入試市場

2024年6月 4日 (火)

イエール大学と音楽国際交流(6)リハーサルのクライマックス

★コーラス部とWhim'n Rhythmのコラボ、グリー部とWhim'n Rhythmとのコラボのリハーサルが始まりました。いわば、リハ―サルのクライマックスです。

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★リハは、音声の響きの調整だけではなく、マイクの響きとの調整ももちろん重要です。ここはホールのスタッフの皆さんとのコラボです。

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★それから一人一人がどこに立つのかそのポジションの調整も欠かせません。手拍子などのパフォーマンスの調整も必要です。多角的な調整、多様なコラボレーション。

★そしてその調整はボディーランゲージと英語です。

★阿吽の呼吸作り。西洋も東洋もそれは共通しています。

★音楽が古来よりリベラルアーツの1つであることの実感を改めて抱けました。

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2024年5月30日 (木)

私学の教育を支える私学財団

★私立学校を選択する受験生・保護者の方は受験の段階では、志望する学校単体の姿しか見えていない場合が多いと思います。各私学が、建学の精神に基づき、独自性・先見性・先進性ある教育を創意工夫し実践してきているのは紛れもない事実ですが、人は自分ひとりでは生きていけないのと同じで、私立学校もただ1校だけで経営運営ができているわけではないのです。一般財団法人東京私学中学校高等学校協会は、合同相談会などで知っている人も多いでしょう。私学は独自の路線を追究しながら、同時に協力し合ってもいるのです。

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★そして、私立学校の所轄は、知事ですから、都の私学部とも協力関係があります。

★なにより、受験生・保護者にとって関心の高い教育費負担の軽減事業を行っているのは「東京都私学財団」です。同財団は、東京の私学関係団体と東京都と協力して、所得制限を撤廃した教育費負担軽減の絶大なる支援をしている団体です。

★私立学校が不易流行を持続可能にできるのは、もちろん各私学が奮闘努力の気概をもって成し遂げているのですが、私学財団のような私学を支えてくれる団体があってこそなのです。

★残念ながら塾業界やメディアは、私立学校のトータルなシステムをみていないので、偏差値競争や学歴社会ゲームを推奨し過熱させているときもあります。そのことが、この私立学校トータルなシステムを支えている協力関係、つまりそれぞれの個性を生かした学びの場を維持しようという体制を壊すことになりかねない状況を作る場合もあるのです。

★もし、特定の私立学校しか残らないような競争の末路をたどったら、日本の教育全体にダメージを与えてしまいます。

★もちろん、私立学校当局は、そのようなことにならないように絆を深め、多くの団体と協力していますから、そのような受験市場が、私立学校全体の協力をするときのルールにネガティブな行為をする場合は、警告を出します。

★しかし、私立学校は学びのコモンズです。油断すると「コモンズの悲劇」が起こります。この悲劇は私立学校にとって悲劇であるだけではなく、日本の教育にとっても悲劇が飛び火します。

★受験業界すべてがネガティブな訳ではもちろんありません。私立学校トータルシステムを尊重して、健全な学びの自由市場を生み出しているところもあります。こういう健全な受験市場を形成していくことが、教育で日本社会を支えることにもつながります。

★私立学校も経営をしている以上、入試市場を健全なまま維持していく努力をしています。ですから、欲望の資本主義ではなく、倫理的資本主義を維持する努力をしているのです。

★今や時代はエシカル資本主義という言葉もでてきていますから、私立学校が未来を作る役割を果たし続けていることも確かです。

★何せ、私学のルーツである私学人の1人があの渋沢栄一です。日本資本主義の父です。渋沢翁の考え方は経済道徳合一主義です。「論語と算盤」は有名ですね。エシカル資本主義をとっくに見通していたというわけでしょう。

★この私学の精神のルーツを持続可能にする絶大なる貢献を私学財団は果たしているのです。

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2023年10月 6日 (金)

私立学校の教育は経営システム基盤と経営コミュニケーションがレバレッジポイント 事務長の人間力が凄い

★昨日から、オークラ千葉ホテルで、私学経営研究会「令和5年度 事務長研修会」が行われています。東京私学教育研究所が同研究会の委員の先生方と実施している研修です毎年好評で、申し込み告知1週間程度で定員は満たされるほどです。教育改革や学校改革というと、教師の活躍が脚光を浴びるし、校長がスポットライトを浴びます。それはそれで大いに結構なのですが、そのような変化を生むことができるのは、実は事務長と事務スタッフの存在がしなやかで子供たちの未来のために身を粉にして貢献する人的資本が蓄積されているからです。

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委員会のメンバー(敬称略 番号は支部番号)

委員長 根本 欣哉(⑨専修大学附属)
委 員 相川 忠洋(①麴町学園) 野尻 富太郎(③東京女学館)
江上 亀男(⑨堀越) 豊田 美樹 (⑪明治大学付属中野八王子)
原田 茂 (⑫明星学園)

東京私学教育研究所 私学経営研究会  佐瀬・船江

★なぜすぐに各事務長が集結するかというと、学校会計や施設管理、労務管理、リスクマネジメントなど私立学校組織開発の学問はないので、各学校の独自の規範や基準で動いているため、社会の法改正や行政政策変更などは、その都度弁護士や会計士、税理士などと協力しながら、学校運営をしていく必要があります。

★当然、その独自の規範や基準にはDXや変形労働制、部活、教員採用など、創意工夫がされている一方で、その信頼性や正当性、妥当性は客観的に検証する必要があります。

★教育関連法規や労働関連法規も大枠は遵守するのは当然ですが、具体的なことは、ケースバイケースバイでということになります。しかし、ここが強くしなやかな基盤をもっていないと、国や都に私学が一丸となって予算要望をするときに、スムーズにいかないのです。

★おそらく、ここはほとんどの教員が認識しなくても、教育活動ができている部分です。もしそこを意識しなくても満足度の高い生活ができていると思った教員は、自分の学校の事務スタッフのおかげであるのだと思うだけではなく、全私学の事務長がスクラムを組んで、具体的な状況やノウハウの情報交換をし、しっかり基盤を形成しているからだとイマジネーションを広げてみるとよいと思います。

★来年4月から、合理的配慮の義務化が実施されます。事務長及び事務スタフの方々が、さらに人権意識を高め、具体的に互いの人権を守り合うコミュニケーションの取り方をリフレクションするのが今回の目的の1つでした。

★また、「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」を読み込み、生徒及び教職員のウェルビーイングを生み出す学校づくりの土台について語り合っています。

★今回も、学校法務関係に強い弁護士法人「名川・岡村法律事務所」の弁護士の方々に講師と分散会のアドバイザーを依頼して行っています。

★学校は、社会と世界とつながっているのは当然ですが、つながるときの直接的なルールは、道徳や校則ではないのです。それは法律なのです。ですから事務長の見識やコミュニケーションは、まずはリーガールマインドをベースにします。そのフレームがしっかりあるから、道徳や校則が機能します。

★この点は、教育ジャーナリスの中には、あえて不問に付している方もいますね。法と道徳と校則の関連を議論せずに、校則だけ変えればそれで学校改革だと前面に押し出してくるというケースがそれです。

★教育は社会とつながっているのは当然です。経済と政治と法律などと関連するのも当然ですね。学校の社会との連携は昨今広がりを見せています。アントレプレナーシッププログラムも広がっています。DXも広がっています。経済や政治、法律についての基本的な原理原則を学ぶことはとても大事です。

★そのような点において各学校の事務長が真剣に熱く情報共有している姿に、私立学校の未来はあると感じ入りました。

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2023年7月27日 (木)

2023年夏の「私学経営研究会 教頭部会」 21世紀型教育と生成AIとリーガルマインド

7月26日・27日と2日間、夏期研究協議会「私学経営研究会 教頭部会」が開催されました。まずはじめは、主催の東京私学教育研究所所長平方邦行先生の講演から。2089年からバックキャストした21世紀型教育の講演がありました。2つ目は、所長も話の中で触れた生成AIを使うワークショップを委員の先生方が企画運営して行いました。あっという間に多くの学校の教頭先生がチャットGPTを駆使できるようになっていました。チームに分かれて、ポストイットや模造紙を活用しながら、実際使ってみてチャットGPTのメリット・デメリット、可能性と限界などについてディスカッションしてプレゼン。その後、実際に保護者対象の文章やテスト問題作成など、コンテンツ作成について話し合い編集してプレゼンするという濃密なワークショップになっていました。盛り上がったことは言うまでもありません。

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★昼食後は、分散会になり、教頭の使命や役割、またなんといってもマネジメントや採用などの問題とそれを解決するノウハウについて情報交換で盛り上がりました。

★夕食後及び懇親会は、学校を越えた教頭同士のネットワーク作りがどんどん進みました。学校における諸問題は、多くの場合、自分の学校だけで起きるのではなく、同じようなタイプの問題はどこの学校でも起こります。というのは、そのような問題は、社会の多様な問題とつながっているのが通常だからです。

★そのような場合、一校では対応しきれないわけです。連携ネットワークが必要になります。今年教頭に就任したばかりの先生は、このような機会に、ヘルプネットワークをつくっておくことは大変重要です。

★2日目は、私学を取り巻く多様な問題について、弁護士の先生方の講義を聴き、その後分散会で、互いの学校の諸問題についていかに解決すべきか、そもそもそのような問題が起きるのはなぜなのかなど、弁護士の先生方も交えて情報交換・共有をしました。

★学校を巡る問題は、先述した通り、社会の問題とつながっているがゆえに、道徳的な解決だけではなかなかうまくいかにことが多いのです。改めて、私たちの社会は契約社会であることを認識し、信頼性を最低限法的条件や知識をしることで、維持できることに気づく機会となりました。

★モラルはとても大事ですが、具体的な問題においてはやはりリーガルマインドも極めて重要なのだと。

★個人的にですが、弁護士の方に、21世紀型教育をリーガルな側面から見るとどう理解できるのかと質問してみたところ、それはハラスメントがないことが大前提の教育ですねと。自由な発想は、ハラスメントがあれば、生まれてこないでしょうと。

★シンプルだけれど、根本的な問題であり、真実過ぎると感じ入りました。

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2023年4月23日 (日)

東京私学教育研究所情報(05)私学経営研究会(理事長・校長部会)第1回委員会開催

★先週4月21日(金)一般財団法人東京私立中学高等学校協会会議室で、私学経営研究会の第1回委員会が開催されました。同協会には。東京私学教育研究所(所長平方邦行先生)が設けられており、同協会が主催する研修会のサポートをしています。研修会は、経営領域、人材育成領域、教育課程領域などをカバーし、それぞれの研修会は、さらにその領域を細分化し、トータル55の委員会があります。研修会は、各委員会が年に2回から3回行いますから、年間の3分の1以上東京私学の先生方は(もちろん希望者ですが)研修で自己マスタリーと学校に持ち帰って教育のアップデートの議論の環を広めていくシステムになっています。私学経営研究会は、その55の委員会のうちの1つで、理事長校長部会が担い、私学の経営領域をカバーしています。

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(理事長校長部会委員長 高橋博先生:聖パウロ学園理事長・学園長)

★同部会は、毎月のように私学の経営の未来構想をし、そこから新しい教育関連制度、私学をとりまく経済状況とそれに伴うイノベーションの環境変化、組織開発、人材開発などを議論し、その時々の喫緊のトピックを見定め、研修会の企画を策定していきます。もちろん、それらの経営をする際に、学校のリスクマネジメントの実態、とくに近時の教育法化現象のケースメソッドの情報共有もしています。

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(一般財団法人東京私学教育研究所所長 平方邦行先生:工学院大学附属中学校高等学校前校長)

★同部会の委員長は高橋博先生(聖パウロ学園理事長・学園長)で、他に4名の校長と東京私学教育研究所所長の平方先生をはじめ、同協会のメンバーが5名の、全部で10名の委員で構成されています。

★昨年は、7月に小田原で宿泊研修を行いましたが、トピックは「学校におけるハラスメントについて」と「創造性を養う学びとプログラミング教育」の二本立てでした。リスクマネジメントと私学の先進性の領域の最新情報の共有をしたわけです。

★プログラムは講演&ミニWSと分科会におけるシェアリングが大きな流れです。分科会では講師の方と各委員がファシリテーターの役割を果たします。

★トピックが図で、WSとシェアリングが地ですが、ひっくりかえすとプロジェクト学習になります。参加者は理事長、校長、管理職などですが、現場の教師が行っている「主体的・対話的で深い学び」の授業も結果的に経験できるように同部会はデザインしているのです。

★私学の独自性、先見性、先進性を多角的にまた私学の知恵を結集して生み出すことを持続可能にする同部会の役割はとても大切ですね。5月21日、国際フォーラムで開催される合同説明会「Discover 私立一貫教育2023東京私立中学合同相談会」の申し込みも始まっていますが、同日比較で、1.5倍の速度で申し込みの方々が増えています。

★2023年も、私学の子どもの未来づくりのための教育インパクトは続きます。現場の教職員と理事会など経営陣のチームワークの腕の見せ所です。

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2023年2月21日 (火)

2024年中学入試の行方(08)子供たちの未来を遅らせる言葉の数々に惑わされないで前進する私学

★私立学校は、いまものすごい勢いで前進しています。そうしなければ2050年の世界(日本のみならず)の動きに間に合わないからです。2050年はソサイエティ5.0よりもさらに進みます。すでに大学は動いています。日本の大学を揶揄する人もあります。かつて私もこのままではと言っていましたが、今は違います。各大学は淘汰されないように、2050年に前進しています。7兆円以上の補助金がおそらく使えるからです。

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★2020年大学入試改革もとん挫したかのように見えましたが、水面下でどんどん進んでいます。もちろんもっともっとですが。初等中等教育の改革もどんどん進んでいます。それなのに、それを覆い隠そうとする人々がなんと多いことか。次の言葉をよく使う人の話は、参考程度にとどめ、どんどん進みましょう。効果的利他主義、あるいは大いに稼いで社会貢献しようと、そのためにSDGs、人間の安全保障です。さて、その停滞・後退させる言葉を列挙します。

1)なんちゃって探究ではなく、本物の探究が重要だ。

2)なんちゃって高大連携ではなく、本物の高大連携が重要だ。

3)なんちゃって21世紀型教育ではなくて、本物の21世紀型教育が重要だ。

4)問いの立て方が重要だが、問いの立て方は難しい。

5)大企業や官僚は、大きな改革を進められない。

★などなど自分以外にはできない、だから自分のところの商品を買いなさいという、言葉の背景にある利己主義が問題なんです。

★あらゆるものは、レベルがあります。最初はいきなり高次にはいけません。それを合理的に互いに配慮しサポートするのが効果的利他主義です。

★それに問いの立て方は難しいなどと言う人は、根源的な問いに直面する経験をしていないか、自分では経験していなくても想像力を発揮して共感的な理解ができないかどちらかでしょう。しかし、そんな人はいますか。みな何かしら悩みや壁を感じているはずです。したがって、問いを立てるのは難しいということはないのです。TGAL(Think Global, Act Locally.)の構えを整えれば。これはある意味マインドフルネスの極意でしょう。静かに目を閉じると、宇宙規模の問題とその解決の方法が見えてきます。 

★私はお金を儲けるななどとも言いません。教育は神聖でお金は関係ないなどという馬鹿げたことを言っても仕方がありません。要は循環する経済システムを創ればよいのです。

★みんなで前進しようと希望を信じて声を掛け合い進もうとすればよいのです。そういう人は周りに多いし、世界にたくさんいます。

★ネガティブトークに幻惑されないように、進んでいるのが私立学校です。公立学校ももちろんそれに続くkでしょう。誰でもいいのです。前に進むのは。ただ、現状として私立学校が進みやすい環境にあるのです。その環境を否定せず、認めましょう。だれでも、その環境を創ろうとすれば創れるのです。そのために、ジョブスとアラン・ケイはノートパソコンを生み出したのです。一台のパソコンで相当なことができます。もちろんこれだけで、すべてはできませんが、前に進めます。そして、考えることです。ロジカルシンキングは、当たり前なので、もっと前に進みましょう。感情的になるなロジカルにと言う人は、見落としています。感情は電子的ロジカル現象です。

★今年の慶応義塾大学の小論文は、ロジカルシンキング×クリエイティブシンキング=アブダクションがベースでした。やはり、前進しています。

★ウェルビーイングのビーイング=かけがえのない存在を、ネガティブなメンタルモデルで支配したり支配されたりするのは回避しましょう。

★そのためには、合理的配慮を互いに実行しようということです。ウェルビーイングのきれいな息吹を吸い込み、前進しましょう。ウェルビーイングがゴールではありません。ウェルビーイングはいまここでどんな環境でも生むことができるのですが、現状では一握りの人間です。いまここで全員がウェルビーイングを生み出すシステムを創ることがゴールです。2050年を目指して。

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2022年12月21日 (水)

ドネラ・プロジェクト(21)「主体的」の意味のアップデート キェルケゴールとウィトゲンシュタインとデューイを超えて

★「主体的・対話的で深い学び」の「主体的」という言葉は、極めて重要です。対話は、主体的でなければできないし、深く考え学び表現していくには、主体的な構えが必要なのはいうまでもありません。がしかし、受動的に対し能動的ぐらいの意味ぐらいしかなかなかピンとこないのが、「主体的」という意味です。学習指導要領では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化の充実とか述べられています。いずれも「主体的」であることが求められます。今更ですが、今なぜ「主体的」なのでしょう。

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★鈴木佑丞さんの「<実存哲学>の系譜」は、そのことを考えるヒントになります。この本を読んで、ヘーゲルというのは社会や世界を考える時のキーパーソンなのだということがよくわかりました。ヘーゲルこそが、キェルケゴールがヘーゲルを批判することによって展開した<実存哲学>を生む実存主義者だったということに気づきました。

★ヘーゲルは主観と客観を乗り越えるあるいは統合する着想を描いたわけです。弁証法と訳されるダイアローグを打ち立てたわけです。要するに対話です。「主体的・対話的で深い学び」はまるで、精神現象学的対話の上昇気流をひっくり返したような考え方ですから、ここにもヘーゲルはちゃんといるわけです。

★そのヘーゲルは、しかし、主観を大切にしていましたから、ドイツ法学界からは捨てられます。サヴィニーが法実証主義的展開をしていきます。法学界ではヘーゲル派は一掃されます。

★一方教育界でも、その主観は堅固な教育学体系を組み立てる知識で抑圧されるようになっていきます。ヘルバルト主義の台頭です。これに対して、ヘーゲルもヘルバルトも批判してプロジェクト学習のような経験主義的かつ民主主義的教育をデューイが展開していきます。

★ヘーゲルは、その当時はそれほど権威があるといった感じの哲学者ではなかったのではないかと。結構苦労の連続の人生で、まさに実存的でだったと思います。今では大哲学者のカテゴリーに入っていますが。

★だからこそ当時一世を風靡したのかもしれません。でもそのヘーゲルをキェルケゴールは批判をし、その批判が<実存哲学>ではない実存哲学の系譜として20世紀の哲学をカタチづくっていったというわけです。ヘーゲルは主観と客観を統合しようとしたけれど、結局客観的な制度という物質主義を生み出してしまったわけです。その危険性を察知したのかキェルケゴールは、ヘーゲルから主観を取り戻すべく「主体的」な思考を展開していったのかもしれません。

★その「主体的」思考をウィトゲンシュタインはさらに発展させた。そういえばウィトゲンシュタインの仲間であるラッセルは、ヘーゲルを徹底的に批判しているし、そこらへんからイギリスの分析哲学もヘーゲルを批判して展開していますよね。

★ルソーカントーヘーゲルの流れが、そこから3つに批判的に枝分かれするのです。デューイのプラグマティズム、キエルケゴールの系譜実存主義、サヴィニー&ヘルバルトという近代国家主義。いずれも「主観」をどう捉えるかが重要だったわけです。

★主観を才能とみるか、主体とみるか、個人ととらえるか。

★しかし、ヘーゲルとかの影響はあまりない科学の世界からシステム思考が50年前に大きく広がりました。この思考はメンタルモデルを包摂していますから、ある意味主観と客観を統合しています。

★主観は精神で、客観はシステムという二元論ではなくて、主観と客観をつなぐのがシステム思考というのでしょう。ドネラ・プロジェクトは、「主観」をアップデートすることも役割ということがわかりました。

★こんなふうに、鈴木佑丞さんの本は、20世紀の教育は「主観」をめぐる話だったということに改めて気づく重要な補助線でした。そしてそれゆえ、「主観」のアップデートとして「主体的」という言葉もまたアプデートされつつあるのが現状だというのこともはっきり見えてきました。

★なぜなら、キエルケゴールの時代と決定的には違うのは、地球環境の限界がみえているということです。その限界がみえていない時代は、世の中がどんなにひどい状態であろうが、自分がどう誠実に生きるかでサバイブできたわけです。しかし、現状は自分がどんなに誠実に生きる主体的思考を発揮しても、地球環境の限界を乗り越えることはできません。

★主体的というのは、個人の主観の問題ではなく、もちろん、この地球環境の限界を生み出した制度の問題でもなく、関係性の問題なのです。主体的な関係性をどうつくるか。主体的に関係性をつくるのではなく、関係性そのものが主体的なのです。個人の枠内をはみ出るのが「主体的」なのでしょう。

★独断と偏見ですが、同書を読んで、気づいたことはそんな感じです。

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2022年12月 3日 (土)

ドネラ・プロジェクト(15)星の杜高校一期生の出願前年対比197%!それが示唆する時代背景に思いを馳せる。

★今年、北関東で唯一のカトリック校で、女子校から共学校に大転換した星の杜。来年度第1期生の出願が締めきられたようです。この改革のディレクターの1人に21世紀型教育機構理事の石川一郎先生がいます。その石川先生が同じくディレクターの小野田一樹さんのSNSをシェアしていました。

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(写真は同校サイトから)

★その内容は、次年度の 星の杜高校 第1期生の願書受付が終了し、前年比 197%となったということです。素晴らしいですね。全く新しい学校を作ろうと、構想から2年、その過程は、ブレークスルー会議が頻発していたことでしょう。ここらへんは、いずれ石川先生にお聞きしようと思います。

本ブログでも、星の杜の勢いについて6月にご紹介していました。その勢いが幾何級数的に高まったのでしょう。石川先生がお忙しく、なかなかお会いできなかったというのは、そういうことなのでしょう(笑み)。

★東京でも、今年から赤羽の星美がサレジアン国際になり、来年度から世田谷の目黒星美がサレジアン国際世田谷としてスタートします。両者とも高人気です。カトリック女子校が共学になり、20世紀型教育とは全く違う21世紀型教育(21世紀型教育機構が意味している概念ではなく、20世紀の教育に対する意味。ただし、重なるところは多い)に真剣に取り組むと、復活するというのがカトリック学校の傾向かもしれません。

★クリスマスシーズンです。どこのご家庭でも、街々でもクリスマスツリーが設置されています。ほとんどの場合、ツリーのてっぺんには五芒星(ペンタゴン型の星)が飾られています。

★黄金比でデザインされた美しい星ですね。カトリックでは、その星はキリストの身体を意味します。カトリック校の星の杜の「星」にはそういう意味もおそらくあるのでしょう。もちろん、そういう意味は、全面にはでてきていませんが、創造と貢献というビジョンやチェンジメーカーというストラテージには、それを思わせるものがあります。

★キリスト自身チェンジメーカーですから(笑み)。

★しかも国連でも、世界共通の最上位のルールとしてゴールデンルールを認めています。カトリックの意味する五芒星が象徴するものと同じです。

★21世紀型教育機構の理念も国連が使う意味でのゴールデンルール(文言はマタイの福音からです。クリエイティブクラスとケアリングクラスの象徴です)を設定しています。サレジアン国際のシスターは、21世紀型教育はカトリックと親和性があると言っているくらいです。カトリック学校は、これまで超進学校としてのカトリック学校以外はなかなか苦戦しているのですが、それぞれの21世紀型教育へのトランスフォーメーション(この言葉もカトリック的ですね。「新しい人を着る」と言います)によって、超進学校化しなくてもサバイバルできるカトリック校が誕生する波が確実に生まれてきました。

★なお、一般財団法人東京私立中学高等学校協会は東京の私学が一丸となってそれぞれの21世紀型教育を押し進めていくことを今年宣言しています。昨年から構想されていました。私も21世紀型教育機構の理事として、同機構の同盟校以外にそれぞれの21世紀型教育が拡張されていくことは、Z世代、α世代にとって善きことであると歓迎します。

★何せ、ムーンショット構想2050やWeb3.0の動きは加速しています。VUCAと呼ばれていますが、実はかなり予測可能な事態になってきています。VUCAを乗り越える新次元の21世紀型教育、それはもはや22世紀型教育に突入するということでしょう。

★私の越境的な仲間では、今新次元プロジェクトが5つ立ち上がり、結局、多次元言語×数学×システム思考あるいはアクターネットワーク×アート(もちろん大学受験のイメージではなくシン・リベラルアーツのイメージです)なんだという話になっています。英語とICT(AIで一本化されつつあります)はそれを22世紀に適用し社会実装する必須の道具です。結局100年以上前に、J.デューイが生み出したプラグマティズムやPBL、道具主義、経験主義などの現代化をしているだけのことなのかもしれませんが。

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2022年11月 3日 (木)

今年の総合型選抜を通して見えたこと

★11月1日・2日、総合型選抜の第一弾の結果がドーンとでる日程でした。勤務校は、一学年の定員が80名です。ですからその40%が総合型選抜の結果がでる時でもありました。ですから、7月から10月にかけて、志望理由書ー面接ー口頭試問ー小論文をセットで準備する日々が続きます。小さなキャンパスは、朝から夜(放課後20:20まで100分学習などがあるので)まで、授業以外の時間は、哲学的な対話で満たされます。

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★①「志望理由書」の書き方とか、②「面接や口頭試問」の臨み方、③「小論文」の書き方とか別々にも行いますが、やはり、一貫性や循環を生み出すためには、セットで行うことが肝要です。ですから、勤務校では、セットで生徒と向かい合うのは担任です。そして、①、②、③の強み弱みを分析して、弱みのセクションは、生徒の大学での学びや研究の分野に合わせて他の教員がサポートする体制になっています。

★それゆえ、毎年、7月から10月は、実は11月は指定校推薦が同じように行われるし、5月6月は準備段階に入っているので、半年以上は、対話に満ちているのが勤務校なのです。もちろん、定期テストの時は質問対話が行われているので、一年中対話で満ちている学校です。

★ですが、総合型選抜や指定校推薦に立ち臨むときの対話は、定期テストの時の対話とは差異があるのは、ご想像の通りです。

★その差異が生まれるのは、総合型選抜や指定校推薦の対策対話は「①×②×③×体験」というのが、本当のセットだからです。この体験の意義や価値について学内では、常に議論になりますが、概ね学びのスキルや未来や自らの世界をつくるときのコアになる信念というマインド(ガイストという意味でのマインドですが)を生成するのに必要なのが体験だというのは共通認識ができています。

★この共通認識があるので、部活や行事、授業、学校説明会、課外活動などすべてにわたって生徒が主体的に考え、判断し、アクションを起こすことになる決定的な体験環境をセットするべく教師はプロデュースやコーディネートを行っているわけです。

★授業や探究ゼミは、全員が参加する体験だと読み替えてコア体験としていますし、それぞれの興味関心を進化させる有志が集まるプロジェクト体験は、バッファー体験として行っています。そして、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×体験」をワンセットで循環させるので、コア体験とバッファー体験は有機的に結合します。この結合は、教師や生徒によっても強度やアプローチに当然違いが生まれるので、多様なミニイノベーションが生まれるのです。

★したがって、「体験」は、今目の前のファクト的な体験を楽しむ「現在体験=da体験」ではなく、パラダイム転換に将来繋がる可能性のあるコペルニクス的転回「的」な決定的な体験をするという意味での「源体験=ソース体験」をコーディネートすることが大切です。

★もっとも、実はこのコーディネートは、どこか場所を用意するとか、外部の専門家を呼ぶとかではないのです。もちろん、時間や場所、人、もの、情報、カネは結合しますが、その結合のプロセスが内的PBLになっていることが肝要です。この内的PBLは、生徒自らが問いを設定し、その問いの探究を広め深めていくマインドとスキルと寛容性のシステム思考でできています。

★教育としては、ここまで到達しているので、そのクオリティはなかなかだと勤務校の先生方はすごいなあと実感しています。

★しかし、さらに合格を勝ち得るためには、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×源体験×B1英語」が必要になります。B1英語というのは、英検2級をとれる英語力環境というわけです。この環境があれば、カトリック特別入試である総合型選抜バージョンの試験に十分対応できます。つまり、上智などカトリック系の大学の実績は80名定員で10%以上合格してしまうのです。

★今年勤務校でも、6人上智を受験し、6人合格しています。来年以降はB1英語をB2英語にアップグレードします。大学全入時代の波もあるので、実績としては、さらに伸びると思います。しかし、一般に、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×体験×B1英語」をワンセットで循環できる学びは、受験だけ考えればやりすぎだと思います。たとえば、塾だと体験や英語まで具体的に結びつけるには特別プログラムででもなければコスパからいってやらないでしょう。むしろ、生徒は、この循環の中の弱みを強みに変えるために、弱みの部分を選択してそこを塾で鍛えてもらうパターンが多いでしょう。実際、そうやって、再び勤務校の教師と対話するという生徒も中にはいます。塾の機能としては、そういう弱みを強みに変える場として重要ですね。ただ、学校教育では、ワンセット循環環境をつくり、受験勉強以上の学びになっているわけです。

★でも、それが教育の本意だし、塾と違うということは学校当局が意識したほうが経済合理性を生み出せると思います。それはともかく、生徒が英検2級から英検準1級以上の英語の能力にシフトすると、これだけで、世界大学ランキング250位以上の海外大学の道も拓けてしまうのです。「総合型選抜」や「指定校推薦」の入試制度を逆手にとって、生徒の潜在的能力である1人ひとりの才能が開花するプロデュースあるいはコーディネートをすることが教師次第でできてしまうのです。

★ちなみに勤務校の外部団体が出している高校入試の偏差値は50です。ということは、中学段階の5教科の内申平均が3(5段階)の生徒が大多数です。でも、それは生徒の潜在的能力の評価スコアではなく、中学時点で行っていた受験勉強の結果にすぎません。勤務校の3年間で、その潜在的才能は、<源>体験をベースにしたコペ転的対話で、開花します。中学時点での内申5教科平均が3を切っている生徒も、上智大学に実は多数合格しているのです。

★しかし、カトリック的な意味合いで、愛の導者である教師の存在はおそらく最も重要だと思います。対話というマインドとスキルとビジョンを共有する教師陣。言語能力を日本語だけではなく、英語にも挑戦する教師。数学科と国語科の教師などは、生徒がやるならと自分たちもいっしょに2級に挑戦しゲットしています。そして、2級では、必ずしも英語で思考する力が未熟でも取得できる程度の経験値であることを身をもって理解しています。だから、もっともっととなります。このような教師が生徒とかかわれば、生徒もあるときはフラットな関係ですが、あるときはまた謙虚に耳を傾けるリスペクトする存在にもなるわけです。高校生は、もう大人です。そのくらいの使い分けができる社会性はもっているものです。

★教師がマインド、スキル、ビジョンを豊かにしていける環境は、研修よりもある仕掛けが重要です。それは工学院や聖学院、かえつ有明などはオリジナルの仕掛けを持っています。聖パウロ学園もオリジナルの仕掛けを持っています。それはオープンになっていますが、まさか、教師のマインド、スキル、ビジョン、もちろん、アクションを豊かにする仕掛けだとはなかなか気づかないでしょう。それに気づけば、すばらしい学校教育が開かれます。そして、その気づきは自ら実感しなければ、人から聞いていたとしても、なんだそんなことととなります。そう言った途端、そこで、コペ転的視点が喪失します。

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2022年8月27日 (土)

チエコトバ代表谷口梨花さんと対話~新しいキャリアデザインの小中高の出発点としてのモンテッソーリ教育

★チエコトバ代表谷口梨花さんと新しい子供観、新しい教育観について対話しました。小中高教育の現行学習指導要領は、「主体的・対話的で深い学び」や「探究」に象徴される新しい学びや評価にシフトしました。しかしながら、なかなか変わらないというもどかしさもあるのも否めません。それはなぜか?学校組織や人材育成方法が変わらないからだという話もあります。たしかに、それもあるでしょう。しかし、谷口さんのお話をお聴きして、幼児教育の問題もあるかもしれないということに気づきました。

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GLICC Weekly EDU 第92回「これからの小中高大のキャリアデザインの出発点は幼児教育~モンテッソーリ教育」

★もし、多くの幼児がモンテッソーリ教育を受けていたら、その子たちが小中高時代になったとき、「主体的・対話的で深い学び」や「探究」に結びつきやすかっただろうなあと強烈に思いました。

★谷口さんのお話に耳を傾けていると、モンテッソーリ教育によって、子どもたちがどんどん人間の本質を広げ深めていく自己変容のベースを創っていくシステムがわかります。

★幼児期に自己変容のプロセスをいろいろな機会で体験できるのがモンテッソーリ教育だということです。もしこの自己変容体験を幼児期にしていなければ、大人になっても誰かから与えられたり指示されなければ動けなくなってしまうのかもしれません。

★逆に幼児期に自己変容プロセスをたくさん経験していれば、そのプロセスを小中高に適用していけるのであろうと思いました。

★谷口さん自体は、モンテッソーリ教育の現代化を企図しています。それは、STEAMやリベラルアーツの現代化が希求されている小中高教育につながっていくことでしょう。

★非認知能力があれば、学力を向上させ、チャレンジングな自己変容マインドも持てるようになると言われています。

★チエコトバは、それを大切にするモンテッソーリ教育をベースにしています。

★幼小中高の制度上の一貫性ではなく、教育の質の一貫性を生み出す出発点は、どうやらモンテッソーリ教育にヒントがありそうです。詳しくはYouTubeをご覧ください。

★谷口さん、貴重なお話を、ありがとうございました!

 

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