教育の質の高い中身を選択する時代(03)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味②
★高校入試の複合的な壁。この壁は実に不思議なパラドクスの産物です。明治維新以降、一高→東大という学歴社会の原型ができ、やがて、府立一中→一高→東大というエリートコースができます。明治維新以降の優勝劣敗主義、権威主義ができあがっています。戦後、現在の教育制度に移りますが、府立一中は日比谷高校となります。しかし、東大を頂点とする学歴社会の強化の役割を日比谷高校は担ってしまいます。これもまた実はパラドキシカルです。戦後民主主義は、平等、自由、博愛をコンセプトにするわけですから、権威や世襲や門地、門閥に関係なく、学力実力主義で、成功を獲得できるので、大学入試によって未来が拓けるのは当時は善だったわけですね。
★ところが、特定の小・中学校→日比谷高校→東大というエリートコースと呼ばれた固定化されたラインができてしまうと、そこは新たな権威主義を生み出します。おそらく、そういう偏狭主義的な事態をなんとかしようと、1967年に学校群制度が実施されることになります。
★そして、1971年以降実施された現代化カリキュラムという詰め込み教育という言葉で表現される学習指導要領ができ、学力格差が思い切りでき、日比谷高校もその影響を受けます。
★このころから、私立中高一貫校が東大を頂点とする大学に合格させるようになっていきます。
★文部科学省は、一方で現代化カリキュラムを、その後ゆとりカリキュラムといわれることになる学習指導要領の改訂を繰り返していきます。ますます都立高校の学力的な差が私立学校とできていきます。
★それゆえ東京都の方は、2001年以降、進学重点校や都立中高一貫校の設置など、公立の巻き返しを図ります。日比谷高校は、今では東大合格者を多数輩出し、毎年注目されるようになったのは、周知の事実です。
★ざっくりわかりやすい変化を挙げてきましたが、これらは、みな制度設計の変更によって生まれています。戦後の制度設計の変更は、いずれも民主主義的原理に照らし合わせて策定実施されてきました。しかし、必ずしもうまくいっていないわけですね。そのうまくいっていない課題が制度設計の変更の度に生まれ、解決されないまま制度変更がなされてきたため、それらの課題が複合的にいくつかの壁を作りだしているのが高校入試の壁です。改善したいという理由で変更したのに、それが壁になってしまう。パラドクスです。
★この壁にどのようなものがあるのかは、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんが、今回の巻頭座談会でまとめていますから、いずれ紹介します。ここでは、そのような壁をどう乗り越えるのか、プロジェクトメンバー1人ひとりがアイデアを述べていますから、しばらくそれをみていきます。
★まず、庄司正義さん(シンクアンドクエスト取締役社長)。庄司さんは、現代の高校入試の原型は生徒急増期につくられたものだから、生徒減少急激の現在には適合しなくなったという認識をまずもったほうがよいのだというわけです。そして、高校生人口急増期に進学率も90%を突破するようになります。現代化カリキュラムもはじまる時と重なりますから、個別最適化などなかった時代です。どうなったか想像するに難くないでしょう。
★もちろん、ゆとりカリキュラム化の過程を経たり、反ゆとり教育になったり、両方を統合する今回の学習指導要領になったりとかするわけですが、高校入試の制度設計の大枠が変わらないわけですね。
★これを突破するには、教育の中身の変更に合わせた入試制度の変更もしたほうがよいと。
★教育の中身は、「主体的・対話的で深い学び」と「ルーブリック評価」と「個別最適化」と「協働学習」などがキーワードになっています。
★したがって、庄司さんは、こう言います。「受験生・私学・公立中学3者が使える評価軸の創設がポイントです」と。
★現在でも、受験生・私学・公立中学3者は、入試相談などで、情報を共有することはできるのですが、対面で、互いの評価基準のすり合わせをするのであって、共通基準に照らし合わせるのではないのです。基準がバラバラだから、個別に会ってみなければわからないのです。わからないので、中学側は、過去の経験データに基づいて進学指導をせざるを得ないのです。未知なる学校は、合否が読めないわけです。
★高校進学率が100%に近くなっている今、合格が読めない進学指導はできないのは当然です。
★じゃあ偏差値がいいじゃないかという方もいるかもしれませんが、それはさまざまな問題を生んできたから、制度設計の改訂が行われ続けてきたのです。ですから、別の軸を作る必要があるということでしょう。
★多角的な評価軸の共有。これは、新学習指導要領のねらいでもあります。
★庄司さんのアイデアは、夢物語でもなんでもなく、現実化への道が文科省によってもなされつつあるという裏づけに基づいています。
★おそらく庄司さんの会社では、当然ながら、この新しい軸を開発しつつあるのかもしれませんね。今は、アプリでそれが可能だからです。AIを導入するともっと複雑な計算ができますし、基準を作りだしてもくれます。
★今回のプロジェクトミーティングは、回数を重ねるほど、いろいろなアイデアと、ICTによる実効性が議論されているはずです。どこかで手ごたえを感じているからこそ、この動きが生まれているのでしょう。ここに未来の教育を生む希望があります。
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