教育イノベーション

2021年1月27日 (水)

「教育とは生き方そのもの」へシフト(04)デューイの発想に共感のウネリか?

★昨日夜、本ブログのアクセスが指数関数的なカーブを描き急上昇しました。この時期は中学入試の情報に気配りした記事が多いので、特に2月に入るといつもの3倍くらいのアクセスになるのは恒例なのです。けれども、ちょっと早いなあと調べてみたら、<「教育とは生き方そのもの」へシフト(01)グレートリカバリーの意味>の記事がダントツトップでした。

★Googleで「グレートリカバリー」をサーチしてみたら、同記事がトップページに出てきたので、たまたま、このキーワードに興味がある方々にヒットしたということでしょう。

★しかしながら、この落合陽一さんとNHKの編プロが練り上げた言葉は、マルクス・ガブリエルさんとシンクロし、さらにはデューイの発想のアップデートをしようとしている教育に合流するという流れの記事なので、共感していただけるとありがたいなあと。

★ともあれ、中学入試目前の中で、このような記事が一夜城であっても、アクセスが集中したということは、今までになかったので、2021年はSomething Newがウネリ始めているのでしょう。と期待したいものです。

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2021年1月26日 (火)

GLICC Weekly EDU(18) 29日金曜日かえつ有明佐野先生と対話。サイコロジカル・セーフティーが生み出す最高のチームと才能

今週1月29日(金)のGLICC Weekly EDUのゲストは佐野和之先生(かえつ有明副教頭)です。佐野先生は心理学的安心安全を生み出す魂の対話を同僚と生徒と常にしています。授業でも絶えることがありません。すべての授業がアクティブラーニングで、対話に満ちているからです。

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★この心理学的安心安全を編み続けるには、達人の領域にいけば、感性のおもむくままに自由な時空の流れに身を任せればできるのですが、だれでもができるわけではありません。

★かえつ有明の先生方は、佐野先生と盟友金井先生による学内の研修によって、それを生み出し、その研修で培った魂とスキルを生徒とシェアします。それゆえ、生徒は自身の困窮していることや弱みをさらけだし、仲間と対話をしながら、自ら回復し、さらには新たな挑戦への勇気を内なる松明として燃やし自らの探究の旅にでるのです。

★私は佐野先生に頂いたメッセージを今も大切にしています。

≪小さく始めたグリーンな世界が少しずつ広がり始めている。少しずつ、でも確実に。それぞれの緑が他の草原や木々と結びつき始め、新たな循環態系を形成していく。その世界を維持するにはそれぞれがその世界との繋がりを回復して、部分と全体を一致させていく不慣れな作業に意識を向ける必要。弱肉強食の世界で培われたメンタルモデルに自覚的になり、慣れ親しんだその世界観を手放す覚悟を持たないとグリーンな世界に生きられないどころか、その世界の存在にすら気付けないかも。ここからが自分自身のあり方を試されるところ。≫ 

★2021年1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)、かえつ有明の総応募者数は、1801人、前年対比は、78.3%、前々年対比は101.6%。昨年が大人気だったので、難しくなり多少敬遠されていますが、2月3日までには、昨年並みになるでしょう。

★大学受験第一主義ではないのに、いやだからこそ人気なのかもしれません。その人気はグリーンな世界が広がる最高の学校チームにあります。学校のチーム作りの秘密について対話したいと思います。対話の手法はピクチャーダイアローグになると思います。

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2021年1月24日 (日)

ノートルダム学院小学校 子供たちの瞬間瞬間の成長を気遣いかつ世界的視野を身につけ問題を解決するリーダーシップを育てるプロジェクトをデザインする教師で満ちている。

ノートルダム学院小学校(以降「ND」と表記)のサイトを開くたびに感動しないではいられません。なぜなら、更新率が高く、開くたびに先生方の生徒を見守る温かい眼差しと才能があふれでる授業が展開されている様子が手に取るようにわかるからです。そして、校長原山稔郎先生が毎週のようにブログを更新していて、世界の痛みをシェアし、その痛みを解消するサーバーントリーダーとして目の前の生徒が成長してくれるように祈る心が伝わってくるからです。

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★先日、NDの先生方とZoom対話をしました。いつもは、リアルな空間で行うのですが、今回は再度緊急事態宣言が発令されたために、サイバースペースで行うことになりました。リアルなスペースだと、peer-think-shareやディスカッション、ポストイット・マインドマップ、カテゴライズ、パターンランゲージの活用など、個人ワークとペアワーク、グループワークや多様なツールを使い変幻自在に動きながら気づきを生み出していくのですが、サイバースペースだと、その身体の動きは制約されます。

★しかし、リアルスペースであれ、サイバースペースであれ、再重要なコトは、<対話>です。

★そういう意味では、全く問題がありませんでした。NDサイトにあふれ出ている先生方の<対話>のエネルギーが、Zoom対話でもいかんなく発揮されていたのです。

★<対話>をするとき、斜めからみる皮肉屋(cynic)がいないのが、ND学院小学校の特徴です。cynicとcritical thinkingの区別がしっかりできているので、内省(振り返り)と改善がスムーズに循環します。先生方のこの姿勢がロールモデルエフェクトとして生徒の成長に大きな影響を与えるのは、火を見るより明らかです。すばらしいチームですね。

★今回は、高野先生の日本史の授業の振り返りを先生方としました。貴族の世界から平家が台頭し武家の社会が生まれ、鎌倉時代に移行していく歴史の話をストーリーテリングというアクティビティで授業は展開されたということです。

★生徒は、高野先生のストーリを聴きながら、個人ワークと対話をしながら、「天皇観」「貴族観」「武士観」を仮説を立て推理していきます。ファクトのノートテイキングというより、自分の考え方をそのつど書き換え更新していくという思考の試行錯誤の軌跡をノートにするわけですね。

★目的は「あなたなら、天皇、貴族、武士のどの立場で、国を治めるか?」というプロジェクトだったようです。

★ファクトとオピニオンを縦糸と横糸で編んでいく授業です。生徒は、いつの間にかその時代にタイムトラベラーとして参加したかのように感じたことでしょう。「自分ゴト」という言葉がありますが、歴史に自分自身がかかわっていく主体性が生まれてくる巧みな仕掛けだと思います。

★しかし、高野先生は、自己内省をし、ストーリーの話をする時間が長くなりすぎて、結局講義型の授業になってしまっていて、インプット型の授業ではないかと。どう改善したらよいだろうと、自分なりにモニタリングして、仲間の先生方に相談をもちかけました。

★すると、同僚の先生方は、「ノートルダムの歴史を学んだ小学生が、誇りを持って小学校に通えるのと同じように、日本に住んでいること、文化、魅力ある人物を誇りに思えるようになれるような授業でしたよ!」「歴史上の人物を知る、生活、文化、自分の国を知る、そして自分の国のことを語れるようになる!なんか国際人への第一歩へとつながるきっかけが生まれるような気がしました。テーマを持っての意見交流、気付き合い、学び合いができるのは、意外と難しい。それなのにやってのけているのだからすごいよ」「広報を考えていく中で、どうしてもキーワードが<未来を生きる>になってしまうんですが、過去の時代にいながら未来社会を考えるしかけができていて感動しました。このような授業を実施していることをもっと広報したいと。ありがとう!」「社会というと、知識を詰め込むものだと思いがちな子どもたちに、歴史のストーリーを教えてあげることで、よりおもしろく、歴史が好きになれると思いましたよ」と、エールが贈られました。

★高野先生と同じ社会を担当している一柳先生も、終始高野先生をサポートしながら「学んだことを土台にして、具体的な事象に対する解決策を考え、発表できる授業だと思う」と互いに社会科の授業の価値を確認し合っていました。

★このような同僚にようるエンパワーメントフィードバックができるのはすてきです。もっとこうしろという対話ではなく、自分たちはこのようなことに気づいたよと分かち合いができるオープンなマインドは、共感的な対話ができる組織だということを示唆しています。

★そして、高野先生は「ストーリテリングと知識を講義するということは実は違っていたのだということに気づかされました。ある意味コペルニクス的転回です。ストーリーテリングは講義というよりアクティビティという意味でとられ返せばよいのですね!」と。

★そして、国語の先生とも、物語を創作するワークショップはぜひ横断的にやりましょうと。生徒もストリーテラーになることは、もっと主体的になることですよねと。

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★高野先生は、神先先生が、理科でも実験や作業はするけれど、高野先生のストーリーテリングと生徒が自分の考えを更新していく作業は、同じ意味があると思いますというフィードバックに、そう気づいたということでした。

★私も、先生方と対話して、上記のような図が思い浮かびました。まさにこれぞプロジェクト学習だなと感じ入りました。ありがとうございました。

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2021年1月19日 (火)

聖学院インパクト(10) 聖学院が最先端教育を続けられる理由。児浦先生のワークショップスキルにヒント。

★聖学院が、最先端の教育を生成し続け、教育関係者を超えて各界にもインパクトを与え続ける秘密は、児浦先生のワークショップ力にあります。

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★上記写真の本には、児浦先生のワークショップのスキルが幾つか紹介されていますが、それらはすべて、授業や研修、会議で活用されています。

★リーダーシップスキル、コラボレーションスキル、未来ビジョンスキル、リフレクションスキル、ファシリテーションスキルなどは、PBL授業で活用する必須のスキルだし、同僚や生徒とともに進化するスキルでもあります。

★総合型選抜に立ち臨むとき、生徒自身が自分をリフレクションし、自分軸を確認し、いまここで未来を描くストーリーテリングにも絶大な効果があったでしょう。

今週金曜日のGLICC Weekly EDUで、この最先端教育や人づくりの奥義を同書を開きながら、児浦先生に尋ねてみようと思います。聖学院の躍進の秘密、未来への希望が開かれるでしょう。

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GLICC Weekly EDU(16) 聖学院児浦先生と対話します。時代の社会通念の向こうにある良心にマッチングする最先端の教育創り。

今週の22日(金)、鈴木裕之代表主宰のGLICC Weekly EDUのゲストは、聖学院の広報部長・国際教育部長・21教育企画部長の児浦良裕先生です。当日は高校の推薦入試がスタートするたいへん重要な日です。そんな中での出演です。ありがとうございます。児浦先生の役職を見ればわかる通り、超多忙な超人的教師なのです。

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★なぜこんな超人ぶりを発揮できるかと言うと、まず第一に児浦先生自身が創造的才能者、つまりクリエイティブクラスの先頭に立っている人物だからです。内村鑑三のいうところの「勇気ある高邁な精神の人間」ということでしょう。

★それからもう1つは、なんといっても生徒中心主義的な得難い教育者ということです。これは生徒迎合主義とは全く違います。生徒迎合主義は時代の社会通念である学歴社会の競争で勝利できるように導く教師の信条ですが、生徒中心主義は時代の良心と生徒の才能を結合する世界の難題に挑む教師の気概のことをいいます。

★今回のパンデミックで、世界同時的に多くの人々が、時代の良心に耳を傾けるようになりましたね。

★この気概を持って、思考力入試、帰国生入試、授業デザイン研修、アジアとの連携プロジェクト、多様な世界プログラム、STEAM教育、オンライン授業、海外大学進学準備教育など次々とイノベーションを起こし、今年は高校新クラスGIC(グローバルイノベーション)を立ち上げました。

★ビビッドな/びびっとくる情報と多くの先生や外部の方々とのコラボレーション、起業する生徒とのコラボレーションなど、スカッとスッキリするそして涙腺がゆるんでしまうお話を聞くことができると思います!

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2021年1月 8日 (金)

GLICC Weekly EDU(10) パンデミックの時代を生きるには才能自己開発ができる対話が大切。ちょっと凄いことになってきた。

★本日21時からは、GLICC Weekly EDU 第12回 「カリフォルニア工科大学に通うSophieさんとの対話ー 海外からみた大学事情及び未来ビジョン」を実施します。主宰の鈴木代表が英語でZoom対話をしながら、トランスレートもします。私は英語はだめですが、deepL翻訳を使いながら対話をしようと思っています(汗)。本当に凄い時代になりました。テクノロジーで時空の壁も言語の壁も乗り越えられるのですから。そして、さらにおもしろいクリエイティブ・プロジェクトが生まれています。

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★ソフィーさんと対話できるのは、それゆえ楽しみなのです。ここのところ創造的才能者=クリエイティブクラスのZ世代(小学校から高校生・教師)と対話しながら、つくづく才能開発の環境デザインの一環として「対話」は大切だと思っています。ソフィーさんがどんな才能開発の環境にあるのか、どんな対話をしているのか実に興味があります。

★ソフィーさんもZ世代ですから、今対話しているZ世代の才能者の対話デザイン(PBLに埋め込みたい)を、今後多くの人びととシェアしていけば、着実に世界は変わるでしょう。そう確信する日々を送っています。

★今、私はGLICCで小学生のクリエイティブコースの国語を担当していますが、ついに小5が、ノートパソコンを授業中にもってきていいですかということになり、NU BOARDやレゴでセカンドブレインを活性化させながらもをWordで長文を書き始め、CANVASというプラットフォームでその場でやりとりしながら対話していくのです。

★対話をするときは思考スキルと物語の構造分析視点(13のフェーズが今のところ使いやすいですね)をベースにしていきます。そうこうしているうちに、それぞれにプロジェクトが立ち上がり、授業の方は生徒たちの思考と感性トレーニングの共有ベースで、国語でありながら学際的なというか文化人類学的な言語使用をしていきます。ですから、MYプロジェクトは授業外で生徒が自分で進めていくわけです。GLICCのCANVAS内で時空を超えて行うので、授業内ともいえるわけですが。

★生徒は思考力ベースの入試と英語を活用する入試を受けると自分の意志(家族との対話の中でしっかりと自分で決めています。今回のプロジェクトもお母さんとかお父さんも巻き込んでいます)で決めています。小学生なのに本当?と思うかもしれませんが、それは違うのです。ただ、その理解には、意志とは何か?主観とは何か?というコペルニクス的転回が必要で、それができている家庭の生徒と私は対話しているので、実感できるのでしょう。

★中学入試が思考力や自分の意志を表現できるタイプの入試を開発したことは、本当に小学生にとって才能開花の道を開いたなあと思います。受験と才能とは一見パラドクスですが、本来受験とは、生徒の才能とのマッチングを果たすものですから、これが本道なのです。

★どうなるかはわかりませんが、こんなに多くの脱枠自己変容型自己タイプの創造的才能者と対話ができるなんて!これも21世紀型教育を推進している先生方や鈴木さん、及び思考コード開発にかかわらせて頂いている山下さんと北さんとの対話によってもたらされているわけです。心から感謝。

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2021年1月 7日 (木)

工学院Z世代の未来の開き方(05)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん➄

「工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④」のつづき。

★郷野さんは、総合型選抜の資料としてポートフォリオを提出しています。3つの部に分かれていました。第1部は、生徒会誌「扶養峰」を編集した時に掲載した自身が撮った写真。文化祭や体育系部活で輝く同僚の表情や姿や身体の動きを「一瞬」に鷲づかみする写真でした。

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★第2部は、カンボジアでグローバルプロジェクトを実施したときの写真。カンボジアの街の人びとの実生活の中の姿を撮影した写真。第3部は、天文学部で撮影した天体の写真。いずれも絶品だと私は感動しました。前回語ったように、これで日芸写真学科に合格したのだと思ったわけです。

★しかし、郷野さんはそうではないと。特に第2部の写真は一方的に自分の見方を押し付けて撮っただけで、カンボジアの人びととコミュニケーションをとっていないから、日本とは違う村の風景の中の人びとを撮ったから、いつもとは違う感覚がでたけれど、まだなぜこの写真かということが理論的に詰めれていないのだというのです。

★だからこそ、そこを追究したいという情熱を面接官とシェアしたのでしょう。面接官は、直接的な質問はせず、カンボジアについていろいろ問いかけてきたそうです。なるほど、そこだったんですね。

★「そこ」ってどこか?実は、郷野さん自身が第3部ですでに回答しているのです。天体の写真は自分の眼の中に撮るべきコンセプトやアイデアがあると思っていたが、そうではなかったと。天体そのものの被写体にもそのコンセプトやアイデアがあるのだと。そこを写真にしなくてはならないというのです。

★そして郷野さんは、その「自分に囚われないで」学び続けることができる大学を選んだのだと。自分に囚われない学びに挑戦し、自分に囚われないからこそ創造性は拡張し、自分に囚われないからこそ貢献できるのです。工学院の校訓をそのまま深めた郷野さんだったのです。

★そして、仲野さんも、また同じことを語っていたのです。自分の殻を何度も破ってきた苦行。それが6年間だったと。もちろん苦行だから苦しくて辛いのではなくて、だからこそワクワクして立ち臨んだのでしょう。

★仲野さんは、このような二人のことを自ら「変態」と呼びます。このシリーズの一回目に〇〇だからこそこの苦行を乗り越えることができたのだと紹介しました。この〇〇にあてはまることばこそ「変態」だったのです。

★もちろん、この「変態」という意味は、スティーブ・ジョブスがApple社に帰還した時に創った有名な動画広告のコンセプト<think different>のことです。ピカソやアインシュタイン、フランク・ロイド・ライト、キング牧師、マリア・カラス、バックミンスター・フラーなどの表情を次々と流し、クレージーな個人が世界を変えてきたのだと語るCMでした。

★21世紀型教育が目指すクリエイティブクラスのロールモデルとなった動画です。田中歩先生は、もう一つの意味の変態を付け加えました。つまり、自己変容という意味です。

★仲野さんは、総合型選抜は自分の興味や好奇心のあることをとことん追求していく生き様と大学の欲する学生像のマッチング。自分だけではなく、大学という相手をもどう巻き込めるかなのかだと。こんなことをやり抜くのは変態でないとできないと言うのです。

★仲野さんも郷野さんもジョブスのクレージーラインナップに登場する人材だったということでしょう。ジョブスのCMの最後の1人は、無名の少女が目をパチッと覚醒したところで終わります。

★さあ、あなたもクレージーになろうよというわけでしょう。二人はそれぞれの道でクレージーな道をこれからも継承していくでしょう。

★今回、二人に感動的な対話をいただきました。二人のような生徒が過ごせる工学院。田中歩先生も静かに情熱を燃やし、明日への戦略を練っていることでしょう。

★ヘルマン・ヘッセがこう語っているのを思い出しました。

<わたしたちのこの手に包まれている一つの希望とは何か。自分自身を今日いくらかでも変えることだ。昨日までよりも善く変えていくことだ。本当にそのことを実践する人々にこそ、世界の幸福はかかっている。 書簡 1950>「ヘルマン・ヘッセ. 超訳 ヘッセの言葉 (Kindle の位置No.340-343)」 

★仲野さん、郷野さん、田中歩先生、まことの希望をありがとうございました。

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2021年1月 6日 (水)

工学院Z世代の未来の開き方(04)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん④

「工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③」のつづき

★仲野想太郎さんは、高2のグローバル・プロジェクトでは、ベトナムのチームのリーダー。高2のMogではカンボジアに参加し、そこでの現地の人びととの起業構築と実際の運営で成功。現地の人々に喜ばれました。そのときもリーダーでしたから、ベトナムでもうまくいくと自信をもって立ち臨んだといいます。

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(左上仲野さんの写真は、生徒会大賞受賞時に右上郷野さんの撮影)

★ところがです。10日間のプログラムでしたが、用意周到に現地の人と対話し、計画も立て、前回の経験を踏まえて運営したわけですが、その起業は失敗に終わりました。すでに制約された期限の半分の5日間が経ってしまったのです。オーストラリア研修で、英語のプログラムを場所を借りてやるのではなく、現地の授業に参加せて欲しいとコーディネーターや現地の先生方と交渉して、それを実現することに成功した自信、とれるはずがないと変態扱いされても、変態大いに結構と生徒会大賞をねらって獲得した自信、カンボジアのMogに参加し、見事に起業を成功に収めた自信、そのすべてを、この5日間の情熱に注ぎ込んだのに、すべてが崩れる落ちる「瞬間」だったそうです。

★がしかし、仲野さんは、情熱だけではダメなのだと思い起こし、何が間違っていたのか対話していったら、起業のパートナーが違っていたということに気づいたそうです。カンボジアは現地の人々がパートナーで、いっしょに考えたし、マーケットに参加するのも彼らでした。

★ところが、今回は宿泊先はホテルの人で、ホテルの人といくら話し合っても、今回のクライアントパートナーは観光客だったということに気づきました。観光客のニーズを全然掘り起こしていなかった。そこで観光客にアンケートの協力を仰いだわけです。そこで、クライアントパートナーの欲するものがわかり、再起業することができました。見事に成功です。

★情熱は必要だが、実績を残すための戦略も必要なのだということを改めて学んだそうです。そして、何より、国によって地域によってマーケティングの方法が違うのだと。だとすれば、このマーケティングのパターン分析を調査し理論化したいと。それが総合型選抜のモチベーションになったわけです。

★この話を聞いた大学の面接官、つまり教授陣はさあいっしょに研究しようということになったのは納得がいきます。情熱と思考対話力とマーケティングイノベーションの視点を持っているのですから。それに、経営学では、アンケートは実はリサーチのためだけのものではありません。そのアンケートに参加したペルソナが、共感するような問いかけをすることがコツなのです。仲野さんの短期間でV字回復したのは、アンケートに協力を仰ぐ段階で、応援を取り付ける共感をシェアリングしていたということでしょう。冷たいアンケート項目か熱いアンケート項目か、確かに情熱だけではだめですが、情熱がなければアンケートの段階で成果をあげられなかったでしょう。

★さて、一方の郷野翔太郎さんは、グローバルプロジェクトでは、カンボジアに行きました。そこで見つけたのは、実は仲野さんと違って、起業構想から外れた路地ででした。もともと生徒会誌「芙蓉峰」の編集をしていたわけですが、そのとき学内の各イベントの様子を写真撮影して編集していました。

★総合型選抜の時に、その写真がポートフォリオの一環として提出されたわけですが、面接官である教授陣は、ハッとしたと思います。なぜなら、たとえば、私が取材で写真を撮りに行ったとしても、記事掲載の時に写真があったほうが見てもらえるという功利主義的な考えのスナップを撮るだけですが、郷野さんのアングルは、写真の向こうに工学院の生徒の生き様や感情や情熱が伝わってくるのです。そんなショットが選択されて掲載されているのです。

★郷野さんの撮影した生徒会長仲野さんの写真も、軸のブレない、挫折を乗り越える明るいエネルギーの塊感を表現しています。郷野さん自身が、仲野さんのメンタルモデルをそう明快に表現していますから、そのコンセプトが見事に宿っています。

★ですから、郷野さんは、カンボジアに行ったとき、自分たちが行っている起業はなかなかいいものだけれど、カンボジアの姿そのものを本当に感じ取っているかとふと思い、路地にむかったそうです。そこで見た光景を写真に収めました。そしてそれがポートフォリオに掲載されています。

★なるほど、これで総合型選抜にパスしたのだと私は思いました。ところがです。郷野さんの話はそこからが大事だったのです。(つづく)

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工学院Z世代の未来の開き方(03)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん③

「工学院Z世代の未来の開き方(02)仲野想太郎さんと郷野翔太郎さん②」のつづき。

★仲野さんと郷野さんの6年間のポートフォリオに耳を傾けて共通していると感じたのは、①高感度なセンサーを有している。②それゆえ、オリジナルの視点をその都度生み出せる柔軟さがある。③グローバルでありながらローカルなあるいは出会った人々の課題を引き受けるマインドを有している。④解決策をどこかから持ってくるのではなく、その場で協働しながら生み出す対話思考力がある。➄そして、それを具体的な経験で終わらせることなく、独自の理論構築へというクリエイティビティがある。⑥GRIT MindとGrowth Mindsetを実装しているという点です。

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★二人は、工学院という同じ学びの場にいたし、生徒会やMog(Mission on the Ground)プログラムにも同じく参加もしていました。そして、その経験を通して、それぞれの道を見つけ、仲野さんは成城大学経済学部経営学科に進むことが決まり、郷野さんは日本大学芸術学部写真学科に進むことが決まりました。共通経験をしながらも、それぞれの才能を豊かに広げ深めたわけです。デューイやシーモア・パパートではないですが、経験から学ぶということは、経験と各人の才能がケミストリーを起こすということであって、この経験をしたからこの情報や考え方を学ぶのだという教育方法論が明らかに間違っているということを、二人は証明しています。

★ただ、もしも先述した6つの能力(①高感度センサー ②オリジナル視点を柔軟に生成 ③グローカルな最近接課題発見マインド ④解決策を協働して創出する対話思考力 ➄マイセオリー構築のクリエイティビティ ⑥GRIT Mind×Growth Mindset)がないと、教師のインストラクションデザインの枠組みの中で情報を得て終わってしまうのでしょう。

★仲野さんは、生徒会長として、全国から集まる生徒会のフォーラムに参加し、視野を広め、生徒会が学内の多様な面で新しい発想や動きを創ることができるのだと気づいたわけです。従来行われてきたことを慣習的に継続するのでは、学校を支える生徒のマインドは、1人ひとりばらばらになり、学校に集うワンチームとしての意味が消失するのではないかと気づいたのだと思います。

★世界はもともとあったものがあり続けるのではなく、その都度そこに集った人々が自分たちに適合するように新たな世界を創りづけることによって持続可能に存在するのであるということですね。最近若手の新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルが主張していることです。もともとは、ミヒャエル・エンデが「モモ」や「ネバ―エンディングストーリー(はてしない物語)」で語っていたことにガブリエルも共鳴しているわけです。最近NHKがマルクス・ガブリエルや「モモ」を取り上げる番組を放映していますが、二人は、そして田中歩先生も、その時代の先進性と共鳴していると言えます。もちろん、無意識のうちでしょうが。

★ともあれ、仲野さんはその活動で、生徒会大賞を受賞するというのはすでに述べましたね。もちろん、郷野さんとの協働があってこそです。

★それから、工学院の数多くのグローバルプログラムに参加した経験が仲野さんの世界をどんどん新しく豊かにしていったようです。もともと、中3の夏に、学年全体がオーストラリア研修を行っていました。この研修は、筑波大駒場の副校長城戸先生が工学院の校長に就任していた時代、おそらく1999年ころからだったと思いますが、そのとき創られたプログラムです。

★「創造・挑戦・貢献」という校訓が筑駒と同じなのは、城戸先生の影響だと思います。城戸先生は、世界文化遺産やユネスコの事業にもかかわっていたグローバルな方だったし、執筆活動も旺盛でした。現代思想に造詣が深く、私が岡部先生(今は工学院の先生)とNTS教育研究所を創設した時に、そのコンセプトメイクのときの指南を受けました。理論と現場の現実を結ぶ視点が弱いと何度も何度も突っ返されました。その視点を発見する私の探究の道が始まったのはそのときからです。

★研究所のお披露目も兼ねたセミナーをブリティッシュヒルズで行ったときも同行していただいて、アドバイスやフィードバックをもらったのを今も鮮明に覚えています。つくづく工学院には縁があるなあと感慨深いですね。

★さてしかし、田中歩先生方は、なんと当時破格のオーストラリア研修に加えて、いくつもグローバルプログラムを開発実施したのです。私にはいくつあるのか把握しきれません。というのも、年中行事化しているものもあれば、そのときどきに生まれるものもあるからです。国際コンテストなどは、必ずしも毎年行われるとは限らないし、そもそも大人数で参加するようなものは、海外ではあまりないのです。

★それがグローバル教育というもので、同じ場所に集団旅行する修学旅行は、日本独自の行事で、海外ではそれはレアケースです。工学院の先生方のグローバル教育に対する柔軟な対応力がさく裂した6年間でした。生徒中心主義の工学院ですから、一握りの生徒が体験すればよいという教師主導のご都合主義は排除されます。

★最も代表的な例は、高2の後半で実施されるグローバル・プロジェクトです。工学院のグローバル教育の集大成ですね。幾つもの国に分散して、SDGsと関連する課題発見と解決をチームで乗り切ります。現地の人びとと協働するのも大きな特徴です。今年の高2はパンデミックでリアルには体験できませんでしたが、オンラインで乗り切りました。これもまた新しいテクノロジーの創出です。

★仲野さんと郷野さんはそのグローバル・プロジェクト(GP)も一期生です。そして、そこでそれぞれに感じ、新しい着想が生まれ、解決のためにそこで終わるのではなく、新たな大きな課題を引き受けます。それまでの二人の経験が、GPとの経験とケミストリーを生み出したのでしょう。総合型選抜で自らを語る時、大きなレバレッジになったのです。(つづく)

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2020年12月19日 (土)

沖縄インターナショナルスクール(OIS)改めてIB一貫校の意味 日本にはない数学と言語教育

★すでに、「沖縄インターナショナルスクール(OIS) 沖縄初IB一貫校誕生 沖縄から世界を変える ついに開成や灘と肩を並べる学校の誕生!(2020年12月16日)」で、OISがIB一貫校になってことはご紹介しましたが、知念理事長から認定書のコピーをメールで頂き、改めて日本におけるこのことの重大さについて感じ入りました。

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★というのも、メールには、琉球新報の記事も同封されていました。「OIS、算数で世界2位」がそれです。OISは3PLearningという団体が世界各国の広がりで行っている幼稚園から小学校の数学と言語のリテラシーのオンライン学習サイトを活用しているようです。もちろん、オールイングリッシュです。その団体が行っているワールドワイドな算数のリテラシー=マスレチックス ヌーメラシーのコンクールで、同校の小3と小4の生徒が2位を獲得したということです。

★同記事は、今回のIB一貫校になった件についても掲載していました。

★このヌーメラシーの話とIB一貫校になった話が並列されているわけですが、本当は重要なことを語っているのです。日本の数学と欧米の数学は何が違うかというと、計算であっても欧米はセンテンスで話します。日本語ももちろんセンテンスで話すのですが、どちらかというと記号を並べるわけです。これは中国や韓国でも同じですね。

★つまり、アジアにおいては数学も漢字なのです。目で見たとおりに、言語で語るわけです。ところが、欧米の数学は式という記号とそれを言語に変換する時は、かなり違いがでてくるのです。

★最近、よく数学は、数式と図形への置換、数式と言語への置換が必要だと言われています。また数学は言語構造だという方もいます。しかし、それは日本の数学だけ見ていると何やら深遠なもののように聞こえます。

★しかし、欧米の数学に接すると、極めて実際的にそれが行われているのです。この違いが欧米とアジアで数学コンクールなどをやるとアジアの子が有利ではないかともいわれるゆえんですね。

★そういう意味では、OISはその両方を子供たちが経験できるのです。この経験を踏まえて最終的にはDPに進んでいくのです。OISがアジア圏の学びの拠点、教育の中心になるというのは、その両方を経験する。つまり知のダイバーシティを経験してDPに進める学び舎だからということです。

★西洋と東洋の調和をはかるには、両方の文化を互いに知らなければなりませんが、知の領域でのダイバーシティがあるというのは、目から鱗でした。

★知というのは万国共通の普遍的なものだと思い込んでいましたが、計算の仕方ひとつとっても、数式と言語の関係が違っているのです。コンクールでどちらが有理かとかそういうことではありません。文化の違いを認め合うには、数学と言語のリテラシーの違いを互いにリスペクトし、活用していくということが必要です。

★なぜ英語を学ぶ必要があるのか、数学と言語というコミュニケーション能力の文化的背景の違いを知らなければ、異文化理解など到底深められないということです。教育を通して世界平和及び環境問題の解決をというならば、そこまで深めていかなければならないのだと気づきました。

★大学受験のための英語や国語を学んでいても、表面的な異文化理解しかできないでしょう。

★OISがバイリンガルのIB一貫校であるということの重要な意義がここにあります。

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