成城学園

2023年3月24日 (金)

2024年高校入試の行方(01)成城学園の魅力

★2023年の成城学園の高校入試は、推薦入試も併願入試もその出願数は前年を上回りました。2回実施した中学入試も同様でした。この人気の秘密は、簡単にいうと、受験生が、同校の伝統と革新の絶妙の統合を感じ、安心と希望と自由への期待値を高めるからでしょう。

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(写真は同校サイトから)

★具体的には、たとえば、サイトにこんな記事があるのですが、ここにも伝統と革新の絶妙の統合が映し出されています。その記事は「メディア委員会がSTREAMチャレンジ2023で優秀賞を受賞!」です。ぜひ読んで欲しいです。

★メディア委員会がソフトバンクロボティクス株式会社主催「STREAMチャレンジ2023」に出場し、見事Pepper部門の優秀賞を獲得したわけです。これは何を意味しているのか?まず委員会というコミュニティシップやプロジェクト活動がハイパフォーマンスだということでしょう。これだけで、ワクワクするでしょう。自分の好きなことを実践する場があるし、学内だけの活動ではなく、他流試合に挑戦することもできるのです。同校の場合は、同じような活動が多様にあるのですから、それぞれの受験生にとって期待が高まります。

★そして、そのコンテンツですが、「STREAMチャレンジ」(※)という実に革新的な挑戦です。ワクワクしないわけがありません。次世代を担う人材たちがロボットやAIなどの最先端テクノロジーを活用して社会課題に取り組み、社会実装に挑戦する探究的アクションだということです。素敵ですね。メディア委員会メンバーはPepperを使った「本や雑誌のRe活用」というテーマで課題解決に取り組んだとあります。本とロボティクス。伝統と革新のマッチングです。

※「STREAM」とはSTEAM教育に(Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)Arts(リベラル・アーツ)を統合的に学習する教育)にRobotics(ロボット工学)、Reality(現実性)、Reviewing(評価)の観点を入れ、頭文字のRを加えたものです。(同サイト記事から)

★学校で毎年約300冊も本・雑誌が廃棄されているという課題に目を向けたというところは、普段から探究やアクティブラーニングで、デザイン思考を実施していますから、身近なところにある一見小さな問題からグローバルな問題解決につながる発想<Think global, Act locally>が彷彿としているのが了解できます。

★プロジェクトA(古本の回収)、プロジェクトB(古本市の開催)、プロジェクトC(実施報告と次年度協力のお願い)という3つのプロジェクトを10か月以上かけて実践し、古本回収への興味を喚起させるクイズの出題(プロジェクトA)や古本市当日の呼び込み(プロジェクトB)などプロジェクトごとにPepperのプログラミングを行ったとサイトにはあります。

★本という紙を有効活用することにもなり、SDGsの活動にもつながるし、何より本の文化を継承することにもつながります。本は古くて新しいネットワークを開発する拠点ですから、デジタルの世界になっても重要です。アナログかデジタルか、そんな議論も活動の過程で当然されたでしょう。

★そして、有識者からのフィードバックでは、古本市を開催し売り上げを寄付するという実際の行動につながっている点が評価されたと。社会貢献への寄与度も高いわけです。これはとても大事なことを意味します。自分の好きなこと関心があることを探究活動していくことが、結果的に他者や社会に役に立つと実感した時、自分の存在であるbeingはwell-beingに変容します。

★Z世代は、ウェルビイング経営を行っている会社かどうかチェックするのが65%だと「学情」がデータ分析しているわけですが、それは学校選びも同じだと思います。

★成城学園のこのウェルビーイング教育は、メディア委員会にとどまらずあらゆる同校の活動に浸透しているのです。

参考)同窓生が語る成城学園の魅力→<GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」>

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2023年2月22日 (水)

2024年中学入試の行方(09)成城学園の社会の入試問題 学際的で探究的な時代を見る目を養える

★今年の成城学園の社会の入試問題は、大きな問題が2つ出題されましたが、どちらも食に関する問題でした。「食」をテーマに、地歴公民・時事問題すべてが関連して出題されています。まさに成城学園の学際的で探究的な教育が反映した、入試問題は学校の顔を体現した問題でした。しかも、1つめは、成城学園の伝統と革新を統合している「自由研究」そのものをベースに問いが創られていました。対話文は、まさに普段からそのようなプロジェクト型の授業を展開しているのだということも了解できました。

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(写真は、同校サイトから)

★そして2つめは、2022 年に行われた「G7臨時農業大臣会合」で出された「ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻に関するG7農業大臣声明」にかかわる問題でした。ウクライナのみならず気候変動やパンデミックなどのリスクや脅威を回避するために「連帯」する内容が議論されたわけですが、それについて多角的に問う問題でした。めちゃくちゃ意識が高い問題です。

★でも、知識がなくても考えて解答できる問いが多かったですね。

★このような入試問題に取り組んで中学受験勉強をする生徒は、自然と学際的で探究的な時代を見る目を身に付ける準備学習をするわけです。そして成城学園に入学するとそれが広く深く展開していくのです。成城学園は、中学受験勉強の時から、ウェルビーイングを生み出すエンパワーメントがされているのです。

★「ウェルビーイング」「連帯」「エンパワーメント」というキーワードは、相互に関連して社会変革のシナジー効果を生み出す2020年の世界共通のキーワードでした。身近な食というテーマから、こんなに広がるのですね。

★Think Global, Act Locally.世界に求められる学びの環境です。

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2023年2月19日 (日)

2024年中学入試の行方(05)ウェルビーイング教育 ハイデガーとトマス・アクィナス

★well-beingという言葉、だいぶ前から気になっていたので、今更ながらですが、ハイデガーとトマス・アクイナスが「存在」をどう捉えていたのか、ハオデガーの弟子であり神父でもあるヨハネス・ロッツの著書を読んでみますね。例によって斜め読みですが。

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★この二人は、私学創設時になんらかの影響を与えた哲学者あるいは神学者です。ハイデッガーはカトリックからプロテスタントに改宗し、再びカトリックに還ります。存在の遍歴があったのでしょうか。

★古い話で終わらない、何かがあるでしょう。

★新しいことを創るときには、源泉に立ち寄ることも大切かと。

★二人は、平和と戦争、経済と社会と自然を考える時にも、いうまでも人間の精神を考察する時にも実は今も常に顔を出しているのです。

★それから、ヨハネス・ロッツは、二人を語る時に、さりげなくヘーゲルを持ち出します。PBLを実践している私たちは、デューイが傾倒しのちに批判してプラグマティズムを生むことになるわけですから、これもまた無視できないわけです。

★経験と思想(理論はその部分集合だと思っています)は、結構大事だと思っています。

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2023年2月 9日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(32)首都圏私立中高一貫校の中学入試 出願総数 女子校、男子校、共学校すべてで昨年を超える が意味するコト

★2023年2月8日現在(日能研倍率速報)首都圏私立中高一貫校の出願総数は、すべてのエリアの女子校、男子校、共学校で、昨年の出願数を超えました。もちろん、個別には超えないところもありましたが、それは隔年現象ということもあり、来年度はまた増える可能性大です。

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★エリア別には、東京は男子校が勢いがよく、神奈川は女子校が勢いがよく、埼玉は共学校が勢いがよいといえそうです。千葉・茨城は、特に茨城が、公立中高一貫校の大量立ち上げの時期が続き、その影響を受けた形ですが、最終的には全体としては死守したということでしょうか。

★東京の共学校は2013年以降、21世紀型教育などプログレッシブな教育を掲げ、偏差値による学校選び以外の基準を創出し、新タイプ入試市場を創出。大学入試における総合型選抜の先駆けともなり、アドバルーンをあげるだけではなく、実体経済も作り出したという評価は定着しつつあります。2020年に、2013年から開成が海外大学進学準備で成功しているところが注目を浴びる中、この21世紀型教育などのプログレッシブな教育を実施した学校からも、海外大学進学実績がドーンとでて、進路指導の転換ビジョンもリアルに示しました。

★しかしながら、そのような学校は東大や京大はまだまだです。10年経ち革新的教育草創期は成熟期に入りました。ここで停滞するか内生的成長を果たすかは、国内外の大学すべてに道を開くことでしょう。東京の共学校の次なる進化に期待しましょう。何せ、このスーパーロールモデルはすでに洗足学園が道を開いています。

★一方東京の男子校、神奈川の女子校、埼玉の共学校は、まずは手堅く東大を頂点とする国内大学の垂直的序列で優位に立っていました。しかし、さすがにパンデミック以降、この垂直的序列を保守するだけでは、グローバルな舞台で活躍している保護者は満足しなくなってきたというニーズ臨界点を見て取ったのでしょう。開成と海城はいちはやく、伝統に革新的な発想やプログラムを結合しました。その新結合をシュンペーターはイノベーションというのですが。そういう意味では、これらの学校は部分的にですが、イノベーションを起こしました。垂直的序列がある限り、そこを無視できないわけですから、そこを手堅く保守し、イノベーションも起こす。中学入試市場で、これ以上の魅力はないでしょう。

★東京の男子校でいえば、高輪がその象徴だったと思います。また同エリアの共学校ではやくも革新的教育で内生的飛躍を成し遂げつつあり、出願爆増しているのが工学院大学附属中学です。定員が105人なので、実数では目立たないのですが、ここ3年でその勢いは止まりません。大学進学実績も国内外で成果を上げ始めています。なんといっても女子の理系志望が増えているというのは、時代の精神とマッチングしているのでしょう。

★また、成城学園は、大正自由教育の拠点で、その意味では100年を超える内生的成長の持続可能性というイノベーションを続けている学校ですが、デューイに代表されるプログレッシブな教育を現代化し続け、その評判が持続可能的に続いています。そしてこの民主主義の危機の時代に、同窓生と大学と小中高が連携してグローバルな視野で探究プロジェクトを展開するという、独自の学びの環境デザインにチャレンジしています。成城学園ファンの心をつかむ無形資産をまた創りました。

★神奈川の女子校湘南白百合は、いま世界が必要としている痛みの共有とその解決の知恵と技術と寛容性を備える教育環境デザインを次々と創出し、東大のみならずハーバードや医学部に、ミッションを引き受けて突き進む女性を育成することが大評判になりました。毎年出願数は爆増。多角的な才能者を受け入れるアドミッションのイノベーションも起こし、成功しています。低迷するカトリック学校に勇気をあたえるだけではなく、神奈川の女子校の垂直的序列を水平的多様化にシフトし、神奈川の女子校すべてにエールを与えることになるのしょう。そして、それは聖セシリアも同様です。

★埼玉の栄東は、明快に東大とアクティブラーニングという伝統的進学志向と革新的教育をいちはやく統合し、埼玉の共学校のスーパーロールモデルになった功績は市場が大いに評価しています。埼玉エリアには帰国生が東京や千葉、神奈川に比べ少ないのですが、少ないながらも20人集めることができたら、さらなる飛躍へ向かうでしょう。この共学タイプは、千葉の渋谷教育学園幕張です。埼玉では栄東となるでしょう。東京、神奈川では、この共学タイプは実はまだないのです。東京の共学校は、このタイプに続くのか、さらに新たなタイプになるのか、まだまだ次なるチャンスがありますね。

★首都圏の私立中学に通う生徒は、全国の中学生人口の3%強です。この3%が、日本の教育の未来を創る先駆けにならざるを得ない日本の教育システムの問題があります。公立vs私立という明治以来続いている官学vs私学という学歴トラウマを制度的改革では間に合わないので、入試市場で学びの創造的破壊をしていくことによってシステム転換を図るダイナミズムに期待をかけましょう。

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2022年12月18日 (日)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(15)成城学園 新しい教育の在り方を開く

GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」では、成城学園の新しい挑戦について語られているとともに、今までにありそうでなかった全く新しい教育の在り方が語られています。

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(GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」)

★青柳先生(成城学園中高入試広報部部長)とは、何回かGWEで対話をする機会をいただいたり、そのGWEに向けてチャットさせて頂いたりしながら、成城学園のトランジション教育(受験指導で大学に入ったら終わりではなく、大学及び社会において活躍できるキャリア教育)について発信させていただいています。1月には、これまでの対話をまとめる意味で、shuTOMO2023年1月号で6ページで記事を書くこともできました。

★しかし、脱稿しするや、実は新しいチャレンジが行われている最中なのだと青柳先生から教えていただきました。それが「グローバル視点のライフデザインワークショップ」です。実は脱稿したあとで、GWEだったので、そんなすばらしいプログラムだったのかあ、これは何とかしたいと思ったわけです。初校で、ほんの少し紹介できるように編集しましたが、とても内容を紹介できるものではなかったのです。

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★そこで、今回同プログラムのプロデューサーである高木生太さんとプログラムの企画・運営のメインファシリテーターである穴本玲奈さんに出演していただき、青柳先生と共に、大いに語っていただいたのです。

★高木さんも穴本さんも成城同窓生で、同じ母校出身の社会人や大学生、中高生が繋がるためのwebサイトやイベントを運営するRootin'というコミュニティも運営しています。高木さんは外資コンサルタント会社に勤務しながら、同コミュニティの創設者・代表として、後輩の未来を先生方といっしょにつくる企画運営を、穴本さんと実施ているのです。

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★同窓生と言えば、お金を寄付したり、講演会などで語ったりということは、よくある話ですが、PBL型のプログラムやワークショップを先生方や大学生、生徒などみんなで創り上げるプロデュースをするというのは全く新しい同窓生の活動です。

★具体的な中身や参加した生徒がどれほど成長するのか、その様子についてはぜひご視聴ください。高木さんと穴本さんの学校の教員とはまた違う視角からのトークや言葉に、今回の新たなプログラムのあり方のみならず、これからの新しい教育の在り方のヒントを得ることができます。必見です!

★私は、自分の感想を忘れないために、GWE直後に、次のような文をfacebookにメモしました。

「成城学園の同窓生でグローバルに活躍している方々と対話。その教養と未来性に感動。優しさを弱さだと誤解し、突いてくる自称グローバルリーダーは多いがそれとは真逆。教養あるグローバルリーダーシップ。これだな。」

★成城学園の創設者澤柳政太郎の魂は、同窓生の中で、さらに進化しているなあと感じたわけですが、感じるだけではなく、私学全体でも共有していける普遍化・現代化を考案するアクションを起こしていきたいと思っています。

 

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2022年11月30日 (水)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(07)成城学園の真価

★昨日、成城学園の青柳先生(入試広報部長)と首都模試の北さん(取締役・首都圏模試センター教育研究所長)と首都模試の市川さん、そしてノイタキュード代表北岡さんと1時間ほど対話しました。基本は青柳先生と北さんとの対話で、その前後で対話に参加していました。いずれ首都模試チャンネルで公開されると思います。

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★成城学園のカリキュラムを中心に青柳先生がお話され、北さんが質問していくという対話なのですが、今回は、それぞれの学びにおいて、生徒がどのような人間関係をつくっていくのかという具体的な話が広がりました。

★その人間関係作りは、昔からそして今もこれからも人類が求めている人間関係づくりです。

★現在人間関係が崩れていて、いろいろな問題が身近で多発していますし、それは世界的な問題でもあります。105年前に、成城学園では、そうならない人間関係づくりを教育の中で行ってきたのです。

★よく人間力形成という言葉がありますが、成城学園ももちろんそれは追究しています。ただ、人間関係という関係性に着目した人間力形成であるということが改めてわかったのです。

★その人間関係とは何か?SDGsのゴールを達成するためにも極めて重要な関係性です。いずれ公開されるので、お楽しみに。

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2022年11月20日 (日)

成城学園 革新的伝統を誇る私立学校 多様な体験プロジェクトをアップデートし続ける

★105年前の大正自由教育を牽引した成城学園。今のインストラクショニズムにつながる近代国家形成のための教育であるヘルバルト主義と創造的民主主義を生み出し続けるためのデューイやドルトンのような教育進歩主義の合力を生み出し、独自の革新的伝統を土台とする教育を今もアップデートし続けています。その意味では、東京において私立中学の数も在籍数も最も多い世田谷区で異彩を放つ普遍主義的教育の現代化にチャレンジしている学校です。

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(GLICC Weekly EDU 第104回「成城学園中学校高等学校ー探究が開く未来」)

★先週金曜日、第104回GWEで、成城学園の入試広報部長の青柳圭子先生と対話をする機会を得ました。GWEには、昨年から3度目の出演ですが、毎回毎回新しい体験プロジェクトが立ち上がっている情報をお聴きすることができます。そして、そのたびに成城学園は進化し続けるのです。この進化し続けることが成城学園の伝統です。新しいパッケージ教育を導入し、古くなると捨ててしまう斬新教育とは全く違います。

★1つひとつのプログラムを常に現代化しつつ、同時に新しいプログラムを創造していくのが成城学園です。「探究」とか「PBL」という言葉は、もはや一般化していますが、同校ではそれを105年前から行い、60年くらい前に、さらに「自由研究講座」として結晶化しています。土曜講座というのが20世紀末に多くの学校で生まれました。それをもって探究はうちはすでにやってきたとアピールする学校も少なくありませんが、成城学園は、105年前から行っているし、現代においても先鋭化したプログラムとして60年以上前に結晶化していたのです。

★そして、現在、DX人材やGX人材育成のために必要なデザイン思考やグローバルコンピテンシーを育成する「探究」がアップデートされているのです。グローバルキャリアデザインという壮大なプロジェクトも実践されています。「成城学園が世界一になるために」中1から高3、同窓生、大学生などが集結しているのです。

★大学や同窓生、その他のステークホルダーと共創するプロジェクトなわけです。幼稚園から大学院までの総合学園だから、ネットワークも充実し、その質がとても高いですね。

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★もうこれで十分だ。素晴らしいと思っていたら、最後に青柳先生は、来年度から「自由研究講座」をさらに発展させる「ゼミナール」を開講するという新プランを公開してくれました。

革新的伝統の真骨頂ですね。詳しくは、GWEの動画をぜひご視聴ください。目からうろこの教育とは何か、共感していただけると確信しています。

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2022年11月11日 (金)

ドネラ・プロジェクト(09)アースショット構想を実現するための教育 成城学園に学ぶ理由

★今回のパンデミックは、世界システムを変容させる衝撃を与えています。最初の頃は世界のガバナーは一過性のもので元に戻ると思っていた節がありますが、現状は、地政学の危機、地経学の危機が押し寄せ、政治の転換、経済の転換、ICT技術の転換、なんといってもSDGsの最重要性への転換などの局面にぶちあたっています。そしてその転換を好循環のシナリオとして描けるCLIC(Concept Lens,Innovation,Compassion)人材を生み出すのは教育ということになっています。

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(SDGsウェディングケーキモデルをヒントに作成。たぶんヨハン・ロックストーン博士が、ストックホルム・レジリエンス・センターを創設した所長時代に作成したモデルだと思います。)

★では、どんな教育が必要なのでしょう。この教育モデルの1つが成城学園です。成城学園は大正自由教育から生まれた学校の1つです。今騒がれているPBLだとかドルトンプランだとかは、創設当初から実験的に導入しつつ、インテグレートして成城学園独自のそれでいて普遍的な教育を行っています。

★大正自由教育の影響を与えた人物は、デューイであろうと思いますが、デューイ自身、体験主義、道具主義で、社会の変化は学校にも及ぶわけだから、変化にどのように対応していくかプログレッシブな教育を提唱しました。

★ですから、成城学園も、創立当初の政府のヘルバルト主義的な教育とどう折り合いをつけるか模索し、独自の路線を最初から歩み始めます。戦後は、スプートニクショックで冷戦時代ですから、それを乗り越える教育学者の1人ブルーナーが認知心理学という新しい学問を教育に結びつけます。

★これによって、生徒の学びの内面的なというか認知的な構造の研究が進みました。これを教育で実施すると、ヘルバルト主義とデューイ的なプラグマティズムは統合できるかもしれないと言われていましたが、なかなかな生徒の学びの内的連関過程にまでは、現実はうまくいきませんでしたし、今もいかないのですが、成城学園は適用できたと思います。

★そして1970年代はオイルショックで、成長の限界という今のSDGsの核になるものの見方が生まれます。ドネラ・メドウズのシステム思考やメンタルモデル、協働主義、ビジョン共有などの発想で、それがピーター・センゲの学習する組織にウケうがれます。そして、この学習する組織の周辺で、SELとかMITメディアラボとかハーバードのプロジェクトゼロが生まれ相乗効果を生んでいきます。

★つまり、現在の学習指導要領や高大接続改革がその背景で意識している学びの環境デザインです。

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(アースショット構想は、ウィリアム王子がアースショット賞を設立していまから、おそらくそれとも関係あると思いますが、気候変動や環境問題に詳しく、NHKにも出演しているヨハン・ロックストーン博士のアイデアでもあります)

★20世紀初頭は、近代国家構築と民主主義の構築の葛藤と調整を背景とした教育でした。次は冷戦におけるケネディ大統領が決断実行したムーンショット計画に象徴される、市場経済と科学の時代です。そしてそれへの警鐘の時代の教育でした。3つ目は冷戦終焉後のイノベーションが前面に出る教育です。4つ目は、21世紀に入って、どうやら自然と経済は循環しなくてはならないという時代の要請を背景にした教育です。

★そして5つ目、つまり現在は、自然と社会、経済、生活、心などがすべて循環するアースショット時代です。これには、CLIC人材の育成教育が必要になってきます。この5つの時代のダイナミズムを引き受けて適用し、独自の教育を構築し、それぞれの社会の要請に対応してきた学校の1つが成城学園です。アースショット時代を牽引する生徒が誕生しています。

★昨年から同校の広報部長青柳圭子先生と定期的に対話をしていますが、その過程で、どんどんその実践が増えています。

★今週から来週にかけて、そこら辺を研究したいと考えているところです。

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2022年5月 1日 (日)

成城学園の魅力を支える物語スパイラル

青柳先生の成城学園の魅力を語るその方法の中に、魅力が映し出される仕掛けがあります。今回青柳先生は、3の累乗のスパイラルで語りました。大きく3章に分け、さらにそれぞれの章を3節に分類して語っていきます。その章や節の順番は、思考コードでいうA軸からはじまりB軸、C軸という広がりで話していきます。

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★しかし、おもしろいのは、A軸の章であっても、鈴木さんと対話することによって、A→B→Cのサイクルを回転させる対話になっていきます。随所にそのような話になりますから、デノテーション(外延:要するに形式知)の話の中からコノテーション(内包:要するに暗黙知)を見える化していきますから、そのたびに、小さな花が開花し、視聴している側は魅せられます。

★対話とは、デューイにとっては、ダイアローグです。ダイアローグとは、このような物語スパイラルを広げ上昇気流を生み出していく弁証法のことも意味しています。これもまたリベラルアーツの伝統ですね。ソクラテスの対話から始まって、デューイが批判的に継承したヘーゲルの弁証法です。

★官僚主導の近代教育のベースをつくり、今も継承されているヘルバルト主義は、このヘーゲルの対話を切り捨てる立場から出発します。

★成城学園が大正自由教育のスタースクールであり、先生方が未完の民主主義の教育を完成させるべく今もチャレンジしている姿が、青柳先生の物語る仕掛けに魅力的に映し出されています。

★ヘーゲルは哲学者としてよりもギムナジウムでカリキュラム改革を行った校長先生の顔の方が私にとっては親近感があります。詩を愛し、芸術を愛し、たくさんの生徒や学生と対話をし、紆余曲折を超えたからこその幸せな5人家族との暮らしを送り、最後はコレラに感染しこの世を去ります。VUVAの今の時代に重なる生き方ですね。

★そして、対話と歴史を重視していたのですが、ヘーゲルは若いころ、実は話下手だったというのは、どこか興味深いですね。

★デューイは、民主主義という立場からヘーゲルと対峙しましたが、ヘーゲルの生徒や学生と哲学対話をしたところには、PBLの根っこを見つけていたのかもしれません。

青柳先生が、学園生活そのものがPBLですからと語ったととき、デューイが教育は人生の準備ではなく、人生そのものだと言ったことを思い出しました。そして、大哲学者と言われているヘーゲルが、まだ哲学者として地盤を固められない時代に、中等教育で活躍し、そのとき生徒と共につくった今も読み継がれている「哲学入門」が、のちの大哲学に発展したというのを思い出しました。

★中等教育が成城学園のような教育の魅力を生み出すとき、ヘーゲルがそうだったように、すでにそこに未来が開花しているということでしょう。その花の咲いている姿に魅了されない人はいないでしょう。

★さて、この魅力を、成城学園の在校生が先生方と一緒になって説明会を作り、公開します。まさに生徒にとって、説明会作りもPBLです。同校のサイトにはこうあります。一部紹介いたします。詳しくはサイトをご覧ください。

 中学校見学会「成城学園に集まれ!!2022」

 さて成城学園中学校高等学校では、小学校4年生から6年生のお子様を対象とした学校見学会“成城学園に集まれ!!2022”を開催します。中学受験を考えている皆様に成城学園の雰囲気を感じていただければという思いから、体験型の見学会を企画して今年で20年目を迎えます。コロナ禍により一昨年度は中止、昨年度はオンラインでの開催でしたが、今年は従来の形に戻して開催することを計画しています。
 内容としては「成城学園での学校生活」をよりイメージできるように「体験教室」と並行して「見て!聞いて!私たちの学校」と題した学校紹介を行います。 「見て!聞いて!私たちの学校」では在校生が生徒の学校での様子や部活動、行事について紹介します。この学校紹介は、説明会等での保護者向けの説明ではなく、小学生に向けて成城学園の魅力を紹介する形で行います。また、「体験教室」は科学実験やクイズなどの他に、成城学園の伝統ともいえる芸術やスポーツの分野での企画をそろえ、皆様をお待ちしています。この2つの企画の両方に参加していただくことで、成城学園が大切にしている教育について、保護者の方だけでなく、実際に入学するお子様にもご理解いただけると考えております。

★成城学園の魅力をぜひ満喫してください!
 

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2022年4月30日 (土)

成城学園 生徒が自分で自分の学びをデザインする

4月22日(金)、成城学園の広報部長の青柳圭子先生が、GLICC Weekly EDUにZoom登壇。同番組主宰の鈴木裕之さん(GLICC代表)と対話しました。成城学園は、大正自由教育のスタースクールであるのはあまりにも有名ですが、今国際秩序がゆらいでいる事態が対岸の火事ではない状況下にあって、大正時代のお話で終わらない、現代的価値を示唆する重要拠点です。そのことがよくわかる対話が行われています。

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 (GLICC Weekly EDU 第76回「成城学園 青柳先生との対話ー成城学園の魅力をつくる先進的で豊かな授業」)

★というのも、青柳先生が語る言葉が、いわゆる文部科学省が学習指導要領で使っている言説をただ振り回すのではなく、すっと自然に青柳先生ご自身の言葉で置換えて、成城学園の建学の精神の泉で浄化して語っているからです。

★新学習指導要領は、あたかも未来の教室に向けて学びを変えていく意欲をみせた言説をたくさん使っています。そのことは、私立学校にとっては、とてもやりやすいわけですが、私立中学に通う生徒は全国の中学に通う生徒の7%にすぎません。93%は、公立で、公立では、なかなか転換が難しいのです。

★なぜかというと、成城学園は、105年前に、当時文部官僚だった澤柳政太郎が、新教育を施行する実験学校として設置した学校です。ジョン・デューイなどをはじめとする民主主義を生み出す教育を実践しようと新しい教育観・教育実践がはじめて導入されたのです。

★一般に新しい教育といったとき、そうでない教育についてあまりはっきり言及されないのですが、デューイは「民主主義と教育」の中で、インストラクショニズム的な合理的な指導案に基づいた(=マスプロダクションの象徴であるT型フォード・モデルに重なる)近代教育を徹底的に批判しています。

★澤柳政太郎は、文部官僚でしたから、日本の近代教育が、このヘルバルト主義の流れを汲むことを知っていたはずです。国力を高める労働力を生み出す教育が、当時の先進国に追いつけ追い越せという優勝劣敗主義に突っ走っていることの危うさに気づいたはずです。この官僚主導の近代国家づくりは、民主主義を成熟させないということを身に染みていたはずです。

★成城学園で行われているPBLは、たしかにデューイなどの当時の進歩主義的な教育哲学者や実践家に今も基づいています。しかし、それは決して古いことではないのです。よくデューイを持ち出すと、そんな昔の学習理論はと言い出す人いますが、そのようなことを語る方のベースは、もっと古いヘルバルト主義に基づいているのです。

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★したがって、古いとか新しいとか言う話ではなく、今繰り広げられている世界のデモクラシーの危機を見て、デューイが提唱した「民主主義と教育」は、未完であって、まだ実現していないのだと考えたほうが適切でしょう。そして、なぜ未完なのか?デューイの発想が絶対的で完成されたものではないのです。現代化していく必要があるわけです。

★それを成城学園は今も実践しています。青柳先生は、デューイの時代にヘルバルト主義に対して「学習者中心主義」が唱えられたわけです。それは、学習指導要領でも「主体性」とかかわれています。OECD/PISAのエージェンシーという言葉に影響されてもいます。

★しかし、この「主体性」をどのように創っていくのでしょうか。ヘルバルト主義のわかりやすい事態は、学年、クラス、教科時間割の一連のシステムです。このシステムは今も厳然としてあります。これに則っていくと、「主体性」はなかなか生まれません。

★では、この時間割に象徴される教科主義を、全部探究にしてしまえばよいのか。そういう学校もあります。成城学園も105年前は、ドルトンプランを取り入れていましたから、そのような発想があったかもしれません。

★しかし、この発想は、時間概念が、デノテートで、コノテーションを深く考える発想が学習デザインを行う側にないのです。ミウラオリなどの茶室発想が加わることで、つまりアート発想が加わることで、ヘルバルト主義のはずが、全く違う価値観に転換するということが可能です。

★それを成城学園は実現しています。デノテーションというのは形式的表現です。ですから、「学習者中心主義」というのはデノテートな表現です。青柳先生は、デノテーションとコノテーションはコインの表裏なので、「学習者中心主義」や「主体性」を「生徒が自分で自分の学びをデザインする」とコノテーションを引き出す表現に置換えます。

★そして、今回の対話の中で、この「デザイン」をさらに「デザイン思考」プログラムを生徒自身が探究していく教育実践をしているのだという話を展開していきます。

★つまり、成城学園の先生方と対話するとすぐに了解できますが、青柳先生のように、デノテート(外延的)な表現を、1つひとつ丁寧にコノテーション(内包)を引き出す創造的な転換を果たしている先生が多いのです。

★このデノテーションとコノテーションの往復ができるレトリック(修辞法)は、リベラルアーツの基本の1つです。ヘルバルト主義は、このリベラルアーツを実用的な教育を優先して斬り捨てていくことになります。もちろん、ヘルバルト自身はそこまで考えていなかったでしょう。

★このヘルバルト主義の系譜については、最近教育学の中でも研究され始めています。日本の近代社会、現代社会を下支えしてきた教育の中に織り込まれているヘルバルト主義の痕跡を見出したときに、ようやく日本の教育のどこを変えるとよいのか問題の所在が明らかになるでしょう。

★現状の教育改革(?)は、ここが明らかになっていないので、表面的な変化になってしまっている可能性もあります。

★成城学園は、105年前の建学当時から、この問題の所在を認識し、その解決に向けて教育実践を新しいイノベーションを取り入れながら積み重ねています。そこを見出す受験業界の編集者が現われてくると、成城学園の現代的価値を受験生と共有できるでしょう。すでにノイタキュード代表の北岡優希さんがそこにチャレンジしています。そもそもGWEそれ自体が主宰者の鈴木さんの新たな着想によって成り立っています。

★教育の新しい価値は、学校のチャレンジングな実践とその実践の価値を見出す編集者のコラボレーションが欠かせません。そういう時代がいよいよやってきたと実感できた青柳先生の表現でした。(つづく)

 

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