教育イノベーション

2020年7月28日 (火)

新しいコミュニティの誕生(01)一つのリアルなコミュニティではなく多様なコミュニティがオンライン上で対話するコミュニティ

★昨年の末から不思議な出会いが不思議な経験を広げています。その出会いも、今日の不思議な経験もデジタル上で起きています。しかし、デジタル上で出遭うには、すでにコンセプトやアイデアや感情の共鳴音がリアルな世界ですでに響き合っていたという感じなのです。共意識は先行的に存在していたということでしょうか。

★中学入試に興味がありつつも、日本の教育システムの息苦しさを、自分の子供のためになんとかしようと仕事や活動をしている母親とのZoom対話でした。仕事と活動と言っても、いずれも教育や社会構造を変えようという行為なのです。出会った方々は、母であり、革新的な市民だったのです。

1_20200728141901

(この写真の背景に対話した方々の写真がありますが、そのみなさんの精神性は、モモやダライ・ラマ、内村鑑三、マザーテレサと共鳴する音を奏でるものでした。私も1981年にマザーにカテドラルでお会いしています。モモは1989年年以降ミヒャエルエンデのネバ―エンディングストリーが邦訳されてしばらく中学入試で注目されていた時期に読んで、これだと思いました。内村鑑三は2006年教育基本法改正のときに、麻布の前校長氷上先生と≪私学の系譜≫を語る時に再読しました。2013年21世紀型教育機構が本格始動した当時、機構の加盟校である八雲学園を訪れたダライラマ法王の取材に行きました。いずれも、今の私に影響を与えた精神でもあります。)

★革新的な母であり市民が議論する問いは、実に広い視野、深い洞察が必要なものばかりでした。たとえば、新しい未来を創る学校とはどのくらいあるのか?そのような学校の教育とは何か?自治体を巻き込んで新しいシステムを提言し実現するにはいかにしたら可能か?国に失望し、海外を拠点に新しい学びの共同体をつくっているが、どう拡散していくか?人から与えられた基準ではなく、子供が自分の基準を自分で創っていくにはどうしたらよいか?子供たちの未来を創ろうとする行為をサポートするシステムは可能なのか?

★私は権利の闘争を仕掛けている頼もしい母親であり市民ですねと表現しましたが、それは共感的コミュニケーションを大切にしている私たちにとっては共創的なアクションなのだと置き換えられました。極めて高い意識をもった母であり革新的市民なのですが、私たちのような考え方をもつ保護者はたくさんいるというのです。

★それぞれが、なんらかのコミュニティや団体で活躍したり新しい拠点づくりをしています。ある意味多様なコミュニティがパラレルに存在しながら、共鳴共感共振する自律分散協働系のコミュニティがオンライン上で対話しているといった感じです。

★1つのコミュニティにみんが所属するのではなく、それぞれのコミュニティで活動しながらオンラインコミュニティで対話する。新しいコミュニティの誕生なのかもしれません。主宰者はKさんですから、Kコミュニティと呼んでおきましょうか。

★Kコミュニティのみなさんは、自らの子供のために今の状況が適切なのかどうか、つまり、正当性・信頼性・妥当性を評価し、決してこれでいいわけではないと認識し、正当で信頼できる妥当な学校を探そうとしています。そして、そのためにこのようなコミュニティ対話をすることで、自分の子供のための教育を探すだけではなく、社会全体に目を向けています。

★眺めているだけではなく、それぞれの流儀で、意識をカタチにするスキルを駆使し、U理論やNVC理論、EQ理論などをそれぞれのパラレルなスモールコスモス生成に適用しています。

★未来の学校はどうやら、大学入試改革のためなどという制度上の大義名分に沿ううものではなく、このような母であり革新的な市民である心性を引き受ける教育を実践する役割を担っているということでしょう。子供たちの未来で困難に立ち向かう果敢な姿を想像すれば、私たちがそのくらいの責任を引き受けるのは当然のことでしょう。

|

2020年7月20日 (月)

2021年変わる中学入試(02)英語入試広がる。江戸川取手インパクト。実質新タイプ入試拡大後押し。事実上ニューリベラルアーツ化。

江戸川取手インパクト!が千葉エリアで!首都圏模試センターサイトによると、「来年の2021 年入試はコロナ禍による受験生に配慮した入試を検討しています。また、再来年の(現在の小5 受験生が挑む)2022 年入試は、全員に英語を課して、全回の入試で5 教科入試を行いたいと考えています。ただし、最初からハードルを高くしても受験生に負担ですので、あくまで小学校での学習プラスアルファ程度の英語力を求める、易しい英語から課していきたいと考えています」

Edogawatoride_01

(写真は同センターサイトから)

★今年は、小学校5,6年において、英語の教科化元年。今の5年生が卒業する2022年の中学入試では、2科4科に英語の入試問題が加わる学校が増えると予想されるが、その突破口をあけたのが江戸川取手です。

★すでに英語の入試は増えています。慶応湘南藤沢で国語、算数、英語で受験できる機会を設定して以来、中学入試市場の英語入試は広まりました。

★しかし、まだ国・算・社・理・英という教科入試はありません。江戸川取手が初めて旗を揚げました。このインパクトはすさまじく、茨城、千葉合わせて20校弱の公立中高一貫校が適性検査の中に英語を入れ込むきっかけを与えることになります。

★すでに埼玉の公立中高一貫校では、英語を取り入れているところもありますから、学習指導要領で教科化したわけですから、当然適性検査に盛り込むでしょう。2021年の早稲田大学政治経済学部の独自入試は総合型問題で、その素材文は日本語と英語の両方です。

★東大の推薦入試や京大の特色入試も、学部によっては、すでにそうなっています。

★東京、神奈川を中心に広がっている英語入試は、最初は難しいものではなかったのですが、近年は英検準2級以上を取得している生徒が増えています。将来増える可能性のある5科目入試や適性検査入試における英語のレベルも2025年までにはレベルは上昇せざるを得ないでしょう。

★そしてさりげなく、「2021 年入試はコロナ禍による受験生に配慮した入試を検討しています」とありますが、これはオンライン入試も射程に入っているということを示唆しているのでしょう。同校は、このコロナ禍にあってオンライン学習をきっちり実施してきましたから、パンデミック第2波第3波に柔軟に対応できます。

★かくして、英語入試は広がり、2科4科入試も3科5科入試にシフトしていくでしょう。そして、オンライン入試も増えていきます。これによって何が起こるのか?実はアクティブラーニングやPBL授業が増えていくことになります。

★なぜなら、英語のレベルがあがると、インディペンデントスピーチやディスカッション能力、エッセイライティングの能力が必要になりますから、英語の授業はアクティブラーニングやPBLにならざるを得ません。

★このレベルになると、受験英語ではなく、ランゲージアーツのレベルになります。英語でリベラルアーツに基づくランゲージアーツが行われているのに、国語科は旧態依然とした文学解釈授業をやっているわけにもいかないでしょう。英語と国語がランゲージアーツ化、つまりリベラルアーツをベースにするようになります。

★そしてオンライン授業のレベルがあがると、まるでアクティブラーニングあるいはPBL授業養成ギブスでも装着したように、対話やディスカッション、小論編集をやらざるを得なくなります。

★対話あディスカッション、小論編集には、哲学対話の方法論が取り入れようになります。そうしないとジレンマのエッジをクリティカルシンキングができないからです。

★結局、英語入試、オンライン入試、適性検査型入試、思考力入試などの新タイプ入試が主流になっていきます。

★そんな馬鹿な!と言われるかもしれません。しかし、もし2科4科、あるいは3科5科にこだわるのなら、麻布や武蔵のような入試問題を出題するしかないのです。両校のような基礎知識と深い思考力を問う問題を出題する教科入試は本道です。

★ところが、実際は、基礎知識を難しい知識問題にして出題する2科4科入試が多いのです。ですから、実は、麻布や武蔵の問題の基礎問題を難化させて出題しているのが、いわゆる2科4科入試で、両校の思考力問題を発展させているのが適性検査型や思考力入試などの新タイプ入試だったのです。

★ですから、江戸川取手のように、2科4科を保守するにしても英語を加えるという方向に向かうか、麻布や武蔵の思考力問題をベースにする適性検査型や思考力入試の新タイプ入試の2つの流れがウネリになります。

★しかし、先述したように、英語、オンライン、思考力といった流れは、リベラルアーツの流れに合流します。リベラルアーツと言っても、麻布が言うように「新教養主義」でなければなりません。

★つまり、GAFAや台湾のオードリン・タンデジタル大臣が希求しているように、ニューリベラルアーツの通奏低音がいよいよ大きく響き始めてきたということでしょう。

★時代の通奏低音は、その響きが舞台で響き始める前に聞こえる人と聞こえない人がいます。時代の先見性や先進性を有している人は、その音が聞こえます。

★知の最前線を子供たちと共有しようという学びの場を創っているところでそれはそうなります。入試の中でも中学入試市場は、知の最前線の成果に高感度なアンテナを張り巡らしています。学校だけではなく、保護者もそうです。

★思考力入試ベースの高校新クラスをつくっている聖学院インパクト、ラウンドスクエアに加盟して世界のエスタブリッシュスクールとの共同体を創っている八雲インパクト、新しいタイプの世界のエスタブリッシュスクールの共同体に加盟した巣鴨インパクト、高校生市民がデジタルベースでオーセンティックに大活躍する工学院インパクト、そして中学入試で初の5科入試を行う江戸川取手インパクト、SDGsの運動体を中高生が生み出している和洋九段女子インパクト。中学入試市場は沸騰し始めました。

★ここでいうインパクトとは、市場に貢献する=世界に貢献することです。偏差値があがって、どこの学校も真似できない教育を造ったあ!と自己完結型のリバタリアン学校は論外です。

 

|

2020年5月23日 (土)

オンライン授業進化論(06)ハイブリッド時空教育へシフトの意味 パラダイムシフトの時代

★アフターコロナとかポストコロナとかいうとき、私の場合は、道具立てが変わったり仕事の種類が変わるときには、アフターコロナを使い、パラダイムシフトが起きるコンテクストの時には、あるいはそのコンテクストの生まれるのを期待する時にはポストコロナを使っています。

★第4次産業革命とかいうけれど、本当は脱産業革命というパラダイムシフトが起きるというのがAI時代だと思っています。というのは、第一次産業革命からこれまでは、イノベーションはあったけれど、化石燃料を活用するという点では、パラダイムシフトは起きていなかったと考えています。AI時代は、脱化石燃料です。脱自然光合成です。

Pbl_20200523173701

★SDGsはこのパラダイムシフトを新たにグローバルゴールに加えなくてはならないでしょう。これによって、私たちは働かなくても食べていくことができるようになります。奴隷→労働→創造というのが、仕事の土台のパラダイムシフトです。このような大きなウネリが今回のオンライン授業の突き抜ける向こうにみえてきます。

★詳しくは、歴史家や社会学者、文化人類学者、政治経済学者にお任せしますが、20世紀初頭に、マックス・ヴェーバーがみた近代国家の完成への道は、合理的で計算可能な法技術と行政と税金・勘定システムの完成ですが、もう一つヴェーバーが忘れなかったのは、自由契約の労働組織を創り出す科学技術=生産手段でした。

★自由主義的労働は、あまりに効果で資本がないので、科学技術=生産手段を自分では持ちえないから、その手段を企業から借りながら、でも奴隷ではなく、自分の能力と等価交換し、それ以外は契約に縛られないという自由度があったわけです。

★しかし、AI時代に向けて、オンラインベースのワークが成立していくと、ICTを自分の生産手段とできる労働は、かなり自由度が高くなるわけです。

★そういう意味では、産業革命以来の近代経済システムの中で相対的自由度が高くなります。GAFAのの中にはノマド的なスタッフもいるようですが、それはそういうことです。しかし、その生産手段であるICTという科学技術は、化石燃料にまだまだ依存していますから、完全に解き放たれているわけではないのです。

★しかし、オンライン授業が広まり、サイバー上とリアルの両方で学ぶようになると、デジタルネイティブであるZ世代が、感じるのは、リアルな経験のすばらしさと同時に、サイバー上と比較しての相対的不自由さです。

★ハイブリッド軸でのPBL学習は、ここに根源的な格差社会の問題に気づく景気をつくるでしょう。不自由さを生み出す根源的問題は化石燃料の使用権や販売権が独占されているからだということに。

★しかし、その化石燃料は環境を持続可能にするには、欲しくもないわけです。ここに根源的な矛盾が存在します。人間の生活をだいなしにする化石燃料を欲しくもないのに、使わなくてはならないのですが、しかも自由に使えないというトリレンマです。

★ところが、ようやくそこを突破できるイノベーションが生まれる可能性があります。すでに実現しようと思えばできるのですが、そこには大きな大きな利権の壁があるでしょう。この壁をいかに突破できるのか、根源的Big Questionです。そこに立ち臨むのがPBLの本意です。

★しかし、まだそこに気づいている人はあまりいないし、気づいていてもそこはスルーするというのが、ポストコロナという言葉よりもアフターコロナが流行る理由の1つでしょう。

★本当にSDGsを考えるのであれな、このBig Questionにチャンレジするでしょう。チェンジメーカーになれと叫んでいる経産省が、本当に旗を振りますかね。マックス・ヴェーバーがみた合理的で計算可能な法技術と行政システム、税金・勘定システムが崩れてしまうのですから。それを覚悟で勝海舟みたいな生き方をする官僚がいてくれることを期待しています。

★どうなるかはわかりませんが、オンライン授業進化ステージ5に到達したオンラインPBL授業の環境にある生徒は、緊急事態宣言解除後、リアルな授業とサイバーな授業のハイブリッド時空教育を受けることになりますが、マックス・ヴェーバーが見た近代社会とは違うもう一つの近代社会を構想した同時代人ウイリアム・モリス(モリスの方が30歳年上だが)のアーティスティックなユートピアを築いていくでしょう。

★≪私学の系譜≫が理念に掲げていたのは、ベラミーではなくモリスの近代社会と親和性があるはずです。

|

2020年5月22日 (金)

オンライン授業進化論(05)東大・早稲田・慶応義塾のオンライン授業の進化ステージ格差の意味

Business Insider Japan(May. 22, 2020, 05:00 AM)に「【徹底比較】東大・早稲田・慶應、大学間比較で見えてきたオンライン講義の真の実力 戸田 彩香 [編集部インターン] and 三ツ村 崇志 [編集部]」という記事が掲載されています。あくまでも、この記事にある情報に基づいた限定的な話ですが、3者の大学のオンライン授業の進化ステージのポジショニングを、「オンライン授業進化論(02)オンライン授業進化論リーダーの登場」で公表した図で見てみます。

Onlinestage

★東大は、Zoomも使い、対面双方向型オンライン授業を行っています。デバイスやプラットフォームは、その使い方をチャットbotでサポートさせているので当然使っているでしょう。どんな課題が配信されているかわりませんが、専門的なアカデミック教科でしょうから、専門知識と論理的に思考する講義や問いが中心でしょう。ステージ4.0まで行っていますね。

★早稲田大学も、ZoomとWaseda Moodleを活用しているので、東大と同様のステージにいるでしょう。東大との違いは、通信環境サポートに関して、金は出すけど、丁寧なサポートがないということでしょうか。トラブルはありそうだということですが、まずはステージ4.0に位置します。

★慶応義塾大学は、意外でしたが、オンディマンドで対面双方型オンライン授業はしないということのようです。知り合いの大学院生はZoomでやっているので、大学と大学院との差はなんでしょう。これは実は、課題の次元の違いです。大学院は、専門知識やそれを活用した論理的思考は当たり前で、その先の批判的思考や創造的思考の高次思考を活用します。修士論文や博士論文を創り上げることが目標なので当然です。

★そういう意味では、明快に慶応義塾大学のオンライン授業は、ステージ3.0に位置します。オンライン授業準備の補助金も支給されていますが、プラットフォームで配信するだけなので、特別な使い方の説明はなさそうです。

★意外にもといいましたが、実は、知識・理解・論理の思考次元だと、ステージ3.0までで十分だという慶應義塾大学の経済合理性がどうも理に適っているかもしれません。

★個々の講師のITスキルや環境の格差はいろいろあるでしょうが、慶應義塾大学当局のスキルや環境は、東大や早稲田に劣っているわけではありません。議論やゼミをやるのでなければ、大騒ぎしてステージ4.0や5.0をやる必要はないという合理的な考え方でしょう。

★これに対して中高一貫校の中には、ステージ5.0を軽やかに実施している学校があるわけです。

★そのような学校からは、多くの卒業生が海外の大学に行っています。しかも世界大学ランキング200位以内にです。海外の大学は、当然思考次元は批判的思考と創造的思考は大前提です。中高時代にトレーニングしてくることを求めています。そういえば、早稲田や慶応大学は世界大学ランキング200位内にははいっていません。たかがグローバルランキングですが、されどグローバルランキングというのが明らかになりますね。

★今回、小中高大とオンライン授業を行うことによって、実はオンライン授業の通信環境やデバイス環境、スキルの状態などの違いよりも、どこまでの思考次元を学ぶ環境を持っているかという学びの思考次元の違いが明快になったということなのでしょう。

★海外の何がいいかわるいかではなく、どこまで高次思考を学ぶかどうかを日本の教育は議論したほうがよいですね。端的に言うと、海外との思考次元のギャップは放置しておいてよいかということです。

★もはや大学のブランドではなく、思考の次元をみたほうがよいですね。それは小中高のカリキュラムポリシーも同じことが言えます。ポストコロナ時代、今までの知識暗記中心でちょっと論理的思考も学ぶで果たしてよいかどうか。考えればすぐに了解できそうなものですが。

|

2020年5月21日 (木)

オンライン授業進化論(04)まだ見ぬ自己変容を生み出すIN-OUTシート!児浦先生の戦略的思考!

★氷山モデルの水面下の授業の質や教師や生徒の想いを見える化して自己変容型マインドのケミストリーを生み出してしまうオンラインPBL授業の<学習する組織をマネジメント>。それを実践する工学院の田中歩先生の教育出動について前回ご紹介しました。

★今回は、実は同じことを、別角度から生み出してしまう聖学院の児浦先生の戦略的思考の1つ<IN-OUTシート>についてご紹介しましょう。

Inout

★児浦先生は、「今日から使えるワークショップのアイデア帳 会社でも学校でもアレンジ自在な30パターン – 2020/4/13 ワークショップ探検部 (著), 松場 俊夫 (著), 広江 朋紀 (著), 東 嗣了 (著), 児浦 良裕 (著)」の著者の1人。先日、編集チームと著者がコラボしている「ワークショップ探検部」がオンライン読書会『ワークショップのアイデア帳』を開催しました。私も参加。氷山モデルやジョハリの窓に時間軸を加えてさらに発展させた「IN-OUTシート」のオンラインワークショップ読書会をワクワク堪能しました。

511wj3diqcl_sy346_

★シートの要領については、ぜひ同書をご購入いただき、ご覧ください。

1_20200521191201

★このシートを個人で活用するだけなら、リアルな授業でもできてしまうのですが、オンラインPBL授業で活用すると、まだ見ぬ自分どうしが自己変容を生み出す大きな契機を生み出すのです。

★過去―現在―未来というクロノス時空がOUTの行です。そして、過去のINが常に未来へ向かっては現在に還っていくカイロス時空が脳内で展開するのです。それ自体INです。しかし、それがブレイクアウトルームやグーグルクラスルームで共有されれ、ポートフォリオとしてデジタル化していくと、クロノスとカイロスの生み出す波や響きやあるいは竜巻の時空が自己変容を生み出していきます。

★INの部分は暗黙知だったり、氷山モデルの水面下だったり、フロイドモデルの無意識だったり、ジョハリの窓の自分だけがわかっている領域だったり、ピアジェの経験領域だったりするのです。これを見える化したり形式知化したり、超自我視点に置き換えたり、共感的コミュニケーションの場にしたり、図式化したり、システム化したりするのがOUTの共有ですね。

★リニアな時空であるクロノスとサイクル時空であるカイロスが共鳴音をだしてトルネードや波動を生み出す感じです。自己変容のロゴス化だとか形式知化だとか見える化だとかがおこるわけです。

★田中歩先生の共感的コミュニケーションによる<学習する組織マネジメント>や児浦先生の戦略的思考の<IN-OUTシート>が、オンライン授業の進化ステージの上昇気流を生成するわけです。

★ちなみに、同書は、30のパターンを掲載しています。目次は次の通りです。

 Part 1 アイスブレイク編
01 氏名と使命|互いをもっと深く知る自己紹介
02 心の状態チェック|自分の心と体を整える
03 忍者伝言の術|体を使ったゲームで伝達を学ぶ
04 サークルジャンプ|手をつないで結束を固める
[COLUMN]最初に場を温めることが欠かせないワケ

Part 2 ベーシック編
05[組織強化]協働オブジェ制作|理想のチームを考える
06[組織強化]STOCSタワー|成果を生むチームをつくる
07[組織強化]サークルトス|経験を通して学習する
08[アイデア出し]M&M'Sドローイング|自分の固定概念から離れる
09[アイデア出し]スピードストーミング|成果を生むブレインストーミング
10[アイデア出し]フィールドダイアログ|自然の叡智から起こすイノベーション
11[アイデア出し]問題解決カード|アイデアのかけ合わせで新発想を生む
12[アイデア発展]ストーリーテリング|他者から共感・共創を引き出す
13[アイデア発展]5P CHANGE|アイデアを絞り込み、検証する
14[キャリア開発]IN/OUTシート|自分リソースの棚卸しと将来計画
15[キャリア開発]偉人に学ぶ|リーダーのあり方を考える
16[キャリア開発]14のリーダーシップ|自分と他者のリーダー特性を発見・共有する
[COLUMN]ワークショップで大活躍するツール

Part 3 アドバンスト編
17[多様性]価値観ベスト3|価値観の違いを認め合う
18[多様性]卓上ゴールボール|ダイバーシティの理解を深める
19[多様性]異文化コミュニケーション|文化の異なる相手との意思疎通
20[組織再編]トーキング・サークル|新組織のビジョンに意識を統一
21[組織再編]リーダーズインテグレーション|リーダーとの意思疎通と結束を図る
22[組織再編]コラボ・ペインティング|チームの気持ちを1つにする
23[業務改善]ビジョンチャート|ブレずにプロジェクトを進行する
24[業務改善]アクションコード|プロセスを分解して改善する
25[業務改善]簡易プロセス分析|ボトルネックを見つけて解決する
26[社会課題]つながりとシステム|SDGsを自分に結びつける
27[社会課題]課題解決スキット|新しい社会像を思い描く
28[社会課題]バックキャスティング|SDGsをアクションに落とし込む
[COLUMN]会議室にとらわれないワークショップ

Part 4 リフレクション編
29 Yチャート|WSの学びを今後につなげる
30 ハンドエンゲージメント|参加者全員で学びを共有する
[COLUMN]ワークショップのクロージングで重要なこと

Part 5 Q&A
1.会場の選び方は?
2.事前にどんなアイテム準備が必要?
3.WSを行うときの最適な人数は?
4.席の配置はどうすればいい?
5.チーム分けはどう決める?
6.異年齢や異階層のWSでの注意点は?
7.子ども向けのWSでの注意点は?
8.参加者の心をつかむにはどうすればいい?
9.ファシリテーターとはどんな存在であるべき?
10.参加者のグループワーク中、ファシリテーターは何をしていればいい?
11.参加者のモチベーションが下がっているときはどうする?
12.ファシリテーターが使ってはいけない言葉は?
13.参加者が混乱してしまったら、どうリカバリーすればいい?
14.50人を超える大人数でWSするときは?
15.WS後のフォローアップやアンケートなどは必要?
16.WSの役に立つ参考書籍を教えて!

|

オンライン授業進化論(03)オンライン授業進化が学びの質と未来教育の質感を見える化

★オンライン授業進化論リーダー(OLEリーダー)と対話をして、気づいたことは、OLEリーダーの各学校で、今まで見えなかった教師一人ひとりの授業の質が見えるようになり、かつプラットフォームやオンライン会議システムによって共有ができるようになったのです。オンライン学校説明会で、その様子を受験生・保護者と共有するまでになっています。

★つまり、従来は、見える部分は、どんな教材を使っているのか、どのくらいの数のオリジナルプリントを作成しているのか、模擬試験の結果をだせたか、生徒が理解を深めているかなどぐらいしか見えなかったのですが、オンライン授業後は、教材をどのように活用しているか、プリントではどんな問いまで提示しているのか、模擬試験以上に生徒の総合的な成長や変容がどうなっているのかまで見える化できるようになったのです。

Photo_20200521111301

★だから、同じ単元の授業を担当する教師は、互いにオンライン授業のどのあたりのステージにいるのかが共有できるわけです。前回ご紹介した「オンライン授業のステージ」は、教師の能力の問題ではなく、あくまでも生徒の発達段階の共有です。同じ単元でも、受動型の生徒と自己変容型の生徒では、学びの環境のマインドセットを変えなくてはなりません。

★そのうえで、どんなスキルが必要なのか個別最適化の学びの環境をデザインしていくわけです。それには生徒の多角的な情報共有が必要になるのです。もちろん、受動型生徒を能動型生徒にシフトしたり、能動型生徒をさらに自己変容型にシフトするには、教師の力量やスキルもありますが、それをお互いに切磋琢磨できる学習する組織づくりが、このプラットフォームとテレビ会議室の活用で可能になるのです。

★これについては、「ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(16)田中歩先生の工学院オンラインマネジメント <メタ共感的コミュニケーション×メタ戦略的学び>③」などで書かせてもらいました田中歩先生の共感的かつ戦略的学習する組織のマネジメントが参考になりますね。

3_20200521112501

★氷山の一角としては、7つのポイントが見えるわけです。しかし、これだけでもすごいのですが、オンラインPBL授業の学習する組織をつくることを通して、見える部分と見えない部分の境界線が越境出来てしまったのです。今まで見えなかっただけで暗黙知としてあった部分もありますが、それは個々の先生方によって分断されてそこも見えませんでした。

★だから、今回のオンラインPBL授業の学習する組織は、見る部分と見えない部分を分断する境界線、先生同士のそれぞれの暗黙知を分断していた境界線をダブル越境したわけです。

★そうすると7つの要素を生み出すエネルギーは3の8乗サイクルを掛け算するのです。7×3の8乗です。莫大な量のつながりが、今までと同じ時間の中でビッグバーンを起こしているのです。熱量はものすごいことになっていますね。ハイクオリティとは一定時間のサイクルの乗数の爆発的な化学反応によることの実感を先生方も生徒も抱くわけです。そして、その化学反応はさらなる暗黙知を生み出します。それは、まだ見えていません。醸成されたときに再び見える化され共有されるでしょう。化学反応はこうして止むことがないのです。

★アフターコロナで、元に戻ることがないというのは、リアルとオンラインのハイブリッドになるという意味の本質を忘却してはいけないということです。この分断線の越境による化学反応を止めてはいけなということこそが本質的意味でしょう。もっとも、「いけない」ではなく、当然価値あるものが残るのは歴史のセオリーです。

|

オンライン授業進化論(02)オンライン授業進化論リーダーの登場

★オンラインPBL授業のもっとも先進的な取り組みを自身実践しながら、学校全体のオンライン授業マネジメントを行っているという意味でリスペクトしている先生方がたくさんいます。この両面を実現している先生方は、チームや組織の様々な葛藤やダブルバインドという精神のひっ迫状況をポジティブシナリオプランニングで乗り越える知恵と精神というコンパッションを有しています。ポジティブかネガティブかは、運命ではなく、意志の力だと私は思っています。

Photo_20200521065601

★その両面の知恵と勇気と高感度未来質感を有している先生は上記の写真にある通りです。そして共感的コミュニケーション能力と戦略的アクティビストですね。この間Zoomで長時間対話をさせていただきましたし、これからもさせて頂きたいと思っています。オンライン授業進化論のメモを書いていこうと思ったのは、彼らの知恵や勇気、高感度未来質感、共感的コミュニケーション能力、戦略的アクションについては、ホンマノオト21のいたるところに散りばめられているのですが、一つのトピックでまとめていないのは、もったいないと思ったからです。

★彼らのガイスト(マインドとかスピリットを包括するドイツ語)は、人類の財産です。内村鑑三が後世に残す遺産と称したガイストを継承する先生方ですから、彼らとの対話を通して、残念ながら、私の独断と偏見と稚拙なフィルターで表現せざる得ないのですが、感じた内容をホンマノオト21をご覧になっていただいている皆様と共有したいと思っているのです。

Photo_20200521070601

★かくして、まずはオンライン授業進化論のリーダー5人と対話して、イメージがまとまったのは、上記のオンライン授業のステージの図です。

★今、外出自粛で子どもたちの学びを続けようとしても、なかなかうまくいかない。課題学習プリントの山をしり目に学びの意欲がわかないという話題をメディアは取り上げています。

★しかし、それは、すべての子供ではありませんし、その子供のせいでもありません。そのような受動型の学びを子供たちが行ってしまうのは、そのような学びの環境にあるからです。

★オンライン授業進化論のリーダー、長いのでOnline Learnning Evolutionary Leaderのイニシャルをおって、OLEリーダーと呼ぶことにしましょうか。OLEリーダーも、すべての環境を一気に自己変容型の子供が生まれるオンライン授業にできるわけではないので、そうなるように俯瞰しながら、いまここでの臨床的活動をしています。

★生徒が、パッシブの心的状況、アクティブな心的状況になるのは、学びの環境の影響を受けています。環境の影響を受けている間は、受動的な言動と能動的な言動を行ったり来たり安定しないでしょう。自分と興味と関心のあるものに出会ったとき、能動的になるのは私たちは経験済みです。

★しかし、そんな環境が常にあるわけではありませんから、どうしても抑圧的コミュニケーションになります。成績で縛るという外発的モチベーションを振りまわすことになります。

★OLEリーダーは、この環境を脱しようと組織変革に日々努力しているわけです。上記のオンライン授業ステージでいけば、OLEリーダー自身は自ら自己変容型の段階のオンラインPBL授業を行っています。

★生徒が自己変容型の段階に至ると、いかなる環境でも、自分の思考や感情、行動を突き動かすミッションを見出せます。興味と関心への志向性がそこに存在する根源的な問題を発見する構えにシフトしています。

★放置しておいても、自分でサバイブしたり社会貢献する活動を行うでしょう。実際にOLEリーダーの周りには、Zoomのホストになって、越境的なあるいは起業家的な活動をしている生徒がたくさん生まれています。

★OLEリーダーは、このような自ら経験値を高めてきて生まれた実践知と理論知を、組織内で共有しようという共感的コミュニケーションと戦略的アクティビティを日々駆使しているのです。

★おもしろいことに、オンラインPBL授業は、PBL進化論でもあるという気づきもありました。興味と関心がなくても、そこに新たな興味と関心を生み出し、さらに根源的な問いを発見し、探究していく自己変容型の生徒が生まれる源泉はPBL授業という環境設定が大切だということも強烈に確信できているのです。

★そしてこのオンライン授業の進化のステージは、さらに次のステージがあります。それは、前回のイメージ図にある新社会構想力に昇華するということです。ポスト・コロナは教育が社会や世界とダイレクトに結びつき、そのことによって新しい世界制作の扉を開くことになります。

★OLEリーダーはそのようなミッションを引き受けています。もちろん、それは内側から湧き続ける豊かで頼りになる清涼な息吹です。OLEリーダーの登場。ポスコロナ時代のリーダーでもあります。

|

2020年5月17日 (日)

オンライン授業進化論(01)コロナ禍からポスト・コロナのイメージ

★緊急事態宣言がでて一斉休校が続く中、あるいは解かれても完全に元に戻ることができない中、オンライン授業だとか遠隔授業だとかリモート授業だとかいろいろな呼び名でメディアや学校、教育関係者は語っています。SNSでも多様な発信があります。それだけ関心があることは、教育や学び、何より生徒に対する熱い思いがある現れですから、大いに語り合えばよいと思います。その中の1人として私もブログに書き込んでいるわけですが、そろそろオンライン授業を整理するシンクタンクやメディアもでてくると思います。そのような考え方と私自身の考えを対照してズレをリフレクションしていくためにも、「オンライン授業進化論」を徒然なるままに書き込んでいこうと思います。

Photo_20200517173101

★いろいろな方と話していると、やはりWebやWifi、デバイス、プラットフォームの種類や使い方の話が多いですが、少しずつ通常の授業とオンライン授業のデザインの違いや質の違いについての議論も多くなっています。

★不足しているのは、そのオンライン授業で生まれる生徒の能力が何に結びつくのかという話ですね。大学受験に結びつくでもいいのですが、その大学受験の学びが将来何に結びつくのかという話です。

★良し悪しは別にして、文科省が大学入試改革のヒヤリングに高校生の参加を求める時代です。高校卒業させればそれでよいという時代では少なくともないでしょう。

★欧米はキャリアガイダンスとかキャリアデザインというと、高校から社会で働くまで、いやその先の生涯学習までの制度設計の話になりますが、日本は、高校卒業までの話がほとんどです。高校から社会で働くときに、すぐに役立つスキルを、今ままではあまり考えなくてよかったですね。大学に進学する場合も、受験に合格するまでのスキルで、それがその先のどんなスキルに結びつくのかほとんど考えられてこなかった。スキル悪玉論が支配していたと言っても過言ではないでしょう。

★しかし、今の高校生は、世界同時的コロナ禍にあって、目の前で社会の中から無くなる仕事があることを見てしまっているのです。30%前後はなくなると言われてきましたが、それが現実のものになっているのです。今学んでいることが何かわからないけれど役に立つだろうという根性論的な学びが、もはや役だたないかもしれないのです。

★かりにオンディマンド授業を行っても、その教科書知識をドリル的にトレーニングをして何になるのだろう?という現実的な疑問がわかないほうがおかしいですよね。もちろん、教科的知識を通して何を学ぶのかという話とその知識を暗記するという話は全く別次元の話です。

★ともあれ、そんなオンディマンド授業やるぐらいなら、麻布のように世界を考える時間に読書でもして費やした方がよほどよいわけです。アクティブラーニング的なオンライン授業をやろうが、探究をやろうが、今目の前で傾きかかっている社会を修繕するスキルを学ぶというのもなんだかなあとなります。なぜ崩れるのかそのシステムやメカニズムを知るスキルが今必要でしょう。

★しかし、多くの場合、授業がなければ、そんなことはしない。でも授業をしても役に立つのか?役に立つかではなくて価値が大事だ!でもそういわれてもそれは生きていける価値なの?不安に不安を乗せて不安の屋上屋を重ねていくのはあまりに酷すぎます。

★そこで、対面型のオンライン授業にしようとしても、なかなかモチベーションがあがらない。何になるのかわからないことをやるのは同じだからです。わからないこと解明するのが学びなんだと、このコロナ禍で言えますかね。リスクが何であるかは今はわからなくてよいのだと言えますかね。

★結局オンライン授業で学ぶスキルやアビリティやナレッジが一体何に結びつくのか明快に論じられないのがコロナ禍です。そこで、ポスト・コロナの新社会構想を考え実装する新しいスキルやアビリティやナレッジを創りだすオンラインPBL授業を創るのなら、希望が見えてくるのではないでしょうか。今後しばらくリアルとオンラインのハイブリッドになります。

★根源的な問題や本質的な問題ではないかもしれません。しかし、現実欧米は、すでにそういう教育と仕事と社会と自然の循環を具体的に構想し始めています。制度設計を試行錯誤しています。欧米がやっているから我が国もやらなければならないとは何事かあ!と言われる方もいらっしゃるでしょう。私は少なくとも自分の子どもや孫、そのまた孫、そのまた孫の孫・・・・をあなたといっしょに沈ませたくないと断固思います。

|

2019年12月21日 (土)

<新しい学びの経験>を創る教育改革が現場で起こらざるを得ない3つの防壁

★もはやこのままの人材教育では、日本の国力は衰退するばかりであることは周知の事実となってきました。にもかかわらず、<新しい学びの経験>を創り出し内生的成長を果たす人材教育投資を邪魔する動きもまだまだあります。もっとも、日本では、アダム・スミス以来の経済の新しいパラダイムを生みだしたポール・ローマーらの内生的成長論は今ようやく光を浴びはじめたばかりですから、それもやむを得ないでしょう。

51adwjlmjsl_sx344_bo1204203200_

★上の写真、デヴィッド・ウォルシュによる内生的成長論に向かう近代経済学史の本は、2007年に出版されたもの。それが今ようやく邦訳されるのですから、日本の政治経済社会に対する見識がいかに遅れているかがわかります。

★本書を読むと、1930年代に経済学の拠点がイギリスから米国に移ったときに、「数学は言語である」というテーゼが一世を風靡して、今に至るということが書かれていますが、今世界でも注目されているSTEAMと教育界でいわれているのは、当然この流れがはいっていますが、STEAMを教育と政治経済社会の関係で捉える教育関係者が日本ではあまりいないために、なかなか<新しい学びの経験>を創出する教育改革が進まないのは当然といえば、当然なのでしょう。

★日本では未だに英語を教育することが教育改革なわけです。でも世界は、そこはすでに済んでいます。多言語から出発できてしまっているのです。日本はまだ母語が大事だとか愚かなことを言っている人もいます。もちろん、母語が大事なのは当たり前です。

★世界でも母語教育は当たり前です。フィンランドなどでは、多様な民族が学んでいますが、公教育でたとえば、日本人が一人でもいれば、その子のために日本語の講座が用意されます。母語の環境も作りながら、フィンランド語や英語を学んでいくわけです。

★だいたい言語の問題は、世界では、戦争と平和の大きな問題であり、命がけの問題です。今の日本では、受験では日本語で考えるのだから、母語である日本語が大事だなどという、グローバルイシューから見れば、何を言っているのかわからない低い見識の理屈がまかり通ています。とても、世界市民と協働してやっていける見識はないのではないかと驚いてしまいます。

★母語も英語もやるんですよ、しかし、そのうえで次に進まないといけない時代なんです。日本が孤立して生きていけるのであれば、それでよいかもしれませんが、すでに自給率も低く、世界との交易が途絶えれば、日本人は生きて行けません。

★ともあれ、世界は知識を大事にしていますが、その知識は新しい知識を創ることを意味し、既存の知識をどれだけ記憶するかということではないのです。そして、アイデアを重視します。アイデアは思い付きから始まり、実現するまでに成長していきますが、日本では、思い付きはダメだの一言で、イノベーションへの芽を摘んでしまいます。対話も議論もないからそうなるのですね。

★経済成長は、新しい知識を創れる人材教育、アイデアを拡散できる人材教育、イノベーションを起こせる人材教育が必須です。そのために<新しい学びの経験>を無限に創っていくのです。ただ、自由な雰囲気だけではそうはなりません。自由な雰囲気とプログラムが必要です。

★そこで、日本は、学校教育法を改正し、学力の3要素まで条文に刻み込んだのです。法律で学力とは何かを決めなければ機能しない国であることに驚きはしますが、心ある方々が仕掛けたのでしょう。

★学力の3要素とは、いまでは当たり前になっている「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「主体的に学びに向かう態度」ですが、ここに、教育改革を阻止する保守勢力に対し、防壁を3重にして、なんとか教育改革を前に進めていこうとしたのでしょう。

★この3要素中で、まずやらないという抵抗をうけるのが、「主体的に学びに向かう態度」の評価です。評価をしないのですから、口では「主体性」は大事だと言いながら、それを育てる学びのプログラムは創らないのです。これによって、新しい知識・アイデア・イノベーションを創る回路は一つ消えてしまします。

★しかし、ここをやろうとする学校も出てきますから、なんとか新しい知識・アイデア・イノベーションを創る道は細々と続くのです。これが第一の防壁です。

★いずれにしても第一の防壁は90%は保守勢力に破壊されてしまうでしょう。それでも「思考力・判断力・表現力など」はなんとか保守勢力もやるでしょう。しかし、思考力と言っても、論理的思考力のお話であって、批判的思考と創造的思考は評価できないとしてやらないところがほとんどでしょう。かくしてこの第二の防壁も60%は崩されます。

★しかし、密かに判断力と表現力が盛り込まれています。これは、たぶんわからないまま、論理的思考力と相まってやることになります。保守勢力がわからないままやることによって、防壁の自然回復が生まれる仕掛けです。というのも、判断力と表現力は実はアートの領域もあります。ICTと数学は論理的思考の枠内でやりますから、これにアートが加われば、無意識のうちにSTEAMの基盤はできていくのです。100%自然回復することはできませんが、50%までは回復し、なんとか持続可能にすることはできるでしょう。

★そして、「知識・技能」というのが第三の防壁です。これもまた、保守勢力は、「知識」をICTなどの「技能」によって依然として定着だとか沢山記憶するという作業に集中させるでしょう。しかしながら、この「技能」こそ無意識のうちに潜ませるアートの真骨頂なのです。

★アーティストは、新しい美術作品は新しい技術を自ら発見・開発して挑みます。美学という哲学的素養とテクネ―としての技術はアートでは表裏一体なのです。あのパルテノン神殿は芸術的価値はもちろん高いですが、建築学的技術、工学的技術、石材という知識などテクネーの部分がなければ存在しません。

★このアーティストの知を美術館に陳列して閉じ込めているのが、従来の日本の教育でした。欧米の工学系の大学は、学部の中に芸術学部が併存しているのに、日本ではそんな工学系の大学はないですよね。

★しかし、学校教育法は、第三の防壁として「知識・技能」という誰しも疑わず、すんなり授業で実施する学力を盛り込んだのです。これにICTが結びつけば、なんとかSTEAMの教育の基礎はできるのです。それでも、知識を暗記させるだけで、ICTを使わないところも出てくるでしょうが、生徒の方がICTをどんどん使っていくでしょう。

★こうして、満身創痍になりながらも3つの防壁は、保守勢力による教育改革全面阻止を免れることができるでしょう。

★そして、保守勢力は世代との相関が強いですから、あと5年もすれば、その勢力は放っておいても総崩れになるでしょう。

★そのときまで、日本の国力が持ってくれるかはわかりませんが、起死回生の技術革新は、すでに日本では水面下で行われているので、なんとかなるのではないかと希望はあります。もっとも、これとて、資金力にものをいわせ、米国や中国に買収されてしまう可能性の方が大ですが。そうしたら、また新しいイノベーションを起こせばよいのです。そのための<新しい学びの経験>を創る環境を生成し続けましょう。

|

2019年11月17日 (日)

成蹊 学びの本質「体験」を大切にしている。

★読売新聞オンライン2019年11月14日に、成蹊中学・高等学校の記事「多様な体験学習で自らを知り、夢をつかめ…成蹊」が掲載されています。同校の学びの本質「体験」を大切にしているコンセプトとその多様な具体的なケースについて、詳しく記述されています。ぜひご覧ください。

Photo_20191117092401

(写真は、成蹊のサイトから)

★そのコンセプトについて跡部清校長先生の言葉が掲載されています。とても大切なので、ここでも引用しておきます。

「本校の建学の精神は『個性の尊重・品性の陶冶・勤労の実践』です。この『勤労の実践』を言い換えれば、体験を通して学んだ価値観を基に他者貢献するということです。生徒たちには、機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」

★おそらく、成蹊の先生方は、最近の革新的な教育において、<新しい学びの経験>を創るコトが大切だと叫んでいることは、何をいまさらと思っていると思います。もちろん、同校の先生方は品格が卓越しているので、そのようなことを主張することはまずありません。

★しかしながら、静かに、跡部校長が語る言葉の中に、成蹊は<新しい学びの経験>を創り続けてきたのだなあということが了解できます。たとえば、上記の引用部の中のにある「機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」という言葉がそれです。

★体験を通して日常では感じたことや見たことがないようなことに直面するわけです。そのとき、いったいこれは自分にとって他者にとってどういうものなのかと<跳ね返って>くるわけです。これによって、新しい自分の変容が起こるというわけですね。この<跳ね返り>とは、<新しい学びの経験>の学習理論でもとても重視されている<リフレクション(振り返り)>ということと同意でしょう。

★学校の役目は、こうした体験の場、つまり<新しい学びの経験>を設定することなのだというわけですから、J.デューイの系譜にあるということを示唆していますし、デューイの現代化が実は昨今の<新しい学びの経験>の学習理論の核心です。成蹊は、創立以来、普遍的な進歩主義的教育を実践してきたわけです。

★日々、同校の生徒は、気象や天文を観察し、データ化し、分析する科学の目を、そのような体験から学んでいます。また、武蔵野の自然(広大なキャンパスそのものがそうです)は、科学的に観察する対象というだけではなく、美術の時間のモチーフでもあり、家庭科の時間の食材の庭園でもあるのです。日ごろの授業も、同記事が書いている多様な体験学習と同様、体験を重視しています。

★このように、体験を教師と生徒とが共有しているからこそ、同校の生徒と対話していると、生徒もいっしょに学びを創り出しているということが了解できます。同記事にこうあるのは、それを示唆しているのだと思います。

「同校の体験学習には、生徒による自主企画も数多く含まれている。今年度は、ミャンマーのイスラム系住民であるロヒンギャをテーマにした映画上映会を校内で開催した。生徒は実行委員会を作り、大学にも協力を依頼して、実現へ結びつけたという。高校生が中心だが、中学生も参加しており、先輩の自主活動への熱意を十分受け止めたことだろう。自ら発信者となり、学年を超えて呼びかけ、ともに学び合うという気風は、同校の伝統となっている。」

|

より以前の記事一覧