トランジション教育型学校

2023年4月12日 (水)

東京私学教育研究所情報(02)令和5年4月29日(土)研究協力学校「中央大学附属中学校・高等学校 発表会」 

東京私学教育研究所の研究協力指定校である中央大学附属中学校・高等学校の発表会が、令和5年4月29日(土)10:00 ~ 12:30、中央大学附属中学校・高等学校「視聴覚ホール」で開催されます。

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★発表内容は、

・コンピテンシーベースの観点別評価体制の構築

・コンピテンシー自己評価アンケート分析結果報告

・探究学習を中心としたカリキュラムができるまで

・協働的に探究学習を進めていくために

★多くの学校において、新学習指導要領改訂に応じて、教科横断学習・探究学習をの模索が始まっています。同校では、それを見据え、先進的なカリキュラム設計に挑んでいるのだと思います。中学3年生から高校3年生まですべての年次において教科横断型授業の学校設定教科「教養総合」を設置し、大学という高等教育に向けた学びの階梯を築く新たな実践は、多くの学校にエンパワーメントすることになるでしょう。

★とりわけ、同校の在校生のみなさんの「学習意欲」を生み出している実践発表ですから興味深いですね。

★参加後、感想などまたお知らせします。

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2023年4月11日 (火)

2024年中高生の行方(03)進路指導はトランジション教育へ

<大学生6人のグループ「Blined Project(ビーラインド プロジェクト)」が、視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しめるゲーム「グラマ」を開発した。おもりの重さを言葉で説明し合い、てんびんに載せてつり合ったら「成功」>。東京新聞(2022年5月23日)の記事です。記事のタイトルは<視覚障害者と晴眼者、ゲームで心一つに その名も「グラマ」 大学生グループが考案>。

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(写真は、ビーラインドプロジェクトのサイトから)

★このプロジェクトは、現状はNPO的な起業のスタイルのようですが、やがては財団とか社団とか企業とかNGOとかいろいろな選択肢が広がっているのでしょう。

★メディア的には、自分たちの発想と活動と生産物の循環が、社会貢献という領域にしっかりつながっているのがまずはおもしろいのでしょう。わたくしも素敵だと思うし、興味深いわけです。

★教育的な側面からは、このような活動の源が中学校の時や高校の時のプロジェクトベースの体験にあったのだとしたらすてきだなと。というのは、大学受験勉強をして合格したら終了という従来型の勉強ではなく、大学に入ってから、社会に出てからも身近な気づきを共有するメンバーを巻き込み、逆に巻き込まれ見れども見えなかった世界を創っていく、言語の限界は世界の限界だという言説を逆手にとって、その限界を新たな言語をつくって、突破していくというエージェンシーとかコンピテンシーとかいわれているパワーを生み出していくトランジション教育の1つの象徴的な活動をこの6人の大学生は体現していると感じるわけです。

★このようなケースがどんどん増えれば、ますます中高はトランジション教育を進路指導やキャリアデザインに置換えていくことでしょう。もちろん、トランジションという言葉はどうでもよいのです。ただ、進路指導というより新しい感覚が伝わるかなと。立教大学の中原教授などが言っている言葉を借りてきているだけですが。

★ともあれ、このようなトランジション教育が中高で行われれば、ディストピア的なシナリオは避けられるのではないかと楽観的に思っているのです。

★それにしても、このプロジェクトのネーミングがすでに、新しい世界を可視化しています。Blinedということばは、Blindという視覚が不自由という言葉を解消する造語になっていると思いませんか。Bとeを差し込んでいるのです。つまり、Be。blindというのは、感覚としての目以外にも心の壁として目が見えないという意味がありますね。マスクをかけるとか真実が見えないとか。

★つまり、視覚障害者には難しいと思わせていたアンコンシャスバイアスというブラインドを開いてしまう存在の光という意味が加わっていて感動的です。もちろん、私の勝手な主観で妄想にすぎません。それでも、新聞記事の意図からはそう外れていないのではないかと。

★そして、このゲームのネーミングも洒落ています。フランスの哲学者デリダのグラマトロジーのグラマにかぶる意図があるのではないかと。この哲学者もまた「存在」について思い巡らしました。私は哲学は門外漢なので、詳しいことはわかりませんが、存在するようにするものと存在するようにされているものとか、見えるようにするものと見えるようにされているものなどの差異をめぐって展開するコンテクストがあった時代の人だと推測します。

★そして、ここのパラドクスは存在するようにするものも見えるようにするものも、気づかなかったり見えなかったりするということです。ここにアンコンシャスバイアスが広がる理由があるのでしょう。

★しかし、それに気づくのは五感であるから、気づかなかったり、見えなかったりするのだけれど、関係性の中では、それは気づくことができたり見ることができたりするのでしょう。

★デリダがそういう感じだったかどうかは、私はわかりません。たんなる妄想です。

★しかし、このような妄想をこんこんと湧かせる衝撃が、このプロジェクトや作品にはあります。ケアリングだったり、哲学的だったり、作品と参加者のつくるダイナミクス空間というパフォーマンス全体の息吹を生成するインスタレーション的だったり。

★このビーラインドプロジェクト(記事には6人とあるが、今では8人)のメンバーは中高時代、あるいは大学に入ってからかもしれませんが、マルチプルインテリジェンシーズをフルに生かす体験をしてきたのではと。

★ともあれ、このようなZ世代の新しい動きは、今までのスタートアップやアントレなどとこれまで注目されてきたものとはどこか違う動きだと思います。どこが違うのか?それはこれから多くの人がかかわることで、時代が明確にするでしょう。

★ここに書いたものは、私のあくまで妄想です。刺激を受けて書きたくなっただけです。6人の大学生がどう考えているのかということとは無関係です。ご了承いただければ幸いです。

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2023年2月 9日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(33)明日のGWE115回でノイタキュード代表北岡さんと<ノイタキュード>する時、内生的成長の一般化をしてみます

★明日、第115回GWEで、主宰の鈴木さんと、ゲストの北岡さん(ノイタキュード代表)と、今年の中学入試問題から私学について<ノイタキュード>する対話をします。私は、学校の頭脳とハートを見るのは、学校説明会やパンフやサイトではなかなか気づかないと思います。説明会の半分以上を生徒自ら主体的に説明し表現してくれれば、それはまた別ですが。やらされてる感満載では、見えにくいですね。

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(明日のGLICC Weekly EDU 第115回「2023年度中学入試を振り返る②~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」をぜひご視聴ください。) 

★その点、かえつ有明の生徒は、主体的に説明会のみならずいろいろな企画を立て世のため人のためアントレしてしまいますから、このレベルであるかどうかが1つの基準だと思います。

★これからは、そういうダイナミズムが生まれてくると思いますが、それがなくても、入試問題を見ると、すぐにその学校の頭脳やハートの魅力がわかります。

★特に社会科ですね。社会の入試問題は、その学校の頭脳やハーとの真髄がわかります。知識集積型か世界の痛みを課題解決する深い学びや調べ学習を超えた探究活動が行われている学際型かがわかります。

★灘のように、社会科の入試問題がそもそもないという場合は、国語の文学的文章、特に詩の問題ですね。ここには教育や学びの真髄が見え隠れしています。

★麻布や武蔵のように全教科にその真髄がすべて反映している学校は稀です。

★この両校は、思考コードのB3やC軸の問いが創られています。生徒が未来をどう形づくっていくのか、その問いの中に才能を開く仕掛けがあります。過去問を学びながら、その才能が花開きかけた状態で、入試に臨み、6年間で開花していくわけです。そして社会で実を結ぶのでしょう。落合陽一さんのように仮にうまくいかなくても、その中学入試の学びは、おそらく今の落合さんを生み出す要因の1つではありましょう。

★そのような学びを昨年私はトランジション教育と呼んできたわけです。

★そのトランジション教育について、shuTOMOで7回連続で書く機会を頂きました。全部で約5万字ですから、まだまだ語り足りないのですが、その過程で、このトランジション教育の根っこには、ドネラ・メドウズのミーム(文化遺伝子)があるなと感じました。

★すると、鴎友学園女子の今年の社会の入試問題(第1回)で、ドネラが中心になって執筆した「成長の限界」出版50年目にして、そのミームを継承するレポートが2つ世に出たのすが、そのうちの一つ「人間の安全保障についての特別レポート」を素材に問いを創発されていたのに遭遇しました。

★そんなわけで、ドネラ・プロジェクトが50年かけてしっかり潜在的に広がっていることを改めて感じた次第です。

★明日は、私は入試問題を<ノイタキュード>して見えてくる「ドネラ・プロジェクト型学校」という内生的成長を果たしている学校の1つのモデルをお二人に話してみようと思います。

参照①)GLICC Weekly EDU 第114回「2023年度中学入試を振り返る①~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」

参照②)GLICC Weekly EDU 第112回「2023年中学入試~出願状況から見えるコト」

 

 

 

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2023年1月23日 (月)

2023年首都圏中学入試動向(08)成城学園第1回入試出願数前年を超える

★1月21日現在(日能研倍率速報)、成城学園の第1回入試の出願数前年対比は、103.5%。数日前から100%を超えていました。第2回は78.4%ですが、東京の共学校全体の出願状況は、前年対比63.5%ですから、同校の出願の動きは勢いがあります。直前受付もあるので、第2回も前年を超えるでしょう。

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「shuTOMO 第14号(2023年1月9日発行)」に成城学園の教育について記事を書きました。ご参照ください」

★成城学園は、ご承知の通り、大正自由教育を継承しつつ、ある意味デューイの経験主義やプラグマティズムの現代化を進めています。したがって、フリー、フラット、フェアー、フラタニティな雰囲気の学校です。

★教師と生徒のつながり、生徒同士のつながり、同窓生と在校生とのつながりなどが豊かで、多様な高大連携、自然体験、グローバル体験、アントレ体験など1オンスの体験は10トンの理屈に勝るというデューイの考えそのものを実現しています。

★受験生の男女比は、少し女子の方が多いですから、そういう意味でもデューイが目指した格差のない社会づくりを射程に入れていることもわかります。女子生徒も男子生徒も、それぞれ一人の人間として自分の才能を広げ、発揮していける環境がデザインされています。受験生が魅力を感じないわけがありませんね。

※成城学園の教育についてディープな情報については、次の動画をご参照ください。

① GLICC Weekly EDU 第104回「成城学園中学校高等学校ー探究が開く未来」

② GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」 

 

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2022年11月29日 (火)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(06)22世紀型教育に移行しつつあるかえつ有明の動向

★かえつ有明の広報主任内山誠至先生から国際生入試などの中間報告の連絡がありました。一部ご紹介します。

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(インスタグラムも人気です)

★「2023年度国際生入試の途中経過」
中学入試 Advanced選考 11月20日(日)AM 出願240 受験228 合格177
中学入試 Regular選考 11月20日(日)PM 出願115 受験103 合格36
高校入試 Regular選考 11月20日(日)PM 出願27 受験26 合格9

中学入試 Honors選考 12月5日(月)AM 出願231(11月27日時点)
高校入試 Honors選考 12月5日(月)AM 出願29(11月27日時点)

★すっかり定着したかえつ有明の国際生入試。すでに学内の帰国生シェアは約30%のようです。すべての学びがプロジェクト型で、自律分散協働系の生徒組織。22世紀型教育へシフトしています。立地がすでに、そのような教育を志向する家庭層が集結していますから、人気上昇はとまりません。

★「今後のイベントのご案内」
 ●中学入試体験会 12月10日(土)8:30~10:45
 ●第2回中学入試説明会 1月14日(土)10:00~11:30 (オンライン実施)
 ●学校見学会 毎月数回実施中

★かえつ有明のようなプログレッシブでマインドフルネスな学校が増えていくことは、日本の教育を変えることになるでしょう。

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2022年11月 2日 (水)

工学院大学附属中高が世界の学校である理由

★先週10月28日(金)、101回目のGWEに工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)の教務主任田中歩先生が出演。工学院の教育がなるほどもはや世界の学校であるということが伝わってくるお話を聴くことができました。初等中等教育学校レベルで、学校全体が丸ごと世界で通じる学校というのは、日本には数少ない貴重な存在です。その一つが工学院であるのです。2時間弱に及ぶトークをここでまとめるのは私の力では難しいです。ぜひご視聴ください。配信して4日も経たないにもかかわらず、すでに多くの方がご視聴されています。それだけ工学院は注目されているということです。

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GLICC Weekly EDU 第101回「工学院大学附属中学校・高等学校ー世界の学校になる。Becoming a School of the World」

★今回、歩先生のトークをお聴きして、改めて気づいたことは、工学院の教育と従来型教育の決定的な違いでした。従来の暗記型教育では、VUCAの壁にはねのけられてしまう。つまり、世界に通じない教育を行ってしまう。それでは、Z世代の未来は開かれない。さてどうするのか?

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★そのスーパーモデルが、実は工学院の教育であるということが納得のいく歩先生のトークでした。工学院の教育の凄いところは、VUCAの壁を突き抜けるのは、一部の生徒ではなく、すべての在校生が突き抜ける才能を開き、未来を拓く力や技術を実装してしまうという点です。

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★では、その具体的な仕掛けやマインドは何か?そのことについて歩先生は詳細に語っています。ぜひご視聴いただきたいと思います。また、明日の首都圏模試主催の合判模試で配布される情報誌「syuTOMO11月号」でも、この仕掛けの一端を6ページでご紹介させていただいています。歩先生の今回の話は、その6ページで紹介した内容をはるかに超えてしまう内容があります。

★ですから、今回のGWEの内容のナビゲートになるかもしれません。合わせてご購読いただければと思います。

 

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2022年10月21日 (金)

変わる富士見丘(2)「2つの体験と先進的教育施設」というコンセプトレンズでサーチする

★富士見丘の教育の質は、同校が実施している「SGH」「WWL」「英語教育」「海外留学」「プロジェクト学習」「探究学習」「進学実績」「高大連携プログラム」などなど多様な教育活動を紹介するだけで、そのスケールの大きさ奥行きの深さが伝わると思います。ただ、他校と比べて富士見丘の教育の質がどれほど豊かなのかということは、なかなか伝わりません。そんな比較はいらないと言われるかもしれませんが、偏差値垂直序列ではなく、教育の質という水平的多様性を表現することは、互いに質の向上を果たそうとする推進力になる可能性があります。そこで、その水平的多様性を見るコンセプトレンズとして「2つの体験と先進的教育施設」を活用してみたいと思います。

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★その場合、部活と文化祭をあえて体験の中から外します。富士見丘の部活や文化祭はとても活発で、グローバルレベルのものもありますが、それをあえて、このコンセプトレンズから除きます。するとある学校だったら、この2つを除くと、教科学習と進路指導しか残らないところもあります。富士見丘はこの2つを括弧に入れても、豊かな「コア体験(全員参加型体験)」と「バッファー体験(個別最適化体験)」がたくさんあるのが明快になります。

★また、「先進的教育施設」があるのに気づくでしょう。この施設は、たんに校舎という意味ではありません。学際的学びや探究的学びの拠点だったり、教育理念のマインド育成の場だったりします。それに、施設は、リアルスペースだけではなく、webでつながるサイバースペース上にもあるのです。富士見丘はもちろん両方存在しています。

★それから「体験」にこだわったのは、新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」と表現されるアクティブラーニングあるいはプロジェクト学習で、体験のないものもあるからです。

★今、18歳成年の時代を迎えています。それまでにSTM(Self Transforming Mind)を育てなければ、未来社会の進化を持続可能にする人材が足りなくなるといわれています。富士見丘では、このSTMのことをグローバルコンピテンシーと呼んでいます。

★このSTMとしてのグローバルコンピテンシーが育つには、プロジェクト型学習や探究学習などが必要ですが、その背景にはリアルな体験が必要です。体験なきプロジェクト学習や探究学習は、文献リサーチで終わりがちです。

★その場合、気づきは文献の枠内に限られます。気づきは疑問や問いという形で生まれてきますが、文献リサーチは、すでに誰かに発見された既存の問いを見つけるというよりは、文献の中から抜き取って終わる場合が多いのです。結局先人たちが気づいた問いを並べることになりがちです。

★それでは、Aをインプットし、記憶し、またAをアウトプットするという学びになってしまいます。ところが、体験をベースにすると、Aをインプットして、ディスカッションし、論文編集をし、プレゼンするという探究過程を通過することによって新しい見方Xがアウトプとされることが多いのです。つまりA→Xという自己変容を生み出すことができるのです。

★もちろん、体験をDoするだけでは、おもしろかったとかつまらなかった程度の反応で終わることもあります。生徒は、体験したら、探究型あるいはプロジェクト型のプロセスを通過することで、ワクワクするようなアイデアとスリリングな実現方法を生み出すわけです。

★富士耳丘の生徒は、この知のトランスフォームを生み出す学びを行う環境が緻密にかつ大胆に用意されています。

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2022年10月20日 (木)

変わる富士見丘(1)帰国生だけでなく、一般受験生にも人気

★ドネラ・プロジェクトを開始して、すぐに富士見丘こそドネラ・メドウズの文化遺伝子を引き受けている女子生徒ばかりであると思っていました。しかしながら、少人数学校でありながら、多様なプログラムが溢れていて、簡単には記述できません。GWEで佐藤先生や田中先生と対話するとますます奥が深く動画で紹介するのが一番だと思っていました。

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(写真は首都圏模試センターの学校特集<富士見丘中学高等学校2022「自分はできる」自信をもつことで、世界を変えられる力を培う>から)

★今でもそう思っていますが、富士見丘の教育の質が他校とどう違うのかをいかに表現するか、あるいは論じるかについて考案するのは、富士見丘の先生方は行わないでしょう。富士見丘の先生に限らず、一般に、学校の先生は、他校と比べてうちは優れているというような考え方や表現はしないものです。

★それは第三者が勝手に行うものだという認識だと思います。ですから、私には、私立学校研究家としての立場からそれを考えていくことは許されるでしょう。もちろん、他の学校を貶めるようなことはいたしません。富士見丘の教育の質という、なかなか見えにくいものを見やすくするにはどうしたらよいかということを考えたいと思います。

★どうしてそんなおっせかいをと言われるかもしれません。確かにそうかもしれませんが、生徒にとって、自己変容でき、自分の才能を豊かにし、結果的に社会を善い方向に変えられるグローバルコンピテンシーを身に付けることができる学校があるのであれば紹介しないわけにはいかないし、ましてそのクオリティーが高いとなればなおさらでしょう。

★とはいえ、私が紹介するまでもなく、多くの受験生・保護者が気づき始めていますから、やはりおせっかいにすぎないかもしれません。

★10月の首都圏模試主催の合判模試の同校の志望者数をみて、それを確信しました。合判模試受験生のうち、富士見丘を2科目で受験したいという生徒は、同月前年対比で、147.2%(昨年89名、今年は131名)でした。

★今まで富士見丘は、帰国生にとって超人気校でした。もちろん、今もそうです。しかし、この147.2%という数字は、今や一般生にとっても人気校になったということを示しています。

★なぜこのように人気が高くなってきたのか?言うまでもなく、教育の中身が魅力的だからです。どうです。その魅力を生みだしている教育とは何か気になりませんか?気になるはずです。ということで、少しずついっしょに考えていきましょう。

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教育の質の高い中身を選択する時代(17)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学⑤工学院大学附属中学校・高等学校 写真が映し出す特色!

★高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学セレクト20の学校を五十音順に紹介しています。今回は工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)について。詳細は、同誌をお読みいただければと思いますが、ここでは、同誌で掲載されている写真のインパクトについて気づいたことを書きとめておきます。

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写真は、首都圏模試センターから

★この写真は、授業中の一瞬を撮ったものです。ハッとしませんか?教師も生徒も希望と自信に輝く眼差し。その向こうには未来があるという感じです。しかもその未来は遠くにあるのではなく、工学院のPBL型授業といういまここから生まれている。おそらくプロジェクターで投影しているのでしょう。

★この一枚の写真を撮り、選択したライターの目利きは凄いなあと感動してしまいました。

★同誌は、半分は紙媒体で記事になり、続きはQRコードから首都圏模試センターのサイトに飛ぶしかけになっています。限られた紙片に収まり切れない部分は、サイトでいうICT社会ならではのリアルとサイバースペースをインテグレイートした編集です。

★そのサイバースペースの方に、こういう記事があります。中野校長の言葉が印象的です。

中野校長先生は、「工学院は、目標に向かって目をキラキラさせている生徒が1番の自慢ですが、次いでそれを支え伴走している教職員も自慢です。工学院の教員は、決して教え込んだり、引っ張ったりするのではなく、生徒を励ましたり、やる気にさせたりする伴走者です。その伴走者がワクワクしながらそれぞれの専門科目の楽しさを伝えていくことで、そのワクワクが生徒へ伝わり、『先生が楽しそうだからやってみよう』と考える生徒が出てくると思うのです。だからこそ教職員にも生徒と同じように”挑戦”してほしいと思っています。」と語る。工学院の教職員がワクワクしながら、日々生徒たちと接することが、生徒たちの挑戦するエネルギーに自然となっているのだろう。自ら考えて失敗を恐れず積極的に挑戦し、仲間と連携して新しい価値を創造し、人間性豊かな社会の構築へ主体的に貢献することができる、工学院大学附属中学校・高等学校の教育に是非とも注目してほしい。 

★この一枚の写真の意味が、ここには記述されているではないですか!この意味が確かに伝わってくる写真です。何というインパクトでしょう。工学院の特色を一瞬にして丸ごと映し出しているのですから!

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2022年10月19日 (水)

ドネラ・プロジェクト(03)中村桂子さんとイノベーション・ジャパン2022と総合型選抜

★学問する人のポータルサイト「トイ人」は、総合型選抜に挑戦する高校生には参考になるサイトです。どいう点で参考になるかというと、専門的な学問の役割が変わってきたということがイメージできるし、総合型選抜の時点で、学問そのものについて入り込む必要はまだなく、その新しい役割を担っている学問の前提を自分の生き方の視座とすることの重要性に気づくことです。たとえば、ドネラ・メドウズと同時代人の中村桂子さんの連載は、文系理系関係なく読んでみてはどうだろうと思います。

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★それから、今実施されている「イノベーション・ジャパン2022~大学見本市&ビジネスマッチング~Online」(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)」もとても参考になります。

★中村さんの連載もイノベーション・ジャパン2022も、ドネラの文脈であるSDGsという発想を受け入れていますから、2030年問題に直面する今の高校生・大学生にとって身構え、クリアする発想とアクションを洞察する貴重なリソースになります。

★中村さんの連載は読むことができるし、イノベーション・ジャパン2022年は無料で視聴できます。もちろんこのイベント自体は、かなり専門的なので参加者の研究内容や、大学の研究とマッチングさせたいと企図して参加している産業の事業内容の一覧を読み解くだけでも大切な気づきを得るでしょう。

★中村さんの発想やイノベーション・ジャパン2022で行われている研究の根っこには、「リアルな問題発見」があります。その問題解決のためには、才能と技術と寛容性が欠かせません。寛容性があると、リアルな生活者の問題に気づくものです。その気づきは、自己の根っこにある才能を気づかせてくれるでしょう。そして、その才能を生かすには多角的な技術が必要になります。

★それから、中村さんが語る「世界観」が大事ですね。中村さんは、人間というものは、古代から現代、未来にあって、生き方という物語を創っていくものだと。現代にあって、その物語を紡ぐことは、「世界観」という言葉に置換えてもよいと。そして、哲学者大森荘蔵の言葉を引用しながら、次のように語っています。

「自然をどう見るか、生活をどう見るか、そしてどう生活し、行動するかである。宗教、道徳、政治、商売、性、教育、司法、儀式、習俗、スポーツと人間生活のあらゆる面が含まれている」と哲学者の大森荘蔵先生から教えていただきました。生き方を組み立てると言えばよいでしょうか。 

★やはり、ドネラ・メドウズとシンクロしていますね。大森荘蔵の考え方は要素還元主義ではなく、関係総体主義で、ドネラのシステム思考と響き合います。

★このような世界観を才能と技術と寛容性を有した生徒が紡いでいく。生徒1人ひとりの才能が注がれる関心事は、違いますから、多様な新しいイノベーションが生まれる。ただし、それをキャッチできる産業がないとアクションを実現できない。

★だから、どのような産業があるのかリサーチすることは大事。なければ、新しく創る。そうすると産業構造自体も変わっていく。学問の役割はここまで広がっています。

★そんな人間育成の出発点が「総合型選抜」だといいなあと思います。かりにそうでなくても、「総合型選抜」という場をそのような人間力形成の場として活用すればよいわけですが。こうなって欲しいなあと発信していくうちに、そのような動きは当然だという大学がたくさん出てくるような気がします。実際そういう動きになっていると思いますが。

★ドネラ・プロジェクトとは、そんな人間力を育成することにパッションとコンパッションを抱いている方々(本ブログでは初等中等教育の先生方が中心ですか)を探して、ここにメモしていこうという目的も一つです。

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