創造的破壊

2025年7月14日 (月)

私立中学校選択 氷山モデル(07)進路指導の前提やあり方が変わる 2026年高3生から東大のCollege of Designのインパクト

い★前から発表されていた2027年9月入学の東大の新コースというか学部というかクラスというか、要するに<College of Design>の入試要項の概略が発表されました。50人は日本の学習指導要領を学んだ生徒、もう50人はIBやAレベルなど世界標準のカリキュラムを学んだ生徒を受験対象とします。

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★両者の細かい違いはあるのですが、高校の成績表、書類、論文、英語での面接、英語検定資格のスコアはほぼ同じです。違いは前者は共通テストを受験、後者はIBやAレベルなどの成績結果をだします。

★要項の概要を読んだだけでは、後者は留学生だけなのか、日本の1条校でも、IBやAレベルなどを取得することができる学校もあるので、そこの生徒でもよいのかはまだ判然としませんが、そこはいずれ明確になるでしょう。

★いずれにしても、あの東大の一般選抜の試験を受けない新たな方式が生まれたということです。東大も多様な生徒の才能を受けいれる入試の幅を広げたわけです。

★今までは、海外大学と国内大学の入試のあり方が全く違うという感じでしたが、2026年の高3からは、徐々にその違いが縮まり、共通点が多くなってくるということです。

★この動きは、東大が始めれば、他の国公立大学も動く(この姿勢がよいかどうかはともかく)ので、加速するでしょう。早稲田、慶応はすでに別の方法でそのような方向に動いていて、国公立大学の補完として私立大学の中で一番難しいという段階から、国公立、私立大学が互角のイメージをつくりあげています。

★私立大学も早稲田、慶応に続くところは当然出てくるでしょう。

★AI時代は、牧歌的な知性獲得の時代は、残念ながら去ってしまいます。AIをメタコントロールできる高度な知性や専門性を研究する時代です。一部の権威主義的大学がその研究を握っている場合ではないのです。

★少子高齢化と言えども、小中高生1200万人まだいるのです。この1200万人がみなそのような高度な知性と専門性を、自分の好きな領域で発見し、身につけることができる時代がAI時代だと自分たちの意思でするしかないというのが、今の教育の現状です。

ここにいちはやく気づいているのが、突出したグローバル教育を行っている学校です。外国人教師が5人以上教鞭をとっている学校がほぼそのような覚悟を持っているでしょう。この動きはどんどん広がっていくはずです。

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2025年7月11日 (金)

私立中学校選択 氷山モデル(05)教育の多様性革命 - 子供に合う学校選択の時代~『どこが良い学校か』から『どの学校も価値がある』へ

★私立中学校選択を今書いているわけですが、書きながら、私の立場を明らかにしておく必要があると気づきました。そこで、その点について書いてみます。

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(図はclaude)

★今までの私立学校選択は「優劣の競争モデル」が中心でした。学校同士が序列を作り、より上位の学校を目指すという発想です。しかし、2015年から徐々にシフトしてきています。私立学校選択は「多様性の適合モデル」に変わってきているということです。

★つまり、従来の競争モデルでは、「どの学校が一番良いか」という単一の評価軸で学校を序列化していました。これは画一的な価値観に基づいた選択です。それが、首都圏模試センターが思考コードを開発してから、新しい適合モデルとして、「どの学校が、この子にとって最適か」という個別の適合性を重視するようになってきています。子供一人ひとりの個性、学習スタイル、興味関心、将来の目標が異なるため、それぞれに最適な学校も異なるという考え方です。

★このモデルが機能するためには、多様な特色を持つ私立学校が豊富に存在することが不可欠です。芸術に特化した学校、科学技術に強い学校、国際教育に力を入れる学校、少人数制の学校など、様々な選択肢があってこそ、子供たちは自分に合った環境を見つけることができます。

★結果として、「どこが良い学校か」という序列ではなく、「どの学校も、誰かにとっては価値のある学校」という多元的な価値観が生まれます。これは教育の多様性を豊かにし、子供たちの可能性を最大限に引き出す仕組みです。

★このビジョンは、もしかしたら新しいものではないかもしれませんが、私立学校が少なければ、やはり競争になり元の木阿弥です。しかし、首都圏には、私立学校がたくさんありますから、かなり多くの子供たちにとって、自分の価値創出の居場所としての多元的な価値学校が存在できるのかもしれません。この首都圏に私学が多いという世界でも珍しい多元的価値学校というユートピアスペースが、この転換を生み出すことになる時代なのかもしれません。

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2025年7月 7日 (月)

3つの観点別学習状況の評価から「主体的学習態度」は外される?私学は独自に進むだけ。

★毎日新聞 7/4(金) 19:47配信の記事<「学ぶ態度」は評定の対象外に 次期学習指導要領、文科省が方針転換>には、こうあります。

「文部科学省は4日、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の特別部会で、従来の成績評価の方法を見直し、評定を付ける際に「主体的に学習に取り組む態度」(主体的な態度)を考慮しないとする案を示した。この評価方法は2020年度以降に導入されたが、適切な評価が困難で教員の負担にもつながっているとの指摘があり、方針を転換することになった。」

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(東京私学教育研究所編「Discover」から)

★これによって、推薦入試が多くなるとか、結局基礎学力重視の総合型選抜になるとか、各メディアで多様な意見がでているようです。そもそも「主体的な態度」を評価できるのかとか、「客観的」なんてものの見方はweb3.0時代にその概念の変更をしなくてもよいのか?歴史的には、すでに「客観―主観」の二項図式は反省されてきているのではないか?などなどみんなで考える良い機会だとかも言われています。

★どれもその通りですが、東京私立中学高等学校協会は、毎年5月の東京私立中学合同相談会で配布する中学入試ガイドブック「Discovery」で、現行学習指導要領の「資質・能力の3本柱と3つの観点別学習情況の評価のズレ」を指摘しています。主観的なことは評価できないからといいながら主体性を大切にする。個別最適化を大事にしながら主観性を評価できないとする考え方は、そもそも現場では無理があります。

★たしかに、「評価」というものをどう考えるのかによって、そのズレは何とでもなるのですが、いわゆる教育業界では、評価において「客観―主観」の図式を変えようとしません。

★そんなわけで、東京私学教育研究所では、学習指導要領は方向性を示すけれど、具体的な解釈は現場に任されているので、独自に行っていこうと、思考コードや研修コードを足場に各私学と協力して研修をデザインしてきているのです。

★それに、3つの観点別学習状況の評価が制度化される以前から、いわゆる総合的な全人教育を行っている私学は、成績表の様式など創意工夫して行ってきています。

★ただ、制度が変わると、指導要録などの制度上の書式が変わります。それを変えるコストや労力は、現場ではたいへんなのです。私立学校は各校がそれぞれシステムを持っているので、それを変えるのは一苦労です。教育委員会のように一元管理ではないからです。

★もっとも、一元管理は勘弁してほしいので、建学の精神に基づいて独自に先進的先見性のある教育を行っているのですが、そこに没入させてくれるすてきな次期学習指導要領改訂を望みます。

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2025年6月23日 (月)

今、日本の私立学校では、ハーバード大学教授が考える「良い教師」以上の「良い教師」がたくさん増えている

「資産形成ゴールドオンライン(2025年6月22日)」にハーバード大学のロバートキーガン教授の著書から抜粋した記事<本当に「良い先生」の共通点…ハーバード大学名誉教授が明らかにする、教育現場に潜む「教え方の罠」>が掲載されています。この記事の説明はもちろん私などではできませんので、関心のある方はお読みいただくとして、私は自分なりに気づいたことを書きたいと思います。

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★同記事では、教師のタイプを講義型授業のタイプかPBL型授業のタイプかどちらのタイプの授業をする教師が良いかという話はしていないのです。どちらのタイプでも、C型講義をする教師とB型PBL授業をする教師であればよいのであると。コンテンツ重視型であれ、コンセプト重視型であれ、大事なことは、生徒が具体と抽象を往還できる思考を活用できるかどうかなのだと。だから、講義型でも、具体と抽象を往還できればよいし、PBL型でも具体と抽象が往還できなければ、それは必ずしも良いということにならないかもしれないと。

★記事の中では、具体的なコンテンツの理解で終わる段階を第2次元のマインドと呼び、あるコンテンツを超えて他のコンテンツの理解に転移できる思考の段階を第3次元のマインドと呼んでいます。解説は次のように書かれています。

第2次元のマインドは、「持続的カテゴリ」と呼ばれ、自己や他者に関わらずあらゆる具体的なものごと・要素を1つの集合に沿って意味構成する原理を指す。第3次元以降のマインドについては「『持続的カテゴリを超えた理解』が必要である」と述べ、複数の持続的カテゴリを横断した、いわば複数の評価軸を意味構成に挿入できる状態、としている。 

★そして、講義形式かPBL形式化の選択ではなく、どちらの授業でも生徒が第3次元マインドの思考ができる授業であればよく、コンテンツ重視の時もあればコンセプト重視の時もあるだろうから、相互補完の関係にあるのだというわけです。

★私も賛成ですが、上記の図のように、どのタイプ・レベルの授業でも、生徒が第3次元マインド以上のレベルに気づくものです。重要なのは、それに気づく生徒の数が多くkなる確率の高い授業タイプやレベルはどれかです。

★そうなると、具体的事象の理解から生徒自らが問い返してコンセプトにジャンプする授業であるC型PBL授業が確率が高くなるというのは経験上手ごたえを感じているのが現場の先生方です。

★今私立学校では、探究をどのように構想していくか授業実践研究が頻繁に行われています。そこでは、当然Aから始めて最終的にC型PBLになるように構想されています。そして、学年によっては、いきなりC型PBL授業を実施している先生方が増えています。

★ロバート・キーガンの著書の抜粋された部分に限ってでしょうが、そこで良い教師とされているのは、どちらのタイプであれ、具体的事象からコンセプトにジャンプする誘導や問いかけをするわけです。しかし、今私立学校の先生方は、それをも生徒自身ができるような学びの環境を整えています。そういう意味では、ロバート・キーガン教授の考える教師像を超えています。

★そして、今さらに先生方は、コンテンツ、コンピテンシー、コンセプトを融合するコンセプトレンズを生徒1人ひとりが発見し活用できるような学びの環境を創ろうとしています。メタ認知のシステムの個別最適化と呼んでもいいかもしれません。メタ認知という言葉はよく使われるようになったのですが、まだ鏡だとかモニタリングだとかリフレクションだとか別の言葉で置き換えられ、イメージは描きやすくなったのですが、まだメタファー以上の解明はなされていないのが現実です。

★もしこのコンセプトレンズやメタ認知システムの言語化・可視化されれば、多くの生徒が複眼思考を持てるようになるでしょう。どんな状況下にあっても、サバイブできる野生の思考の個別最適化。これがあらゆる格差を解消していく一つの方法かもしれません。このコンセプトレンズの可視化を生成Aiを活用しながらPBL型授業をしていくことによって可能にしようとチャレンジする先生方が現れてきました。

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「学びとビーイング」新たなフェーズに「学校のチームづくり」WS開催 in 芝学園

昨日6月22日(日)13時から「学びとビーイング」のワークショップ第1回が開催されました。会場は、芝学園でした。趣旨は、主催のりょうゆう出版社のサイトによると、「いま学校でチームづくりに取り組んでいる方、課題を解決する方法を探している方、風通しの良い学校をつくりたい方、、、そうした皆さんが次の実践に向かうための一助となるような場をつくりたいと思います」ということでした。

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★同出版社の代表安修平さんは、中高や大学の先生方を編集者として招き、『シリーズ 学びとビーイング』全第4巻を完成させました。テーマは「学び続ける教師のあり方(Being)とは?」。変化する時代のなかで学び続けることの意味や教師の「あり方」について、全国の教職員、研究者、NPOスタッフ、プロファシリテーターなど多彩な皆さんから対話のきっかけになる問いや提言を集めたたくさんのレバレッジポイント集になっています。

★今回は、安さんが、そのような1人ひとりの先生方の提言に耳を傾け、相互編集をしてきた結果、あることに気づいたのではないかと推察しています。それは、執筆した先生方は、自分の授業づくりや教育活動だけではなく、実は学校や組織を巻き込んで、チームづくりや組織作りをしているのではないかということです。そしてだからこそ、自分の授業づくりも組織と共にエネルギーを生み出しているのではないか。だったら、そこに焦点をあて、組織の、特に学校組織の中のチーム作り、最終的には学校組織全体の組織作りを対話するのはどうだろうという目的があったのではと思います。

★今回も北海道や福島から参加された先生方もいて、日曜日の午後4時間プラス懇親会で、対話が深まっていました。参加した先生方がお一人お一人が、トリムタブ(あのバックミンスターが使った言葉を、オードリー・タンさんも愛用して使っている言葉)になれば、たしかに大きな船も動かせるでしょう。

★第1回は、その出港式でした。今回のWSを企画運営された安さんと編集の先生方、また惜しげもなく学校チーム作りの紆余曲折の軌跡=奇跡の物語を話してくださった3人の先生方、そしてこれからの希望を共有させて頂いた参加された先生方ありがとうございました。

★11月3日、芝国際で、第2回目は開催予定だそうです。ぜひみなさんフラットでフリーで何よりファンのWSで対話しましょう。

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2025年6月22日 (日)

工学院の好奇心 感じて、動いて、夢になる

6月21日、工学院大学附属中学校は、学校説明会と同時開催で、小学生向けの「体験学習・部活動体験」を実施しました。即日記事が掲載。すごい発信力・表現力です!記事を読んで、やはり論より証拠、好奇心こそ自分を見つけ、仲間と未来を創るエネルギーだと感動。まさに工学院の教育環境は生徒自身が自分の中に好奇心を生み、感じて、動いて、夢になる未来への軌跡の物語を描ける力を、先生方が寄り添いながら共に歩いていくのだなあと、その感覚が伝わってきました。

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(写真は同校サイトから)

★記事を目次化するとこんな感じです。

 講座の内容

・サイエンス部:自分の口内細胞を顕微鏡で観察・撮影・印刷

・バドミントン部:部員の指導で打ち方体験、再来の小学生も参加

・ダンス部:音楽に合わせて振り付け体験、緊張が笑顔に変化

・英語×ロボット:ネイティブスピーカーの教師との英会話でレゴロボを製作&プレゼン

・理科:糸電話で音の伝わり方を実験、対話を通じて探究心が育まれる

・茶道部:お点前と上生菓子を体験、立礼式のデモも見学

・情報:中野校長のバーコードの仕組みを使って“情報を考える”授業

・デジタルクリエイター育成部:マイクラのアドオン作成とゲーム体験

今後の予定:

・9月6日(土)・10月18日(土)にも内容を変えて実施予定

・7月27日(日)には、小学3年生から参加できる「自由研究教室2025」(全28講座)を開催予定

★それにしても、「自分だけの発見」がすべての根底にあるのに気づき驚愕です。サイエンス部の自分の細胞を可視化するなんて、サイエンスの力でリフレクションすることができるとは!

★バトミントン部も、スポーツは自分のマインドをどうコントローるできるかがすぐに了解できるスポーツ。そして、コーチや仲間の支えは当然なのですが、先輩が小学生に同じ目線で対話している様子の写真が工学院らしいなあと。

★ダンス部の活動も、自分の力量を高め同時にチームワーク。協調性の中の自分の際立った力。しかも芸術性の魅力。人気の部活ですよね。

★英語×ロボットも、インターナショナルコースだけではなく、すべての生徒が英語とイノベーションを対話しながら学ぶ。レゴは個性があふれる表現ツールでもあります。

★理科は、糸電話。かなりの長距離でも、伝わる振動。つながりと同時に自分自身の聴覚にダイレクトに伝わってくる感覚は、すてきな気づきが多かったでしょう。デジタル環境があふれている工学院があえて、このリアル体験。体験による究極の感動ですね。

★茶道部の体験を設定するというのが、すばらしい。破格のグローバル教育を行っているからこそ、国際交流をしている海外の私立学校にはない空間です。そしてなんといってもアスリートにとって自己を見つめる道が生まれる空間でもあります。日本の教育を支える世界でもユニークな場です。さすが。

★中野校長自身による情報の授業。バーコードシステム体験。バーコードシステムは、かつては画一的なコントロール装置として警戒されていたときもありました。それは今の生成AIもそうです。情報の授業は、常に警戒される冒険がつきものです。そして、その冒険の向こうに、今やバーコードは個人の特徴を認定する公共社会にはなくてはならないシステムとして発展しています。社会課題への問いを生み出す宝庫が情報の授業です。

★デジタルクリエイター育成部。工学院アントレプレナーシップが生まれる拠点の1つです。教師の情報の研修も請け負えます。アントレは、自分の才能を拡張していく冒険精神が旺盛だから可能です。

★ウダウダ書きましたが、要は自分は何が好きか感じて、動いて、未来をみんなで創っていける学校。それが工学院です。FLAT!FREE! FUN!

★これからも、このようなイベントを開くそうです。ぜひ楽しみましょう。

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2025年6月20日 (金)

生成AIを活用する授業で今起ころうとしているコト メタ認知システムの本質的転換 

★多くの学校でも探究の時間が広がり始めています。そして、探究型授業として各教科の授業も変わりつつあります。この変化があるところには、生成AIを取り組んでいきますから、その変化の質の転換が起ころうとしているのです。

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(従来型の認知体験プロセスとメタ認知システムの関係。claudeが作成)

★探究というのは、標準的には、「体験→リサーチ→議論→編集→発表」という認知体験プロセスを経て行われます。探究のみならず、多様な研修や体験のプログラムにおいて、この認知体験プロセスを生徒は通過していきます。

★この認知体験プロセスを教師の誘導ではなく、生徒自らが主体的に進めていくことができれば、まずは学びの第一段階には到達です。第ニ段階としては、この認知体験プロセスを進行させるメタ認知システムを生徒自身が言語化するなり可視化するなりするところまでいけば、探究的な自分の活動を自己調整することができます。

★しかし、たいていの場合は、教師がリフレクションのコントロールをします。教師はすでにこのメタ認知システムを身体化させています。つまり暗黙知として自然に使っています。

★ですから、生徒がもし、この教師が暗黙知として活用しているメタ認知システムを言語化したり可視化できるようになると、かなり主体的な深い学びができるようになります。これが第2段階です。

★そして、言語化したものを身体化するのが第3段階で、ここまでくると総合型選抜にかなり対応できるようになります。

★しかし、実はこのメタ認知システムは、従来型のメタ認知システムなのです。つまり、

• メタ認知 = 既存の認知プロセスを「監視」する受動的機能
• 学習 = 外部の知識を「吸収」する活動
• 問題解決 = 正解を「発見」する作業

★ですから、探究を行っても主体的な学びにはなっていなかったというパラドクスというか限界点があったのです。

★そこで、新しいメタ認知システムとして、次のように本質的な転換を企てる動きが起こっているのです。

• メタ認知 = 認知世界を「制作」する能動的機能
• 学習 = 新しい世界ヴァージョンを「創造」する活動
• 問題解決 = 問題世界自体を「再構築」する作業

★正解のない問題を解きながらも、メタ認知システムを再構築しない限り、なかなかそのような問題に挑戦できないわけです。そこで、そこに挑戦している学校の先生方と生徒がどのような新しいメタ認知システムを身につけているのか、あるいは身につけようとしているのかを、生徒と共に授業実践研究を行いながら、構築していこうとしています。

東京私学教育研究所のフュージョン教育研究会で、3人の先生方がこれを塊よりの学校でも探究の時間が広がり始めています。そして、探究型授業として各教科の授業も変わりつつあります。この変化があるところには、生成AIを取り組んでいきますから、その変化の質の転換が起ころうとしているのです。

※ フュージョン教育研究会「ワークショップ」

 「プロンプト(生成AI)の作り方を工夫して、 生徒が主体的に考える視点を見つける学び 入門編」

①フュージョン教育の数学の授業の事例報告(数学の問題を解くのではありません)とWS

山口貴史先生 (駒沢学園女子中学校・高等学校 数学科教諭)

②フュージョン教育のIBL(Inquiry based Learning)の事例報告とWS

田中歩先生  (工学院大学附属中学校高等学校 教頭・英語科教諭)

③リフレクション 小論文などの生成AIによる評価をきっかけに

本橋真紀子先生(聖学院中学校高等学校 数学科教諭)

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工学系の私立中高一貫校の歴史的意義 シン・インテリジェンス・ライン ソフト・ハードパワー融合教育 リベラルアーツ×イノベーション

★八王子に工学院大学附属中学、東小金井に東京電機大学中学、豊洲に芝浦工大附属中学と、きれいに西から東に3つの工学系の私立中高一貫校が在ります。そして、そのいずれもが共学化しており、理系希望者が多く集まります。しかし、文理融合の時代、この工学系の私立中高一貫校は、最も新しい時代をダイレクトに開く学校になる状況が生まれてきています。この3校を結ぶラインは、日本のみならずこれからの未来を支える知の軸になるでしょう。シン・インテリジェンス・ラインとでも呼んで起きましょう。

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(写真は首都圏模試センターから)

★米国などは、20世紀末のIT革命から、ハードパワーからソフトパワーへ移行するという路線で進んできました。知的財産という意味で、確かにもの作りよりソフトパワーなのだと。

★しかし、実際にはDXの時代になりかつここに生成AIが融合し、発想ともの作りはカップリングされたわけです。工学系の人材が仕事をする組織も、ソフトパワーを生む人材とハードパワーを駆使する人材という区別がなされるツリー構造型ではなく、ネットワーク型になっています。

★フラット・フリー・ファン・フレンドシップな組織です。だれもが創発型であり、かつ技術力もあるわけです。ソフトパワーとハードパワーが融合された組織だし人材になりつつあります。

★実際にこれらの工学系の私立中高一貫校では、1人1台のパソコンと3Dプリンターは自在につながり、プロジェクト型で学んでいるシーンが広がっているでしょう。

★STEAM教育は当然広がっていますから、生成AIを使った学びはどんどん広がっていることでしょう。

★おまけにグローバル教育もベースになっています。工学の世界は人的交流やアカデミックな情報共有などにおいてグローバルな視野や英語力は当然必要ですから。

★これらのプロジェクトは、問題解決の提案にとどまらず、プロトタイピングまで行き着きますから、実はすでに中高段階でスタートアップの基礎も出来ているわけです。実際アントレプレナープロジェクトも動いているでしょう。

★近代産業社会は、アイデアをデザインする人とモノづくりをする人は区別されてきました。しかし、今はチーム組織です。メンバー1人ひとりがアイデアを持ち寄り、新たなアイデアを創発し、ものを作っていくというソフト・ハードパワー融合時代に移行しつつあります。ハードパワーからソフトパワーへ、そしてさらにソフト・ハードパワー融合へと時代は移行し、産業社会の時間と空間と研究のあり方の関係性が一変していきます。

★工学系の私立中高一貫校を卒業した生徒は、この新しい産業社会の即戦力として大学で研究しながら新都市デザインをしていくでしょう。

★ですから、入試も文理融合的な新タイプ入試が開発され続けるでしょう。それに、男子は理系で、女子は文系などということも解消されてているのがこれらの中高です。今や私たちの生活は、発想豊かなIoTベースの工学系の製品で満ちています。入試も教育も変わっていくのは当然です。

★そして、このシン・インテリジェンス・ラインの3校は生成AIを使っていくでしょう。学びの密度が高まり、教育の質の向上が爆上がりになります。その質がこれから日本や世界に大きな貢献を果たしていくことでしょう。注目していきたいですね。

 

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2026年中学入試 芝浦工大附属中学 「論理社会」を新設 3教科入試からシン4教科入試へ 歴史的な意味

★芝浦工業大学附属は、2017年に、板橋から豊洲の現校地にキャンパス移転し、大学キャンパスとも近接することになり、従来の芝浦工業大学中学校・高等学校から現在の芝浦工業大学附属中学校・高等学校への校名変更と高校共学化に踏み切り、その後2021年に中学共学化を果たしました。そして2026年、今まで行っていた国語・算数・理科の3教科入試に社会の入試を加えるようです。首都圏模試センターのサイトによると、「近年、目覚ましい進化と変貌を遂げつつある同校は、首都圏の中学入試でも大きな期待と注目を集めている学校です」と高評価がなされています。その目覚ましい進化を学校の顔として入試改革にも反映させたということでしょう。

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(写真は首都圏模試センターサイトから)

★もともと、同校の入試は、3教科入試、言語と探究の入試、英語入試などの従来型の教科入試と新タイプ入試のハイブリッドでした。多様な才能を持った生徒を受け入れる入試であり、当然カリキュラムもそれぞれの才能が開花されていくシステムになっています。

★しかし、実際には、探究とグローバル教育とSTEAM教育と教科授業など多様な教育活動が有機的につながって循環している教育=フュージョン教育をしているわけですから、そのカリキュラムシステムを学校の顔とする入試にするとするなら、教科入試自体も新タイプ型に変えていく必要があったのでしょう。

★この有機的循環教育=フュージョン教育ができるのは、実は中学時代にランゲージアワーという言語技術を学ぶ授業が長年実践されてきたからです。日本の国を支える理数系・工学系の人材を輩出してきた同校ですが、実は言語技術もグローバル教育も同時並行で行われてきたのです。

★そして、いわば、リベラルアーツ×STEAM×グローバル教育×探究×教科教育というフュージョン教育を構築してきたわけです。言うまでもなく、社会課題とこの教育はフュージョンしているわけです。

★であれば、知識をベースにする社会科というより、社会問題について思考する記述問題を出題する論理社会的な入試問題を新たに追加するのは進化の必然だといえるでしょう。

★もっといえば、ソフトパワーとハードパワーを区別してきた近代産業社会にあって、ソフト・ハードパワー融合のシン知力を生み出しているとも言えます。これは、世界と比較すると、日本でしか果たせない教育かもしれません。

★2026年の芝浦工大附属中の入試改革が意味するものは、実は近代産業社会の新たな局面を開くビジョンを映し出しているかもしれないのです。

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2025年6月19日 (木)

授業の時間と空間と道具と仲間と協働して世界が生まれる 生成AIもまた授業で新しい世界を生み出す

★今先生方と仲間と生成AIを活用しながらどんな授業ができるのか実践研究をしています。各教科の授業は、時間と空間が設定され学習道具が活用され教師と生徒、生徒同士の対話などがあって、それぞれの教科の世界が生徒1人ひとりに広がっています。ここに生成AIが加わると、どのような世界が広がるのか、ワクワクしながら毎回先生方と対話しています。

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★30年前の1995年から学内に徐々にパソコンが入ってきました。ようやくインターネットとつながり、ネットスケープなどのブラウザーも認知されるようになっていました。3.11を境に、SNSが学校にも入ってきました。パンデミックを体験してからは、学校に生徒1人1台のパソコンが学習ツールとして定着し、オンラインの空間学習も広がりました。そして、今授業の中に生成AIが導入され始めています。

★生成AIという道具は、授業の時間も空間も変容させます。そして、各教科の専門性と普段思いつかない社会や自然の事象を結びつけます。各教科の授業の世界を専門的知識の深さと異領域異分野の世界に広げます。

★世界が広がるという点では、今までの教科の授業と同じですが、その広がり方が縦横無尽だという点で優れていると思われます。

★しかし、本当にすごなと思うのは、一人ひとりの生徒が自分の感情、思考、行動という思考動の方法論=コツ=ものの見方・感じ方・考え方・表し方を言語化できるということです。

★従来の教科授業でも「振り返り」をし、この思考動の方法論を自分なりに気づく機会をつくりますが、実際にはそれができないで終わる授業が多いでしょう。また、振り返りをしても、コンテンツを理解したかどうか、どんなコンピテンシーが得意なのかなどの振り返りが多く、自分のものの見方・感じ方・考え方・表し方を言語化したり可視化したりするところまではいきません。

★いわゆる出来る生徒は、暗黙知としてそれを身体化させています。小中高の学びは、実はこの身体化トレーニングが中心です。ですから、これだと暗黙知を体得できた生徒とそうでない生徒の格差がうまれるのです。

★この格差をなくすために、身体化トレーニングを重ねていくのですが、すべての生徒が獲得できるというわけでないことは今までを顧みるとわかるでしょう。

★もし、すべての生徒が、自分なりの思考動の方法論を言語化・可視化できたらどうなるでしょう。素敵なことになるのは明らかです。

★今までも、ある人の方法論を言語化・可視化し、それを獲得できていない生徒にパターン学習的にトレーニングしてきたのですが、それではうまくいかないケースが多いのです。自分の内側から生まれてきた方法論ではないからです。生成AIはそれをサポートする革新的学びのツールです。

★個別最適化とは、この自分なりの方法論を見つけるということであるのかもしれません。そして、協働的学びとの一体化の目的とは、互いにそれぞれの方法論を磨き合う関係性を構築するということなのでしょう。それが生成AIの登場によって、可能性が大きく開けたのです。

★これができると、本来的な多様な価値観を尊重するというウェルビーイングな状態が生まれます。

★先生方と生徒と仲間と一緒に生成AIを悪用せず最適な活用をするように相互モニタリングしながら新しい授業をつくっている日々です。

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