教育イノベーション

2019年12月21日 (土)

<新しい学びの経験>を創る教育改革が現場で起こらざるを得ない3つの防壁

★もはやこのままの人材教育では、日本の国力は衰退するばかりであることは周知の事実となってきました。にもかかわらず、<新しい学びの経験>を創り出し内生的成長を果たす人材教育投資を邪魔する動きもまだまだあります。もっとも、日本では、アダム・スミス以来の経済の新しいパラダイムを生みだしたポール・ローマーらの内生的成長論は今ようやく光を浴びはじめたばかりですから、それもやむを得ないでしょう。

51adwjlmjsl_sx344_bo1204203200_

★上の写真、デヴィッド・ウォルシュによる内生的成長論に向かう近代経済学史の本は、2007年に出版されたもの。それが今ようやく邦訳されるのですから、日本の政治経済社会に対する見識がいかに遅れているかがわかります。

★本書を読むと、1930年代に経済学の拠点がイギリスから米国に移ったときに、「数学は言語である」というテーゼが一世を風靡して、今に至るということが書かれていますが、今世界でも注目されているSTEAMと教育界でいわれているのは、当然この流れがはいっていますが、STEAMを教育と政治経済社会の関係で捉える教育関係者が日本ではあまりいないために、なかなか<新しい学びの経験>を創出する教育改革が進まないのは当然といえば、当然なのでしょう。

★日本では未だに英語を教育することが教育改革なわけです。でも世界は、そこはすでに済んでいます。多言語から出発できてしまっているのです。日本はまだ母語が大事だとか愚かなことを言っている人もいます。もちろん、母語が大事なのは当たり前です。

★世界でも母語教育は当たり前です。フィンランドなどでは、多様な民族が学んでいますが、公教育でたとえば、日本人が一人でもいれば、その子のために日本語の講座が用意されます。母語の環境も作りながら、フィンランド語や英語を学んでいくわけです。

★だいたい言語の問題は、世界では、戦争と平和の大きな問題であり、命がけの問題です。今の日本では、受験では日本語で考えるのだから、母語である日本語が大事だなどという、グローバルイシューから見れば、何を言っているのかわからない低い見識の理屈がまかり通ています。とても、世界市民と協働してやっていける見識はないのではないかと驚いてしまいます。

★母語も英語もやるんですよ、しかし、そのうえで次に進まないといけない時代なんです。日本が孤立して生きていけるのであれば、それでよいかもしれませんが、すでに自給率も低く、世界との交易が途絶えれば、日本人は生きて行けません。

★ともあれ、世界は知識を大事にしていますが、その知識は新しい知識を創ることを意味し、既存の知識をどれだけ記憶するかということではないのです。そして、アイデアを重視します。アイデアは思い付きから始まり、実現するまでに成長していきますが、日本では、思い付きはダメだの一言で、イノベーションへの芽を摘んでしまいます。対話も議論もないからそうなるのですね。

★経済成長は、新しい知識を創れる人材教育、アイデアを拡散できる人材教育、イノベーションを起こせる人材教育が必須です。そのために<新しい学びの経験>を無限に創っていくのです。ただ、自由な雰囲気だけではそうはなりません。自由な雰囲気とプログラムが必要です。

★そこで、日本は、学校教育法を改正し、学力の3要素まで条文に刻み込んだのです。法律で学力とは何かを決めなければ機能しない国であることに驚きはしますが、心ある方々が仕掛けたのでしょう。

★学力の3要素とは、いまでは当たり前になっている「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「主体的に学びに向かう態度」ですが、ここに、教育改革を阻止する保守勢力に対し、防壁を3重にして、なんとか教育改革を前に進めていこうとしたのでしょう。

★この3要素中で、まずやらないという抵抗をうけるのが、「主体的に学びに向かう態度」の評価です。評価をしないのですから、口では「主体性」は大事だと言いながら、それを育てる学びのプログラムは創らないのです。これによって、新しい知識・アイデア・イノベーションを創る回路は一つ消えてしまします。

★しかし、ここをやろうとする学校も出てきますから、なんとか新しい知識・アイデア・イノベーションを創る道は細々と続くのです。これが第一の防壁です。

★いずれにしても第一の防壁は90%は保守勢力に破壊されてしまうでしょう。それでも「思考力・判断力・表現力など」はなんとか保守勢力もやるでしょう。しかし、思考力と言っても、論理的思考力のお話であって、批判的思考と創造的思考は評価できないとしてやらないところがほとんどでしょう。かくしてこの第二の防壁も60%は崩されます。

★しかし、密かに判断力と表現力が盛り込まれています。これは、たぶんわからないまま、論理的思考力と相まってやることになります。保守勢力がわからないままやることによって、防壁の自然回復が生まれる仕掛けです。というのも、判断力と表現力は実はアートの領域もあります。ICTと数学は論理的思考の枠内でやりますから、これにアートが加われば、無意識のうちにSTEAMの基盤はできていくのです。100%自然回復することはできませんが、50%までは回復し、なんとか持続可能にすることはできるでしょう。

★そして、「知識・技能」というのが第三の防壁です。これもまた、保守勢力は、「知識」をICTなどの「技能」によって依然として定着だとか沢山記憶するという作業に集中させるでしょう。しかしながら、この「技能」こそ無意識のうちに潜ませるアートの真骨頂なのです。

★アーティストは、新しい美術作品は新しい技術を自ら発見・開発して挑みます。美学という哲学的素養とテクネ―としての技術はアートでは表裏一体なのです。あのパルテノン神殿は芸術的価値はもちろん高いですが、建築学的技術、工学的技術、石材という知識などテクネーの部分がなければ存在しません。

★このアーティストの知を美術館に陳列して閉じ込めているのが、従来の日本の教育でした。欧米の工学系の大学は、学部の中に芸術学部が併存しているのに、日本ではそんな工学系の大学はないですよね。

★しかし、学校教育法は、第三の防壁として「知識・技能」という誰しも疑わず、すんなり授業で実施する学力を盛り込んだのです。これにICTが結びつけば、なんとかSTEAMの教育の基礎はできるのです。それでも、知識を暗記させるだけで、ICTを使わないところも出てくるでしょうが、生徒の方がICTをどんどん使っていくでしょう。

★こうして、満身創痍になりながらも3つの防壁は、保守勢力による教育改革全面阻止を免れることができるでしょう。

★そして、保守勢力は世代との相関が強いですから、あと5年もすれば、その勢力は放っておいても総崩れになるでしょう。

★そのときまで、日本の国力が持ってくれるかはわかりませんが、起死回生の技術革新は、すでに日本では水面下で行われているので、なんとかなるのではないかと希望はあります。もっとも、これとて、資金力にものをいわせ、米国や中国に買収されてしまう可能性の方が大ですが。そうしたら、また新しいイノベーションを起こせばよいのです。そのための<新しい学びの経験>を創る環境を生成し続けましょう。

|

2019年11月17日 (日)

成蹊 学びの本質「体験」を大切にしている。

★読売新聞オンライン2019年11月14日に、成蹊中学・高等学校の記事「多様な体験学習で自らを知り、夢をつかめ…成蹊」が掲載されています。同校の学びの本質「体験」を大切にしているコンセプトとその多様な具体的なケースについて、詳しく記述されています。ぜひご覧ください。

Photo_20191117092401

(写真は、成蹊のサイトから)

★そのコンセプトについて跡部清校長先生の言葉が掲載されています。とても大切なので、ここでも引用しておきます。

「本校の建学の精神は『個性の尊重・品性の陶冶・勤労の実践』です。この『勤労の実践』を言い換えれば、体験を通して学んだ価値観を基に他者貢献するということです。生徒たちには、機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」

★おそらく、成蹊の先生方は、最近の革新的な教育において、<新しい学びの経験>を創るコトが大切だと叫んでいることは、何をいまさらと思っていると思います。もちろん、同校の先生方は品格が卓越しているので、そのようなことを主張することはまずありません。

★しかしながら、静かに、跡部校長が語る言葉の中に、成蹊は<新しい学びの経験>を創り続けてきたのだなあということが了解できます。たとえば、上記の引用部の中のにある「機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」という言葉がそれです。

★体験を通して日常では感じたことや見たことがないようなことに直面するわけです。そのとき、いったいこれは自分にとって他者にとってどういうものなのかと<跳ね返って>くるわけです。これによって、新しい自分の変容が起こるというわけですね。この<跳ね返り>とは、<新しい学びの経験>の学習理論でもとても重視されている<リフレクション(振り返り)>ということと同意でしょう。

★学校の役目は、こうした体験の場、つまり<新しい学びの経験>を設定することなのだというわけですから、J.デューイの系譜にあるということを示唆していますし、デューイの現代化が実は昨今の<新しい学びの経験>の学習理論の核心です。成蹊は、創立以来、普遍的な進歩主義的教育を実践してきたわけです。

★日々、同校の生徒は、気象や天文を観察し、データ化し、分析する科学の目を、そのような体験から学んでいます。また、武蔵野の自然(広大なキャンパスそのものがそうです)は、科学的に観察する対象というだけではなく、美術の時間のモチーフでもあり、家庭科の時間の食材の庭園でもあるのです。日ごろの授業も、同記事が書いている多様な体験学習と同様、体験を重視しています。

★このように、体験を教師と生徒とが共有しているからこそ、同校の生徒と対話していると、生徒もいっしょに学びを創り出しているということが了解できます。同記事にこうあるのは、それを示唆しているのだと思います。

「同校の体験学習には、生徒による自主企画も数多く含まれている。今年度は、ミャンマーのイスラム系住民であるロヒンギャをテーマにした映画上映会を校内で開催した。生徒は実行委員会を作り、大学にも協力を依頼して、実現へ結びつけたという。高校生が中心だが、中学生も参加しており、先輩の自主活動への熱意を十分受け止めたことだろう。自ら発信者となり、学年を超えて呼びかけ、ともに学び合うという気風は、同校の伝統となっている。」

|

2019年11月 8日 (金)

G-STEAM教育(01)日本の教育はゆでガエル 文科省も文科省を批判する教育ジャーナリストも ≪Z世代≫の活躍を無視しすぎ

★文科省や経産省が言ったからではなく、これからはG-STEAM教育だし、スタートしているのです。この行く手を阻むのは、共感を得るすべを知らなすぎる政府―官僚の適性続きのなさと非科学的な教育ジャーナリストの茶番です。真実は常に確からしさです。それなのに、不動の真実があるかのごとくそれに従ってただ批判するのです。分析的で論理的な指摘をあげつらうのです。改革をサポートする企業と税金の関係を疑い、金もうけをしようとしているのではないかと、あたかも鋭く批判しているようですが、その批判執筆によって、印税がはいるわけです。格好の稼ぎポイントなわけです。結局は、強欲資本主義経済システムの恩恵を分け合っている茶番です。付き合いきれません。それが科学的だとか思っているのでしょうか。とんだ合理主義です。それから、それに乗っかる生ぬるい古い教育関係者。もう心ある教師と≪Z世代≫がタッグを組んで先に行くしかありません。

20191107114925

(2019年11月6日、ニューヨーク国際連合本部1階メインロビーSputnik Loungeにて、Peace in the Streets Global Film Festival2019授賞式が開催され、工学院大学附属高等学校1年生6人が出席。同校のG-STEAM教育の環境のサポートも大いに役立っています。)

★なんてことは、私が言うまでもなく、すでに始まっています。平和は、もちろん国際関係の力学がありますから、国家による政治的働きかけは大事でしょう。大企業による経済システムの安定を広げるロビー活動もそりゃあ大切です。しかし、≪Z世代≫は、G-STEAM教育によって、国家や企業と対等に渡り合える言語・創造的思考・ネットワーク・インパクトアート・テクノロジー、コラボレーション・コントリビューションなどの能力を持てる<個人>になっていきます。すでにどんどんなっていますね。

★このような<個人>の資質・能力や知的技術、倫理観などを醸成する教育がG-STEAM教育です。Gはグローバル教育を指します。今回の大学入試改革の英語教育のとん挫の部分はこのGの部分をできるだけ多くの生徒と共有する機会を奪いました。政府―官僚の適正手続きがないのも大問題ですが、その批判を今始めたわけでもなく、最初からやりたくないという後ろむきな発言を後押ししていたのは、一部の教育ジャーナリストです。

51nefr9dm8l_sx344_bo1204203200_

★そして、STEAMのAであるArtsの世界は命がけなのです。アート資本主義の中で、ジレンマをかかえながらどうやって次のシステムを創っていけるのか、世界のアーティスは常に挑戦しています。

★それなのに、文化庁、結局文科省は、政権批判をするアートを排除するありさまが続いています。そしてそれを後押しする通俗的でゆでガエル信奉者のコメンテーターがまたまた影響を与えると思ったら、教育関係者までも、生ぬるいSTEAMのAを語っている始末です。

★そんなとき、女子美がアートを英語で語る教育を始めました。G-STEAMへのスタートです。

★このままでは、日本はゆでガエルだ、まずは自分たちが切り拓くしかないと決意したのでしょう。

★とにかく、あまりも生ぬるいので、国際社会は日本を吐き出すでしょう。

★多様性は大事だと言いながら、同じ考えの仲良しグループの中でのいろいろな発想で、パラダイムそのものが違う向こうの人は排除する日本。すべては学歴社会の閉じられた中での椅子取りゲームでやってこれた戦後日本社会のなせる業です。これを崩すことこそが根本的な問題なのに、センター入試続行を期待するとか何事ですか。大学入学共通テストもさっさと中止すべきでしょう。

★この学歴社会を批判しつつ、どっぷり加担してさもジャーナリストだと言いまくっているとはどうなんでしょうね。

★とはいえ、G-STEAMを止めることはできないのです。それは時代の要請ということもあるでしょう。言っておきますが安倍政権が自分で考えたわけでも、自己正当化のためにこの路線を引いたわけでもありません。そんなことをいうような人もいますが、G-STEAMのために言いますが断固違います。安倍政権は便乗しただけです。

★G-STEAMは≪Z世代≫の内側から出てきた欲求と時代の要請がシンクロしたのです。マーケットのニーズだとかマーケティング的になんていう人もいますが、それもまた便乗です。まったく愚かしい。

★批判するのはまあいい。でも、G-STEAMの流れを遅らせることだけはやって欲しくない。とはいえ、私が言うまでもなく、G-STEAMの勢いは彼らを飲み込んでしまうでしょうけれど。結局、G-STEAMは進みます。広がります。すべて世はこともなしというわけですね!

|

聖母女学院グループ 本質的教育研究へ

★学校法人聖母女学院は、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高等学校まで揃っている総合学園です。小中校は、大阪香里園と京都藤森の両方に在ります。

Photo_20191108063601

★香里ヌヴェール学院は、一足先に改革を行い順調に生徒が集まり、教育の質を充実する道のりを歩んでいます。京都聖母は、もともと生徒募集は順調ですから、内側からの必然性を待って、今年から改革を開始しました。小中校に関しては、香里ヌヴェール学院も京都聖母女学院も新校長が就任し、新たな改革のフェーズに入っています。

Dsc04495

★新しいフェーズというのは、香里ヌヴェール学院は、21世紀型教育と出遭い、2040年に今の子どもがどうなっていて欲しいか、このままいくと悲惨な状況が待っているために、そこでサバイブできる能力、できるならそのような悪循環の社会を好循環の社会に変えられる才能者に育ってもらいたい、そのための教育はいかにして可能かから出発しました。

★第2フェーズは、改革の根拠をそのような時代の要請に沿うだけではなく、今目の前の子どもを観察して、この子供たちにとって、本当に何が必要なのかという、教育の本質的な意志から再考することに、赤野理事長はしたようです。

★それゆえ、聖母女学院教育研究センターを構想し、まずは園長、校長を中心に毎月一度集まり、聖母女学院の教育とは何か、情報共有から始めました。その共有はワークショップ型ですから、気づきも多いし、課題発見もそのつど起こります。

Dsc04471

★しかし、今年3月から始めて、7回目を経たあたりから、おそらく他の学校法人ではなかなか見つからない重要な教育の本質部分が発見されました。それは、聖母グループは、保育園・幼稚園を併設しているために、就学前に学んで来る子供の成長からスタートできるという点でした。

★就学前に成長した子ども、つまり5.6歳児の発達段階は、聖母の保育園と幼稚園の学びの環境があるからこそ、そうなるわけであって、どこの環境にあっても同じだということではないということに気づいたのです。

★考えてみれば当たり前かもしれませんが、このような宝物=賜物=タラント=才能を小学校、中学校、高等学校と有機的につなげて、さらに生徒1人ひとりの才能がどんどん豊かになっていけばよいわけです。

Dsc04458

★今回のワークショップは、そういう意味では、グループ全体の有機的循環のメカニズムをいかにして把握するか、足りない分はいかに補填するかという創発ミーティングになりました。もちろん、小学校も中学校も高等学校も外部からも入学してきますから、そのケアシステムがどうなっているかもリフレクションしつつ展開していきました。

★この展開のテコは、保育園・幼稚園、小学校、中高のそれぞれの期間において、児童や生徒が浸る「経験」の違いは何かから始めました。「経験」から人は学びますが、子供の発達段階に対応して「経験」のメカニズムも変化している可能性があったからです。そして、21世紀型教育の学びの本質的な部分も、ピアジェ―パパート―レズニックという系譜やレヴィ・ストロース×ピアジェ―ハワード・ガードナーという系譜などの統合にありますから、そこでも「経験」はカギなのです。

★ともあれ、それはやはり大きく違うということが共有できました。それでは、その大切な発達段階に応じた経験をどうやって授業や教室の中に埋め込むことができるのか?もし「経験」を持ち込まなければ、授業は、経験とは切り離された知識のインプットだけの世界になってしまいます。ところが、改革を進めている聖母女学院グループの授業はそこから徐々に抜け出ているわけです。

★今ここで、行っている園長・校長の自らの教育の中にある本質の種を見出し共有することが改革の核心であり、外部からのパッケージを持ち込むことは改革のカンフル剤に過ぎないと赤野理事長が感じてきたことは、いよいよ根を張りだしたわけです。

|

2019年8月25日 (日)

令和元年度福島県私学教育研修会(了)21世紀型授業PBL

★福島県私学教育研修会は2日目は、部会ごと研修会が開催された。部会は、5つ。「21世紀型教育部会」「高大接続部会」「ICT活用部会」「生徒理解教育部会」「法人・事務室運営部会」となっている。

★「高大接続部会」では、リクルートのキャリアガイダンス編集部編集長の山下真司氏が講演されていた。テーマは「主体的な学びを育てる授業づくり、学校づくり」ということだった。私は、「21世紀型教育部会」で、「21世紀型授業PBL」の作り方体験を担当した。山下氏の講演を聞いてからワークショップを行えば、さらにワークショップを洗練できるのにと思ったが、同時間並行して行っていたので、それはできなかった。残念。

Dsc00324

★山下氏とは、先月も東北全体の私学教育研修会でお会いしたが、やはりパラレルに部会の研修が行われたので、講演を聴くことはできなかった。しかし、山下氏の編集コンセプトや問題意識を懇親会や朝食時に少しお聞きすることができ、勉強になった。今回も昼休みや帰途に就いたときいわき駅などで立ち話をすることができた。学校の組織開発とそのソフトパワーである授業や教師力を、全国を取材しにまわり、つなぐことによって化学反応を生みだしていくジェネレーターの役割を果たされていることに頭がさがった。

Dsc00338

★ともあれ、私の方は、21世紀型授業としてのPBLを、先生方とワークショップ型講演を通して共有していった。9時から15時までだったが、あっという間でしたと帰りがけに何人かの先生に声をかけていただいた。少しほっとした。東北の部会にかかわって、5年目になる。最初はやはりわかりにくいという感想も多かったが、なぜか毎年お声がかかるので、できるだけわかりやすくそれでいて伝統と最新の考え方も交えて共有できるように創意工夫をしてきたつもり。自身のワークショップやPBLに対する考え方もアップデートしてきたわけだが、それはこのような機会を継続的に頂いているからである。とても感謝している。

★ホンマノオト21も読んでくださる先生方もいて、共通言語ができてきたということもあり、毎年≪Hard Fun≫感覚でできる。あるいは、学びと遊びの統合した感覚で展開できる。

★もちろん、毎年新たにお会いする先生方だから、やはり、ワークショップ中に、共通言語を創り出しながらすすめることが大切である。このことは、共通言語を話し合いながら、互いに共通する部分と相違する部分を確認しながら相互信頼をつくっていくことにもつながる。そのために、アクティビティとして、スピードデートを、今回はかなり多用した。

★さて、今回は3側面でPBLをいっしょにつくっていった。

①問い:問いづくり

②アクティビティ:問いに対応するアクティビティの選択(ハーバードのプロジェクトのものを活用)

③思考コード:問いやアクティビティが生徒のどの思考の構えを想定するのか思考コードでの予想

★問い作りは、今まであまり、紹介してこなかったが、古典的な手法としてPIL(Peer Insutruction Lecture)というハーバード大学のマズール教授の手法にヒントを得た知識と思考の折り返しのアクティビティを行った。

Dsc00357

★知識を知識として転写するのではなく、知識が足りなくても、周辺の知識を動員しながら、フェルミ推定をしながら知識を導くアクティビティ。これをやると、推定の中で、いろいろな問いが生まれる。その問いをさらに発展的に問い返すと、一見A1の思考の構えの問題も、C3の思考の構えにジャンプするという体験をすることができる。

Photo_20190825124001

思考コードは、21世紀型教育機構の標準コード<昨年出版した上記写真の本で公開>をつかった。機構の各校は、このコードと共通するところもあるし、学校の独自の文化を加味してアレンジしている。21世紀型教育機構のアクレディテーションのメンバーである神崎先生も、カンザキメソッドの中で、AO入試や小論文対策、志望理由書を書く授業の中で、活用できるようにアレンジしていただいている。首都圏模試センターも「思考コード」を創っているが、これは授業用の思考コードではなく、テスト用のコードである。思考コードは各学校や団体の生徒の活動に応じて多様な種類があるし、思考の目的に応じて次元が違う。中1から高1までは、21世紀型教育機構バージョンの思考コードが活躍するし、AO入試をメインとする生徒は、この思考コードが機能する。しかし、高2・高3で一般入試をメインにする場合は、戦略的なPBLが大切になり、そこでは、首都圏模試のような学力重視の「思考コード」が有効。よくPBLでは大学入試に役立たないと言われるが、そのような懸念はAO入試型のコンピテンシをベースにしたエンリッチメントPBLと一般入試型の認知能力をベースにした促進型PBLの違いを理解していないからである)

Dsc00358_20190825124901

★今回は、「ぐるぐる(眩暈)」というアクティビティや根源抽出アクティビティもできた。問いの問いを、議論しながら追究していくことができた。問いの問いの問いの問いの・・・と追究していくと、シンプルに「比較」と「置換」という思考スキルに収束していく。

★エッ!そんな簡単なことと思われるかもしれないが、すべての現象や事象は、極めてシンプルな原理から生まれ出でる。「比較」とか「置換」があるから、融合とか統合とか化学反応ということが起こる。湯川秀樹ではないが、ノーベル賞受賞者は、このシンプルな原理の追究者である。

Dsc00366

★最近の教育キーワード「探究」がおもしろいと思われるのは、複雑な現象や事象がどんどんシンプルに一貫しているところに行き着くからだ。複雑なイリュージョンを振りまいている授業は、生徒が、誘蛾灯に誘われる生物のように踊らされているだけである。

★人口が増えている20世紀後半は、一部の人間だけでがこのことを独占し、多くの人間は読み書き算盤の技術を養われ、楽しいイベントに惑わされ、コントロールされてきたが、今後の人口減少時代は、すべての人間が、シンプルな原理にたどりつき、それを実用化できる創造者でなければどうしようもないが、この学習経験を通して1人ひとりのバリューを高める経済理論が、昨年ノベール経済学賞受賞者の1人ポール・ローマーの「内生的理論」である。

Dsc00368

★この内生的な人材イノベーションを生み出す場が、PBLであるが、そんな思いを共有しながら、大学入試問題を素材に、実用的にPBLを組み立てることができるようにと、ワークショップ型講演をデザインしたつもりである。知識重視のはずの大学入試の問題の問いを解放すると、世界を救う問題解決にジャンプする問いかけに変容するのである。

★しかし、予想は所詮予想に過ぎない。先生方との対話や議論は、それ以上の発見をもたらしてくれる。今回も、PBLとは何か?アクティビティとは何か?ということについて、霧が晴れるようなイメージ像が脳裏に結びついた。先生方、ありがとうございます。この2点については、今後またご紹介したいと思います。

|

2019年8月24日 (土)

令和元年度福島県私学教育研修会(3)長塚篤夫先生の根源的視点 大学入試改革の本当の理由

★今回の福島県私学研修会の基調講演の登壇者は、日本私立中学高等学校連合会常任理事・東京私立中学高等学校協会副会長の長塚篤夫先生(順天校長)だった。「変わりゆく社会・入試・教育~資質・能力を育む諸改革の動向」というテーマで、広い視野深い洞察による講演だった。

Dsc00216

★1983年に原文が出版され、1988年に邦訳本が出版されたトーマス・ローレンス教授の「日本の高校」という衝撃的な本から始まった。教授はスタンフォード大学の教授で、文化人類学者。日本に滞在し、フィールドワークを通して論文を書いているが、それらの成果の一冊が本書である。

★1980年代は、すでにホストコンピュータの時代であり、今でいうICTのイノベーションが世界的に起こり、日本ではバブルへの道を歩んでいた。モダニズムの影を払拭するかのようなイルミネーションさながらのポストモダンの誘蛾灯が輝いていた。

★トーマス・ローレンスは、こう語っていると長塚先生は紹介された。「中学から高校にかけて、次第に学習の楽しみや方法が軽視され、教科の内容そのものに関心が限定されるようになっていく。そして、高校の卒業が近づくにつれて、創造的な思考や表現の機会がますます減少し、生徒1人ひとりの異常性が目立つようになる」と。

Dsc00245

★これは、ローレンスによると、技術革新にともなう大量消費・大量生産・大量移動という国際競争が教育にも影響を及ぼし、人間の心や魂を豊かにする伝統が失われて行っているのではないかといのである。

★ローレンスは、文化人類学者としての視角で、中高の教育のシステムや習慣に、その国の時代精神や文化の特色が凝縮されていると切り取る。たしかに、中等教育以降の大学や社会にある組織の特色、人材の資質は、中等教育にそのひな形が出来ている可能性があるし、大学や社会が求める人間像や組織の在り方を、思春期に鋳型として投じていると考えることもできる。

★自らひな形をつくるのは、もしかしたら私立学校が挑戦し、鋳型を受け入れるのは公立学校といえるかもしれない。もちろん、私立学校だって鋳型を受け入れざるを得ないところもあろう。そことの葛藤はあるだろうし、その葛藤があるからこそ、社会が変わる契機がある。

★長塚先生は、都市社会学者リチャード・フロリダの「クリエイティブ・クラス論」も紹介した。フロリダは今トロント大学の教授であるが、1990年代に、すでに産業構造の大きな変化、つまり第4次産業としてクリエイティブクラスが誕生していることを論じていた。

★2007年に、邦訳「クリエイティブ・クラスの世紀」が出版されたが、まだSNSはメジャーになっていない時代である。にもかかわらず、現在経産省や文科省が提唱しているSociety5.0のビジョンを生みだしていた。

Dsc00300

★一方、1980年代に、ローレンスは、中等教育や高等教育の改革の根源的必要性をすでに見抜いていた。

★だから、長塚先生は、もう何をすべきかに進む時代であり、だから大学入試改革や中等教育の改革は必然なんだという歴史的ウネリあるいは時代の精神のシナリオを講演のベースに描いたわけである。

★そして、何をすべきかは、学力観の変容である。ローレンスが、人間の豊かさを奪う危険性の警鐘をならしていた。そこに対応するのが非認知的能力や資質能力である。中高生の「異常性」という言葉で表現していたのは、当時、初等中等教育は、校内暴力そして学校崩壊がおこる異常な事態が生まれていたことを示しているのであろう。

★中学入試が、1980年代以降今のように、教育の表舞台にでてきたのは、この事態を懸念した保護者が、私立学校に流れ込んだということがあろう。

★いずれにしても、資質・能力、つまりコンピテンシーの育成を、教科の学習以上に行っていく方向に、世界が時代が舵を切ったということを90分の講演の中で一貫性をもって語られた。

★アクティブラーニング、ルーブリック、eポートフォリオ、大学入試改革、カリキュラムの改革などは、そのコンピテンシー育成の新教育システムで、すべてが有機的につながっていなくてはならない。2020年度から始まる改革は、当然それがすぐには結びつかない。しばらく時間がかかるが、1980年代に明快になった危機とそれを乗り越える技術及び人材イノベーションの革新の誕生に立ち還ると、あのときの危機の状況に後戻りすることはできないのである。長塚先生の明快な未来ビジョンと何をすべきかという実現力へのアイデアは、福島県の先生方にしっかり共有された。

|

2019年8月23日 (金)

令和元年度福島県私学教育研修会(2)いわきで文化学園大学杉並と大妻中野に出会う。

★今回の福島県私学教育研修会は、いわき市で行われたわけでが、驚いたことに、全体会の学校視察方向の部で、文化学園大学杉並と大妻中野の報告が行われたことだ。良く知っている学校について、こんなに的確に詳しい報告を聴くとは、改めて、すてきな学校であると感服したのであるが、福島私立中学高等学校協会の先進的な教育を学ぶ意欲はもともと知っていただけに、そのリサーチ対象校に両校がはいっていたとは!わがことのように嬉しかった。

Dsc00203

★文化学園大学杉並は、日本大学東北高等学校の教頭渡邊弘幸先生から報告された。BC州の教育省と連携しているDD(ダブルディプロマ)コースの克明な説明がなされた。アクティブラーニング型授業の中でSTEAM教育が浸透している点、オールイングリッシュのすさまじさ、1期生13人の大学進学実績の破格さなど、参加者も目を丸くする内容だった。

★それと、DDコース以外のコースについても言及があり、このコースがDDコースのエッセンスをとり入れながら進化していくことにも触れ、むしろこのコースの変化の行方が、福島でも参考になるのではないかという鋭い見識を示された。

★どんなに優れた海外の教育も、そのまま日本の教育に結びつけるには、様々な要因と条件がそろわなくてはならなない。文化学園杉並のようにすぐにはいかない。どのように換骨奪胎できるのか。そういう意味で、革新的な風を大いに巻き起こしていた。

Dsc00208

★大妻中野については、いわき秀英中学・高等学校の教頭高木千明先生が報告された。大妻中野の短期間に教育改革を実行した機動力の話が明快に伝わった。また、ラテラルシンキングやクリティカルシンキングを養うアクティブラーニングのリーダーの数学科の高村先生の授業の様子についても説明されていた。

★高村先生に限らず、電子黒板、1人1台のタブレット型パソコンを使ったアクティブラーニングの様子についてきっちり報告書はまとめられていた。そして、全校生徒に対する帰国生の割合が、11%で、国内生との相乗効果が生まれていることも指摘されていた。

★大妻グループの中での存在感は、かなり戦略的なプランとその実行力にあることは何度も強調されていた。

★折しも、その夜大妻中野の教頭諸橋先生からメールが入った。私が福島にいることを知らずにだから、全くの偶然であるが、諸橋先生は改革機動力の次は徹底的に質の向上を果たすことで、カリキュラムマンジメントのプロジェクトが立ち上がっていて、順調に質の向上に向けて実践が進んでいるということだ。

★組織というのは、改革草創期は大きな決断の俊敏力と勢いがものをいうが、質の向上という持続可能性を高めるには、本質的な内容の密度を上げ続けなければならない。これは理想を実現するグリットである。要するに根性。

★舞台での派手な改革のあと、この舞台のバックヤードのモチベーションをいかに持続するのか。それが最も難しい。これがないと、改革草創期は勢いがあるが、3年後失速するという学校も少なくない。

★大妻中野はその落とし穴に陥らないように、大胆な改革と細心の注意を払った実行力の両輪を走らせているのである。

 

|

2019年8月18日 (日)

2019東京都私立学校展(5)PBLやアクティブラーニングで生徒の学びを変える学校が熱い!

★八王子で、ある意味行列ができる高校と言えば、聖パウロ学園。授業はPBLを中心とした≪対話≫がベースの授業が展開している。教師と生徒の信頼関係が、生徒の学びのモチベーションを高め、学び方を創り上げようという学習行動に進化していく学校だ。

Dsc00146

★先生方の笑顔が安心安全な学びの環境を生み出している。広報部長の望月先生(社会科教諭で、神話や民話、童話の背景にある歴史物語を生徒と発掘しながら授業を展開する)によると、都心の私立学校展がゆえに、ブースに立ち寄る受験生は少ないと思ったが、昨年の倍以上の方と対話ができたということだ。

Dsc00160_20190818110701

★同じように八王子に位置する工学院にも受験生と保護者が昨年以上に訪れた。PBL授業をベースにヨーロッパ、オセアニア、東南アジア、米国と多様な海外研修を繰り広げ、一方でSTEAMによるモノづくりの生徒の実績がメディアを騒がせている。News Picksに6ページもの記事が掲載される程のNew Power Shool。工学院大学の新宿キャンパスでも週1度ペースで高校インタークラスの英語による哲学授業や中国の授業が行われている。

Dsc00133

★アクティブラーニングの見学ができる学校と言えば、日本全国から注目を浴びているのは、かえつ有明。思考力入試の中でも、アクティブラーニング入試は、中学入試市場に大きなインパクトを与えた。帰国生からも大人気の世界が求める最も生徒がハートフルになれる学校。

Dsc00129_20190818111601

★そして、女子校でPBLといえば、和洋九段女子である。PBL入試の体験授業はいつも満席。PBL授業で、多角的な視点をもち、PBL型授業ベースのグローバル教育で世界的視野を身に着けて欲しいという進取の気性に富んだ保護者が今大注目している。

★2学期からは英語でPBL授業体験ができる英語入試対策授業も企画しているが、すでに申し込みは殺到している。PBL授業で、生徒が笑顔で真剣に思考に没頭し、高パフォーマンスでプレゼンする姿に、教師は感動しないではいられないという想いを持った教師がいつのまにか揃ったと中込校長先生は先生方に絶大なる信頼を寄せる。

★中込校長先生は、理科の教師で、多くの教科書も手掛けている。今理数探究の教科書をつくるプロジェクトのメンバーでもあるということだ。和洋九段女子のSTEAM教育のエッセンスづくりにもなるということだ。もちろん、授業は当然PBLでなければならないという。PBLの和洋九段女子。そういえば、経産省の「未来の教室」のキーコンセプトはPBLだ。

★時代が和洋九段女子に追いついてきたということだろう。

|

2019東京都私立学校展(4)今回の私立学校展のパラダイム転換 海城がお手本の役割果たす。

★今回は、すでに述べたように、国際フォーラムが2020年東京パラリンピック・オリンピックのための工事のため使えない。そこでスペースが狭い科学技術館を活用せざるを得なった。しかし、そのデメリットをメリットに転換する創意工夫を考案したという。それは、私立中高協会の副会長長塚篤夫先生(順天学校長)によると、各校のブースは時によってはポスターセッションで説明できるようにブース内の掲示物を工夫しようということだったという。

Dsc00067

★まず今までとは違い、座って個人相談や学校の説明をすることができない。ブース内は3人というルールだが、実際には2人が限界。もし、たくさんの受験生と保護者の行列ができたときには、対応ができない。

Dsc00136

★そこで、多くの方々にポスターセッションで、教育の内容や結果のみならず、その学校で生徒がどのように学ぶのかまで説明しよということになったという。もちろん、受験生・保護者を3人の先生で対応できるのであれば、個別に対話をするのもありで、そこは臨機応変でよい。

★しかしながら、私立学校の教育は、やはり生徒の学びのプロセスがそれぞれの学校の独自のプログラムに沿って躍動するから、そこをプレゼンするには、生徒も慣れてるポスターセッションを教師も応用しようということだったようだ。

★ある意味、私立学校の広報の真髄を貫いた私立学校展になったのではないか。

★そして、ポスターセッションとしてお手本を披露したのは、海城の特別校長補佐中田先生だった。高偏差値の学校で、グローバル教育や授業でICTを活用しているNew Power Schoolの海城であるが、その仕掛け人が中田先生であることは広く知られていることである。

★やはり、こういうときに大活躍するのは、中田先生である。中田先生は、海外で実際に多くのビッグビジネスマンと会い、帰国生子女の説明をしてきた経験が豊富だし、海外でプレゼンする意味の重要性を身に染みて知っている実践家であると同時に教育の理論家である。

★時間があれば、多くの学校の若手先生方はそっと見学されたし。

|

2019東京都私立学校展(3)渋谷―自由が丘―二子玉川―渋谷の東急プレミアムエリアが熱い!

★渋谷―自由が丘―二子玉川―渋谷は東急線と田園都市線で囲まれる東急プレミアムエリア(と東急電鉄が呼んでいるらしい)。三田国際が誕生した時と同じくして、楽天が二子玉川に本社移転してから、英語とICTは当たり前という雰囲気が流れているエリアである。実際にインターナショナルスクールもあったり、東南アジアの高度専門人材が、日本語を学んだりしているエリア。都立大にはケニア共和国大使館もあり、グローバルシチズンが多く居住するエリアでもある。

Dsc00152

★したがって、このプレミアムエリアでは、破格のグローバル教育や、グローバル教育の根底にあるダイアローグという意味での≪対話≫ベースの教育を行っている私立中高一貫校が多い。八雲学園は、2年前に共学化したが、そのときにRS(Round Square)という世界の私立学校のエスタブリッシュスクールのみが加盟しているコミュニティに加盟した。

★それらの私立学校は、当然グローバルシチズンシップを発揮した世界の民主主義と平和を目指す教育をし、なんといっても極限の社会貢献としての奉仕活動を行うプログラムを有している。何せ第二次世界大戦のファシズムに屈せず、極限のサバイブ経験をもつクルト・ハーンが呼び掛けたコミュニティで、日本からみていると想像もできないコミュニティの深い教育観が横たわっている。

★ケニアのRSに加盟している私立学校が研修旅行で東京に立ち寄ると、RS加盟校同士は、国際交流をするのに、電話一本、メール一本でつながってしまうから、八雲学園にも大使館を訪問した後に、立ち寄るという自然体の国際交流が行われる。毎月のように、世界のRS加盟校から交換留学生が訪れている。もちろん、受け入れたら、八雲学園から相手の加盟校に留学することができる。航空運賃や生活費はかかるが、基本あとはお金はかからない。互いにホームステイをする。

★よくあるエージェントが仲買する留学は、ホームステイはちゃんと費用をとるのが当たり前だが、RSの中での交換留学はそれはないのだ。八雲生が世界から自分の未来を見て、行き来しているというのが、自然な感じなのだ。そこは、今までのグローバル教育では味わえない大きな特色だろう。

Dsc00124

★そして、なんといっても、三田国際のブースに受験生・保護者が殺到していたのは、もはや年中行事化していて、このプレミアムエリアには、本当に進取の気性に富んだ保護者が多いのに驚かされる。

★このエリアには、SGH認定校の昭和女子大もあり、美術系のベースがあり、海城学園よりも先に取りいれたPAなどの対話をもとに自分の世界を深められるトキワ松もある。

Dsc00164

★岩崎家と松方家は親戚関係だが、その両家にゆかりのあるシスターが、私財をなげうって、戦後路頭に迷う子供たちを救うべく立ち上がってできたのが聖ドミニコ学園。一学年80人のスモールサイズがゆえに、質の高い教育が蓄積されてきた。そして今年から、インターコースをつくり、PBLやICTを埋め込んだ授業も展開し、13世紀にカトリック教会を救った聖ドミニコの≪対話≫を現代化した。再びドミコの精神を必要とする時代の激変がやってきたという使命感から教育のアップデートを行ったということだ。ドミニコ会の長い歴史の中で、たおえば、ルネサンス時代ユートピア都市構想を打ち出したのもドミニコ会士だったし、大航海時代の南米諸国をスペイン艦隊から救うべく殉教したのもドミニコ会士だ。

★なんといっても、カントもヘーゲルも、ハイデッガーも、あのマルクスでさえも乗り越えようとした西洋の哲学の基盤を創ったのもドミニコ会士だ。フランス革命をサポートした修道士の中にドミニコ会士もいた。もちろん、宗教改革の時にプロテスタント運動の波に撤退せざるを得ない地域もでたという歴史もあり、救済の歴史ばかりではない。何せ資本主義の萌芽はドミニコ修道会からという説があるくらいだから、光と影の歴史はあるものだ。ディベートの基礎もドミニコ会士がつくった。そこから中世以来の大学システムができていった。

★今回の改革で、ドミニコの精神を現代化することになれば、女子校として新たな光を放つことになろう。そもそも女子修道会の立ち上げをサポートしたのもドミニコ会だと言われているぐらいなのだ。

★東京都市大等々力は、五島慶太翁の精神を現代化し、その勢いは三田国際と競る勢いである。もともと英語教員を目指していた五島慶太。英語でサムエル・スマイルズの資本主義のベストセラー「自助論」を読んでしまったがために、大東急を形成するまでに自分のキャリアを変えてしまった。

★しかし、その晩年は宗教的精神と教育に回帰していく。アートと宗教的精神は、等々力から近い五島美術館に行けば味わえる。教育は東京都市大等々力にまさにある。

★このプレミアムエリアのすぐ延長上に洗足学園や森村学園がある。今回は東京都私立学校展だったから、参加していなかったが、当然、両校のグローバル教育が破格なのも言うまでもない。

★渋谷には渋谷教育学園渋谷もあり、等々力を支えている五島育英会の本体もある。エリアに光をあてるのは、そこに進取の気性に富んだ保護者がどれぐらい居住しているかという教育の新市場へのニーズがあるかどうかを判断するときに重要であろう。

|