エルケ・ヴィスさんの実践的問いの構想力 思考コードと共鳴するところも。もしエルケさんが生成AIを使いながらソクラテス対話をしたら?
★オランダの作家、講演家、演劇人、実践哲学者でありソクラテス対話のトレーナーでもあるエルケ・ヴィスさんの翻訳がこの3月に出版されています。2020年に『ソクラテス・オン・トレーナー』とうタイトルの本がオランダ語で執筆されました。たちまちベストセラー。英語、ドイツ語、韓国語、スペイン語、アラビア語、ポルトガル語、ハンガリー語、中国語に翻訳されたのです。そして遅れること5年後の今ようやく日本語版が出版されたわけです。
★エルケさんは、実践的哲学と創造的思考のためのエージェンシー、De Denksmederij(デンクスメデライ)の創設者です。そこでは、個人でもグループでも、考える会話をすることができるのだそうです。エルケさんは、創造的・批判的思考トレーナーやソクラテス・ディスカッション・リーダーのチームとともに、クリティカル・シンキング、創造性、質問の技術に関するトレーニング、講義、ワークショップを提供しているというのですから、ある意味共感してしまいます。
★というのも首都圏模試センターの山下社長と開発した「思考コード」はまさにエルケさんの語るソクラテス的な対話を互いにできるコンパスとして設定していたからです。
★この本は、まだ生成AIが世に広まる直前に書かれてたものでしょうから、生成AIを活用してソクラテス的対話をするという場面はでてきていませんが、第2弾はでてくるでしょうね。
★エルケさんは、ドラマアーティストで実践哲学者ですから、お会いしたことはありませんが、リベラルアーツの化身のような方でしょう。エルケさんの本に耳を傾けることはとても有益です。
★エルケさんは、私の娘と同年代ですから、娘と対話しているような感じにもなって、ひそかに喜びながらめずらしくゆっくり読んでいます。問いについての立て方について、議論されているたいていの話題は同書で語り尽くされている感じです。
★ただ、ドラマや実践というところで、反道徳であり同時に道徳的でもあり、中立的な共感性を求めつつも、なかなか難しい感じがあるので、それは何だろうと今考えているところです。もし、エルケさんが、生成AIを使いながら(生成AIと対話するのではありません)、多くの人々と対話をしたらどうなるのだろうと思っています。
★よく教えない教育とかいわれることがありますが、これも一見、心理的安全や自由な空間をつくるような感じでありつつ、結構教えない=教えるべきではないという道徳(ここでは、視野の広いルールではなく、二項対立の中で選択されるルール)を感じ、もっとシステマティックに構想できないものだろうかと思うわけです。
★問いが生まれてくる対話と教えない教育はアプローチが違うのですが、いずれも、メンバーが自発的に創発する状況を創るということだと思うのです。ソクラテスはある意味教えない教師でしょうから、互いに文脈は交差しますが、どちらも、ソクラテスや教師以上のリソース(ソクラテスなどの哲人や学者の情報)は活用するわけです。メンバーはそこから生み出すのです。教える必要はないのだと。ソクラテスは産婆術だというわけです。
★これらの知のリソースの1つとして生成AIを活用するとどうなるのか?そして、エルケさんと娘と私は、25年前だったら、生徒と教師の関係になっていたかもしれません。しかし、25年後の今は全くフラットです。この25年の時空を無化することが本当に25年前にできただろうかと自問自答してしまいます。
★もし、そこに生成AIがあれば、25年前にすでに今のフラットな感じで対話できたかもしれません。認知的格差をなくすことによって、感情的な豊かさは共感できる状況が創れたかもしれません。
★ということは、今学校は、教師と生徒の認知的格差をフラットにし、共感的な感情を豊かにする関係をつくることは可能かもしれません。もちろん、エルケさんのいうように、理性的な共感性も活用しつつですが。
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