教育イノベーション

2020年10月25日 (日)

工学院インパクト(16)チームSCTのクリエイティブ・コア・ミッションが私たちの希望。①

★工学院大学附属中高のチームSCT(スーパー・クリエイティブ・ティーチャー)のクリエイティブ・コア・ミッションがすてきです。学校もイノベーションを生み出す時代はとっくにきていますが、なかなか進んでいないように見えます。それはなぜでしょう。クリエイティブ・コアミッションがないからです。ところが、工学院ではそれが誕生し、根付き始めました。

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★イノベーションが広まる「イノベーター理論(1962年)」で親しまれているスタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授(Everett M. Rogers)の理論は有名です。しかし、産業構造が20世紀末には変わってしまったので、ジェフリー・ムーアは、キャズム論を加えて塗り替えました。

★ロジャーズ教授は社会学者です。ムーアはコンサルタントで、経済的視点で展開しています。したがって、私立学校の教育イノベーションを語る時、ジェフリー・ムーアの考え方が採用されることが多かったのです。

★しかしながら、多くの学校シンクタンクや教育コンサルタントは、時系列の普及カテゴリー(イノベーター→アーリ―アダプター→キャズム→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)のシェアに注目するだけで、その先を論じません。あるいは企業秘密にしているのかもしれません。三田国際のようにこの理論も参考にしながら、急激に教育イノベーションを果たし、生徒獲得戦略に大成功を収めているところは、この普及カテゴリーの先をしっかり学内で共有しています。

★それは、ジェフリー・ムーアの「コア」と「コンテキスト」のマトリクスです。この理論は、ムーア自身の本で展開されていることですから、セオリーをきちんと理解しているわけですね。

★工学院も同じスタンスですが、「コア」と「コンテキスト」をもう少しわかりやすく「コア」と「ルーチン」と読み替え、「コア」をクリエイティブ・コアミッションとマーケットニーズコアミッションに分けています。もっと簡単に言えば「本質」と「実用」です。

★三田国際は、このコアの部分は完全に自前です。「コンテキスト」つまり「ルーチン」の部分は外部ネットワークと連携します。丸投げアウトソーシングはしません。工学院も、ルーチンの部分は三田国際と同じです。しかし、コアの部分は少し違います。

★三田国際はコアの構成要素である「本質」と「実用」を明快には分けていません。三田国際の場合は、「本質」=「実用」=「学問」ですからその必要がないのです。立ち上がり当初は、一部連携もしていましたが、改革2年目からは完全内製化にシフトしました。

★工学院は、「本質」と「実用」は分けています。というのも、「実用」のコアミッション部分はやがて「ルーチン」に転換していきます。ですから、このコアミッションの「実用」の部分は、はじめから連携によって運営していきます。

★しかし、「本質」つまりクリエイティブコアミッションのところは、完全内製化です。ソフトパワーを生み出す拠点を自前で確保しているのです。ここは「TTP(徹底的にパクる)」をしないところです。

★おもしろいのは、クリエイティブ・コアミッションの最大の拠点は、高2のグローバルプロジェクトです。他校にない学年全体で取り組むプロジェクトで、運営には外部ネットワークと連携しますが、企画そのものを生み出す部分は教師と生徒ががっちり協働します。

★ケンブリッジインイングリッシュスクールやラウンドスクエア、UPAAなどのコアミッションの連携もしますが、これらを統合するグローバルインテリジェンスは、完全自前です。教務主任とカリキュラムマネージャーなどが知を創出しています。

★それから普段のPBL授業の部分は、田中歩教務主任が若手教師のプロジェクトチームSCTを自然な感じで生成し、自主活動をしています。田中歩先生との長い付き合いの成り行きで、私もSCTのコアミッションの実用部分までは立ち会いますが、クリエイティブ・コアミッションは、完全にSCTチームが内製します。

★田中歩先生が英語科主任時代に、やはり当時のチームメンバーと創出したのが、「思考コード」で、今では中学入試でも別のカタチで広まっていますね。そこも、私は立ち会う機会を頂いたのですが、クリエイティブ部分は、完全に先生方が創出していきました。

★そして、今はSCTチームメンバーが、「興味関心を生み出すパターンカード」を創ってしまいました。昨日、この自作のカードを使って、柳田先生の中1の社会の授業を分析して、実用性を検証していきました。ワクワクしますね。

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2020年10月22日 (木)

ノートルダム学院小学校 思いやりが学びの原点

★ノートルダム学院小学校(以降「ND」)では、先生方がチームNEXTという自主プロジェクトを行っています。昨年秋くらいから動き始めて徐々に本格稼働してきました。今回のパンデミックでしばらくZoomでコミュニケションをとってきましたが、今回は久々にリアルな空間で学び合いを行うことになりました。

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★NDはオンライン授業やPBL授業を行っています。今までは特にすべての教師が行うというわけではなく、行う先生は行うが、そうでない先生もいるという感じでした。

★しかし、今回のパンデミックで生徒が自ら考え仲間と協力して困難を乗り越え解決をしていく必要性を先生方は感じ入ったということです。そこで、好奇心・探究心・冒険心を大切にしながら、思いやりを互いにもち、深く考えていく学びとしてPBLに挑戦しようということになったようです。

★学内でPBLについて探究し、研究する対話が盛り上がり、実践しては改善していく流れが生まれてきていて、大きな川になる兆しがみえてきたということです。

★今回は梅下先生の「秋の動物」の単元の最終回のPBL授業について、分析していきました。なんと、「秋の動物」についてまとめるため、自たちでテスト作成をするという破格のリフレクション授業です。梅下先生の7分プレゼンのあと、授業の中で生徒がどんな学びの活動をして、どう反応したかをポストイットで書き出し、授業のストーリーの再現スクライビングをしていきました。

★そのあと、そのストリーに沿って、どんなツールが活用されたか、生徒はどんな楽しみ方をしたのかなどジグソーパズルのピースを当てはめるように立体的に再現していったのです。

★先生方は、仲間の授業について思いやりをもち、共感しながら復元していきます。柔軟で深くそして広がりのある対話が展開していきました。

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★そして、梅下先生の復元した授業、その授業を通して、生徒はどのように学び成長していったかに思いを馳せていきました。具体的な授業から帰納法的にそして、先生方自身が見守っているいつもの生徒の様子を想いながら、生徒がどのタイミングで好奇心をいだき、知ることの喜びを感じ、躓いたとき互いに励まし合うのかなど、その様子を思い浮かべ、最後は自分を見つめるようになっていくだろうとPBLの授業の効用の仮説を立てていきました。

★それぞれの想いをその都度シェアしながら対話は進みました。そして、最終的には、今回の分析を通して、NDのスタンダードPBLの考案を練りました。創造的なスクライビングに変容していったのです。もちろん、これはこのような対話を今後行うたびにアップデートしていくでしょう。

★このようなアップデートの変化を楽しめる柔軟で深く思考する先生方の姿に希望を見出しました。チームNEXTの先生方、すてきな時間をありがとうございました。

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2020年10月20日 (火)

新しい教育社会(11)私立中高の価値志向に対応した革新教師の4タイプ。

「新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。」で、首都圏を中心とする私立中高一貫校の価値志向を4つに分類しました。同記事の【図1:首都圏私立中高一貫校の学校の価値志向性分類】をご覧ください。今回は、それぞれの領域で革新教師がどんな動きをするのかその特徴を座標に重ねてみました。

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★革新教師は保守教師同様、いずれの領域にも存在します。しかし、その領域の組織の在り方や人間関係という環境の影響で動き方が変わります。コンサバ領域では、圧倒的に保守教師が多いので、相手にされませんから、我関せずで「わが道を行く学者型教師」として動きます。広報活動や部活の顧問など自分の探究時間をとられるようになると、他の領域の学校を探し始めます。

★もちろん、自分を変容できない場合は、他の領域は魅力がありません。だって、今まで以上に忙しくなりそうだからです。じっと我慢して居座ります。しかし、環境がそうさせてきただけの場合は、どうせ忙しくなるなら、自分の特徴を生かせる領域に移ろうという動きになります。

★ブランディングリバタリアンの領域では、経営陣がマーケティング分析をして新市場のニーズに合う道具立てや施設を用意しますから、それを有効活用するようにマネジメントされます。新しい道具や武器、特にテクノロジーをガッツリ操作できるので、ある意味モチベーションはあがります。しかし、これ以上内発的なモチベーションが生まれてこないと判断した時は、やはり他の領域に移ります。

★タレントリバタリアンの領域では、基本資金力がある学校なので、先生に変われということほど厄介でコストがかかることはないと算段し、外部の専門家に外注します。つまり、「最先端の専門家と生徒の学びを結びつけるコーディネーター型教師」としてのロールプレイが、この領域では中心になります。

★コーディネートだけではなく、自分もプログラムをデザインするソフトパワーを発揮したいという場合は、やはり他の領域に転職します。

★こうして、流れ着く領域がDAVOS型タレント主義です。進取の気性に富んだ起業家精神旺盛の教師がたくさん集まってきます。それでいて、倫理観やジャスティスを重んじる、つまりfor othersの精神を大切にしています。そう表現した方が市場のニーズに適合するというブランディングリバタリアンの領域とは全く異なる領域です。

★for othersのマインドが内燃しているのです。ですから、「最先端の技術と学習する組織を結び付けシナジー効果を外注ではなく内製的に生み出すクリエイティブ教師」の動きをします。

★だんだんこのようなクリエイティブ教師が多くなり保守教師は他の領域に逆シフトします。非常に幸せでマインドフルネスなメンタルモデルに自己変容していく組織になっていきます。ただし、問題は、このDAVOS型タレント主義領域は、慈善事業家の力が必要です。日本ではまだまだそれがうまくいきません。したがって、市場の覇者に成れるかどうかは常に問題です。にもかかわらず、踏ん張っています。

★そこにこそやりがいやかけがえのない(Only One for Othersということらしいです)境地があり、ブランディングリバタリアン領域からみたら、大丈夫かね?ということのようです。

★リバタリアンは、スピードを大事にします。DAVOS型タレント主義は、そのような人のこと時間泥棒と呼ぶモモに親和性を感じていますから、違いは明白です。

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2020年10月18日 (日)

新しい教育社会(09)首都圏私立中高一貫校の革新性のベクトルが3方向に拡張。その背景で、教師の新しい生き方が生まれている。

★私立学校は、基本コンサバです。多くの学校が「自由」を標榜していますが、経済的自由は重視しますが、階層構造を維持する権威は大事にしています。最近、このコンサバは、グローバリズムの中で、ゆらぎハイエクやコトラーのようなリバタリアンやブランディング主義に基づく学校がでてきています。

【図1:首都圏私立中高一貫校の学校の価値志向性分類】

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★その象徴が、広尾学園と三田国際です。両校とも高人気校で、この流れをしっかりつくりました。ブランディング主義ですから、階層構造は維持するので、大手塾の70%は応援します。大手塾の中でも、真正という意味で伝統的な私学の在り方を支持する大手塾は、距離をあけています。

★一方、この階層構造から抜け出そうとする革新的な学校も人気をあげてきています。聖学院の思考力入試や海外大学の実績は、メディアでも取り上げられています。工学院も同様ですが、中学入試の応募者人数は少ないので、目立ちませんが、高校の人気は半端ないのです。コンピュータサイエンスの学びと破格のグローバル教育の評判も高いのです。

★工学院同様ランドスクエア加盟校で、この加盟のIB以上の重要性に気づき始めた保護者が八雲学園を注目しています。偏差値階層構造ではなく、生徒1人ひとりの潜在的才能を開花する環境があります。

★その環境で大事なことは教えない授業という場ですが、この点で傑出しているのが新渡戸文化学園ですね。

★そして、この正義と才能主義の領域を切り拓いている老舗は桐朋女子です。ダボス会議のボードの日本代表も桐朋女子のOGというのもなるほどです。

★IBをベースにしている開智グループ、特につくばの開智望は、PYPとMYPをしっかり根付かせています。IBスクールはDPからというより、PYPやMYPからしっかり土台をつくっているかどうかがポイントです。

★かえつ有明は、このIBのエッセンスをとり入れながら、独自のマインドフルネスの学校として確固たるポジションを築きました。

★今大ブームのN高校は、あらゆる壁をぶち壊すグローバルな動きをしています。リバタリアンだし、階層構造もぶっ壊します。武蔵野大も同じように動きます。両校ともGAFAの動きを参考(TTP)にしていますね。スケールがデカイのです。

★さて、保護者とよく話すのは、この革新的な動きは持続可能になるのか?ということです。校長が変われば元の木阿弥ということはないのか?ということですね。それは、理事長―校長―革新教師―保守教師の勢力割合を考えればよいという話をします。

【図2:革新勢力と保守勢力の割合イメージ図】

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★組織というのは、すべて革新勢力とかすべて保守勢力とかということはそうあるものではありません。その方が偏らない判断テンションがあり続けるので、経営マネジメントとしては、両方を取り込みます。ただ、どちらの勢力を多くするのかは、経営判断です。

★とはいえ、理事長と校長が革新的教育を実行するとなると、革新的教師が多くなり、改革路線は持続可能になり安定的です。

★理事長が保守的であるけれど、経営上革新的校長を起用すると、確かに革新的な教育は実行されていくのですが、それが過激だと、理事長の思惑を超えるので、任期が来たら継続ではなく、そこで新しい校長と交代です。当然揺り戻しが起こりますね。

★校長が保守勢力で、理事長が革新的な場合、革新教師が盛り上がりますが、校長と保守教師がサイレントキラー的な壁をつくります。学内の雰囲気がよくならないまま、改革路線が動きます。

★上記で挙げた例の中では、八雲学園は理事長校長が近藤先生ですから、理事長と校長の葛藤がありません。革新的なオーナー学校は、最も安定的で実際的な改革路線=伝統と革新の統合を持続可能にできます。

★今年立ち上がったばかりで、まだ実績がでていませんが、品川翔英は理事長と校長の連携が良い関係で、革新教師の勢力がどんどん大きくなっているので、将来性があると私は予想しています。

★このような動きは、サイトで調べれば概ねわかります。あとは実際に足を運んだりオンライン説明会などでリサーチをすればよいでしょう。

★それにしても、このような大きな革新的な流れは、自然にできたわけではありません。このウネリをつくった革新的な教師がグローバルに活動する中で、ニューパワーを増大しています。

★彼らは、パラレルワークやコンサルティング会社を起業したりしています。どういう方々が活動しているのかは、サイトの中では誰でも知ることができます。いずれ、具体的にご紹介しましょう。とにかくたくさんいます。

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2020年10月16日 (金)

工学院インパクト(15)チームSCT!誕生。興味と関心が生まれるパターンカードを創っちゃいましたあ!

★工学院大学附属中高の先生方とZoomでPBLアップデート対話を時々しているのですが、先月行ったとき、「PBLの授業をやったとしても、必ずしもすべての生徒が興味と関心を示すということはない。そもそも自分が興味関心のあるモチーフ以外のものに、興味関心を抱けるとはどんなことか?」という問いがどこからともなく生まれてきました。いろいろなアプローチがでてきたので、だったら、みんなで「興味と関心が生まれるパターンカード」を創っちゃおうと盛り上がりました。

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★そして1ヵ月がたちました。臼井先生から、創りました!とメールが届きました。開けてびっくり感動しました。32枚のパターンカードができあがっているのです。かわいらしいイラストで!

★慶応義塾大学の井庭崇教授のパターンランゲージのカードのヘビーユーザーである先生方は、ついに、自分たちで創ってしまったのです。臼井先生によると、メンバーは、臼井先生、柴谷先生、片瀬先生、柳田先生、濱崎先生と田中歩先生だそうです。

★思考コードを最初に創ったのも工学院です。今や思考コードはいろいろなところで使われています。

★そして、今度は「興味と関心を生むパターン・カード」を創ったのです。どんなにすばらしい教材があっても、プログラムがあっても、生徒が内側から燃えないと授業じゃないよねという生徒ファーストな想いと情熱と愛情が、学びのもっとも根本的な領域のデザインをしたわけです。

★いずれ紹介があると思います。次回のオンラインミーティングで、まずは先生方が活用してから、ご紹介したいと思います。

★いずれにしても、ダボス会議はグレートリセットと才能主義だとビジョンを広報し始めました。あの落合陽一さんもクリエイティブクラスの時代だと本を出版しています。

★そして、ついに!そのクリエイティブな先生方が、目の前に誕生したのです。スーパークリエイティブティーチャー(SCT)があらわれたのです!

★臼井先生にチームSCT誕生ですねとメールを送ったら、すぐに仲間と共有して、次のようなメールが返ってきました。

<そんなSCTだなんて!嬉しいですが、そんなんじゃないのです。自分たちですごいことをやっていると思わず、自然とアイデアを形にすることができるというのが私たちメンバーの本当にすごいところだと、一緒に活動していて改めて感じているのです。>

★なんて謙虚なことば。クリエイティブクラスの3要素は、タレント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)です。これはSCTも同様です。この謙虚な寛容なマインドこそ、紛れもないSCTの証拠でしょう!

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2020年10月13日 (火)

品川翔英の進化(09)国語科の突き抜けるPBL型授業。②

★平岡先生の2つめの提案は、「国語表現」でGoogleサイトを活用して、生徒1人ひとりがホームページを制作編集してしまうことでした。校訓である「自律」「創造」「貢献」を、身を持って体験できるクリエイティブな学びです。自分が何を考え感じ、それを世界に発信することでどんな貢献ができるのかダイレクトに実行できてしまうからです。

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★しかも、思い付きでは世間は納得しません。しっかり調べて、データや根拠を提示しなくてはなりません。生徒は、論理的・創造的思考ばかりか知識・理解レベルの思考もフル回転させて取り組みます。まさに思考の領域をすべて活用する「個別最適化」学習です。

★田中幸司先生は、これは私たち教師も学ぶ必要があるとさっそく取り組むという前のめりの姿勢を示しました。今井先生は、中1でプログラミングの授業があるので、自分の体験をポートフォリオ風に掲載もできますねとアイデアを膨らませていました。西山先生は、国語表現は、文字ベースばかりではなく、動画や画像などメディアミックスもできるようになり、生徒の得意な手法で自己表現ができるようになるのは、新しい局面だと。

★平岡先生は、ワードプレスなどを使うより、SNS感覚なので、生徒はすぐに活用できるようになります。技術的なハードルは高くないけれど、表現の出力パワーはすさまじいので、生徒1人ひとりの才能を引き出しやすいかもしれませんと。

★品川翔英の個別最適化は、知識量の最適化ではなく、自自己表現の最適化だったわけです。

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★今回の振り替えりは、「探究パターン・カード」を活用しました。国語と探究をICTで結ぶと生徒はどのように成長していくのか。2枚ずつ選択し、語り合いました。

★そして、その2枚のカードの選択は、結果的に先生方のメンタルモデルの片鱗を示唆してもいました。学習する組織は、互いのメンタルモデルをシェアし尊重し合うことが重要だと言われています。

★どんな想いに突き動かされて語り行うのか、その根源的なそれぞれのエネルギーを生み出す心のパターンに、探究パターン・カードは導いてくれました。

★かくして、ビジョン共有、チームワーク、システム思考、自己陶冶に加え、メンタルモデルを互いに知り尊重するオープンマインドもあふれ出ました。これにて、国語科の学習する組織の態勢が整ったわけです。

★田中幸司先生は、改革委員会の副委員長でもあります。したがって、この国語科の学習する組織をモデルに、学内でシェアし広げていくと告げました。すると、平岡先生が、その際にICTを活用できるところがあれば、全面的に応援しますと。

★アンサング・ヒーロー、そしてアンサング・シンデレラの誕生です。このようなリーダーが存在する組織は最強です。

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2020年10月12日 (月)

品川翔英の進化(08)国語科の突き抜けるPBL型授業。①

★品川翔英の国語科の先生方は、PBL型授業を全員が展開できます。しかも毎回自らハードルをあげていく研修を続けてきたために、世界標準の授業デザインを出来るところまでになりました。すごいですね。

★今では、先生方は、PBL型授業をベースにそれぞれテーマをもちより、その探究成果をシェアする研修となりました。いわゆる学習する組織になっています。今回、平岡先生のテーマは、ICTによるPBL授業のエンハンスメントです。エンハンスメントとは、「巨人の星」を知っている人はあの「大リーグ養成ギブス」を思いだすとよいかもしれません。いや、そんなメタファーがわかるのは団塊の世代だけかもしれませんが(汗)。

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★ともあれ、すでに健全なPBL型授業ができるのに、さらに今までの人智を超えたPBL型授業に挑戦するというわけです。平岡先生は、今回具体的なICTを活用したPBL型授業ケー2つを提案しました。1つは、ルーブリックの集計をグーグルフォームで効率的に行うことができるようにしたのです。2つめは、Googleサイトを活用し、生徒1人ひとりが自己表現ホームページを作成することができるというものです。いわゆる「個別最適化」の動きとは全く違う次元の「個別最適化」です。

★「効率化」などというと、首都圏の私立中高一貫校でも80%は、教育は効率化ではないという勢力が学内で番をはっているものです。こうして、若き才能ある教師は出る杭を打たれ、静かになってしまいます。そして改革なんて動かないものです。

★この頑迷固陋な風土やルサンチマンが渦巻く組織と闘ってきたのが、柴田校長自身ですから、国語科の先生方のようにいイノベーティブな教師は、創意工夫に没入できるわけです。しかしながら、一方で、そこをわかっている柴田校ですから、ハードルも高いのです。どういうことかというと、「効率化」が表面的な楽になる程度の意味しかなければ、はねのけられるし、知識や理解は生徒の学力に合わせてAIやアプリで個別最適化し、創造的才能を豊かにするのは授業でなどというような一見合理的ですが、脳を非人間的に分断する個別最適化もまた認めないでしょう。

★知識・理解も、論理的思考も創造的思考も、きちんとICTを浸透させる挑戦をせよと。

★「個別最適化」をするには、一つはその生徒の学びの状況や考える幅や深さを知る必要があります。今までは、知識・理解ベースの定期テストで見てきたために、生徒の状況を全体像を知るのは、それぞれの経験値に任されてきました。

★それを4月から、ルーブリックに基づきながら単元テストを小まめに行って、痒いところに手が届く学びの環境をつくることにしたわけです。

★しかし、このルーブリックは、言うは易く行うは難しなのです。すでに大学入試改革でeポ-トフォリオが挫折しているところからもわかります。平岡先生が言う「効率化」は、実はルーブリックを行っても、それをデータ化見える化が困難だということに先生方がぶち当たっているので、そこを突破しようという提案で、「効率化」ではなく、不可能を「可能」にしようという話だったのです。そこを謙虚にも「効率化」と表現していただけなのです。

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★多くの学校で、ルーブリックの重要性を語っていますが、そういう学校でフルセットのオンライン授業をやっていない場合、スローガンにすぎません。実行力はなにのにルーブリックだと語っているのです。現場は大混乱だし、徹夜してもデータ処理ができない状況が起こります。それゆえ、現場でルーブリックの持続可能性は挫折してしまうわけです。

★ところが、それを可能にする研究を平岡先生は行い、国語科は、改革の1つの要素である「ルーブリック」を実現可能にする取り組みを実行していきます。しかもグーグルフォームの選択肢型アンケート機能と自由記述アンケート機能の相関を見ることができるので、経験だけでは見逃してしまう生徒の心と身体と頭脳の状況に気づくことになります。

★今回も、生徒の自由記述を分析しながら、どのようなフィードバックが可能か分析し統合していきました。そのうえで、アンケートデータとの相関を考えていくことになりました。声掛けの重要性は教師は皆知っていますが、その声掛けが生徒の状況をきちんとみないで、つまり俯瞰しつついまここでを把握する両方を見ることは、よほどの達人でなければできません。でいない場合、抑圧的でパターナリズム(父権主義的)なコミュニケーションが学内に蔓延します。

★品川翔英学園は、実はもともと柔らかいコミュニケーションが土台になっていますから、そこをエンハンスメントできることは歓迎です。生徒が自律して、創造的に活動し、それが貢献につながることをより促進し豊かにできることであれば、一気呵成に広がるでしょう。

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ノートルダム女学院(10)探究×保健体育×哲学対話②

★保健体育科の三井先生は、前回ご紹介したように、時間の都合がつけば、他教科の授業も見学したり、探究の時間などファシリテーターとして参加したりしています。また教育学や組織開発、医療関連研究、心と身体の研究など外部のセミナーとのネットワークも広い先生です。教科横断を身を挺して実践する越境人です。そのPBL型授業は、まさに生徒といっしょに学際的な知の冒険をするデザインが工夫されています。

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★保健体育科で扱うテーマは、そのすべてがSDGsに関連する社会課題につながっています。ジェンダー問題や感染症の問題は、遠くの話ではなく、まさに自分事として受け入れざるを得ない問題です。探究→議論→探究を深め自己編集していくという過程がベースの授業です。ICTの活用も画期的で、プレゼンなどは、録画して共有したりしています。

★生徒にインタビューすると、「自分とは何か見つめる時間だし、大学入試の時に志望理由書や自己アピールの動画を提出するときにも役に立つ授業ですよ」と。

★三井先生は、「受験勉強のために授業を組み立ててはいませんが、今年京大の医学部医学科学科に合格した生徒が持ってきてくれた特色入試の問題を同僚から見せてもらいましたが、感染症やチーム医療の話などに関して分析的問題もある一方、自分のアイデアも記述する骨太問題も出題されていて、こういう問題にも立ち臨める授業であれば、それはそれでよいと思っています。いずれにしても、みな自分の弱さを見つめ、相互にそこをサポートしていけるオープンなチームワークを創っていけるリーダーシップを授業の中で身につけてもらえたらよいと思っています」と。

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★三井先生は、山川先生とも協働して、哲学対話の経験値も積んでいますが、その山川先生は、宗教科の主任です。カトリック学校なら、宗教の時間はたいていあります。NDもそれの例外ではないのですが、山川先生は、哲学と文化人類学(サブカルチャーも含めて)と神学を学際知で統合して授業をデザインしていきます。ICTもフル活用するディスカッション授業と対話以外何も使わない哲学対話の授業の両方をミックスしていきます。

★そして、すべてのテーマが「人間存在と人類愛」のバリエーションです。来春以降、ダボス会議でも話題になる「ザ・グレート・リセット」の時代に突入していきます。ポスト・パンデミックは、自然とは何か?社会とは何か?人間とは何か?を世界市民レベルで議論されていく時代です。

★山川先生は、「大事なことは、それぞれ要素が深く議論されていって、いつの間にかそれぞれが分断されてしまうようにならないことです。要素間の関係をつないでいく熟慮と対話と気遣いを大切にする授業をしていきたいと思っています。キリスト教的には、関係を断つことは罪です。その罪悪感は、どんどん人の繋がりを疎遠にします。欧米の精神分析学などの出発点はここを無視しては成り立たなかったでしょう。ですから、心理学的には、抑圧の壁ということですね。この障壁があるから私たちは大切なものを見失ったり、手放したりしてしまいます。それを回復するにはどうしたらよいか。生徒たちは、身近なところに、その普遍的な心の動きがあるのを鋭く察知します。その課題解決には、つながることが大切だということは議論しながらあるいは哲学対話をしながら気づいていきます。もちろん、頭ではわかっているのですが、議論や哲学対話の中で、身に染みて内側からつながる=関係=ケア=隣人愛という連鎖が溢れてくる体験を大切にしたいと思っています」と。

★山川先生と対話していると、本当に謙虚で、「この存在の根源を生徒が深刻に受けとめながらも、その本質にワクワクしながら探究していけるには、やはり学びの環境の創意工夫は大切だと考えています」と語ります。そのため、私ともいっしょにPBL型授業のデザインスキルの研究をしてくれているわけです。

★学問的であり現実的であり、生徒の身近な生活のいまここに本質を映し出す授業を追究し続けているのです。このような授業が探究の時間以外にあるNDは重要な何かを生み出そうとしているのでしょう。

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ノートルダム女学院(09)探究×保健体育×哲学対話①

★ノートルダム女学院中学高等学校(以降「ND」)の授業は興味深いシステムです。まるで植物のように有機的に成長しています。今まで各教科のPBL(Project Based Learning)型授業の取り組みを紹介してきましたが、探究の授業、保健体育の授業、宗教の哲学対話が行われている意味を少しご紹介します。

★いずれも、NDの生徒全員が学ぶ場であるといのがポイントです。

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★中1のSTEAMクラスの探究の授業を拝見しました。STEAMクラス担当の先生方がリレー形式で行っていきます。つまり、スーパーバイザーとファシリテーターが順番に入れ替わっていきます。今回私が拝見した探究の授業は、数学科の北島先生がスーパーバイザーでした。また学年主任で理科の村田先生や保健体育の先生も参加していました。ファシリテーターは理科の田中大先生と赤田先生でした。

★中1のこの時期ですから、文献リサーチと好奇心・興味・関心を広げ深めるスキルを身につけていきます。図書館で、関心のある事柄を、1事象1情報カードにまとめていきます。

★そのとき、北島先生は言語技術に基づいて、テーマ、トピックセンテンス、比較、理由、具体例など意識して書くように思考スキルを生徒と共有します。また、ファクトとオピニオンをきちんと区別する習慣も確認します。ファシリテーターがそこを見守り、声掛けをしていきます。

★教室に戻ってきたら、そのカードの中から、一つ選び、選んだ理由やその事象に対する意見や感想をワークシートに書きます。もちろん、その情報のまとめをパラグラフライティングという言語技術をベースにまとめます。ここでもファシリテーターは、サポートします。なかなか書けない生徒や情報があふれて収拾がつかない生徒がいたら、書く前に話を聴くという瞬間を設けます。

★そして、ピアシンクシェアをしながら、プレゼンしたとしたら、パブリックオーディエンスと共感できるかどうか対話していきます。リフレクションシートに生徒による相互フィードバックも書き込んでいきます。先生方もフィードバックしていきます。

★この探究は、リサーチや観察からはじまり、好奇心・開放的精神を培い、問いの問いを生徒自身が生み出すプロセスですが、Zoomで北島先生と村田先生とリフレクション対話をしたときに、分析→統合を往復し、その過程の中から発想が生まれてくるという数学的思考や科学的思考の基礎をトレーニングしているのだということでした。

★なるほど、北島先生はご自身の数学の授業でも、そこを大事にしているし、村田先生も観察から始まり、分析→統合→発想という循環を大切にしています。

★こうして、探究と教科の結びつきも見えてきましたが、北島先生と村田先生は、「それができるのは、コンテンツ(内容や素材)は違っても、ものの見方や考え方のプロセスが互いに親和性があるように授業デザインしているからです」ということでした。私にはデザインというよりアートのように感じました。機会を組み立てるような感じではなく、有機的な自然の循環を生成しているような感じなのです。(つづく)

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2020年10月 9日 (金)

キャリアガイダンスVol.434 未来という言葉、禁止!?今、目の前に向き合うことが大切!?

★キャリガイダンスVol.434をいただきました。ありがとうございます。相変わらず編集長山下真司さんのアクロバティックな頭脳に感服です。

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★特集<学びを進化させる「6つの視点」>は、絶妙な高い水準でいながらわかりやさを維持しています。同誌は、公立私立問わず配布されているので、このような読む気になる編集の影響力は絶大です。

★神崎史彦先生の論考もあって、今の時期の総合型選抜や国公立、特に医療系の一般入試の小論文の取り組みに悪戦苦闘している進路担当の先生にとっても大助かりでしょう。神崎先生の鋭く思いトーンぐらいでないと、小論文や志望理由書は差がつかないのです。というと神崎先生は怒るかもしれません。差をつけることが目的ではないのだと。

★そうですね。でも一般入試であろうと総合型選抜であろうと、格差を生む装置です。

★山下真司さんは、そのパンドラの箱を開けることを片方で編集しています。

★矛盾がダメなではないのです。きれいな未来をにんじんとして掲げ、Something importantにマスクをかけるのではなく、直視するようにと。だから、若新雄純さんに「未来という言葉、禁止にしませんか?」と言わせているのです。

★若新さんは、にんじんとしての未来をぶらさげ、鞭をいれるな。未来はいまここで子どもが自ら内側から生み出していく創造的な才能の開花にヒントがあるんだよと。めちゃくちゃ未来を語るんです。

★同じようなトーンで登場してくる東大の教育学部の重鎮秋田喜代美先生は、公立の先生にターゲットをあてて言っているので、本気で今が大切だよと。若新さんとは少しニュアンスが違って、ターゲットが子どもか教師かで違いを魅せる編集はスリリングでした。

★いずれにしても、全体的に未来を語る編集。でも、立ち止まってねと、大切なものはなかなか目に見えないよという編集ですね。すてきです。

★さて、とはいえ、教師向けなので、決定的に足りない要素があります。なぜなら、それは学習指導要領にないので、あえて省略してあります。

★ところが、総合型選抜で、そして今回のパンデミックで、それから2022年の改正民法施行を踏まえて、学ぶ必要のある学問があります。一般入試ではその問いはないのです。先ほども言いましたように学習指導要領にないからです。

★でも、国民としてグローバル市民として学ぶ準備は欠かせないものがあります。それを、SNSなどで語っているのが神崎先生ですね。受験業界では唯一無二ということでしょう。山下真司さんの編集が幾重にも、表現に注意しながら、現状に気遣いながら、でも子供の未来を守るために、Something importantをちゃんと潜ませています。さすがですね。

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