創造的破壊

2022年5月16日 (月)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(03)建学の精神の新しい意味付け 

★Discover2022のガイドブックは、見事なまでにコンセプトブックになっています。その象徴的なが第1章「建学の精神と黄金律」です。東京私立中学184校が集結する合同相談会ですから、各学校の建学の精神をすべて並べるか、一切具体例は挙げないで語るかのどちらかなのですが、平方先生は各学校の建学の精神一覧は掲載しませんでした。それは、保護者が興味のある学校のサイトをスマホで開いてすぐに知ることができるからです。また、一部の学校の建学の精神を例として挙げれば、公平性を欠きます。

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★したがって、書くとしたら、建学の精神の本質部分を書く以外にないわけです。建学の精神は大切ですが、その本質を2000字強で記述するものは、今までに語られたことはありません。個々の学校の建学の精神は語られることもあるし、それが抽象的に教育活動に反映しているという言説はよくあることです。

★しかし、東京私立中学の建学の精神の本質を包括的に記述することはなかなか困難です。

★ところが、平方先生は、次の3つのセクションに分けて物語っていきます。

・共通の世界を抱くことの大切さ

・建学の精神は、生徒自身の成長物語のテーマ

・建学の精神と黄金律

★学校選択の際に、受験生のメンタルモデルが学校の雰囲気に合うか合わないかは重要だというアプローチから始まります。そして、1人ひとりの自分の物語を歩んでいくのだけれど、通奏低音にあるテーマはそれぞれの学校の建学の精神なのが私立学校なのだと。だからこそ卒業後も私立学校の同窓力は勢いがあるのだと。

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★建学の精神が、1人ひとりの才能を開き、個性的な技術を身に着ける。そして社会貢献へという物語編集の通奏低音であるという生徒個人に向けて語る記述はあまりみたことがないし、それこそ本質的です。

★そして、その本質があるからこそ、ニューヨーク国連本部のギャラリーにディスプレイされているノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれている黄金律に結びついているのだと。

★建学の精神の1人ひとりの才能に染みわたることが世界性を豊かにしていくことにつながるのだという建学の精神の物語。

★ここまで明快に語ることができるのは、受験市場のライター側からはなかなか語れません。能力の問題ではなく、目の前の生徒に建学の精神が反映していく過程を経て卒業していく姿全体を共経験していないので、確信をもって書けないのです。私立学校が学習指導要領をミニマムとしかとらえないのは、この普遍的で具体的で個別最適な建学の精神があるからです。残念ながら、従来型のコンサルタントやライターは、客観的事実にこだわらざるをえません。したがって、学習指導要領を金科玉条のように持ち出すのです。それは仕方がありません。よりどころは、そこしか見当たらないのですから。

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(大正自由教育の本質は今も生き続けているし、これから再び出番がきます。成城学園の青柳先生が熱心に語っています)

★しかし、私学人にとっては、建学の精神が生徒1人ひとりの中で物語を展開していくのは、確信をもって客観的な事実なのです。この確信が映し出されている部分を引用紹介します。

「中高6か年で、建学の精神を軸に自分の物語を描くのですが、実はそれは卒業後も生涯続きます。自分の未来は誰も予測ができません。描くのは自分です。立ちはだかる壁は、未来も現れます。その壁は自分の内側から不安や悩みとして出てくるときもあります。自然の猛威や社会的事件に対する恐れや他者との関係の間に立ちふさがる壁などもあるでしょう。

しかし、大丈夫です。不安や恐れ、苦悩を解決する判断の指標は、<建学の精神>です。自分の物語は、当然自分ひとりの物語ではありません。自然や社会そして他者の精神とのかかわりすべてが詰まっています。生徒が描き続ける、その関係性の中で壁を乗り越えていく行き先は、その都度well-being(幸せ)でなければならないはずです。保護者の方々はそう祈り見守り続けるはずです。

well-beingとは、他者との関係の中で、自分の才能や言動が他者に貢献できていると実感した時訪れます。その一見小さな行為が、気象変動で猛威を振るう自然を穏やかにし、紛争や格差を生み出すような行き過ぎた利益主義を公正な社会活動に回復することになります。

それは、今回のパンデミックショックや国際秩序の揺らぎに見舞われた私たち人類が思い知ったことです。

そして、そのエゴを廃し、磨き上げた自分の才能を他者に貢献するというメンタルモデルが、中高時代に身に着けた<建学の精神>であることは、私学出身者はみな自覚しています。なぜなら、人生の壁に直面し、乗り越えるたびに、母校の<建学の精神>を思い起こすことになるからです。 」

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Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(02)表現の変化 本質を重視 

★今回の東京私立中学相談会は、言うまでもなく高校だけの私立学校は参加していません。勤務校は高校だけですから、私は行く必要はなかったのですが、今回のイベントの本質的なコンセプトの部分について、委員長である東京私学教育研究所の所長平方邦行先生のお手伝いを少しさせていただいたということもあり、具体的な状況に浸りたいと思い参加しました。

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★また同僚の企画戦略室室長伊東竜先生(入試広報部長)ともいっしょに行き、私立中高一貫校と私立高校の違いと共通点を見出し、今後の経営戦略のアイデアをリサーチをするというのももう一つの目的でした。PBLとしては、まずはフィールドワークです。

★さらに、首都圏模試センターの情報誌「shuTOMO」の編集者・表現者の1人北岡優希さんとも合流し、私がお世話になている先生方を紹介するというのも目的でした。北岡さん自身、取材の新たな視点を探索するフィールドワークリサーチだったと思います。

★今、首都圏模試センターは、取締役代表の山下一さんと取締役・教育研究所長北一成さんが、新しい情報誌を発刊しています。かなり斬新な情報誌で、中学入試動向の確固たるデータを基盤に、新しい教育展開のみならず、従来の教育の中にある目に見えない本質を可視化する新しい表現に挑戦しています。

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(生徒と共に未来をwell-beingにする教育を行っている強烈な私立男子校の聖学院の様子)

★そのために中学入試情報のチェンジメーカーを集めています。北岡さんはその1人です。本質をどのようにわかりやすく表現するか。今までの文字ベースの表現だけでは、本質部分を書き込んでいくと小難しくなります。それゆえ、短絡的に難しいからと拒絶され、わかりやすく表現するために本質部分を切り離す表現になりがちです。正解のない時代に、正解のあるわかりやすい表現をするという、編集の矛盾をいかに乗り越えるか、首都圏模試センターはそこにチャンレンジしています。

★そして、実に興味深いのは、東京私学教育研究所が、今回のイベントのDiscoverのガイドブックをパンフレットからコンセプトブックに切り替えたということです。

★従来は、広告代理店に依頼して、監修するというやりかたでしたが、今回は文章それ自体から、平方邦行先生を中心に書き下ろし、デザインから細部に至るまで、平方先生がデザイナーに事細かく編集フィードバックしていきました。

★そのため、今回のコンセプトブックは、私立学校の教師、広報部長、校長、文部科学省のワーキンググループの委員という経験を重ねた平方先生の広く高い視座が反映しています。

★中学入試市場で、私学の各学校の情報を校長や広報部長が語ってきたということはありますが、コンセプトブック丸ごと私学人が書くということは画期的なことです。しかも、東京私立中学全体の教育のコンセプトですから、具体的な学校に偏る部分が一切ないのです。ザ・東京私立学校のコンセプトブックになっているのです。

★受験市場のライターが取材しても、外から見えることしか表現できません。しかし、今回は、学校の日常を知らなければ、見ることができない内容が詰まっています。氷山モデルでいえば、海面下のことも踏まえて書かれているところが随所にあります。

★私立学校は、経営と教育の両輪によって成り立っています。どんなに新しい教育をやりたくても、経営の枠組を知らなければ、何もできません。多くのコンサルタントは、意外にも私学の経営の論理を知らないかのように、無視した発言が多く、現実的ではないことが多いのです。生徒募集が成功すれば何でもできると思っているかのようです。学校の経営者が理想的で、コンサルタントが現実的だとすてきな協力関係が生まれるのです。

★しかし、学校経営者が理想と現実の一致を模索しているのに、教育コンサルとの多くは、空虚な夢を押し付けてくるということも多いのです。その点首都圏模試センターの山下さんは、経営者ですから学校経営者とシンクロする洞察力をもち、その洞察力をベースに理想と現実を一致させる企画を立案実施していくのが北さんです。

★私学と共に未来を創る本質を大切にする教育コンサルト人材が首都圏模試センターに集結しています。

★表面的に新しい教育・古い教育と分断するのではなく、新しくても本質が軽んじられていては生徒の未来はありません。古くても本質が大切にされていれば生徒の未来はあります。その見極めの洞察力と判断力が、私立学校の市場では重要になってくると思います。

★最近北岡さんとコラボしているのは、北岡さんは思考コードを活用したPBLのファシリテーターができる方だからです。ああ、それから押し付けるのではなく、寛容です。寛容こそクリエイティブクラスに必要なのですが、才能と技術があっても、寛容の精神がないコンサルタントは多いですね。ともあれ、才能、技術、寛容性が揃てちるところが北岡さんを尊敬するところです。勤務校の伊東先生も思考コードとPBLを自在に使うクリエイティブクラスです。このような若いコンサルタントと教師が出現する時代であるとういことでもありましょう。

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Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(01)私学の教師の仕事は本質的

★昨日、東京国際フォーラムで、「Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会」が開催されました。ウィズ・コロナの開催とあって、参加者は申込制でした。時間指定人数指定です。1万人定員のところ4万人を超え、抽選となったということです。2014年以来、大学入試改革、学習指導要領の改訂、パンデミック、ウクライナと続く国際社会秩序の動揺、高インフレによる衝撃にもかかわらず私立中学入試の受験生は増え続けています。不安定な世の中だからこそ、不測の事態に対応できる学習環境を選ぶというコトなのかもしれません。

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★開催10時の30分前、相談会の準備をしていた東京の私立中学184校の先生方に、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の会長近藤彰朗先生(八雲学園理事長・校長)から挨拶としてのエールがおくられました。

★パンデミックをはじめ、この予測不能な事態の中で、先頭に立って私立中学の先生方は、創意工夫して、生徒の命を守り学びの機会を守り続けている。いかなる事態にあっても屈しないで、未来をつくる生徒の精神と知恵が育つ環境を創意工夫して乗り切っている。このような本質的な仕事をしている先生方は、医療従事者の方々と同じように、エッセンシャルワーカーであると確信していると。

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★たしかに、オンライン授業で乗り切らざるを得ない時は、オンラインで、しかしリアルな体験がなければ、多感な時代の人間の成長は豊かにならない。そのため、感染症対策を厳しくしながらも。ぎろぎりのところで創意工夫しながら行事や部活や体験授業を行っているのだと。

★現場で、教師は生徒共にリスクをマネジメントしながら、知識のみならず、感性や知恵も豊かにする総合的な教育を実践しています。いかなる事態にも屈せず、勇気をもって正しい言動を大切に生きる体験をしています。もしかしたら、このような状況のデメリットを自分たちを生徒と一緒に強くする経験値を高めているといっても過言ではないでしょう。

★こうして、私立学校は時代の要請に応じて、創意工夫をするがゆえに、新しい教育を展開していきます。しかし、時代の要請は、時代の不安を何とかせよという要請ですから、その不安に屈することなく勇気をもって世界を巻き込み生きていくという建学の精神が時代を超えて存在し続ける普遍的根っこは変わりません。

★コロナ、ウクライナ、フクシマなどの世界の問題が身近な問題と一致しているVUCA時代の真っ只中で行われたのは歴史的な意味があるのだと思います。

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2022年5月14日 (土)

八雲学園の教育の総合力は、ROUND SQUAREを抱え込んでいる。(1)

★まずは、次のイギリスの4つの私立高校の紹介動画を見て頂きたい。このような高校の生徒と八雲の生徒が英語でコミュニケーションをとれるのです。いずれの学校もエスタブリッシュだし、日本の私立学校の学費にくらべると、5倍から10倍です。

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★この4校は、今年イギリスで行われる、ROUND SQUARE(RS)の国際会議に参加するRSの加盟校の生徒が立ち寄る学校です。この動画が出来たときは4校でしたが、現在では5校に増えています。RSは、すでに有名になってきていますから詳しい説明はもうよいと思いますが、世界のエスタブリッシュ私立学校200校の国際私立学校連盟です。

★八雲学園は、その加盟校です。したがって、毎年それぞれの加盟校が属している国や都市で開かれる国際会議に、八雲学園の代表生徒も参加します。ここ2年間ほど、コロナ禍であったため対面型のカンファレンスはありませんでしたが、今年は実施する予定です。

★最初の3日間は、オックスフォード大学に集結し、キーノートの講演を聴いたり、各学校やその国の文化などのパフォーマンスを披露します。キーノートのテーマについて、チームに分かれて対話をします。バラザと呼ばれています。問題解決をするためではなく、もっと多様性を尊重して、互いの感じ方や考え方に耳を傾け、自分の想いを伝え合うという共感の時間です。

★4日目からは、5つの学校の内一つを選び、その学校のアドベンチャープログラムやサービス(奉仕)プログラムを体験したりします。このRSの国際会議に参加する生徒の様子をこの動画で確かめることができます。

★このような生徒とディスカッションし、それぞれの学校の文化や教育に触れることができる経験は、RSでなければできないことは説明するまでもないでしょう。どこの学校でもこのようなっ国際会議に参加できるわけではないのですから。

★そして大事なことは、八雲学園の教育とRSの教育理念やPBLなどの教育方法論が一致しなければ、加盟校として認定されないということです。認定には3年も厳しい審査を受けるのです。

★いくらお金を出しても、加盟校でなければ、参加できないのです。このようなRSの教育は、もはや八雲学園の教育とシンクロしているわけです。したがって、加盟校同士の交換留学は、渡航費以外はかりません。一般の海外研修の場合、コーディネーターに頼みますから、渡航費や宿泊費、生活費以外に、コーディネート料やプログラム企画料がかかります。

★もちろん、国際会議に参加するには、相当な英語力と英語でロジカルにかつクリティカルに考える力、それと芸術や文化、歴史に関する教養も必要です。八雲学園が文化体験を重視していることは、認定の条件として重要なマッチングポイントだったということでしょう。

★それにしても、すごいのは、中1のときに帰国生としてはいってきたわけでなく、初めて英語を学ぶという生徒が、英語で困ることなく、RSの国際会議で、上記の動画にでてくるよな生徒とディスカッションができるようになっているということです。

★どうして、それが可能か?それは中1の時からスモールステップの巧まれたプログラムが目白押しで、小さく始めて大きく育てるようにシステム化されているからです。このことについて、昨日菅原先生と対話をしました。ぜひご視聴ください。

 

 

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2022年4月20日 (水)

shuTOMO 4月号(02)教育DXがもたらすであろうSX(スクール・トランスフォーメンション)?

★shuTOMO4月号の特集で、経済産業省サービス政策課長・教育産業室長・デジタル庁統括官付参事官の浅野大介さんのインタビュー記事が載っています。インタビュアーは首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さん。巧みな問いによって、未来が予想される対話になっています。ともあれ、コロナ禍にあって、GIGAスクール構想は一気呵成に活動的になり、全国の公立学校は、1人1台のICT端末の配備がされたということです。画期的です。

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★ICT端末が入った教室空間と従来の教室空間の違いが鮮明になっています。

★この教育DXによって、変わらざるを得ないのは、学習指導要領の標準時間という考え方、学校時間を規定している校則や部活のあり方だと浅野さんは語ります。

★もちろん、従来の学校が培ってきた良質なものは、大事にし、教育DXと両立できるようにという考え方を展開しています。

★しかしながら、空間の考え方が、サイバー空間とリアル空間ですから、併存はやりやすいですが、両立はにわかには難しいでしょう。

★ただ、日本の経済が復活するには、その難しいところを突破することになります。

★今回の記事では、そこまでは語っていませんが、時間と空間の変容は、学校そのもののあり方を変える化学変化が起こるものです。

★おそらく浅野さんには見えています。私たちもうすうす気づいています。

★毎日報道されているニュースを見ればそれは予想できるはずです。

★ICTの端末は、たんなる学習道具ではありません。生産道具です。この意味が、何を意味するのか。

★それはマックス・ヴェーバーがすでに予言しています。生産手段が1人ひとりに所有されたらどうなるかと。

★生徒が手にしているICT端末は、もはや学習道具レベルではありません。

★経済を生み出す道具です。

★18歳成人の時代。学校は変わらざるを得ないでしょう。すでに中学生が起業する時代です。彼らは、必ずICTを活用しています。

★もし、文部科学省が、この動きを先導していたら、こうはならなかったかもしれません。経済産業省だからこそということもあるでしょう。学校を教育産業としてみたてているということでしょう。

★進路指導も、もはや海外大学をどこの学校も射程に入れるでしょう。偏差値が高かろうが低かろうが、世界大学ランキング100位から200位以内はチャレンジできるのが現状です。THEの世界大学ランキングで、日本の大学は200位までに入っているのでは、東大と京大だけです。

★英語とICTとクリティカル&クリエイティブシンキング、それとプレゼンテーション能力がICTによって鍛えられてしまいます。この資質能力は、もはや学びのための能力ではありません。生きるためのチカラです。ようやく、生きる力の具体化がなされたと言えるかもしれません。

★日本の学校の未来の教室のモデルは、実はすでに世界中にいっぱいあります。

★改革理念を高らかに語らなくても、知の生産手段を1人1台配備することで、静かに大きなウネリが起きています。

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2022年4月17日 (日)

shuTOMO 4月号(01)日本の教育は変わるのか、変わらないのか?

★本日17日、首都圏模試センターは今年度第1回目の合判模試を開催します。同センターは、中学受験情報誌「shuTOMO」を同時発刊します。受験生には配布され、受験生以外はAmazonなどでも購入できます。私も少し協力させていただいているため、今年度の第1回本、中学受験情報誌「shuTOMO2022年4月号」を頂きました。特集がインパクトあります。「日本の教育は変わるのか、変わらないのか?」。初回から飛ばしています。そして、このような特集を学校側ではなく、受験業界側が提示するというのは、ちょっと他国では考えられない動きです。首都圏模試センターの教育関連企業としての価値はグローバルな視野からみても相当なものです。

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★特集は、首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏が、企画編集しています。まずは巻頭言として、2050年ごろからバックキャストして日本の教育が変わらざるを得ない根拠付けをし、子どもたちが生きる未来により良く生きる力を育てる教育を説きます。それを証拠づけるかのように3人の教育改革者にインタビューをしています。

★まずは教育政策を制度設計する官僚側から、GIGAスクールコ構想などで大活躍している経済産業省の浅野大介さんにインタビュー。

★次に、私立学校側から、日本私立中学高等学校連合会の会長吉田晋先生にインタビュー。私立学校に通う生徒が全国に占める割合は33.6%であり、先進的教育のほとんどはほぼここから生まれていると言っても過言ではないのですが、その全国の私立学校の経営面と教育面の両方をサポートしているのが吉田先生です。政財界の広大なネットワークを生かし、文部科学省にも未来の教育のための教育政策について助言もしています。

★最後に、現場で教育改革を成功させている横浜創英の校長工藤勇一先生にインタビュー。工藤先生は公立と私立両方で改革を成功に導いています。日本の教育を変える行政政策も大事です。しかし、そのマクロの改革は、結局は現場というミクロの領域で動かなければ大山鳴動して・・・ということになります。その意味で、工藤先生のチャンレンジングな現場の教育改革モデルは重要です。

★特集の企画やインタビューのナビゲーター、執筆は北一成所長です。撮影はノイタキュード代表北岡優希さんです。感性豊かな北岡さんのシャッターの眼差しは、それぞれのペルソナ表情をいい感じで映し出しています。

★いずれにしても、この特集、相当気合がはいっています。北所長の時代を俯瞰する認識に沿って、それぞれの立場の共通点がわかるようになっています。

★公立と私立の軸とマクロとミクロの軸が巧みに交差して、日本全体のこれからの教育の変化を一望できます。ぜひお読みいただきたいと思います。

★私もしばらく、同書を読んで、簡単なコメントを書き込んでいきたいと思います。

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2022年3月15日 (火)

学校が変容するというコト(24)私立学校の存在意義をもっと多角的なデータで検証したほうが良い 平方先生との対話

【前回の続き】

★平方先生は、私立中高一貫校は時代の精神を読み解き、先見性・先進性を発揮してきたわけだが、その根拠となったデータを提示してこなかったかもしれないと振り返ります。なんだかんだといって、受験業界と同じ種類のデータしか創ってこなかったかもしれないと。もちろん、助成金データなどの経営的データは、受験業界にはないデータで、貴重だが、先見性・先進性を根拠づけるデータを引用しないできたのではないかと。教育内容に関連するデータとしては、結局は偏差値と大学合格実績のデータが中心で、それ以外のデータを活用して、語ってこなかったと。それゆえ、私立学校側の教育研究所として、多角的なデータをますは活用しようと考えているということです。

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★たとえば、戦後から2020年までの貿易輸出入額の推移のデータを見ると、1980年代から私立中高一貫校が人気が出たことがよくわかります。また、1998・1999年と2008年と2014年の3つの時期で私立中高一貫校の出願動向が変わるのもよくわかります。

★バブルがはじけて産業の空洞化が始まる時期、リーマンショックという金融危機、TPPに参加を迫られるグローバル危機です。

★産業の空洞化によって、日本のもの作り産業はダメージを受けました。その原因の一つは、経済の空白による金融政策のまずさにありましたから、私立中高一貫校に通わせる保護者に直接的にダメージを与えました。

★さらにITバブルがはじけ、グローバル金融の危機のダメージは、前回とは違い一部の大手企業だけではなく、日本の大企業全体に影響を与えました。ここから日本の産業はものづくりというハードパワーからソフトパワーに転換が迫られました。IT財で優位に立たなければ、輸入超過に陥ります。

★そして、2014年。先進諸国の中で、GDP成長率が停滞においこまれた日本が、TPPに本格的な対応に迫られます。これによって貿易のフラット化、ファスト化、フリー化が進むことになります。

★1989年のベルリンの壁崩壊後に、日本のバブルも崩壊し、グローバルな世界での経済活動に日本は突入しました。労働集約的な日本経済では、資金集約型グローバル経済には太刀打ちできないという経験を幾度か経験します。

★この渦中にいたのは、私立中高一貫校に通わせる保護者です。経済の空洞化は、海外で仕事をする機会を拡大し、そこで活躍する方々がその保護者だったのです。帰国生・国際生入試を各校が行うようになったのには、このような理由があったわけです。

★しかも、ハードパワーからソフトパワーに移行していた渦中にいたわけです。グローバル企業や仕事で活躍している保護者は、英語とICTの重要性を痛いほど理解しているのです。それから、グローバルコミュニケーションで大事なことは、もの作り産業が世界で優位だったころとは違い、ソフトパワーで優位に立つには、ルールが複雑になり、知財や人権など気遣いをしなければならなくなりました。いわゆる強欲資本主義の反省が21世紀に迫られ、倫理的な資本主義とか創造的資本主義が、世界経済フォーラム(ダボス会議)で議論され、パンデミックショックで、グレートリセットとまで言われる時代になりました。

★こういう流れの中で、脱偏差値という発想や海外大学進学という選択肢を増やす動向、グローバル教育、イノベーション教育に舵をきった21世紀型教育が注目されるようになったのは必然だったのです。

★それなのに、この21世紀型教育では、大学合格実績が出せないなどと当初揶揄していたグループは、実にドメスティックな感覚で、この世界貿易の潮流を無視した、つまり保護者が抱えている課題意識に全く応えていなかったということが、改めて了解できます。

★もはや、そのような暴言を吐く人はいないし、まだいたとしても、優先順位はその方々への対応ではありません。大事なのは今ここでと今後です。国際秩序が揺らいでいます。グローバルドミノ危機に直面しています。これを乗り越えるには、クリエイティブクラスのみならずケアリングクラスが重要な意味を持ってきます。再び建学の精神がこのような新しいグローバル人間力を育成する駆動力を発揮する時代になりました。勇気と正義と人類愛とプラグマティックなマインドをもった人間力です。

★sのために、今後平方先生は、日本&東京私学教育研究所において、多角的なデータを読み込みながら、そのファクトに基づき時代の要請や時代の精神を読み解いていくと語っています。もちろん、従来行ってきた保護者からの私学のイメージについてのアンケートなどは、市場ニーズのマイニングとして必要であると語ります。

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2022年2月26日 (土)

学校が変容するというコト(14)個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会

★1月14日に、中教審内に新設された「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」。2月7日に第1回のミーティングが開催されたようです。

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★文科省によると、設置の目的は、こうあります。

1.設置の目的
○ 「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(令和3年1月中央教育審議会答申)を受けて、デジタル化などの社会変化が進む次世代の学校教育の在り方について検討する必要。
○ 児童生徒への学習指導・生徒指導の在り方や環境整備について、特にGIGA スクール構想に基づくICT 環境の整備と活用を進める中で、教科書・教材のデジタル化を推進するとともに、既存の教科書・教材との関係を整理し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することが求められている。
○ このため、多様かつ専門的な見地から横断的に議論し、検討内容を必要な施策に結び付けていくため、初等中等教育分科会に本会議を設置する。

★そして、検討事項は、こうなっています。

2.主な検討事項
個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するための、

(1)一人一台端末等を円滑に活用した児童生徒への学習指導・生徒指導等の在り方について
(2)教科書、教材、関連ソフトウェアの在り方について
(3)学校内外の環境整備の在り方について 

★要は、今回のパンデミックショックで実施がはやまったGIGAスクール構想と「主体的・対話的で深い学び」の両立をすぐにも実施しなくてはという話です。しかしながら、ICTを使えば個別最適な学びと協働的な学びは一体化してすてきだなんてことはないのであって、そこは現場でがんばってねということでしょう。

★端末をどう使うか、デジタル教科書やオンラインのためのプラットフォームやアプリをどうするか、Wifiやクラウドをどうするかなどなどはとても現場では大事なことであり同時に個別解が大量に増え、とても大事な生徒の存在そのものが置いてかれることもしばしばです。

★そうならないために、メンバーの一人である上智大学の教授奈須正裕さんの上記写真の本はおススメです。

★ただし、小学校のケースメソッドなので、高校にはなかなか適用できないこともあります。

★いや、小学校から解決できないで先送りされてきた問題が高校で噴出しているのです。そこはICTは逆効果だったりするし、協働学習が傷を深める結果にもなってしまいます。

★つまり、そこでこそ個別最適化が大事なのですが、現状ICTを活用した個別最適化は、マッチングしないのです。ICTがダメなのではないのです。問題が正しく把握されていないのです。

★そして、結局そこは明らかにすることは難しいところです。

★このメンバーが想定している生徒は、およそ日本の生徒の70%くらいでしょう。統計的にはなかなか効果的ではないかということになるのかもしれませんが、なかなか切ないですね。

★私立学校というNPO型法人で、なんとかサポートしていくしかないようです。しかし、そこには補助金の量が少なく、本当にたいへんです。なぜ補助金が少ないかというと、個別最適化や協働学数と言っていながら、ベースが教科学習なのです。

★その教科学習の学び方が、個別最適化で柔軟に対応されず、1人も残さずきっちり履修させることが個別最適化だという前提があるため、その前提を実行しがたい場所には、補助金がたくさんでないのです。本当に困っている部分に回ってこないのです。どうしてそうなるかは、学校の問題ではなく、そこを利益にしようという団体があり、そこを規制することは政府ができないでいるからですね。

★そんなことをしたら、困っている生徒の行き場所がなくなるからです。

★そして、その教科学習から解放できないのは、共通テストがあるからです。実際には共通テストを受けずに進路を決めている生徒も多いのに、にもかかわらず教科学習を卒業のハードルにするのです。

★教科学習が壁にならない生徒は、全体の60%にすぎないのです。のこりの40%に対する個別最適化の議論が必要です。

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2022年1月26日 (水)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(29)工学院 大飛躍の風。

「2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(25)工学院 New Value School 学びの生態系が拡張」で、工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)の生徒募集が前年対比を超えるのではないか、それはすべての生徒がそれぞれの興味と関心をグローバルでイノベーティブで、クリエイティブな学びや探究に広げていく高い教育の質があるからではないのかというような趣旨のことを書きました。そして、それは2月1日を待たず、証明されました。

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★同校教務主任の田中歩先生によると、出願総数の2022年1月24日同日前年対比で150%弱だそうです。すでに帰国生の前年対比は126%です。そして、なんといっても、この段階で、出願総数も、実受験者数も昨年の最終の数を超えてしまったそうです。工学院には、大飛躍の風が吹いていると言えましょう。

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★首都圏模試センター発刊の「しゅとも11月号」の特集「進化する授業、進化する教師」で、田中歩先生が取材されています。「対話から1人1人に最適な学びを提供する個別最適“家”」というペルソナが与えられています。

★このタイトルを見たときに、アンディ・ハーグリーブスの“Professional Capital”という本を想いだしました。2013年に出版された本で、21世紀型教育機構を創設する時に、共有した本です。ここから21世紀型教師としてSGTを生み出そうと田中歩先生や聖学院の児浦先生と考え、活動を開始したわけです。

★最近、ライフシフトという本も邦訳され、有形資産から無形資産へという流れがでてきています。まさに工学院の教師は無形資産そのものだし、ライフシフト時代をサバイブする今のZ世代、それからちょうど中学受験生であるα世代が無形資産を生み出すような教育環境を作りだしています。

★ライフシフトで語られている有形資産と無形資産とハーグリーブスのいうビジネスキャピタルとプロフェッショナルキャピタルは、完全に一致はしませんが、重なる部分も多いですね。貸借表の資産と資本の違いとか、そういうことではもちろんないでしょう。あくまでもメタファーでしょう。

★本間はよく教育現場で金の話をするけしからんとお𠮟りをうけることも多いのですが、ライフシフトでは、教師は大事なケアリングクラスです。また、ダボス会議で議論され続けているグレート・リセット時代におけるクリエイティブクラスです。そんな教師が富裕層になる必要は毛頭ないし、なりたいとも思っていないでしょうが、ゆとりのある豊かな精神を持続可能にするキャピタルは必要だと思います。ハーグリーブスも、同書の中で、次のように語っています。

“ When the vast majority of teachers come to exemplify the power of professional capital, they become smart and talented, committed and collegial, thoughtful and wise. Their moral purpose is expressed in their relentless, expert-driven pursuit of serving their students and their communities, and in learning, always learning, how to do that better.

Hargreaves, Andy; Michael Fullan. Professional Capital: Transformng Teaching in Every School . Teachers College Press. Kindle 版.”

★deepl翻訳によると「大多数の教師がプロフェッショナル・キャピタルの力を発揮するようになると、彼らは賢く、才能があり、献身的で仲間思い、思慮深く、賢明な教師になります。彼らの道徳的目的は、生徒と地域社会に貢献するために、専門家主導で絶え間なく努力し、より良い方法を常に学習することに表れています。」少しおかしなところがありますが、私が訳するよりよほどわかりやすいので、そのまま掲載しておきます。

★工学院の教師は、まさにプロフェッショナル・キャピタルですね。大飛躍の風が吹くはずです。

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2021年11月13日 (土)

New Power School デジタルツインで教育市場を創出する局面へ World X education Market(世界変容型教育市場)

★先週、小田原で、私学経営研究会に参加していた時、プログラムの合間で、日本&東京私学教育研究所の所長平方邦行先生とデジタルツインやメタバースの世界変容(World X)型教育市場の立ち上げ局面について雑談しました。フッサールの相互主観がコモングッドに共感できる対話が学校現場でいかにしたら可能になるのかがテーマでした。このテーマは、現状どこも手を付けていないので、現場は悲鳴を上げています。

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★この苦難を乗り越えるには、リアルな世界ではそもそも収拾できないでいるわけですから、ここにいくら道徳を持ち出してもうまくいきません。ハイブリッドは、まだリアル>サイバースペースなので、根本的な解決はつかないのです。

★相互主観のコモングッド問題は、メタバースからやってきているので、そこにポジショニングを置かなければ解決がつきません。

★この点に関して、日本の教育市場はまったく動けていません。市場が働かない公立学校では、このメタバースの発想は生まれてこないシステムになっているので、やはり私学に期待がかかるのですが、それに気づいている学校というより人材はまだまだいません。もちろん、S大学の1年生Nさんと私たちはNさんが卒業するときには、そうなるように準備をしています。

★マーケットはある程度

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★新市場というのは、アーリーマジョリティまで拡散しないと動きません。今、ようやくNew Power Schoolの勢いが増し、首都圏の中学受験市場では、アーリ―アダプター領域を超え、したがってキャズムを乗り越えて、アーリーマジョリティ領域まで少し食い込みました。

★イノベーター理論の各領域のシェア率は、科学的に検証されているわけではありませんが、50,000人の首都圏中学受験生の学校選択をカテゴライズすると、ぴったり当てはまるのです。

★しかし、GAFAの動きがはやく、ハイブリッドではなくデジタルツインのメタバースの世界に突入しているので、日本のNew Power Schoolの中にも、すでに発想が古くなってしまっている学校がでてきました。マーケットがないので、コンサルタントやICT系の企業は、目に見えるもので商売をしますから、当面New Power Schoolは次のステージが見えない期間が続くでしょう。2024年までは、2011年ころに生まれたNew Power Schoolの仕掛けを追い続けるでしょう。ここにNew Power Schoolのプラトー状態が続きます。

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★現状のNew Power Schoolは、上記座標の第3象限、第4象限のどちらかに与しています。この座標はもはやOld Power Schoolは組み込んでいません。それは別の座標でカテゴライズする必要があるだけです。いずれにしても、2025年から、Old Power Schoolは、Z世代の次の世代にとっては、スーパーOld Power Schoolになるので、放置しておいても、マーケットから退いていきます。もちろん、起死回生で変容して復活することはありますが、そのときは、世界X教育市場か経済X教育市場かどちらかにポジショニングを決めているでしょう。

★結局、ここにいるのは、開成、麻布、女子学院ということになるでしょうね。それから、もちろん、現在のNew Power Schoolからそのどちらかのマーケットに位置するところがでてくるでしょう。

★平方先生としては、私立学校は、世界X教育市場を創出する側に回って欲しいとビジョンを創っていますが、最近ではリバタリアンの学校やコンサルタントが斜めから切り込んでくるので、経済X教育市場創出の勢いと競争関係になると思います。

★とはいえ、それは2024年からなので、この3年間で準備をしようということです。

★当然グローバルシチズンシップを広げる動きになりますが、このグローバルシチズンは、あくまで、世界X教育市場というデジタルツインの第1象限で活躍します。経済X教育市場は、グローバルリバタリアンが活躍します。

★私立学校の良いところは、未来を見ながらいまここで対応しながら働けることです。企業は未来を見ても、実際は目の前のマーケットで比較優位の競争を避けることはできません。

★これほどまでの新しい世界変容がなかった20世紀は、未来と言っても、効率性や実用性の向上だけで成功できたのですが、デジタルツインになると、その効率性は非効率性に転じ、実用性は無用の長物になっていく可能性が高いのです。

★本間はまた馬鹿なことを言っているといわれるでしょうが、こう語っているうちに、デジタルツインな世界で、世界変容型教育市場に投資する方が現われてくるでしょう。期待しています。

★法改正や制度設計の再構築がちょっと時間がかかりそうなので、そこをショートカットできる方法を考えねばなりませんが、現状の制度設計でそれが出来る領域もあります。すでにそこをつかって、リバタリアン教育市場を拡大しているところはあります。

★そこが、インターサブジェクトのルネサンスに火をつければ、一気呵成に経済X教育市場が立ち上がるでしょう。

★それに対応できるように、私立学校は世界変容型(世界X)教育市場を立ち上げる準備をしなければなりません。

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