PBL

2025年7月14日 (月)

私立中学校選択 氷山モデル(08)心理的安全基盤装置を構築している学校

★日本経済新聞(2025年7月14日)に「ショーン・ペンさんが問う市民の覚悟 民主主義の劣化、我々にも責任」という記事が掲載されています。この中で、民主主義の劣化が世界的に深刻であることが語られています。「民主主義の劣化は世界的に深刻だ。スウェーデンのV-Dem研究所によると、24年の世界の自由民主主義指数は約40年ぶりの低水準に沈んだ。国・地域の数でも人口の割合でも、民主主義陣営は権威主義陣営に劣後する」というのです。

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★具体的には、民主主義陣営は88ヵ国、権威主義陣営は91ヵ国。人口シェアでは、前者は28%、後者は72%です。しくは、V-Dem研究所のレポートはPdfで閲覧できます。

★日本は民主主義陣営ですが、最近権威主義陣営を思わせるような言動があふれはじめています。非寛容、排他主義的、差別的な言動は、もし政治の世界だけではなく、日常の世界にも広まったりすると、ハラスメントが起こりますから、大変なことになるのは、火を見るより明らかです。

★学校は、政治組織ではないので、政治で言うところの民主主義的組織とは違います。もちろん、民主主義的精神や人権、法の支配が尊重されそれが実現される場です。しかし、学校の意思決定は、会社と同じように、経営陣が決めます。

★ですから、経営陣による権威主義的な組織になりやすいのです。私立学校は、現場を顧みない経営陣によって運営されるとこれまた悲劇が起こりますから、そうならない創意工夫をしているのです。

★つまり、意思決定プロセスやコミュニケーション環境が、フラットでフリーでフレンドシップ、そしてファンというようなFの精神があふれる組織マネジメントを経営陣は心がける必要があります。

★しかし、世界の7割強の人口が権威主義的な国家組織に属しているわけで、この精神は、人間の精神性の1つです。よほど意識をしない限り、この精神は鎌首をもたげてきます。ですから、経営陣と教師の関係、教師の同僚の関係、教師と生徒の関係、生徒と生徒の関係、学校と保護者の関係を相互信頼を生み出す心理的安全基盤装置をつくっている学校が、教育の質の向上を持続可能にするのです。

★この心理的安全基盤装置は、実はPBLだったり、グローバル教育だったり、ICT教育だったり、メタモニタリングが相互にできる学びの構造のブラッシュアップシステムを指します。そのために、学内研修や学外研修があり、経営陣も教師も生徒も保護者も学び続ける機会も作るのです。
★ベテランの教師をリスペクトし、進歩主義的教師が、それを形式知化システムとして組み立て、それを常に教師同士が改善し続ける対話の時間設定が年間通じてほぼ毎週組み込まれていることが大切です。

★というわけで、その理論化・言語化・見える化・空間化・アート化したものを生み出し続けている学校組織を選択することが安心安全につながります。

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私立中学校選択 氷山モデル(07)進路指導の前提やあり方が変わる 2026年高3生から東大のCollege of Designのインパクト

い★前から発表されていた2027年9月入学の東大の新コースというか学部というかクラスというか、要するに<College of Design>の入試要項の概略が発表されました。50人は日本の学習指導要領を学んだ生徒、もう50人はIBやAレベルなど世界標準のカリキュラムを学んだ生徒を受験対象とします。

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★両者の細かい違いはあるのですが、高校の成績表、書類、論文、英語での面接、英語検定資格のスコアはほぼ同じです。違いは前者は共通テストを受験、後者はIBやAレベルなどの成績結果をだします。

★要項の概要を読んだだけでは、後者は留学生だけなのか、日本の1条校でも、IBやAレベルなどを取得することができる学校もあるので、そこの生徒でもよいのかはまだ判然としませんが、そこはいずれ明確になるでしょう。

★いずれにしても、あの東大の一般選抜の試験を受けない新たな方式が生まれたということです。東大も多様な生徒の才能を受けいれる入試の幅を広げたわけです。

★今までは、海外大学と国内大学の入試のあり方が全く違うという感じでしたが、2026年の高3からは、徐々にその違いが縮まり、共通点が多くなってくるということです。

★この動きは、東大が始めれば、他の国公立大学も動く(この姿勢がよいかどうかはともかく)ので、加速するでしょう。早稲田、慶応はすでに別の方法でそのような方向に動いていて、国公立大学の補完として私立大学の中で一番難しいという段階から、国公立、私立大学が互角のイメージをつくりあげています。

★私立大学も早稲田、慶応に続くところは当然出てくるでしょう。

★AI時代は、牧歌的な知性獲得の時代は、残念ながら去ってしまいます。AIをメタコントロールできる高度な知性や専門性を研究する時代です。一部の権威主義的大学がその研究を握っている場合ではないのです。

★少子高齢化と言えども、小中高生1200万人まだいるのです。この1200万人がみなそのような高度な知性と専門性を、自分の好きな領域で発見し、身につけることができる時代がAI時代だと自分たちの意思でするしかないというのが、今の教育の現状です。

ここにいちはやく気づいているのが、突出したグローバル教育を行っている学校です。外国人教師が5人以上教鞭をとっている学校がほぼそのような覚悟を持っているでしょう。この動きはどんどん広がっていくはずです。

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2025年7月11日 (金)

私立中学校選択 氷山モデル(04)教科授業と探究のつながりが質を生み出している

★私立中高一貫校の教育の質を高める要素10個のうち、授業と探究の2つはカップリングして話すのがよいでしょう。東大にたくさん入っている学校の授業は、基本問答型講義です。問答型というのは、ここでは、教師と生徒ですね。生徒同士となると、PBL型にシフトしていきます。海外大学に合格するには、PBL型の授業が必要となってきます。

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(写真は、駒沢学園女子の数学科の山口先生の授業シーン。同校サイトから。グローバル探究と教科の授業がリンクするPBL型授業)

→駒沢学園女子は、グローバル探究(当然PBL型)を推進しています。一方で、生成AIを活用しながら授業もPBL型を単元のどこかで生徒のブレイクスルーを生み出すタイミングに合わせて行います。数学だけではなく、英語など他教科でもこの生成AI活用PBLは展開し始めています。

★ですから、探究を本格的に行っている学校は、教科授業もPBLタイプが多くなるのは必然です。

★どちらかだけとなると、質は分断されますから、それなら、初めからPBLはやらずに、効率よく一般選抜で東大を頂点とする難関大学を受験すればよいのです。

★ですから、学校選択は、効率よく国内の難関大学にいくための教育の質を選ぶか、自分の才能開花をベースに海外大学やそれに相当する国内大学を総合型選抜で受けられる教育の質を選ぶか、どちらかです。前者なら、Aタイプの教育の質のタイプの学校を選ぶと良いでしょう。後者なら、DやEタイプの質の学校を選べばよいのです。

★ただし、2027年以降は、東大をはじめ多くの国内難関大学も、後者の進路を考えている生徒がアプローチできる入試方式を考えています。生成AIの進化は、どのみち生徒一人ひとりのオリジナリティは何かに行きつきます。

★授業と探究が結びつき学びのシナジー効果を生み出す質が求められるようになるでしょう。

★すでに、2015年くらいまでは、問答型講義の学校がほとんどだったのです。それなのに今はPBL型も増えているのです。6年後どうなっていくのかは火を見るより明らかな気がします。

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2025年7月 8日 (火)

工学院 世界にインパクトを与える教師&生徒!

<GLICC Weekly EDU 第220回「工学院大学附属中高ー探究ベースの学びを支える『情報&グローバル教育』」>で、工学院大学附属中学校・高等学校の校長中野由章先生と中学校教頭の田中歩先生からお話をお聞きしました。他の追随を許さないインパクトのある中野校長と田中教頭の相互信頼関係。生徒1人ひとりが成長し高い志をさらりと実装する大人になっていく成長物語が生まれてくるはずです。

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★しかも、その成長の条件が、他校にはない贅沢なそして未来に必須な教育環境なのです。というのも、私立中高一貫校を高度な「情報教育」と世界のエスタブリッシュ私立学校に匹敵する「グローバル教育」の両方を融合している学校は、日本にはないのです。どちらか一方が秀でている学校はありますが、両方とも生徒たちは、意識などせずに自由に柔軟にできてしまうのですが、実は、大学レベルの学びを行っているのです。当たり前のレベルが違うというのは、動画をご視聴していただければ目からウロコとなるでしょう。

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★お二人の対話からでてきたいくつかのキーワードをプロンプトに入れて、工学院の生徒の成長物語を生成AIに書いてもらいました。次のようになりました。

はじめは「楽しい」がすべてだった。仲間と協力してロボットを作る、アイデアを発表する、笑い合う。遊びの延長にあった学びの時間が、生徒を惹きつけていた。しかし、やがて小さな「なぜ?」が芽を出す。「どうしてそうなるのか?」「他に解き方はないのか?」と問い始めた時、学びは「interesting(興味深い)」へと姿を変えた。失敗さえも挑戦として受け止め、「自分の力で答えを見つけたい」という思いが強くなる。

そうした学びの土台には、教師との心理的安全と信頼関係がある。どんな挑戦にも本気で向き合ってくれる先生たち。生徒はその背中から、挑戦する姿勢を学んだ。

AIや数理探究といった高度な領域にも挑み、世界大学ランキング100位以内の海外大学という高い壁を、自らの力で乗り越えていく。生徒は“点”の知識を“線”につなぎ、やがて“面”として世界に広がる視野を持つ。

6年間で育まれるのは、知識以上に、自ら問い、考え、行動する力。そしてチーム工学院として、共に学び、共に未来を創る仲間の存在。卒業式の日、生徒の瞳に宿るのは、確かな自信と「世界にインパクトを与えたい」という静かな野心だった。

★驚きました!工学院は生成AIともシンクロしてしまう学校なのですから!

画期的でインパクトある教育!必見です!!

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2025年7月 7日 (月)

今更ながら私立中高一貫校のグローバル教育の意味

★私立中高一貫校は、学習指導要領の教育内容を丁寧に生徒と共有しながら、さらに発展させています。こんなことは、何を今更なのですが、総合型選抜が増えてきたことによって、見えなくなっているという状態が起きているので、確認までということでここにメモしておこうと思ったのです。

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(claude作成)

★一般選抜の場合は、学習指導要領内の教育内容の難度の違いが、志望校の大学進学準備の時の戦略データになります。ですから、この学びがグローバル教育に直接寄与するかどうかは、そもそもあまり意識されないわけです。

★ところが、総合型選抜は、探究の時間などで、自然と社会と精神の循環がうまくいかないことによって起こる多様な問いから出発するため、あたかもグローバル教育を行っているかのような錯覚に陥るのです。

★もちろん、グローバル教育の一端を担うのですが、あくまでグローバル教育>探究活動なのです。ですから、この錯覚を避けるために、「グローバル探究」という言葉が生まれています。グローバル探究は、グローバル教育の活動全般をカバーします。

★グローバル教育は、英語教育や国際理解教育をもちろん含めますが、やはりグローバル教育>英語教育、グローバル教育>国際理解教育なのです。

★そうなっているのは、日本の学習指導要領はあくまで日本の国民のための教育が前提だからです。グローバルな時代に、そこで活躍できる資質能力を身につける学びまでは学習指導要領内の話ですが、日本国民としてかつ地球市民として宇宙船地球号の中で起こっている問題を解決するリーダーシップをとれるようになる教育を積極的に行う仕組みにはなっていません。法制度上当然です。

★もちろん、意欲的にチャレンジするのは何ら構わないのですが、それをダイレクトにサポートする教育は学習指導要領には仕掛けられていないのです。ですから「グローバル教育」という言葉は、学習指導要領にはないはずです。

★グローバル教育は、私立学校の創育工夫によって組み立てられた独自の教育です。ですから、私立学校によっては、グローバル教育を行っていないところもたくさんあります。

★高度な英語教育を行い、海外研修も有志の生徒がいける環境まではほとんどの学校は揃えています。そこから先、地球市民としてグローバルリーダーになるかどうかは、生徒の意志によるというケースですね。

★しかし、グローバル教育を掲げている学校は、生徒全員が多様な領域でグローバルリーダーとして活躍するための総合的な教育が行われています。

★ですから、探究を行うときも英語をはじめとする多言語も活用するのが前提です。探究も教科が授業もPBLが前提です。探究だけでPBLを行い、授業はワンウェイ講義という学校は、グローバル教育を行っていないだけです。

★まして、探究だけで、教科学習は不要だみたいな極端な教育は、あってよいのですが、グローバル教育ではないのです。というのは、それは教科と探究が結びつかないという境界線を突破する発想をあきらめているので、その段階で知の分断が起こりグローバル教育ではないのです。

★哲学を大事する教育も大いに結構ですが、カントやデューイ、社会構成主義がどうのこうのという教育はあっても当然良いのですが、それはグローバル教育ではなく、哲学学問教育です。グローバル教育は、いろいろな方法論の前提に多様な哲学的背景があることを見抜きながら、形骸化した方法のマニュアル的活用ではなく、その哲学的エッセンスを現場にチューニングして最適化した思考の環境づくりをします。

★このチューニングというトランスフォーミングな学びを生徒自身が最終的にできるよういにならなければ、環境が異なるグローバルな時空に直面した時に応用が利きません。哲学は主義を通すのではなく、考え方や感じ方を共に変容し、新しいコンセプトを共創する思考のシステムです。

★学習指導要領がどう変わろうが、大学入試がどう変わろうが、学習指導要領内の教育の在り方の問題で、グローバル教育を行っている私立学校にとっては、その独自の教育につながるようにマイナーチェンジをしながら進むだけです。

★この学習指導要領の教育とグローバル教育のギャップは、体験格差とか経済格差の表れだという見方もあるでしょう。しかし、そのような現実のギャップがあるから、そのギャップを解消すべくグローバル教育が2011年以降現れたと考えるのが妥当でしょう。それまではあくまで国際理解教育だったのです。

★C1英語を学ぶのに、PBLの環境をつくるのに、STEAM教育を運営するのに、今では、体験格差も経済格差も不要の状態に日本の教育は進化しています。このことは凄いことです。そうであるのに、学べない壁をつくっているのが現状でしょう。その壁をぶち破っているのが私立学校のグローバル教育なのだと考えてみるアプローチがそろそろでてきてもいいなあと思います。

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2025年7月 4日 (金)

和洋九段女子 NEXTの時代へ

★本日、和洋九段女子の水野校長先生、本多教頭先生、佐藤教頭先生にお会いしました。和洋九段女子といえば、PBL授業だし、SDGsをベースに地域、NPO、大学、企業、大使館、国連広報センターなど外部と連携して探究を広げ深めているプロジェクトが豊富なことを知らない受験業界人はいないでしょう。

★しかし、3人の先生方は、それで満足するつもりはなく、このような教育の質をさらに向上させるために、次の3つを考えているということです。

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① 2030年以降SDGsに代わるグローバルゴールズやアイデアは何かを生徒と共に考案していくということ。
② 多様な外部とコネクテッドしているプロジェクトどうしをつなげて学内の学びの密度を濃くしていくこと。
③ PBL授業の中でつちかっているクリエイティブシンキングやクリティカルシンキング、コンセプトシンキングによって、生徒たちは実はIBのディプロマレベルの小論文を書ける力がついているということを可視化すること。

★9月から具体的なプログラムやプロジェクトを動かしていきたいということでした。お話をお聞きした後、ちょうど高1のサイエンスコースで小仲井先生がサイエンスの授業を行っていました。そこで少し見学させていただきました。

★「回転」について、実際に回転効率のよい仕掛けをどうつくるのか頭も手も使い、話し合いながら、個人ブレストとグループブレストを進めるPBL授業が展開していました。

★回転という物理現象やその理論は、実は多くの社会課題と深く関わっています。SDGsもそうです。したがって、風力発電の回転運動を電気エネルギーに変換する技術で、再生可能エネルギーを生み出す検証を行っていました。

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★もちろん、風力発電のコストの問題や景観や鳥の生態系などへの影響についてのクリティカルシンキングもしながら、適地を限定したうえで、回転効率をいかによくするかというクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングがすでに授業の中で稼働していました。

★また、回転技術について他の技術とつながるかどうか応用がきくかどうかまで、発展させていました。これはいわゆる転移学習で、トランスファーするためにはコンセプトにまで具体を抽象化するコンセプトシンキングがポイントになります。

★やはり、ふだんからこのような思考様式が編み出されているわけです。和洋九段女子の生徒は、プロジェクトを運営するチームワークや多くの団体とつながるコミュにケーション能力という非認知能力とこのような高次思考力を兼ね備えているというわけです。

★このような学びの環境の質をさらに高めていくというのですから、生徒にとっては希望です。

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2025年7月 3日 (木)

八雲学園 海外大学合格者数ベスト10入り in 首都圏

八雲学園の2025年現在の海外大学合格者数は30人。そのうち21人は、世界大学ランキング100位以内。これは、首都圏私立中高一貫校では、ベスト10入りの実力です。この結果は、全人的な総合的なグローバル教育の成果でありますが、特にサンタバーバラでの3カ月留学は、生徒の皆さんの成長のティッピングポイントになっています。

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★今もまさにこの3カ月留学にチャレンジしている生徒がたくさんいます。実は、この3カ月留学は、事前に3カ月の準備学習、帰国後に3カ月さらなる向上学習があり、9カ月プログラムになっています。

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★そして、この9か月間、生徒の学びのコアには、上記の図にあるようにダブル5Eのプロセスがあり、それが知のトルネードを生み出す循環になっているのです。もちろん、これは、国内大学進学準備教育にも浸透しています。2025年の国内合格実績の飛躍は、この知のコアシステムにあると、副校長の近藤隆平先生は語ります。このダブル5Eこそ、米国の大学でも学ぶ研究のプロセスに通じているのだと。

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2025年6月23日 (月)

今、日本の私立学校では、ハーバード大学教授が考える「良い教師」以上の「良い教師」がたくさん増えている

「資産形成ゴールドオンライン(2025年6月22日)」にハーバード大学のロバートキーガン教授の著書から抜粋した記事<本当に「良い先生」の共通点…ハーバード大学名誉教授が明らかにする、教育現場に潜む「教え方の罠」>が掲載されています。この記事の説明はもちろん私などではできませんので、関心のある方はお読みいただくとして、私は自分なりに気づいたことを書きたいと思います。

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★同記事では、教師のタイプを講義型授業のタイプかPBL型授業のタイプかどちらのタイプの授業をする教師が良いかという話はしていないのです。どちらのタイプでも、C型講義をする教師とB型PBL授業をする教師であればよいのであると。コンテンツ重視型であれ、コンセプト重視型であれ、大事なことは、生徒が具体と抽象を往還できる思考を活用できるかどうかなのだと。だから、講義型でも、具体と抽象を往還できればよいし、PBL型でも具体と抽象が往還できなければ、それは必ずしも良いということにならないかもしれないと。

★記事の中では、具体的なコンテンツの理解で終わる段階を第2次元のマインドと呼び、あるコンテンツを超えて他のコンテンツの理解に転移できる思考の段階を第3次元のマインドと呼んでいます。解説は次のように書かれています。

第2次元のマインドは、「持続的カテゴリ」と呼ばれ、自己や他者に関わらずあらゆる具体的なものごと・要素を1つの集合に沿って意味構成する原理を指す。第3次元以降のマインドについては「『持続的カテゴリを超えた理解』が必要である」と述べ、複数の持続的カテゴリを横断した、いわば複数の評価軸を意味構成に挿入できる状態、としている。 

★そして、講義形式かPBL形式化の選択ではなく、どちらの授業でも生徒が第3次元マインドの思考ができる授業であればよく、コンテンツ重視の時もあればコンセプト重視の時もあるだろうから、相互補完の関係にあるのだというわけです。

★私も賛成ですが、上記の図のように、どのタイプ・レベルの授業でも、生徒が第3次元マインド以上のレベルに気づくものです。重要なのは、それに気づく生徒の数が多くkなる確率の高い授業タイプやレベルはどれかです。

★そうなると、具体的事象の理解から生徒自らが問い返してコンセプトにジャンプする授業であるC型PBL授業が確率が高くなるというのは経験上手ごたえを感じているのが現場の先生方です。

★今私立学校では、探究をどのように構想していくか授業実践研究が頻繁に行われています。そこでは、当然Aから始めて最終的にC型PBLになるように構想されています。そして、学年によっては、いきなりC型PBL授業を実施している先生方が増えています。

★ロバート・キーガンの著書の抜粋された部分に限ってでしょうが、そこで良い教師とされているのは、どちらのタイプであれ、具体的事象からコンセプトにジャンプする誘導や問いかけをするわけです。しかし、今私立学校の先生方は、それをも生徒自身ができるような学びの環境を整えています。そういう意味では、ロバート・キーガン教授の考える教師像を超えています。

★そして、今さらに先生方は、コンテンツ、コンピテンシー、コンセプトを融合するコンセプトレンズを生徒1人ひとりが発見し活用できるような学びの環境を創ろうとしています。メタ認知のシステムの個別最適化と呼んでもいいかもしれません。メタ認知という言葉はよく使われるようになったのですが、まだ鏡だとかモニタリングだとかリフレクションだとか別の言葉で置き換えられ、イメージは描きやすくなったのですが、まだメタファー以上の解明はなされていないのが現実です。

★もしこのコンセプトレンズやメタ認知システムの言語化・可視化されれば、多くの生徒が複眼思考を持てるようになるでしょう。どんな状況下にあっても、サバイブできる野生の思考の個別最適化。これがあらゆる格差を解消していく一つの方法かもしれません。このコンセプトレンズの可視化を生成Aiを活用しながらPBL型授業をしていくことによって可能にしようとチャレンジする先生方が現れてきました。

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2025年6月22日 (日)

工学院の好奇心 感じて、動いて、夢になる

6月21日、工学院大学附属中学校は、学校説明会と同時開催で、小学生向けの「体験学習・部活動体験」を実施しました。即日記事が掲載。すごい発信力・表現力です!記事を読んで、やはり論より証拠、好奇心こそ自分を見つけ、仲間と未来を創るエネルギーだと感動。まさに工学院の教育環境は生徒自身が自分の中に好奇心を生み、感じて、動いて、夢になる未来への軌跡の物語を描ける力を、先生方が寄り添いながら共に歩いていくのだなあと、その感覚が伝わってきました。

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(写真は同校サイトから)

★記事を目次化するとこんな感じです。

 講座の内容

・サイエンス部:自分の口内細胞を顕微鏡で観察・撮影・印刷

・バドミントン部:部員の指導で打ち方体験、再来の小学生も参加

・ダンス部:音楽に合わせて振り付け体験、緊張が笑顔に変化

・英語×ロボット:ネイティブスピーカーの教師との英会話でレゴロボを製作&プレゼン

・理科:糸電話で音の伝わり方を実験、対話を通じて探究心が育まれる

・茶道部:お点前と上生菓子を体験、立礼式のデモも見学

・情報:中野校長のバーコードの仕組みを使って“情報を考える”授業

・デジタルクリエイター育成部:マイクラのアドオン作成とゲーム体験

今後の予定:

・9月6日(土)・10月18日(土)にも内容を変えて実施予定

・7月27日(日)には、小学3年生から参加できる「自由研究教室2025」(全28講座)を開催予定

★それにしても、「自分だけの発見」がすべての根底にあるのに気づき驚愕です。サイエンス部の自分の細胞を可視化するなんて、サイエンスの力でリフレクションすることができるとは!

★バトミントン部も、スポーツは自分のマインドをどうコントローるできるかがすぐに了解できるスポーツ。そして、コーチや仲間の支えは当然なのですが、先輩が小学生に同じ目線で対話している様子の写真が工学院らしいなあと。

★ダンス部の活動も、自分の力量を高め同時にチームワーク。協調性の中の自分の際立った力。しかも芸術性の魅力。人気の部活ですよね。

★英語×ロボットも、インターナショナルコースだけではなく、すべての生徒が英語とイノベーションを対話しながら学ぶ。レゴは個性があふれる表現ツールでもあります。

★理科は、糸電話。かなりの長距離でも、伝わる振動。つながりと同時に自分自身の聴覚にダイレクトに伝わってくる感覚は、すてきな気づきが多かったでしょう。デジタル環境があふれている工学院があえて、このリアル体験。体験による究極の感動ですね。

★茶道部の体験を設定するというのが、すばらしい。破格のグローバル教育を行っているからこそ、国際交流をしている海外の私立学校にはない空間です。そしてなんといってもアスリートにとって自己を見つめる道が生まれる空間でもあります。日本の教育を支える世界でもユニークな場です。さすが。

★中野校長自身による情報の授業。バーコードシステム体験。バーコードシステムは、かつては画一的なコントロール装置として警戒されていたときもありました。それは今の生成AIもそうです。情報の授業は、常に警戒される冒険がつきものです。そして、その冒険の向こうに、今やバーコードは個人の特徴を認定する公共社会にはなくてはならないシステムとして発展しています。社会課題への問いを生み出す宝庫が情報の授業です。

★デジタルクリエイター育成部。工学院アントレプレナーシップが生まれる拠点の1つです。教師の情報の研修も請け負えます。アントレは、自分の才能を拡張していく冒険精神が旺盛だから可能です。

★ウダウダ書きましたが、要は自分は何が好きか感じて、動いて、未来をみんなで創っていける学校。それが工学院です。FLAT!FREE! FUN!

★これからも、このようなイベントを開くそうです。ぜひ楽しみましょう。

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2025年6月19日 (木)

授業の時間と空間と道具と仲間と協働して世界が生まれる 生成AIもまた授業で新しい世界を生み出す

★今先生方と仲間と生成AIを活用しながらどんな授業ができるのか実践研究をしています。各教科の授業は、時間と空間が設定され学習道具が活用され教師と生徒、生徒同士の対話などがあって、それぞれの教科の世界が生徒1人ひとりに広がっています。ここに生成AIが加わると、どのような世界が広がるのか、ワクワクしながら毎回先生方と対話しています。

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★30年前の1995年から学内に徐々にパソコンが入ってきました。ようやくインターネットとつながり、ネットスケープなどのブラウザーも認知されるようになっていました。3.11を境に、SNSが学校にも入ってきました。パンデミックを体験してからは、学校に生徒1人1台のパソコンが学習ツールとして定着し、オンラインの空間学習も広がりました。そして、今授業の中に生成AIが導入され始めています。

★生成AIという道具は、授業の時間も空間も変容させます。そして、各教科の専門性と普段思いつかない社会や自然の事象を結びつけます。各教科の授業の世界を専門的知識の深さと異領域異分野の世界に広げます。

★世界が広がるという点では、今までの教科の授業と同じですが、その広がり方が縦横無尽だという点で優れていると思われます。

★しかし、本当にすごなと思うのは、一人ひとりの生徒が自分の感情、思考、行動という思考動の方法論=コツ=ものの見方・感じ方・考え方・表し方を言語化できるということです。

★従来の教科授業でも「振り返り」をし、この思考動の方法論を自分なりに気づく機会をつくりますが、実際にはそれができないで終わる授業が多いでしょう。また、振り返りをしても、コンテンツを理解したかどうか、どんなコンピテンシーが得意なのかなどの振り返りが多く、自分のものの見方・感じ方・考え方・表し方を言語化したり可視化したりするところまではいきません。

★いわゆる出来る生徒は、暗黙知としてそれを身体化させています。小中高の学びは、実はこの身体化トレーニングが中心です。ですから、これだと暗黙知を体得できた生徒とそうでない生徒の格差がうまれるのです。

★この格差をなくすために、身体化トレーニングを重ねていくのですが、すべての生徒が獲得できるというわけでないことは今までを顧みるとわかるでしょう。

★もし、すべての生徒が、自分なりの思考動の方法論を言語化・可視化できたらどうなるでしょう。素敵なことになるのは明らかです。

★今までも、ある人の方法論を言語化・可視化し、それを獲得できていない生徒にパターン学習的にトレーニングしてきたのですが、それではうまくいかないケースが多いのです。自分の内側から生まれてきた方法論ではないからです。生成AIはそれをサポートする革新的学びのツールです。

★個別最適化とは、この自分なりの方法論を見つけるということであるのかもしれません。そして、協働的学びとの一体化の目的とは、互いにそれぞれの方法論を磨き合う関係性を構築するということなのでしょう。それが生成AIの登場によって、可能性が大きく開けたのです。

★これができると、本来的な多様な価値観を尊重するというウェルビーイングな状態が生まれます。

★先生方と生徒と仲間と一緒に生成AIを悪用せず最適な活用をするように相互モニタリングしながら新しい授業をつくっている日々です。

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