PBL

2023年6月 7日 (水)

変わる私立中高(43)富士見丘さらなる高みへ

★先日の21世紀型教育機構の定例総会で、佐藤副教頭はこう語っていました。「コロナが落ち着いてきたので、海外留学や海外フィールドワークといったプログラムが復活しました。募集も順調です。若い教員が入ってきたことで雰囲気をさらに良くしています。WWLの指定が去年で終了し、今後はこれまでのWWLで培ってきた活動を独自に発展させていきます」とウェルビーイングな組織とさらなる発展に自信を持っていました。

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★すでに4カ月前に、「GLICC Weekly EDU 第111回「2023年中学入試を読む~富士見丘の生徒像に見る未来の教育」で、佐藤副教頭先生は、グローバル教育、探究の進化/深化、STEAM教育、大学進学実績の飛躍について自信を抱いていましたが、4カ月たって、新しい年度が進むにつれてさらなる進化の手ごたえを感じているようです。

★そして、先日福岡の研修から東京に戻ってきた吉田理事長校長は、ある女子校の視察を通して、何かインスパイアーされたようでした。さらなる富士見丘の教育の進化について新たに決めたことがあるという気概が伝わってきました。

★ますます富士見丘の教育の今後の展開に注目ですね。

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変わる私立中高(42)人気校の不易流行の作り方

★ここのところ6つの教育のうち4つ以上に取り組んでいる学校は人気が高い可能性があるという話をしています。すると、独自性とかなくなるのではないかと思う方もいるようです。たしかに、その4つだけを教育していたならみな似たり寄ったりの学校になるでしょうね。しかし、私立学校は、建学の精神に基づいたコンセプトXが6つの教育に浸透していくわけです。その建学の精神に基づいたコンセプトXは独自のものでしょうから、同じ衣装を装着しても人が違えば、それぞれユニークなのは変わりがないのと同じです。

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★建学の精神は、不易ですが、Xの部分(何がXかは学校によって時代によって違う)や力を入れる6つの教育は時代によって変わるものです。したがって、私立学校の教育は独自のそして先見性、先進性ある不易流行の組織を持続可能にしています。変わらぬものと変わるものとのバランス、伝統と革新の統合などという表現がなされるものそういうわけです。

★それにしても、この真ん中に建学の精神に基づいたSDGs教育を設定して、実践しているすばらしい学校があるのですが、そこの学校長が、SDGsなんていっているのは古いと言われてしまったと苦笑いしていました。もちろん、だからといって、その学校長が動揺していたなどということはありません。対処療法的なうけねらいの方がいるのは世の常で、私たちは根源的な問いを共有し、それを生徒といっしょに解決すべく学んでいくのだという気概を示されていました。すばらしいですね。

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★ちなみに、SDGsはご存じの通り、突然採択されたわけではありません。1972年の「成長の限界」のWorld3というシステムダイナミクスによるシミュレーション予想にルーツがあります。そこから環境問題をone earthとしてとらえ、国連などを中心に国際会議を重ねて採択されるに至っています。

★それなのに、SDGsは古いとか決めつけてしまうのは、もったいないですね。しかも、そういう方に限って、システム思考がどうのこうのとか氷山モデルがどうのこうのとか口角泡を飛ばして熱く語るのです。

★その考え方は、「成長の限界」を中心的に執筆したドネラ・メドウズの発想法です。SDGsは、いわばドネラ・プロジェクトのミームを引き継いでいるわけです。不易は氷山モデルでいえば、見えない部分ですね。流行は見える部分です。

★その両方のループの関係性を洞察するのがシステム思考だし、ドネラ・プロジェクトを引き継ぐSDGs教育です。

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変わる私立中高(41)聖学院インパクト あらゆる授業をシンプルな世界制作方法が貫く

聖学院は過去問を公開しています。本当によく聖学院のカリキュラムを反映した問いが表現されています。PBLや探究、テクノロジー、グローバル教育が充実していることが了解できます。ぜひ同校のサイトをご覧ください。もちろんダウンロードできます。このような教育環境は、生徒が自らタラント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)、トランスフォーメーション(変容)、トラスト(信頼)といった5Tを体得するようになるでしょう。アドバンスト入試や英語入試、思考力入試からいくつ問いを見てみます。

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★英語入試のショートエッセイですが、生成AIが普及し始めるちょうどその時期にこのような英語で思考する問いを投げかけています。学校でコンピュータスキルをもっと学ぶべきなの?君の考えは?というのでしょう。英語で考える力ですね。もちろん、この中学入試の段階では、日本語で300字くらいで考えて、150語の英語に置換えればよいのでしょうが、ストレートに英語で考える習慣を身に付けている生徒もいるはずです。すごいですね。しかし、いずれにしても、トピック、根拠、体験というエビデンスが必要ですが、実はさらにメタ認知的には、具体と抽象という重みづけ、主張と根拠という統合、反対の考え方など、賛否のカテゴリー分けなど思考のメタスキルの発動を問うてもいます。

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★社会の問題も、ふるさと納税のメリット、デメリットの両面から考える問題ですね。これもメタ認知的には、考え方のカテゴリー分けです。そしてそれぞれのカテゴリーごとに主張と根拠の関係をとうごうすればよいわけです。

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★理科の問題もおもしろいですね。脱塩の方法を2つ比較して、昔ながらの方法を説明しなさいと。どう違うのかカテゴリー分けするわけですが、ここは日常の鍋で起きていること等をアナロジーとして変形するメタ思考スキルを使う資質能力があるか診ることができます。

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★算数の問題。OBの補助線を引くと、急に見えますね。これはメタ思考スキルとしては削除・挿入の推理を活用するわけです。補助線を挿入するというわけです。面積や線分の変形というメタ思考スキルも使います。

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★デザイン思考の問いは、このまとめにくるまでに、今まで見てきたような問いが並んでいて、この200字まとめに到ります。基本は比較して、共通点と相違点を見出していくプロセスになるわけですが、その視点が多角的です。しかし、ここでもやはり、順序づけや重みづけ、分解と統合、変形といったメタ思考スキルがフル活用されています。

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★このメタ思考スキルがフル回転するのは、ものづくり思考力テストも同じですね。遊びと学び。遊びが実は人間のクオリティ・オブ・ライフを実現する道具立てやルールを作るのです。そのヒントをロジェ・カイヨワの視点を参考にするなど、創造性のレベルを急上昇させる仕掛けも巧まれています。いずれにしても、①削除・挿入、②順序づけ、③重みづけ、④分解と統合、➄変形という5つのメタ思考スキルを使えるかどうか診るわけです。

★以上のように、聖学院のすべての入試において、この5つのメタ思考スキルが発動するように作問がプランされているのです。

★この5つのシンプルなメタ思考スキルこそ、芸術哲学者であり数学哲学者であるネルソン・グッドマンの世界制作の方法なのです。湯川秀樹ではないですが、複雑な現象も、シンプルな原理によって成り立っているわけです。思考の原理とも言えます。

★理数教育の真髄は、ネルソン・グッドマンのシンプルなメタ思考スキルといコネプトレンズを生徒自身が可視化して活用していけるようになることであり、これは非認知システム認知システムでも同様です。ネルソン・グッドマンが、芸術と数学の両領域を往還していたということは、ここに通じるのだと思います。

★聖学院の思考力入試をはじめ各教科の入試が教科横断的になっているのは、この世界制作の方法というコンセプトレンズを教師が文理関係なく共有しているからでしょう。理数教育の真髄は、こうして真理は自由にするという話なのです。

★多様で複雑な社会課題に直面したとき、世界制作の方法というシンプルな真理を生徒が身に付けて、解決していく。この一貫性が聖学院のすべての授業に貫徹しているというのは、ものすごいインパクトですね!

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2023年6月 6日 (火)

変わる私立中高(40)理数教育のインパクト

★前回、人気のある学校は、6つの教育のうち少なくとも4つの教育に力を入れていると述べました。6つの教育とは、

①グローバル人材育成

②外国語教育

③理数教育

④ICT

⑤協働学習・探究

⑥大学受験指導

★このうち4つの教育に力を注いでいるところはその多くが人気が高いのです。そして、その4つの中に理数教育が選ばれている場合、そのグループの90%以上の学校が人気校です。一方、理数教育以外の5つから4つを選んでいる学校の場合は、人気校は75%です。これは、理数教育のインパクトと言わずして何と言いましょう。

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★たとえば、典型例が世田谷学園です。土曜プログラムの美術の時間を見学しましたが、まるで理数教育でした。STEAMも意識しているということでした。もともと本科コースと理数コースが設定されていますが、ここまで理数教育が徹底していると知り感動しました。

★もちろんパソコンで動画作成をしているクラスもあり、理数教育にICTは欠かせません。首都圏模試センター2023年2月6日現在の出願倍率速報をみると、2021年からの中学入試における総出願数は次のような推移になっています。1629名(2021年)→2333名(2022年)→2854名(2023年)。すごいですね。

★とはいえ、4つの教育>理数教育がはいっている>ICT教育にも力を入れている学校は、理数教育に力を入れているところすべてではないのです。そして驚くべきことに理数教育かつICT教育充実という学校(4つの教育を選んでいる学校グループで)は、99%人気校なんです。

★なるほど、AI時代です。大学も文理問わず、データサイエンス系の学部新設ラッシュです。理数教育は欠かせません。

★ただし、ICTも活用しているところが多いので、理数教育といっても、今までのとはかなり違いがあるでしょう。

★理数と芸術、家庭科、保健体育がコラボしてSTEAM教育を生み出している学校も増えています。

★未来の学校は、先述の6つの教育に力を注ぐ学校がサバイブするということなのかもしれません。

※データは、各学校のホームページをみて独断と偏見の推察です。

 

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変わる私立中高(39)4つの教育に力を入れる学校

★人気のある学校といのは、次の6つの要素のうちいずれか4つの教育に力を入れています。もちろん全部に力を入れることができる学校もあります。しかし、いずれか4つに力を入れているところは人気を持続可能にしているようです。

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★もちろん、4つに力を注ぎ、その他は準備段階とか鋭意試行錯誤の最中というところが人気があるわけですね。

★この6つのうち4つに力を入れている学校は、東京の私立中高一貫校では、20%くらいです。

★4つだけ教育を行っているのではなく、日々の教科学習や教育活動も行っているわけですから、実はたいへんなことなのです。

★3つ以上となると、60%以上の学校が取り組んでいるとなりますから、4つと3つのたった一つの差が大きいということですね。

★データは、各学校のホームページなどを見て独断と偏見で視察していますから、ほぼ勘です(汗)。あくまで参考程度です。

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2023年6月 5日 (月)

変わる高大連携(03)湘南白百合 お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所との連携プログラム 画期的

★湘南白百合が次々と高大連携を締結していることはご存じの方も多いでしょう。今回同校サイトでこんな記事が掲載されています。「中3探究 お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所との連携プログラム」がそれですが、2つの点で驚愕です。

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★一つは中3で大学の先生方と学ぶとは!という驚きです。もう一つは、従来の高大連携とは違い、上記図のB領域とC領域にまで進む、画期的な連携だということです。従来は、C領域をサイエンスコミュニケーションによるエッセンスを大学の先生が講義をするということが多かったわけですが、中3の生徒の好奇心を研究にまで進化させる生徒と大学の先生のいわばチュータリング制の研究活動さながらの連携なのです。

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★「令和2年度の大学における教育内容等の改革状況について(令和2年5月1日:文部科学省調べ)」のデータを見てもわかるように、このような連携はおそらく初でしょう。新型コロナ感染拡大の時期が3年間続いたので、その間のデータはありませんが、今後はお茶の水女子大学ー湘南白百合のいわばAP型高大連携が増えるのではないでしょうか。

 

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変わる私立中高(38)中学入試市場の第4波シフトを促す生成AI リアルな対話以上にリアル

★中学入試市場における第4の波のシフトを促進するのは生成AIであることは間違いないでしょう。第4の波の学習観は、思考コードの9つの領域を変幻自在に経めぐるわけです。A軸から順番に学びの経路をたどる時もありますが、C軸からでもよいのです。単純にその経路の順番を計算すると3の3乗×4通りもでてきます。もちろん、これはほんの一部です。にもかかかわらず、今まで学びの経路あるいは打ち手は限られたものでした。もはや無限なのですが、そうなると評価ができないのだと。

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★だから、今まではその学びのプロセスではなく、結果をみてきたわけです。しかし、結果も過程の一部なのに、そこだけで評価をすると他のプロセスの才能の芽が見逃されてしまうわけです。それでは、イノベーションなんて起きにくいですよね。

★しかし、生成AIのおかげで、そこのプロセスが明示されるようになってきたわけです。

★よく生成AIを使うと思考停止すると懸念されます。しかし、それは人間同士の対話においても思考停止は頻繁に起きてきたわけです。結果だけの評価=サマティブ評価は、まさにその大きな原因になってきた可能性があります。

★私たちが対話する時、単純な5W1Hの問いを投げ合うと、それは挨拶や日常の会話の時にはそれでよいけれど、PBLやグループセッションのときには、それだけでは思考停止してしまいます。

★少なくとも自分の考えをお互いに200字から400字くらいの言葉の塊にしてキャッチボールしないと対話は続きません。思考は広がらないし深まらないのです。

★生成AIと対話するときも同じです。ですから、生成AIを活用するとき、倫理的配慮、法的順守以外に、三角ロジックやアブダクションという推理方法で200字から400字くらいの言葉の塊の自分の考えを投げかけ、生成AIに君ならどう考える、もっと別な考えがあるのかと問いかけ、生成AIが回答してきたら、その回答に対しフィードバックしながら対話を続けていくスキルも必要になってきます。

★すると、東大の入試問題の記述の問題くらいの思考力は、別に東大受験をしなくても身につくし、それ以上に東大の帰国生・留学生対象の正解のない小論文に対応する思考力も身についてしまいます。

★知識も、生成AIと話す段階で、君のその知識違うんじゃない、僕もおぼろげなんだけれどとか語ると、申し訳ございません、間違っていました。こうですよねと答えてきます。それも間違っている場合があるので、調べて、この本によるとこうだよと語ると、その情報はまだ私は知りませんでしたとなる場合もあるわけです。

★このような対話が、ふだんの授業で頻繁にできるでしょうか?生成AIを活用しながら授業も変容せざるを得ないでしょう。確実に第4の波はやってきています。

 

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変わる私立中高(37)中学入試市場の第4波シフトの意味 思考コードが映し出す学習観の水平的多様性への移行

「GLICC Weekly EDU 第130回「首都圏模試センター×GLICCー2024年度中学入試最新情報」北一成氏の予想」で、北氏の考え方からインスパイアーして、中学入試の第4の波へのシフトを妄想したわけです。2014年から右肩上がりの首都圏の中学入試の第3の波の大きな要因を北氏は、「学び方の変化」と指摘しています。それがゆえに、思考力入試や英語思考力入試など新タイプ入試が急激に増えてきた可能性が大だと。

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★さらに北氏は、中学入試市場を3つのゾーンに分けており、そのうちCゾーンが勢いをつけてきた流れが、この第3の波が生まれてきたこととかかわりがあるのではないかと。そこで、このそれぞれの3つのゾーンの学習観を思考コードに対応させてみました。上記の図がそれです。濃い領域がそれぞれのゾーンの学びの重点領域です。

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★大学入試が一般選抜の受験生数が総合型選抜に比べまだまだ多いので、この3つのゾーンは、まだまだ垂直的序列主義の枠組ですが、世界の情勢が、この垂直的序列主義を水平的多様性に移行させる動きが相当でてきています。もちろん、それは限定的ではあるので、ある領域ZとY領域では、垂直的序列主義型ではあるけれど、Z領域内では水平的多様性になるという入れ子型のシフトの過程をたどることにはなります。

★この過程段階を中学入試市場においては第4の波だと妄想しているわけです。水平的多様性とは、あらゆる差別を見直し、フラットにしていこうという時代の要請でもあるのだと思うわけです。そうなってくると、3つのゾーンは融合していきます。

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★すでに、この第4の学習観はイメージされています。しかし、まだ学校現場では、すべてがこうなっているわけではないのですが、どのゾーンもこの方向に動くようにアフォードするコレクティブダイナミズムが多方面で起きています。高大連携然り、探究の学び然り、英語の学び然り、大学入試の多様性然り、インクルーシブ教育の必要性然り、エンパワメントの動き然り、SDGsの動き然り、人間の安全保障についても然り、グローバル経済の倫理ベース然り、アントレの重要性然り、平和創造の問題然り、リスキリング問題然り、シンギュラリティ―の加速化然り、あらゆるところで、学習観は、中学入試における第4の波へのシフトと同期していると思えてならないのです。

★第4の波の段階では、私立中高の学習観の水平的多様性を生み出しますが、公立との関係はまだ垂直的序列主義の関係が続いています。しかし、それはやがて、水平的多様性にならざるを得ないでしょう。そうすることで、大学のみならず、中高段階でも海外の生徒が日本に留学しにやってくるのです。この動きはすでに生まれています。少子高齢化が進めば、そうならざるを得ないでしょう。この段階が中学入試市場では第5の波となるでしょう。2030年から2050年の間に、それがはっきり見えてきます。内閣府が実施しているムーンショット計画との同期が起こるからです。

★英語でも日本語でも第4波の学習観で学ぶようになると、海外の中高大の留学生がかなり訪れるようになるでしょう。この動き自体は、内閣府や文科省、経産省の政策にも同期します。政策が実現するかどうかは、法整備とその内実である学習観の整備ということに気づくはずです。そして、これによって、1930年のケインズの予言が日本で的中することになるのです。

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2023年6月 3日 (土)

変わる私立中高(36)サバイブする学校とは?

★いろいろな学校の現場の先生方や理事長・校長・教頭と対話する機会が多いのですが、すごいなあと思う学校は、どんどん質と量ともに充実しているし、たしかに質と量の両方が右肩上がりになり、高めで安定し始めています。

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(ドネラ・プロジェクトの原稿では、質量ともに充実し続ける学校のケーススタディをしています。)

★たとえば、校長と話していて、少し学びの理屈や思考の話をしてみると、すぐに意気投合する場合、なかなかいいなあと思うのですが、別の機会に、教頭が少しそれに批判的で一般選抜が大事なんだと主張する場合、組織作りが大変だろうなあと思うわけです。

★その逆の場合もありますが、それは意外とよいのです。なぜなら、その教頭は、経営的な点で校長を支え、教学部分は任せられていて、新しい学びや活動に力を注げるからです。こういう学校は、校長が変わっても教頭と現場の先生方が一丸となっていれば持続可能なわけです。よほど理事会が現場の理解がない場合を除いては。

★さらに、校長も教頭もそして現場の教師も本当に一丸となって活動し、学びの理論についても進んで学んでいる学校があります。このような学校は文句なしですね。

★昨日もある学校でいろいろ多岐にわたる話を校長先生と教頭先生と対話しましたが、ぐんぐん伸びている学校の条件を揃えています。新しいつながりにもまずはやってみうようか本間さんと校長も教頭もすぐに動きます。「好奇心ーオープンマインドー問い生成」のコンセプトレンズを互いに持っているので、響き合います。

★私の周りには、幸いにもそのような先生方がいっぱいで、この間もある学校に訪れたら、その学校の副校長先生に、「本間さんコレクティブインパクトをつくるときに共通の尺度が重要だと言っていましたよね、私も本当にそう思います。多くの海外の学校と交流していく時に、やはり暗黙知としての尺度があるのはわかっていたんですが、確かにディスカッションしながらちょっと可視化していこうと思います」と声をかけられました。

★また、これは現場の美術の先生方の授業なのですが、いわゆるアート思考やデザイン思考など当たり前で、バウハウスのようなアート的なセンスと技術を生徒と共有する学びをナチュラルに自由な感じで行っているところは、ほんとうに生徒がフロー状態でプレイフルな雰囲気に満ちています。このような美術の先生方が自由に創発できる環境を創っている教務陣や経営陣がいる学校は、たしかに伸びていますね。

★チャットGPTの使い方など、もちろんセキュリティの問題や著作権の問題の議論もしつつ、実際に校長や教頭が使いながらメリット・デメリットを検証している学校もあります。頭から否定するのではなく、多面的に洞察していく思考習慣ができていて、かつ変わることに恐れを抱かないリーダーがいる学校もたくさんあります。この間もある学校の校長先生は、自らノートパソコンを持ってきて、いっしょに使いながら議論しました。そういうことだよなあとなんか爽やかでした。

★ことさら大きな声で言わなくても、予測不能な時代は今ままでもそうだし、これからもそうなのですから、校長や教頭のみならず教師の皆さんが洞察力と行動力の達人であれば、なんら問題ありません。実にシンプルで本質的なことです。どうやってその力をつけるの?研修ですか?そういのもありですが、日々、校長、教頭、教師が対話しまくり、生徒のエージェンシーを生み出す環境づくりに試行錯誤して汗を流していれば、シンプルで根源的なものが見えてくるものです。もちろん、世界への眼差しは当然ながらその対話には織り込まれています。

★中学受験は、第3の波から第4の波にシフトします。このままいけば、その波を生み出す学校もあるでしょう。その波にうまく乗る学校もあるでしょう。飲み込まれる学校もあるでしょう。しかし、すべての私立学校が生み出す側になるように微力ながら動きたいと思っています。

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変わる高大連携(02)八雲学園のイエール大学との成長する連携②

★二日目は、めぐろのパーシモンホールで、イエール大学の<Whim’sRhythm>(アカペラの音楽チーム)とのコラボコンサートが開催されました。

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★Whim′s Rhythmは、40年以上歴史があるイエール大学のアカペラチームです。イエール大学には同じようなチームが10以上あるようですが、その中でも最高のクオリティを有していると言われているようです。

★そんなチームと八雲学園のミュージカル部<glee>と声楽部とそれぞれコラボして演奏します。もちろん、Whim's Rhyrhmのアカペラコーラスの作品が多いのですが、八雲学園のチームがいっしょに英語で歌ったり、日本語でも一緒に歌ったりと響き合うその姿にグローバルなつなりとはこうでなくてはと思わせるものがありました。

★このイエールの大学のチームメンバーは、音楽を専門にしているわけではないのです。生態学、芸術学、比較文学、mん俗学、心理学、環境学、演劇学、歴史学、データサイエンス様々な専門領域で学んでいます。多様性のチームです。

★八雲学園の生徒は、毎年このチームとの出会いを楽しみにしにしています。ウェルカムの式典とパーシモンホールでのコンサートは、全学年が参加します。1日目の交流は、中3と高2の学年が全員でもてなし交流します。それから、声楽部、glee、吹奏楽部、軽音楽部は、共に演奏を楽しみます。

★特に、声楽部とgleeは次の日のコラボ演奏の準備をします。時間はそれぞれ30分ですが、その日までに互いに練習をしてきていますから、あっという間に調整ができます。

★また、高3のEクラス(帰国生や英語の得意な生徒の英語取り出しクラス)は30人くらいて、そのうち高校から入学した生徒は、ランチの時間にone to oneで、対話をする機会を持ちます。英語をもっとうまくなるには?海外大学での暮らし方とは?今回の旅の目的は?など途切れることなく英会話を楽しむわけです。

★八雲学園は、特にイナーナショナルクラスというシステムはありませんが、それはあえて作らないのです。八雲生が全員がバイリンガルであることを目指しているからです。10人前後のネイティブスピーカーの先生もいるのです。英語科のミーティングは当然英語です。

★イエール大学の学生が去ったあと、今度は姉妹校ケイトスクールの生徒が10人八雲学園を訪れます。同校はラウンドスクエア加盟校でもありますが、他の加盟校の生徒も交換留学で毎月のように訪れます。

★また夏にかけて2クラス分の人数の生徒が、アメリカに研修旅行に出かけます。

★八雲学園の考えるグローバルリーダーとは、イエール大学の学生と同じように、いろいろな専門領域でリーダーシップを発揮するということです。つまり、結局、生徒1人ひとりの独自の才能を生かせる領域でグローバルに活躍することを目標としているということでしょう。

★たとえば、ケイトスクールにおいては、そういう教育を特別にことさらグローバル教育とは呼びません。当然のことだからです。八雲学園はラウンドスクエア加盟校として同じポジションあるいは水準に立っているということなのです。

★このことに気づいた受験生の保護者が注目するのが八雲学園なのです。近藤理事長・校長も、「これがうちの高大連携の真髄だよ」と。

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