PBL

2019年12月 5日 (木)

ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instructionを開く(2)

★松谷先生の社会科の授業も、梅下先生の理科の授業同様、PI(Peer Insruction)を導入していました。また驚いたことに、コンセプテストは、トビー先生が英語で語りかけていました。これも理科の時と同じです。

Dsc06327

★日本のある輸入品が急激に減っている年が示されているグラフを提示し、この輸入品はなんであるかを多肢選択から選ぶ問いでした。“import”という英単語がわからなかったようですが、それを察知して、梅谷先生がさっと図を提示しました。

Dsc06331

★生徒たちはすぐに了解し、選んだ選択肢の番号をクリックししました。すると、みんなの反応が、瞬時にグラフで表現されました。

Dsc06337

★「石油」が大半でしたが、「生糸」や「車」なども選ばれていました。松谷先生は、梅下先生同様、この段階では講義はしません。まずは、Peer Instructionをする機会を設けました。その際に、幾つか他のデータを示し、多角的に考えてみるとどうなるか問いかけました。

Dsc06348  

★一瞬にして白熱教室となりました。そして、もう一度選択肢を選び直します。すると、今度は「石油」を選ぶ生徒が増えました。

Dsc06358

★松谷先生も、ロイロノートで、生徒1人ひとりの自分が選んだ理由を書き込んだものを回収していましたから、それを使って、なぜ「石油」を選んだのか、幾人かの生徒にプレゼンする機会を設定しました。

Dsc06370

★1941年は、日本が第二次世界大戦に突入した時代で、当時石油の最大輸入国であったアメリカが経済制裁を行ったからという見事なプレゼンがなされていました。

Dsc06371

★歴史的因果関係をフローチャート化してわかりやすく説明してくれました。

★これには松谷先生も、驚愕し、もう説明する必要がないくらいだねと讃えました。このようなグラフの急激な異変は、自然に起こるというより、何か人為的な戦略が働いているものです。松谷先生は、このグラフの捉え方を通して、第二次世界大戦にかかわらず、国と国が敵対関係になったとき、同じようなことが起こるという歴史的視点を生徒と共有していくのです。

★なるほど、コンセプテストは、その問題を通してさらに大きなあるいは普遍的な何かを考えるトリガークエスチョンだったのです。

★ノートルダム学院小学校の授業は、ある一つの知識から多面的で深い思考にまで広げていく<新しい学びの経験>ができる対話型・議論型・プレゼン型の価値あるものだと了解。これが、小学生にとって大事な学びの経験でることは、説明するまでもないでしょう。

|

ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instructionを開く(1)

★ノートルダム学院小学校は、五山送り火の観覧スポットである北山通り沿いにあるノートルダム女子大学と同じ敷地内にあります。そこは、京都でも、祇園や嵐山とはまた違う京都らしいエリアです。歴史と近代的な調和がとれた街並みです。

Dsc06278

★そういう独特の空間とあたかもマッチしているかのように、ノートルダム学院小学校の教育は伝統的なカトリック教育と<新しい学びの経験>を開発する革新的な教育イノベーションが巧みに統合されています。

★今回、その革新的な教育イノベーションのシーンを広報部が動画にすることにしたようです。その革新的な<新しい学びの経験>であるハーバード大学のマズール教授が生み出したPI(Peer Instruction)を活用した理科と社会の授業を見学できるというので、そこのシーンだけ立ち会わせていただきました。

★理科の梅下先生と英語科のアレックス先生が連携してコンセプテスト(マズール教授は授業の初めに多肢選択の問題を出題しますが、それが授業のテーマ全貌を見渡すコンセプトを物語る仕掛けになっていて、コンセプトのテストを縮めて「コンセプテスト」と呼んでいます)を英語で投げかけています。

★ノートルダム学院の小学生は6年間英語の学びを十分にしていますから、アレックス先生の英語による英語の説明を聞きながら、問いを理解していきます。

Dsc06297

★生徒たちは、自分のタブレットから回答を選びます。すると、クラスの生徒が応えた選択肢ごとの割合が電子ボードに瞬時に公開されます。

Dsc06308

★砂糖を溶かした水溶液では、どこの部分が最も甘いのかという問いですが、上の部分も真ん中の部分も底の部分もみな同じ甘さであるという選択肢が大分を占めましたが、そうではない回答もたくさんあるのが一目でわかります。

★梅下先生とマズール教授の違いは、梅下先生は、生徒に、選択肢を選ぶと同時に、ロイロノートで選んだ理由を言葉や図で説明させておき、全員分それを回収しておくところです。

★さて、次に、いきなり梅下先生が説明するのではなく、隣の生徒同士議論します。そして、もう一度1人ひとり選択肢を選びます。変えてもいいし、変えなくてもよいのです。

Dsc06311

★すると、圧倒的にどこも均一的に甘いという選択肢が選ばれることになります。生徒たちはその変化をみて、オー!と反応します。対話の重要性を身に染みてわかる瞬間です。

★ある生徒は、はじめみそ汁は放置しておくと、底の方に具などがたまるから、砂糖水も底が一番甘いのではないかと回答したわけですが、友人と議論しているうちに、自分の経験以外に違う経験があることを知り、回答を変えました。

★この後、梅下先生から講義がなされますが、ことは砂糖水の話ではなく、この問いをきっかけに、多様な液体の特色を考える視点を生徒と共有していったのです。これはもちろん、分子や原子などの話に進んでいく伏線としての経験作りでもあります。

★小学校のころは経験から学ぶことは大切です。一方で自分の経験で物事をみたり考えたりするだけではうまくいかにという試行錯誤も必要です。自分のものの見方・考え方が独りよがりでないかどうか、どうやったら検証できるのか、常にその実験方法をみんなで考えるところが梅下先生の理科の授業の特徴です。

★そのとき、PIという手法やロイロノートを活用することで、梅下先生は、生徒の考える過程を可視化し共有化し、なんといっても生徒が自分の推理の誤謬を訂正していく経験を実感できるようにしかけけていきます。このような授業は、今までにはなかったでしょう。経験と知識と思考の循環がどんどん広がっていく<新しい学びの経験>の開発への梅下先生の情熱が創造したものです。

★このような経験と知識と思考を循環させる能力こそ子供たちが未来を生きるときに、最重要なスキルであることは言うまでもないでしょう。それにしても、さりげなくアレックス先生がコラボし、途中で自分の次の授業の準備のためにいなくなっていました。これもまた、他校にはないシーンです。

|

2019年11月28日 (木)

聖学院授業デザイン②≪Z世代≫生徒の希望の拠点。

★ノエルが近づくこの季節。急に冬が訪れ、寒くなりました。

Dsc05874

★しかし、伊藤航大先生の≪Z世代≫への熱い想いと湧き出るアイデアで、ワークショップは温かい空気が広がりました。

Dsc05917

★参加した先生方が自身の授業で、伊藤先生や榊原先生と共感できる課題を明らかにした段階で、当然その問題解決の方法について<対話>が始まりました。中心的な課題は、すべての生徒が興味をもつにはいかにしたら可能かでした。

Dsc05979

★この問いは、90%の学校は、問い返すことはしません。心ある教師はこの問いを自問自問はするでしょう。しかし、これだけの学校の教師がともに悩み解決しようと<対話>することはまずありません。

★たいていは、興味と関心をもてないのは、自己責任です。問題意識が低い状態で学びに臨むとはなんてことなのだと生徒のせいにするのが一般的です。もっとひどいのは、興味と関心を何に持つかは生徒によるし、その自由を奪ってはいけないというまことしやかな薄っぺらい自由論を振り回します。

Dsc05994

★しかし、聖学院の教師は、オンリー・ワン・フォー・アザーズという価値を共有していています。榊原先生は、当たり前の日常の中に、驚愕感動するような価値があることに気づく仕掛けを授業でチャレンジしてみたいと。このアイデアには、どよめきが起こり、共感の輪が広がるほどでした。

Dsc05999

★授業デザイン研究会の座長は児浦先生ですが、先生と先生のパートナーの1人内田先生はレゴ®シリアスプレイ®の資格をもっているので、プログラムのベースも、レゴ流儀になっています。

★個人で自問自答し、チームで話し合い、いきなり全体でまとめてみます。そして、また各チームに分かれ、最後は個人に戻ります。自己リフレクション→自己開示→協働→共感→協働→共開示(恥を捨てる)→自己リフレクションという流れになっています。この流れは、実はレゴ®シリアスプレイ®のコンセプトメークをしたシーモア・パパート教授らのアイデアで、数学的思考の流れです。

★児浦先生は数学教諭ですし、内田先生は技術の教諭ですからまさにテクノロジーがベースです。

★今回も、全体で、問題解決を整理しはじめました。各チームのアイデアは部分最適化ですから、それをさらに参加者全員で全体最適化に挑戦します。この過程で、実は教師の授業前の準備がとても大切なコトが改めて確認されました。生徒が何に興味をもつのか関心をもつのか、シナプスを張り巡らすという表現をしていました。

★そして、授業は、これは伊藤航大先生のアイデアをみんなで共有したのですが、教師+生徒ではなく、「生徒+1」という関係で学びの世界を創るのだということになりました。

★さらに、授業の中で生徒は多様なアイデアや多様な表現、自由な発言をする環境を創りたいねと言うことになりました。そして、再びチームに分かれて、要するにワンフレーズで表現するとどうなるか<対話>が折り重なり深まっていきました。

Dsc06009

★聖学院の教師は、それはあまりに理想的なのかもしれませんが、教師も生徒もそれぞれの興味と関心を持ったり、見出したりする授業づくりに挑戦しているのです。

★最後は1人ひとりの想いを語って、チェックアウトです。伊藤航大先生が、聖学院の同僚はほんとうにコミュニケションがとれていて、互いに授業デザインの学びになる。そのうえで、やはり常にオリジナルの授業デザインに挑戦したいのだと改めて感じたという熱い思いを語ってワークショップは終了しました。

★次の日、榊原先生からメッセージが届きました。「今度は伊藤先生の立場を私が挑戦します。そう児浦先生と相談して決めました。楽しみにしていてください!」と。ノエルをむかえるにあたり、榊原先生による同僚に対しての最高のプレゼントです。榊原先生、児浦先生、伊藤先生、そして聖学院の先生方今年もありがとうございました。

|

聖学院授業デザイン①同僚間の開かれた関係

★昨夜、聖学院の授業デザイン研究会が開かれました。今回は社会科教諭の伊藤航大先生の授業デザインを仲間(同僚)とシェアしました。

Dsc06035

★伊藤先生は、1時間の授業ではなく、観光甲子園のコンクールに挑む生徒たちの学びのプログラムという大掛かりな創意工夫についてプレゼンしました。聖学院の≪Z世代≫生徒は、授業からはみでた活動に主体的に取り組むのが大好きですが、だからといって、全員が同じプログラムを同じ想いで取り組むかというとそれはそうではないのは当然です。

Dsc05907

★興味と関心の差がその取り組みの姿勢の差に影響します。これはどこの学校でも同じ現象です。しかし、聖学院の教師は、そういうものなのだと諦めることはないのです。そこで、いつものようにスピードデーティングで、「聖学院の≪Z世代≫生徒が望む授業」についてシェアするアクティビティから始まりました。

Dsc05913

★互いに熱い想いを共有してから、伊藤先生のプレゼンに耳を傾けるわけです。このとき、授業デザイン研究会で定着しているアクティビティは「スクライビング」です。

Dsc05922

★みんなで傾聴しながら、仲間の一人が、ホワイトボードにプレゼン内容をその場でまとめていくのです。

Dsc05932

★今回は英語科教諭の榊原先生がスクライビングを行いました。伊藤航大先生が熱く語ったことをすべて書き出すというのではなく、その熱さの中でも、特に榊原先生の熱い想いと共感するところが転写されていきました。

Dsc05942

★そして、伊藤先生のプレゼン終了後、今度は榊原先生が、スクライビングした内容について説明します。ここまでは、いつも、さりげなく当たり前のように進みます。しかし、これが自然体で進むのは、実はとても重要な意味があるのです。

★それは同僚性や共感力といった言葉があてはまる人間関係=信頼関係=愛が聖学院の先生方同士にはあるからです。柔らかいコミュニケーション、互いに受け入れる関係、その都度、互いの間にある壁を言語化してはそれを払拭していける開かれた関係。そういう関係があるからです。

Dsc05958

★伊藤先生の想い、榊原先生の想いが目の前に広がったところで、今度はチームに分かれて、それぞれのメンバーの授業でも現れる共通した生徒への想いについて語り合う段に進みました。開かれた関係は、教師同士だけではなく、教師と生徒との間にもある実感がどんどんあふれでてくることになったのです。

|

2019年11月27日 (水)

アサンプション国際中高の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(了)脱ジレンマ!

★石崎さんは、ボルネオの森の豊かさとその生態系を維持している生物多様性と先住民の生活を描いたうえで、パーム油のプランテーションによって、ボルネオ島の森林が次々と伐採され、生態系が壊されていることを共有していきました。当然先住民も苦しみます。その一方で、いまここで私たちはスナック菓子を頬張り、石鹸使い放題で風呂に入り、せっかくの料理を残してフードロスを垂れ流しています。

Dsc05867

★石崎さんは、そんな状態を改善するにはどうしたらよいのかと問うわけです。スナック菓子をできるだけ食べない、石鹸を使いすぎない、フードロスをなくしていく・・・それで解決できるわけではもちろんないのです。

★石崎さんは、ボルネオ島の森の生態系を守りたい、でもプランテーションで働いてお金も欲しいし生活も楽したいというのは先住民も同じ、しかし、それを続けていると、地球環境は恐ろしい状態になるし、パーム油の高騰にもつながり、世界経済にも影響を与えるかもしれない。

★森も、先住民も、私たちも、世界経済も、この囚人のジレンマから抜け出すにはどうしたよいのか?中1の≪Z世代≫生徒は、脱ジレンマの難しさを共有する出発点に立たされたのです。これから中高と学ぶ過程で、この難問を解くために、フィールドワークをし、他者の痛みを自分事にひきよせ、創造的思考をフル回転しなくてはならないでしょう。

★そして、このジレンマは偶然出来上がったのではなく、近代社会が自らつくりあげた矛盾だということを現代思想に触れ、世界史に学び、倫理社会、政治経済に学んでもいくでしょう。近代社会以外の社会は果たしてあり得るのか?たとえば、ボルネオの先住民の社会システムは、そのとき大いに参考になるでしょう。石崎さんの冒頭のトークを思い出す日が来るはずです。

Dsc05850

★中学の探究の責任者である松平先生(英語科教諭で、国際関係プログラムなど多様なネットワークを有し、生徒の学びにつなげているコーディネーターでもあります)は、生徒に語りかけます。「昨日まで訪れていてたローマ教皇の痛みをみんなは受けとめたかい。世界を分断しようとするリーダーが増えたことに対し、痛みを感じ、連帯を祈っていたよね。そして、今日の石崎さんと近藤さんのワークショップとトークは、つながりの重要性を教えてくれました。どうですか。ここから出発できますか」と。

★HUTAN Groupの活動拠点はたしかにボルネオ島であるが、ここだけが保全されればよいなどとはいうまでもなく思っていません。地球上にある同じような根本的な問題を解く、つまり脱ジレンマに挑戦するチェンジメーカーの育成が本意でしょう。

★松平先生と意気投合したのは、そこだったと思います。このプログラムは昨年の中1にも行われました。そして彼らが中2になってからも、別プログラムを石崎さんと近藤さんは行い、うながりを継続していくのだそうです。生徒の成長が楽しみですね。

Dsc05692

★カリキュラムマネージャーの瓶割先生(数学科教諭)も、中1の探究に取り組む姿をみながら、「今年の高3(高入生改革1期生)の大学進路が、今までとそうとう違うんです。偏差値で選んでないという明らかな傾向がみられます。一般入試も含めてすべて決まりましたら、ご報告しますが、明らかに英語やPBLの体験を生かせる大学を探した生徒が多くなっています」と。

★すると、松平先生は、「そういうのが本当の教育の成果ということですよ」と。偏差値競争社会のなれのはてが、ボルネオ島の森林破壊や環境破壊に加担したことだとなるのなら、そのような進路指導はアサンプションはしないのだと静かな情熱を感じました。

★たしかに本物教育以上に何を求めるのでしょうか。熱い思いに感染したまま大阪を後にしました。

|

アサンプション国際中学校・高等学校の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(2)

★石崎さんは、問いを解き明かしながら、ときどき生徒と対話も交えながらカジュアルにレクチャーしていきます。まずはボルネオ島がどこに位置し、どの国に属しているのか、そこにはどんな先住民が暮らして、多様な生物がいるのかなどを問答していきます。

Dsc05736

★先住民は「ありがとう」という言葉を不要とするほど、すべてを分かち合い、私たちのように自分の所有にこだわらない生き方をしているなどということがさりげなく語られたり、テナガザルやオランウータン、テングザル、サイチョウ、ラフレシアなど多様なボルネオ島固有の動植物の紹介もありました。

★さりげなく石崎さんはかたりますが、そこには、私たちが当たり前と思っている経済社会とは全く違う社会や生物多様性の広がりがあることの希少性を語っていたのです。中1の段階では、まだ好奇心のほうが強く、その背景にある問題にはまだ気づいていませんでした。

Dsc05809_20191127122801

★しかしながら、パーム油が今ではボルネオ島でとれる量が多い話となんと私たちの生活用品や食料品に使われていて、油の中でも世界の消費量が最も多いというデータ分析の話を聞きながら、なにやらただ事ではないというこちに気づき始めた生徒がでてきました。中1クラスの雰囲気に変化が起こってきたのです。

Dsc05823

★そして、そのパーム油をとるために、ボルネオ島に世界の企業がどんどんやってきて森林伐採をし開発している写真をみながら、生徒はさすがに、気づくわけです。

Dsc05803

★この大切な生態系が破壊されているということに。これは大変なことです。しかし、ただ大変だでは石崎さんの話は終わらなかったのです。

|

アサンプション国際中学校・高等学校の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(1)

★アサンプション国際中学校・高等学校は、21世紀型教育改革を推し進め3年が経ちました。その改革の制度的側面は、共学化と名称変更でした。そして学びの側面は、ハイレベルな英語とPBLとICTの活用でした。

Photo_20191127112501

★制度的側面の改革は経営的な側面でもあり、それは決断したらすぐに出発できますが、学びの側面は、そう簡単ではありません。試行錯誤、手探りをしながら研究開発をしていかざるをえません。時間はかかります。生徒といっしょに<新しい学びの経験>値は教師もあがっていきます。したがって、焦らずじっくり身構え、小さく始めて大きな渦になって学内学外を巻き込んでいく進化をたどります。

★今回も、中1の探究の授業で、「ウータン・森と生活を考える会 HUTAN Group」の石崎雄一郎さんと近藤美沙子さんをお招きし、ワークショップを開催していました。同校の探究のベースの1つには、SDGsの探究があります。3年目とあって、SDGsを知って理解するから、自分たちで何ができるかへだんだんシフトしてきていますが、何より世界の根本問題を解決しようと実際に活動している方々の話に耳を傾け、大きなそして深い気づきを抱くことは、自分たちがなぜ行動しなければならないのかという内発的な意義を有することができます。

★HUTAN Groupで、石崎さんと近藤さんは、ボルネオ島の森に多様な生物と共に住む人々の環境を守る活動をしています。中高生のボルネオでの体験ツアーや研修も行っています。

Dsc05726  

★まずは、9つの問いをグループで考えるところからワークショップは始まりました。ボルネオ島は世界で一番大きい島なのか?ボルネオ島ではチンパンジーが群れを成して生息している?など一見知識問題のような問いを考えていきます。

★しかし、解き終えるにしたがって、その問いが重要な循環を示唆していることが判明していきます。一見関係ないようなことが結びつき、その結びつきは、実は遠くボルネオ島の話だけではなく、いまここにいる自分たちに折り返ってくるということに気づきます。

★石崎さんは、生徒たちが一通り問いの解答を終えたところで、一問一問解き明かしていきます。解き明かしが進むにつれて、SDGsに取り組んでいる自分たちは、いかに対岸の火事という態度をとっていたか思い知らされるのです。

|

2019年11月26日 (火)

PBLの世界(44)教師と生徒が共に<新しい学びの経験>を創る意味

★首都圏模試センターの「思考コード」が注目されています。一般に、このコードは、試験問題を解決する過程の評価として活用されます。知識を憶えるのは得意でない(というか嫌い)でも、知識と知識を結びつけるのは得意(好きだ)なんてことが、各コードの正答率の凹凸で了解できます。

Photo_20191126072801

★しかし、ここで( )に書いた考える側の気持ちを前面にだすと、上の図のように、A3、B3、C1、C2、C3の思考領域は、ブレイクスルーや気づき、発見があるので、ワクワク度が膨らみます。

★<新しい学びの経験>は、上記の右側のワクワク度がはじけるというかはみでるイメージです。これに対して、従来の20世紀型教師は、客観的で論理的な思考をきっちり収めればそれでよいと考えていますから、21世紀型教師と≪Z世代≫生徒がワークワークしながら学んでいる様子をみて、基礎学力ができていないのに、言葉ばかり先にでるんだからとか、思い付きだけではダメだとか、生徒の創造性の芽を摘むようなことを平気で言います。それがパワハラや失言に近い抑圧的コミュニケーションだということに気づいていません。

★もし「こどもの学習権」に創造する学びの権利というのが、明快に属することが明らかになったとしたら、この抑圧的コミュニケーションは権利侵害ということになるでしょう。

★しかし、意外とそういう低次コミュニケーションは多いですね。創造的あるいは高次コミュニケーションを育てない限り、社会は一向に好循環を創るように変わることはないでしょう。

★PBLは、教師と生徒が共に学びワクワクするのですが、同時に創造的あるいは高次コミュニケーション能力が豊かになっていくのです。

|

2019年11月14日 (木)

新しい思考力生成(04)首都圏模試センターの「思考コード」を授業に変換すると、工学院と聖学院の新しい動きとシンクロする。

★思考コードは、私たちが学んだり、考えたり、憶えたり、創ったりする行為をシンプルに表に変換したものです。たとえば、授業というのも、生徒が学んだり、考えたり、憶えたり、創ったりする行為システムの場です。

Photo_20191114090801

★その行為システムの循環をイメージにしてみました。やはり複雑になるので、生徒が自分がどの行為システムをしているのか、これからしようとしているのかなどをリフレクションするには、思考コードの方がポジショニングしやすいですね。

★それはともあれ、学びの行為のシステムの土台は、<経験>です。この<経験>から知識を獲得し、デフォルトモードネットワークとして蓄積することによって、<知識>を出し入れする<想起>ができるようになるわけです。

★この<経験>から知識を獲得する。すなわち、情報獲得するということは、しかしながら、原初的な時代ではないので、当時の第一次<経験>だけからではなく、その<経験>が第二次<経験>としてのテキストやデータになっている場合の方が現在では多いわけです。

★PBLの授業でアクティビティを挿入するのは、テキストやデータは、いつの間にか<経験>が忘却されているので、それを回復して、第二次<経験>として立ち上げる効果があるのです。

★つまり<経験>から学ぶという構えを授業の中に取り戻すわけです。

★今までの20世紀型教育では、知識をインプットして想起する学びの行為だけを行っていたのです。大量消費、大量生産、大量移動の工業生産社会では、イノベーションは一握りの人間が行い、そのほかは彼らが造る知識や技術を憶えればよかったのです。

★ところが、ITイノベーションが起こったとき、未知の世界を1人ひとりが読み解き、創ることができるようになったわけです。

★そうすると、<知識想起>だけでもなく、その<知識想起>を支える<情報獲得>だけでもなく、未知の世界に、そのデフォルトモードネットワークの知識や技術を論理的に適用していく<適用・論理>の学びの行為が必要になってきます。しかも、その論理的に適用した場合、論理構造が巧く当てはまらない場合、論理を修正する場合もありますが、新しい論理関係の発見であると了解して、新しい論理関係を<批判・創造>する学びの行為にパラダイムチェンジする場合もあるのです。

★この<知識想起>と<情報獲得>という学びの行為をA軸思考、<適用・論理>という学びの行為がB軸思考、<批判・創造>という学びの行為をC軸思考に転写したのが<思考コード>だったわけです。このことが自覚されて授業が展開されているのイノベーティブな学校に工学院大学附属中学高等学校と聖学院があります。

★要するに<思考コード>は学びや思考のメカニズムの表であり、この表の一部だけの授業やテストは、人間の学びや思考のメカニズムの循環を破壊していると言えます。20世紀が自然と社会と精神の循環システムを破壊してきたのは、教育のメカニズムもまた循環が断絶されていたからでしょう。

★この行為システムは、同時にコミュニケーション行為システムでもあります。ですから、この学びと思考の循環を個人ワークで終始するのではなく、プロジェクトベースでコラボレーションしながら行うPBL授業になるのも必然です。

★このシステムを行うには、45分授業や50分授業という既成の考え方も変えざるを得ないでしょう。現状はこの規制の中で、コンパクトに行える形式を先生方と創意工夫していますが、今後はこれをどう変えていくかです。この動きが工学院の家庭科と保健体育の教師によって新たに始まっています。聖学院では授業デザイン研究会に参加している先生方が中心に挑戦しています。

 

|

2019年11月 7日 (木)

新しい学びの経験(01)新しい授業か古い授業か、きちんと観察して学校選択をする。

★今の12歳が2040年になったとき、33歳になっています。これまでの学びでは、つまり多くの人は学校の授業での学びの時間が長いですから、その授業が今までのままだと、相変わらず出来る人は出来る、できない人できないままです。そして、2040年から2060年の間に、生産年齢人口は半減しますから、従来型のリーダーシップを発揮する人も少なくなります。

Photo_20191107084601

★そして、国力も半減するわけです。少子高齢化もそのときはかなりものです。経済はわるくなるは、高齢者を支えなくてはならないはで、今の12歳はたいへんな苦労を、このままではすることになります。

★これを回避するには、所得倍増ができる学びを生まざるを得ないのです。それには、12歳の子供たち全員がソフトパワーを生み出す創造性をいかに自ら発出できるかにかかっています。

Photo_20191107084901

★それには、これまでの一方通行型の知識伝達型講義や問答形式の知識確認型の授業は適さないのです。なぜかというと、この形式は授業に参加している生徒が全員思考できる機会を作っていないからです。その知識を活用できる一握りの生徒しか思考しないようになっています。今までは、それでよかったのです。競争社会で勝ち抜いた一部の生徒が世の中を動かすポジショニングを確保してやってこれたのです。それだけの経済的背景があったのです。もちろん、格差やその一握りの人間による抑圧組織や社会はたまったものではありませんでした。今もまだ続いていますが。

★しかし、これからは、特に2040年以降は、このままだと経済状況が悪くなります。そんな状況下で一握りの人間が自己利益のために、ふんぞり返っていたら、どうなるか、説明するまでもないでしょう。

★そこで、対話(教師と生徒のではなく、生徒と生徒の)を通して協力しながら思考し発想を合力に転換できる新しい学びが重視されるようになったのです。

★和洋九段女子の人気がでてきたのは、学校に行けば、多くの授業が、PBL型になっているために、生徒がみな目をキラキラ輝かせている姿を見ることができるからです。文化学園大学杉並のDDコースは、すべてミニPBL型で、その見事な成果は、メディアも注目しているほどです。

★八雲学園も、ラウンドスクエアに加盟し、世界のエスタブリッシュな私立学校の多くがPBL型であることを身をもって知り、加盟校として、自分たちもPBL型にシフトしています。

Photo_20191107084902

★聖学院や工学院は、上記の<新しい学びの経験>の典型的パターンに、第二の脳としてレゴを活用するPBLやlearnnig by makingというアクティビティを挿入して、パワフルなPBLを実施しています。すでに生徒がどんどん外部の他流試合で大活躍していることは徐々に知られるようになっています。

★授業が典型的なパターンを基礎として行っている学校は、国内外のフィールドワークも研修旅行以上の学びの成果をあげています。

★子供たちの未来を考えれば、<新しい学びの経験>を創ている学校を選択することは時代の必然かもしれません。この図をもとに、オープンキャンパスで、どのタイプの授業が実施されているのか観察してみましょう。自分たちが経験してきた一方通行型講義や教師と生徒の問答による対話型の授業で終わっていないかどうかチェックするのは、本当は何よりも重要なことなのです。

|

より以前の記事一覧