、生徒が授業で探究的エッセンスを生かしたり生成AIを使ったりしていると学校がまだ少ない中での実践ですから、かなりチャレンジングです。そして、それらを、コア・ループをつくる環境が重要なのだというコンセプトに行きついているわけです。

★では、このコア・ループとは何か?それはまだまだこれからということのようですが、現段階でもかなりヒントはあります。私も生徒一人一人が独自の最高の学び方を回転できること、そしてそれがじぶんごととみんなごととちきゅうごとが循環できる最高の学び方であることが大事だと思っています。コア・ループはまさにそれなのでしょう。私なりに探っていきたいと思います。コア・ループは、一人ひとりちがってよいのですから。

 

|

2026年9月23日 (水)

[思考」を「思」×「考」と捉え返してみる(2)ポマト思考(?) 失敗のイノベーティブなエネルギー

★ONETESplus9月号の特集で思考コードで入試問題を読み説いているページが載っています。その中で、ポマトの例を挙げて、思考コード9領域を解説している部分が興味深かったです。

Pomato

★ジャガイモとトマトは、本来異質な物同士です。それを細胞融合という科学的操作で一つにし、「ポマト」を生み出すことを、知識やその生み出す論理的道筋、そしてそれが生産物として成立するのかどうクリティカルな計算や同じような発想で新物質ができるというストーリーを9領域にマッピングしていっているのです。

★中学入試では、この異質のもののつながりは、メタファー思考ではよく使われます。また、算数の等積変形などでは、一見違うけど同じというレベルで重要な視点です。

★このような異質なものつながりを見つけるコトの重要性を説明するのに「ポマト」はわかりやすく、「ポマト思考」とよべばよいなあと感じました。

★そして、ポマト思考と呼ぶことによって、実はこの思考の重要性がも一つ加わります。それは、ポマトはできたけれど、期待通りの果実にはならなかったので、どうやらその後消えてしまったようです。

★失敗作というわけですね。ところが、ここが重要なのです。この細胞融合の失敗のおかげで、バイオテクノロジーは「遺伝子組み換え」というイノベーションを進化させるのです。

★というわけで、「ポマト思考」は成功すれば新しい物を生み出しますが、失敗したら失敗したで、新しい方法をは生み出す動機づけになるというわけです。

★ポマト思考は、異質な物を結び付ける発想として重要であり、その発想はイノベーションをさらに進化させるエネルギーにもなるということでしょう。

★そうそう、そういう意味では、「思考」もポマトですね。

|

[思考」を「思」×「考」と捉え返してみる(1)

★連休中ゆっくりONETESplus9月号を読み進んでいるときに、楠見孝教授(教育学研究科)の最終講義の動画「教育認知心理学:軌跡と未来」の動画をたまたま見ました。この動画は楠見教授の生涯の研究をコンパクトにまとめていてわかりやすく、感動しましたが、特にクリティカルシンキングがスキルとマインドの両方を発動していると(私は捉えました)いう実証実験をされてきたことに惹かれました。しかもクリティカルシンキングが日本で本格的に研究されるようになったのは、2000年に入ってからだというのです。思考コードが新鮮に見えました。

Img_1124

★というのも、「Thinking」と「思考」は、少し違いがあるのかもしれないと感じたからです。つまり、「思」=マインド、「考」=スキルと捉えると、日本人にとって、「思考する」とは、熱いマインド(思)を持ちながら、冷静なスキル(考)を働かせる行為だといえるのではないかと。

★そう気づくと、ONETESplusの特集号が、「思考コード9領域」と「4つの圏」と「5つの目」の3軸を使って、中学入試問題を読み解いていっているのが改めてわかるような気がしました。

★和洋九段女子、国学院久我山、市川、鴎友学園女子の問題を取り上げていましたが、解くだけなら、入試問題解答解説ですから、特集ということにはならないのですが、一問一問に向き合う受験生が頭脳をどう回転させるのか、どう広げるのか、どう深めるのかについて解読していたのです。

★なるほど、入試問題という「問い」に向き合う思考の姿勢が書かれていたのです。頭脳を回転させるわけですが、自動的に回転するわけではないのです、どこまで回転させるのかは、スキルだけではうまくいきません。そのエンジンであるマインドが必要です。

Photo_20260923084802

★それで、思考を形成する「3つの軸」というわけなのですね。

★入試問題は、学校の顔というのは受験業界では人口に膾炙されています。その学校の先生方は一問一問にマインドとスキルの核を埋め込みます。受験勉強をしながら、生涯かけて自分の軸となる学びの方法を体得できるとしたら、それは本当に価値あることです。

|

2026年9月21日 (月)

田園調布学園 女子校の新しいカタチ

★ONETESplus9月号には、田園調布学園の記事も載っています。「女子校の新しいカタチ」を追っているシリーズもののようです。私立女子校のイメージは、もはや「良妻賢母」ではなくなっています。「妻」と「母」の部分は、今では「人間」というシフトが起きているのは、時代の流れでもありましょう。では、最近の女子校はどんなイメージでしょう。少なくとも、男子校や共学校とは、肌感覚では違います。

Photo_20260921104901

★最近の女子校は、グローバル教育、探究、STEAM、理系というキーワードが示す教育をどんどん行っています。しかし、これだけならば新興勢力の共学校とあまり変わらないかもしれません。やはりそれだけではなく、雰囲気が明快に違うような気がします。では、それはいったい何でしょう?

★ONERTESplusは、そこを追っているような気がしました。田園調布学園も、グローバル教育に力を入れています。海外大学合格者も多数出ています。探究、STEAMにも力を入れています。特に教科横断のプジェクトは受験・教育業界で注目を浴びています。そして卒業生の約半分は理系の大学に合格しています。女子校の最先端の教育を行っています。

★そういう意味で、他の女子校に比べ、最先端のレベルが卓越しているといえます。しかし、これが女子校の新しいカタチの本質ではなさそうです。というのも、これらの教育は技術的な側面が強いので、いずれ他の女子校も追いついてきます。清水校長は、そんなことは百も承知のはずです。

★では、いったい何が違うのか?それは、この記事を読んでいて、一つの屋台骨が明示されている点だと思います。清水校長は、田園調布学園のルーブリックを創っています。たしかに、ルーブリックをつくる手続きは技術的ですが、清水校長は、田園調布学園のマインドを言語化し、そのマインドを学内隅々にまで浸透させるいわばルーブリック実装組織マネジメントをしているのです。

★このマネジメントは、もちろん前面にでるわけではありません。教育を生成するエネルギー体が循環する仕組みですから、土台として表には見えていません。ただ、それを見ようと思えば見えるのです。

★学内では、教師のみならず、生徒もその仕組みを見ることができます。言語化されているからです。授業や探究、行事などに、その仕組みが活用されているのが見えるということは、実は革命的です。というのも、見えるということは共有できるということです。従来はその仕組みは教師が暗黙知として発揮していました。

★暗黙知ですから、伝わる生徒と伝わらない生徒に分かれます。伝わらない生徒の方が圧倒的に多かったでしょう。ですから、作法とか習慣という行動の型で教育活動が行われてきたのです。暗黙知ですから、教師どうしの共有の対話も行われませんから、そのクオリティはバラバラです。

★ところが、田園調布学園では、教育理念を表現する言葉をリフレーミングし、言語化し、カリキュラム、授業、活動ごとに具体的に作っていきます。その過程は対話なくしては不可能です。清水校長が一人でその詳細まで作りこむことは物理的に不可能です。

★教職員が、それぞれの具体的状況において協力し合いながら作成していくわけです。そんなことは当たり前だろうと思いますか?この過程を展開できるには、心理的安全を学内の文化にしなくてはなりません。それが簡単でないことは、他の学校の先生方が常に悩んいるところから明らかです。

★この心理的安全は、田園調布学園の文化でもあったと思います。中学に入学するとエンカウンターの研修がすぐに行われていました。ですからプロジェクト型の活動も伝統としてあったと思います。清水校長は、おそらくそのリソースをうまく汲み上げ、ルーブリックを学内共創したのでしょう。

★そして、そのテコが、記事の中にあるデザイン思考のプロセスの導入だったと思います。多くの学校で探究を行うときに、デザイン思考を活用するケースがありますが、それは田園調布学園のように学校全体で取り組んでいるわけではありません。担当教師によるわけです。

★学校全体で取り組むには、清水校長のように、理想を具体的に実現するスタートアップ型のマネジメントと共感を広げる社会起業家的マネジメントの二刀流が必要です。そして、それを支える教頭の学校運営マネジメント力との三位一体。これが田園調布学園では展開しているのでしょう。

★IBのDPが大きく変わろうとしています。2030年本格稼働のために、パイロット校を中心に企画実装の実験をしているところです。その新しいプログラムを遂行する方法論の一つにデザイン思考を使うということになっています。

★IBはルーブリック型の学びの評価と改善をしているのは土台にあります。それにデザイン思考などの探究を展開する際の学習科学としての方法論が活用されます。驚愕なのは、田園調布学園は、すでにそのプロセスを積み上げてきているということです。

★従来の教育は、女子校に限らず、行動主義的美学でしたが、今後は行動×学習科学によって教育の美学が実現していくのでしょう。そのフロントランナーが田園調布学園であり、女子校の新しいカタチがけん引していくのかもしれませんね。

|

2026年9月12日 (土)

2027中学入試動向(06)天体の部活のある学校は注目か 自律分散協調系のコア・ループ

★工学院大学附属中高のサイエンス部天文班の部員2名が、この夏「スターキャッチコンテスト関東大会」にて第3位に輝いたというインタビュー記事を読みました。感動的です。この記事を書かれた先生のストーリーテラーのパワーも凄いです。そして、なにより、そのストーリーは二人の生徒自身の実際の軌跡/奇跡であることが感動です。

Kgi_20260912085101

★そのストーリーについては、ぜひ記事をお読みください。ここでは、私の気づきを少し述べますね。

★天文班の2名は、協力してコンテストに向けてトレーニングをするわけです。どんなトレーニングかは天体のことを知らない私にはわからないのですが、自作の天体望遠鏡で、天の星々を自分たち感覚と脳内神経身体全体に最適かつ俊敏に結び付けるトレーニングのようです。

★このコツコツと努力しているというより、コミュニケーションを取りながら、悩みながらも創意工夫し、小さな達成感を積み上げていく感動の連続だったと思います。これってもう奇跡です。というのも、私も含めて多くの人がふだん星空を眺めないし、どの星がどんな由来があるのかその背景知識などは持ち得ていないわけです。しかし、コンテストで入賞するためには、その膨大な知識と天体望遠鏡を操作するテクノロジーと彼女たちなりのこの一連の関係性を導き出す方程式を創って結び付けているわけです。

★まさにクリエイティブクラスですよね。それにしても、天界の星空と自分たちの脳内の島皮質が反応するわけですから、それはたまあに星空を裸眼で眺めて感動することなどとは比べ物にならない大きな深い感動が全身に広がり、そして仲間と共感するでしょう。

★これは、結構人知を超えたすごい出来事を自分たちが手にしているのです。誰に指示されるわけでもなく自律して、そしてどちらが主導権を握るということなく分散し、それでいて協調する。これは外からみたら、一連の行動ですが、この行動が駆動する内的なコア・ループが出来上がっているということです。

★田中歩教頭が、IBLや探究で生徒が感じたり考えたり行動したりすることの出来を最終的に評価することというのは、プロダクトの出来栄えで終わるのではなく、生徒1人ひとりの内面に(脳神経身体全体に)どんなコア・ループが回りだしているのかを生徒と共有できることなのだと言っていることの実感ができました。

★もしかしたら、天体の部活を行っている学校では、同じような自律分散協調系の生徒が育つ環境があるのかと思い、調べてみました。東京の私立学校の17%は、天文部を持っているようです。しかし、工学院のように科学部や地学部の中に天体活動を行っているかもしれませんから、天体活動をしている部活動はもっと多いかもしれません。

★そういえば、桐朋の天体活動は有名だということや開成の地学の先生の授業実践報告会に参加したとき地学と宇宙の壮大な関係に感動したのを思いだしました。

★たしかに、自律分散協調系のコア・ループが生徒の内面に回っているし、アップデートしていく環境は天文にはあるなあと感じました。

★島皮質のAWE体験は、天体だけではなく、山に登ってでもできます。いや多くの部活がそうでしょう。今や部活はいろいろ言われていますが、日本の教育の新たな卓越性を示す学びの場かもしれません。自律分散協調系の創発の場だよと。もちろん、そうでない昔ながら部活は変わっていく必要はあるかもしれませんが。

★自律分散協調系という言葉は、私が中学受験業界に足を踏み入れた1980年代に一部で流行っていた言葉です。コンピューター系のテクノロジーやエンジニアリングで使われていました。現代思想でも脱中心とか周縁というキーワードがはやっていました。

★それが2000年代になって、工学関係で広がりはじめていたと思います。当時の東大の小宮山宏総長の講演に参加した時、教授から岩波新書「地球持続の技術」を頂いて驚愕したのを覚えています。今では、WEB3.0あたりで新たな意味や言葉で表現されているのでしょう。文理融合の時代に再び流行るかもしれません。

★そうそう、私がPBLを大事にしているのは、この自律分散協調系のコア・ループが生徒の内面に回りだすことを、もちろん狙ってですが、島皮質などの脳科学をちょっとだけかじることで、かじらなくてもちょっと考えれば、わかることですが、脳というのは、感動は同じ行動を繰り返すと順応して起きなくなります。ですから、それを防ぐには、環境を変えるのがポイントです。特に協働関係をつくることは、仮に同じメンバーでも複雑系なので、日々新鮮です。

★工学院の場合は、中1からIBLやPBLをやっているのですから、当然そうなるのですが、さらに高大連携や地域連携、外部団体連携、国際的アソシエーションなどとの連携が多く、生徒1人ひとりのコア・ループはアップデートしています。このような学校は他にもいっぱいあります。またお知らせします。

 

|

より以前の記事一覧