聖パウロ学園の数学科 「世界制作の方法」をPBL授業で実践し始める パウロの森で静かに根源的思索へ(1)
★本ブログの記事「数学と情報のクロスオーバー 大事なことは物の見方の交差 聖パウロの数学ミーティングから気づいたこと」でも紹介しましたが、数学科はアルゴリズム思考を数学科のミーティングでもトレーニングし、その思考方法を生徒と共有し始めました。その発想のよりどころの1つはネルソン・グッドマンの「世界制作の方法」です。
★ネルソン・グッドマンは、たぶん数学哲学者でもあり、言語哲学者であり、究極的には、政治も経済も芸術もデザインも言語も精神も・・・あらゆるものは記号システムで構築されたもので、それこそが世界であると考えたのではないかと思います。がしかし、そんなことを言っていると、独断と偏見で違うと言われるでしょうね。ともあれ、おもしろいのは、数学科と話をしていると、必ずしも集合論は世界を構成する唯一のものではないという考え方がでてきて、ネルソン・グッドマンと波長があっているなあと私などは感じてしまうのです。
★集合は、すでにある前提条件なしには、分類分けができず、氷山モデルでいえば、見える部分のカテゴリー分けに過ぎないのかもしれません。見落としてならないのは、海面下のシステムとつながっているということです。すると、この海面下の諸関係が氷山の一角につなっがっているから、そこを見てしまうと、みなつがなっていて、カテゴリー分けができなくなります。
★かといって、カテゴリー分けをしないわけにはいかないですよね。数学は、多様な条件という概念の諸関係が生み出す記号システムだということでしょう。この氷山の一角と海面下のシステムを、勤務校の数学科の教師はアルゴリズム思考として(私はシステム思考だと思っているのですが)再構成し、世界制作の方法を生徒と共有しているわけです。
★またわけのわからないことをと数学科の先生方に叱られそうなので、現場の数学の授業をご紹介しましょう。伊東先生は、簡単な復習問題を1問提示します。生徒1人ひとりが5分くらいで解いたあと、この問題を解くときにどんな数学的知識や概念を使ったのか問答します。問題解法は氷山の一角で、その海面下の知識や概念のつながりを紐解いていきます。
★このウォーミングアップが終わったら、応用問題。一次不等式の問題だけれど、式を解きなさいというダイレクトな問題ではなく、式の条件を満たす最小の自然数を求めなさいということです。このインダイレクトな問いを設定することで、一次不等式の解き方を通して「自然数」の概念を再考するという意味付けがなされていたのでした。しかし、そこに気づくまでに、個人ワーク→ペアワークを行っていきます。
★各人ポストイット一束渡され、一枚のポストイットに1情報を書き込んでいきます。どんなことを書くのかと言うと、目の前の問題を解くにあたって、必要だと思われる知識や概念をできるだけたくさん書き出しなさいと。
★そして、ペアワークで情報を交換し、互いに自分の考えを豊かにしていきます。最終的には教え合いながら問題を解いていきます。
★このワークショップ型授業の中に、実は世界制作法の視点を実装するトレーニングが埋め込まれています。
★聖パウロ学園は、文系進路が多いのですが、最近では文系も数学は必要とされています。しかし、私立文系の場合、入試問題で数学を選択しない場合がほとんどです。数学の授業のモチベーションがあがらないのが普通です。
★しかし、勤務校の数学科の教師は、文系にも役立つ数学は何かとここ数年議論しているのです。難しい問題が解けなくても、記号システム全体を俯瞰する視点は、文系の学問や領域でも大いに役立ちます。
★ですから、ネルソン・グッドマンのシンプルな世界制作の方法を授業の中で共体験していくのです。
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