創造的対話

2025年7月14日 (月)

私立中学校選択 氷山モデル(08)心理的安全基盤装置を構築している学校

★日本経済新聞(2025年7月14日)に「ショーン・ペンさんが問う市民の覚悟 民主主義の劣化、我々にも責任」という記事が掲載されています。この中で、民主主義の劣化が世界的に深刻であることが語られています。「民主主義の劣化は世界的に深刻だ。スウェーデンのV-Dem研究所によると、24年の世界の自由民主主義指数は約40年ぶりの低水準に沈んだ。国・地域の数でも人口の割合でも、民主主義陣営は権威主義陣営に劣後する」というのです。

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★具体的には、民主主義陣営は88ヵ国、権威主義陣営は91ヵ国。人口シェアでは、前者は28%、後者は72%です。しくは、V-Dem研究所のレポートはPdfで閲覧できます。

★日本は民主主義陣営ですが、最近権威主義陣営を思わせるような言動があふれはじめています。非寛容、排他主義的、差別的な言動は、もし政治の世界だけではなく、日常の世界にも広まったりすると、ハラスメントが起こりますから、大変なことになるのは、火を見るより明らかです。

★学校は、政治組織ではないので、政治で言うところの民主主義的組織とは違います。もちろん、民主主義的精神や人権、法の支配が尊重されそれが実現される場です。しかし、学校の意思決定は、会社と同じように、経営陣が決めます。

★ですから、経営陣による権威主義的な組織になりやすいのです。私立学校は、現場を顧みない経営陣によって運営されるとこれまた悲劇が起こりますから、そうならない創意工夫をしているのです。

★つまり、意思決定プロセスやコミュニケーション環境が、フラットでフリーでフレンドシップ、そしてファンというようなFの精神があふれる組織マネジメントを経営陣は心がける必要があります。

★しかし、世界の7割強の人口が権威主義的な国家組織に属しているわけで、この精神は、人間の精神性の1つです。よほど意識をしない限り、この精神は鎌首をもたげてきます。ですから、経営陣と教師の関係、教師の同僚の関係、教師と生徒の関係、生徒と生徒の関係、学校と保護者の関係を相互信頼を生み出す心理的安全基盤装置をつくっている学校が、教育の質の向上を持続可能にするのです。

★この心理的安全基盤装置は、実はPBLだったり、グローバル教育だったり、ICT教育だったり、メタモニタリングが相互にできる学びの構造のブラッシュアップシステムを指します。そのために、学内研修や学外研修があり、経営陣も教師も生徒も保護者も学び続ける機会も作るのです。
★ベテランの教師をリスペクトし、進歩主義的教師が、それを形式知化システムとして組み立て、それを常に教師同士が改善し続ける対話の時間設定が年間通じてほぼ毎週組み込まれていることが大切です。

★というわけで、その理論化・言語化・見える化・空間化・アート化したものを生み出し続けている学校組織を選択することが安心安全につながります。

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私立中学校選択 氷山モデル(07)進路指導の前提やあり方が変わる 2026年高3生から東大のCollege of Designのインパクト

い★前から発表されていた2027年9月入学の東大の新コースというか学部というかクラスというか、要するに<College of Design>の入試要項の概略が発表されました。50人は日本の学習指導要領を学んだ生徒、もう50人はIBやAレベルなど世界標準のカリキュラムを学んだ生徒を受験対象とします。

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★両者の細かい違いはあるのですが、高校の成績表、書類、論文、英語での面接、英語検定資格のスコアはほぼ同じです。違いは前者は共通テストを受験、後者はIBやAレベルなどの成績結果をだします。

★要項の概要を読んだだけでは、後者は留学生だけなのか、日本の1条校でも、IBやAレベルなどを取得することができる学校もあるので、そこの生徒でもよいのかはまだ判然としませんが、そこはいずれ明確になるでしょう。

★いずれにしても、あの東大の一般選抜の試験を受けない新たな方式が生まれたということです。東大も多様な生徒の才能を受けいれる入試の幅を広げたわけです。

★今までは、海外大学と国内大学の入試のあり方が全く違うという感じでしたが、2026年の高3からは、徐々にその違いが縮まり、共通点が多くなってくるということです。

★この動きは、東大が始めれば、他の国公立大学も動く(この姿勢がよいかどうかはともかく)ので、加速するでしょう。早稲田、慶応はすでに別の方法でそのような方向に動いていて、国公立大学の補完として私立大学の中で一番難しいという段階から、国公立、私立大学が互角のイメージをつくりあげています。

★私立大学も早稲田、慶応に続くところは当然出てくるでしょう。

★AI時代は、牧歌的な知性獲得の時代は、残念ながら去ってしまいます。AIをメタコントロールできる高度な知性や専門性を研究する時代です。一部の権威主義的大学がその研究を握っている場合ではないのです。

★少子高齢化と言えども、小中高生1200万人まだいるのです。この1200万人がみなそのような高度な知性と専門性を、自分の好きな領域で発見し、身につけることができる時代がAI時代だと自分たちの意思でするしかないというのが、今の教育の現状です。

ここにいちはやく気づいているのが、突出したグローバル教育を行っている学校です。外国人教師が5人以上教鞭をとっている学校がほぼそのような覚悟を持っているでしょう。この動きはどんどん広がっていくはずです。

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2025年7月12日 (土)

私立中学校選択 氷山モデル(06)グローバル教育の意味 大妻中野モデル グローバルヒューマンパワーの拠点

私立中高一貫校の教育の質を高める要素10個のうち、グローバル教育と外国人教師の数と高大連携はどれも関連しているのが、質のシナジーをあげている一つのあり方です。たとえば、大妻中野モデル。同校のグローバル・リーダーズ・コース(GLC)と法政大学グローバル教養学部GISとの連携プロジェクトが典型的な例です。

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(詳しくは→「法政大学グローバル教養学部GISとの連携 – リーダーシップを考える授業!」) 

★グローバル教育というと高度な英語教育というイメージがあると思います。たしかにそれは、教育の質を高める5つのタイプのうちAタイプ、Bタイプはそれでよいのですが、大妻中野、富士見丘、工学院大学附属、三田国際科学学園、文大杉並、八雲学園、和洋九段女子、聖学院などのようにDタイプ、Eタイプは、グローバルコミュニティや大学との連携を英語で行っています。

★ですから、大妻中野のように、アントレプレナーシップやグローバルリーダーシップなどのようなかけがえのない地球を守るグローバルヒューマンパワーを生み出すグローバル教育は、英語教育のみならずグローバルコミュニティや大学と連携する戦略がポイントです。

★そして、グローバルヒューマンパワーは、ソフトパワーを必要とします。これは既成のコンセプトを新しく組み立て直す資質能力です。これを教養とか哲学というのですが、これは外国人教師が得意とするところです。文化として身につけている外国人教師が多いのです。

★先述した学校は、いずれも5人から40人の外国人教師が教鞭をとっています。当然、日本人教師とシナジー効果を生みます。

★これからのグローバルヒューマンパワーは、東洋と西洋の架け橋になる日本の発想が注目されている時代がやってきています。上記の学校は、いずれも茶室を基盤に東洋と西洋の哲学や文化を融合するコンセプトを生み出す場を持っています。これは欧米のエスタブリッシュスクールにはない場であり発想なのです。

★今GAFAMやスタートアップ企業で、CPO(Chief Philosophy Officer)が必要だと言われているし、実際哲学コンサルティングが活用されている時代です。日本の私立中高一貫校のD、Eタイプの質向上学校は、この先端を行くことになる可能性があります。

★大妻中野の生徒の皆さんが法政大学と連携で気づいた発想を読むと、まさにグローバルヒューマンパワーを生み出していると驚愕しました

★質向上のDタイプ、Eタイプの学校は、いずれもこのようなグローバルヒューマンパワーを生み出しています。希望の国が日本からという可能性。ワクワクしますね。

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2025年7月11日 (金)

私立中学校選択 氷山モデル(05)教育の多様性革命 - 子供に合う学校選択の時代~『どこが良い学校か』から『どの学校も価値がある』へ

★私立中学校選択を今書いているわけですが、書きながら、私の立場を明らかにしておく必要があると気づきました。そこで、その点について書いてみます。

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(図はclaude)

★今までの私立学校選択は「優劣の競争モデル」が中心でした。学校同士が序列を作り、より上位の学校を目指すという発想です。しかし、2015年から徐々にシフトしてきています。私立学校選択は「多様性の適合モデル」に変わってきているということです。

★つまり、従来の競争モデルでは、「どの学校が一番良いか」という単一の評価軸で学校を序列化していました。これは画一的な価値観に基づいた選択です。それが、首都圏模試センターが思考コードを開発してから、新しい適合モデルとして、「どの学校が、この子にとって最適か」という個別の適合性を重視するようになってきています。子供一人ひとりの個性、学習スタイル、興味関心、将来の目標が異なるため、それぞれに最適な学校も異なるという考え方です。

★このモデルが機能するためには、多様な特色を持つ私立学校が豊富に存在することが不可欠です。芸術に特化した学校、科学技術に強い学校、国際教育に力を入れる学校、少人数制の学校など、様々な選択肢があってこそ、子供たちは自分に合った環境を見つけることができます。

★結果として、「どこが良い学校か」という序列ではなく、「どの学校も、誰かにとっては価値のある学校」という多元的な価値観が生まれます。これは教育の多様性を豊かにし、子供たちの可能性を最大限に引き出す仕組みです。

★このビジョンは、もしかしたら新しいものではないかもしれませんが、私立学校が少なければ、やはり競争になり元の木阿弥です。しかし、首都圏には、私立学校がたくさんありますから、かなり多くの子供たちにとって、自分の価値創出の居場所としての多元的な価値学校が存在できるのかもしれません。この首都圏に私学が多いという世界でも珍しい多元的価値学校というユートピアスペースが、この転換を生み出すことになる時代なのかもしれません。

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私立中学校選択 氷山モデル(04)教科授業と探究のつながりが質を生み出している

★私立中高一貫校の教育の質を高める要素10個のうち、授業と探究の2つはカップリングして話すのがよいでしょう。東大にたくさん入っている学校の授業は、基本問答型講義です。問答型というのは、ここでは、教師と生徒ですね。生徒同士となると、PBL型にシフトしていきます。海外大学に合格するには、PBL型の授業が必要となってきます。

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(写真は、駒沢学園女子の数学科の山口先生の授業シーン。同校サイトから。グローバル探究と教科の授業がリンクするPBL型授業)

→駒沢学園女子は、グローバル探究(当然PBL型)を推進しています。一方で、生成AIを活用しながら授業もPBL型を単元のどこかで生徒のブレイクスルーを生み出すタイミングに合わせて行います。数学だけではなく、英語など他教科でもこの生成AI活用PBLは展開し始めています。

★ですから、探究を本格的に行っている学校は、教科授業もPBLタイプが多くなるのは必然です。

★どちらかだけとなると、質は分断されますから、それなら、初めからPBLはやらずに、効率よく一般選抜で東大を頂点とする難関大学を受験すればよいのです。

★ですから、学校選択は、効率よく国内の難関大学にいくための教育の質を選ぶか、自分の才能開花をベースに海外大学やそれに相当する国内大学を総合型選抜で受けられる教育の質を選ぶか、どちらかです。前者なら、Aタイプの教育の質のタイプの学校を選ぶと良いでしょう。後者なら、DやEタイプの質の学校を選べばよいのです。

★ただし、2027年以降は、東大をはじめ多くの国内難関大学も、後者の進路を考えている生徒がアプローチできる入試方式を考えています。生成AIの進化は、どのみち生徒一人ひとりのオリジナリティは何かに行きつきます。

★授業と探究が結びつき学びのシナジー効果を生み出す質が求められるようになるでしょう。

★すでに、2015年くらいまでは、問答型講義の学校がほとんどだったのです。それなのに今はPBL型も増えているのです。6年後どうなっていくのかは火を見るより明らかな気がします。

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2025年7月10日 (木)

私立中学校選択 氷山モデル(02)教育の質向上の5つのタイプ

★各私立中高一貫校は、毎年教育の質の向上を果たしています。質の向上はいろいろあるのですが、まず重要な点は10の要素です。そして、どの要素に重点をおくかによって、ざっくり5つのタイプに分けられます。どのタイプがよいのか?というのではなく、学校によって質の向上のタイプは異なります。

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★たとえば、開成の場合、特に何もしなくても生徒は集まってくるわけですから、何もしなくてもよいのですが、世の中そうはいかないのは、誰もがわかっています。開成も同じです。ただ開成の場合、中学入試の科目の変更をする必要もないし、進歩主義の教師であるかどうかは、あまり問題ではなく、現勢力で十分でしょう。

★しかし、2013年からアイビーリーグの大学に進学する体制をつくっています。とはいえ、海外大学進学準備システムを作る必要はあまりなく、英語の力をCEFRでC1(英検1級レベル)にすれば、たいていの海外大学は門戸を開いてくれます。要するに開成のグローバル教育は、英語重視型なのです。

★高大連携は、もともと先輩たちがやってきて学びの共同体を作っています。やってくる先輩たちの多くは東大卒ですから、実質高大連携はできているわけです。探究も際立ってやる必要もないでしょう。生徒が興味と関心のあることを学力以外にもすでに勝手にやっています。このような環境に入るために猛勉強するのは、5万人の受験生の中の900人です。

★一般のメディアでは、開成に入るための秘伝を取り挙げていますが、現実問題それが中学受験のすべてでないことはこれで明らかでしょう。

★開成と偏差値を比較すれば、それは違いもありますが、そんなことに関係なく、Eタイプの教育の質を向上させ続けている工学院大学附属や文化学園大学杉並に入った生徒は、望んで努力すれば、世界大学ランキング100位以内の海外大学にたくさん進学しています。

★いわゆる偏差値の伸び率で行けば、開成よりはるかに高いでしょう。教育環境デザインという意味では傑出しているのです。

★だから、自分が将来どうなりたいか、そして今はどうなのかを冷静に振り返り、自分に合った中学を選べばよいのです。東大出たほうが、将来は安泰の確率が高いかもしれませんが、東大でなければ、それはかないませんか?そんなことはないのは、あまりに明らかです。

★中学選択は、自分の生きる道を豊かにしていくために戦略的にかつ愛を持って選ぶということが肝心だと思います。つまり、見えるものをどう戦略的に読み取り、眼に見えない大事なものを愛を持って受け入れるのか。次回からこの氷山モデルレンズで、一つひとつ要素をみていきましょう。

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2025年7月 8日 (火)

工学院 世界にインパクトを与える教師&生徒!

<GLICC Weekly EDU 第220回「工学院大学附属中高ー探究ベースの学びを支える『情報&グローバル教育』」>で、工学院大学附属中学校・高等学校の校長中野由章先生と中学校教頭の田中歩先生からお話をお聞きしました。他の追随を許さないインパクトのある中野校長と田中教頭の相互信頼関係。生徒1人ひとりが成長し高い志をさらりと実装する大人になっていく成長物語が生まれてくるはずです。

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★しかも、その成長の条件が、他校にはない贅沢なそして未来に必須な教育環境なのです。というのも、私立中高一貫校を高度な「情報教育」と世界のエスタブリッシュ私立学校に匹敵する「グローバル教育」の両方を融合している学校は、日本にはないのです。どちらか一方が秀でている学校はありますが、両方とも生徒たちは、意識などせずに自由に柔軟にできてしまうのですが、実は、大学レベルの学びを行っているのです。当たり前のレベルが違うというのは、動画をご視聴していただければ目からウロコとなるでしょう。

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★お二人の対話からでてきたいくつかのキーワードをプロンプトに入れて、工学院の生徒の成長物語を生成AIに書いてもらいました。次のようになりました。

はじめは「楽しい」がすべてだった。仲間と協力してロボットを作る、アイデアを発表する、笑い合う。遊びの延長にあった学びの時間が、生徒を惹きつけていた。しかし、やがて小さな「なぜ?」が芽を出す。「どうしてそうなるのか?」「他に解き方はないのか?」と問い始めた時、学びは「interesting(興味深い)」へと姿を変えた。失敗さえも挑戦として受け止め、「自分の力で答えを見つけたい」という思いが強くなる。

そうした学びの土台には、教師との心理的安全と信頼関係がある。どんな挑戦にも本気で向き合ってくれる先生たち。生徒はその背中から、挑戦する姿勢を学んだ。

AIや数理探究といった高度な領域にも挑み、世界大学ランキング100位以内の海外大学という高い壁を、自らの力で乗り越えていく。生徒は“点”の知識を“線”につなぎ、やがて“面”として世界に広がる視野を持つ。

6年間で育まれるのは、知識以上に、自ら問い、考え、行動する力。そしてチーム工学院として、共に学び、共に未来を創る仲間の存在。卒業式の日、生徒の瞳に宿るのは、確かな自信と「世界にインパクトを与えたい」という静かな野心だった。

★驚きました!工学院は生成AIともシンクロしてしまう学校なのですから!

画期的でインパクトある教育!必見です!!

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2025年7月 7日 (月)

今更ながら私立中高一貫校のグローバル教育の意味

★私立中高一貫校は、学習指導要領の教育内容を丁寧に生徒と共有しながら、さらに発展させています。こんなことは、何を今更なのですが、総合型選抜が増えてきたことによって、見えなくなっているという状態が起きているので、確認までということでここにメモしておこうと思ったのです。

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(claude作成)

★一般選抜の場合は、学習指導要領内の教育内容の難度の違いが、志望校の大学進学準備の時の戦略データになります。ですから、この学びがグローバル教育に直接寄与するかどうかは、そもそもあまり意識されないわけです。

★ところが、総合型選抜は、探究の時間などで、自然と社会と精神の循環がうまくいかないことによって起こる多様な問いから出発するため、あたかもグローバル教育を行っているかのような錯覚に陥るのです。

★もちろん、グローバル教育の一端を担うのですが、あくまでグローバル教育>探究活動なのです。ですから、この錯覚を避けるために、「グローバル探究」という言葉が生まれています。グローバル探究は、グローバル教育の活動全般をカバーします。

★グローバル教育は、英語教育や国際理解教育をもちろん含めますが、やはりグローバル教育>英語教育、グローバル教育>国際理解教育なのです。

★そうなっているのは、日本の学習指導要領はあくまで日本の国民のための教育が前提だからです。グローバルな時代に、そこで活躍できる資質能力を身につける学びまでは学習指導要領内の話ですが、日本国民としてかつ地球市民として宇宙船地球号の中で起こっている問題を解決するリーダーシップをとれるようになる教育を積極的に行う仕組みにはなっていません。法制度上当然です。

★もちろん、意欲的にチャレンジするのは何ら構わないのですが、それをダイレクトにサポートする教育は学習指導要領には仕掛けられていないのです。ですから「グローバル教育」という言葉は、学習指導要領にはないはずです。

★グローバル教育は、私立学校の創育工夫によって組み立てられた独自の教育です。ですから、私立学校によっては、グローバル教育を行っていないところもたくさんあります。

★高度な英語教育を行い、海外研修も有志の生徒がいける環境まではほとんどの学校は揃えています。そこから先、地球市民としてグローバルリーダーになるかどうかは、生徒の意志によるというケースですね。

★しかし、グローバル教育を掲げている学校は、生徒全員が多様な領域でグローバルリーダーとして活躍するための総合的な教育が行われています。

★ですから、探究を行うときも英語をはじめとする多言語も活用するのが前提です。探究も教科が授業もPBLが前提です。探究だけでPBLを行い、授業はワンウェイ講義という学校は、グローバル教育を行っていないだけです。

★まして、探究だけで、教科学習は不要だみたいな極端な教育は、あってよいのですが、グローバル教育ではないのです。というのは、それは教科と探究が結びつかないという境界線を突破する発想をあきらめているので、その段階で知の分断が起こりグローバル教育ではないのです。

★哲学を大事する教育も大いに結構ですが、カントやデューイ、社会構成主義がどうのこうのという教育はあっても当然良いのですが、それはグローバル教育ではなく、哲学学問教育です。グローバル教育は、いろいろな方法論の前提に多様な哲学的背景があることを見抜きながら、形骸化した方法のマニュアル的活用ではなく、その哲学的エッセンスを現場にチューニングして最適化した思考の環境づくりをします。

★このチューニングというトランスフォーミングな学びを生徒自身が最終的にできるよういにならなければ、環境が異なるグローバルな時空に直面した時に応用が利きません。哲学は主義を通すのではなく、考え方や感じ方を共に変容し、新しいコンセプトを共創する思考のシステムです。

★学習指導要領がどう変わろうが、大学入試がどう変わろうが、学習指導要領内の教育の在り方の問題で、グローバル教育を行っている私立学校にとっては、その独自の教育につながるようにマイナーチェンジをしながら進むだけです。

★この学習指導要領の教育とグローバル教育のギャップは、体験格差とか経済格差の表れだという見方もあるでしょう。しかし、そのような現実のギャップがあるから、そのギャップを解消すべくグローバル教育が2011年以降現れたと考えるのが妥当でしょう。それまではあくまで国際理解教育だったのです。

★C1英語を学ぶのに、PBLの環境をつくるのに、STEAM教育を運営するのに、今では、体験格差も経済格差も不要の状態に日本の教育は進化しています。このことは凄いことです。そうであるのに、学べない壁をつくっているのが現状でしょう。その壁をぶち破っているのが私立学校のグローバル教育なのだと考えてみるアプローチがそろそろでてきてもいいなあと思います。

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2025年7月 4日 (金)

和洋九段女子 NEXTの時代へ

★本日、和洋九段女子の水野校長先生、本多教頭先生、佐藤教頭先生にお会いしました。和洋九段女子といえば、PBL授業だし、SDGsをベースに地域、NPO、大学、企業、大使館、国連広報センターなど外部と連携して探究を広げ深めているプロジェクトが豊富なことを知らない受験業界人はいないでしょう。

★しかし、3人の先生方は、それで満足するつもりはなく、このような教育の質をさらに向上させるために、次の3つを考えているということです。

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① 2030年以降SDGsに代わるグローバルゴールズやアイデアは何かを生徒と共に考案していくということ。
② 多様な外部とコネクテッドしているプロジェクトどうしをつなげて学内の学びの密度を濃くしていくこと。
③ PBL授業の中でつちかっているクリエイティブシンキングやクリティカルシンキング、コンセプトシンキングによって、生徒たちは実はIBのディプロマレベルの小論文を書ける力がついているということを可視化すること。

★9月から具体的なプログラムやプロジェクトを動かしていきたいということでした。お話をお聞きした後、ちょうど高1のサイエンスコースで小仲井先生がサイエンスの授業を行っていました。そこで少し見学させていただきました。

★「回転」について、実際に回転効率のよい仕掛けをどうつくるのか頭も手も使い、話し合いながら、個人ブレストとグループブレストを進めるPBL授業が展開していました。

★回転という物理現象やその理論は、実は多くの社会課題と深く関わっています。SDGsもそうです。したがって、風力発電の回転運動を電気エネルギーに変換する技術で、再生可能エネルギーを生み出す検証を行っていました。

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★もちろん、風力発電のコストの問題や景観や鳥の生態系などへの影響についてのクリティカルシンキングもしながら、適地を限定したうえで、回転効率をいかによくするかというクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングがすでに授業の中で稼働していました。

★また、回転技術について他の技術とつながるかどうか応用がきくかどうかまで、発展させていました。これはいわゆる転移学習で、トランスファーするためにはコンセプトにまで具体を抽象化するコンセプトシンキングがポイントになります。

★やはり、ふだんからこのような思考様式が編み出されているわけです。和洋九段女子の生徒は、プロジェクトを運営するチームワークや多くの団体とつながるコミュにケーション能力という非認知能力とこのような高次思考力を兼ね備えているというわけです。

★このような学びの環境の質をさらに高めていくというのですから、生徒にとっては希望です。

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2025年7月 3日 (木)

八雲学園 海外大学合格者数ベスト10入り in 首都圏

八雲学園の2025年現在の海外大学合格者数は30人。そのうち21人は、世界大学ランキング100位以内。これは、首都圏私立中高一貫校では、ベスト10入りの実力です。この結果は、全人的な総合的なグローバル教育の成果でありますが、特にサンタバーバラでの3カ月留学は、生徒の皆さんの成長のティッピングポイントになっています。

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★今もまさにこの3カ月留学にチャレンジしている生徒がたくさんいます。実は、この3カ月留学は、事前に3カ月の準備学習、帰国後に3カ月さらなる向上学習があり、9カ月プログラムになっています。

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★そして、この9か月間、生徒の学びのコアには、上記の図にあるようにダブル5Eのプロセスがあり、それが知のトルネードを生み出す循環になっているのです。もちろん、これは、国内大学進学準備教育にも浸透しています。2025年の国内合格実績の飛躍は、この知のコアシステムにあると、副校長の近藤隆平先生は語ります。このダブル5Eこそ、米国の大学でも学ぶ研究のプロセスに通じているのだと。

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