高校入試

2025年7月14日 (月)

私立中学校選択 氷山モデル(08)心理的安全基盤装置を構築している学校

★日本経済新聞(2025年7月14日)に「ショーン・ペンさんが問う市民の覚悟 民主主義の劣化、我々にも責任」という記事が掲載されています。この中で、民主主義の劣化が世界的に深刻であることが語られています。「民主主義の劣化は世界的に深刻だ。スウェーデンのV-Dem研究所によると、24年の世界の自由民主主義指数は約40年ぶりの低水準に沈んだ。国・地域の数でも人口の割合でも、民主主義陣営は権威主義陣営に劣後する」というのです。

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★具体的には、民主主義陣営は88ヵ国、権威主義陣営は91ヵ国。人口シェアでは、前者は28%、後者は72%です。しくは、V-Dem研究所のレポートはPdfで閲覧できます。

★日本は民主主義陣営ですが、最近権威主義陣営を思わせるような言動があふれはじめています。非寛容、排他主義的、差別的な言動は、もし政治の世界だけではなく、日常の世界にも広まったりすると、ハラスメントが起こりますから、大変なことになるのは、火を見るより明らかです。

★学校は、政治組織ではないので、政治で言うところの民主主義的組織とは違います。もちろん、民主主義的精神や人権、法の支配が尊重されそれが実現される場です。しかし、学校の意思決定は、会社と同じように、経営陣が決めます。

★ですから、経営陣による権威主義的な組織になりやすいのです。私立学校は、現場を顧みない経営陣によって運営されるとこれまた悲劇が起こりますから、そうならない創意工夫をしているのです。

★つまり、意思決定プロセスやコミュニケーション環境が、フラットでフリーでフレンドシップ、そしてファンというようなFの精神があふれる組織マネジメントを経営陣は心がける必要があります。

★しかし、世界の7割強の人口が権威主義的な国家組織に属しているわけで、この精神は、人間の精神性の1つです。よほど意識をしない限り、この精神は鎌首をもたげてきます。ですから、経営陣と教師の関係、教師の同僚の関係、教師と生徒の関係、生徒と生徒の関係、学校と保護者の関係を相互信頼を生み出す心理的安全基盤装置をつくっている学校が、教育の質の向上を持続可能にするのです。

★この心理的安全基盤装置は、実はPBLだったり、グローバル教育だったり、ICT教育だったり、メタモニタリングが相互にできる学びの構造のブラッシュアップシステムを指します。そのために、学内研修や学外研修があり、経営陣も教師も生徒も保護者も学び続ける機会も作るのです。
★ベテランの教師をリスペクトし、進歩主義的教師が、それを形式知化システムとして組み立て、それを常に教師同士が改善し続ける対話の時間設定が年間通じてほぼ毎週組み込まれていることが大切です。

★というわけで、その理論化・言語化・見える化・空間化・アート化したものを生み出し続けている学校組織を選択することが安心安全につながります。

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私立中学校選択 氷山モデル(07)進路指導の前提やあり方が変わる 2026年高3生から東大のCollege of Designのインパクト

い★前から発表されていた2027年9月入学の東大の新コースというか学部というかクラスというか、要するに<College of Design>の入試要項の概略が発表されました。50人は日本の学習指導要領を学んだ生徒、もう50人はIBやAレベルなど世界標準のカリキュラムを学んだ生徒を受験対象とします。

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★両者の細かい違いはあるのですが、高校の成績表、書類、論文、英語での面接、英語検定資格のスコアはほぼ同じです。違いは前者は共通テストを受験、後者はIBやAレベルなどの成績結果をだします。

★要項の概要を読んだだけでは、後者は留学生だけなのか、日本の1条校でも、IBやAレベルなどを取得することができる学校もあるので、そこの生徒でもよいのかはまだ判然としませんが、そこはいずれ明確になるでしょう。

★いずれにしても、あの東大の一般選抜の試験を受けない新たな方式が生まれたということです。東大も多様な生徒の才能を受けいれる入試の幅を広げたわけです。

★今までは、海外大学と国内大学の入試のあり方が全く違うという感じでしたが、2026年の高3からは、徐々にその違いが縮まり、共通点が多くなってくるということです。

★この動きは、東大が始めれば、他の国公立大学も動く(この姿勢がよいかどうかはともかく)ので、加速するでしょう。早稲田、慶応はすでに別の方法でそのような方向に動いていて、国公立大学の補完として私立大学の中で一番難しいという段階から、国公立、私立大学が互角のイメージをつくりあげています。

★私立大学も早稲田、慶応に続くところは当然出てくるでしょう。

★AI時代は、牧歌的な知性獲得の時代は、残念ながら去ってしまいます。AIをメタコントロールできる高度な知性や専門性を研究する時代です。一部の権威主義的大学がその研究を握っている場合ではないのです。

★少子高齢化と言えども、小中高生1200万人まだいるのです。この1200万人がみなそのような高度な知性と専門性を、自分の好きな領域で発見し、身につけることができる時代がAI時代だと自分たちの意思でするしかないというのが、今の教育の現状です。

ここにいちはやく気づいているのが、突出したグローバル教育を行っている学校です。外国人教師が5人以上教鞭をとっている学校がほぼそのような覚悟を持っているでしょう。この動きはどんどん広がっていくはずです。

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2025年7月11日 (金)

私立中学校選択 氷山モデル(04)教科授業と探究のつながりが質を生み出している

★私立中高一貫校の教育の質を高める要素10個のうち、授業と探究の2つはカップリングして話すのがよいでしょう。東大にたくさん入っている学校の授業は、基本問答型講義です。問答型というのは、ここでは、教師と生徒ですね。生徒同士となると、PBL型にシフトしていきます。海外大学に合格するには、PBL型の授業が必要となってきます。

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(写真は、駒沢学園女子の数学科の山口先生の授業シーン。同校サイトから。グローバル探究と教科の授業がリンクするPBL型授業)

→駒沢学園女子は、グローバル探究(当然PBL型)を推進しています。一方で、生成AIを活用しながら授業もPBL型を単元のどこかで生徒のブレイクスルーを生み出すタイミングに合わせて行います。数学だけではなく、英語など他教科でもこの生成AI活用PBLは展開し始めています。

★ですから、探究を本格的に行っている学校は、教科授業もPBLタイプが多くなるのは必然です。

★どちらかだけとなると、質は分断されますから、それなら、初めからPBLはやらずに、効率よく一般選抜で東大を頂点とする難関大学を受験すればよいのです。

★ですから、学校選択は、効率よく国内の難関大学にいくための教育の質を選ぶか、自分の才能開花をベースに海外大学やそれに相当する国内大学を総合型選抜で受けられる教育の質を選ぶか、どちらかです。前者なら、Aタイプの教育の質のタイプの学校を選ぶと良いでしょう。後者なら、DやEタイプの質の学校を選べばよいのです。

★ただし、2027年以降は、東大をはじめ多くの国内難関大学も、後者の進路を考えている生徒がアプローチできる入試方式を考えています。生成AIの進化は、どのみち生徒一人ひとりのオリジナリティは何かに行きつきます。

★授業と探究が結びつき学びのシナジー効果を生み出す質が求められるようになるでしょう。

★すでに、2015年くらいまでは、問答型講義の学校がほとんどだったのです。それなのに今はPBL型も増えているのです。6年後どうなっていくのかは火を見るより明らかな気がします。

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私立中学校選択 氷山モデル(03)新タイプ入試の新しい意味の出現 インターナショナルスクールかパブリックスクールかグローバル教育推進私立学校か 選択の幅が拡大のティッピングポイントに

★2015年以降、首都圏の私立中高一貫校は、2科4科という教科入試以外に、思考力入試、PBL型入試、適性検査型入試、自己PR型入試、プログラミング入試、総合論理型入試、得意教科型入試など新タイプ入試が増加。今では首都圏私立中学300校弱あるうち、150校が何らかの新タイプ入試を独自開発実施しています。さらに英語入試に関しても140校が実施しています。

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(図は、首都圏模試センターサイトから)

★これは、受験生の多様な才能を、2科4科に限定していたものを開いた形で、時代の流れも後押しをしました。しかし、2021年以降、これらの新しい入試を実施している学校から、海外大学合格者がたくさん出て、その勢いは今も止まりません。

★それは、この新しい入試を受験して入学した生徒が、学校の想定外の才能を発揮し、学内のカリキュラムをアプデートさせ、おまけにグローバル教育も英語教育型から教育全体を東洋文化と西洋文化を融合する独自の世界標準の教育を生み出すブレイクスルーのきっかけになったからです。

★これによって、2科4科が不得意でも、他の才能で受験するという学校にとって新たな受験生の獲得から自分たちの教育の世界の教育の中における新しいポジショニングをつくり始めたというシフトが起きているのです。

★インターナショナルスクールや日本にやってきたパブリックスクールと日本のグローバル教育を推進している私立学校を比較して選択する時代になったのです。

★海外のエスタブリッシュ私立学校の中学段階での入試は、それぞれ違いますが、まずは言語と数学と音楽やスポーツ、ボランティアなどのパフォーマンス、面接が共通しています。つまり、これらの学校と入試の考え方の基盤が日本の新タイプ入試を実施しているグローバル教育推進私立学校と共通するようになってきたのです。

★つまり、偏差値の枠組の中の私立学校の選択幅が、一気に広がったのです。日本国内の序列を重視するのか世界のエスタブリッシュスクールの仲間入りをするのか。その新しいビジョンをプラグマティックに生み出すティッピングポイントに新タイプ入試がなったのです。この新タイプ入試の新しい意味が氷山モデルでいう今のところまだ目に見えない重要な出来事なのです。

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2025年7月 8日 (火)

工学院 世界にインパクトを与える教師&生徒!

<GLICC Weekly EDU 第220回「工学院大学附属中高ー探究ベースの学びを支える『情報&グローバル教育』」>で、工学院大学附属中学校・高等学校の校長中野由章先生と中学校教頭の田中歩先生からお話をお聞きしました。他の追随を許さないインパクトのある中野校長と田中教頭の相互信頼関係。生徒1人ひとりが成長し高い志をさらりと実装する大人になっていく成長物語が生まれてくるはずです。

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★しかも、その成長の条件が、他校にはない贅沢なそして未来に必須な教育環境なのです。というのも、私立中高一貫校を高度な「情報教育」と世界のエスタブリッシュ私立学校に匹敵する「グローバル教育」の両方を融合している学校は、日本にはないのです。どちらか一方が秀でている学校はありますが、両方とも生徒たちは、意識などせずに自由に柔軟にできてしまうのですが、実は、大学レベルの学びを行っているのです。当たり前のレベルが違うというのは、動画をご視聴していただければ目からウロコとなるでしょう。

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★お二人の対話からでてきたいくつかのキーワードをプロンプトに入れて、工学院の生徒の成長物語を生成AIに書いてもらいました。次のようになりました。

はじめは「楽しい」がすべてだった。仲間と協力してロボットを作る、アイデアを発表する、笑い合う。遊びの延長にあった学びの時間が、生徒を惹きつけていた。しかし、やがて小さな「なぜ?」が芽を出す。「どうしてそうなるのか?」「他に解き方はないのか?」と問い始めた時、学びは「interesting(興味深い)」へと姿を変えた。失敗さえも挑戦として受け止め、「自分の力で答えを見つけたい」という思いが強くなる。

そうした学びの土台には、教師との心理的安全と信頼関係がある。どんな挑戦にも本気で向き合ってくれる先生たち。生徒はその背中から、挑戦する姿勢を学んだ。

AIや数理探究といった高度な領域にも挑み、世界大学ランキング100位以内の海外大学という高い壁を、自らの力で乗り越えていく。生徒は“点”の知識を“線”につなぎ、やがて“面”として世界に広がる視野を持つ。

6年間で育まれるのは、知識以上に、自ら問い、考え、行動する力。そしてチーム工学院として、共に学び、共に未来を創る仲間の存在。卒業式の日、生徒の瞳に宿るのは、確かな自信と「世界にインパクトを与えたい」という静かな野心だった。

★驚きました!工学院は生成AIともシンクロしてしまう学校なのですから!

画期的でインパクトある教育!必見です!!

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2025年7月 7日 (月)

3つの観点別学習状況の評価から「主体的学習態度」は外される?私学は独自に進むだけ。

★毎日新聞 7/4(金) 19:47配信の記事<「学ぶ態度」は評定の対象外に 次期学習指導要領、文科省が方針転換>には、こうあります。

「文部科学省は4日、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の特別部会で、従来の成績評価の方法を見直し、評定を付ける際に「主体的に学習に取り組む態度」(主体的な態度)を考慮しないとする案を示した。この評価方法は2020年度以降に導入されたが、適切な評価が困難で教員の負担にもつながっているとの指摘があり、方針を転換することになった。」

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(東京私学教育研究所編「Discover」から)

★これによって、推薦入試が多くなるとか、結局基礎学力重視の総合型選抜になるとか、各メディアで多様な意見がでているようです。そもそも「主体的な態度」を評価できるのかとか、「客観的」なんてものの見方はweb3.0時代にその概念の変更をしなくてもよいのか?歴史的には、すでに「客観―主観」の二項図式は反省されてきているのではないか?などなどみんなで考える良い機会だとかも言われています。

★どれもその通りですが、東京私立中学高等学校協会は、毎年5月の東京私立中学合同相談会で配布する中学入試ガイドブック「Discovery」で、現行学習指導要領の「資質・能力の3本柱と3つの観点別学習情況の評価のズレ」を指摘しています。主観的なことは評価できないからといいながら主体性を大切にする。個別最適化を大事にしながら主観性を評価できないとする考え方は、そもそも現場では無理があります。

★たしかに、「評価」というものをどう考えるのかによって、そのズレは何とでもなるのですが、いわゆる教育業界では、評価において「客観―主観」の図式を変えようとしません。

★そんなわけで、東京私学教育研究所では、学習指導要領は方向性を示すけれど、具体的な解釈は現場に任されているので、独自に行っていこうと、思考コードや研修コードを足場に各私学と協力して研修をデザインしてきているのです。

★それに、3つの観点別学習状況の評価が制度化される以前から、いわゆる総合的な全人教育を行っている私学は、成績表の様式など創意工夫して行ってきています。

★ただ、制度が変わると、指導要録などの制度上の書式が変わります。それを変えるコストや労力は、現場ではたいへんなのです。私立学校は各校がそれぞれシステムを持っているので、それを変えるのは一苦労です。教育委員会のように一元管理ではないからです。

★もっとも、一元管理は勘弁してほしいので、建学の精神に基づいて独自に先進的先見性のある教育を行っているのですが、そこに没入させてくれるすてきな次期学習指導要領改訂を望みます。

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今更ながら私立中高一貫校のグローバル教育の意味

★私立中高一貫校は、学習指導要領の教育内容を丁寧に生徒と共有しながら、さらに発展させています。こんなことは、何を今更なのですが、総合型選抜が増えてきたことによって、見えなくなっているという状態が起きているので、確認までということでここにメモしておこうと思ったのです。

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(claude作成)

★一般選抜の場合は、学習指導要領内の教育内容の難度の違いが、志望校の大学進学準備の時の戦略データになります。ですから、この学びがグローバル教育に直接寄与するかどうかは、そもそもあまり意識されないわけです。

★ところが、総合型選抜は、探究の時間などで、自然と社会と精神の循環がうまくいかないことによって起こる多様な問いから出発するため、あたかもグローバル教育を行っているかのような錯覚に陥るのです。

★もちろん、グローバル教育の一端を担うのですが、あくまでグローバル教育>探究活動なのです。ですから、この錯覚を避けるために、「グローバル探究」という言葉が生まれています。グローバル探究は、グローバル教育の活動全般をカバーします。

★グローバル教育は、英語教育や国際理解教育をもちろん含めますが、やはりグローバル教育>英語教育、グローバル教育>国際理解教育なのです。

★そうなっているのは、日本の学習指導要領はあくまで日本の国民のための教育が前提だからです。グローバルな時代に、そこで活躍できる資質能力を身につける学びまでは学習指導要領内の話ですが、日本国民としてかつ地球市民として宇宙船地球号の中で起こっている問題を解決するリーダーシップをとれるようになる教育を積極的に行う仕組みにはなっていません。法制度上当然です。

★もちろん、意欲的にチャレンジするのは何ら構わないのですが、それをダイレクトにサポートする教育は学習指導要領には仕掛けられていないのです。ですから「グローバル教育」という言葉は、学習指導要領にはないはずです。

★グローバル教育は、私立学校の創育工夫によって組み立てられた独自の教育です。ですから、私立学校によっては、グローバル教育を行っていないところもたくさんあります。

★高度な英語教育を行い、海外研修も有志の生徒がいける環境まではほとんどの学校は揃えています。そこから先、地球市民としてグローバルリーダーになるかどうかは、生徒の意志によるというケースですね。

★しかし、グローバル教育を掲げている学校は、生徒全員が多様な領域でグローバルリーダーとして活躍するための総合的な教育が行われています。

★ですから、探究を行うときも英語をはじめとする多言語も活用するのが前提です。探究も教科が授業もPBLが前提です。探究だけでPBLを行い、授業はワンウェイ講義という学校は、グローバル教育を行っていないだけです。

★まして、探究だけで、教科学習は不要だみたいな極端な教育は、あってよいのですが、グローバル教育ではないのです。というのは、それは教科と探究が結びつかないという境界線を突破する発想をあきらめているので、その段階で知の分断が起こりグローバル教育ではないのです。

★哲学を大事する教育も大いに結構ですが、カントやデューイ、社会構成主義がどうのこうのという教育はあっても当然良いのですが、それはグローバル教育ではなく、哲学学問教育です。グローバル教育は、いろいろな方法論の前提に多様な哲学的背景があることを見抜きながら、形骸化した方法のマニュアル的活用ではなく、その哲学的エッセンスを現場にチューニングして最適化した思考の環境づくりをします。

★このチューニングというトランスフォーミングな学びを生徒自身が最終的にできるよういにならなければ、環境が異なるグローバルな時空に直面した時に応用が利きません。哲学は主義を通すのではなく、考え方や感じ方を共に変容し、新しいコンセプトを共創する思考のシステムです。

★学習指導要領がどう変わろうが、大学入試がどう変わろうが、学習指導要領内の教育の在り方の問題で、グローバル教育を行っている私立学校にとっては、その独自の教育につながるようにマイナーチェンジをしながら進むだけです。

★この学習指導要領の教育とグローバル教育のギャップは、体験格差とか経済格差の表れだという見方もあるでしょう。しかし、そのような現実のギャップがあるから、そのギャップを解消すべくグローバル教育が2011年以降現れたと考えるのが妥当でしょう。それまではあくまで国際理解教育だったのです。

★C1英語を学ぶのに、PBLの環境をつくるのに、STEAM教育を運営するのに、今では、体験格差も経済格差も不要の状態に日本の教育は進化しています。このことは凄いことです。そうであるのに、学べない壁をつくっているのが現状でしょう。その壁をぶち破っているのが私立学校のグローバル教育なのだと考えてみるアプローチがそろそろでてきてもいいなあと思います。

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2025年7月 4日 (金)

和洋九段女子 NEXTの時代へ

★本日、和洋九段女子の水野校長先生、本多教頭先生、佐藤教頭先生にお会いしました。和洋九段女子といえば、PBL授業だし、SDGsをベースに地域、NPO、大学、企業、大使館、国連広報センターなど外部と連携して探究を広げ深めているプロジェクトが豊富なことを知らない受験業界人はいないでしょう。

★しかし、3人の先生方は、それで満足するつもりはなく、このような教育の質をさらに向上させるために、次の3つを考えているということです。

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① 2030年以降SDGsに代わるグローバルゴールズやアイデアは何かを生徒と共に考案していくということ。
② 多様な外部とコネクテッドしているプロジェクトどうしをつなげて学内の学びの密度を濃くしていくこと。
③ PBL授業の中でつちかっているクリエイティブシンキングやクリティカルシンキング、コンセプトシンキングによって、生徒たちは実はIBのディプロマレベルの小論文を書ける力がついているということを可視化すること。

★9月から具体的なプログラムやプロジェクトを動かしていきたいということでした。お話をお聞きした後、ちょうど高1のサイエンスコースで小仲井先生がサイエンスの授業を行っていました。そこで少し見学させていただきました。

★「回転」について、実際に回転効率のよい仕掛けをどうつくるのか頭も手も使い、話し合いながら、個人ブレストとグループブレストを進めるPBL授業が展開していました。

★回転という物理現象やその理論は、実は多くの社会課題と深く関わっています。SDGsもそうです。したがって、風力発電の回転運動を電気エネルギーに変換する技術で、再生可能エネルギーを生み出す検証を行っていました。

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★もちろん、風力発電のコストの問題や景観や鳥の生態系などへの影響についてのクリティカルシンキングもしながら、適地を限定したうえで、回転効率をいかによくするかというクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングがすでに授業の中で稼働していました。

★また、回転技術について他の技術とつながるかどうか応用がきくかどうかまで、発展させていました。これはいわゆる転移学習で、トランスファーするためにはコンセプトにまで具体を抽象化するコンセプトシンキングがポイントになります。

★やはり、ふだんからこのような思考様式が編み出されているわけです。和洋九段女子の生徒は、プロジェクトを運営するチームワークや多くの団体とつながるコミュにケーション能力という非認知能力とこのような高次思考力を兼ね備えているというわけです。

★このような学びの環境の質をさらに高めていくというのですから、生徒にとっては希望です。

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2025年7月 3日 (木)

八雲学園 海外大学合格者数ベスト10入り in 首都圏

八雲学園の2025年現在の海外大学合格者数は30人。そのうち21人は、世界大学ランキング100位以内。これは、首都圏私立中高一貫校では、ベスト10入りの実力です。この結果は、全人的な総合的なグローバル教育の成果でありますが、特にサンタバーバラでの3カ月留学は、生徒の皆さんの成長のティッピングポイントになっています。

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★今もまさにこの3カ月留学にチャレンジしている生徒がたくさんいます。実は、この3カ月留学は、事前に3カ月の準備学習、帰国後に3カ月さらなる向上学習があり、9カ月プログラムになっています。

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★そして、この9か月間、生徒の学びのコアには、上記の図にあるようにダブル5Eのプロセスがあり、それが知のトルネードを生み出す循環になっているのです。もちろん、これは、国内大学進学準備教育にも浸透しています。2025年の国内合格実績の飛躍は、この知のコアシステムにあると、副校長の近藤隆平先生は語ります。このダブル5Eこそ、米国の大学でも学ぶ研究のプロセスに通じているのだと。

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富士見丘 グローバル教育としての組織力

★先週の金曜日、<GLICC Weekly EDU 第219回「富士見丘学園ーグローバル教育で拓かれる難関大学進学」>で、同校の教頭佐藤一成先生と広報副部長、学年主任の田中裕樹先生から、同校のグローバル教育が組織的にますますパワフルになっている話をお聞きしました。いわゆる英語教育ではなく、将来生徒がグローバルな世界で活躍する準備として突出したグローバル教育であることを、卒業生の活躍を通してわかりやすく語ってくれました。

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★同校は、帰国生に大人気の学校ですが、一般生もこの突出したグローバル教育カリキュラムで学びます。その結果、帰国生に限らず海外大学に進む生徒もいます。また、早稲田や慶応大学、上智大学、東京理科大に進み、そこで一年間の留学をしたり、卒業後に留学したりしている卒業生がいます。そしてそんなOGが、ジャーナリストや外資系で活躍したり、世界大学ランキング100位内の海外大学を幾つか卒業したりして、自分の研究の幅を広げ深めているのです。今回は、富士見丘に入学して初めて本格的に英語を学んだ3人のOGのグローバルな活躍について紹介されました。

★このようなOGがたくさん輩出されているのは、富士見丘のグローバル教育が学校全体で持続可能な組織力を確立したということを示唆しています。多くの学校では、英語の先生や国際部の担当の先生が回していき、その継続力に苦労をします。富士見丘も突出したグローバル教育の運営は大変でしょうが、それを組織的に運営しているところに優位性があります。

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★そして、帰国生は、もっともっと優れた教育をと望みます。というのは海外大学進学準備は、日本の学習指導要領のレベルを超えています。専門性がある程度必要です。日本の学習指導要領では文学批評まで行わないし、経済学原論や哲学教養、コンピュータサイエンスまでの内容もありません。そこを富士見丘は、やってのける講座も開発しています。

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★しかも、さらにぐっとくるのは、帰国生は日本語が得意でない場合が多いので、そのサポートシステムも構築されているところです。この帰国生学習サポート室は、海外大学進学準備カウンセリングも行いますから、一般生にも開かれています。

★同校のように、海外大学進学準備教育も射程に入れた全人的なグローバル教育の運営組織が充実している学校は、極めて少ないのです。

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