創造的対話

2020年7月14日 (火)

ノートルダム女学院のハイブリッドPBL授業(01)PBLの再定義

★ノートルダム女学院中高(以降「ND」と表記)は、数年前から21世紀型スキルをベースにPBL授業を試みてきました。その進化/深化の広がりやスピードはコースによって、学年によって違っていたのですが、昨年の夏以降、全学年全クラスで取り組んでいこうという話になり、私もサポーターとして先生方といっしょに授業リサーチをしてきました。

★同校の先生方の実践しているPBLと私の実践してきたPBLは、共通するところもあるし違いもあります。共感しながら差異を気づきとするかどうかは、あくまで先生方の問題です。対話によって、お互いにPBLの大切さに改めて気づいていく瞬間が実に快く、私自身もアップデートしていきました。感謝の連続です。

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(理科の村田先生の中1の理科の授業をリサーチしたのち、Zoomでリフレクション対話をしました)

★そんな時、今回のパンデミックでした。休校期間中は、当然ながら、リアルに授業リサーチに訪れることができません。オンライン授業にシフトしていましたから。そこで、しばらくは、ND教育開発センター長の霜田先生及び有志の先生方とオンライン上で、オンラインPBL及び学校再開に向けてハイブリッドPBL授業の模索をしてきました。

★この模索は、NDにととまらず、複数の私学の先生方とも行うことができましたし、今も続いています。オンライン上の知の茶室と称して継続しています。

★そして、いよいよ分散登校が始まり段階的に学校完全再開になってきました。しかし、COVID-19の感染者数は、第2波が来たかと思うほど拡大し始めてもいます。やはり、ノー3密のリアル空間では、以前のディスカッションやペアワークをベースにしたPBLは難しいということも実感しています。

★講堂や多目的ホールのような広いところで、マナボードを活用しながら以前から行っていたリアルPBL型授業は可能です。ただ、全学年全クラスが同時間に行うことができないのは言うまでもないでしょう。

★コンパクトに教室の中で行うしかないわけです。したがって、PBLの再定義をして、ハイブリッドPBL型授業を新たに創る授業リサーチを始めたのです。従来は多様なアクティビティタイプから取捨選択して、各授業の生徒の成長のゴールイメージ、つまり全人教育的な包括的なゴールイメージを実現するPBL授業をデザインしていくリサーチプロジェクトでした。

★どちらかというとアクティビティの再定義でした。たとえば、アクティブラーニングとかPBLは、「講義」はしないという極端な先入観があり、そのために自分はそのような授業はできないという壁が出来てしまう場合が、一般的に問題になっていました。

★しかし、講義の質をブルームのタキソノミーに対照して考えていくことによって、アクティビティとしての「講義」もあると再定義を共有していったりしました。講義といても、一方通行の講義は、そもそもなく、先生が問いを投げ生徒が考えながら、進んでいく講義がほとんどでした。問答法型ですね。

★先生方と、なぜ問答法型か?と対話していくと、思考力をトレーニングするには当然そうだろうと。そうでうよね。そこが根本ですよね。ただ、問答法のデメリットは?と。ラウンドテーブルで12人ぐらいで行うソクラテスメソッドのようにはいかないし、ミネルバ大学のアクティブラーニングフォーラムのようにはやはりいかない。人数の問題だということになります。単純に多いから少ないからというのではないのです。問答法は特定の限られた生徒になりがちで、他の生徒が同様に思考しているかどうかは実は不安が残るわけです。

★そんな対話をしていくと、すぐに問答法講義にペアワークが盛り込まれ、あるときはディスカッションが盛り込まれていくわけです。こうしてPBLのフォームはシェアされていきます。

★ですが、ディスカッションをやっても、調べ学習の延長に終わる場合どうしようという新たな疑問がすぐに現れてきます。そんな疑問を持った先生方が、私が訪れたとき用意して頂いている部屋にやってきてくださる機会も増えてきました。

★そこで、哲学対話もNDでは、宗教科の山川先生や保健体育科の三井先生が実践されているので、そのような雰囲気で私も対話をしていきます。「問いの創り方」が重要なのだと。そして、それが肝なのだと。しかもその問いは教師主導だけではなく、生徒自身が生み出すということなのだと。それにはペアワークやディスカッションは最高の場なのだと。

★ここまで共有し、オンライン授業にシフトしましたが、オンライン授業は、なおさら問いと対話が大切だということになっていったのです。

★ところが、学校再開は、withコロナです。ノー3密空間では、最高だと思ったペアワークやディスカッションは条件や制約が付きます。思うようにできません。そこで、PBL自体の再定義が始まったのです。

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(村田先生による牧田富太郎博士のサインの解読問答は実に興味深いもので、博士の人生そのものが凝縮されたものだという仮説を生徒ともに語っていったのです。もちろん、科学とは何かも。)

★昨日も、中1の理科の村田先生の授業リサーチに訪れました。先生も放課後までは時間が空かなかったし、私も移動しなくてはならなかったので、放課後Zoomでリフレクション対話をしました。今までは、忙しいので、私の描いたアクティビティのスクライビングをみながら、10分の休み時間で対話し、そのスクライビングに私からのコメントを添えたものをフィードバックしていました。

★気づきの共有がポイントでしたが、いかんせん対話の時間が短いですね。しかし、時間をどこかで別にとろうとすると、物理的に不可能ですから、瞬間瞬間でシェア・フィードバックという仕組みをつくっていったのです。

★ところが、今回のパンデミックによるオンライン授業体験が、授業リサーチの方法まで再定義してしまいました。私が東京にいても、Zoomでできます。

★リサーチもハイブリッドになったわけです。とはいっても先生方は忙しいので、40分ぐらいが限界です。オンライン研修をしようと5人くらいで行うのは2時間くらいですが、1人の割合は20分強です。やはり40分は少ないわけではないということなのかもしれません。

★これによって、再びレクチャーや生徒へのフィードバックなどの再定義についても対話が進みます。ハイブリッドですから、実は生徒がタブレットやラップトップを操作することもアクティビティになっているという発見もあります。

★村田先生の授業は、クラスルームを活用して問いを生徒が考える時間を同期非同期で進行していきます。そのとき生徒は自らデバイスやアプリを操作しなければ成立しないのです。

★リアルな時空のやりとりとサイバー上のやり取りがパラレルに進行するには、一見教師のスピーチだけが続いているようなのですが、生徒の能動的なデバイス操作が介在します。この重要な意味について対話するなどということは、コロナ以前にはなかったことです。

★そして、何より村田先生の講義におけるストーリーテリングが実にパワフルになっているのです。探究とはなにか?信念を持って生きるとどうなるのか?豊かさとはどういうことなのか?そしてもちろん科学とは何か?科学的思考とは何か?それらの関心を掘り起こし、科学の扉を開くマインドセットを中1のこのタイミングだからこそ語り行うわけです。

★従来のように事実説明ではないのです。TEDばりのキーノートスピーチになっています。これはオンライン授業では、丁寧に明示的にかつエピソードを交えた暗示的な要素を編集して語りかけるとことの重要性に気づいたからだということです。

★また、サイバー時空を活用すること自体が、脳内刺激を新たに活性化するという仮説推理の話にも広がっていきました。

★7つの切り口で、ハイブリッドPBL授業をアナリーゼし、統合していくわけですが、その対話の中でいろいろなPBLの構成要素の再定義が行われていくでしょう。これからも実に楽しみです。

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2020年7月13日 (月)

品川翔英の進化(03)授業を実施するたびに学校が変わる(了)脳科学も意識して

★今井先生のハイブリッドPBL授業は、ペアワークやディスカッション、クイックライト、問い作りなど多様なアクティビティを授業にデザインしていきます。また、グーグルやロイロのプラッとフォーム、アプリなど、適宜オンラインの学流ツールを活用していきます。リアルとサイバーのハイブリッドというわけです。これが第2波や第3波に直面した時の備えにもなっています。学びのリスクマネジメントの時代でもあります。

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★さらに、今井先生は、ハーバード大学の研究者と現場の教師が協働して授業の中でどのようなアクティビティが使われているかタイプ別にその生徒への効果について研究している成果を活用しています。欧米の学習理論は、AIのディープラーニング(機械学習)も同時に研究が進んでいて、fMRIなどを活用した脳科学は相当進化しています。その研究成果と学習理論は切っても切り離せない関係になっています。

★その研究成果も様々ですが、テレビを見ている時と講義を一方的に聴いている時は、対話をしている時や夢を見ている時より活性化していないということはもう20年も前から結果がでていて、ハーバード大学のマズール教授やあのハワード・ガードナー教授をはじめとして授業や学習の理論が新しくなっているのです。その成果の一つがPBLやアクティブラーニングです。

★この手法はJ.デューイのときからすでに始まっていますから、新しい授業や学習の理論ではないのですが、現在ではAIと脳科学の成果を取り入れて授業や学習のデザインをするようになっているのです。PBL自体も時代と共にアップデートしているのです。

★もちろん、脳科学や機械学習は、まだまだわからないことだらけですから、リフレクションするときに生徒が脳を活性化しているかなと意識する段階です。それでも、生徒の表情や身体の動きを見ることによって、脳情報の処理中か処理した情報を表出しているかはわかります。観察の仕方がまた違う角度から意識できるようになります。

★コロナ禍にあっては、授業はやはり楽しくしたいし、互いにオープンマインドになって励まし合いたいしという想いが今井先生の授業には盛り込まれていました。それが脳を活性化したいという想いと重ね合うわけです。

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★また、生徒が「自立」して学んだり、「創造」したりするには、授業は教師が全部主導するのではなく、生徒も学びの「責任」を引き受けなければなりません。その理論はピアソンとギャラガーが、ずいぶん前にGRRモデルとして提示していて、アメリカとカナダの教育では定着しています。ミネルバ大学のオンライン上のアクティブラーニングでは、このモデルが相当意識されています。

★ですから、今井先生も授業をデザインする時、教師の時間と生徒の時間の割合を巧みます。すると、レクチャーというアクティビティだけではなく、生徒が自ら動くアクティビティが重要になってくるというわけです。

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★多様なアクティビティのタイプを活用すると、生徒は多角的なアプローチで記憶していくし、思考スキルもたくさん活用します。ワークショップのメンバーと話し合いながら、どの問や解答を作成する際に、どんな記憶術やスキルを生徒は使うのか議論していきましたが、実に複眼的な思考を生徒はトレーニングしていることがわかりました。この議論は、実はリベラルアーツの言語技術のトレーニングの議論でもあります。

★特に、参加メンバーは、物語における主人公の成長を捉える生徒のペアワークの成果に焦点をあてて対話していました。比較・対照、カテゴライズ、逆説といったスキルの変化に注目していたようです。

★また、高3で扱った丸山圭三郎の「言語と記号」という難しい言語哲学のテキストについては、言語と文化のカルチュラルスタディにまで進んでいく生徒と調べ学習で終わる生徒とのギャップをどう埋めるかという話にもなりました。ここは時間がなかったので、いずれ探究していくと思いますが、このギャップがなぜ生じているのか、アクティビティやスキルの分析をしていくとヒントがあるかもしれません。

★このギャップこそ、ビゴツキーの言う「最近接発達領域」です。今井先生は、生徒と対話し、アクティビティや学びのツールを駆使して、ここを発見していく教師です。この領域が見つかったとき、生徒の自立と創造は始まります。そして発見するには互いに協働する貢献が必要なのです。

★今井先生は、経験から学び、その学びを同僚との対話によって、理論として共有する過程を螺旋状の気流に乗って進めていきます。品川翔英のカリキュラム進化論はこの探究の竜巻が生まれているところにあるのですね。

★このような授業の進化論の話は難しくなるので、受験市場では話されないし、メディアも光をあてないでしょう。つまり本質的なものや大切なものは目に見えないものです。そういったのは星の王子さまでしたか。

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2020年7月 9日 (木)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(38)e-portfolio運営団体の許可取り消しか?

今朝NHKが「大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省」という記事を発信しました。「高校生に、学習した内容や部活動の実績を記録してもらい、大学入試で活用する新たなシステムについて、文部科学省は、これを運営する一般社団法人への許可を取り消す方向で調整していることが関係者への取材でわかりました。このシステムは、およそ18万人の生徒が利用していることなどから影響が懸念されます」というのです。

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(写真はJapan e-portfolioのサイトから)

★高校生の学習履歴や部活動、ボランティアなどの受験学力以外の活動の記録を入試でも評価しようという流れでポートフォリオをプラットフォームで一元管理しようと、<去年から一般社団法人の「教育情報管理機構」に運営が任され、今年度の入試から本格的に導入される予定でしたが、関係者によりますと、入試に利用する大学が少なく、財政上の安定が見込めないことなどから、文部科学省が運営許可を取り消す方向で調整していることがわかりました>ということのようです。

★しかし、なぜ利用する大学が少ないかというと、<機構のシステムの運用は、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っていますが、生徒が学習内容などを記録する時に、ベネッセが発行するIDを取得する必要があったことから、教育現場から、「企業への利益誘導につながるのではないか」などと懸念する声があがっていました>という信頼性・妥当性へのリスクマネジメントからでしょう。

★同記事には<国が進めてきた大学入試改革は、大きな柱だった英語の民間試験と記述式問題の導入が、すでに見送られるなど、混乱が続いています>とありますが、この両方にもベネッセがかかわっていることは明らかになっていますので、ますますリスクマネジメントが作動したのでしょう。

★しかし、ベネッセのせいでは本当はないでしょう。だいたい、これだけ大規模な試験を処理できるのは、他にないでしょうし、全国学力テストだって、OECD/PISAの情報リサーチ団体だって、ベネッセがかかわっていて、それに全部文科省もかかわっています。

★つまりは、文科省の問題ですね。それに同記事では、こんな文章もあります。<大学入試に詳しい東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は、「『主体性』を測ることは、部分的には可能かもしれないが、生徒のあらゆる活動が入試を意識した高校生活になってしまう懸念が生じる。そういったシステムが本当によいのか、生徒の大事な個人情報を適切に管理できるか、議論が甘かったのではないか」と指摘しました。そのうえで、「生徒の秘匿性の高い情報を入試で扱うという公共性の高い仕事を、民間に運営させるのであれば厳しい審査があってしかるべきだ。入試改革の柱と言われた制度が中止や延期になったことを、文科省は検証しなければいけない。今の受験生はその制度の変更や中止に翻弄されてきた。できるかぎり、丁寧に説明することが必要だ」と話しています。>というものです。

★おお~い(汗)、そもそも大学入試改革を行わなければならなかった学歴社会の弊害の元凶は東大なのですが、他人ごとのように語っている無責任な発想にはちょっと驚いてしまいますよね。もちろん、学者として客観的なコメントで、無責任とかの問題ではないのでしょうが、一般市民にはなんとも不可解です。文科省も学歴社会形成の根源である東大も、ベネッセのせいにして逃れようというのは、私たちの国のおかしなところでもあります。

★でも、そんなことを言っていても仕方がないので、自分たちで乗り越えましょう。ベネッセもやりかたを間違ったかもしれませんね。

★実は、オンライン授業に加速したことによって、早稲田大学などは、ポートフォリオも含むアプリケーションをオンラインで行っていく方向、しかも協働コミュニティをつくり、同一フォーマットでオンラインで提出できるようにしていく方向が進んでいます。

★欧米では、こういうコミュニティは多様にあって、国は一元管理で介入しようとしません。市場の原理が働くわけです。評価学がきちんと研究されていますから、信頼性や妥当性のチェックが働くわけです。もちろん誤りもあるでしょうが、そこは大いに議論になります。

★しかし、教育では市場原理が働くのを忌み嫌う日本の文化があります。だからベネッセに対してもこういう仕打ちをするのでしょう。NHKまで巻き込んで報道しているのですからすさまじい国ですよ。

★ともかく、自分たちで教育コミュニティを創るなり、既存の信頼のおける教育コミュニティに加盟するなりして、自衛していきましょう。それが可能なのがオンライン化と英語などの世界言語の習得により成立します。だからようやく今なのかもしれません。そうそうPBLをやって、自分の考えをきちんと表明して議論できるクリティカル&クリエイティブな思考スキルの実装は必須です。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(37)巣鴨 日本初 WLSA加盟 イートン、ハロー、エピスコパル、チャドウィック etc.

★巣鴨がWLSAの加盟校になったと教育ジャーナリストのおおたとしまささんのfacebook情報で知りました。同校サイトにはいると、こうあります。

「World Leading Schools Association(WLSA)に日本初の加盟!
日本の学校としては初めて,World Leading Schools Association(WLSA:ウルサ)への加盟が決まりました。6月初旬に実施されたWLSA役員会投票の結果,本校のこれまでの教育活動が高く評価され,日本の私学教育を牽引する学校としてWLSAへの加盟が全会一致で可決されました。」

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(画像は、WLSAサイトから)

★このコミュニティは、2004年以降から、中国の学校の代表と世界中の教育の主要パートナーが、学校間の理解と協力を強化する方法について話し合いをスタートさせたようです。かつての眠れる獅子が覚醒をして、その台頭はすさまじいですから、欧米中心の教育も変容しなければサバイブできないし、中国の学校もさらに資本主義の先進校から学ぼうとしていた時代でしょう。クロス・カルチャラルな時代でもあるということのようです。

★久しい間議論が続き、2011年ころから本格的に活動が広がったようです。日本でも規模は小さいですが21世紀型教育機構が誕生するころでしたから、世界は未来に向けて同じ空気を吸っていたのですね。

★加盟国は、相当な名門校のようです。イートンやハロー校はもとより、エピスコパルハイスクールとあのチャドウィックスクールなども加盟校になっていますから、同コミュニティが自認しているように世界を牽引するリーダー校が集結したという感じです。中国やアフリカからも参加していますから本当の意味でグローバルな広がりがあります。そこに日本から巣鴨が初めて加盟ですから、ますますグローバルの意義が充実しますね。

★同コミュニティのサイトにはこんなコミットメントがあります。

<WLSA global citizens continue to redefine what it means to be a global leader in their communities, schools, businesses and neighborhoods.>

★ダボス会議でいえば、世界の広義のステークホルダーにおけるグローバルリーダーになる意味を再定義し続けるということのようです。クリティカルシンキングをもって、リセットを恐れずに進むということでしょう。そのメンバーとして巣鴨も同じようにアクションすることが規約にあるでしょうから、巣鴨の今後の再定義や自己変容、つまり進化が大いに期待できます。

★またこのコミュニティのサービスには、バイリンガルどころではないほどの外国語を学ぶシステムもあるし、オンライン学習もあります。なんといってもCANという海外大学との連携もいろいろあるようです。聖学院や開成、海城に続き、巣鴨も海外大学への道が開けていくということですね。

★また、日本初と言えば、工学院のケンブリッジ・イングリッシュ・スクールの加盟だったり、文化学園大学杉並のカナダのBC州との提携があります。初ではないけれど、八雲学園、玉川学園、工学院、啓明学園のようにラウンドスクエアに加盟している学校もあります。IB校はもう150校は超えていますね。

★このように、どんどんグローバル教育コミュニティとの提携が拡大しているわけです。こうなると、進学先も国内だけではなく海外にも広がっていきます。ポストコロナ時代は、海外大学は、オンライン授業をベースに、ミネルバ大学化しますから、ますますこの道は拡大するでしょう。

★男子校も、聖学院、開成、海城、巣鴨とそうなっていきますが、この後に武蔵、聖光学院、静岡聖光学院が続くでしょう。男子校のイメージが随分変わります。そして、そのことは、ポストコロナ時代のザ・グレート・リセットの文脈であり、キャピタリズムからタレンティスムというダボス会議のシナリオプランニングを展開・実現していくことになるでしょう。

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2020年7月 8日 (水)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(36)日経のシリーズ「教育改革 危機が促す」の思惑。

★ここ数日、日本経済新聞は、シリーズ「教育改革 危機が促す」を連載しています。

 ・「一律・平等」脱却に芽 個に応じた指導、柔軟に
教育改革 危機が促す 2020/7/7 20:00 (2020/7/8 5:41更新)

・「一斉授業は限界、最適な方法考える必要」小林いずみ氏
教育改革 危機が促す 2020/7/7 20:00日本経済新聞 電子版

・揺らぐ「学びの保障」 デジタル対応、世界に20年遅れ
教育改革 危機が促す 2020/7/6 22:50 (2020/7/7 5:27更新)

・「デジタルで効率的な学びを」豊福晋平・国際大准教授
教育改革 危機が促す 2020/7/6 22:50

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(写真は和洋九段女子のサイトから。同校のオンライン授業の質は高く、写真のように生徒同士がオンライン授業を行うまでになっています)

★この連載の中で、インタビューされている方々の発想や学校の試みはかなり先進的です。とはいえ、多くの私立学校にとっては当たり前の発想や取り組みです。

★私立学校の話をあえてしていないのですが、明らかに私立学校をモデルにして教育改革の輪郭を描いている日経の編集方針はいったい何を狙っているのでしょう。

★憶測にすぎませんが、おそらく公立と私立のICT教育格差を一気呵成に縮めようというのでしょう。

★というのは、初等中等教育の児童・生徒数は、ざっくり1,200万人いるのです。この1,200万人が、イノベーション教育の恩恵に浴すことができれば、日本の経済は大復活なのです。

★シンガポールやフィンランドなどは総人口がそもそもその半分もないのです。ということはこの1,200万人がイノベーションのスキルを駆使できるようになれば、圧倒することができるはずです。

★日経は、そんな日本の教育を救うねらいがあるのかあ!すごいなあ。いやたしかに結果的にそうなるのかもしれませんが、それよりも、世界経済の動きを追っていくと、日経の広告費を稼ぎ出すターゲット企業は、この1,200万人をターゲットにしている企業だからということが本音でしょう。

★日経はダボス会議をずっと追跡していて、来年の会議のテーマが「ザ・グレート・リセット」で、キーワードは「タレンティズム(才能主義)」です。

★このアイデアは、21世紀になってから日経が翻訳までして追跡してきたリチャード・フロリダ教授の「クリエイティブ・クラス論」です。最近、落合陽一さんんも新刊書で、この論を持ち出してアップデートまでしています。

★ノーベル経済学賞の流れからいくと、人口成長論から内生的成長論へという、やはり才能を発掘して経済を活性化するという文脈です。この内生的成長とは、教育において新しいイノベーティブな学びの経験を生み出すことによって可能になるという話です。

★この新しい経験は、すでに私立中高一貫校の30%は果たしているのですから、パレート原理に従えば、私学に広まるのは必至です。あとは公立ですが、コロナ禍の危機に乗じてギャップを埋めようという思惑があるのでしょう。

★しかしながら、このシリーズで批判的に検討されている一斉主義や一律主義の日本の教育は、おそらくそう簡単には変わらないでしょう。なぜなら一斉主義や一律主義の根本問題は教科書主義ということなのです。

★ここは、インタビューをされている方々は痛いほどわかっています。ほとんどが私立学校出身者のラインナップなのですから。取材されている中高一貫校である白鴎にしても、市川源三つながり(白鴎高校と鴎友の両方の校長をしていた)で、公立中高一貫校に移行するときに私立の鴎友学園の支援も得ているぐらいですから、基本は私学の研究をしっかりしている学校です。

★開成や聖学院、工学院、あるいは日比谷や筑駒のオンライン授業のケースを出したら、あまりのすさまじさに一般には公立はモチベーションを内燃させないでしょう。そこで、そこはマスクをかけて仕掛けているのでしょう。

★私立学校としては、真似をされては困るとは思っていません。全体が底上げになるのならば、大歓迎です。オンライン授業のインフラが公立も私立も整うのは、デジタルシフトが起こることで、日本の新しい経済基盤を創るのに重要です。しかし、そこから先のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、ソフトパワーの腕の見せ所で、タレンティズムの領域です。

★ここで、切磋琢磨することは経済の活性化に重要です。土台の段階で格差があるうちは、日本の経済は復活しないでしょう。企業のテレワーク、学校のオンライン授業のデジタルシフトの確立はザ・グレート・リセットの大前提だというのでしょう。

★さて、日経の描くストーリーはどうなるでしょうか。うまくいくかもしれませんし、そうでないかもしれません。

★もし、日経以外のメディアが一斉に日経の右に倣えば、動くかもしれません。あれっ?やはり一斉主義は日本の文化ですね。一斉主義という箱の中での入れ子の差異。繊細な文化のメカニズムかもしれません。

★となると、やり方はまた別にあるのかもしれません。

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ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(35)高橋博理事長 教育出動するカトリック学校の改革者

★聖パウロ学園の理事長・学園長であり、多くのカトリック学校の改革者でもある高橋博先生とZoomミーティングをしました。高橋先生は、一斉休暇中の聖パウロ学園の先生方のオンライン授業&面談及び今常任理事でやはりカトリック学校の改革を実施しているノートルダムグループの先生方のオンライン授業&面談を共にし、ポスト・コロナ時代のカトリック学校の在り方をさらに明確にし推し進めようとしています。

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★カトリック学校は、創設当初は、みなイノベーティブ・エデュケーターと称して役割を果たしてきました。戦争やパンデミックに直面し、社会の荒廃の中で困窮に陥っている子供たち、差別される子供たち、救いの手が差しのべられていていない子供たちのために、時代の先端技術を駆使して様々な行く手を妨げる壁と闘う模範を示しながら、子供たちと共にその壁を粉砕してきたのです。

★戦後日本でカトリック学校は見事にその意義をまっとうしたものです。聖パウロ学園もノートルダム女学院もまさにその役割を果たしてきました。

★その他の多くのカトリック学校も同様です。しかし、高度経済成長によって、その役割は表面上は解かれ、大量消費・大量生産・大量移動・大量情報の交差するポストモダン社会においては、今度は生き残りをかけなくてはならなくなりました。そのためにカトリック学校は東大や医学部をはじめとする大学進学実績をあげることによってサバイブしようとするところもたくさん出てきました。

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(一斉休校中、オンライン授業&面談に一丸となって取り組む聖パウロ学園の教師と生徒)

★信仰と進学実績は両立するというカトリック学校もでてきたのです。信仰するにもパンは必要です。そのパンは進学実績によってもたらされるのであれば、それもやむを得なかったのでしょう。

★しかし、マザー・テレサが訪日したとき、当時のインドの貧困な人々のようなお金の貧しさはない日本だが、心の貧困のあることを静かに指摘しました。

★訪日中、マザーの表情に笑顔はありませんでした。不満だったのではないのです。人が笑うとき、何か鬱屈した状態から解放されることのサインとして示す場合が多いのです。だから、マザーはその鬱屈状態から逃れることなくしっかり受け止めようという意志を笑顔を示さないことによって示したのでしょう。

★高橋先生は、そのマザー・テレサの気持ちを継承して、進学実績成果主義=偏差値主義という他人のつくった価値基準にまどわされて自己肯定感が低くなってしまった生徒のマインドを引き受け、なんとかしようとしてきたのです。1人ひとりの才能を見出し、解放し、大学や社会に出たときにその才能を大いに発揮できる教育環境を創ってきたのです。

★それが聖パウロ学園の先生方と試行錯誤して創り上げてきているPBL型授業であり、Growth Mindset教育としての面談なわけです。

★そして、高橋先生は、このパンデミックの局面で、先生方が動きまくったオンライン授業と面談の様子をみて、改めて授業と面談の重要性と本来性に気づいたということでした。

★世界同時的に、様々な教育活動が中止になったにもかかわらず、授業と面談だけはオンラインによって止めることがなく持続されたのだと。

★そして、分散登校、学校再開となったとき、そのオンラインのチャレンジが、リアルなPBL授業や面談という対話に活かされているのをみて、ある閃きがあったというのです。

★パンデミックとの対峙が、再びイノベーティブ・エデュケーターとしての魂を沸き立たせたようです。

★東京と京都のカトリック学校の両拠点のシナジー効果を生み出すアイデアが生まれたようです。

★それが何かは、今後追っかけてみたいと思います。乞うご期待。

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2020年7月 5日 (日)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(34)新しい生徒< E-Student>出現

★6月30日(火)、<Y Day>。「一般社団法人Sustainable Game」の代表理事山口由人さんのオンライン誕生会。ふだんYujinさんと呼ばれているし呼んでいます。幅広い多様なネットワークがサイバー上に集まりました。対話あり、音楽あり、グラフィックスクライビングあり、そしておもてなし満載の超カッコイイ誕生会でした。お招きいただき、ありがとうございました。

Yujin

★スピーカーは、Yujinさんはじめみな今でいう起業家。Yujinさんは中学生起業家だし、スピーカーの皆さんも同じよう若い時期から起業。領域はそれぞれ別だけれど、社会課題の解決を通して世界を変えたいという点で共通。しかし、学校の探究活動と決定的に違うことは、ビジネスになっているということです。

★Yujinさんが、なにゆえに起業家精神を発揮し、現在に至るのかは、様々なメディアで取り上げられています。つい最近もソトコトで<若い世代の目線でアクションを起こす、『Sustainable Game』。>という記事で紹介されています。まだYujinさんのことを知らない方は、ぜひご覧ください。

★とにかく驚愕なのは、目の付け所が、社会課題と向き合いながら仕事は仕事というパラレル活動ではなくて、社会課題を解決するプロセスが即プロダクトになる。それゆえビジネスになるというチャレンジなのです。

【図1】

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★これは、今までのように、【図1】の近代民主主義/資本主義社会である世界Aにだけいたのでは、成し遂げられません。Aが分断してきた自然の世界Nと、近代民主主義/資本主義をデジタル化して欲望資本主義になった世界Dを、全部くっつけて、作り直す以外に成就しないでしょう。

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★したがって、Yujinさんと仲間のアントレの方々は、世界Cと世界Bにも軸足があって、世界A、世界N、世界Bを越境してつなぐポジショニングにいます。

★そして、世界A、N、Dの分断をくっつけて循環させようとしています。もちろん、困難を極めます。越境はそう簡単にうまくいきません。でも、そうせざるを得ない、行動せざるを得ないほど、心突き動かされる体験や覚醒体験をしているからこそ挑戦するわけです。

★だから、Y Dayは、それぞれの多角的な角度から対話してワクワクしていたし刺激的な様子でしたが、対話は徐々に深まり、社会課題解決ゲーム=ビジネス=未知なる世界Xを創り出すというのは、そう簡単ではないのだという淵源のところまでいきついていました。

★学習指導要領の枠内の学びをしている生徒。そして世界Cも世界Bもない閉じられた世界Aで偏差値ゲームをして勝ち組負け組の格差社会に苦悩している生徒とは違い、たしかに新しい生徒なのです。英語もデジタルもアントレも融合したハイブリッドな<E-Student>の出現です。

★Yujinさんは、しかしシェアをしないコメントをタイムラインに載せていたことがあります。探したけれどっ見当たらなかったので、時間限定だったのかもしれません。

★それは、世界A、B、Cの枠内に収まりけれない大きな世界へ今すぐに飛び立ちたいけれどできない、いつかは引き受けたいというもどかしいコンパッション・コメントでした。

★それが何を意味するのか、そしてその結果未知なる世界Xがどのように変容するのか。そこはYujinさんしかわからないでしょう。私は、偶然にもこの出会いに立ち会っているのですが、ただただ見ているだけです。どこかでつながればいいのにと思いつつ、そのタイミングを待つことにします。古い人と新しい人が、化学反応を生みだす活性化エネルギーは膨大だからです。歴史の戯れに身を任せることにします。

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2020年7月 1日 (水)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(31)6月のアクセスランキングから見えるコト。

★6月は緊急事態宣言が解除され、段階的にニューノーマルな生活が進みました。第2波の兆しも見えたり、海外の分断の動きもあり、パンデミックのもたらしている社会不安は相当なものがあります。ニューノーマルとは、日々のノー3密時空での生活であると同時に、世界を巻き込む社会不安にどう自分はかかわるのかを考えざるを得ない生活でもあると実感しています。

2006

★そんな中、ホンマノオト21の6月のアクセスランキングはどうだったでしょう。ベスト50をご紹介します。

1:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して
2:ポスト・コロナショック時代の私立学校(128)品川翔英 突出した未来の学校のモデルづくりの挑戦着々。
3:ポスト・コロナショック時代の私立学校(102)横浜創英 オンラインスクールの進化速度が加速するわけ。
4:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
5:2021年の入試(10)武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院大学附属中の動きに注目!
6:2020年春の大学合格実績(3)鴎友学園女子
7:ポスト・コロナショック時代の私立学校(119)アサンプション国際小学校 ノー3密空間はニュートンの創造的休暇PBL!
8:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
9:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(23)本格的なPBLの時代 突き抜ける人類としての自分へ①
10:2021年の入試(31)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」の特設ページ④聖学院・品川翔英・工学院
11:2021年の入試(05)開成&武蔵のオンライン授業の成績の付け方は、オンライン中学入試のモデル?
12:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(26)工学院の田中歩先生の未来質感のすばらしさ!
13:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
14:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
15:2021年中学入試を読み解く準備(10)立教女学院の人気の理由 骨太の教...
16:2021年の入試(21)オンライン説明会浸透で、保護者の情報収集の仕方は...
17:2021年の入試(20)工学院のオンライン高校説明会 キャリア・共デザイ...
18:2021年の入試(07)八雲学園の俊敏かつ緻密な動き パンデミックを乗り...
19:ポスト・コロナショック時代の私立学校(120)ノートルダム女学院 分散登...
20:2021年の入試(17)2021年の中学入試はどうなるか?ハイブリッドで...
21:ポスト・コロナショック時代の私立学校(125)聖学院の伊藤豊先生の本来的...
22:2021年の入試(12)聖学院インパクト 突出したオンライン説明会×オン...
23:ポストコロナの授業<02>工学院 新しい経験を経て変容する授業の追究 グ...
24:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(24)本格的なPBLの時代 突...
25:2021年の入試(06)新しい保護者 ナチュラルシチズンとして学校や教育...
26:2021年の入試(23)オンライン説明会浸透で、保護者の問いの深さへの意...
27:2021年の入試(16)新渡戸文化のハイブリッド型学習の価値 グレート・...
28:ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(25)工学院の教師とZoom対...
29:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
30:2021年の入試(08)2021年入試は、桐蔭学園中等教育学校の教育の総...
31:2021年の入試(32)聖学院インパクトいよいよ始まります!
32:2021年の入試(27)昭和学院 オンライン入試実施発表 入試市場におけ...
33:2021年中学入試を読み解く準備(11)武蔵野大学中高の迅速な対応 オン...
34:2021年の入試(28)オンライン説明会の宝庫 「おうちdeしゅともし」...
35:2021年の入試(24)オンライン説明会浸透で、保護者は教師と生徒のかか...
36:2021年の入試(19)聖学院のオンライン思考力セミナー テクノロジーと...
37:2021年の入試(11)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
38:ポスト・コロナショック時代の私立学校(109)聖パウロ学園 戦略的コミュ...
39:2021年の入試(33)品川翔英 ポストコロナ時代に必要とされる教師の学...
40:2021年の入試(09)八雲学園 卒業生が帰還し、文化を継承し、新しいシ...
41:ポスト・コロナショック時代の私立学校(127)ノートルダム学院小学校 新...
42:2021年の入試(18)2021年の中学入試の準備の場を、子どもが自ら未...
43:2021年の入試(22)オンライン説明会浸透で、保護者の情報分析視点は変...
44:ポスト・コロナショック時代の私立学校(118)ノートルダム女学院 Web...
45:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
46:ポスト・コロナショック時代の私立学校(126)ノートルダム学院小学校 新...
47:2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私...
48:2021年の入試(05)思考コード~自分の才能に気づき突き抜ける自分を見...
49:ポスト・コロナショック時代の私立学校(123)和洋九段女子 良質のハイブ...
50:ポスト・コロナショック時代の私立学校(89)吉祥女子の遠隔授業の意味: ...

★解除されると、やはり中学入試のことが一気に気になり始めているという傾向がでてきました。ランキング1位の記事に代表されるように従来型の学校選択情報の記事が、ベスト10位の40%を占めているところからもわかります。

★そんな中で、5位の記事のように、武蔵野大中、新渡戸文化中、横浜創英中、品川翔英、工学院のようなオンライン授業という先鋭的な教育イノベーションを行っている学校情報にもアクセスが多いですね。聖学院、八雲学園、和洋九段女子、ノートルダム女学院などの記事のアクセスが多いのもそういうわけでしょう。

★そんな中でアサンプション国際小学校の記事が7位というのは、興味深いです。おそらく、ニューノーマルの学校生活の中で、新しいPBLに挑戦するアイデアについて同校の先生方とZoom対話をしたことへの関心の高さでしょう。

★それから、9位の記事のように、学校情報というより、ポストコロナと教育の関係のような今後の仮説を述べた記事にもアクセスが多いというのは、驚きでした。ホンマノオト21をご覧いただいている方々の見識の高さを改めて知り、今一度気を引き締めて臨まなくてはと感じ入りました。

★さらに、この歴史的に重要な時期に、21世紀私学人である田中歩先生の記事が12位に入ってきているのは、素直に嬉しいです。2014年ころからずっと教育イノベーションについて語り合い、授業をいっしょにリサーチしながら、PBL授業や思考コード、研修、共感的コミュニケーションなどを創ってきました。もちろん、主語は田中歩先生で、私はサポーターにすぎませんが。

★かくして、2020年6月は、教育における現実と理想の間をつなぐにはいかにしたら可能か?現実とは?理想とは?そもそもいかなるものなのか?などについて、多くの方々と考える時間を共有できたのだと思います。ありがとうございます。そして、今後もよろしくお願いいたします。

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2020年6月29日 (月)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(30)ノートルダム学院小学校 本格登校で大切な<笑い>を取り戻す 人間存在の本来性を支えるエクササイズ

★ノートルダム学院小学校でも、本格登校が始まっていますが、このコロナ禍にあって忘れがちな大切な<笑い>のエクササイズをきちんとしているのはさすがです。

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★ノートルダム教育修道女会を創設したマリア・テレジア・ゲルハルティンガーがミュンヘンのアンガー修道院で世を去ったとき、あの哲学者でノーベル文学賞を受賞しているベルクソンは、20歳でした。1900年に「笑い」について哲学的考察を行っています。晩年はカトリック信仰に傾きつつあったということです。歳の差はあれ、パンデミックと戦争が続く世界を共体験している同時代人です。何かしら時代の想いは共有していたことでしょう。

★ベルクソンの「笑い」は、今でいう心理学的な考察や人間の極限の無関心との関連を考察していたりしています。また喜劇などの文学との考察もしていて、「笑い」がいかに人間存在にとって大切な役割を果たしているかを今の私たちにも伝えています。

★ゲルハルティンガーが、「人が変われば」といったとき、どんな表情をしたのでしょう。おそらく微笑んだのではないでしょうか。人が変わるには共感的なつながりが生まれなければなりませんが、そのとき硬直した状況を柔らかくするには、表情が硬ければ変わりようがないでしょう。

★今では、「笑い」は癒しや免疫をあげるなど医学や脳科学でも研究がされています。

★コロナ禍にあってそれほど友達と遊べなかった時間を過ごし、本格的登校が始まってもマスクをする生活を暮らしていると、いつの間にか「笑い」を忘れてしまいます。笑顔は、友達との絆を深め、自分の心も柔らかくし、創造的な発想も生み出します。何より免疫を高めると言われています。

★ですから、表情筋のストレッチをあえてする笑顔のエクササイズは大切です。同校のサイトには、こんな記事が載っています。<6月26日(金) 「〇〇〇の下の笑顔を探して・・・」 >6年生の担任の一柳先生の書いた記事ですが、Withコロナのニューノーマルな学校生活において、とても大切な教育活動です。ぜひご覧ください。

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2020年3月23日 (月)

システム思考×複雑系組織(2)私立学校のリスク社会の乗り越え方①

★今回の新型コロナウイルスショックは、世界が丸ごとリスク社会そのものであることを顕在化させたわけですが、私立学校はその影響を直接受けています。今多くの私立学校で3カ月留学などの時期ですから、生徒の海外への渡航延期や中止の意志決定をしているし、出入国制限の関係で、留学中の生徒を帰国させる行動で奔走しています。

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★もちろん、一斉休暇中の生徒の普段の学習の構えを持続可能にしたり、効果的な過ごし方の行動もしています。こうした意思決定や行動の判断ミスは、すぐに生徒募集という経済活動にも支障をきたします。

★私立学校の教師も生徒も実は行動や価値意識の持ち方次第では、経済活動という生活世界に直結する影響を受けてしまいます。優秀な教師がどんなに1人がんばっても、経済活動の循環=3ポリシーの実現の循環がうまくいかなければ、閉校に陥るからです。

★ただし、私立学校は企業ではないですから、すぐに閉校はしませんから蘇生する時間は稼げます。また公立学校のように統廃合の決定に従わなければならないということもないので、やり方しだいでは何とかなる可能性が大ですが、そのやり方とは広報戦略とか学習の仕方の改革とか進路指導の方法とかそれぞれ単発に行われているのではなく、リスク社会を乗り越える方法として統合されている必要があるのです。そのことがはっきりしたのが今回のショックだったわけです。

★国家と公立学校、自治体、企業、NPOなどの組織と私立学校の組織は、その経済的基盤は違いますが、同じリスク社会に位置づけられています。また国家組織と企業組織の中間形態でもあるので、私立学校のリスク社会の乗り越え方について考えていくのは、なんらかの参考になると思います。それに中間形態としては医療組織はわりと私立学校の組織に共通する点も多いと思われますし。

★さて、そのリスク社会を乗り越える方法ですが、

1)生徒がいかなるリスク社会であれサバイブできる資質・能力=共感的システム思考を身に着ける学びの環境の構築の仕方と

2)その環境を支えるあるいは生み出す組織マネジメント=複雑系組織の仕方の相乗効果を考えていくことによってみていきたいと思います。

★おそらく、この<システム思考×複雑系組織>の相乗効果が、生徒の未来に希望を灯すことになり、それは結果的にリスク社会を生徒自身が乗り越えることができると同時に、少しでもリスク社会の暴発を防ぐ組織システムの脱構築や創造を果たしていくことになるでしょう。

★さて、今回の新型コロナウイルスショックは、ここにきて、多様な価値観がどうあれ、世界が一丸となって解決しようという協働的な動きになってきています。自分だけ助かろうというのは見えない敵に向かっては不可能であることは誰もが気づいたことでしょう。この見えない敵は、何も新型コロナウィルスだけではなく、むしろ忍び寄る権力や情報の隠ぺいというシステムなどが大きいということも理解し始めているわけですが、この見えない敵に対応するには、協働的動きしかないのだと世界同時的に認識共有がされたと思います。

★ただ、その協働の在り方にはいくつかのパターンがあります。上記の図に在るように、リバタリアン的な価値意識をもっていても、自分が生き延びるには他者は無視できません。自由に生きるにしても、抑圧的他者関係を仕組むと、それは自分に跳ね返ってきますから、あくまで共感的コミュニケーションをとりながら、個人の自由を優先するという立場もあります。つまり、リバタリアンも、協働的に行動するのが今回だと思います。

★共感的コミュニケーションとなんといっても他者の幸福を優先しながら自分も幸せに生きて行くというゴールデンルールを軸にしているコミュニタリアンは、今回はもっとも目覚ましい活躍をしているのだと思います。そして、リスク社会が顕在化し、そのことを共有した今、コミュニタリアンがリーダーシップをとっていくのだと思います。白熱教室で知られるようになったサンデル教授のコミュニタリアニズムの発想が今現実態になろうとしているのかもしれません。

★もっとも、サンデル教授は、ブレアークリントン時代から彼らのメンターとして活躍しているので、紆余曲折はあるけれども、1989年のベルリンの壁崩壊以降の世界の変容の在り方の模索やIT革命の世界の変容の在り方について、世界同時的に認識するようになったということでしょう。トニー・ブレア時代に、再帰的近代社会やリスク社会の概念も論じられるようにもなっていました。新自由主義との葛藤で、なかなか理想型は浮上してこなかったのですが、今回は浮上してくるかもしれません。もっとも、このテーマは近代誕生と同時に生まれているので、新しい社会課題ではありません。

★個人と他者のバランスをとるリベラリストは、しかし、やはり自分軸が基準です。バランスをとる規制は抑圧的にならざるをえないですね。フランスやドイツの動きは、リベラリズムがベースです。

★米国のトランプ大統領のように、個人のための個人の幸せを優先するために抑圧的コミュニケーション行動を自由に行うコンサバも、今回は自粛要請でパンデミックを乗り切ろうとしています。

★かくして、一丸となって協働するといっても、みんながコミュタリアンになるわけではないのです。それでもリスク社会を前に協働的に行動せざるを得ないわけです。

★だから、コミュタリアニズム、リバタリアニズム、コンサバティズム、リベラリズムの4つの価値意識の相関関係で、システム思考やコミュニケーション、マインドの質は変容します。

★私立学校の場合、建学の精神の共有は教師も生徒もしているので、協働的な<システム思考やコミュニケーション、マインド>はあります。しかし、基本、これまでは、コンサバティズムとリベラリズムとの葛藤が主役でした。

★受験生や保護者もそうでしたから、生徒募集という経済活動もそれなりに回っていたのです。

★しかし、1989年のベルリン壁が崩壊して以降、無意識理にそれでやっていけるのかという動きが始まりました。1995年の地下鉄サリン事件と関西淡路大地震もその動きを強めることになりますが、風化するという反動もありました。9・11の世界同時テロでやはりその意識は立ち上がろうとします。しかし、今のようなSNSの情報共有を世界同時的にはできませんでした。むしろ米国の覇権主義への憧れが広がったでしょう。その意識が明快に立ち上がったのは3・11でした。しかし、ここを起点にSNSが進化し始まめるので、まだ世界同時的にリスク社会を共有するにはいたらなかったのです。

★しかし、今回はSNSやオンラインの目覚ましい進化の中で起こったので、それは白日のもとにさらされたということでしょう。

★このようなリスク社会に立ち向かうには、抑圧的コミュニケーションでは難しいですね。情報共有ができない欠点があるからです。情報共有がされても、情報誘導で共有されていない部分が背景にあります。SNSやオンラインは、良くも悪くも、それをぶっ飛ばします。

★そこで、共感的コミュニケーションが重視されるようになりました。<共感>という言葉も<PBL>と同じくらいバズワードになってきていますが、それはその必要性が人々の心の底に見え隠れしているからでしょう。

★かくして、私立学校の組織マネジメントは、共感的コミュニケーションをベースにしたコミュタリアニズムとリバタリアニズムのバランスで成り立っているところが、市場で評価され支持されるようになっていきます。経済活動を回すのは、この2つの価値意識がまずベースになります。そのうえで、残りの2つの価値意識とのバランスをどうするのか。私立学校は今複雑適応系組織になろうとしている、あるいはならざるを得ない局面を迎えています。

★そして、このベースがないと、共感的システム思考を生み出す学びの環境を創ることができないのです。それができなければ、経済活動は右肩下がりになります。(つづく)

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