成城学園

2023年11月 9日 (木)

成城学園 文化人類学的体験を通して哲学する

★前回は、C1英語の学びは日本の教育を変えるレバレッジポイントになると話しました。なぜなら、無意識のうちに英米の哲学的シンキングが身につくからです。東大の松尾豊教授や千葉工大の伊藤穰一学長のように、AIも人間も多言語であれば能力の精度は上がるのだと語るのも、メタ哲学とかメタ思考が互いに相互補完するからです。実はこのメタ思考の相互補完が大事であれば、C1英語に限らずいろいろあるのです。

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 GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」

★たとえば、成城学園の教育が格好の例です。相互補完する教育プログラムが多すぎて、最近GWE(GLICC Weekly EDU)で、同校の青柳先生のお話は、一つのテーマを深堀するのがルーチンになってきました。説明会では概要の話にならざるを得ないのでしょうが、動画では1つのテーマを深堀することができます。

★最近では、成城学園の6年間通しての体験プログラムのデザインについてお聴きできました。すると、なるほどこれは文化人類学的な体験だなと感心してしまいました。ロジカルシンキングはもちろん大切だし、ふだんから成城学園は実施しています。

★しかし、そのような「科学的思考」ではとらえきれない、レヴィ・ストロースが見出した「野生の思考」を体験の中で開発していくのだということがわかりました。「野生の思考」とは最近のフレーズでいえば「非認知能力の思考」ということでしょう。

★レヴィ・ストロースは、「科学的思考」と「野生の思考」のバランスを考えていたと思います。まさに両思考様式の相互補完ですね。

★実は、別のGWEの回では、青柳先生は、国語の授業の中でトウールミンモデルを活用しているとお話しくださったことがあります。京大の松下佳代教授も「探究」の中で、推奨している手法ですね。松下教授の中でも「探究文化」と「受験文化」の相互補完の話が出てくると思いますが、要は相互補完ですね。それがあるから一つの方向性に固執しない「訂正する力」が東浩紀さんではないですが作動するのでしょう。

★それはともあれ、トゥールミンモデルも、イギリスの分析哲学者トウールミンの開発したモデルです。まさに哲学シンキングそのものなのです。

★ですからC1英語ではなくても、青柳先生のようなC1日本語をトレーニングする授業があれば、メタ哲学が作動して、体験とメタ哲学が相互補完し合うわけです。このC1日本語をもってして、生徒が他教科を学ぶと自己組織化された教科横断が生徒の内面で作動するのです。

★おそらくそのような生徒は多言語に関心を持つでしょう。大正自由教育から今もその燈を燃やし続けている成城学園の日本の教育における歴史的意義はこういうめちゃくちゃ具体的状況に生きているのです。この具体的状況という生の中に浸って教育を創り続けている教師の存在。これこそ、具体的生の中で、教師や生徒という仲間と共に生を創り上げる文化人類学的所業であり、そしてその中で哲学する姿です。今、シリコンバレーで文化人理学的なアクションとその中で思考する哲学シンキングが重要だとされていますが、成城学園はすでに大正時代から行っていたのです。

★なんといっても、100年前に生まれた文化人類学は、デューイと相互補完関係にあったのですから当然です。

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2023年11月 1日 (水)

2027年から移行措置が始まる新学習指導要領がヤバイ!?

★少子高齢化やエネルギーの転換、AI時代突入など、2027年から移行措置が始まるだろう新学習指導要領の改訂射程が次のような座標で表現できると予想します。

【学びをめぐる環境視座】

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★現状でもこの射程をビジョンに収めている私立学校はたくさんあります。しかし、もしかしたらやっているにもかかわらず、哲学なんてやっていないとか起業家精神も授業では育ててないとか、AIなんてまだこれからだとか、学びではなくまだ勉強だよなあとかいう声も聞こえます。

★確かに、まだまだ気づかれていないかもしれないし、部分的かもしれません。また文部科学省が直接このようなことをいう可能性は少ないかもしれません。

★しかし、シリコンバレーをはじめとする世界各地のイノベーションバレーが常にクリエイティブ×イノベーティブを進めるにあたり、マインドフルネスや哲学コンサルタントなどをいれているし、プロジェクトという学びは必須ですし、そもそも起業家精神であふれています。しかもThink globally, Act locallyというグローカルマインドがそれです。今やコンピューターサイエンスは生成AIをはじめとするAIイノベーションは当然の流れです。

★したがって、文科省や経産省がこの流れを無視することはないでしょう。

★まして、世界中が日本の田園都市構想にヒントを得た(そのことを日本人は知らずに軽視しているが、東急電鉄はそれを保守している)スマートシティーやエコシティーへ移行するわけです。

★上記の学びをめぐる環境視座が必要です。この視座を各学校の教育にあてはめてみて、どのくらい重なりがあるか?重なっている部分が多いほど選んだ方がよい学校です。塾も同様です。

★この視座は、孫泰蔵さんや伊藤穣一さんの考え方のレンズにも重なります。

★成城学園の青柳先生が、大学で教職教養の講義をされているようですが、そこで孫さんの「冒険の書」を紹介されたということです。素敵で過激ですね。しかし、教師志望者にとって未来の学校で教鞭をとる時は、上記の【学びをめぐる環境視座】が拡張していることでしょう。

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2023年10月 7日 (土)

成城学園の魅力 多様な国内外の体験学習の意味

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」で同校の青柳圭子先生(広報部部長)のお話を聴けました。中学から高校まで、海や山の大自然の中で体験からオーストラリアやイギリス、カナダ、アメリカなど多様なプロジェクトがマルチスパイラルを描きながら深く広くなっていきます。

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★高校の修学旅行は20コースあって、選択制だし、複数参加しても構わないというのですから、生徒の主体性が豊かになったいることを示唆しています。

★海や山の体験の3つの基本要素は、高校卒業までのプロジェクトにまで共通しています。それに英語だとか多様なアドベンチャーとか意思決定とGRIT精神などが自分事として高次に内面化されていきます。

★その3つの意味や具体的にどうプロジェクトが発展していくのかについてははぜひご視聴ください。

★今回さすがだとまたまた感じ入ったのは、このプロジェクトを企画し準備し実行しリフレクションする一連の過程の中で、生徒のみならず、教師も学び成長するのだと青柳先生は語るのです。

★学校の改革とか教育の改革とかは、制度的な改革ばかり注目されがちですが、実は生徒も教師も成長するというトランスフォーメンションが持続可能であることが、学校や教育の質がアップデートしているということでしょう。

青柳先生が学内外で活躍し、経験を積みながら理論も蓄積しているので、「意味付け」という哲学的洞察力が鋭く豊かなのです。受験生・保護者だけではなく、学校の先生方も必見です!共に影響し合いましょう!

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2023年9月12日 (火)

Awe体験ができるキャンパスが重要な訳 成城学園のキャンパス

東洋経済ONLINE2020/11/05 9:00の記事「大自然に触れた人の脳が驚くほど活性化する訳 ちっぽけな自分を感じ利他的に動きたくなる」は脳科学者岩崎 一郎先生(医学博士)が書いています。岩崎先生は、大草原や大海原、あるいは星空など、自然を前にして圧倒される経験のことをAwe(オウ)体験として紹介し、このAwe体験が人間のセルフレスや創造性を豊かにすると語っています。そして、大脳皮質のうち特に島皮質が関係していると。このAwe体験をもちろん知っている私はすぐにfacebookに投稿しました。すると同じくAwe体験を大事にしている成城学園の広報部長青柳先生は、この記事に共感を示され、コメントを書き込んでくださいました。

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(写真は成城学園のサイトから)

★青柳先生が共感されたのは、もちろんご自身生徒と共に山々を登頂する教育実践家でもあるからでしょうが、それがオール成城学園の教育の通奏低音として響き続けているからだとふと思ったのです。

★そして、サイトを検索して調べてみようと、同学園サイトを開いてみました。するとすぐに上記の写真が目に飛び込んできました。なるほど!と感動。というのも、このエントランスの階段は、大自然を呼び覚ます空間だと思ったからです。

★おそらく、階段を登らなくても、校舎に入れるようになっているはずですが、あえてこの階段を設計したわけです。このような階段や丘の上の私立学校は、登下校の時に大自然の息吹を覚醒するようにアフォーダンスされているのだと気づいたのです。

★イサム・ノグチの二つの庭園を見ればそれはわかります。1つはたとえば、パリのユネスコの日本庭園、もう一つは札幌のモエレ沼の庭園。両方ともイサム・ノグチの設計です。前者はいわゆる日本庭園風のモチーフですが、後者は完全にイサム・ノグチの彫刻で編成されています。前者は自然とイサム・ノグチのアイデアの融合ですが、後者はイサム・ノグチのアイデアが前面にでています。ピラミッドのような彫刻というか小山、プレイランドというなだらかなスロープを上り下りできる平たい広大な台形型の平原など。

★イサム・ノグチは、これらの作品は人々が歩いたり触れたりしたとき、はじめて彫刻は完成すると考えていました。多くの人のクリエイティビティが響き合うからでしょう。つまり、多くの人の島皮質が活性化する空間ということです。

★Awe体験の特徴として、岩崎先生は、アメリカ・アリゾナ州立大学のシオタ博士の研究を引用して、次のようなことを挙げています。

①マインドフルネスを行ったように、何ごともありのままに受け取ることができるようになる

②心と身体をリラックスさせる

③好奇心を引き出す

④人と心のつながりを作る

⑤利他の心を引き出す

⑥身体を健康にする

⑦創造性を引き出す

⑧希望に満ちた状態になる

⑨幸福感が高まる

⑩嫉妬心など、ネガティブな感情が少なくなる

★良いことばかりですね。もちろん、過ぎたるは及ばざるがごとしですが、基本セルフレスや創造性を生み出す島皮質に良い影響を与えるというのがAwe体験であるという脳科学の成果は、実感として合うような気がします。

★こうして考えると、リアルな自然体験の重要性が明快に科学的に裏づけられるし、Awe体験を覚醒するキャンパスの設計デザインもまた大切であるということになりそうです。

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2023年7月 7日 (金)

成城学園の社会科の入試問題から見える 成城学園の複眼思考力を育成する教育

★成城学園の中学入試問題は、興味深いものが多いので、ホームページで公開されたらときどき見てみます。今年も面白い問題ばかりですが、1回目の社会科の2番目の問題は、ちょっと感動的でした。

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★この課題文の理解には、深い学びが必要です。というのも、覚える問題というより、世界地図を眺めていたり、日本の地形を眺めていたりしていると推理して解ける問題が多いのです。問いのつくりも実におもしろいですね。

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★問2などは、「ロシア」を答えるのではなく、ロシアを説明している文を選ぶというラテラルシンキングを稼働させる問いがつくられています。世界地図を眺めておく必要があります。中学入試の段階ですから、世界地図を鳥瞰していればまずはよいのですが、この問題は、中高では地政学的な文脈で探究していくことが予想できますね。

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★また産業構造の転換を考える問題なのですが、当然中高では、この延長線上に未来の産業を探究する学びの場があることが予想できます。他にもSDGsに関連するような問いも出題されているし、鉄鉱石生産国ランキングを応えるような問いは、暗記というより、地質学的な想定というかパンゲア時代に知の冒険をするような学びが中高にあるのだろうなあとワクワクしてしまう問題でした。

★要するに、地形学、地政学、地経学、地質学、未来学など、複眼的な思考を養う深い学びが中高で行われていることが予想できる問題なのです。

★先に掲載した課題文の背景にこんなに多角的なアプローチが広がっているのです。学びとは何か?そのモデルが成城学園にはあります。それが分かる入試問題。すてきですね!

 

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2023年3月24日 (金)

2024年高校入試の行方(01)成城学園の魅力

★2023年の成城学園の高校入試は、推薦入試も併願入試もその出願数は前年を上回りました。2回実施した中学入試も同様でした。この人気の秘密は、簡単にいうと、受験生が、同校の伝統と革新の絶妙の統合を感じ、安心と希望と自由への期待値を高めるからでしょう。

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(写真は同校サイトから)

★具体的には、たとえば、サイトにこんな記事があるのですが、ここにも伝統と革新の絶妙の統合が映し出されています。その記事は「メディア委員会がSTREAMチャレンジ2023で優秀賞を受賞!」です。ぜひ読んで欲しいです。

★メディア委員会がソフトバンクロボティクス株式会社主催「STREAMチャレンジ2023」に出場し、見事Pepper部門の優秀賞を獲得したわけです。これは何を意味しているのか?まず委員会というコミュニティシップやプロジェクト活動がハイパフォーマンスだということでしょう。これだけで、ワクワクするでしょう。自分の好きなことを実践する場があるし、学内だけの活動ではなく、他流試合に挑戦することもできるのです。同校の場合は、同じような活動が多様にあるのですから、それぞれの受験生にとって期待が高まります。

★そして、そのコンテンツですが、「STREAMチャレンジ」(※)という実に革新的な挑戦です。ワクワクしないわけがありません。次世代を担う人材たちがロボットやAIなどの最先端テクノロジーを活用して社会課題に取り組み、社会実装に挑戦する探究的アクションだということです。素敵ですね。メディア委員会メンバーはPepperを使った「本や雑誌のRe活用」というテーマで課題解決に取り組んだとあります。本とロボティクス。伝統と革新のマッチングです。

※「STREAM」とはSTEAM教育に(Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)Arts(リベラル・アーツ)を統合的に学習する教育)にRobotics(ロボット工学)、Reality(現実性)、Reviewing(評価)の観点を入れ、頭文字のRを加えたものです。(同サイト記事から)

★学校で毎年約300冊も本・雑誌が廃棄されているという課題に目を向けたというところは、普段から探究やアクティブラーニングで、デザイン思考を実施していますから、身近なところにある一見小さな問題からグローバルな問題解決につながる発想<Think global, Act locally>が彷彿としているのが了解できます。

★プロジェクトA(古本の回収)、プロジェクトB(古本市の開催)、プロジェクトC(実施報告と次年度協力のお願い)という3つのプロジェクトを10か月以上かけて実践し、古本回収への興味を喚起させるクイズの出題(プロジェクトA)や古本市当日の呼び込み(プロジェクトB)などプロジェクトごとにPepperのプログラミングを行ったとサイトにはあります。

★本という紙を有効活用することにもなり、SDGsの活動にもつながるし、何より本の文化を継承することにもつながります。本は古くて新しいネットワークを開発する拠点ですから、デジタルの世界になっても重要です。アナログかデジタルか、そんな議論も活動の過程で当然されたでしょう。

★そして、有識者からのフィードバックでは、古本市を開催し売り上げを寄付するという実際の行動につながっている点が評価されたと。社会貢献への寄与度も高いわけです。これはとても大事なことを意味します。自分の好きなこと関心があることを探究活動していくことが、結果的に他者や社会に役に立つと実感した時、自分の存在であるbeingはwell-beingに変容します。

★Z世代は、ウェルビイング経営を行っている会社かどうかチェックするのが65%だと「学情」がデータ分析しているわけですが、それは学校選びも同じだと思います。

★成城学園のこのウェルビーイング教育は、メディア委員会にとどまらずあらゆる同校の活動に浸透しているのです。

参考)同窓生が語る成城学園の魅力→<GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」>

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2023年2月22日 (水)

2024年中学入試の行方(09)成城学園の社会の入試問題 学際的で探究的な時代を見る目を養える

★今年の成城学園の社会の入試問題は、大きな問題が2つ出題されましたが、どちらも食に関する問題でした。「食」をテーマに、地歴公民・時事問題すべてが関連して出題されています。まさに成城学園の学際的で探究的な教育が反映した、入試問題は学校の顔を体現した問題でした。しかも、1つめは、成城学園の伝統と革新を統合している「自由研究」そのものをベースに問いが創られていました。対話文は、まさに普段からそのようなプロジェクト型の授業を展開しているのだということも了解できました。

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(写真は、同校サイトから)

★そして2つめは、2022 年に行われた「G7臨時農業大臣会合」で出された「ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻に関するG7農業大臣声明」にかかわる問題でした。ウクライナのみならず気候変動やパンデミックなどのリスクや脅威を回避するために「連帯」する内容が議論されたわけですが、それについて多角的に問う問題でした。めちゃくちゃ意識が高い問題です。

★でも、知識がなくても考えて解答できる問いが多かったですね。

★このような入試問題に取り組んで中学受験勉強をする生徒は、自然と学際的で探究的な時代を見る目を身に付ける準備学習をするわけです。そして成城学園に入学するとそれが広く深く展開していくのです。成城学園は、中学受験勉強の時から、ウェルビーイングを生み出すエンパワーメントがされているのです。

★「ウェルビーイング」「連帯」「エンパワーメント」というキーワードは、相互に関連して社会変革のシナジー効果を生み出す2020年の世界共通のキーワードでした。身近な食というテーマから、こんなに広がるのですね。

★Think Global, Act Locally.世界に求められる学びの環境です。

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2023年2月19日 (日)

2024年中学入試の行方(05)ウェルビーイング教育 ハイデガーとトマス・アクィナス

★well-beingという言葉、だいぶ前から気になっていたので、今更ながらですが、ハイデガーとトマス・アクイナスが「存在」をどう捉えていたのか、ハオデガーの弟子であり神父でもあるヨハネス・ロッツの著書を読んでみますね。例によって斜め読みですが。

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★この二人は、私学創設時になんらかの影響を与えた哲学者あるいは神学者です。ハイデッガーはカトリックからプロテスタントに改宗し、再びカトリックに還ります。存在の遍歴があったのでしょうか。

★古い話で終わらない、何かがあるでしょう。

★新しいことを創るときには、源泉に立ち寄ることも大切かと。

★二人は、平和と戦争、経済と社会と自然を考える時にも、いうまでも人間の精神を考察する時にも実は今も常に顔を出しているのです。

★それから、ヨハネス・ロッツは、二人を語る時に、さりげなくヘーゲルを持ち出します。PBLを実践している私たちは、デューイが傾倒しのちに批判してプラグマティズムを生むことになるわけですから、これもまた無視できないわけです。

★経験と思想(理論はその部分集合だと思っています)は、結構大事だと思っています。

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2023年2月 9日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(32)首都圏私立中高一貫校の中学入試 出願総数 女子校、男子校、共学校すべてで昨年を超える が意味するコト

★2023年2月8日現在(日能研倍率速報)首都圏私立中高一貫校の出願総数は、すべてのエリアの女子校、男子校、共学校で、昨年の出願数を超えました。もちろん、個別には超えないところもありましたが、それは隔年現象ということもあり、来年度はまた増える可能性大です。

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★エリア別には、東京は男子校が勢いがよく、神奈川は女子校が勢いがよく、埼玉は共学校が勢いがよいといえそうです。千葉・茨城は、特に茨城が、公立中高一貫校の大量立ち上げの時期が続き、その影響を受けた形ですが、最終的には全体としては死守したということでしょうか。

★東京の共学校は2013年以降、21世紀型教育などプログレッシブな教育を掲げ、偏差値による学校選び以外の基準を創出し、新タイプ入試市場を創出。大学入試における総合型選抜の先駆けともなり、アドバルーンをあげるだけではなく、実体経済も作り出したという評価は定着しつつあります。2020年に、2013年から開成が海外大学進学準備で成功しているところが注目を浴びる中、この21世紀型教育などのプログレッシブな教育を実施した学校からも、海外大学進学実績がドーンとでて、進路指導の転換ビジョンもリアルに示しました。

★しかしながら、そのような学校は東大や京大はまだまだです。10年経ち革新的教育草創期は成熟期に入りました。ここで停滞するか内生的成長を果たすかは、国内外の大学すべてに道を開くことでしょう。東京の共学校の次なる進化に期待しましょう。何せ、このスーパーロールモデルはすでに洗足学園が道を開いています。

★一方東京の男子校、神奈川の女子校、埼玉の共学校は、まずは手堅く東大を頂点とする国内大学の垂直的序列で優位に立っていました。しかし、さすがにパンデミック以降、この垂直的序列を保守するだけでは、グローバルな舞台で活躍している保護者は満足しなくなってきたというニーズ臨界点を見て取ったのでしょう。開成と海城はいちはやく、伝統に革新的な発想やプログラムを結合しました。その新結合をシュンペーターはイノベーションというのですが。そういう意味では、これらの学校は部分的にですが、イノベーションを起こしました。垂直的序列がある限り、そこを無視できないわけですから、そこを手堅く保守し、イノベーションも起こす。中学入試市場で、これ以上の魅力はないでしょう。

★東京の男子校でいえば、高輪がその象徴だったと思います。また同エリアの共学校ではやくも革新的教育で内生的飛躍を成し遂げつつあり、出願爆増しているのが工学院大学附属中学です。定員が105人なので、実数では目立たないのですが、ここ3年でその勢いは止まりません。大学進学実績も国内外で成果を上げ始めています。なんといっても女子の理系志望が増えているというのは、時代の精神とマッチングしているのでしょう。

★また、成城学園は、大正自由教育の拠点で、その意味では100年を超える内生的成長の持続可能性というイノベーションを続けている学校ですが、デューイに代表されるプログレッシブな教育を現代化し続け、その評判が持続可能的に続いています。そしてこの民主主義の危機の時代に、同窓生と大学と小中高が連携してグローバルな視野で探究プロジェクトを展開するという、独自の学びの環境デザインにチャレンジしています。成城学園ファンの心をつかむ無形資産をまた創りました。

★神奈川の女子校湘南白百合は、いま世界が必要としている痛みの共有とその解決の知恵と技術と寛容性を備える教育環境デザインを次々と創出し、東大のみならずハーバードや医学部に、ミッションを引き受けて突き進む女性を育成することが大評判になりました。毎年出願数は爆増。多角的な才能者を受け入れるアドミッションのイノベーションも起こし、成功しています。低迷するカトリック学校に勇気をあたえるだけではなく、神奈川の女子校の垂直的序列を水平的多様化にシフトし、神奈川の女子校すべてにエールを与えることになるのしょう。そして、それは聖セシリアも同様です。

★埼玉の栄東は、明快に東大とアクティブラーニングという伝統的進学志向と革新的教育をいちはやく統合し、埼玉の共学校のスーパーロールモデルになった功績は市場が大いに評価しています。埼玉エリアには帰国生が東京や千葉、神奈川に比べ少ないのですが、少ないながらも20人集めることができたら、さらなる飛躍へ向かうでしょう。この共学タイプは、千葉の渋谷教育学園幕張です。埼玉では栄東となるでしょう。東京、神奈川では、この共学タイプは実はまだないのです。東京の共学校は、このタイプに続くのか、さらに新たなタイプになるのか、まだまだ次なるチャンスがありますね。

★首都圏の私立中学に通う生徒は、全国の中学生人口の3%強です。この3%が、日本の教育の未来を創る先駆けにならざるを得ない日本の教育システムの問題があります。公立vs私立という明治以来続いている官学vs私学という学歴トラウマを制度的改革では間に合わないので、入試市場で学びの創造的破壊をしていくことによってシステム転換を図るダイナミズムに期待をかけましょう。

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2022年12月18日 (日)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(15)成城学園 新しい教育の在り方を開く

GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」では、成城学園の新しい挑戦について語られているとともに、今までにありそうでなかった全く新しい教育の在り方が語られています。

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(GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」)

★青柳先生(成城学園中高入試広報部部長)とは、何回かGWEで対話をする機会をいただいたり、そのGWEに向けてチャットさせて頂いたりしながら、成城学園のトランジション教育(受験指導で大学に入ったら終わりではなく、大学及び社会において活躍できるキャリア教育)について発信させていただいています。1月には、これまでの対話をまとめる意味で、shuTOMO2023年1月号で6ページで記事を書くこともできました。

★しかし、脱稿しするや、実は新しいチャレンジが行われている最中なのだと青柳先生から教えていただきました。それが「グローバル視点のライフデザインワークショップ」です。実は脱稿したあとで、GWEだったので、そんなすばらしいプログラムだったのかあ、これは何とかしたいと思ったわけです。初校で、ほんの少し紹介できるように編集しましたが、とても内容を紹介できるものではなかったのです。

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★そこで、今回同プログラムのプロデューサーである高木生太さんとプログラムの企画・運営のメインファシリテーターである穴本玲奈さんに出演していただき、青柳先生と共に、大いに語っていただいたのです。

★高木さんも穴本さんも成城同窓生で、同じ母校出身の社会人や大学生、中高生が繋がるためのwebサイトやイベントを運営するRootin'というコミュニティも運営しています。高木さんは外資コンサルタント会社に勤務しながら、同コミュニティの創設者・代表として、後輩の未来を先生方といっしょにつくる企画運営を、穴本さんと実施ているのです。

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★同窓生と言えば、お金を寄付したり、講演会などで語ったりということは、よくある話ですが、PBL型のプログラムやワークショップを先生方や大学生、生徒などみんなで創り上げるプロデュースをするというのは全く新しい同窓生の活動です。

★具体的な中身や参加した生徒がどれほど成長するのか、その様子についてはぜひご視聴ください。高木さんと穴本さんの学校の教員とはまた違う視角からのトークや言葉に、今回の新たなプログラムのあり方のみならず、これからの新しい教育の在り方のヒントを得ることができます。必見です!

★私は、自分の感想を忘れないために、GWE直後に、次のような文をfacebookにメモしました。

「成城学園の同窓生でグローバルに活躍している方々と対話。その教養と未来性に感動。優しさを弱さだと誤解し、突いてくる自称グローバルリーダーは多いがそれとは真逆。教養あるグローバルリーダーシップ。これだな。」

★成城学園の創設者澤柳政太郎の魂は、同窓生の中で、さらに進化しているなあと感じたわけですが、感じるだけではなく、私学全体でも共有していける普遍化・現代化を考案するアクションを起こしていきたいと思っています。

 

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