PBL

2023年12月 5日 (火)

今後の中高における生成AI活用の重要性

★「授業に生成AI」大学の3割開始、使う力育む 日経調査(日本経済新聞 2023年12月2日 5:00)」に次のようなリード文がありました。「日経新聞が9〜10月に実施した全国の大学学長へのアンケートで、学部教育での生成AI活用状況を尋ねた。31%の164校が活用中、11%の61校が活用予定、検討中や未定の大学が43%の224校あった。未活用や予定がない大学は13%の68校だった。」

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★この勢いは止まらないでしょう。「収穫加速の法則(進化の速度は本質的に加速度を増していく)」さながら、生成AIの大学の授業での活用は指数関数的に進化するはずです。

★となると、中高でも生成AIのリスクを回避するルール作りをしながらも、積極的に創意工夫して活用していく今の流れはもっと強くなるでしょう。

★そして、中高でこの生成AIを活用することの意味は2つあります。

1. 本質的な学びを多くの生徒に体験させることができる。

今、プロンプトエンジニアリングという、生成AIに適切な問いを出し続けることによって生成AIから優れたプロダクトを出させるスキルを学ぶ研修が広がっています。これは、結局学びの本質である「問いをつくる」スキルをトレーニングすることになると認識が広まることでしょう。すでにこの動きをしている中高もあります。

最近「探究」「哲学対話」が注目されていますが、そこでも「問いをつくる」ことの重要性が説かれています。

この「問いづくり」のco副操縦士として生徒が生成AIと「問い合う」ことによって、思考力を鍛えていけると、最近は認識されています。

企業では、「プロンプティ」というプロンプトエンジニアリングのマニュアルのようなサイトをつくってそれを運営するところも出てきました。このような流れは教育においても広がるでしょう。

2. 実益的な話:総合型選抜、情報Ⅰで生成AIについて問われることになる。

大学の授業で生成AIが活用されるよういなると、大学入試で、特に総合型選抜や情報Ⅰで、生成AIについて問われるようになります。

また、今どの学校でも取り組もうとしているのが、推薦書を生成AIと創ることによって膨大な推薦書づくりの時間を圧縮し、その分生徒の面談や口頭試問の指導に時間を割こうという動きがでています。いやすでにそういう動きがでてきています。

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2024年中学入試(07)今年も工学院は人気 共感的コミュニケーションの可視化 生成AIだからこそ

★工学院は、今年も人気ですが、たぶん量というより質的人気に変換していると思います。というのは、工学院の先生方と対話をしていると、その質に磨きがかかっていて、そこに参加しているだけでwell-beingな雰囲気に包まれるからです。

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★中野校長の3F(フラット・フリー・フェア)を作り出す雰囲気が、たとえば、教務主任田中歩先生の共感的コミュニケーションを周りに感化していく相乗効果が生まれています。

★この共感的コミュニケーションは、3Fで話し合っていると心理的安心が維持されるというのが一般的な理解でしょう。しかし、そのコンフォートゾーンに閉じこもっているといつのまにか壁を周りにつくってしまうというリスクもあります。

★抑圧的コミュニケーションは、リスクではなく、すでにその状態が心理的クライシスを生み出しているからとてもまずいので、これに対して3Fで話し合う共感的コミュニケーションはクライシスを回避できます。しかし、いつのまにかそのクライシスが訪れるリスクを避けられないのです。

★ところが、田中歩先生は、中野校長と問い合いながら、回答はすぐには出さないのですが、機が熟すと話し合って問題解決をしていきます。そして、皆が腑に落ちる分かち合いをリフレクションという形で循環していきます。

★だから、教師も生徒も冒険心がふくらみます。実際に冒険に行って成功しても失敗してもまた共感的コミュニケーションのコミュニティに戻ってきて、成功者は鼻を膨らませてその成果をプレゼンし、みなにたたえられます。失敗者は、事の顛末を打ち明け、皆に分かち合ってもらい、再び勇気を取り戻します。

★このような世界を創る対話=共感的コミュニケーションが工学院では回転しているのです。

★これについては、shuTOMO12月号で書きましたが、そのときには、この図は思いつかなかったのです。書き上げた後、田中歩先生と対話をしていたら、歩先生が生成AIの効用の話と吉田幸司先生の哲学シンキングと哲学思考の2冊を読んで、自身の対話をモニタリングしているというのをお聞きして、そこかあ~と図が降った来たのです。

★いつも刺激を歩先生!ありがとうございます!これ広めていくのをお手伝いさせてください!

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2023年12月 4日 (月)

2024年中学入試(06)湘南白百合の海外大学進学準備教育

★首都圏の中学入試は、帰国生入試から始まります。したがって、すでに静かに激しく中学入試は開幕しています。湘南白百合も帰国生を受け入れる学校として有名です。しかし、同校を選ぶ帰国生は、少し志向性が教養を重んじる傾向にあるかもしれません。多くの帰国生はリバタリアニズムの傾向があります。J.S.ミルやハイエクの政治経済志向性ですね。ところが湘南白百合はミッションスクールとして利他主義的価値観がベースにある家庭環境かもしれません。今まではリバタリアン主義が政治経済の中心でしたが、世界の多様なリスク回避のためにこのケアをベースとした利他主義的政治経済発想も注目されています。SDGsの動きはまさにそうです。

【帰国生の学校選択志向性4タイプ】

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★最近では、東大の帰国生対象の入試問題(帰国生対象だから一般的には知られていない)では、グローバル経済の格差を生み出す原因を具体的に分析せよ、そのうえで、グローバル経済でも格差を生まないということは可能なのか考察せよという小論文の問題を出題しているぐらいです。

★それはともあれ、湘南白百合は、帰国生の学校選択志向性のタイプとしてはAに相当します。どのタイプがよいのかということはまったくありません。あくまで受験生の志向性の話です。

★それにきっちり4タイプにわけられません。AとBは共通する部分も多いでしょう。また、Cにあてはまる学校は少ないと思います。

★Aタイプの興味深いことは、同校の米国のリベラルアーツ大学に進学したOGのロングインタビューをご覧になっていただければ了解できると思います。高2まで医学部に向かって学んでいたのが、高3になってシアターアートを学びに米国に行くと決めるのです。日本でシアターアートを学ぶというとすぐに俳優を目指すのかとなりますが、そんなことはないのです。

★ダンスやドラマの歴史や文化人類的見方など、リベラルアーツ的なアプローチをするわけです。その広がりと深さは、湘南白百合のグローバルな探究プログラムにうまく接続していて、帰国生から見たら、湘南白百合はグローバルスクールとして自然体の佇まいを感じるでしょう。

★それにしてもそのOGは、高3になってから海外大学に行くことを決めてハイレベル英語を学んでいくのですが、一気にCEFRでB2(英検で行けば準1級)レベルのIELTSのスコアをとってしまうのですから、湘南白百合のグローバル教育の底力はすさまじいですね。

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2023年12月 3日 (日)

2024年中学入試(05)小泉信三賞が認める富士見丘の高校生活

★12月1日、第48回小泉信三賞全国高校小論文コンテストの審査結果が発表されました。その2位に富士見丘の高2の宮台さんが栄光を手にしました。このコンテストは、もはや説明する必要がないほど有名ですね。今回宮台さんが2位として認められたことは、実は人生の中で高校時代のあるべき姿の環境として富士見丘が抜群によいのだということも示唆しているのです。

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(写真は、慶應義塾大学サイトから)

★というのも、今回の課題は以下の4つで、そこから選択して6000字から8000字もの長文の論文を書くのです。宮台さんは、3を選びました。

1.物語の力・声の力
2.社会の中の格差
3.人生の中で高校時代はどうあるべきか
4.フクシマ(Fukushima)
5.学問×AI×福澤諭吉

★上記の5つのうち3以外は、個人研究に終始してもできるのですが、3は自分以外に高校の教師、仲間、環境などすべての自分とのリアルな関係性をベースにしなければ書けないので、なかなかハードルが高いはずです。なぜかというと、論文である限り、どこかメタ認知的視点で書く必要があります。

★しかし、3のテーマは、あまりに身近で日々のリアルな生活の中での話ですから、メタ的に俯瞰する視点をもつのは困難です。よほど多角的な視点を持っていなければ6000字以上も書けないでしょう。したがって、それだけ富士見丘の高校生活の時間というのは、宮台さんにとって日々多次元であるはずなのです。

★中1から始まる「個人探究」、中3からはじまるプロジェクト、高1から始まるゼミナール形式のプロジェクト、多様な海外研修やWWLやSGHのネットワーク校との知の祭典など他校では経験できないような多次元の経験がつまっている密度の濃い中高時代の環境をデザインしているのが富士見丘です。

★宮台さんを含め今回の受賞者は、次の通りです。


【小泉信三賞】
浦上 真緒(うらかみ まお)栃木県/栃木県立宇都宮女子高等学校1年【選択課題:5】
「『表層的クリエイティブ』からの脱却~『令和時代の実学』を問う~」

【次席】
宮台 はびる(みやだい はびる)東京都/私立富士見丘高等学校2年【選択課題:3】
「『時』を捉え、『時』を紡ぐ」

【佳作】(五十音順)
青山 直樹(あおやま なおき)東京都/私立海城高等学校1年【選択課題:2】
「若者の貧困への考察 -『官民共同』を通しての解決へ-」

福井 愛朝(ふくい まあさ)千葉県/私立市川高等学校3年【選択課題:1】
「希望の物語、つなぐ声」

宮田 康生(みやた こうき)東京都/私立ドルトン東京学園高等部2年【選択課題:4】
「原発事故を踏まえた福島から考える日本のエネルギーの在り方」

★それにしても1位と2位は女子校の生徒です。世界の先進諸国では共学がある意味常識かもしれません。しかし、まだまだ日本では女性の社会進出にはガラスの天井があります。その中で、今回の結果は、希望がもてますね。

★宮台さんは、この日本のまだまだ女性に対するアンコンシャスバイアスがある社会構造にあって、それを打破する叡智を学べる女子校富士見丘であるべき高校時代を過ごしているのでしょう。日本における女子校の役割はまだまだこれからです。それを宮台さんは証明していると思います。おめでとうございます。

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2024年中学入試(04)サレジアン国際学園世田谷 画期的な「国際学園」

★サレジアン国際学園世田谷の教頭 小西恒先生、教務部長 村井純先生、インターナショナル推進部長 上田かおり先生からZoom上でお話をお聴きすることができました。その時の模様は、<GLICC Weekly EDU 第153回「サレジアン国際学園世田谷ー世界市民力の育成」>で視聴できます。ぜひご覧ください。

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★今回はっきりしたことは、「国際学園」というのは、私立公立問わず日本中にいっぱいあります。その中で、最も先鋭的なそして海外大学進学でも相当な実績を出している「三田国際学園」に最も近い教育を行っているのがサレジアン国際学園世田谷だということです。

★ですから、三田国際と共通した教育の質や効果を生み出すことは間違いありません。しかし、「サレジアン」ですから創設者ドン・ボスコの精神を中心としたカトリック精神がベースです。

★三田国際は、日本の私学人が創設していますから、両校の生徒のメンタルモデルに影響する価値観が違います。

★サンデル教授なら、三田国際を設立した私学人はJ.S.ミルやハイエクに代表されるリバタリアニズム的民主主義的メンタルモデルかもしれない。一方サレジアンは、利他主義的民主主義のメンタルモノデル、つまり共同体主義(コミュニタリアニズム)的なメンタルモデルの影響を生徒は受けるだろうと。

★日本のミッションスクールではない多くの私立学校は、その創設者をたどるとどちらかというとヨーロッパ啓蒙主義か英米功利主義的な理念に基づいています。

★1985年以降中学受験がどんどん拡大してきたその時代のエンジンは新自由主義経済が驀進していましたから、ヨーロッパ啓蒙主義や英米功利主義は、そのデメリットを問題解決しながら、中学受験の流れを創りました。ミッションスクールの中でも、プロテスタントスクールは、もともとマックス・ウェバ―の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義」にあるように、このような経済の流れに親和性があったと思います。

★ところが、カトリック学校は、利他主義的ですから新自由主義的な貧困格差を生み出す流れに控えめでした。それがゆえに、徐々に人気が失われていきました。そのために、そこを脱するために幾つかのカトリック学校は、東大にたくさんいれることによって、それを盾にカトリック教育を持続可能にしようとしました。しかし、東大の定員は3100人くらいなので、そこに合格させる教育にはおのずと限界があります。カトリック学校の中で人気格差がついてしまったのです。

★しかしながら、2011年の3・11以降、この新自由主義的経済が貧困格差をあまりに生み出してしまったことに私たちは気づきました。そしてそのような流れが徐々に拡大してきたわけです。今では、あの開成でさえも東大の合格者数で学校を評価する時代は終焉したのだと語るようになってきました。つまり、その背景にはSDGsを中心にOne earthの感覚がグローバルリーダーの価値観になってきたということでしょう。1つの地球・1つの自然・1つの人類・・・。なんと利他主義的社会への転換がおきています。

★ここにサレジアン国際世田谷の誕生なのです。であれば、すべてのカトリック学校にチャンスがあるのではと思われるかもしれません。しかし、そうはいかないのです。マインドだけでは世の中の問題を解決できません。スキルが必要です。そのスキルは、しかもAI時代にあっては、そのAIのスキルを凌駕するメタスキルとメタ思考力が必要です。

★つまり、このメタスキルやメタ思考力を育成する教育が21世紀型教育です。

★サレジアン国際学園はカトリック精神と21世紀型教育を結合した画期的な「国際学園」なのです。

★教養や見識のある方は、ICT業界で、欧米はAI時代を黙示録的方向性で問題解決しようとしているし日本は鉄腕アトム的方向性で問題解決しようとしていると語ります。AIに対するルールメーカーは欧米の知であり、AIを実用的なものづくりに転換できるのが日本の知だと。

★これは欧米はソフトパワーで日本はハードパワーだと置き換えられます。これでは、また20世紀日本の社会的枠組みをAI道具で引きずるだけです。ソフトパワーもハードパワーも統合できなければなりません。日本が文系と理系に分けてしまうのは、ハードパワー主義だからです。ソフトパワーは文理融合のクリエイティビティが必要ですが、クリエイティビティはモノにならなければ実装できません。ですからソフトパワーvsハードパワーの構図では格差を生まれてしまいます。

★ここには大きな課題が隠れています。2030年になるとこのソフトパワーとハードパワーの統合価値が表に出てくるでしょう。バックキャストするとサレジアン国際学園世田谷の価値が世界からも注目されていることでしょう。

★21世紀型教育を仲間と一緒に共創した私としては、今後のサレジアン国際学園世田谷の進化をワクワクしながら注視していきたいと思います。

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2023年12月 2日 (土)

2024年中学入試(03)昭和女子大学附属中学校・高等学校 どこよりも進化する生徒プロンプトエンジニア

★本日14:30から大妻女子で、「生成AIで先生の業務を効率化!学校教員・教育関係者向け生成AI公開研修」が開催されました。主催は、特定非営利活動法人ニュークリエイター・オルグ、株式会社ニュークリエイター。いろいろな学校で生成AIを活用した研修や授業設計、教務の仕事の効率化のコンサルあるいはアドバイスを行っているようです。今回の研修は定員は45名で、会場は満席でしたから大盛況でした。

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(昭和女子大学附属中学校・高等学校の校長真下峯子先生:写真は同校サイトから)

★協力は、大妻中学高等学校で、同校校長梶取弘昌先生、教頭の赤塚宏子先生も参加されていました。実は、東京私学教育研究所の実施する研修の委員会の一つ「学校づくり委員会」の座長が梶取先生で、毎月のように生成AIについて委員の先生方と<インベスティゲイション>しています。

★その梶取先生が協力しているAI関連の研修ですから、これは参加しなくてはというのが、不勉強な私が珍しく参加しようと思った理由の一つでした。それから、もう一つ決定的な理由は、昭和女子大学付属中学校・高等学校の校長真下峯子先生が登壇されるというので、ぜひお聞きしなくてはと駆け付けた次第です。聖パウロの校長小島綾子先生や国語科主任の高橋祐佳先生も参加してくれました。

★第1部、第2部は、生成AIのプロンプトエンジニアリングをベースとした基本的なメカニズムと実際に学校業務に役立つプロンプトエンジニアリングの実習でした。

★帰り道、国語科主任であり、聖パウロ学園のICTのマネージメントをしている高橋先生が、教師の視点から生徒の視点へぐっとシフトしたと大きなヒントを得ていたようでした。

★ようやくプロンプトエンジニアリングという言葉が学校現場にも降りてきたかとほっとした気分になったのが今回の研修の実務的な意義がありました。

★しかし、何より圧巻だったのは!痛快だったのは!真下先生の講演でした。学校におけるDAOの組織の広がりの速度感を感じざるを得なかったのです。生成AIに対する教師の凍てついたアンコンシャスバイアスを解凍する熱い意志と多くの外部団体の協力を取り付ける熱い情熱。

★文系理系なんて区別はそもそもはいのだという迫力。凄いです!しかも、プロンプトエンジニアリングは、問いづくりの妙技だから、言語能力にたけた文系女子には実は理系への道を開く強烈なアイテムなのだと。論より証拠、生徒が1時間の研修である学びのプロンプトを作り上げてしまったのだということです。どんどん生徒がプロンプトエンジニアになる研修を広げるプランニングをしかけているそうです。

★しかし、そのためには組織を動かし、保護者の心を動かし、生徒の才能を開放していくコンセプトとビジョンを描き実行することなのだと高らかに謳いました。

★もちろん、その道はそう簡単ではない。しかし自分の生きている間にそれを果たすのだというなんという気概とミッション。昨日、バンクーバーから帰国したばかりとは思えないくらいインパクトがありました。

★私の知り合いに女性校長が何人かいますが、共通点は21世紀は女性の才能・知性・感性が日本だけではなく世界の閉塞状況を開くのだという強い意志があることです。東京の私立学校は、真下先生をはじめとする女性校長が、グロ-バルでイノベーティブでケアフルな人材をたくさん生み出す人的資本教育経営を推し進めていくのだろうと確信をもった時間となりました!この機会を創ってくださった皆様に心から感謝申し上げます。

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2024年中学入試(02)富士見丘 中学説明会 参加者大幅増!

★本日午前中から富士見丘は、中学学校説明会とチャレンジ入試体験を開催。同校の人気は右肩上がりです。データではわかっているものの、実際に臨場感をと、説明会の部に参加しました。すると、コロナ前だったら、少林寺の部活の練習場にもなっていった小ホールで行われていたのが、今回は体育館というメインアリーナで開催されていたのです。つまり、小ホールには入りきれないというわけです。

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★実に勢いを肌で感じました。開会まで時間があったのですが、そこで同校の生徒の生活がよくわかる動画が流されていました。2つ動画があって、一つ目はミュージカル風の学校の様子を紹介するものです。在校生がだんだん集まってきて、いろいろな施設ですてきなダンスを披露するのです。もう一つは、学校説明会然としたきっちりした動画でした。驚いたのは、広告代理店が創ったと思ってみていたのですが、途中で生徒が作成したものだと。なるほどSTEAM教育効果がこういうところにも発揮されているのかと感動。

★理事長・校長の吉田先生の挨拶も、壇上からではなく、目線を保護者と合わせる位置から離されていました。もっともこれは以前からそうで、慶應義塾の歴史的なルールですね。おそらく吉田先生の出身大学は慶応なのでしょう。

★みなさんが高校卒業を迎える6年後は、大学入試制度はかなり変わっていて、骨太の記述力や高度な英語力が必要になっていると明快に予想していました。だから、偏差値など気にせず、富士見丘で学びたちという意志を持って受験してほしいと。6年後のみなの夢をかなえられる教育を先生方と一丸となってつくっているのだと。

★そのすぐ後に進路指導について話された関根教務部長は、校長のトークを受けて、そのような準備が今からできているのは、富士見丘をおいてほかにないと言い切っていました。

★国内外の大学進学実績を観れば、それは大いに納得のいく話でした。

★そして、圧巻だったのは、中1生2人による富士見丘の学園生活のプレゼンでした。特に驚いたのは、授業で使われているロイロノートのアプリを使いながら、どのように個人探究と協働探究が授業の中で行われているのかその操作とプロセスを説明していたところは時代の変化を印象付けました。

★中1でこれほどまでだと高3になったらそりゃああのような大学の修士レベルのディスカッションや論文を書けるようになるはずだよと一人納得していたら、理事長補佐・校長補佐の吉田成利先生から、速報メールが届きました。今年の慶應義塾大学の論文コンテスト小泉信三賞の2位が同校の高2の生徒だったというのです。

★小泉信三賞は、慶応大学だけではなく、他の大学でも総合型選抜の時などのプロフィール要件としては大きなアドバンテージがあることで有名です。このことについてはまたいずれ書きたいと思います。

★このように、あらゆる機会を自分の探究を広め深めるチャレンジの場として超主体的に活躍するするのが富士見丘の生徒だし、一人一人サポートする同校の先生方なのです。

★学校をいま目の前の偏差値で選ぶのか、6年後の未来から選ぶのか。受験生の保護者にとっては、いよいよ意志決定の時期です。がんばってください。

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2023年12月 1日 (金)

どうする東京の私立学校2024

★学校法人北里研究所と学校法人順天学園の合併の協議にはいるというプレスリリースはものすごい反響です。1つは医学部のある大学と附属という最強の連携だし、順天の破格のグローバル人材輩出力と豊かなケアの精神を育む中等教育との新結合はようやく日本の従来のピラミッド型の大学階層構造が世界の大学に追いつけない壁を破壊的創造する大きな契機になるからです。

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★最近、来年以降の私立学校のチューニングを上記のような表で示して、「どうする東京の私立学校2024」をお会いする方と「問い合い」をしています。順天の学校長長塚先生とも昨日「問い合い」ました。長塚先生とは、久しい間コンピテンシーベースのルーブリックと私たち仲間がアップデートし続けている「思考コード」との関係性を「問い合って」きました。回答はそれぞれの識者や学校が創造していくので、私は「問い合い」でよいと思っています。

★長塚校長は、この方向性も当然含んだうえで今回の合併はいくのだと、具体的には今までの成績スコアではなく、コンピテンシーでつながるようにするのだと。だが、この考え方はなかなか広まらないから、待っていないで、自分たちの新しいカタチを創っていくのだと今後の統合体の新しいステージの創造に意欲と気概を示していました。

★昨日は、日私教研&東私教研所長の平方先生(わが上司)ともこのWMS(Worid Making System:教師と生徒の内的知のメカニズム)実装したグローバル市民としての日本の子供たちと共有していく運動体の基礎作りを来期以降していこうと議論しました。結構長い時間ディスカッションしました。

★東京の私立学校の教育市場は、実は、県外の通信制学校がサポート校を東京に設置して、東京都と東京の私立学校のさまさまな紳士協定を無視する傾向が強まっています。東京の教育コモンズに侵入してきています。そしてそのような動きを礼賛する県外の私立学校の有名校長もいます。さて、「どうする東京の私立学校2024」なのですが、制度的正当性を教育行政としての政治力学を生み出しながら動くことと何より豊かで強靭で人類愛に満ちた教育力で世界の自由と平和と公平性を牽引するグローバルリーダーシップを私立学校出身者が各界で発揮でいるスキルとマインドとコンピテンシーが身につく機会と環境をデザインする以外にないと。

★これぞWMSのミッションです。

★このミッションについて東私教研(東京私学教育研究所)のリーダー佐瀬さんとも「問い合い」ました。3時間くらいのディスカッションとなりましたが、方向性は一致しました。どのような研修プログラム(東私教研の研修は年に約80種類あります)になっていくかは、東私教研のサポートする各研修委員会の東京私学の先生方(委員のメンバーである東京私学の先生方は120人くらいかかわっています)との対話によってデザインが形になっていきます。今年度も画期的なプログラムが増産されています。新しい研修スキルやマインドが共創されています。今後がますます期待できます。

★そして、夜、21世紀型教育機構の教育研究センターの主任研究員の田中歩先生(工学院教務主任)と同機構参与の伊東竜さん(日私教研メンバー)と21世紀型教育機構のSGTとWMSを共創する活動をしようよという結構具体的なプロトタイプをメールで「問い合い」ました。お二人とは、様々なプロジェクトの同士なので、これまですでに試行錯誤してきた生徒の才能を開いていく知の実装の統合体としてのプログラムであることが阿吽の呼吸で理解し合え、新たな展開を「問い合う」ことができました。対話ベースの学びが、CEFRや思考コードと関連し、生徒の問い生成の自走、生徒の哲学シンキングの自走を支える「問い合い」コミュニティができるというイメージを共創できました。

★このWMSは、地球上のすべての子どもたちが実装できる最小で最大の効果を生み出す知の内的なメカニズムです。ノートパソコンとスマホと自分という身体があり、リアルスペースとサイバースペースの往還をしながら、哲学的で共感的な対話ができれば成り立ちます。もちろん生成AIは善きパートナーです。

★おそらく優勝劣敗主義者には、理解されないだろうというのは、私たちは重々承知です。しかし私立学校の使命は、優勝劣敗ではないのです。もちろん、思考コードやこのようなミッションを、かげでまやかしだと叫んでいる人もいます。明治の日本の教育は東大の初綜理の優勝劣敗宣言からその部分は変わっていないので、そのような思想に汚染され続けてきたというのも歴史的な流れでしょう。しかし、その初綜理の考え方に真っ向から「否」を唱え、私立学校を創設した私学人がたくさんいて、そこから連綿と続いているのです。

★私は、戦後教育基本法改正前夜、麻布の前校長氷上先生にその≪私学の系譜≫を学び、それ以来受け継ごうとしてきました。それが私の「私立学校研究家」というライフワークの名称で、これは私の無形資産だと思っています。

★それを仲間と形にしたのが21世紀型教育機構です。いまでは、誰でもが21世紀型教育と語ります。私たち仲間は、自分たちが起爆剤になっていることを静かに内的誇りにしています。21世紀型教育機構の同盟校から輩出される哲学的起業家たちの活躍を誇りに思っています。

★次のステージは、WMSを目指します。海外の大学にいくと日本の学歴社会を超えられるなどというアホな考え方は私たちはしていません。だいたい、世界の大学で学んだエリートたちが治めていても、ウクライナやイスラエルのような問題がおきているし、核の問題も気候変動の問題もなんら解決していません。

★しかしながら、WMSを実装した世界中のグローバル市民はいます。そのような問題の氷山モデルの海面の目に見えない根本問題を見ぬき、どうしたらよいか問い合いながら対処療法もしながら、根本的な解決を求めて考動しています。

★そのような市民が増えることがレバレッジポイントになります。私立学校の人的資本経営は、そのような人々を増やす仕掛けづくりなのです。

★21世紀型教育機構が軌道に乗るに8年(2011年から2019年)かかりました。パンデミックに突入して、21世紀型教育の有効性に多くの人々が気づいたというのは、なんか皮肉なことですが、リスボン大地震のときに啓蒙思想が開花したのと同じような感覚です。

★生成AIが世の中の表舞台にでてきたので、8年はかからないと思います。WMS実装の時代は3年くらいで軌道に乗るといいですね。

★1995年のウインドウズ95が世に出てから、2010年まで15年で、新しい教育の転換意識がやっと広まり、それをテコに21世紀型教育が8年かけて広まったわけですから、次のステージは5年くらいかかりそうですが、生成AIのスピード感はさらに速いので、期待しています。

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2023年11月29日 (水)

なぜ八雲学園か!英語でミュージカルまでやってのける。

★11月の八雲学園の文化体験は、中学生を対象に音楽座ミュージカルによる「シアターラーニング」を行ったということです。12月9日に開催される「英語祭」などにも向けて、表現力などを向上するためのワークショップ。生徒たちは体を動かしたりしながら、楽しく学んでいたようです。

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(写真は同校サイトから)

★「ミュージカルを見ているときは衣装や背景が物語に寄っていないのに情景が浮かびました。見ているだけではなく、ワークショップがあったので、インプットとアウトプットを両方でき、楽しんで学ぶことができました。」と生徒が感想を語っていますが、イギリスのAレベルのダンスの試験のような感覚です。何も具体的な背景の道具がないのに、演じることによって身体が、その背景のイメージを聴衆の頭の中にあるいは心の中に生み出すわけです。その理論だけではなく実際にアウトプットのパフォーマンスを行うことで、その醍醐味に気づく。すてきな「シアターラーニング」です。

★「声の力と表情で観客にも世界を共有するという感覚を得られた。演者と観客が一体となって良いミュージカルになるのだと思った。感動を観客に与えるには演者側も感動しなければならないと言っていたが、これを意識して英語祭の劇などで活かせることができたら良いと思った。」実にいい気づきですね。

★興味深い生徒の感想はまだまだあります。八雲学園のサイトをご覧ください。

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【速報】学校法人順天学園 学校法人北里研究所と法⼈合併に向けて協議を開始

★順天学園の副校長片倉先生から「創立 190 周年を迎える順天中学校・高等学校を設置する学校法人順天学園と、北里大学・大学院等を設置する学校法人北里研究所との法人合併を目指した協議を開始することについて、11 月 27 日に基本合意書を締結した」というお知らせをいただきました。

★下記のプレスリリース文書にもある通り、両法人は 2026 年 4 月 1 日(令和 8 年度)に合併することを目指しており、合併後、「順天中学校・高等学校は学校法人北里研究所が設置する学校となる」ことになります。

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★たしかに、両法人は学究的であり、人類のための奉仕の精神を重視していることなど、両者の建学の精神や理念における親和性は高いでしょう。また、グローバルな視野をベースに理数教育や研究に力を注いでいます。しかも順天の卒業生は、医学系に進む生徒も多いので、中高の新しい探究の環境ができることになり、画期的合併です。

★昨今ダイナミックに進んでいる高大連携の動きの中で、連携を超えた合併にまで至ったというのは驚きであり、同時に未来の有為な人材輩出を、中学・高校・大学・大学院等を通じた一貫教育によってできる可能性に大きな期待がかかります。

★設置者が改まったとしても、校名「順天」の2文字が継承され、中学高校の所在地をはじめ、教職員も継承されることになっています。国立大学や海外大学、文系・国際系などの私立他大学への進学指導も継承されるということです。

★また、令和8年度より、附属としての高校から大学への内部進学が開始される見込みのようです。北里柴三郎や福田理軒のような創設者の精神を引き継ぎながら、グローバルでイノベーティブでサイエンティフィックな新しい中高が誕生します。中学受験生にはとても希望がもてる最新情報です。

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