PBL

2024年12月15日 (日)

2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功

GLICC Weekly EDU 第196回「富士見丘中学高等学校ーグローバルスタディから世界に羽ばたく」を拝見。いつもは、コメンテーターとして参加しているのですが、米国渡航のため飛行機の中にいたりしてそれがかなわなかったのですが、それがかえって客観的に見ることができ、改めて驚いたのです!というのは、グローバル教育を推進していくと、たいていの場合、学習指導要領にプラスアルファーしていく傾向があるし、グローバルクラスとそうでないクラスがセパレートされる傾向もあるのですが、富士見丘は、学習指導要領そのものをグローバル教育化しているのです。ですから、帰国生ばかりか、国内の一般生全員が同校の6カ年一貫教育、もしくは高校3年の教育の中で、グローバルコンピテンシーを身につけていけるのです。

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★中学のクラスや高校のコース分けは、4種類です。英語4技能のコンピテンシーをCEFR基準で分けているだけです。便宜上わかりやすいので、英検のスコアでわけていますが、学習指導要領の教科のコンテンツはどのクラス/コースも変わらないのです。

★このCEFR基準で分けるということは、4技能のコンピテンシーで分けますから、英語の技能面で分けているのではないのです。CEFR基準というのは、多言語の共通コンピテンシーの基準ですから、英語であれ、日本語であれ、スペイン語であれ、フランス語であれ、何語であれ、コンテンツを分析したり、統合したり、批判したり、創造したりする思考力・判断力・表現力の非認知能力・認知能力の発達段階は同じなのです。

★ですから、学習指導要領のコンテンツへの学びのアプローチを4つの段階に分けて学んでいけるのです。この包括的思考力を日本語と英語の両面で学んでいくというのです。富士見丘生全員がそうなのです。日本語>英語→日本語≥英語→日本語≒英語→日本語=英語というバイリンガルのコンピテンシーのバランスが最終的にC1日本語=C1英語以上になっていくという感じなのです。

★ですから、日本語≥英語の言語能力で入学してきても、日本語≦英語の言語能力で入学してきても最終的にC1日本語=C1英語以上のバイリンガルになって卒業するのです。

★そのために日本の優れた体系化された学習指導要領のコンテンツをそのまま、このグローバルコンピテンシーのグラデーションに合わせて個別最適化したグローバル教育化へのトランスフォーメンションに成功しているのです。

★4つにクラスやコースの編成上分けますが、実際には、先生が個別最適化したコーチングさながらの指導をしていきます。

★「経験→探究→ハイブリッドフィードバックシステム」というPBL型プロセス循環が、すべての教科の授業に埋め込まれています。それがコースに応じて英語活用量が増えていくのです。

★探究のプロセスでは、多様な高大連携のロールモデルも使われています。ハイブリッドフィードバックは、オンラインやアプリを使ったり対面のチュータリング方式を使ったり、両方が巧みなコンビネーションで使われています。そして、このフィードバックの特色は、エンパワーメントエバリュエーション型なので、自信をもって自ら改善して進める評価システムです。包括的評価のみならず形成的評価の両方が活用されています。

★英語教育ではなく、バイリンガルな包括的な教育を行っていると言っても過言ではありません。

★ですから、数学もSATーMATHなど英語で数学も行われています。

★生徒1人ひとりのキャリアデザインをいっしょに創っていくチュータリングやコーチングが基本です。

★こんなふうに、私の独断と偏見で一般化してみました。このような富士見丘の教育方法のディスプリンは独特ですが、あくまで学習指導要領をベースにしているところが、インターナショナルスクールやIBスクールとは大きく違うところです。特別な語学力を持っている生徒のための学校ではないのです。日本のグローバル教育のスーパーロールモデルですが、おそらく他校では真似ができないでしょう。

★それをいかにして実現したのか?その具体的な教育実践は、ぜひ動画をご覧ください。

★とにかく、ほかのグローバル教育は、かなり外部団体の助けを借りながら行うのですが、富士見丘は日本人の教師であれ外国人の教師であれ、富士見丘の内製型・内生型教師なのです。このような教師陣を揃えるのは、現状の日本の教師の育成環境上ほぼ無理だからです。この富士見丘の教員養成、つまり人的資本形成のシステムについては、いつかお聞きしてみたいと思います。

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2024年12月14日 (土)

八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育

本日、八雲学園は英語祭を行っています。この行事は、文化祭と同じように八雲学園の総合的な教育の集大成ともいえます。もちろん、英語の八雲の象徴であり、広く中学入試市場に知れ渡っています。中1と中2の英語劇がメインですが、そこには音楽があり、ミュージカルがあり、9カ月プログラムの報告があり、ラウンドスクエアの国際会議参加の報告もあります。クリスマスシーズンを味わえるイルミネーションもあります。

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(八雲レジデンスからの夜景、八雲生が訪れるサンタバーバラの街のイルミネーション、そして八雲学園のクリスマスイルミネーション)

★もともとケイトスクールとの姉妹校になったところから、革新的英語教育が展開したところから始まっています。その集大成のパフォーマンスとして、文化祭や英語祭を通して英語劇を行ってきました。米国のエスタブリッシュスクールでは、ドラマエデュケーションは重要な教育です。

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★ケイトスクールも例外ではなく、劇場施設もあるぐらいです。米国の名門大学によっては、書類の中に自分の通った学校の施設を説明する箇所があるところが多いのです。そのためというわけではないでしょうが、米国のスタブリッシュスクールは、テニスコートやサッカー場、馬術場などを記載したり、劇場があることを記載するところがあったりします。

★リベラルアーツをきちんと学んできたことが明快に伝わるわけです。ケイトスクールはスポーツクラブに入るのは必須です。体育はリベラルアーツの重要なポイントです。劇場もリベラルアーツのレトリックという大事な項目を象徴しています。

★日本の学習指導要領では、こういう体育や演劇に対する明確な意味を表現できていないので、八雲学園がこのようなリベラルアーツを十分すぎるぐらい取り入れていることに大学で教育を研究する学識者は気づけないのかもしれません。もったいないですね。ここにあなたがたが求める教育のエッセンスがあるのに。

★そして、イエール大学との毎年の国際音楽交流で、ミュージカル部であるグリーが結成されました。最初はサークルから始まりましたが、すぐに大人気になり部活に昇格して今も人気の部活です。

★さらに、もはや説明するまでもないですが、UCサンタバーバラと八雲レジデンスとサンタバーバラの都市を拠点に9カ月プログラムが結実しています。

★このプログラムは、もちろん英語教育の象徴ですが、サンタバーバラが同時にITのスタートアップで成功している方々居住しています。ちょっと北に行けばシリコンバレーですからね。実際UC系大学の中でも理系の研究で有名なのがサンタバーバラです。

★共学になって、当然サイエンスやテクノロジー、エンジニアリングに興味をもつ生徒がどんどん増えていくことでしょう。

★この英語祭における英語劇は、演劇の探究であると同時に、音楽の探究でもあります。文学的言語能力の探究でもあり、舞台芸術の探究でもありましょう。グローバルでSTEAM教育、特にA(アーツとリベラルアーツの両方)の教育、探究教育を通して生徒が身につけた全人的な総合力のパフォーマンス祭です。

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2024年12月12日 (木)

八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生

★八雲学園の3カ月留学には、毎年16人くらい八雲生は参加します。3か月の中に夏休みの期間をいれます。すると、その期間、UCサンタバーバラの学生寮を使い、同大学のキャンパスで、同大学の教授に英語という言語能力や言語文化を対話型で学びます。その他の期間は、サンタバーバラにある八雲レジデンスを使ったり、ホームステイなどを組み合わせます。

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★最近、高大連携がトレンドですが、八雲学園は、夏休み1カ月みっちりUCサンタバーバラで学ぶわけですから、随分前から海外大学と高大連携を行っているといえます。イエール大学とも国際音楽交流を毎年行っていて、これも高大連携のバリエーションの1つでしょう。

★このような日本の大学では考えられない、多様性が維持され、学部レべルでも研究への道をしっかり進めていく学生との交流が、刺激的でないはずがありません。海外大学に進む八雲生が爆増しているのは、そのような海外大学との高大連携が影響しているのは間違いないでしょう。

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★UC系の大学は、どこでも学生が真剣にそして大量の論文を読み漁り、理系も本格的な実験をしながら大学生活を過ごします。ラウンジでランチをとりながら、ラップトップをたたきながら、学んでいます。対話もしていますが、知的好奇心が溢れた感じです。

★実に羨ましいですね。自分の子どももUC系レベルの大学に留学させたいと思いますよね。

★でも、学費と寮費など生活費を合わせると年間1000万円はかかります。一般にはとても無理だと思われがちです。スカラーシップもありますから、挑戦すると必死に立ち臨みます。

★そして、実はご家族の皆さんも俄然頑張るケースが増えているのです。中学入試の準備をするときから、八雲に入学して6年後、海外大学を想定して、自分たちはどんな仕事をするのか、あるいは起業するのか、あるいは投資するのか、やはり必死に考え行動します。

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★偏差値競争などすっとばして、UC系大学レベルの海外大学を想定する中期のライフプランを立てると楽しいのです。それに、そこを目指して頑張っていると、進路変更しても、上智やICUなどもちろん早稲田や慶応なども自ずと開けてきます。そもそもそのような生徒を受け入れられるようにこれらの大学は入試改革をどんどん行っているのです。

★海外大学は、知性や感性、そして包括的脳神経身体系が豊かに育っていなければ合格は難しいのですが、こんな全人教育を経験できる八雲の6年間なら、中学受験競争で燃え尽きてしまうという心配もないわけです。他と比べて自分を考えるのではなく、自分の中の自分を鍛えていくのですから。

★八雲学園のような海外大学との高大連携を行う私立学校が増えてくれば、そこで学ぶ生徒の能力だけではなく、家庭の経済状況も向上します。日本の経済を支えることになります。

★中学受験のデメリットばかり、メディアは取り挙げがちですが、そんな雰囲気をポジティブに転換する方法を考案してもらいたいものです。ゴーレム効果をピグマリオン効果にシフトしたいですね!八雲学園に大いに学びましょう。

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工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味

田中教頭のインタビュー第2弾は、受験生を対象しているため、わかりやすく読みやすいけれど、示唆される部分もさりげなく盛り込まれています。

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(工学院×文大杉並×和洋九段のIBL型対話WSで)

★たとえば、こんな箇所です。

 どんなに静かな生徒でも、内に秘めた思考は必ずあるので、”伝えるべき時に伝えられるように”していく。逆に発語の多い生徒は他者の理解を得るためにまずは思考をまとめる力が必要かもしれません。それぞれに応じた力をつけていき、思考を拡げる機会を増やすこと、グッと一歩を踏み出す勇気を持たせることが私たちの役目です。

★工学院は、IBLやPBL型の授業をしています。したがって、心理的安全な対話の環境をデザインし、生徒1人ひとりがオープンマインドを生み出せるようにしています。

★しかし、このオープンマインドは、心理的状態だけではなく、オープンマインデッドネスというその心理的な受容と偏見を持たない公平な態度をとる様子をしっかり見守っている様子がこの箇所には書かれています。

★開放的というのは、笑顔で、言いたいことを何でも言えることではあるのですが、そのような態度はオープンマインドを生み出す多様な態度の一つに過ぎないのだと田中教頭は語っているのです。というか実践しているのです。

★ケンブリッジインターナショナルスクール認定校ですから、イギリスの教育もしっかりと受容しているのが工学院です。日本の小仲学校だと手を挙げてよく発言する生徒は積極的で、内向的で熟慮している生徒は消極的だと評価しがちなのですが、イギリスの教育では、そこは議論され、内向的だけれどオープンマインデッドネスとしての態度をとることができないわけではないことを理解しているわけです。

★オープンとは、快活であるなしにかかわらず、公平な眼差しを持っている自分軸の視座のことを、田中教頭は示唆しているのです。そして、そのうえで、GROWTH MINDSETを生成しているのです。グッと一歩生み出す勇気というGRITもですね。

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2024年11月26日 (火)

聖書・宗教の授業・礼拝 聖ドミニコ学園・聖学院・桜美林・恵泉・湘南白百合・女子学院・普連土など 自己を見つめ世界の痛みに向き合い対話し言葉を紡ぐ

★キリスト教系の学校では、聖書の授業とか宗教の授業とか、毎朝の礼拝などがあります。偉い学者が聖書の解釈について聖書学的あるいは神学的に講ずる聖書の授業や宗教の授業もあります。受験生・保護者の皆さんのイメージだと、なんだか厳かで眠たそうな授業と思うかもしれません。実際そういうケースも少なくありません。

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(聖ドミニコ学園:左手は校舎、右手は聖堂)

★ところが、聖ドミニコ学園、聖学院、桜美林、恵泉、湘南白百合、女子学院、普連土などの聖書の授業、宗教の授業、礼拝は、実にロゴスの活動が多いのです。

★もともとマックス・ウェーバーやシュンペーターは資本主義経済の光の部分をキリスト教の教えや修道院の活動に見出しています。最近の金融教育で、贈与の問題などとか共助の問題とか議論されていますが、これも聖書の中にあるのです。商品価格の設定がどうして決まるのか、そのことについてアリストテレスと聖書を結合して論じているトマス・アクイナスは欧米ではよく引き合いに出されます。市場の規制と緩和の議論もここに由来しています。ICT分野におけるコモンズの悲劇についての話も聖書をきっかけに考えることができます。

★法律だって聖書から由来していることが多く、京都大学や慶應義塾大学の法学部の論述式の問題で、自然法と実定法の違いや共通点を具体的な事例で考える問題が出題される時もありますが、自然法論の源は、啓蒙思想だけではなく聖書だったりします。欧米では、サマリア法というのがありますね。パンデミックでメディアで取り上げられたトリアージの解決のルールですが、これも聖書の中の善きサマリア人の話から由来しています。

★教育でいえば、ファシリテーター論や才能開発の話やPBLで使われる小さく始めて大きく育てる方法論も聖書に由来します。

★自然と社会と精神のサーキュレーションについても実はそうなのです。ぶどうの木のたとえ話ですね。

★ですから、先に挙げた学校の聖書や宗教の授業は、社会の問題や世界の痛みを考えるきっかけを聖書の文言から導き出すPBL型が多いのです。はじめにロゴスありきという聖句を大切にするし、タラントの話も重要です。言葉とアクションと社会貢献を身近な問題に結びつけ、世界を変えるにはどうしたらよいのか。そもそも自分を見つめ、自分のミッションやビジョンを生み出すリフレクションはこのような授業や礼拝が大きな役割を果たしています。

★キリスト教に限らず、仏教やイスラム教などはグローバル教育におけるロゴスとしての智慧の基礎です。AI時代にあって、この智慧は大切です。倫理の基礎でもあります。本来倫理とはウェルビーイングを生み出す生き様を規定するアイデアの源泉です。

★よき宗教や聖書の授業に巡り会えた生徒の内省的成長は本当にウェルビーイングです。

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2024年11月24日 (日)

2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる

★和洋九段女子の先生方11人が、生成AIを活用して生徒の才能が豊かになる勉強会を開始しました。管理職である中込校長、新井教頭、本多教頭も参加しているのが本気度を示しています。主幹の水野先生がファシリテーター役を果たしていました。私も友情助っ人という感じで、参加させて頂きました。

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★生成AIに何かをつくらせるというやりかたではなく、論理力とか思考力とか知識のつながりとか創造力とかが豊かになっていく使い方で、一般に論じられている使い方とは違う展開でした。要するにプロンプトエンジニアリングの方法が違います。

★一般には、プロンプトの条件式をどうするかという話になりますが、もちろんそれは変わらないのですが、それだとその条件が限定的です。限定して活用するのですから、それは当たり前なのですが、それだとファクトの整理にはいいのですが、世界を広げることにはなりません。

★とはいえ、何でもかんでもいいとなると、平均的なおのができておしまいです。組織内で共有する告知的な文章はそれでよいでしょうが、生徒の才能がエンリッチメントになる方法論を和洋九段女子の先生方は、実験しながら対話しながら行っていました。

★和洋九段女子はPBL授業であふれています。したがって、今回の勉強会もそのPBL授業のストーリーをいつものように展開していくものでした。さすが!です。

★プロンプトの書き方は、実にシンプルなもので、生徒の才能が豊かになるきっかけ分析(生成AIが才能を引き出すことはできないのですが、そのトリガーになる整理は得意なのです)を行う問いかけをしていました。

★一般的には詳細に条件を書かなくてはならないのですが、二つのキーワードをつなげた魔法のワンフレーズを活用するだけでいけるのです。それが何であるかは、特許にかかわることもあり、ここでは示せませんが、<才能トリガーワード>でした。

★この才能トリガーワードは、限定しながらも拡張するという両義的な言葉です。

★生成AIは言語機能が得意ですから、それを言語哲学を土台に、活用していくと言語と思考一元論である欧米的な世界を生徒は観ることができます。同時に和洋九段女子は日本の文化をしっかり学べるので、九鬼周造的な言葉と感情を結びつける言語の世界も学べます。

★そのような欧米と日本の言語観を新たに融合するのは、新井教頭の言葉を使いながら、その過程を超越して感情に向き合うマインドフルネスの活用も徐々に広がっている和洋九段女子だからこそという気づきもありました。

★生成AIを活用することで新しい言語活動も広がっていくことでしょう。柔らかい和洋九段女子のSTEAM教育のワンシーンも観ることができました。

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2024年11月23日 (土)

聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>

★聖学院の生徒は、気持ちの良い感情を生み出す意識を自分の内側にもてるように成長していきます。もちろん、いつもいつも快い気持ちがあふれているわけではありません。人間は喜怒哀楽に象徴される感情以上に多様な感情の塊です。この自分の中に湧いてくる、ある時は嵐のような感情を受け入れ気持ちの良い感情に転換する意識が生まれてくる学校。それが聖学院です。そして、この意識こそOnly One for Othersというコアな精神です。この<noble spirit>が軸にあるからこそ、いかなる困難(それは外部環境からやってくるばかりではなく、自分の内側にもあるのです)にも最初は恐れながらも向き合い、立ち臨んでいくわけです。そのストーリーが聖学院の生徒1人ひとりの成長物語を描いていきます。

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★この<noble spirit>の軸は、毎朝の礼拝と聖書の授業によって構築されていきます。たとえていえば、空高くそびえるチャペルの十字架が礼拝で、命の泉を生み出す噴水が聖書の授業のような構図になっています。

★礼拝では、校長先生が中心となって、聖書の意味を生徒の内面に問いかけます。その問いは本当のところをいえば神学的ですが、一般の人にとっては哲学的だったり人類学的な問いでしょう。身近な問いですが、大きな根源的な問いです。

★そして、聖書の時間で、その根源的な問いが、聖書がリアルな世界で生きている具体的状況をリサーチしながら、自分事とし、いかに解決できるのか内省し、語り合っていきます。内省にも語り合いにもロゴスの対話が行われています。

★おもしろいことに、聖書解釈学ではなく、生徒は、ICTやアプリを活用して調べたり、編集したりしながら同時にリアルな対話もしていきます。最近では生徒は生成AIを自らのもう一人のパートナーとして対話しながらかつ仲間とも対話していきます。

★根源的な問いの対話が溢れているのが聖学院の聖書の時間です。本来は聖書の授業を担当している先生は牧師でもありますから、ヘルメノイティークなアプローチなのでしょうが、一般には外から見ていると哲学的だったり文化人類学的だったりバイオ倫理だったり、そんな感じに見えます。

★大事なことは、そもそも教科横断を意識しなくても、あらゆる教科や学問を超えて存在の学びを生徒と行っているのというのが聖学院の聖書の授業だと思うのです。したがって、礼拝ー聖書の授業という<noble spirit>軸は聖学院のすべての教育活動と相互に関連するのです。インタラクティブというよりトランザクションという感じですね。

★そしてこの<noble spirit>はOnly One for Othersとして具現化して生徒は経験し、考え、共感を広めていく活動をしていきます。感情を高邁な精神に昇華する「思」いとロゴスとしての「考」え。この二つのフュージョンが聖学院の「思考」の内包する意味でしょう。

★聖学院を訪れると、エーミール・シンクレールのように自己成長を求める少年とそれを導く友人マックス・デミアンがストーリーを織りなしているヘッセの小説をいつも思い浮かべます。第一次世界大戦に巻き込まれる学校の中で、自分とは何か、自分は何ができるのか、精神分析的アプローチとキリスト教文化と哲学とヘッセの「思想」がストーリーを編集しています。戦争という社会課題は、人間の生み出すあまりに凄まじく途方に暮れる困難性です。それにいかに立ち臨むのか、そんなマックス・デミアンの姿を追い求めながらも、憧憬ではなく自分を見出していくシンクレール。結論のない小説ですが、それがゆえに、究極の困難性に向き合う少年たちの生き様のスピリチュアリティに時代を超えて共感し、何もできない自分にそれでも勇気を出そうという気持ちを湧かせてくれます。

★聖学院は男子生徒がそんな自己成長の軌跡を描き続けられる奇跡の男子校です。

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2024年11月22日 (金)

聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化

★聖学院は、仕組み化が巧です。同校の教育活動すべてをつなぐものは、Only One for OthersというトリプルOのマインドですが、そのマインドは見えないものですから、実感するには仕組み化が大切です。その象徴が思考力入試やGICなのですが、それはシンボル的存在ですから、そのシンボルの背景にはブドウの木のごとき豊穣な循環があります。しかし、それはなかなか見えないですね。私はラッキーでした。

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★というのは、たくさんの授業を見ているうちに、国語と社会がSTEAMのSやMそしてAのレベルの授業を行っているのを目撃したからです。

★理科や数学は、ある意味教科書の枠内だとしても、授業は数理関連の学問的理論を使っています。教科書を超えるというのは、教科書にある問題以上に難しい問題を解くというということではなく、数学的科学的理論に結びつくということです。

★聖学院の理科や数学はそのレベルに到達するので、GICのSTEAMが破格のプログラムを展開できるのは、そもそもその土壌が中学から日常化しているということです。

★一方、国語や社会は、なかなか人文科学や社会科学の理論的リソースを活用するところまではいきません。日常言語で理解が足りるように教科書ができているからです。

★哲学や社会学、人類学など文系の学問的見識が使われたとしたら、どうなるでしょう?そうです。理科や数学のレベルになるのです。

★聖学院の国語は、言語哲学や文化人類的見識をダイレクトに授業で展開する優れた教師がいます。社会には、政治経済学や社会学、経営学、文化人類学などの見識をやはりダイレクトに授業に結びつけることができる優れた教師がいます。

★英語は、言語学の意味論や語用論を駆使したオールイングリッシュ授業が展開しています。ネイティブスピーカーだけではなく、日本人の英語の先生も同様です。ですが、驚いたことに音楽の教師も英語が得意な国際生には、英語で授業をサポートしてあげてもいるのです。

★もちろん、知識や論理中心の授業もあります。しかし、それはこのような学問的な授業が必要とする知識や論理的思考を供給する重要な役割を担っています。この授業間の連携循環が聖学院の教育活動の仕組み化です。そしてだからこそOnly Onr for Othersが生成されるのです。

★が、これだけではまだ聖学院独自のOnly Onr for Othersが生まれてはきません。

★ここまでだと。他校でもできる可能性がありますね。しかし、聖学院でしか生まれてこない独自のOnly One For Othersが生まれる仕組みがあるのです。

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聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている

★聖学院のたくさんの授業を見学する機会をいただきました。すべての授業が有機的につながっていてあるいは宇宙を構成していて驚きました。最初見学しているときは、それぞれの授業で生徒が深く考える様子に感動していたのですが、最後に聖書の授業を拝見し、ここれはあ!っと思ったのです。

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★つまり、全部がつながっているのです。現在、新学習指導要領を押しすすめている日本中の学校で、教科と探究をつなぐには?教科横断はいかにしたら可能か?文理融合はできるのか?STEAMやグローバルはどこまで可能なのか?生成AIの活用の仕方は?など共通するそして重要な問いが生まれています。ですから、それを共に考えるワークショップや研修の企画運営もしているのですが、すべての回答やヒントが聖学院にあったのです。

 

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2024年11月14日 (木)

2025年中学入試動向(3)文大杉並 今年も人気!

★文化学園大学杉並の11月20日の「第1回国内帰国生入試」の応募が締め切られました。同校サイトを見ると驚きです。男女合わせて77名が出願しています。前年対比202.6%です。

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★DD(ダブルディプロマコース)の世界的にも質の高い教育のエッセンスを、文大杉並全体に浸透させているところが、仮にDDコースに進まないとしても恩恵に浴することができる学校です。

★しかもIBを中心とするインターナショナルスクールとは違い、部活や多様な研修活動、体験が多いことと、何よりSTEAM教育や探究教育も充実していて、生徒が自分のやりたいことを学校の中で大きく育てていけるのも魅力です。

★この出願者数の情報を提供していただいた入試広報部長の西田真志先生も授業や探究のベースになっているPBLのファシリテーターの達人です。

★実は、人気のある学校の広報の先生の特徴は、西田先生のようにPBLが得意だったり、STEAMなどの最先端の教育にチャレンジしている先生が多いのです。

★このような先生方の共通点は、生徒が学びの中で知のケミストリーを生み出すファシリテーションが巧ということです。おそらく、学校説明会で出会った受験生や保護者もそのような先生のパッションと魅力に共感し感動するのでしょう。人気の秘密はここにあります。

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