教育イノベーション

2023年5月27日 (土)

GLICC Weekly EDU 第129回「成立学園ー『探究!見えない学力』ー」 地球に立って感じ、考え、行動するメンタルモデルが成長する

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第129回「成立学園ー『探究!見えない学力』ー」がありました。驚きでした。成立学園と言えば、氷山モデルなのは有名です。中学が開設されたときから、氷山モデルを前面に出して学力観を説明し、実践し、成果を出してきました。氷山モデルブランディングが成功したということでしょう。ところが、今回の宇田川先生の丁寧で情熱的なお話をお聴きして、気づいたのは、生徒は日本という国でたしかに生活しているのですが、生徒自身は、地球に立って体験・冒険をしながらいろいろなことを感じ取り、考え、表現し、行動しているメンタルモデルを豊かにしているということが了解できたのです。

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★氷山モデルは、見える学力と見えない学力の学力構造であると同時に、その学力観によって生成されるメンタルモデルの構造でもあったのだと気づいたのは、衝撃的でした。WOW!です。

★ですから、生徒たちは地球を基盤にしているので、ことさらグローバル教育と言わなくても、生徒は日常で英語を活用し、ディスカッションし、自己表現し、好奇心を探究心に転化し、進路準備をしていきます。驚いたことに、国内の大学と海外の大学の両方を合格し、どちらに進むかを選択するという学園生活を送っている生徒がたくさんいるのです。

★成立学園の成長曲線は、メンタルモデルが豊かになっていく軌跡でもあります。内なる目に見えない豊かなメンタルモデルが根付いて卒業するから、大学で、社会でプロジェクトリーダーになって活躍するのだと思います。グローバルリーダーになっていくといっても過言ではないでしょう。

★さらに驚いたのは、中学の定員は、40名です。それに対し、2科、4科、適性検査型、ナショジオ+算数入試の4種類の入試があるのです。しかも、英検や数研の級は、スコアによって違いますが、得点として加味されるわけです。これはすべての入試で有効です。

★基礎知識を創造的に獲得するのが得意な受験生、論理的思考が得意な生徒、自然に対し好奇心旺盛で科学的眼差しを持っている受験生、英語が得意な生徒、小学生にしてすでに数学に好奇心を持っている受験生など、多様な才能者を受け入れる入試が実施されているのです。

★中学のカリキュラムが、先取りというアクセラレーション型のシステムではなく、エンリッチメント型のとにかく知識ではなく知恵が時熟していく豊かなカリキュラムになっていますから、いわゆる従来型の中学受験の偏差値尺度の知識は、中学3年間で十分に体得できてしまいます。そして、それ以上に地球冒険をしながら、ものの見方・感じ方・考え方・行動力という知のメンタルモデルが生徒の内面に芽吹き生長していくわけです。

★ぜひご視聴ください。理想の学校が、北区という地球の1エリアにあるのですから。

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2023年5月26日 (金)

変わる私立中高(30)生成AIが育成する資質・能力 文科省の懸念と期待

★5月23日、文科省は各学校に次のような通知を配信しています。「Chat GPT 等のいわゆる生成 AI を活用した様々なサービスが生まれる中で、学校現場における生成 AI の利用については、AI による誤回答や AI 生成物か否かを見分けられないなど、様々な議論や懸念の声があるものと承知しており、子供達の批判的思考力や創造性への影響、個人情報や著作権との関係などについて整理が必要であると考えております。
一方、学習指導要領では、「学習の基盤となる資質・能力」として、「情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見したり、自分の考えを形成するために必要な能力」である「情報活用能力」を位置付けており、新たな技術である生成 AIを使いこなすといった視点も必要です。これらを踏まえ、文部科学省では、政府全体の検討状況や中央教育審議会の議論を踏まえ、生成 AI の学校現場での利用に関するガイドラインを夏前を目途に策定・公表することとしておりますので、お知らせいたします。」と。

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★夏まで待とうと思うけれど、文科省は子供たちの批判的思考と創造性にネガティブな影響を与えるのは避けたいと、逆に言うならば、批判的思考と創造性を大切にしているということが改めて確認出来てうれしいですね。

★さて、チャットGPTに、「君は批判的思考や創造性を豊かに持っているの?」と聞くと、瞬時に「私は大きな言語モデルであり、批判的思考や創造性のような人間の特性を持っていません。私は与えられた情報を元に文章を生成することができますが、自己意識や主観的な思考は持ちません。ただし、私が持っている情報を利用して、問題解決やアイデアの提供をすることは可能です。」と。

★なんだ安心じゃないかと思いきや、でも提供は可能だとある。おやっと思い、何か具体例、災害を起こす原因の一つである気象変動を防ぐにはどうしたらよいかと尋ねると、これまた瞬時に大量に回答するのです。あまりに膨大なので、400字でまとめてよと訊くと、「気候変動を防ぐための取り組みは多岐にわたります。温室効果ガスの排出削減、再生可能エネルギーの利用促進、持続可能な交通手段の普及などが重要です。また、森林保護や循環型経済の推進も効果的です。教育と意識向上も欠かせません。さらに、持続可能な都市計画や農業・食品生産の持続可能性の向上、国際協力と政策調整、研究と技術革新も重要です。これらの取り組みは統合的かつ継続的に行われるべきであり、個人の努力だけでなく、政府・企業・国際社会の協力が必要です。気候変動対策は緊急を要し、早急な行動が求められています」と。

★とくに批判的思考がはいっているわけでもないし、創造性によって作成されているわけでもないから大丈夫だ。というわけにはいかないですね。

★情報収集し整理するときに、論理的にただ整理するわけではないのです。このような整理の仕方に整合性があるかどうか論理は明快だけれど、妥当性や信頼性はあるのかとチェックするときに批判的思考が稼働します。何か違和感を感じたり、この見通しでは将来どうなるのだろうか未来から考えるとき創造性はいるでしょう。

★その結果上記のチャットGPTのようになるかもしれません。それがもちろん、既存の情報に過ぎないので、さらに新しい発見をとなるのですが、この端的な制作的創造性以外に、意外と大事なのはプロセスの創造性です。知識を記憶するときも実は創造性が必要です。

★そういう意味では、チャットGPTが与える影響力は、微妙ですね(汗。

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2023年5月24日 (水)

変わる私立中高(26)私学経営の拡大の模索

★昨日ご紹介したように、東京の私立中学入試熱はヒートアップしています。いろいろな理由はあるでしょう。しかし、中学入試を視野に入れているプレイヤーは、グローバルな視野を有しているし、携わっている仕事や世界が当然ですがグローバルな舞台になっています。ですから、公立学校の教育では、グローバルな視野で未来を見据えるのはなかなか難しいということは感じています。そのようなニーズがあるからこそ、インターナショナルスクールやハロー校のようなパブリックスクールが日本に上陸してくるのでしょう。

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★私立中高一貫校が、グローバル教育を行うのは、このグローバルな市場を受け入れる準備をしているというわけです。

★これも当然ですね。観光のみならず、高度人材もインバウンドの流れがでているのですから、中等教育レべルでも連鎖してその流れは生まれ始めています。

★そのようなプレイヤーが、大学に入ってからグローバルな体験をすればよいと思えば、公立高校を選ぶでしょう。海外大学もと思えば、都立国際や水都国際のようなIBコースを持っているところを選ぶでしょう。

★中高時代からグローバル体験をしておくと結局無形の資産が増大しますから、そこまで考えていれば私立学校かインターナショナルスクールを考えるでしょう。あとは、学費という経済的問題、1条校か各種学校かなどの法的問題などを詳細にリサーチしていますね。

★つまり、グローバルな視野で考えているのは現状の私立中学入試をするかどうか選択しているプレイヤーはほぼすべてだと考えてよいと思います。すると、そのプレイヤーの視野がグローバルなのですから、私立中高もその視野を受け入れる経営と教育をする必要があるというわけです。

★もしそうしないと、先ほど述べたプレイヤーは、支持しなくなっていくでしょう。

★上記の図のように私学経営の領域が拡大しはじめているのは、プレイヤーのニーズに応えようとする私学経営自体の性格によるものです。

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2023年5月15日 (月)

変わりゆく世界(07)ハイテックハイの教育を私立学校はアレンジしつつある

★数年前、米国カリフォルニア州にあるハイテックハイ(HTH)が話題を呼びました。ハイテックハイを舞台にしたドキュメンタリー映画「MOST LIKELY TO SUCCEED」の試写会が各地、各学校で行われ、教科授業も定期試験もない、PBLでいわゆるSTEAM教育の塊みたいな教育に魅せられ、同時に日本ではできないと落胆する教育関係者が多かったように記憶しています。しかし、コロナ禍で、特に私立学校は、STEAM教育が加速したし、総合型選抜によって、定期テストのあり方も変わりつつあり、学習指導要領の枠内でHTHのような教育ができることに気づき始めました。

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★他人の芝生はなんとかで、米国で実践していると何か日本とは全く違うもののように喧伝されがちです。コンパラティブスタディーをすればよいだけなのに、日本ではできないと失望したり絶望したり。。。

★でも、たとえば、ハワード・ガードナー教授のマルチプルインテリジェンシーズ(多重知能)なども日本では流行ってきましたが、そもそも日本の学習指導要領は、はじめから、ガードナー教授の8つの知は教科によって満たされているのです。ただ、どれも満遍なくとか、教科横断がなかなかできていなかったりとか、ガードナー教授の意図とはだいぶ違うように見えるのも当然です。

★とはいえ、ベースはあるのですから、PBLを導入し、教科横断型で、learning by makingといった新しい学び方を結合すれば、新しい化学変化が起きます。現状の日本の教育、特に私立学校はそうなりつつあります。

★それに、伝統工芸、芸能、食文化、武道など、日本の人間国宝級のプロフェッショナルに会ってその技術を見て、話を聞き、質問して体験するツアーを、「Deeper Japan」を運営しているディーパートラベル株式会社の石川光代表が仕掛けているらしいのです。

★これは、従来のインバウンド観光とは違い、ディープな日本文化のキュレーションを行う日本列島を日本文化ミュージアムにしてしまおうという試みだと思います。部分的には、今まで行われてきたのでしょうが、職人の技をSTEAM的プログラムに可視化してしまおうという試みでもあるなと注目しています。

★とにかく、米ビッグ・テック創業者、創業期メンバー、著名クリエイター、富裕層、知識人、職人らが次々に日本を訪れているというのです。この発想は、私立学校は、探究やSTEAM教育にアレンジしていけると思います。なぜか?PBLというプロジェクト型が学習が浸透しつつあるからです。

★私立中高一貫校に留学生も多くなってきました。イギリスやアメリカのエスタブリッシュスクールは、すでにそうなっています。私たちも私立中高一貫校のキュレーションベースのプロモーションをしていかなくては!そう思わざるを得ないほど私立学校の世界を巻き込む教育が進化しつつあります。

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2023年5月14日 (日)

日本工業大学駒場の工芸の授業 工芸品の作り方は世界制作の方法だった

★5月13日(土)、駒場東大前から歩いて5分くらいのところにある日本工業大学駒場中学校・高等学校(以降「日駒」)を訪れました。1時間目の新井志穂先生(美術科教諭)の授業を見学することが目的でした。生徒の皆さんが登校する時間と重なっていたので、迷わず行くことができました。生徒の皆さんのスクールバックには<NK>というロゴが刻まれていたので、いっしょに歩いていけばよかったからです。

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★少し早く着いたので、図書館で待たせていただきました。正面玄関を入るとすぐに図書館があります。その周りに教室が配置されています。何かメッセージを感じないわけにはいきません。さらに興味深い吹き抜けもある建築空間ですから、どことなくワクワクしていました。どうやらOBによる設計のようです。なるほどかっこいいと思っていると吹き抜けから雨が降ってきたのです。建蔽率の関係などを計算してそうしているのでしょうが、本当に空に向かって吹き抜けているのです。中庭というわけではなく、廊下や階段を歩いていく中、雨が降っているのです。実におもしろいですね。雪が降った時のシーンを想像するとすてきですね。

★図書館では、中学生が早朝から読書に来ていましたが、寝そべって読書できるスペースがあり、そこにみな集まって、楽しそうに対話しながら読んでいました。読書の邪魔をしたくなかったのですが、あまりに楽しそうだったので、学校の雰囲気をちょっとたずねると、毎日楽しくてしょうがないと即答でした。心理的安全性が広がっていました。

★図書の中を眺めながら、さりげなく新書を読むムーブメントを作っていることもすぐに了解できました。国語だけではなく、どの教科のベース創りにもなるし、なんといっても探究や総合型選別では大いに役立つだろうと日駒の学びの広さと深さの仕掛けをいずれもっと知りたいなあと好奇心がわいてきたそのときに、新井先生が教室に案内しに来てくれました。すぐ真横の雨降る空間を通り過ぎて地下にいきました。

★さすがは日駒です。工芸や美術、陶芸の教室が並んでいました。ずっと以前から本格的にアートを体験できる環境がデザインされてきたわけですね。昨今騒がれているSTEAM教育は、日駒にとっては当たり前のことだったのだとすぐに了解できました。

★2009年に大統領に就任したバラク・オバマが、STEM教育に力を入れ、日駒のようなクラフトスペースやFABラボづくりを支援したのは有名ですが、日駒にはすでにあったわけです。

★そんなことを想いながら、新井先生の授業を見学しました。すると、驚いたのは、マグカップをつくるプログラムであったのですが、生徒は粘土をこねているわけでも窯で自分の作品を焼いているのでもなかったのです。

★グループワークを行っていたのです。10個ぐらいのマグカップを観察しながら、その機能やデザインなどについて対話しているのです。新井先生は作る前に、まず世の中にあるもの・日常生活にあるものを観察して「気づき」を生み出すことがとても大切だと。

★しかも、日常生活の中で、実際に使われることをイメージしながら対話し、ある意味情報を分析していくというのです。音楽だったら作品のアナリーゼをやるのですが、それをマグカップで行っていました。飲む瞬間だけではなく、ディスプレイとしての意味や、収納しやすさというようなコンビニエンスな感覚や、持った時の重さの感覚、素材など、マグカップを巡る多角的な視点が、ワークシートに言語化されていきました。

★ふだん自分たちが使っているマグカップ。目の前で見えている部分は氷山の一角ですから、その目に見えない水面下の多様で多角的な文脈や背景に想いを馳せるのが観察の目的だし、その想像をするときに「推論」する思考様式は、演繹的推論でも帰納的推論でもなく、生徒は仮説的推論を活用していました。今各学校で試行錯誤しながら取り組んでいる探究のときに多く行われる推理の方法です。

★このあと2時間目はいよいよ粘土をこねて作品を作っていくのだということでした。私は次のミーティングが八王子であったので、後ろ髪をひかれる思いで、日駒を後にしました。

★日駒の近くには、柳宗悦が民衆の工芸品を芸術に高めた民藝というコンセプトがつまった日本民藝館があるので、それとつながりもあるのですかと新井先生に尋ねると、先生の専門は工芸でもあり、当然それは研究済みで、その影響もあるということでした。まさに、マグカップ作りのコンセプトは、民藝さながらです。つまり日常の向こうに人間の生活世界全体を想い描く活動だったのです。

★現在の学習指導要領は「主体的・対話的で深い学び」ということが標榜され、それをめぐり、アクティブラーニングだとかプロジェクト学習とかが、各学校で試みられています。デザイン思考などというのも人気がある手法ですが、新井先生の工芸のプログラムは、すでにそのような方法論が盛り込まれています。なおかつLearning by makingでもあり、学びの最前線の授業でした。新井先生にとっては新学習指導要領が設定する前から行ってきたことでしょう。

★私は、生徒の皆さんがマグカップを手に取り、観察をしながら対話をしている様子に、かつて見学に行ったベルリンのバウハウスのシーンを想いだしました。ヨハネス・イッテンのデザインの予備教育のプログラムについて説明されていたのを想いだしたのです。ブルーノ・タウトなどが桂離宮にモダニズムを再発見、つまり気づきを得たことは有名な話ですが、新井先生のマグカップをつくるプログラムに、バウハウス的な発想も重なるなあと感じました。

★個人的にはイサム・ノグチが好きなんですか。イサム・ノグチはイームズと交流があったとモエレ沼に行ったときイサム・ノグチに関する本を立ち読みして知り、感動したものです。両者とも、日常生活の中にアート空間を埋め込んでいる(その逆かも)し、日本のデザイン文化の影響も受容していて、マグカップという西洋の食器を陶芸的な文脈にも交差させている新井先生の工芸の授業にも共通するところがあるなと深い感動を1人楽しでいました。

★図書館で生徒が、ロボティクスの話や鉄道のジオラマの話もしてくれました。さすが日駒とそのときは思いましたが、リアルに手を使った工芸のプログラムは、デザイン哲学などが第二の脳といわれている手によって美術室に広がっているのを感じて、その全体が日駒のSTEAMなのだろうと感じました。とかくSTEAMというとICTだけが注目されるのですが、改めてもっと包括的なものなのだと。

★そして、一般には意外とここまでのSTEAMは実践されていないのも事実であろうと思うと、日駒人気の理由の一つに、ずっと以前から行われていたこのような包括的なSTEAM教育環境デザインの存在があるのでしょう。すてきな機会をいただきました。新井先生、ありがとうございました。

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2023年5月12日 (金)

変わりゆく世界(06)立命館大学のAI×総合型選抜 大学入試を大きく変える可能性大

★東洋経済ONLINE(2023/05/12)の記事<成績だけで「やりたいこと」諦めないで、全国初「AI活用」した入試改革は 立命館×atama plus「入試改革」1年目の通信簿>は、多様な生成AI花開いている今、改めて衝撃的です。詳しくは同記事をお読みいただければと思います。無料で、AIによる個別最適化の学びを行い、大学が指定する単元を修了すれば、出願できるという総合型選抜。合格すると、大学入学後役に立つ学びを先行するわけです。プレプレ入学講座ですね。仮に合格しなくても、十分に学ぶことができ、他大学入学後も学部が同じであればやはり大いに役立つわけです。

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★今年、この立命館大学がEd Tech企業のatama plusと連携して、全国初のAI学習を活用した総合型選抜(AO)入試「UNITE Program」が、とにかく第1期合格者を出したわけです。他の大学も様子を見ながらも、立命館の成功に、昨今のAIムーブメントもあるので、様々な多様な工夫をして挑戦するでしょう。

★おそらく、最近の生成AIを活用すれば、小論文の学びを、立命館の同入試のようにプレプレ入学前講座をやれるわけです。

★協定大学が、一気にそれをやると、そのコンソーシアムには、志願者が増えるでしょう。

★もちろん、協定の仕方によります。学部や学科が異なる単科大学が、AIによるプレプレ入学講座の領域だけで連携できるのですから、合併だとか難しいことはしなくてよいわけです。

★atama plusや生成AIの組み合わせで、思い切り学んで大学に入学していくのです。学生も大学も学びや探究そのものがブランドになるわけですね。

★もうその先は、すべての大学が連携してしまうわけです。実質大学入学共通テストは不要になるでしょう。そして、大学受験市場の再編が起こる可能性大ですね。まさに予測不能な時代です。

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2023年5月10日 (水)

東京私学教育研究所情報(08)初任者研修「令和5年度 全体研修会」 私学教員の“ウェルビーイング”

★2023年5月8日(月)、アルカディア市ヶ谷で、一般財団法人 東京私立中学高等学校協会・東京私学教育研究所主催(共催:公益財団法人 東京都私学財団)の「初任者研修」が実施されました。会場は110名強の先生方が集い満席となりました。今回は、夏の宿泊研修のプレ研修として、座学でしたが、まずはアイスブレーク。緊張をほぐしつつもクリエイティブテンションを立ち上げるために互いに質問をするペアワークから始まりました。

★次に、同研究所所長の平方邦行先生の講演。それぞれの私学の精神を引き受けて、生徒の100年後を見据え、生徒の才能を開花する教育環境デザインをする気概と覚悟についての講演でした。

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★そして、キーノートスピーチは、山本慈訓先生(一般財団法人東京私立中学高等学校協会 文化部長/世田谷学園中学高等学校 校長)。テーマは『私学教員の"ウェルビーイング"』でした。

★平方所長のメッセージ「東京の私学が21世紀型教育を共に創っているので、ぜひそこで活躍してほしいし、クリエイティブな教育をデザインしてほしい」を受けて、現在の世界標準の新しい教育プロジェクトの一つ「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」を例に、"ウェルビーイング"を教育の最上位目標に教育を実践していくことはいかにして可能かについて貴重な講話がありました。

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★予測不能なVUCAの時代の中で、正解のない問題に直面した時、自分でそれを解決する知識・技能・思考力を駆使して、立ちふさがる矛盾やジレンマあふれる事態に対応し、世界を変える主体性=エージェンシーを育成する教師の使命感を情熱的に語られました。

★また、世田谷学園の仏教学校としての建学の精神が、世界標準の精神や学習指導要領が掲げる理念に共通することも丁寧に確認していきました。

★私学の独自性、先見性、先進性は、各私学の建学の精神にのっとり特色ある魅力的な教育を生み出していくとともに、世界をエンパワメントしていく気概も有する教師にかかっているのだと。そのパッションの松明を、参加者はしっかりと引き受ける研修となりました。ウェルビーイングについて、概念的というよりまずはイマジネーションをとばすことができたと思います。

★なお、この研修は、次の各私学の先生方で構成する委員会が企画・運営しました。

委員長 更科幸一先生(自由学園)
委 員 星野真人先生(國學院) 風見加菜恵先生(関東第一)
鷲尾真樹先生(田園調布学園) 石井克己先生(成蹊)

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★当日は、司会から軽快なアイスブレーク、しみじみ身に染みる内省するリフレクションなどにいたるまですべてを、委員の先生方が運営・実施しました。夏の研修は、ディスカッションやオープンな協働作業、そしてOSTなどワークショップ型の楽しく深い、そして学校を超えた仲間が広がる宿泊合宿型になります。

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2023年4月23日 (日)

東京私学教育研究所情報(05)私学経営研究会(理事長・校長部会)第1回委員会開催

★先週4月21日(金)一般財団法人東京私立中学高等学校協会会議室で、私学経営研究会の第1回委員会が開催されました。同協会には。東京私学教育研究所(所長平方邦行先生)が設けられており、同協会が主催する研修会のサポートをしています。研修会は、経営領域、人材育成領域、教育課程領域などをカバーし、それぞれの研修会は、さらにその領域を細分化し、トータル55の委員会があります。研修会は、各委員会が年に2回から3回行いますから、年間の3分の1以上東京私学の先生方は(もちろん希望者ですが)研修で自己マスタリーと学校に持ち帰って教育のアップデートの議論の環を広めていくシステムになっています。私学経営研究会は、その55の委員会のうちの1つで、理事長校長部会が担い、私学の経営領域をカバーしています。

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(理事長校長部会委員長 高橋博先生:聖パウロ学園理事長・学園長)

★同部会は、毎月のように私学の経営の未来構想をし、そこから新しい教育関連制度、私学をとりまく経済状況とそれに伴うイノベーションの環境変化、組織開発、人材開発などを議論し、その時々の喫緊のトピックを見定め、研修会の企画を策定していきます。もちろん、それらの経営をする際に、学校のリスクマネジメントの実態、とくに近時の教育法化現象のケースメソッドの情報共有もしています。

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(一般財団法人東京私学教育研究所所長 平方邦行先生:工学院大学附属中学校高等学校前校長)

★同部会の委員長は高橋博先生(聖パウロ学園理事長・学園長)で、他に4名の校長と東京私学教育研究所所長の平方先生をはじめ、同協会のメンバーが5名の、全部で10名の委員で構成されています。

★昨年は、7月に小田原で宿泊研修を行いましたが、トピックは「学校におけるハラスメントについて」と「創造性を養う学びとプログラミング教育」の二本立てでした。リスクマネジメントと私学の先進性の領域の最新情報の共有をしたわけです。

★プログラムは講演&ミニWSと分科会におけるシェアリングが大きな流れです。分科会では講師の方と各委員がファシリテーターの役割を果たします。

★トピックが図で、WSとシェアリングが地ですが、ひっくりかえすとプロジェクト学習になります。参加者は理事長、校長、管理職などですが、現場の教師が行っている「主体的・対話的で深い学び」の授業も結果的に経験できるように同部会はデザインしているのです。

★私学の独自性、先見性、先進性を多角的にまた私学の知恵を結集して生み出すことを持続可能にする同部会の役割はとても大切ですね。5月21日、国際フォーラムで開催される合同説明会「Discover 私立一貫教育2023東京私立中学合同相談会」の申し込みも始まっていますが、同日比較で、1.5倍の速度で申し込みの方々が増えています。

★2023年も、私学の子どもの未来づくりのための教育インパクトは続きます。現場の教職員と理事会など経営陣のチームワークの腕の見せ所です。

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2023年4月19日 (水)

変わる私立中高(05)家庭科 探究学習のエンジン 田園調布学園の学園長西村弘子先生の思想に触れて

★田園調布学園の学園長西村弘子先生のお話をお聴きする機会を頂きました。西村先生は、校長時代から中高で多様なプロジェクトチームを先生方が生み出す環境を創ってきました。ご自身の礼法の時間でも、人間関係をウェルビーイングにするマインドセットという精神的環境づくりをWSを活用しながら行ってきました。今では、探究と教科横断型授業が学内に浸透しています。

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(写真は、同校サイトから。教科横断型授業のシーン)

★しかしながら、特段新しいとか革新的だとかいう気負いは、西村先生にはありません。それは、家庭科において、すでにホームプロジェクトがなされ、まさに探究学習のルーツの1つが、すでにおこなわれていたからです。

★西村先生は、家庭科のカバーする領域はとても広いのですと。世界をまるごと相手にしているようなものなのだという覚悟を感じました。最近行われるようになった金融教育やライフシフトを見据えたキャリア教育などは、時代の変化の中で、あるいは荒波の中で、協力しながら乗り切るにしても、自走できる生きる力を自分のなかに持っていなければならないのだという信念があるように感じました。

★お話を聴きながら、有形資産をどうつくるかその知識や情報はたしかに必要だけれど、最終的には内面にどれだけ無形資産を創出し蓄積できる自分という存在を生徒自身が作っていくかであるということでしょう。

★そのためには、よき環境、それはもちろん物質的にも精神的にもということですが、その環境を教師も生徒もデザインできる知恵を生み出すことなのだと。それには、体験や対話など相互の知のシナジー効果をうまく取り込むことでしょう。

★その一つの大きなエンジンが家庭科なのではないかと改めて感じました。

★西村先生の周りにはそのようなビジョンを共にする多くの学校の家庭科の先生がいます。ここから、学校はまた変わりますね。

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2023年4月14日 (金)

変わる私立中高(02)女子校と男子校のインターエンパワーメントの時代

★2023年の東京の中学入試では、男子校が全般に出願数を集めました。女子校も、ここ数年徐々に全体的な冬の時代を乗り越え、応募者をきっちり集める女子校が増えてきました。この動きは、もちろん、社会構造的なジェンダー問題がありますから、保護者の方は、自分たちなりにそれを乗り越えようと、女性のエンパワーメントを実現する教育環境があるところを求めているということもあるでしょう。

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(写真は、首都圏模試センターから。)

★一方で、シングルスクールは、ある意味共学校で起こる幾つかの問題をめぐる規制がない分、相対的に自由だという感覚もあるでしょう。その規制をどう乗り越えるかということは、共学ならではの重要な問題だし、それもまた成長につながります。つまり、シングルスクールかコースクールで成長のストーリー作りは違いがでてくるのは当然なのです。

★ですから、女子校と男子校の存在意義のベースには、社会構造的な問題以外に、成長のストーリーの作り方の選択多様性というものがあります。女子校、男子校、共学校という子供の成長ストーリー類型があるというのが東京の私立中高一貫校の特徴です。

★そして、昨今、男子校と女子校のジェンダー問題に関する協働プロジェクトが増えてきてもいます。桐朋女子と桐朋、昭和女子大学と駒場東邦、品川女子と芝のプロジェクトなどはその典型ですね。

※参照)首都圏模試センターの最新記事「品川女子×芝 男子校で女子校生徒が生理の授業」

★この動きは、1972年のローマクラブが報告した「成長の限界」のテーマでもありました。昨年同書の発刊50周年をうけて、ローマクラブは、当時の2100年までの経済社会の変動予想world3モデルをアップデートしてEarth for Allモデルで、2100年予想をしました。

★そして予想される悲惨なシナリオをウェルビーイングシナリオにするために、5つのトピックをすべてつなげ循環するようにする具体的な提案がなされています。その5つのトピックの1つが「エンパワーメント」です。特に女性のエンパワーメントを取り扱っていますが、この活動が、男性のエンパワーメントがおろそかにならないようにという視点も入っています。

★ですから、女子校と男子校の共創的なジェンダー問題解決のプロジェクトは時代精神とシンクロしています。

★そしてこの時代精神は、万人のための地球、つまりEarth for Allというグローバル市民自身の生活世界の中から生まれてきているものです。

★受験生の保護者も、もちろんその一員です。ですから、このような女子校と男子校のインターエンパワーメントの動きがあるところには、アンテナが敏感に反応するのでしょう。

★もちろん、時代精神は、生活世界の中で万人が意識しているわけではありません。このような私立中高一貫校の財政出動ならぬ教育出動があってこそ気づくものです。

★私立中高一貫校の教育活動は、私たちの生活世界でふだんあまり目に見えないものをパフォーマンスというカタチで可視化してくれています。同時にそれが見えた人の目には、魅力的な教育として映るでしょう。Think global, Act locally.というビジョン体現者が、中学入試を考える保護者でもあるのかもしれません。

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