レジュメ

2024年8月26日 (月)

「問いの力」AI社会でも変わらないコンセプトレンズ創出力~福島県私学教育研修会でWSを実施して

★8月22日・23日郡山で、福島県私学教育研修会の「教育課程部会」で、5時間のWS(ワークショッ)型研修を実施しました。主催の福島県私立中学高等学校協会の教育課程部会の大テーマは「新学習指導要領とこれからの授業デザイン」です。それをうけて「問いの力~授業と探究と教育活動を有機的に結合する」という小テーマに焦点をあてて、5時間先生方と楽しみながら深まっていきました。

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★かつて聖パウロ高等学校で校長をやりながら当時の企画戦略室室長・広報部長・数学副主任の伊東竜先生(今は互いに違う教育研究所に勤務)とコラボして「数学の時間」や「探究の時間」、「総合型選抜WS」、「保護者との対話WS」を実施しながら、トリニティークエスチョンを、生徒自らが解決したり、自らそのようなクエスチョンを創ったりするメタ問いであるコンセプトレンズとしての「問いの力」を見出すWSを教育一般化して開発したプログラムを、福島の先生方が受け入れれくださり、行えました。

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★今年ムーンショット目標に10個目「フュージョンエネルギー(核融合エネルギ)」が加わり、いよいよ2027年以降の新学習指導要領の方向性が見えたこともあり、身体を動かしたり(ロボットアクティビティ)、クロスクエスチョン(トリニティクエスチョンの1つ)を考えたりとチームで行いながら、なおかつ、参加者一人一人が幾度も「プロンプトエンジニアリング」をしながら、WSを進めました。

★昨年プロンプトエンジニアリングはまだ活用しなかったので、参加者は少し腑に落ちない部分もあったようでしたが、今年リピートしてくださった先生からは、非常に腑に落ちたとフィードバックをもらえました。

★プロンプトエンジニアリングはセルフPI(ピアインストラクション)で、リアルPIとディスカッション、アクティビティという協働的な活動の中に織り込むことによって、参加しながら自分の軸が見えてくるようです。

★それも伊東さんが、グーグルフォームなども使いながら、生成AIのアドバイス(初めて活用される先生もいました)をしながら、スマートに進めてくれたからです。私は東大や京大などの先生方との経験やリベラルアーツ的な知の背景をゴツゴツした感じでところどころ講義をするだけでした。30歳の教師と70近い元校長とのコラボなのですが、その知性の新しさと古さの違いが分かり、それも参加した若い先生方に希望と勇気を抱いてもらえたのではないでしょうか。

★伊東さんと私の共通点は、数学的思考(コンセプトレンズの根っこ)と対話型授業を楽しめるということです。そして「思考コード」を共有しています。それがなければ、こういうコラボは続かなかったでしょう。そこに生成AIの登場です。それが使えたので、WSでの思・考・動(情緒と思考と行動)の回転速度を加速でき、この類のWSを開発できたと思います。来年は、さらにおもしろいことになりそうです。

★私自身は、青山学院大学教授の若き俊英香川秀太教授の研究に親和性を感じています。別の研修にもご登壇いただきました。そこに参加した聖パウロ学園の小島校長も共感し、さっそく学内の研修でお招きする話が進んでいます。

★AI時代になっても変わらない生き方があるというのが、香川教授の軸ですが、先生自身最先端の情報分野で研究されています。そして商業経済と人間経済との循環というか融合のアイデアを持っています。生成AIやICTをどこまで道具として人間は活用していけるのか?を研究テーマの一つとしていると勝手に思っています。

★私は人間の最高の道具は「記号(言語と数学の両方の言葉)」だと思っています。私たちは自在に使う言語を道具だとは意識しないでしょう。手などもまたものを掴む道具でありながら同時に私自身のアイデンティティの1つのあり方です。

★しかし、一方で私たちは自分の言葉に溺れ、数学的思考を日常生活では関係ない道具としてみなしてしまうことがあります。それはAIやICTについても同様です。そうなってくると、人間自身の本来的なあり方を創出していく「問いの力」もまた消失するでしょう。そのとき人類は危ないですね。ですから、そうならないようにウェルビーイングな地球を問い続けていける「問いの力」を多くの方といっしょに探していきたいというのが伊東さんと私の願いです。

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2023年10月 7日 (土)

成城学園の魅力 多様な国内外の体験学習の意味

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」で同校の青柳圭子先生(広報部部長)のお話を聴けました。中学から高校まで、海や山の大自然の中で体験からオーストラリアやイギリス、カナダ、アメリカなど多様なプロジェクトがマルチスパイラルを描きながら深く広くなっていきます。

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★高校の修学旅行は20コースあって、選択制だし、複数参加しても構わないというのですから、生徒の主体性が豊かになったいることを示唆しています。

★海や山の体験の3つの基本要素は、高校卒業までのプロジェクトにまで共通しています。それに英語だとか多様なアドベンチャーとか意思決定とGRIT精神などが自分事として高次に内面化されていきます。

★その3つの意味や具体的にどうプロジェクトが発展していくのかについてははぜひご視聴ください。

★今回さすがだとまたまた感じ入ったのは、このプロジェクトを企画し準備し実行しリフレクションする一連の過程の中で、生徒のみならず、教師も学び成長するのだと青柳先生は語るのです。

★学校の改革とか教育の改革とかは、制度的な改革ばかり注目されがちですが、実は生徒も教師も成長するというトランスフォーメンションが持続可能であることが、学校や教育の質がアップデートしているということでしょう。

青柳先生が学内外で活躍し、経験を積みながら理論も蓄積しているので、「意味付け」という哲学的洞察力が鋭く豊かなのです。受験生・保護者だけではなく、学校の先生方も必見です!共に影響し合いましょう!

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2021年3月14日 (日)

wish自由とwill自由(01)争い事と交渉事

★世の中は、いつも自由と規制の葛藤で混乱を生み出します。これは解決困難で、できたためしがありません。ですから昔から種類や方法は千差万別ですが、争いごとは絶えないわけです。しかし、同時にそればかりだと、人類は滅んでいますからそうなっていないということは、交渉をしながらなんとか均衡を保つ時間があるということです。

★そのうちに、解決する争い事もあれば、別の新しい争い事が起きることもあるというわけです。再び交渉がはじまるわけです。壮大な歴史も人生としての歴史も、争い事と交渉事の連続であるわけです。それゆえ人生は物語そのものなわけです。そして、この交渉事が対話術によって行われる時、均衡の時間は長持ちします。これについては、いずれ述べます。

【図1】

Wish

★さて、争いが絶えないのは、個人が普遍と特殊をどう考えているか違うからです。普遍を社会、特殊を個人と置き換えたとき、社会の中の個人としてとらえることもできるし、その社会の中に納まっているのは窮屈だ、そんなの関係ないと社会と個人は別々だと捉えることもできます。

★この考え方の違いで争い事が起こるわけですね。中世以来の普遍論争という哲学的闘争もその一つです。哲学論争であれば、それは議論として尊重していられるわけですが、ことそれが戦争となるとただ事ではないのです。この違いが宗教戦争を起こしていたことは、世界史を見れば明らかです。

★ですから、議論や戦争に一定の解決策を講じるために交渉をする時間というのが必要だったのです。デイヴィッド・ヒュームが倫理の条件に時間をセットしたのは、まさに当時の経験の観察からでてきたのでしょう。ヒュームに限らず、哲学者たちは、戦争とパンデミックにいつも迫られていたからです。そして、この環境は今も続いていることは、いまここで私たちが実感していることです。したがって、この倫理と時間の問題は現代社会でも継承されています。交渉にかける時間を重ねることの重要さですね。

★授業は交渉というより、対話ですが、この対話なき長時間の講義形式の授業は、実は倫理上問題だという気づきも生まれつつあります。オンライン授業の中に対話のシステムがなく、オンディマンドだけだと何か変だと大学の学生はクレームをあげます。今回のパンデミックで、それはメディアでもSNS上でもあふれました。これを無視すると倫理上の問題が起こることは、もはや説明するまでもないでしょう。

★何か事件が起きたとき、初期対応で謝罪が送れると、法律上の訴訟はあまりおきませんが、倫理上の問題は追究されます。この謝罪が交渉術的にとらえるか対話術的にとらえるかで、また問題の現れ方は違いますが、それについては、また改めて。ともあれ、時間というの概念は、たんなる物理的な意味だけではなく、倫理的なそしてもちろん感情も関係しているわけです。このような時間概念をもつかどうかで人間かそうでないかが区別できるかもしれない程です。

★というわけで、上記の【図1】のように、普遍と特殊の集合論的な関係は、対話によって循環するわけです。この図の中には、3つのタイプの関係があります。違うタイプの考え方をしている社会と社会、個人と個人、社会と個人が対立するわけですから、交渉によって、つまり、この考え方をグルグル回していくうちに3つ目にステップアップすることで、普遍性と特殊の共通点を見出すことができます。ここでようやく、妥協していくというわけです。こうして、自由の安心安全が紡がれるわけですが、これはしかし、油断していると、もとに戻ってしまい、また交渉するということの繰り返しになるわけです。

★元の木阿弥なんて言葉がすでに存在しているわけですし。

★これは、常に一つのタイプを続けていると自由になりたいという意志がこみあげてくるからですね。この自由を私はwish自由と呼びたいと思います。今の束縛、つまり共通性という普遍性から逃れたいという自由ということです。

★これに対し、wish自由はローカル普遍に自分を適合したいとか適合させたくないとか、普遍に適合させる自分の自由にこだわっているのに気づき、なんだそもそもローカル普遍を見直して、新しい普遍を創ってしまえというのが、will自由です。

【図2】

Will

★【図2】のように、wish自由の循環から飛び出るわけですね。起業家精神が大事だなんていうのがトレンドなのは、wish自由からwill自由へということでしょう。創造思考が大事だとかアート思考が大事だとかプロジェクト思考が大事だとかいうのもそうですね。

★wish自由循環は、演繹推論と帰納推論で正解がある程度あります。しかし、will自由は、正解はありません。あくまで仮説推論です。したがって、wish自由論者から見れば、訝し気に思われてしまうのは、will自由論者の運命なのです。

★しかしながら、運命に身を任せていると、will自由論者は独善的・独裁的になりがちです。万能感に溺れると大変なことになります。自分ひとり溺れているうちは問題はありませんが、普遍性を創るわけですから、周りも巻き込まれます。それゆえ、クリエイティブシンキングには、クリティカルシンキングが欠かせないということです。2つのWと2つのCがダイナミックに交差するのがシステム思考なのです。

★完璧なwill自由とか完璧なクリエイティブシンキングとか、多/他から独立したものを求めると、関係を断ち切る要素還元主義に自ら陥没していくのです。

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2020年1月10日 (金)

第15回 模擬授業と授業評価

■2020年1月10日(金)3時限目

テーマ)模擬授業を通して形成的評価をするために思考コードを活用する。

サブテーマ)
・10の学習者像は授業評価に含まれるか?
・問いを生み出す「学習ツール」の意味は?
・生徒の複眼思考と情意的豊かさを活用できる授業か?
・思考スキルと問いと授業評価との関係は?

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

授業用思考コード)

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2019年12月20日 (金)

第14回 模擬授業と形成的評価

■2019年12月20日(金)3時限目

授業アンケート)授業開始時点で「授業アンケート」をまず行います。

テーマ)次のA~Dの問いから一つ選び、その問いの解答を生徒が最終的に自分で考えて解けるようになるまでのサブクエスチョンをつくり、それに基づいても授業をデ‐ザインしてください。

A 遠いアンドロメダ星雲に我々の地球と同じような天体があり、人類とほぼ同様の生命体が住んでいるとする。しかし、その生命体は、光に関しては、紫外線領域のある波長の強弱しか検知できないとする。その生命体は、我々人類とは異なる、どのような科学技術や文化を発展させていると考えられるか。

B 現代では自然保護が重視されるが、人類がいなくなるのが最大の自然保護だという考え方もある。こういう考え方もあることを踏まえて自然保護についてあなたの考えを述べなさい。

C 今日では企業はグローバルな競争に直面しているといわれている。このような状況で企業、 とくに日本企業はどのような方策をとるべきか、あなたの考えを述べなさい。

D 「常識」とは何か?多面的に論じなさい。

サブテーマ)
・10の学習者像は授業で考慮されているか?
・「学習ツール」「思考スキル」は何を使うのか?
・生徒の複眼思考と情意的豊かさを活用できる授業か?
・問いと形成的評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

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2019年12月13日 (金)

第13回 模擬授業と授業評価

■2019年12月13日(金)3時限目

テーマ)模擬授業を通して形成的評価の応用として授業評価をつくる
サブテーマ)
・10の学習者像は授業評価に含まれるか?
・問いを生み出す「学習ツール」の意味は?
・生徒の複眼思考と情意的豊かさを活用できる授業か?
・思考スキルと問いと授業評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

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2019年12月 6日 (金)

第12回 形成的評価と問いの関係

■2019年12月6日(金)3時限目

テーマ)「鎖国と外交」がテーマの文章から問いを作り、形成的評価との関係を考察。

サブテーマ)
・10の学習者像は形成的評価に含まれるか?
・問いを生み出す「学習ツール」の意味は?
・思考スキルと問いと形成的評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

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2019年11月29日 (金)

第11回 形成的評価とタキソノミー 学校組織以外でも活用は可能か?

■2019年11月29日(金)3時限目

テーマ)形成的評価の作り方 ロールプレイを素材に

サブテーマ)
・10の学習者像は形成的評価に含まれるか?
・総括的評価と形成的評価の統合は可能か?
・タキソノミー提唱者ブルームの形成的評価に学びところはあるか?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

 

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2019年11月22日 (金)

第10回 スペシャル授業

■2019年11月22日(金)3時限目

本日は、教育学部の免許取得に必須な「介護等体験」に参加しているメンバーが多いため、予定されていたシラバスの内容を変更します。

テーマ)世界平和のあり方は、多様な世界秩序のあり方をめぐる世界戦略によって創り方が違うということはあるのか。このことを考えたうえで、あなたの平和の創り方を論じなさい。

サブクエスチョン)
・IBで学んだことが生かされれるのか?
・10の学習者像で世界平和は本当に創れるのか?
・10の学習者像が考案された時期には、今のようなICTやAI、フィンテックの普及はなかったが、学習者像をアップデートする必要はないのか?

資料)
「Wedge (ウェッジ) 2019年11月号【特集】ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す」から

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2019年11月15日 (金)

第9回 ドーナツとスヌーピーで「思考力」を解き明かす

■2019年11月15日(金)3時限目

問いA「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」

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0)アクティビティ「ぐるぐる」

1)アクティビティ「ぐるぐる」を通して、問いAを考えることの意味を議論する。

問いB ドーナツと物体Xの関係を「ぐるぐる」で解き明かす。

問いCスヌーピーを「ぐるぐる」で解き明かす。

2)問いA・B・Cを考える過程をリフレクションして「思考力」とは何かディスカッション。


その思考力は、
・10の学習者像とどのように関係するのか?
・思考コード分析
・思考スキル分析

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後学修「思考力のメカニズムや意味についてまとめる」→メールで提出

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