聖パウロ学園

2023年9月10日 (日)

対話関係を生み出す分解・統合・変形ワークショップ 伊東竜氏とコラボして➋

★「<教科と探究>のつなぎ方・<学習指導と生徒指導>のつなぎ方」というテーマに絞ったのは、伊東氏が日本私学教育研究所で全国の私学の先生方と話したりアンケートを整理する中で、同様に私も東京私学教育研究所で行う研修で東京の私学の先生方と対話する中で、ここは重要だと互いに思ったからです。このつなぐ媒介項は、実はマインドフルネスや心理的安全をつくるワークショップやSELのセミナーなどで行われているのですが、その媒介項それ自体は、あまり注目されてこなかったことです。主体的だとか思考力だとか判断力だとか表現力が大事なのはみなわかっています。

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GLICC Weekly EDU 第93回「聖パウロ学園:偏差値では測れない複眼思考型教育~すべての生徒が才能者」 は、伊東氏がパウロ時代に出演した動画ですが、そこですでに思考のコンセプトレンズの種の種の話に触れています。参考になると思います。そして、今のパウロ自体は、小島校長のもとでさらに次の次元に行っています。)

★しかし、どうやったら主体的になれるのか、どうやったら思考力が身につくのか、判断力は?表現力は?ということなのです。もちろん、いろいろなワーックショップを行ったり探究をデザインをすると、主体的になる生徒もいるし、思考力も身につける生徒もいるわけです。しかし、全員が自分の才能に気づいてとはならないのです。そこは、その主体的で思考力ある生徒のその暗黙知を明らかにし、共有するという作業が必要です。

★伊東氏と挑戦したのは、そこでした。いわゆる偏差値50行くか行かない生徒がどうやったら上智をはじめとするカトリック学校に合格する思考力・判断力・表現力を自ら掘り起こせるようになるのか。自ら掘り起こそうとする生徒は主体的になるのは当時生徒たちの様子から私たちは理解していました。上記の動画で伊東氏が話している時は1年前で、その成果がまだ未定でした。しかし、この春成果がでたとき、やはりそうだったんだということが了解できたわけです。

★そこから、工学院の田中歩先生と相談して、互いの学校の教育デザインを統合して新しい教育デザインを創ろうとなったわけですね。それを福島でも共有してきたわけです。

★つなぐということは対話関係をつくることです。信頼とか絆とか。それができたとき、そこには共感的コミュニケーションが広がっています。これは田中歩先生が先生方と協働して創り出すのがうまいわけです。

★パウロは、生徒が自己組織化して考えたり動いたりする態勢を生み出すのが得意です。今教頭の大久保先生はこのデザインは天才的です。

★伊東氏はその状況を数学的思考で機能を見出すのがうまいですね。私は、そういう状況すべてに起こっているシステムをメタローグに転換しようとする姿勢があります。姿勢と言ったのは、結果はどうわからないからですが(汗)。

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2023年7月15日 (土)

聖パウロ学園 理事会 2030年~2050年を見通して

★本日午後から聖パウロ学園の理事会が行われました。同時間に行われていた高校野球の西東京大会の行方をバーチャル高校野球で時々チェックしながら。立ちあがり当初1点先制されましたが、すぐに取返し、快進撃が続きそうなので、議論に集中しましょうと、理事会を継続しました。なぜか私が議長だったのグダグダにならないようにと思いつつ、行方はやはり気になりましたが、気を引き締めて。

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(写真はBingでイメージを作成してもらいました)

★小島綾子校長から、学校の近況報告がなされました。教育活動、部活、森の教室の進捗状況、広報活動の中間報告、進路指導の活動など詳細にプレゼンがありました。

★理事の方々それぞれは、ものの見方や感じ方がほんの少し違いますが、方向性は一致しています。むしろその違いが多面的に議論ができるのでよいのです。また、理事会の始まる前に、小島綾子校長とは複眼的に意見を交わしていたので、調整しながら司会進行できました。評価方法や進路指導の点では、だいぶ進化しているのですが、そこまでは今回の理事会では共有できなかったのは多少残念でしたが、それは次回以降に。

★私の中でも、校長先生からヒアリングした段階ではにわかに整理がつけられなかったということもありましたし、そこはアジェンダになっていませんでしたから、いいかなあと。むしろ進化しているとはこういう動きだなと改めて実感。

★とにもかくにも、理事会自体は。非常に建設的な議論だったし、多様なアイデアやフィードバックもあり、密度の高い理事会でした。教育と資金調達。資金調達の方法は入学者獲得以外にも必要であるという認識は、5年後の80周年記念事業に向けてだんだん盛り上がってきました。

★最後に私見として述べたことは、2030年から2050年にかけて、学習指導要領は、2,3回改訂されますから、80周年事業は、その先を見通して計画を立ていくことが必要だと。そこまでは、理事会で今後予想して考えていきましょうと。そして理事会は終わりました。終了後、パウロの野球部が勝利していたので、ホッとしながら、市ヶ谷の別の委員会に参加するために戻りました。

★その道すがら、まだ妄想段階ですが、総合的な探究の時間はなくなり、グローバルアントレプレナーシップと資金調達の方法のプロジェクト学習がそれに代わるんだろうなあとなんとなく思い巡らしました。その方が明確なんです。PBLとはパーパスが明確でなければうまくいかないのは当然です。

★また、教科の時間は、実は、ここに探究的プロセスが明快に埋め込まれるだろうと。探究活動がなくなるわけではないのです。

★人的資本に教育投資をすることになるわけですね。すると、これまた教育内容は明確になります。これからの人的資本は、知識を覚える力なのではなく、その活用方法を学べる力ということになるし、もっと批判的思考力と創造的思考力を育成する学びに投資が行われるようになります。

★したがって、今の一般選抜で合格実績を出そうというような発想は価値がなくなるなあと。もちろん、一般選抜はなくなりません。むしろ総合型選抜がなくなるでしょう。しかし、それは筑波大学が将来プランしているような口頭試問と小論文になるからです。まえもってエントリーシートや課題論文を提出することはなくなります。入試における生成AI対策は当然になります。

★目の前で対話し、目の前で小論文を書くということになります。

★対話や筆記された小論文は、2030年以降は、すぐに文字データに書き起こすソフトが活用されます。今でもすでにありますから、あとは精度の問題ですね。

★すると、採点はAIでということになります。AI対策をしたうえで、AIで評価のデータを作成する。そういう試験システムになるでしょう。

★ということは、ダイアローグからメタローグという高次対話能力と論理的思考力だけではなく、批判的で創造的な、つまりイノベーションを生みだせるような思考力が必須になります。

★それから、アントレプレナーシップ。高校3年間で、社会貢献型の何らかのツールアイデアや実際にアーティファクトとしてつくったものをプレゼンするのは口頭試問の時に必要になるかもしれません。

★入試日は、試験日ではなく、試験期間になるでしょう。同じ大学同じ学部を受験したとしても、友人と違う日にちに受験するということはあるでしょう。同じ問題はでないのですから可能です。

★すると、国立大学も複数受験ができるようになります。まあすべては妄想ですが、そう考えていくと、必要な教育は何か明快になってくると思います。まあ、今年の受験には全く関係ないのですが(汗)。

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2023年6月27日 (火)

パウロ 森の教室Project 本格的に突き進む 地域連携とか社会実装とかアントレとか 結局フロンティア精神ですね。

★聖パウロ学園高等学園は破格の探究活動がスタートしています。それは「森の教室Project」です。同校のfacebookには、こうあります。

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放課後に、Projectメンバーの生徒たちが、教室予定地の下草刈をしました。PNPのインストラクターの方々に指導いただいて、ノコギリ班と剪定ハサミ班に分かれての作業。あっと言う間にスペースが現れました。
ここにウッドデッキを設置していきます。 

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★本格的に始まりましたね。パウロの森を持続可能にしてくれるNPOのスタッフの方々が協力してくれています。ふだんパウロネーチャープログラム(PNP)でお世話になっているインストラクターの方々ですね。連携とは、このような長い時間かけて積み上げてきた信頼関係があってこそです。

★また、パウロ学園の生徒は八王子エリアで多様なボランティアで主体的に活動しています。小島校長の広く深いネットワークがあるからですが、その姿をみていて地域の工務店の方や設計士やキコリのみなさんも協力してくれるのです。

★そして、そうはいっても資金調達も必要です。アイデアと信頼と資金調達と森を開拓するフロンティア精神、そして黄金律のスクールモットーが織りなすエネルギー態が森の教室を開拓し、そこに自然と社会とデジタルと精神の循環を生み出す拠点ができあがることでしょう。ワクワクしますね。

★地域連携とかアントレとか社会実装とか空間デザインとか、すべて詰まった森の教室Project。パウロの教師と生徒のフロンティア精神の腕の見せ所です。

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★それにしても、スペースを開拓し終えたみんなの表情は、やはりすてきです。スモールステップごとの達成感の連続を生み出す学びは、パウロの教師の特技でもあります。

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2023年6月20日 (火)

聖パウロ学園 未来の森の学園 新しい身体知の生成スクール

★高尾の駅から、スクールバースで聖なる丘々を越境して15分。東京ドーム5個分の森の中に白い校舎が見えてきます。聖パウロ学園です。新校長小島綾子先生になって、このパウロの森を活用した探究ゼミが着々と始まっています。生徒はみなノートパソコンを持ち歩きながら新しい学びに没入し、教師と生徒は根源的な倫理=黄金律をリスペクトしながら、互いに協力して新しい身体知を生み出しています。

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★アナログの身体性を育てる近代教育をデジタル知へと転換する情報革命がおこり、パンデミックによって、学校はこの新しい動きに突入しましたが、そもそもアナログの身体性を統御していた言行一致の自然言語を解放してしまったデジタル知。SNSの中で恐ろしいことが爆増している今日。

★聖パウロ学園は、その嵐の中で、デジタルも活用しつつ、身体性をコントロールするのではなく、協働してマネジメントしていく生徒指導と学習指導の一体化を図り、今では、森の教室というデジタルとネイチャーの一体化を図る森の学園と変貌しようとしています。

★デジタルとネイチャーの一体化。新しいデジタルネイチャーを協働してマネジメントしながら未来を創る新しい身体知(身体×メンタル×社会性×スピリチュアリティ―×デジタル×自然)が生まれています。

★まるで、そのことを予言するかのように「WIRED49号」が発刊されたり、ジョージ ダイソンの著作「アナロジア AIの次に来るもの」が最近翻訳されています。

★この手の書物というのは、すでにリアルに生まれつつあるものを見通すものであり、聖パウロ学園のような新しいそれでいて気づかれていない動きを言い当てる凄さがあります。

★生成AIで世の中が騒いでいるうちに、聖パウロ学園は、その先の新しい身体知を生み出しているのです。パウロは、一方でエンカレッジという通信制の学校も有しており、そこはフッサールの哲学によってこの新しい身体知を生み出しています。全日と共通しているのは、デジタルとネイチャーの一体化の教育環境を組み立てているところですね。高校生たちのノアの箱舟であるかもしれません。

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2023年5月28日 (日)

変わる私立中高(33)越境知を体験する中高生②パウロの生徒たち

★先日、聖パウロ学園の理事会がありました。新校長の小島綾子先生を迎えての理事会。パウロの歴史始まって以来初の女性校長です。今年はパウロは開校75周年です。この節目に女性校長誕生はとても意味があります。世界が希求しているすべての生徒にエンパワーメントをという力が溢れだすからです。実際、4月、5月という2カ月で、今までにない生徒主体の教育活動があふれ出しているのです。

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★生徒が主体的に考えて行動するというのは、ただ積極的にことをなすことを言うのではありません。世界への興味と関心を抱き、それがゆえに世界の痛みにも気づき、自分では何ができるのか、小さな動きでもいいから考えて判断して世界貢献に動き出すというチェンジ―メーカーとして「考動」するということです。

★生徒会選挙、体育祭、文化祭、部活などの教育活動など生徒が企画運営してしまいます。学年を越境して活動していきます。あらゆる行事はアート活動も行われます。そして、探究ゼミや哲学対話という横断的な思考様式をトレーニングし、ボランティアや森の教室プロジェクトなど外部の団体と連携しエンパワーメントやエージェンシーのコンピテンシーやテクノロジーを実装していきます。

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★探究ゼミと哲学対話は、その思考のエンジンとしてトゥルーミンモデルやアブダクションなどの正解のない問いを自ら見出し、洞察していくクリエイティブティや批判的思考が発動する仕掛けがしっかりなされています。各教科の授業でも20%ルールがあって、そのような思考の時間を設定しているのです。あらゆる教育活動が有機的に結合する仕掛けが緻密に計算されています。

★あらゆる活動で生徒が主体的になれるのは、そのような思考型教育が氷山モデルでいう水面下に見えない学力としてあるからですが、何よりメンタルモデルが効果的利他主義=黄金律を根っこにもっているということです。

★もちろん、このメンタルモデルは、自分の殻を破って越境していく勇気と自信を3年間でもっていくことによって成長していきます。自分の殻を破るには、自分ひとりの力ではもちろんできないので、多様な対話や体験、協働的な活動などを通してそのきっかけをつかんでいきます。

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★そして、他校にはない森の教室という空間が強烈に生徒のメンタルモデルの成長をアフォーダンスしていきます。あのヘンリー・ソローは森の生活を通して、人間のウェルビーイングを生み出す活動をしました。おそらく、生徒は気づかないうちにそのような影響をソロー同様パウロの森から影響を受けることになります。

「どちらへ歩いていこうか決めるのがかなり難しいときがあるのですが、なぜでしょうか。「自然」の中には微妙な磁力があると私は思っています。知らず知らずそれに従うなら、ふさわしい方向に導いてくれるでしょう。私たちがどの方向へ歩くかは、どうでもよいことではないのです。ふさわしい方向があります。しかし不注意と愚かさのために誤った方向をとることが、とても多いのです。現実の世界でまだ歩いたことのない道、内面の理念の世界で旅する道を、歩いてみたいものです」(ヘンリー・ソロー「歩く」62ページから)

★パウロの教師は、生徒といっしょに、自らも内面の理念の世界で旅する道を歩いています。生徒1人ひとりにとってふさわしい方向を見つけるためのキャリアデザイン。その過程で大学の一般選抜を突破する必要があるのなら、放課後ヴェリタスという講座を開設します。総合型選抜で行くというのなら、探究ゼミやボランティアの活動を共に深く深くアプローチしていきます。海外大学の環境を選ぶというのなら、ともに合格戦略を考案し、徹底的に英語で対話していくでしょう。

★1学年の定員80名だからできる個別最適化と協働学習の統合化、学習指導と生徒指導の一体化、探究と進路の一体化、身体とメンタルと社会性と超自然的精神の循環化の教育活動をしています。80周年に向けて、繊細にそして大胆に教育システムをトランスフォームしていくでしょう。

★それが小島綾子校長のチーム作りです。勝俣副校長、大久保教頭、松本主幹が校長を支えながら進む期待のパウロ学園です。

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2023年5月 3日 (水)

変わる私立中高(19)世界を創るリーダーがスタートラインについた感じがする

★今週月曜日、啓明学園で研究会がありました。聖パウロ学園の校長小島綾子先生も参加していました。久しぶりと言いつつも、私が学園から離れて1か月も経っていないのですが、その間に学園は大きく発展しているのです。驚きでした。私は言っていただけですが、小島校長の実現化のパワーは見事です。小島校長の描く新次元のパウロの教育環境がどんどん広がっています。

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(左から小島校長、高橋国語科主任。私が在任中のときに撮影)

★この新次元構想は、パウロという学校づくりということもありますが、建学の精神にもとづきつつも生徒1人ひとりの世界を生み出す教育環境づくりということです。それぞれ違う世界を広げ深堀していきながら、その世界はやがて大きな化学変化を生み出し、一つのかけがえのない地球を持続可能にする世界観を生み出すでしょう。

★お会いして話した時に、すぐに自然と社会と人間の精神と超自然的インスピレーションが統合というより核融合する感じのインパクトを受けました。

★さりげなくキャリアアッププログラムの一環としてのボランティアを生徒と共に実施してきたばかりだけれど、そこで生徒は過疎の問題意識を引き受けてきましたよと。根源的な問いを内面に生み出した生徒への校長の眼差しには、遠くの出来事を美しく見ているのではなく、近くの出来事に根源的に大切なものを見出すセンスを生徒と共感する温かくも神聖な光が輝いていたのです。

★今の生徒は、問いが立てられないとか、興味関心をなかなかもてないとかいう話は結構世の中で語られていますが、パウロの生徒はそんなことがないのです。なぜなら、いろいろな体験を通してコペ転をするというのが思考のルーチンだからです。聖パウロ自身、自らがキリスト教を迫害する側から、あるとき改心しキリスト教を布教する広報部長として世界にその精神をいまも広める超自然的なエネルギーを生みました。

★パウロ生は、ことあるごとに、リフレクションして自分のものの見方・感じ方・考え方を変換させていきます。そのために、多様な体験を年計で決めるだけではなく、変幻自在に外部とネットワークをつくって新しい学びの空間を創っていきます。

★この稼働力に卓越しているのが、小島校長や国語科主任高橋先生です。もちろん二人だけではなく、パウロの教師の<考動力>と<パッション>は凄まじいのです。そうそう、忘れてならないのは、生徒がまた凄いんですけどね!

★私はダイヤモンド富士にならって、ダイヤモンドパウロ生と呼んでいます。なぜって、パウロに入学する生徒は、中学時代の内申でいえば、5科平均3なのです。中学受験の偏差値50は、日本の同学年100万人のうちの10万人の母集団の話ですが、高校入試の偏差値50というのは、100万人が母集団です。

★ですから、パウロの生徒は入学時、全国の生徒を母集団とするベルカーブの頂点に位置しています。そして、小島校長率いるパウロの先生方が生み出す教育環境デザインによって、光りを放つのです。ダイヤモンドの価値よりももっと価値ある輝きです。ですから卒業時には、生徒本人が驚くほど変容しています。

★中学時代、自分の才能の芽にまだ気づいていなかった生徒がパウロの森の命の息吹の中で、発芽し開花していきます。小島校長が新しい企画を生徒と策定し運営しているものの一つに「森の教室創り」というのがあるのも、当然ですね。

★もちろん、先生方の努力や情熱は並大抵でないことは言うまでもありません。若い先生方は仲間と対話しながら、小島校長と対話しながら、常に新しい活路を見出していきます。その活路は常に新しいのは、生徒は1人として同じ存在者ではないからです。

★若い先生方は、時としてあの生徒は昔のあの生徒のタイプですねと語る時があります。その話が耳に入ってきたとき、私はシメたと思います。先生方がまた成長するし、その生徒の飛躍もすごいものになるからです。

★数日して、その先生は同僚にこう語ります。いや全然違っていた。タイプを当てはめることはできない、それは危ないと気づいたよと。私は、そのたびに聖パウロに祈ります。ありがとうパウロ。私たちはあなたが言うようにときとして生ぬるけれど、熱いか冷たいかはっきりしたとき真理が降りてきます。その瞬間を与えてくださってありがとうと。

★小島校長は、この機会を教師にも生徒にも仕掛けていく卓越した教育環境プロデューサーでもあります。多くの見識者や地域の方々が彼女を応援しているというか、彼女の世界に巻き込まれていきます。

★そして、啓明学園に参加した先生方も、小島校長に劣らず教育環境プロデューサーだなと感じます。研修会に参加するたびに、小島校長のような生徒が物理的精神的両面の世界を生み出す教育環境プロデューサーであることに気づき感動します。

★生徒の生み出す世界はいろいろな世界であってよい、いや、それがよいのですが、その多様な世界は必ず化学変化を起こし大きな世界を生み出すでしょう。それが「世界制作」というものです。多様な懸念や不安はあります。AIにしてもそうです。その不安を無視するのではなく、小島校長のような教育環境プロデューサーは、逃げずに、それを引き受け、前に進みます。その気概の持ち主が、私立学校では増えてきています。

★2023年は、世界を創るリーダー(校長に限りません)がスタートラインについたと感じる今日この頃です。善玉メンタルモデルを駆動させるリーダーが増えることは実によいことではありませんか!

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2023年4月10日 (月)

2024年中高生の行方(01)インターエンパワーメントの時代

★「エンパワーメント」という言葉は、教育や福祉の領域では、かなり活用されています。ビジネスにおいてもそれは同様です。実際教育現場では、エンパワーメントプログラムとかエンパワーメント評価などという実践が行われています。「自信をつける」「権限移譲する」「勇気を与える」などという意味で使われることが多いのでしょうが、垂直的序列主義から水平的多様性にシフトする時代を象徴する言葉なのかもしれません。

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★高校現場でも、生徒と教師の関係が互いに勇気が湧いてくる共感的コミュニケーションが行われています。雰囲気がいいわけですから、ウェルビーイングな状況が生まれます。このウェルビーイングな状況は、相互にエンパワーメントしている対話からもうまれてくるようです。

★そういう意味では、ウェルビーイングとか4つの健康概念とかエージェンシーというような文脈が溢れ出てきている今日、「インターエンパワーメントの時代」と言ってもよいかもしれません。

★学校現場では、教師は、生徒の幸せをなんとかしようとしています。そして、それがなかなかうまくいかない。押してダメならひいてみる。直接話すとひかれるような場合は、間接的に意図が通じるように仲介のためのツールや人間関係などの環境をデザインする。日々苦悩の日々ですが、やがて光が差します。生徒が突如輝き始めるのです。意識は光であるとある生物物理学者が語っていますが、その通りなのです。

★そんなとき実は教師の苦悩もまた喜びにシフトします。表情が柔らかくなり、言動に弾みがつきます。なんと教師もエンパワーメントされているのです。一度この状況が生まれると、エンパワーメントの環が広がります。学校など組織中が、エンパワーメントの循環が充満するのです。

★学校説明会の時、そのような雰囲気に触れた受験生や保護者にも伝播します。インターエンパワーメントの好循環が拡張します。人気校の誕生です。中高生にとって、ウェルビーイングな学校こそ魅力的なのは言うまでもないでしょう。

★インターエンパワーメント。それはいかにして可能なのか?生徒や大学生、多くの先生方と対話して見出していきたいと思います。

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2023年4月 8日 (土)

パウロモデル(02)本日入学式 多くの人々をエンパワーする新体制始まる

★本日4月8日(土)、聖パウロ学園は、静寂の中で華やかに入学式をとりおこないました。新校長小島綾子先生を中心にエージェンシー魂をもった生徒たちが大胆かつ繊細に活躍できる新体制が始動したのです。コロナ禍でできなかった、校歌斉唱も行いました。正面玄関では、先輩たちが、新入生1人ひとりに引き継ぐ鉢植えが出迎えました。「入学式」という文字も、在校生が自ら書きました。彼女は書道の領域でとても有名なんです。

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★校長は式辞の中で、スクールモットーの「人にしてもらいたいことはなんでも人にしなさい」という黄金律(マタイの福音)について、先輩たちが新入生を迎えるこれらの準備を行ったことに生きていることをちゃんと語りました。聖なる言葉が、日常の自分たちの行動1つひとうに反映されていることがとても大切だという高らかにカトリック精神を謳うよりも、はるかに効果的に心に染みる話をしました。

★今日もアシスタントしてやってきていた在校生もその話を聴いて、内なるモチベーションをさらに生み出していたことでしょう。

★来賓として訪れていた父母の会の会長、同窓会の会長、理事の方々も、昨年の校長よりも何か力をもらえるねと、あっ本間さん前校長だったなあと(汗)、一同大笑いで、和みました。

★最後に、恒例のハンドベルクワイア―の演奏。森の梢が奏でる音と同様、f分の1の響きが心を豊かにします。

★このような森と教師と生徒が共振する雰囲気は、新校長ならではの手腕ですね。

★こうして、パウロの森の学校に立ち寄る人々みんなが内なる響きに耳を傾ける学校になりました。つまり、世界的に大事だとされる、万人へのエンパワーメントのモデルシステムをっ形成しているのでしょう。新入生のみなさん、すてきな学校にようこそ。

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2023年3月31日 (金)

どこまで本音を通せるか 私立学校研究家として

★4月から、孫の未来の可能性のために、100年後を見据えつつ、いまここでをウェルビーイングにする私立学校の教育について、どこまで本音で語れるのか?それが私のおそらく最後のステージでしょう。ですから、メディアに偏ることなく、一部の学校に偏ることなく、一部の偏差値ベースの受験業界などに偏よることなく、自分の言動をいかにマネジメントできるか。4月からは、そのような足場をいただきましたので、その道を邁進していきたいと思います。私立学校研究家とは何者なのか?立ち臨みたいと思います。

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(明日からほぼ毎朝お世話になる茶店)

★4月以降は、ほとんどがビル街で、過ごすことになります。

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(山の中の喫茶店もたまにはいきます)

★もちろん、私立学校のユートピアである森の学校にも少し距離をおいてかかわっていきます。今度は、ボランティアとして。

★とにかく、今までは、わかりやすく言えと言われて、そこらへんをおもんぱかって、現場では理屈は控えていたし、多様性と言ってもインクルージョン教育をかっこにいれてきたし、PBLといっても、スピリチュアリティケアの部分をかっこにいれてきたし、生徒理解も、本当は受験の外にこそ真実があるのに、中学受験や高校受験、大学受験という枠をはめて、その中でどう乗り切るかという話に終始してきたし、<Think global, Act locally>といいながら、目の前の生活を中心に活動してきたわけです。

★宮沢賢治ではないですが、そこから自由に生きることは難しいというジレンマがあるのですが、そのジレンマをただ評論するだけではなく、どうしていったらよいのか、迷いながら進んでいこうと思います。

★中学受験にしても、果敢にここに挑んでいる教育ジャーナリストの方もいます。その方は、合法的に生徒募集を行っているけれど、それは実定法上ペナルティがないから行っているだけで、孫たちの未来を見据えれば、間違っているのだという正義を貫き通しています。

★凄いエネルギーで驚きますが、他の記事と違い、この手の記事は、スキャンダルまで行かないので、なかなか真実を伝えにくいということもあるでしょう。

★なぜこのような馬鹿げたことが中学受験で起きてしまったのか?

★実定法主義的合理主義がこの世の中の価値観だからです。

★私立学校は、建学の精神で、合法的に権力の濫用が行われるようなことのないようにするのが魂ですから、そこに立ち還ることを、ドン・キホーテのように行動するしかないと今は思っています。

★学校はオワコンだという学校の先生もいます。定期テストをやっていると保守主義だ伝統主義だという発言力の強い学校の先生もいます。それが正義かどうかだれもチェックしていません。強力なメディアが後ろ盾になって、喧伝しているわけです。

★それぞれの体験主義から生み出された貴重な話しなのですが、孫たちの未来をそれに適合していよいかどうかは、まだ議論にもなっていません。大きな声で、強力なメディアを使って、先に言ったものが勝ちだという、しかも徹底的にパクっているのにオリジナルだと自己PR戦術が巧みですね。

★もちろん、なりふりかまわないくても、合法的であればよいのです。道義上などといっているのは、マーケット主義者にとってはどうでもよいことなのす。しかし、市場の原理は、一つの理念を押し付けるよりよほどましなのです。ただ、悪玉マーケット主義者と善玉マーケット主義者をどのように見分けるのか?

★しかし、どちらも私立学校なのです。公立学校は、なんだかんだといいながら、文科省ー教育委員会のフレームをはみ出ることはできません。

★私立学校は、ある程度自由です。ですから、悪玉も善玉も包括できる教育のロジックやルールを再編集しなくてはということでしょう。悪玉と善玉という対立項を昇華するというわけです。

★教員の働き方の問題も、今語られている働き方改革だけではうまくいきません。孫たちにとっての教育の可能性は、学校のマイナーチェンジではどうしようもないでしょう。

★私たちは教員であると同時にグローバル市民で、法と道徳を自在に組み合わせるような社会システムにすることが肝要です。このことを学ぶ教科が積極的にはないのが実は問題です。リベラルアーツが必要なのはそういうことですね。法と倫理は、言語と数学と芸術の問題であるからです。

★モンテスキューが語っていたように、自動裁判官装置は、AIによって可能になってきました。賢い正義あるAIをプログラミングするのは、今のところ人間ですね。AIが、啓蒙主義者の書を全部読み込んで、啓蒙思想家同士の議論のぶつかり合いを整理したとしても、それは啓蒙思想家という人間に依存するわけです。

★なぜ啓蒙思想家かというと、明治の官学は、啓蒙思想を捨て、明治の私学は啓蒙思想家によって立ったからです。明治以来、二つの近代化が進んできたわけです。

★実定法か正義(自然法)か。今も脈々と日常生活の判断でジレンマに陥る問題ですね。

★さて、前に進むことにしましょう。

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2023年3月26日 (日)

パウロモデル(01)2022年度最終理事会 パウロモデルを共有

★昨日2023年2月25日、パウロの森は、雨の中、桜は満開でした。午後13時から始まった2022年度最終の評議員会と理事会は、経営の話と教育の話の両輪について報告会以上のビジョンとその具体的実装の話になりました。生徒募集ー教育ー進路指導(トランジション)の循環について対話ができる評議員会と理事会になりましたが、これが進化する学校の1つの姿だなあと。

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(雨の日のパウロの桜)

★いかに学校現場がダイナミックに細心の注意を払いながら動いても、それを理解し認め愛する眼差しが理事会、評議員会にないと学校現場の教員も生徒もその才能を十全に発揮できないのです。やはり、システムの循環と学校の教職員と経営陣のシステム及び魂の循環共有は大切です。

★そして、そうなるためには、時代の要請と現場の要請と経営の要請が重なり合う全体システム循環モデルの提案が必要です。この循環モデルは、時代に求められるものであること、現場に求められるものであること、経営陣に求められるものであるかどうか、そして、ちょこっとさりげなく時代を先取りできるものであるかどうか、毎回の会を進めながら、試行錯誤していきます。

★そのつなぎ役になるのは、対話です。各部署の対話とその部署のリーダーが集まる校務会議と理事長・校長・事務長・副校長が集結する運営会議です。これらは毎週最低1回は行います。

★よく会議が多いのは非効率的だといわれますが、それは各会議体が循環していないからでしょう。パウロはそこは生態系よろしく循環しています。リフレクションと改善と具体的な行動計画のシナリオを描く会議は、全体の循環を良い状態にする脳神経系循環、血液循環、ホルモンの循環、筋肉や骨の動きの循環バランスを創るのと同じ働きをします。

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★そして人間の体が、実際には、その循環を促すために、臓器同士がメッセージ物質を出して対話するのと同じで、各会議体は、会議の時間以外に、各役割チームが動きながら時間の合間を見て話し合っていきます。

★この全体の流れをできるだけ1枚の図にして、運営会議で詰め、理事会・評議員会に提出していきます。その過程で、この1枚の図を教員とシェアしていきます。そのときにアイデアがまた生まれますから、それを盛り込みます。

★ピクチャ―ライティングよろしく、その一枚の絵が、それを見た仲間が、またそれぞれイメージします。そのイメージのうち共有部分が実は学校全体のアイデンティティで、各人の違いが、次のイノベーションにつながります。

★膨大な資料をなるべく1枚に集約。抽象的だけれど、仲間にとっては高感度なアクションイメージ触発装置です。いろんな図を書きました。図を書いてくれる教師もいました。意外と難しく、何度も試行錯誤・チャレンジしてデザインしてきてくれます。まさにDe-signです。

★それを集約するのが2年間は校長の役目でした。押し付けるのではなく、あくまで、現場の教職員の暗黙知を図としてDe-signする。デザイン思考のスリリングな局面ですね。

★職員会議は、毎週行うのではなく、生徒募集や各行事、成績会議、進路指導の実践など全員がかかわるアクションに合わせて、適宜行っていきます。シナリオは事前に各会議内でそして会議体同士話し合っていますから、職員会議は、目標とそれを実現するための動きの打ち合わせになります。

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★何か判断が迫られる時も、やはり職員会議を開きます。議論はあまりしません。意見を出してもらって、校務会議で方向性を出してもらって、最終判断は校長が行いますが、同時に理事長とは相談します。理事長の意向も参考にしながら、最終的には現場は校長が意思決定をします。

★1つの意志決定は、学校は循環しているので、時間割変更、スクールバスの時間変更、給食の量の変更などにまでも影響します。もちろん保護者とのシェアも重要です。そのたびに文書作成や連絡の手順を決めなくてはなりませんが、そこは各部署がどんどん決めて、校長のところにあがってきます。即決しなければ、循環に支障があります。そのためには、日ごろから情報・データ収集分析が必要だったのです。

★学校でありながら、気候変動の影響をダイレクトにうけます。行事や入試の日程変更もそうです。新型コロナのみならずインフルなどの感染症の影響もダイレクトにうけます。生徒指導部と養護教諭が判断ができる健康観察や生徒の行動の観察データを日々サーチし、判断の時に役立てるようにしています。

★広報もそうですね。生徒募集状況や外部の情報を収集分析し、年度初めに決めていた募集方法の軌道修正をしていきます。その軌道修正は、理事会でも共有します。何せ、ここは経済変動や人口動態がダイレクトに影響するからです。

★進路指導も同様です。大学の出願方法のリサーチを進路指導部と学年で共有します。生徒1人ひとりの状況は、実は思考コードが氷山モデルの水面下にあって、その見える化が定期テストや成績のコメントデータとして形になり、めちゃくちゃ参考になります。基礎知識、思考のレベル、行動力のレベル、発想のインパクト、社会貢献への素養などすべて毎回の定期テストの成績判定会議でシェアします。したがって、進路指導は進路指導部と学年の協働が欠かせないのです。

★毎回の定期的なテストやミニテストで、その都度状況がわかれば、当然、次の生徒の成長促進のために学年と教科の教師の動きは変容します。テストの機会は、創意工夫次第で、授業も活性化するし、生徒の人間力もエンパワーメントするエネルギー態になります。定期テスト無用論は、そういうテストを創意工夫していない場合、正解です。でもそれは、何を目標とするかが重要であり、テストの有無が問題なのではありません。

★それはともあれ、この流れはパウロの頭脳教務部長がマネジメントしている教務システムが循環していますから、校長は見守っているだけでよいのですが、大事なところは、担任が毎学期成績スコア以外に書くメッセージコメントをすべて読むということです。

★チェックするわけではないのです。それはある意味生徒に対する形成的評価であると同時に生徒と教師の信頼関係の度合いを肌身で感じることができるセンサーです。コメントが歯に衣着せぬアドバイスをしているか、同時にケアフルであるか、現実的なアクションプランを生徒自身が立てられるアドバイスか、何よりインスパイアーされ主体的に変貌する可能性としてのメッセージになっているかどうか。2年間それを続けてきた結果、担任の言葉は、キリスト教的にはロゴスとなっていることに気づきました。日本文化的には言霊になっていることに気づきました。

★私的には、言葉は存在そのものであるという実感でしょうか。

★もちろん、こんな理屈は先生方と共有しません。先生方が創り上げる、成績表に添付するコメント以外に、多くのコメントがあふれているのが、学校現場です。それを拾って、あの言葉がいいねと共感するだけです。授業を見に行って、あのときの眼差しがよかったとか。成績のコメントも、生徒1人ひとりに語っていることばをマーカーで塗るだけです。本当に1人ひとりの特徴をつかんでいるということがそのマーカー箇所の多さで実感できます。

★学校の循環のクオリティをあげるのは対話なんだけれど、教師一人一人のコメント力というか言霊というかロゴスというか存在の息吹というか、表現は好きなものを使えばよいのですが、エンパワーメントするメッセージ力にヒントがあるなあと。そのメッセージに力があるかどうかは、互いの信頼の絆の強さにかかわってきます。あるときは、そのメッセージは眼力であることもあります。

★そして、ICTを自在に使いこなせる教師であることが、この対話力やメッセージ力のクオリティとパワーを上げることにつながっていますね。臨機応変に動けるかどうか、変化耐性には欠かせないツールです。これは生徒も保護者も同様です。

★2040~2050年のムーンショット目標からバックキャストして、デジタル、ネイチャー、ケア、セルフトランスフォームを循環する対話ベースの教育、それから外部の多様なネットワークをいかに結びつけるかその対話力、現場が、ダイナミックにかつ細心の注意を払って動くには、柔軟な会議体の生態系が必要です。そう実感した2年間でした。

★これらをまとめてパウロモデルの図のバージョンアップをしていく2023年度になるでしょう。2年間対話を共にしてくれた教職員、そして多くの方々に感謝いたします。

★本年度最終日、職員室を出るとき、感謝の言葉をあえて言わず、いつものように「お先に」と語りかけ、「お疲れさまでした」と答えてくれたみんなに本当に感謝しています。4月からは再び新たな次元で対話していくことになります。

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