教育イノベーション

2022年4月30日 (土)

成城学園 生徒が自分で自分の学びをデザインする

4月22日(金)、成城学園の広報部長の青柳圭子先生が、GLICC Weekly EDUにZoom登壇。同番組主宰の鈴木裕之さん(GLICC代表)と対話しました。成城学園は、大正自由教育のスタースクールであるのはあまりにも有名ですが、今国際秩序がゆらいでいる事態が対岸の火事ではない状況下にあって、大正時代のお話で終わらない、現代的価値を示唆する重要拠点です。そのことがよくわかる対話が行われています。

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 (GLICC Weekly EDU 第76回「成城学園 青柳先生との対話ー成城学園の魅力をつくる先進的で豊かな授業」)

★というのも、青柳先生が語る言葉が、いわゆる文部科学省が学習指導要領で使っている言説をただ振り回すのではなく、すっと自然に青柳先生ご自身の言葉で置換えて、成城学園の建学の精神の泉で浄化して語っているからです。

★新学習指導要領は、あたかも未来の教室に向けて学びを変えていく意欲をみせた言説をたくさん使っています。そのことは、私立学校にとっては、とてもやりやすいわけですが、私立中学に通う生徒は全国の中学に通う生徒の7%にすぎません。93%は、公立で、公立では、なかなか転換が難しいのです。

★なぜかというと、成城学園は、105年前に、当時文部官僚だった澤柳政太郎が、新教育を施行する実験学校として設置した学校です。ジョン・デューイなどをはじめとする民主主義を生み出す教育を実践しようと新しい教育観・教育実践がはじめて導入されたのです。

★一般に新しい教育といったとき、そうでない教育についてあまりはっきり言及されないのですが、デューイは「民主主義と教育」の中で、インストラクショニズム的な合理的な指導案に基づいた(=マスプロダクションの象徴であるT型フォード・モデルに重なる)近代教育を徹底的に批判しています。

★澤柳政太郎は、文部官僚でしたから、日本の近代教育が、このヘルバルト主義の流れを汲むことを知っていたはずです。国力を高める労働力を生み出す教育が、当時の先進国に追いつけ追い越せという優勝劣敗主義に突っ走っていることの危うさに気づいたはずです。この官僚主導の近代国家づくりは、民主主義を成熟させないということを身に染みていたはずです。

★成城学園で行われているPBLは、たしかにデューイなどの当時の進歩主義的な教育哲学者や実践家に今も基づいています。しかし、それは決して古いことではないのです。よくデューイを持ち出すと、そんな昔の学習理論はと言い出す人いますが、そのようなことを語る方のベースは、もっと古いヘルバルト主義に基づいているのです。

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★したがって、古いとか新しいとか言う話ではなく、今繰り広げられている世界のデモクラシーの危機を見て、デューイが提唱した「民主主義と教育」は、未完であって、まだ実現していないのだと考えたほうが適切でしょう。そして、なぜ未完なのか?デューイの発想が絶対的で完成されたものではないのです。現代化していく必要があるわけです。

★それを成城学園は今も実践しています。青柳先生は、デューイの時代にヘルバルト主義に対して「学習者中心主義」が唱えられたわけです。それは、学習指導要領でも「主体性」とかかわれています。OECD/PISAのエージェンシーという言葉に影響されてもいます。

★しかし、この「主体性」をどのように創っていくのでしょうか。ヘルバルト主義のわかりやすい事態は、学年、クラス、教科時間割の一連のシステムです。このシステムは今も厳然としてあります。これに則っていくと、「主体性」はなかなか生まれません。

★では、この時間割に象徴される教科主義を、全部探究にしてしまえばよいのか。そういう学校もあります。成城学園も105年前は、ドルトンプランを取り入れていましたから、そのような発想があったかもしれません。

★しかし、この発想は、時間概念が、デノテートで、コノテーションを深く考える発想が学習デザインを行う側にないのです。ミウラオリなどの茶室発想が加わることで、つまりアート発想が加わることで、ヘルバルト主義のはずが、全く違う価値観に転換するということが可能です。

★それを成城学園は実現しています。デノテーションというのは形式的表現です。ですから、「学習者中心主義」というのはデノテートな表現です。青柳先生は、デノテーションとコノテーションはコインの表裏なので、「学習者中心主義」や「主体性」を「生徒が自分で自分の学びをデザインする」とコノテーションを引き出す表現に置換えます。

★そして、今回の対話の中で、この「デザイン」をさらに「デザイン思考」プログラムを生徒自身が探究していく教育実践をしているのだという話を展開していきます。

★つまり、成城学園の先生方と対話するとすぐに了解できますが、青柳先生のように、デノテート(外延的)な表現を、1つひとつ丁寧にコノテーション(内包)を引き出す創造的な転換を果たしている先生が多いのです。

★このデノテーションとコノテーションの往復ができるレトリック(修辞法)は、リベラルアーツの基本の1つです。ヘルバルト主義は、このリベラルアーツを実用的な教育を優先して斬り捨てていくことになります。もちろん、ヘルバルト自身はそこまで考えていなかったでしょう。

★このヘルバルト主義の系譜については、最近教育学の中でも研究され始めています。日本の近代社会、現代社会を下支えしてきた教育の中に織り込まれているヘルバルト主義の痕跡を見出したときに、ようやく日本の教育のどこを変えるとよいのか問題の所在が明らかになるでしょう。

★現状の教育改革(?)は、ここが明らかになっていないので、表面的な変化になってしまっている可能性もあります。

★成城学園は、105年前の建学当時から、この問題の所在を認識し、その解決に向けて教育実践を新しいイノベーションを取り入れながら積み重ねています。そこを見出す受験業界の編集者が現われてくると、成城学園の現代的価値を受験生と共有できるでしょう。すでにノイタキュード代表の北岡優希さんがそこにチャレンジしています。そもそもGWEそれ自体が主宰者の鈴木さんの新たな着想によって成り立っています。

★教育の新しい価値は、学校のチャレンジングな実践とその実践の価値を見出す編集者のコラボレーションが欠かせません。そういう時代がいよいよやってきたと実感できた青柳先生の表現でした。(つづく)

 

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2022年4月13日 (水)

変わるというコト(02)質を上げても次元が変わらないコトもある、質を上げなくても次元を上げるコトもできる

★学校は、教育の質を上げることは当然です。しかし、質を上げても全体としては何も変わらないというコトもあります。実に判断が難しいですね。質が変わっても次元というか組織の枠組みが変わらないということがあります。

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★タイプAが、そのタイプです。質を向上して、飽和状態になると次元がnからn+αになりそうなのですが、実は質の飽和状態とか沸点は読めないのです。多くの場合、携わっているメンバーの自己満足になりがちです。

★質が不十分でも、テクノロジーを加えると化学反応が起きそうですが、そうでもないというのが、Bタイプです。

★テクノロジーを使う場所をn+αの次元で行えば、実は現状の質が不十分でも、高い次元で質を充実できるということがあります。

★ここでいうテクノロジーとは、デジタル技術だけではなく、身体技術、心の技術、人間関係形成技術、ケアリング技術などを含みます。

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★タイプA´は理想的なように見えますが、コストがかかりすぎ、持続可能が難しいかもしれません。そもそもこのようなテクノロジーの使い方はあまり意味がないのです。

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★しかしながら、タイプDという場合もあります。というよりも、この場合が多いかもしれません。

★なぜこうなるのか?

★それは次元nと次元n+αの差異を明快に了解していないからです。

★「了解」?

★正解があるわけではないので、n+α次元は創造しなくてはなりません。構想力が必要です。

★それがなかなか難しいですね(汗)。

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2022年4月12日 (火)

変わるというコト(01)外延と内包の組み合わせ

★組織の変え方と組織の変わり方は微妙に違います。変え方は、どうしてもそのための道具が派手になります。外部の道具を持ち込むことになるからです。変わり方は、変える道具を自ら作ります。内部の力を奮い立たせることが主眼です。

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★両方が必要なのですが、変え方>変わり方というのが本当のところでしょう。

★そして、これは、持続可能が難しかったり、形骸化してエントロピーが増大することがしばしばです。

★変え方<変わり方が、実はシンプルで持続可能性が高いですね。

★では、変える道具を学内の先生方1人ひとりが自ら、そして協働して生み出すにはどうしたらよいのでしょう。

★それは、「レトリック言語」のチカラを活用することです。

★特に、レトリックのレトリックであるデノテーション(denotation:外延)とコノテーション(connotation:内包)の組み合わせを工夫することです。

★学校の広報的には、一見すると地味ですから、ほとんど振り替えられません。

★しかし、これはリベラルアーツの現代化の起爆剤なのです。今のところ、あまり注目されていませんが、引き算の美学が望まれつつある現在、やがて耳目を集めることになるでしょう。

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2022年4月 9日 (土)

Gのチカラ(06)創造的対話が「知識と思考を身に着ける」コンセプトレンズ=「対話思考コード」を生成する

★学校の毎日は、対話のフロー体験の連続です。この対話のフロー体験とはいったい何ものでしょう。これについて、語ることができる仲間は、学校だけではなく世の中でも、まだまだ少ないので、いろいろなところで葛藤や紛争が起こっています。遠くの国だけではなく、近くの生活でもそうです。特に今の学校教育は、教科の中に、あるいは最近の探究の中に収納されるジャーゴン(わかりやすく説明するという物象化言語)を使っての対話が対話だと物象化(先入観・固定概念化)されているため、なかなか大変です。学歴社会だとか高校受験の制度の偏差値主義は、そのような対話でますます強化されてしまいます。

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★私たちの身の回り及び遠くの世界においても、常に「現象」というものが発生しています。この「現象」とは、自然と社会と精神の化学反応によるものであり、この3つの循環や関係性が不完全である場合が、今のところほとんんどで、そこから生成される現象は、それゆえ、精神の荒廃、身体へのダメージ、気候変動、戦争などの葛藤を常に含んでいます。

★この現象の背景にある、自然と社会と精神の関係性の循環度を感じることはできても知ることは常に限定的です。感じ取れればそれでよいという考え方もありますが、やはり具体的な変容を生み出す必要があります。知識や思考は、現象を直接つかむことはできず、常に「物象化」されたままです。世の通念としての物象Cをある人は物象Aとつかみ、他の人は物象Bとしてつかみとるわけです。

★日常の対話(A軸)によって、物象C=物象A=物象Bに修正される段階にいくのがやっとです。しかし、物象Cを生み出している3つの関係性が生み出している現象に接近しているかどうかは無自覚です。かりに直感的に感じたとしても、立ち尽くすだけか、心地よい心の安定を求めて現実をさけてしまう場合が多いのです。

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★ですから、次のステージに進みましょう。そこを自覚的にリフレクションしていくモニタリング対話(c軸)では、物象化が起きていることに気づきます。しかし、ここでもまだ、物象化の分析で終わります。しかし、これは、対話が日常対話から始まるのをよしとするから、限界にたどりついたという自覚で終わるだけでなのです。ここまで来るのに膨大な時間を費やしていますから。

★ですから、最終的なステージだと思われているところから始める方が合理的です。もし、初めから物象化を紐解き、関係性の再構築をする脱システムを創ろうという創造的対話(C軸)を相互に行えるメンバーが増えれば、自然と社会と精神の循環度を上げるシステムへとコペルニクス的転回が起こるでしょう。

★今の受験システムでは、この創造的対話を身に着ける体験をして先に進める入試制度は、海外大学の入試制度やIBのTOKや欧米の哲学などの対話ぐらいかもしれません。

★そうはいっても、日本の受験業界では、そのような入試制度はないわけですから、忍び寄る物象化というウイルス以上に質の悪い生権力を寄せ付けない創造的対話をやりながら、日本の受験システムを自覚的に戦略的に見極めながら活用していくしかないでしょう。

★A軸対話やB軸対話は、偏差値ランキングがつきますが、創造的対話は信頼関係を勝ち得るかが評価です。物象Cという氷山の一角の水面下の自然と社会と精神の関係性の不足部分や弱みの部分を修復する新たなシステムを創造することが、葛藤や紛争を乗り越える対話です。

★聖パウロ学園では、創造的対話を忘却しない、つまり物象化された現存在的な知識を自覚的に身に着けることをしつつ、創造的対話によって装着の質を変容させる重層的な対話コードシステムが作動するようなシステム作りをしているわけです。あくまで、「身に着ける」であり、理論を知ることではないのですが、20%は、実践知のみならず理論知も学ぶ必要はあります。

★そのシステムが構築できれば、リーダーフルな状況をさらにアップデートできます。

★物象化言語で語るしかないので、それを使うわけですが、それをそれぞれが解体修復しながら創造的内省対話ができるようになればよいわけです。それには、メタファーと集合論とトポロジーとサイエンス(文理学際的)を日常の中であたかも日常対話として自在に活用できるストーリーテラーが必要です。このストーリーの創造は、各行事などの段取りの編集によって「身に着く」わけです。

★聖パウロ学園に希望があるのは、少人数が故に、教師も生徒も「段どる」実践知によって創造的対話を「身に着ける」ことができる機会があふれていることです。例年通り同じというマニュアル発想は捨て、変容させながら段どる文化を生み出すことによって、ワークショップ型研修にもなります。

★あらゆる段取りに小さな変化を挿入するコト。小さな変更が大きな変化を生み出します。もちろん、大事なことは、その小さな変更において創造的対話をすることなのです。これが伝統と革新の両ベクトルの合わせ技です。

★これであれば、すべての人々が限界を超えるウネリを創造することができます。教科書を使わない。既成の誰かが創った探究を捨てる。でも、教科の授業は行われているし、探究の授業は行われるわけです。そんな小さな変化が大きなウネリとなるでしょう。

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2022年2月27日 (日)

学校が変容するというコト(16)富士見丘のグローバル教育 時代を善へと牽引する生徒

★昨日、本ブログの次の記事のアクセスが急上昇しました。それは「富士見丘(了)思考力と英語力とディーべート力を牽引する模擬国連部の存在」です。「ホンマノオト21 模擬国連部」で検索するとトップにでてきます。おそらく、今起こっているドミノ危機に対し、中高生が何ができるのか、国連の働きにも注目が集まっているということもあり、模擬国連の活動をしているところはどこだろうというような意識から、検索された結果だと思います。

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★平均滞在時間が3分で、直帰率が75%ですから、ピンポイントでアクセスして読了してくれた方が多かったと推測します。

★富士見丘のグローバル教育の破格さについては、多くのメディアが取り上げています。先日もWWLリーダー校として、グローバルな探究の成果を英語で生徒が公開プレゼンする会がありました。高2の生徒17のチームが挑戦していましたから、英語力が優れた一部の生徒とか帰国生(同校の帰国生率はめちゃくちゃ高い)だけがとかがプレゼンしたのではなく、全員というところが同校の徹底ぶりが伝わってきます。

★このときの模様はGLICCの次のサイトで見ることができます。

「富士見丘高校のWWL研究発表会ー圧倒的な英語プレゼンテーション」

★また、同校は、このような公開プレゼンテーションを頻繁に行っています。その様子については首都圏模試センターが取材しています。次の記事をご覧ください。

「のびやかな活動と高い進学実績に受験生親子・関係者から熱視線」

★富士見丘のグローバル教育は、世界の諸問題についてそれぞれの生徒がトピクを発見し、深く探究し、具体的な提案をしていく学びがベースです。したがって、プロジェクトベースです。いわゆるPBLのアプローチで学びを行っていきます。このPBLはパブリックオーディエンスにプレゼンし、社会を善くしていくインパクトを与えていくことがポイントです。

★PBLを行っていても、ここまで来るのはなかなか難しいですね。それをもう10年以上富士見丘は行っています。そんな教育活動の中で、ピンポイントで模擬国連部の記事にアクセスが集まったというのは、やはり今まさに永遠平和のために私たちは何を想い、何を考え、何をすべきかを考えなければならないか時代が呼びかけているからでしょう。

★そして、それにきちんと応えて高い視座で「永遠平和のために」学ぶ生徒が育つのが富士見丘なのです。

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2022年2月20日 (日)

学校が変容するというコト(08)石川一郎先生の痛快丸かじりのトーク 学校組織のカルチャーと教員のマインドと思考コードと

★先週の18日(金)、石川一郎先生と対話しました(GLICC Weekly EDU 第67回「2022〜23年中学校選びのポイントはここ~石川一郎先生が学校選択の肝をズバリ解説する」)。今年の首都圏の私立中高一貫校の学校選択の大きな潮流の話に集中しました。多くの視聴者は、石川先生の痛快丸かじりかつ歯に衣着せぬトークに魅せらるたことでしょう。ぜひご視聴ください。

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★今回は、首都圏で英語入試を実施した146校のリスト(実は英語入試を行っているところは思考力入試や自己発見入試など多様な新タイプ入試を実施しているところがほとんどです。リストは首都圏模試センターのサイトを活用させていただきました)を見ながら、それぞれの学校の特徴を話題にしながら、それが同時に人気を高めた理由であるということについて石川先生が明快に解説。ここだけでの話(とはいえ、公開動画ですからギリギリのところでとめてはいますが)がガンガンでてきてます。

★そのような具体的なケースの後に、東洋経済ONLINE 2022/02/17 で、辻野 晃一郎(アレックス社長/グーグル日本法人元社長)さんの記事 <日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題 グーグル日本元社長「日本人にも絶対にできる」>で語られている次の5つのポイントと思考コードを結びつけて、石川先生に学校の組織カルチャーと教師のマインドについて語ってもらいました。

❶「失敗を許容しない」対「失敗は成長プロセスの一環」

❷「雑用は下に任せる」対「何でも自分でやってみる」

➌「不正には目をつむる」対「不正は許さない」

❹「正確さが大切」対「スピードが大切」

➎「上が決定する」対「現場の決定を上がサポートする」

★人気のある学校は、組織カルチャーや教師のマインドが、上記のリストの右側の要素を持っていることとこの要素は思考コードのC軸が重要な働きをしているということを、具体的な学校を挙げながら、ズバズバと石川先生は語ります。あっという間に対話の時間は過ぎました。ぜひご視聴ください。めちゃくちゃ新鮮な情報が飛び交っています。

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学校が変容するというコト(07)「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は重要な意味を問いかけています。<了>社会学的視点 自明性を問い返す

★キャリアガイダンスvol.429 2019.10には、菊地栄治先生(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)のインタビュー記事が掲載されています。菊地先生は、多様な社会学の成果を独自の基礎理論として構成し、その視点を現場にどっぷりはいって自明視されてきた高校の組織文化や教師の精神性、授業のデザインなどを基礎理論としての専門用語を使わず、現場の教師と問い返し、小さな変化を大きな変化にシフトし、かつ持続可能にするにはどうするかを現場の教師と創っています。

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★菊地先生の教育社会学は、マクロの社会システムを地として、そこで展開する日常の学校生活を生み出す教師や生徒を中心とするステークホルダーのかかわりを図として分析しています。この関わり合いは、互いに異なる意味理解をどのように調整するか、調整せずに葛藤を起こすか、自明性としての理念の形骸化を放置するのかなどを現場の教師や生徒と対話によって問い返し、問題性を共有していくというやり方でしょう。

★この日常の学校生活の構成の分析なくして、やれデジタルだやれ〇〇プログラムだと外部からいれても学校は変容しない、いやディストピア的に変容してしまうおそれがあります。

★一方で、外部と没交渉することによって、学校内部だけで理念を共有していく美しい流れは、自明性の問題性を見えなくし、そこにかかわる人間同士の意味理解の違いを無化します。それゆえ、見えない葛藤が学校をネガティブなシステムに変容するおそれがあります。

★この意味理解の関わり合いを、同誌では明言していませんが、随所に「他人事≒自分事」としての1人ひとりの関わり合いが、新しい理念、つまり「普通」の学校こそが、生徒の未来がwell-beingになるような生き方やそれをサポートする社会づくりの源泉を生み出すのだという発想が見え隠れしていました。

★現象学的社会学では、フッサールのそうして日常生活をどう構成するかを問い返す(エポケーする)という考え方を継承しつつも、間主観(intersubject)の継承には、物象化されやすいということもあるのでしょう、継承に慎重です。

★そういう成果も踏まえつつ、菊地先生は、現場の人びとのかかわりの前提として、個人とは主観とかたんに自分事というセットをするのではなく「他人事≒個人事」という新しい個人の概念を創って展開しているのかもしれません。あくまで独断と偏見の予想ですが。

★勤務校のスクールモットーは、「自分が他者にしてもらいたいことは、何でも他者にしなさい」という黄金律です。この他者は具体的な個人であると同時にその背景には本来的な人間の存在を内包しています。この本来的な存在に気づき、共有し、それを現実のものにしていく教育の持続可能性はいかにして可能か。この私なりの自分への問いの解答の糸口が菊地先生の研究によって見えてきたような気がします。

★山下さん、私の自分への問いを探る道の道標として多くの刺激的な記事をこの一冊に集めて下さり、本当にありがとうございました。

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2022年1月31日 (月)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(42)インターナショナルスクールのバージョンアップの時代

★明日から東京は中学入試が本格化し、すぐそのあとに、高校の一般入試、半ばを過ぎると難関私大、そして3月に国公立大学の入試と移行する。まさに日本は沸騰受験列島。そこに新型コロナ感染の第6波がぶつかり、家庭内感染をしないようにあらゆる手段を講じ緊張しているのは受験生のいる家族。もちろん、それは入試を運営する教師も同じです。そんなわけですから、勤務校のオンライン授業の様子をみながら、他校の仲間の先生方や同僚とネット上などで情報収集しています。

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★そんな中で、仲間たちが新しいインターナショナルスクールの動きについて情報交換しているのを知りました。今までは、インターナショナルスクールは1条校ではないので、日本の高校卒業資格がとれず、IBやAレベルなどのシステムを入れていました。

★それはそれでよいのではと思うのですが、それだと費用が1条校の私立学校より何倍もかかるし、IBやAレベルの高スコアをとる生徒は一握りです。限られたグローバルリーダーを輩出する拠点としてはよいのかもしれませんが、経済格差や教育格差を超えて、ニューコモンズとか新しい資本主義とか議論されているこの時代にはマッチしないわけです。経営的にマッチしないというコトよりも、すべての子供の未来を考えたときに、今の教育システムを変えるのではなく、強化するというパラドクスにもなってしまいます。

★そこで、いろいろなインターナショナルスクールのバリエーションやバージョンアップが生まれ始めたのです。

★どうなるかはわかりませんが、2022年度の教育が始まる準備としての受験の最中だからこそ、そのような話が出るし、聴こえてくるのでしょう。

★そんなことを思っているときに、こんな記事が目に入りました。「東大よりハーバード 開成、渋幕に異国のライバル校」(NIKKEI STYLE キャリア 2022年1月30日)がそれです。

★話の中身は、すでに本ブログでも取り上げていたことです。欧米の名門パブリックスクールやインターナショナルスクールが上陸してくるよということです。ただ、記事にはこうあります。

<東京大学を受験ヒエラルキーの頂点とする考え方が変わりつつある。東大よりも米ハーバード大学など海外有名大学への進学を目指す高校生が増えている。グローバルな舞台で活躍する人材になるためには欧米の名門大で学び、人脈を形成することが圧倒的に有利だ。国内進学校の勢力図も変わるかもしれない。

「今夏に英国の名門パブリックスクールのハロウ校が日本に進出してきます。新たな脅威になるかもしれませんね」。 >

★どうやら知の黒船脅威論の発想があるようですね。たしかに、日本の学歴社会が崩れるからよかったというよりは、世界の経済格差をより先鋭化するシステムに移行するのは困ります。しかし、この「脅威論」は、一部の学校にとっての話で、つまり3%の子どもたちの話であって、97%にとっては、ウェルカムなのです。

★選択肢が増えることはいいことでしょう。それに、たしかに能力主義は欧米でもありますが、これからは、脱能力主義について、多くの海外の大学は考えるようになります。その背景には、知はニューコモンズとして、すべての民主主義国家の共通財になっていくからです。この動きは、すでに世界中のオンライン授業で動き始めています。実はハーバードでもその動きを模索し始めています。

★どうなるかまだまだわかりませんが、2008年ころからTPPの話が出たときから、この動きは始まっています。東日本大震災や政権交代などで当時のTPPの話はだいぶ縮小していますから、教育のTPP化の件は忘れられていますが、パンデミックショックや民主主義の危機が再び浮上してきたということかもしれません。

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2022年1月22日 (土)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(25)工学院 New Value School 学びの生態系が拡張

★東京の私立中高一貫校の中学入試の志願者総数はゆっくりですが、2月1日に向けて増えてきています。日能研倍率速報(2022年1月22日現在)によると、東京エリアの共学校の志願者総数前年対比は70%。2月1日には100%を超えるでしょう。そんな中工学院大学附属中学校は、この時点ですでに92%です。平均より出願のスピードはかなり速いですね。2月1日には当然100%は超えるでしょう。とにかく、勢いがあるということでしょう。それでは、その理由は何でしょう。

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★それは、明らかに、すべての教育活動の密度が高いからです。学校説明会に行けば、密度の高さは、熱を伝えますから、すぐにわかりますが、いかなくても同校のサイトは更新率が高いーつまり更新率の高いサイト表現というのも教育活動で密度が高いわけですーので、その高品質が伝わってきます。

★よく、SNSやオンラインでは熱は伝わらないという話がでますが、それは表現するものがいつも定番だからです。

★表現したいものが無限にあれば、それはリアル以上にリアルがこぼれ出るのです。リアルは限られた時間と空間で表現していますから、実はリアルではありません。リアルの部分集合しか伝えられないのです。もちろん、伝えるパフォーマンスの高さというものが重要ですが、パフォーマンスはすでに表現であって、リアルそのものではないのです。

★工学院は、とにかく多様な教育活動をアウトプットしています。なぜこれだけの活動を表現できるのでしょうか。

★それは、極めてシンプルです。一部の生徒だけが脚光を浴びているのではなく、生徒1人ひとりがみな発信できる教育活動が拡張しているのです。

★そして、部活でもサイエンスでもオンライン国際交流でも演劇でも、デジタルは当然活用するのですが、なんといっても言語と数学ベースの智慧が浸透しているのです。この智慧は工学院の教師と生徒両方の共通財産です。

★当然これは彼らにとっての無形資産です。ライフシフト時代です。未来はこの無形資産こそNew Valueを生み出します。そして、この価値はお金に置換えることもできます。心と現実の両方が融合してこそwell-beingです。

★かつては中高生の10%しかファーストクラスにはなれませんでした。

★工学院に行けば、そんなのは関係なく、みんなが心と金の両方を年収2000万くらい稼げるようになるでしょう。

★そんな馬鹿な!本間はまた妄想を抱いていると言われるでしょう。でも、そうならないと日本の経済はしぼみますよ。新しい資本主義とか所得倍増とはそういうことでなければ。

★いい加減目の前のことだけ考えるのはやめて、絶望を希望に変えるライフシフトをキャリアデザインの目標にする工学院のような多様かつ高密度の教育をしなくてはなりません。

★八王子に工学院があることによって、New Valueを生み出すことの魅力に、多摩エリアの受験生が気づくでしょう。同エリアにある勤務校もNew Value Schoolへとがんばります(微笑)。

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2022年1月13日 (木)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(13)東京・神奈川の中学入試動向 やはりNew Power Schoolのウネリと湘南白百合のインパクト

★東京・神奈川エリアの中学入試は、2月1日から一般入試が始まります。したがって、まだ両エリアとも出願総数は前年対比60%を超えていません。10日から始まった埼玉は100%を超えていますし、20日から始まる千葉エリアは現段階で70%は超えています。したがって、いずれ千葉も東京も神奈川のいずれも90%以上はいくでしょう。100%と断言できないのは、オミクロン株の急爆発の影響があるかもしれないからです。

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★そのような中、現段階ですでに前年対比100%を超えている学校があります。シングルスクール、共学校わけずに、前年対比の大きい順にならべてみました。

★みてください。湘南白百合の隕石が東京・神奈川エリアに衝撃を与えています。

★カトリック校で、大学進学実績がよいわけですから、特に変化する必要はないのですが、入試問題、カリキュラム、探究活動、生徒による教育空間の自主デザインなど、生徒自身の自己変容、学校の自己変容が広く世の中に伝わっています。

★2月1日の横浜共立をはじめとする神奈川の人気女子校が直接影響を受けている可能性があります。

★品川翔英、捜真、横浜創英、横浜女学院、新渡戸文化、武蔵野大、北豊島、宝仙理数インター、三田国際、工学院は、何かとメディアで取り扱われているラディカルなNew Power Schoolです。

★実践女子、フェリス、横浜雙葉は、グローバル教育、論文編集、探究活動などもともと先進的な教育活動で有名です。それが新学習指導要領の変化を先取りしていたので、さすがということになっているのでしょう。

★明星、青山学院英和学院は、急激な大学進学実績の成果はインパクトがあるのだと思います。

★変化のパターンは多様です。それぞれ内容は違うでしょうが、何であれ、ブレイクスルーする曲線を描いているところは、それぞれの価値を尊重する受験生や保護者が集中するというのは市場の当然の流れということなのでしょう。

★いずれにしても、New Power Schoolの勢いがよいことは明らかではないでしょうか。しかも、湘南白百合のように、伝統を守っていても今すぐに困ることはないにもかかわらず、伝統と革新を統合する大胆な動きを生み出すところには、人気が高くなるということでしょう。

GLICC Weekly EDUで、湘南白百合の教頭・広報部長の水尾先生と対話したことがありますが、そのときから同校はブレイクするなと思っていました。ぜひご視聴ください。

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