聖パウロ学園

2023年1月23日 (月)

パウロのクリエイティブダイアローグ 父母の会のワークショップで

★先日父母の会の方と「パウロの対話について」というテーマでワークショップ(WS)を行いました。2カ月ごとに父母の会があります。父母の会の始まる前90分間、毎回テーマを変えてワークショップを行ってきました。毎回順番で9人から12人が順番に参加します。お忙しい中、毎回盛り上げていただいて大感謝です。今回が今年度最後でした。パウロの教育で大事にしているものの1つ黄金律をコアに愛と創造が生徒の内面から湧き出る対話について行いました。

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★WSのメインは「ぐるぐるトーク」です。9人が輪になってすわり、クロス・クエスチョン(多角的な発想が生まれる問い)のうち、今回は、ブラックボックス問題(得体のしれない未知のものを提示)で、感じたことや思いついたこと考えたことをどんどん話していくのです。

★ブラックボックス問題は感じたことや認識したことを直接問うダイレクトクエスチョンとぐるぐる順番に話している様子から感じたことや気づいたことは何かを問うモニタリングクエスチョンの2つのタイプがあります。

★また、ぐるぐるトークの中で、共通して関心のあることについて、この2種類の問いをまたぐるぐるするなど、ずっと続けていくわけです。

★親と子の対話については、参加者みな体験していることです。ですが、同じような体験なのに参加者それぞれ違う感じ方や考え方を知り、結構サプライズです。

★パウロの教育では、体験を大事にしています。生徒は同じ体験をしても、みなそれぞれ違います。その違いを対話することで、また新しいものの見方や感じ方、考え方を発見したりします。

★今回のワークショップは、生徒と同じ感覚をもっていただき、それがパウロの対話教育だという実感をシェアすることが目的でした。それぞれが新しいものの見方や感じ方考えかたを生み続ける、共有し続ける中で、クリエイティビティがぱっと広がるという体験でした。

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★そして、3人ずつに分かれて、対話をします。そのとき、なんらかの道具を用意します。レゴとか粘土とかポストイットとかいろいろですが、今回はカードにしました。もっとも、父母の会のWSでは、各種カードを使う場合が多かったですね。

★そうそう、それからぐるぐるトークのときに、今回は保護者の方の話に対応する生徒のエピソードをこまめに挟みました。解決策とかではなく、エピソードはそれぞれの参加者が自身で考えるきっかけとしてリアリティがあるからです。

★そのようなぐるぐるトークの後、今回は「オープンダイアローグ」という痛みや病を解消する時の対話のコツ30が書かれているカードを使いました。

★ぐるぐるトークで体験した対話を、理屈という視点で眺めてみるセッションです。そして、時間があれば、もう一度ブラックボックス問題で、新たな理解が生まれることを再体験していただきたかったのですが、時間が足りませんでした。しかし、新たな理解ができていることは、チームの対話の時にすでに生まれていましたからある程度目的は達成されたと思います。

★このオープンダイアローグという心の痛みを解消する方法は、ふだんの対話にも重なります。私たちは、程度の差はあれ、みな何らかの痛みを持っています。完全な解決はできませんが、一時的に解消することはできます。ですから、オープンダイアローグ、私はむしろクリエイティブダイアローグだと思うのですが、このような対話を持続可能にし得るチームや組織を創っていくことが大事で、そのためには父母の会の方々の協力が欠かせないのです。

★オープンでクリエイティブなダイアローグは、フリー、フラット、フェアー、フラタニティーな雰囲気をつくれるチームや組織にすることです。そんなことを言えるパウロの先生方の対話力に感謝です。

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2022年12月22日 (木)

ドネラ・プロジェクト(22)世界構築としてのSDGs 「ペタッとSDGs」を使って

★今多くの領域で、SDGsのグローバルゴールを達成するために、自分たちが何ができるのか主体的に考え行動するということが展開しています。主体的にそんなことをするなんて、近代的自我の「主観」の概念をガラリと変える事態だと思います。そのような活動をする際、どのような社会や世界が生まれてくるのか、そんなことも考えると、SDGsをきっかけに主体的に考え判断し行動することが、未来の好循環社会やwell-beingな世界を創ることにつながっていきます。

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★そんなわけで、勤務校の伊東先生と生徒1人ひとりの世界認識を広げるにはいかにしたら可能かについて対話をしたのです。伊東先生が担当している探究ゼミは、SDGsを踏まえた中華まんづくりへのチャレンジなのですが、その活動の背景にある生徒1人ひとりの世界認識を明らかにするにはいかにしたら可能かなど対話が深まっていったわけです。

★下記の2冊の本と出遭いながら、中華まんをめぐるSDGsの多様性について考えたり、ヨハン・ロックストロームのウェディングケーキモデルを見ながら、これを自分なりに主体的に再構築出来たらよいなあなどと話し合いました。

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★ウェディングケーキモデルを見た伊東先生は、すぐにこれですねと閃き、朝日新聞社が作成している「ペタッとSDGs」という付箋(写真参照)を購入し、これで、SDGsによる世界認識の図を生徒1人ひとりが、あるいはチームで再編集してみるのが第一歩ですねとなりました。

★ウエディングケーキモデルは、社会圏や自然圏、経済圏などの関連性をSDGsの17のゴールを当てはめて関連付けて世界認識がなされているのです。

★その世界認識のモデルを生徒が主体的にまず考えるところから始めてみようというわけです。1月3学期が開始したら、探究ゼミの中で行っていくというので、いまから楽しみにしています。

★ところで、こういう話をすると、そんな認識モデルをつくっても、現実に役に立たないという方もいますね。しかし、モデル作りは、メタローグの次元の話で、この次元でできたモデルは、現実界のダイアローグで、実存的ダイナミズムを生み出すエネルギー態なのです。

★リアルな動きはダイアローグという対話だけではなく、メタローグという対話によって生み出されるというわけです。

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2022年12月15日 (木)

パウロの形成的評価

★この時期は、どこの学校でも、期末試験や卒業試験のシーズン。聖パウロ学園も例外ではありません。職員室は成績処理と教科の会議、最終的な成績会議と生徒1人ひとりにエンパワーメントできるエバリュエーションをどう編集するのかクリエイティブなコミュニケーションで溢れています。最近では定期試験をやらないということが注目を浴びているようですが、それは目に見える部分ですね。大事なことは目に見えない領域です。それは生徒とエンパワーメントエバリューエーションをいかに共有できるかという教師の行為が本質的なことなのです。

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★パウロの場合、総括的評価といういわゆるスコア成績と学期ごとの生徒の学習状況や心理的状況、学習の方法などどのように成長しているか、今後どうしたらよいかの提案など800字から1000字くらいのコメントを併記します。つまり、ここは形成的評価の部分です。

★総括的評価は、定期テストのスコアだけではなく、各教科のミニテストのスコア、自主学習の状況なども評価の対象になっています。知識・技能、思考・判断、主体的な学びの経験値などが1人ひとりモニタリングできるようにしています。

★そして、形成的評価としてコメントが添えられます。自分が一体何者で、自分はどう人に役立つ価値を持っているのか、思いやりは発揮しているのかどうかなど、パウロのスクールモットー(理念)をどのように具体化しているかというコンセプトレンズを共有してもいます。

★そんなことは絵に描いた餅だろうと思われるかもしれません。しかし、パウロの主幹であり高2の学年主任で、担任でもある大久保先生のコメントを分析すると上記の写真のようになるのです。ちゃんとそうなっているのです。

★私の役目は、先生方の授業ーテストー評価の一連の怒涛の過程の最後の部分のコメントを確認することぐらいなのですが、これが実に楽しいのです。なぜなら、そのコメントには、先生方が生徒と毎日どのように共に学校づくりをしているのか人間作りをしているのかイメージできる脳内空間がバーンと広がるからです。

★大久保先生に読んでくださいと手渡されたコメント集を読みながら、1人ひとり生徒の具体的状況について記述しているところをマーカーでチェックしていきます。そして、そのチェックした場所を抽象的な言葉に置換えてポストイットに書き込んでいきます。この作業はちょっと負い目があります。というのも、分析というのは、生き生きとした大久保先生の息吹までは汲み取れないからです。

★しかし、生徒が自己変容していく環境デザインの達人である大久保先生は、どんな視点でエンパワーメントエバリュエーションを創り上げるのか知りたいという欲求を抑えられませんでした。

★ポストイットを整理していくとたくさんの視点がでてきました。それらを大きく3つくらいにわけて並べてみました。そして、それを図式化してみました。

★生徒と共にどんなポテンシャルがあるのか共同認識し、それを現実化するために多角的な視点から生徒の具体的状況を言語化しています。これを読んだ生徒は、自分の価値をこれからどのように意味づけ直すことができるのか、自己変容していけるのか実感を抱くことができるでしょう。もちろん、最も大事なことは、上記の図にあるような多角的な視点(もちろんまだまだあります)で、日々生徒と対話をし授業をしているのだということです。それが成績表のコメントによって逆照射されているわけです。

★実際、卒業する時、生徒は自分がこんなに変わったのはなぜかを語り合う時間を担任の先生と過ごすわけです。人生から見れば瞬間かもしれませんが、パウロの3年間は、永遠の3年間です。大久保先生をはじめ、パウロの先生方の日々の言葉、行いからそう感じることができるのです。

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2022年12月 7日 (水)

ドネラ・プロジェクト(17)PBLの授業を実施していることが感動を生むわけ 1億総孤独とは真逆のリアリティがあるから

★PBL型の授業を体験すると、受験生・保護者はこれだと感じます。ところが、PBLとはこうですよと語ってもピンとこないのです。なぜでしょう。そして、そこにPBL授業体験を設定することが極めて重要な時代になったヒントがあります。

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★かつては、PBLの説明は、リサーチ→個人ワーク→グループワーク→プレゼンテーションの循環を動画などで示すものが多かったですね。それはそれで目新しかったので、興味と関心を引きました。しかし、そのようなワークショップは結構いろいろな領域で行われていてすっかり日常化しました。

★それゆえ、話だけでは、差別化できないわけです。それで、体験を設定するわけですが、そのときアクターネットワークやシステム思考の感覚をセットすることが大切です。

★それがそもそもないワークショップはPBL型ではないわけです。幾つかのアクティビティを組み合わせただけで、それはそれで楽しいのですが、自分の内面にエネルギーが広がる感覚があまり生まれないのです。

★そのような感覚が生まれるようにするには、アクターネットワーク理論やシステム思考を組み込みます。このような仕掛けは、内面に関係性の大切さ、クールなはずの知性に温かみが生まれます。

★いったい、これは何でしょう。それは関係性への自覚が芽生えるわけですね。自覚こそリアリティの現われです。

★東洋経済が、一億総孤独という特集をしています。まさにそういう社会現象は起きていますが、そうならないようにアクターネットワークやシステム思考という関係性(関数的であり同時に愛でもある)を思考するPBLを展開していくことが重要です。

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2022年12月 5日 (月)

ドネラ・プロジェクト(16)生徒の主体性 恐れのない組織づくりが生み出す

★勤務校は、学校説明会のストーリーを今までとはガラッと変えました。完全に生徒と共にストーリーを創るというコト。おもてなしをする生徒のパフォーマンス、ミニ体験授業のアシスタンとをする生徒、授業のためのスライドを作成するデザイン思考する生徒、全体会で自分の学校の説明をする生徒のパフォーマンス。参加した受験生や保護者は、驚嘆し感動します。

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★みんなで創っているから、先生方が生徒にありがとう、感動したよと声をかけるだけではありません。生徒が、スピーチ頑張ってください。先生かっこよかったですなど生徒が先生方に声をかけているのです。

★期末の勉強があるから、もしだれもいなかったら協力しに行きますとか、大学合格したから、卒業試験はなんとかしますから、協力しますよ、ぜひとか。

★アントレ精神が満ちていて、まるで大学や企業のプロジェクトチームなのです。朝の会で、主幹が3年生のスピーチを聴いて、感動しました。あんなに聴衆をひきつけ感動の渦を創れるなんて、いつの間に。。。今の2年生もこの1年で、そうなるような環境創っていきますと。

★ほかの先生も、数学でもプレゼンの機会をもっといれていきますよとか連鎖する。

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★その様子を見ていて、恐れのない組織そのものではないかと心の中で微笑んでいる私。この本にはこんな言葉があります。

次のことをはっきりさせておきたい。リーダーになるのに、上司である必要はない、と。リーダーの仕事は、最高の仕事をするためにすべての人が必要とする文化をつくり育てることだ。そのため、その役割を果たしているときは常に、あなたはリーダーシップを実践しているのである。

エイミー・C・エドモンドソン; 村瀬俊朗. 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす (Kindle の位置No.3742-3744). 英治出版株式会社. Kindle 版. 

★そうなんです。タイトルリーダーは、職場上あるのですが、みんなナチュラルリーダーになれるのです。教師も生徒もそういう意味で、全員がリーダーです。これが主体性だし、グローバル人材の真骨頂です。

★今組織の中で、多く耳にするのは、これをやってくださいではなく、これどうだろうか・いかがでしょうか?ありがとうございます。間違いましたごめんなさい。

★なかなか言えない言葉の環です。

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2022年12月 2日 (金)

ドネラ・プロジェクト(14)進化する教師の条件

勤務校の伊東教諭が、ノイタキュード代表北岡優希さんが編集している「進化する授業 進化する教師」で取材されています。日ごろなぜ私が伊東先生を頼りにしているかを改めてモニタリングできる貴重なデータです。そして、このモニタリングというかリフレクションによって、「進化する教師の条件」を一般化できるかもしれないと思いつきました。

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★思いつきなので、もう少し私が信頼している歩先生とかとか対話しなければと思いますが、とりあえず、こんなマトリクス表を思いつきました。

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★私は、とても恵まれているのは、私が親しくしている先生方は、教養に満ちているし、外部とのコラボというかプロデュースが得意で、経営的視点というよりもっと制度的設計知識を持ったうえで、経営的アイデアを出せるし、教科の専門性も高いし、文句ではなく批判的精神も発揮できます。よって不平不満はまず言いません。舞台で光り輝くこともするけれど、それ以上にバックヤードでの働きぶりがすごいですね。

★だから、外部とコラボするとき、相手のニーズを洞察できますね。

★こういう教師が未来の教師だし、進化し続ける教師だと思います。

★僕が外で話をすると、ときどき、そんな理想的なとかまた分けの分からないこといっているよという表情をしたり、ときには面と向かって現場を知らないですよと言われたりします。ウム。サラリーをもらって生きてこなかった年数が長い私にとって、現場とは何かを軽視するはずがないのですが、どうやら現場の意味が互いに違うのですね。

★僕にとって現場は、現象ではないのです。現象を生んでいる実存そのものです。胃袋で教養を考えるということですね。

★モーツアルトだってヘーゲルだって、生きることに汲々としながら教養という美を生んできたわけです。

★教養を軽視する人は、実存を軽視する人です。

★幸い、体験を重視する学びを協力して創っている勤務校の先生方は、みな実存という意味での現場を大事にしています。進化の原点は体験という実存です。

★進化する教師のいる学校を選ぶことがますます重要になってくると思います。

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2022年11月24日 (木)

女子教育の新次元コンセプトレンズ パウロの生徒 エリフ・シャファク Inner Paul Woods intellectual nomads etc.

★先日高2生のPNP(パウロ・ネーチャー・プログラム)がありました。見学に行くと、生徒に呼びかけられ、「今までは、身体で感じるプログラムでしたが、今回は身体と脳神経を全部使うプログラムでした、さらに楽しいですよ!」と。ちょうど芸術科目で、美術や陶芸をやっている生徒にとっては、今回のテーブルづくり、草木染、タープ張りは、感性と知性の接点を手で感じ知り創る感覚だったようです。あっ!あるサイトで読んだエリフ・シャファクの言葉“most creative people are often boundary crossers.”を想い出しました。

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(草木染の媒錬湯を煮込んでいる風景)

★そして女子生徒が、何やら考えごとをしているようなので、何か見つけたのと聞いたところ、「はい、クラフトとアートは接点があるなあと。それは何だろうと、ふと」と。なるほど“boundary crossers”じゃないかとピンときました。それで、振り返りで何人かと簡単に書いてみたらと言ってみると、そうですねと。結果的には、彼女のクラス全員が、学年主任で主幹の大久保先生がみんなで共有しようよということで、書くことになったそうです。

★トルコ出身の今世界中で注目を浴びている作家でありフェミニストであるエリフ・シャファクは、書くことは重荷になることも苦しめらることもあるけれど、自分がそうしていることを愛しているならば、前進できると語っています。

★それで、つい書いてみたらと出会う度に声をかけてしまう自分のルーティンがあります。でも、そのシンキング・ルーティンは結構共有されています。しかも15秒スピーチとか2分間スピーチの原稿ぐらいを想定していますから、ルーティンになると自然と鉛筆やキーボードが動くようです。

★エリフ・シャファクは、そんなルーティンを行為するには、“inner garden”が必要なのだと。そして、そのような内なる庭を維持しているからこそ、創造性を生み出す“boundary crossers”になれるし、彼女のもう一つの新次元コンセプトレンズ“intellectual nomads”になれるわけです。

★パウロの生徒にとっては、パウロの森での体験が“inner Paul woods”になるのでしょうか。いずれにしても“intellectual nomads”としての種が蒔かれていることは確かなようだと思いました。

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(日本語の字幕やスクリプトを見ることができるので便利です)

★それにしても、女子生徒が語りかけてきたことが、エリフ・シャファクに結びつくとは!人間関係や、内面の自分の信じることを大切にしているパウロの教育は、共学校でありながら女子教育の新次元コンセプトレンズである<intellectual nomads>や<boundary crossers>を踏み出しているのだと気づきました。

★ちょうど、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんやいくつかの学校の先生方と女子校教育だけではなく、共学校や男子校における女子教育について語り合うカンファランスを始める準備をしようと対話をするところでもありましたから、パウロの生徒の言動を新たに受けとめることができたのかもしれません。

★2030年問題を解決し、2050年のムーンショット構想を実現するには、SDGsのグローバルゴールとしてのジェンダー問題を解決することは必須ですし。

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2022年11月22日 (火)

聖パウロ学園のエンカレッジの哲学授業 メンタルモデルとコンセプトレンズのコペルニクス的転回(CR)

★聖パウロ学園高等学校には全日と通信制の2つの学校があります。通信制の方はエンカレッジスクールと呼んでいます。中学の時になかなか学校になじめない複合的な理由があった生徒がエンカレッジスクールに入学してきます。毎年問い合わせが増えています。しかし、少人数制なのですべてを受け入れることは難しくなってきました。隔週コースとか放送視聴コースもありますが、基本は通学コースにおいて丁寧に「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現を以前から行っています。

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★ただ、それぞれのメンタルモデルが大きく違うし、コンセプトレンズも様々です。全日もそうですが、その振れ幅が違います。それだけ個性的です。欧米だと受け入れる体制がありますが、日本だと難しいのでしょう。そこにパウロは挑んでいるわけです。

★個性とはいっても、そのメンタルモデルやコンセプトレンズが自分の才能を引き出すのに壁になっている場合、コペルニクス的転回(CR:Coperunican Revolution)が生まれるような環境をデザインする必要があります。それいよって、個性が湧き出てくるわけです。あるいは、せっかく多くの人と共有して共感し合えるメンタルモデルやコンセプトレンズを持っているのに気づいていないという場合、それに気づいてもらえるような環境をデザインする必要があります。そうすることで、個性が際立ってきます。

★個性というのは、ありのままとわいうけれど、今表現されている姿がありのままであるとは限らないので、その見極めは難しいのです。先生方は早朝から、1人ひとりの様子をどう捉えるか話し合います。自分の眼鏡が偏っているかもしれないので、同僚同士の対話は重要です。

★そうして、1人ひとりの才能や個性を解放する仕掛けを作っていくわけです。その仕掛けは、やはり対話なのですが、はじめから狭義の意味での言語での対話はなかなかできません。ここはパウロに限らず、全日と通信制の違いです。とはいえ、全日に通っている生徒も、実は狭義の意味での言語による対話が得意でない生徒もいます。でも、言語を開きながら、置換ながら、メタファーを使いながら、言語操作を学ぶことによって得意になる場合もあるし、そもそも言語操作が難しい場合もあります。その場合、スライド作りや他のパフォーマンスで対話を行うことによって、狭義の意味での言語による対話が開けてくる生徒もいます。

★しかし、暗記が学びだと信じている場合、それが開けてきません。今までは、大学の一般選抜で大学に入っていきますから、そのような生徒のメンタルモデルやコンセプトレンズの生徒と教師の相互理解がなくても進めました。しかし、その場合、大学に入ってから、社会に出てから進めなくなる生徒もいるのです。これはパウロの生徒ということではなく、従来の全日制の見落としてきた点です。

★パウロの場合、そこを見極めながら全日とエンカレスクールの教育の違いを生徒と確認しながら教育環境デザインを仕掛けます。

★さて、エンカレの場合は、狭義の意味での言語による対話をはじめから飛ばして行いません。まずは、自然と対話する園芸や農業の体験、アルティメットの体育の授業で、身体的体験による広義の意味での言語で対話をしていきます。先生方は、生徒の反応を克明に記録していきます。体育の場合は動画をとり、生徒と共有しながら、自分の身体をどう活用するか、同時にどんな感情が生まれたのか、どう作戦を考えたのかなど身体の動きに即しながらリフレクションしていきます。グーグルクラスルームによる共有ができるので、自分をメタ認知する体験がしやすいですね。

★こうして、ようやく、自己理解への道が開けてきたところで、哲学授業としての倫理の授業などで、自分のメンタルモデルとコンセプトレンズに気づいていくわけです。コペルニクス的転回的な再生成をする生徒もでてくるし、自分のメンタルモデルやコンセプトレンズの強みを意識できる生徒もでてきます。

★そのように再生成したり、気づきを得たりした生徒同士は、互いにものの見方考え方であるコンセプトレンズやものの感じ方であるメンタルモデルの違いをリスペクトできるようになります。

★そこまで来ると、ディスカッションができるようになり、それができれば、全日の生徒同様、個人ワーク→ディスカッション→リフレクション→クリエイティブパフォーマンス→個人ワーク→・・・というマルチスパイラルな思考回路が回転し始めます。

★再生成したり覚醒したりしたメンタルモデルとコンセプトレンズが作動していき、自分の才能が開花していきます。

★もちろん、自己理解にもっと時間が必要な生徒もいます。それゆえ、そのような場合、もっと個別最適な環境デザインを作るという意味で、隔週コースや放送視聴コース、あるいは選択体験授業があります。

★エンカレッジスクールの場合、全日も実は同じなのですが(全面的に展開するのはエンカレの方ですが)、内面の教育環境デザインが必要です。それには哲学授業がどうしても必要です。倫理の時間にアートと哲学の造詣に深い教師が二人授業を行います。エンカレの教師は、全員現象学的教授法を定期的に大学・大学院の研究者と学び合い、その大学の学生がインターンシップにパウロに研究に来るシステムが出来上がっています。

★通信制高校の教師を育成する機関は、日本には実は公的にはないのです。したがって、大学と協力して通信制高校のエクキスパート育成を行っているのです。パウロのエンカレの教師は、今では、その大学主催のセミナーで学んでいる学生のファシリテーターまで行うように成長しています。まさに人間教育のエキスパートなのです。

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2022年11月21日 (月)

新しい自分に向き合う生徒

★窓の外をふと眺めると、朝の雨模様はいつの間にか快晴に変わっていました。朝礼で司会の主幹が、パウロの雨は雨で大好きですと語っていましたが、私もそう思います。しかし、快晴の空は空でまたいいですね。しかし、そんな快晴を目にしてすべて世はこともなしみたいに何も悩まない私は、いつのまにか歳をとり過ぎたのかもしれません。

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★というのも、しばしばパウロの生徒に話しかけられますが、生徒たちの眼の奥には、もどかしい自分を何とかしたいという炎が見え隠れしているからです。

★そんな生徒に出会うと、たしかに、私も若い頃は、青空を眺めて、かえって不安を感じていことを思い出しました。谷川俊太郎さんの詩に「もどかしい自分」というのがあります。谷川俊太郎さんの詩は、常に光と影の両方が混在していますが、最終的にはふっ切る何かがあって若い時代は勇気をもらっていました。この詩もその一つです。一連だけご紹介しましょう。

自分が無限の青空に吸い取られて

からっぽになっていく

何かに誰かにしがみつきたいのだけれど

分からない どこに手をかければいいのか

子どこのころとは違うさびしさ

置いてけぼりの頼りなさ

でもかすかな楽しさもひそんでいる

これは新しい自分かもしれない

(「たったいま」講談社青い鳥文庫)

★得体のしれない不安を抱きながらも、見つけたものに挑んでいる生徒。それぞれに苦悩しながらも、踏ん張っているけれど、ときとして、弱音を吐いたり、パニックになったり、そんなとき仲間や教師がいてくれる。いっしょに走ってくれる。そんな中にあって、高3の今ごろ、ようやく自分に正面から向き合えるようになって、未来の自分がいるかもしれないと目の奥に星の輝きを魅せる生徒がでてきます。

★もちろん、不安はまだまだ続くでしょう。でも、不安だけではなく、不安の中にありながらも希望の光を灯し続けられる自分の存在の重さを感じとって、卒業して欲しいと思うし、そうなるように先生方は対話を続けるでしょう。

 

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2022年11月17日 (木)

情報の教員が学校組織の質をアップデートする 時代の変容シナリオをつかんでいるから

★勤務校聖パウロ学園は、組織を教師一人ひとりが変えクオリティをあげています。そう実感するのは、朝イチで出勤し、学校日誌を読み、生徒の出席状況、教師の勤務状況を確認し、一日のスケジュールを理事会の動きも含めてホワイトボードに書き込み(タブレットやデスクトップにすべてデータははいっていてるのですが、マッピング思考には俯瞰できるシンプルなものが必要、スクールバスの運行状況の変化は書き込むのが速いですね)一日のアクションスケジュールを共有できる準備をするだけで、あとは私は何もすることがないからです。

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(WEB3.0に向かう過渡期のキーワード)

★朝の会はもはや私ではなく主幹が司会をしながら、連絡事項の合間に、先生方の30秒スピーチを入れていきます。そして若き主幹は学年主任でもあるので、現場の具体的状況を理解しています。その状況のリフレクションを前日から気づいた先生方としておいて、そのことを共有します。日々改善しながら生徒の未来を創ろうよとエールをおくります。

★そこから学年会が始まり、朝礼や授業が動いていきます。毎日どこかの部署のミーティングがあって、アクションプランの実行の最適化と実施後のリフレクションを行っています。ランチの時間の三分の一は、各行事やボランティア活動ごとに生徒が集まったり、生徒会などが動いています。体験重視とは主体性重視だと生徒は理解して動いています。もちろん、先輩たちの姿をみてそれがストレートに総合型選抜のリソースになるという実益の部分も意識しているのでしょう。でもその実益は、受験勉強も社会正義が通用するという意識なのです。

★午後は一気に授業が展開し、終礼を迎えます。掃除は教師も生徒もいっしょに行います。次の日に向けて学びの準備をするという意味での掃除です。自分たちがやるのは当然ですね。

★終礼後は、部活、ヴェリタス(高度な学び)、カリタス(補習)、100分学習(自学自習)という流れになり、賑わっています。

★というわけで、朝の会が終われば、私はお客さんとのミーティングや先生方の相談にのるだけの時間です。先生方は、このセミナーにいきたいんですけどとか、あと一歩で説明会は満席になります、この時間塾訪問に行ってきま~すとか、この会議の資料はタブレットでいきますがいかがですかとか、来年の修学旅行思い切ってここに変えたいんですけどとか、ユニバーサルデザインとSDGsの関係のワークショップを授業でやりたいんですけど、こうしたらよいかなと思いますが、ほかにアイデアありませんか、アドバイスくださいとか、職員会議で、この話共有したいんですけどとか、調査書の印鑑おしてくださいとか、パラグフライティングと国語の小論文の接点がここにありますよと情報共有しますとか、瞬間的ですがみな三角ロジックで対話をしにきてくれます。とはいえ、この役割、すべて教育関連法規に規定されていることが実行されているだけなんです。

★でも、このような組織の雰囲気をみて何かを感じた情報の教師が、職員会議で、この資料でWEB3.0 の情報共有したいのですがいかがですかと。もちろんというわけで、現状のパウロの組織や教師、生徒の動きが、来るべきWEB3.0に接続する動きになっていると、時代と具体的状況のマッチングの状況をマッピング思考よろしく語ってくれたわけです。

★簡明な図をスライドに書いて説明していました。時代の流れ図、現状のWEB2.0 とWEB3.0の比較図、時代のキーワードとそれにつづくパウロで行われている重要な実践のキーワード化など5分間スピーチでした。終了後拍手はもちろんです。自分たちのアクションが、時代の流れのどこに位置づけられるのかマッピング思考を共有した瞬間でした。

★≪Z世代≫教師が多いということもありますが、タブレットとワークショップで学びの環境デザインができる教師の支援をしているのは情報の教師と教育イノベーションチームであることは確かです。生徒もいつでもどこでもタブレット型PCを持ち歩いているわけです。

★私は、ルールオブローの中でのアクションであるかどうかのリフレクションと三角ロジック対話に応じるだけの仕事になりました。

★ビジョンは、情報の教師がフラットに共有してくれますから、私が声高に言う必要はまったくありません。もちろん学校のビジョンについて語ることはありますが、理事会で話すぐらいです。あとは教頭・副教頭・主幹がいろいろなミーティングで共感を得る表現方法は何か日々考えては実践しています。

★ルールオブローに反する時は権力は発動せざるを得ませんが、それ以外は、フラット、フェアー、フリー、フラタニティ―、ファシリテーションの質が充満してきました。もちろん、学校内の問題ではなく、社会から押し寄せるいいろいろな問題、パンミックや円安経済の影響などにどう対応するかは、スクラムを組んで乗り越えるしかないわけです。スクールバスのスケジュールが乱れるのも、毎日電車が遅れる心配な事態がおきているからです。そこは祈るより仕方がないのですが、日々社会問題が、つまり生徒が取り組んでいるSDGsの問題が肌感覚で伝わってくるいまここです。未来社会を生徒と共にどうしていったらよいのか、2030年問題はすぐそこです。

★そんな状況を好循環に変換する未来シナリオを描くマッピング思考を常にしているのが情報の教師です。しかも限られたリソースやコストでそのアイデアを実現する技術を実装してもいます。情報の教師が活躍できる学校組織は、間違いなく教育クオリティをアップデートしていけるでしょう。

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