教師

2022年6月30日 (木)

新たな教員研修制度の構想で、奮い立つ校長は稀かもしれない(汗)。

6月28日の教育新聞によると、<来年4月から導入される新たな教員研修制度の指針案が提示されたことについて、末松信介文科相は6月28日の閣議後会見で、「校長には、教員ときちんと話し合いながら、その教員の資質や能力を把握する力が一層求められる。今回の研修制度は、校長の力量が非常に問われる」と述べ、新たな研修制度の円滑な運用に向け、校長の役割に期待を示した。>ということらしい。

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★読んでいくと、各教師の研修ポートフォリオをもとに、one to oneで話し合い、強み弱みを、データサイエンス手法であぶり出し、弱みを強みに変容させる眼力を持ちなさいということのようです。

★これに照らし合わせると、私などは、到底校長失格です(汗)。なぜなら、ポートフォリオなどを作成する時間は膨大なので、ハナからやるつもりはありません。

★毎朝、日直のデータと担任の生徒の出席・出停・遅刻・早退の情報(数字だけではなく理由などの具体的状況)の集約((「学校日誌づくり」は法規で規定されています。大事なことなので、法規で定められているかどうかにかかわりなく行うものですが)と感染情報と熱中症アラート情報の集約をし、朝会において先生方からのヴィヴィドな情報を共有し、Excelとグループセッションにさらに保存や共有をする。

★出張報告書や週一回必ず実施される各部署のミーティングの報告書を読んで、瞬時に気になる新情報やケア情報を読み取り(そもそも緊急時は、瞬時に連絡がはいりますが)、毎日の朝会や週1回の運営会議、校務会議で共有し、対策を講じ、それが実行される確率が高いのかどうかの判断をしていくわけです。

★時々ですが、授業を見て、教師が気づかないうちに実践している強みを文章に可視化して共有したり、企画戦略室のメンバーとは、現状に起こりうるあるいは起こりつつあるパラダイムの転換をどのようにとらえていくか、そこからどんなビジョンがみえるのか、で、ゴールは、で、どうする?とかとか対話しているわけです。

★文理融合や情報について、勤務校の生徒にとって現実的なアプローチはないかどうかという提案を出す先生方の話に耳を傾け、問題解決方法をアルゴリズムに描く教師の話などにも耳を傾け、職員会議で共有したりするわけです。

★私立中高協会や同じグループの学校が発刊している紀要を読み込み、自分の学校と比較し、共通点と違いを発見し、新たなゴールを見つける情報共有も職員会議でします。膨大な量をいかに7分間でプレゼンするか、編集し発表する教師のリハもやります。こちらからやろうといのではなく、時間をとってくれますかと問われるので対応するだけですが。

★時間があれば、外に出て、ほかの学校の先輩方に教えを請いに行きます。Zoomや電話で対話もします。毎週定期的に他の学校の先生方から教育実践の話もうかがいます。

★思考コードあるいはルーブリックを3ポリシーに一気通貫させる教師たちの活躍にただただ驚嘆してもいるわけです。

★何より、カトリック精神に基づいた人間力形成に日々取り組んでいる生徒指導部や学年団に頭がさがるわけです。

★私にできるのは、このような学習する組織をつくることができるだけです。学習する組織には「自己マスタリー」といって、自分で学ぶ機会も尊重されています。カトリック養成塾に毎月学びに行く教師もいます。いろいろなZoomセミナーを聴きながら他の仕事をしている教師もいます。

★しかし、だからといって、私には何の眼力もないし、データ収集・分析、新情報収集・分析は、進路指導部や企画戦略室に丸投げです。先生方はタブレット、デスクトップ、ラップトップ、スマホなどのデバイスを自在に活用して教育実践をし、行事ごとにプログラムを編集し、新企画の提案書をつくっています。

★外部の団体との交渉やコーディネートもそれぞれの教師がやっています。校長はその方向性の修正をしたり最終的意思決定をしたりするだけです。

★新たな教員研修制度で「校長の力量が問われる」というならば、私は失格ですね。それに、校長ができない決定的なことが1つあります。それは何でしょう?ピンときますか?

★まあ、ピンとこなくても、そんなことは構いません。この決定的なことがないので、このような新たな試みは、結局は効果がないのです。校長の眼力というのなら、その決定的なことがなくても、問題ないというパフォーマンスをせよということになります。

★まっ、世の中は矛盾・パラドクス・トレードオフ・ジレンマの渦に満ちています。それを乗り越える不屈の精神がある方は、今回の文科省の提案に奮い立つことができるでしょう。

★しかし、私は無理です。学習する組織を創るので手いっぱいです(汗)。

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2020年2月 8日 (土)

2021年の準備のために 無限のポテンシャルを生成する対話マインドを開発する。

★2014年から工学院の田中歩先生(現教務主任)と首都圏模試センターの多数のスタッフの方々とそれぞれの「思考コード」を巡る旅をしてきました。6年間毎月定期的に対話を続けさせていただきました。本当に心から感謝いたします。その間、多くの方々と出遭い、対話を共にし、ワークショップを共にし、そのつど児童や生徒、学生、先生方、起業家の方々と、共にインスパイヤ―することができました。

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★そして、ここのところ京都や東京で進取の気性に富んだ私立小学校の先生方との対話を通して、上の図のような無限のポテンシャルを生成する対話マインドのマップが、今朝降りてきました。相変わらず熱があるのですが、そのせいか夢の中でイメージが生まれてくるのです。この夜中にだけ出る熱は、インスパイヤ―するためのエネルギーだったのかと不思議に思えるほどです。

★さて、対話マインドとは、知性と情緒と感知運動の統合態です。対話する時、知のスキルだけではなく、感情マネジメントのスキルも活用します。そして、感情や知性を五感でとらえ、脳神経や筋肉や血液やホルモンの循環機能の一貫性が大切です。互いの表情や息づかいなど非言語的情報を感知する身体能力を研ぎ澄ましておくことは大切です。

★感知運動に気づいたのは、昨年の9月から症状として自分の身に現れてきた自己免疫疾患のおかげです。長い間いろいろな感覚が通常通り動かなく、それぞれの感覚とか神経系や筋肉、血液、ホルモンの循環の重要性に気づかされたのです。

★そんな状態でも、対話やワークショップを続けてくださる皆さんの気遣いの視点は、そのまま感知運動のスキルだということに気づきました。疾患のためにそのスキルがスムーズに使えないので、そこをサポートしてくださるわけです。スキルは基本的には暗黙知状態になっているといことに改めて気づきました。

★こうして、無限のポテンシャルを生成する対話マインドは、知性スキルと情緒スキルと感知運動スキルによって統合されるのだと気づきました。工学院の田中歩先生はプロジェクトメンバーと情緒スキルや感知運動スキルという表現はしていませんが、そこの部分をずっとアップデートして思考コードを探究してきましたし、しています。

★首都圏模試のみなさんは、B軸思考とC軸思考のせめぎあいをずっと対話しているわけです。果たして中学入試で創造的思考はいかにして可能かということを。今年も麻布や桜蔭からはじまり、B3思考を出題する学校の入試問題を分析してインスパイヤーしていることでしょう。

★かくして、私の中では、「思考コード」の旅は、「無限のポテンシャルを生成する対話マインドのマップ」としていったん結実しました。

★ここで気づいたのは、知識の再現や理解としての再現において、学びのコアは「知識」だということでした。そしてここを超えて変容へチャンレジしていくと、今度はコアは「存在」です。はじめは「私という存在者」がコアですが、そのコアの部分が「私たちという存在者」に変容し、やがて「自然と社会と個人の統合態としての存在者」に成長していくのです。ここまでくると、SDGsはようやく本格的活動になりますね。

そういうイメージを聖学院や工学院、順天、八雲、和洋九段女子のZ世代中高生との対話を通して実感しているのです。

★ここまで中高段階で成長すると、あとは未来に向かって無限の自己存在のポテンシャルを生成していくことができるでしょう。

★今までの進路指導は「再現」領域で終わっていました。ですから大学受験以降ポテンシャルを自力で生成することができない指示待ち知性になってしまっていたのでしょう。自己肯定感が低いとかいわれるのもやむをえません。生徒自身の問題もありますが、再現で終わってしまう教育の在り方というシステムが生み出してきたと私たちは認めたほうが良いでしょう。

★ところが、海外大学進学準備を本格的に始めているいろいろな学びの場では、学びのコアは「私」であり「私たち」であり「世界」です。日本の生徒がグローバル教育の一環で海外の同世代と議論した時に、知識をコアとしている対話と「私」「私たち」「世界」という「存在者」をコアとしている対話ではギャップがあることに気づくのです。

★ひるがえって、母国語である日本語はどうでしょう。私たちは母国語の重要性をうったえていても、それすら「再現」の領域で終わっていたのでは、ポテンシャルを生成できず、ワクワクすることはできないでしょう。

★対話にとってたしかに言語は大事です。しかし、それは母国語が大事か英語が大事かということではありません。対話マインドのマップをどこまで広げて言語活動や非言語活動をするかです。

★当面、この対話マインドを活用して、2021年の新地平との出遭いに備えたいと思います。それから、私は「対話」は哲学者のものでも、カウンセラーのものでもないと思っています。等しく人間存在みなに共有されているという立場です。タイトル(権威・資格)がなければ対話ができないなんてことはないでしょう。ナチュラルな対話が一番です。

★しかし、自分の顔は自分で見ることはできません。多角的なアプローチで対話することによって、存在者に気づいていくものです。ですから、哲学対話やオープンダイアローグのようなアプローチは対話マインドそのものの存在をアップデートし続けるために大切です。

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2019年11月 2日 (土)

英語民間試験問題 チャンスをものにできない日本の教育。日本社会はデストピア突入。

★英語民間試験を全学校規模で行う試みは、2020年パラリンピック・オリンピックに向けてのタイミングに合わせていて、実に有益だったはずですが、どうやら実現運営の段階でとん挫しそうです。

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★2024年にはやるというのですが、今や4年間というのは、社会が相当激変するに十分な時間です。このままでは日本社会は、国力の加速度衰退はとまりません。4年後、英語民間試験をさあやりましょうといっている場合かどうかもはやわかりません。

★入試のために勉強するのではないとキレイごとを語る方はいますが、共通一次試験が実施されてから、ずっと日本はそうだったんです。本当は、この制度自体止めたほうがよいのですが、そこには政治家の利権や官僚の権威、教育産業の経済システムができあがっていてどうにもならないのです。

★ですから、逆手に取る戦略で、英語民間試験を日本全体の教育に導入することで、日本の英語環境を一気呵成にアップデートしようとしたと予想します。

★日本国内の教育格差問題も極めて重要です。しかし、その格差の根本的な要因の一つは、グローバルな世界で日本人がイニシアチブがとれなくなりつつあるということなのです。

★イニシアチブに英語がなぜ関係するのか?関係ないだろう。そうあなたは本当に思いますか?戦争と言語の問題、権力と言語の問題は昔から続いていて、実は今もその爪痕は多くの国で残っています。いやEUでは、現在進行中で、移民の問題は、経済的な問題だけではなく、言語的な問題も生んでいます。

★英語でイニシアチブがとれるかどうかは、近代社会が生まれて以降、ずっと重要だったのです。そのこと自体がいいか悪いかと言われれば、コメントは控えますが、大英帝国の言語戦略が世界戦略の一環であり、米国との同盟で勝利していったのが、今日なのです。二つの世界大戦における、フランス語とドイツ語も英語と覇権争いをしましたが、その痕跡は、今も残っています。EUの拠点、そしてCEFRの拠点であるストラスブールに行けばくっきりと残っています。そして、今では中国の言語戦略も凄まじいわけです。

★現状のままだと、世界の言語戦略に打ちのめされていくのが日本です。

★世界がwebで結びつき、グローバリゼーションを支える領域はリアルな場所のみならずサイバー上でも起きています。そして、サイバー上で起きていることがリアルな場所の政治や経済に影響を与えていることはすでに日常生活で当たり前になっています。

★日本は、言語ではたしかに勝てないが、ドル、ユーロ、元とならんで、円があると思っているかもしれません。しかし、それは日本の国力がしっかりしている間だけです。まして、仮想通貨が国家の貨幣制度を崩していく時、日本は何を頼りに国際関係を調整していけるのでしょう。

★2024年、その衰退が目に見えるように進行していくでしょう。

★そのときに、なんとかサバイブできる方法は、世界の言語戦略に対応できている準備だったのです。しかし、それはどうやら無理のようです。

★日本の教育に決定的に不足しているのは、リベラルアーツです。リベラルアーツは、遠くギリシアの時代から、いかなる悪条件下でも自らの自由を守り、遂行する叡智のスキルだったのです。自由7科がもともとですが、それは今では、「言語」「数学」「芸術」に集約されます。

★サバイブするスキルとして「言語」や「数学」「芸術」を学んできたことは日本の教育ではないでしょう。

★なぜなら、どんな悪条件下でも、自らの自由を守り、自らの自由を遂行していく叡智など必要としていなかったのです。どんな悪条件下でも、それを悪条件だと認識する教育をされず、偉い人に守ってもらい、教えてもらい、自らの衣食住を保障してもらえれば、それで幸せだと共同幻想を共感して安心安全だと思うのにすっかり慣れてしまったのです。

★この現状にずっと抵抗してきたのが、私立中高一貫校です。同世代の7%がここに通っています。この私立中高一貫校は、文科省がどうあれ、英語に力を入れることはさらに強化するでしょう。日本全体が一丸となって、世界の言語戦略に対応できるチャンスがなくなったわけですから、できるだけ、生徒たちをそのような危険な場所から避難させるしかありません。

★海外大学への流れがどんどん増えているのはそういうことでしょう。海外大学に行けない場合は、できるけ有利な拠点に避難させるでしょう。

★世界の言語戦略に対応できない以上、日本国内の教育格差はどんどん広がります。かつて、校内暴力や学級崩壊を避けるために、私立中高一貫校に多くの生徒が集まってきたように、学力低下教育政策をおそれて私立中高一貫校に集まってきたように、今<英語も含めて新しい学びの経験>を開発し、国内外でサバイブできる拠点に飛ばせる私立中高一貫校に生徒は集まっています。世帯年収でなんとか1000万かせいで、自分の子を守ろうとする家庭は、国に子供を任せないでしょう。

★そして、公立学校も経済的な面で私立中高一貫校にいけなくても同質の教育を特別につくってノアの箱舟をつくっています。それが日本語IB校や公立中高一貫校です。同世代に人口の3%が進めます。私立と公立の中高一貫校合わせて、同世代の10%はどうやらサバイブできる場所を確保できそうです。それが良いか悪いかはコメントは控えましょう。

★とにも、教育格差を問題にして今回の大学入試改革は頓挫していくわけですが、国内の教育格差はますます厳然としてきます。本来その教育格差を世界の言語戦略にまず対応できる状況をつくることで、改善しようとしたのでしょうが、それはかなわないようです。公立と私立の格差だけではなく、公立自体が自ら格差をどんどん広げていきます。

★今回の文科省の判断やその方向性にもっていった多くの人の判断は、問題解決するどころか自ら格差問題を広げることになるすさまじいパラドクスを生み出すでしょう。

★このような時代、家庭で考えるしかないでしょう。自分で考えるしかないでしょう。「言語」「数学」「芸術」というリベラルアーツと「自ら作り出す技術」と「創造性」、そして「グローバルな視野」を養える場所を探すか、自己鍛錬していくしかサバイブすることはできなさそうです。

★いったん、避難して、もう一度私たちの国を立て直す戦略を立てられる余力を残すことしかできないのかもしれません。そのときまで、日本はデストピア状態になっているでしょう。

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2018年12月 2日 (日)

未来を拓く教師(1) 思考コードは多様な視点を生み出すメタファー

★ここ最近、創造的な才能を生み出す学びを実践している先生方と創発ミーティングや創発ワークショップをやれる機会をもらっている。なんて幸せな感情が流れているのだろう。一歩外に出れば、そこはデストピアのような状況があり、なんとかしたいとまた思うのだが。

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2018年8月31日 (金)

【思考コード分析11】 勉強以外の尺度を思考コードで見る

東洋経済ONLINE(2018/08/30 6:00)に、石田勝紀氏(一般社団法人教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授)の記事が掲載されている。 要は、「勉強以外の尺度で自己肯定感が満たされると、偏差値も上がり出す」という趣旨が述べられている。その通りだと思う。ワクワクする自分がそこにいるという実感は大切だ。

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2018年8月12日 (日)

【ザ教師】 児浦良裕先生 <私>を捨てて時代を創る

★聖学院の児浦先生は、超絶忙しい。普通だったら、少なくとも私だったら、オーバーフロー。学校の業務だけで忙しいというのではない。学外のネットワークを結び付けるというダイナミックでセンシティブな交流を行っている。

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