創造的対話

2026年4月 6日 (月)

御三家人気は健在の意味 VLL (Value Line of Learning)

★4月1日のYahooニュースで、<《2026年中学入試》麻布中学の志願者減少は“御三家離れ”の象徴なのか? それでもなお「御三家人気は健在」と言える根拠>という記事が掲載されています。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』を出版しているノンフィクションライター・杉浦由美子さんのレポートです。

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★SAPIXやONETES(旧首都圏模試)のインタビュー及びデータなどの情報を活用して記事が書かれているので、麻布という学校の教育がコンセプトの違う受験市場形成者にどう見えているかがわかります。また私もリスペクトしている中学受験専門の国語塾PREXの渋田隆之塾長のインタビューもしていて、現在の塾の受験指導の傾向が昔(私の時代)と変わったということも実感どおりでした。

★内容については杉浦さんの記事や上記写真の本を読んでください。なんだかんだといって偏差値をベースにしているので、新しい見方と従来の見方が交差しています。それゆえ、どう読むかは読者次第ですが、マーケティング戦略としては、どの価値志向の読者にも読めるようになっているのが凄いですね。

★だから、偏差値という知識の出し入れの能力を是とする立場だけではなく、生徒1人ひとりの才能と生き方というBeing(最近こういう言う方がされていますね。特にAI時代はDoingからBeingだと。定義問題なのでキャッチコピーとして理解しています。本質は両方の循環が大事です)を是とする立場にも視野が広まっている受験情報を流しているライターが現れたのは大歓迎です。

★今までは、ONETESの取締役の北一成さんだけが奮闘していましたが、北さんに続く編集者が現れてくることは私にとっては歓迎です。

★さて、麻布に関してですが、人気は不動です。ですが、この人気については、私は麻布のような「青年即未来」という創設者江原素六の生きざまそのものを継承している教育は、日本の歴史において極めて重要で、もし麻布の人気がなくなったときは、日本の歴史が全く違うものになっていると考えています。それほど麻布の人気は歴史のバロメーターですね。

★麻布の歴史は、官学の系譜と私学の系譜をどう考えるかということですが、表面的には気づかれないディープな日本の近代史の本質がそこにはあります。もっとも、こんなことは受験市場にとっては関心がないので、マーケティング的にはどうでもよいことかもしれません。しかし、クリスマスという市場があることによって、その根っこにキリスト教という本質があることが気づかれなくなってもそれが「ある」ということは変わりはないわけです。

★それと同じで、麻布が人気である市場が継続されることは、私学の系譜の第一世代の一人である江原素六の気概が継承され続けるということですからクリスマス市場と同じように重要なのです。江原素六の発想は、戦後教育基本法に受け継がれています。同法が改正されるときに、その精神が崩されそうになったため、東京私立中学高等学校協会、つまり東京の私学人は一丸となって、その精神の継承を守る言論を展開しました。

★その戦後教育基本法を成立させた座長のお孫さんが、当時の麻布の氷上校長で、氷上先生も機会があるたびに論じました。私はその講演で、当時の共立女子の渡辺校長と同席し、講演後氷上先生と対話をしました。そのときから「私学の系譜」というフレーズを使い、その視点で私学の建学の精神をみてきました。

★ところで、受験市場のマーケットという角度から麻布の人気をみると、私学の系譜とは全く違う様相になっています。まず、2015年以前は、偏差値ピラミッドで学校選択は行われざるを得ませんでした。知識ベースのテストの結果が偏差値です。ですからそのマーケットで偏差値55でも、麻布型の思考力の素養がある生徒は、そこは偏差値では測れませんでしたから、塾の指導によって確かに合格していきました。

★しかし、2015年から、麻布ならではの思考力型問題とはまた違うどちらかという英米哲学ベースの思考力入試という新タイプ入試が、偏差値にかかわらず多くの学校で実施されるようになりました。今では20%市場です。そして、東大には、共通テストという基礎学力という名の日本的試験が壁になって、才能豊かな生徒がチャレンジできなかったのが、そのような生徒が英語で思考することができるようになるカリキュラムのある学校から東大以上の世界大学ランキングの海外大学に入るようになったため、偏差値55の生徒が麻布にいかなくても満足できるようなってきたのです。

★つまり、中学受験市場が100%偏差値競争主義から、25%は偏差値競争主義+75%才能開花主義という整理がされるようになってきたわけです。かつては、その75%の層から、麻布を受けていたのですが、それがなくなりました。そしてもともと御三家を対象とする市場は25%だったのです。ですから、その25%、つまり首都圏の受験生12500人が御三家市場規模だったのですが、それが明白になったというわけです。それゆえ、この12500人の中で、人気があるないという話ですね。

★ところが、首都圏中学受験の人数50000人というのは、ざっくり今の日本の小学6年生の人口を100万人とすると5%シェアです。大学受験や高校受験の偏差値と意味が全く違います。

★この5万人は、実に才能者です。本当のことを言えば、子どもはみな才能者なのですが、そのことに意識を集中させている家庭層がこの5%です。今や御三家にいかなくても才能開花は十分に可能です。このことはもちろん2015年前からわかっていたことですが、実績という目に見えるものに魅力を感じがちなのは世の常です。

★ですから、世界大学ランキングの海外大学に50人も入るという実績を見て、やっとその学校の教育の内容の質に気づくというのが、最近の傾向なのです。

★この25%と75%の境目を「学びの価値ライン=Value Line of Learning=VLL」と呼びましょうか。VLLがあるおかげで、それぞれの価値領域で才能開花を行えるようになったわけです。メリトクラシーとビーイングという違いはあるけれど、それがよいわけです。価値意識は違う才能者があふれることくらい世の平和はありません。偏向主義からフラットにしていく運動は、まあ自然の成り行きではありましょう。

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2026年4月 4日 (土)

湘南白百合の魅力の発信のすばらしさ 3年連続DXハイスクール採択校 

今年4月1日、文部科学省は、3年目のDXハイスクール採択校を公表しました。文科省は次のように発進しています。

「令和8年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の採択校をお知らせします。
令和8年度高等学校等デジタル人材育成支援事業費補助金(高等学校 DX 加速化推進事業)について、1,249校を採択校として決定しましたのでお知らせします。
1. 事業の概要
本事業は高校段階におけるデジタル等成長分野を支える人材育成の抜本的強化を図るため、情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICT を活用した文理横断的・探究的な学びを強化する学校などに対して、必要な環境整備の経費を支援するものです。

令和8年度高等学校等デジタル人材育成支援事業費補助金(高等学校DX加速化推進事業)については、令和8年1月21日~令和8年2月27日まで申請を受け付け、採択校として1,249校を決定しました。
2. 採択結果
1,249校(公立920校、私立329校)
うち重点類型80校
グローバル型20校
特色化・魅力化型10校
プロフェッショナル型50校(うち半導体重点枠10校)

★ということですが、このDXハイスクールへの挑戦がどれほど重要かあまり明快には公表されていません。凄いことだけはわかりますが、1249校がそれぞれ独自のDX教育観をプランしてその成果をあげているから採択という成果にいたっています。その独自のDX教育観がわかれば、その学校の魅力がより伝わるはずです。もちろん、文科省は各校の魅力を発信する立場にないのですから、各校が魅力を発信すればよいのです。どうやって?

★そのロールモデルは、湘南白百合です。ます採択されたことをすぐにホームページの新着情報で発信します。そして、広報部長自らが、関係各所にメールでお知らせをするわけです。しかも、ホームページで語られていること以上のスパイス情報を載せて発信します。同校の教頭で広報部長の水尾先生は次のように発進しています。

この度、本校は文部科学省が推進する「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」に、3年連続で認定されましたことをご報告いたします。

■ 学びを加速させる「クリエイティブスペース」の活用
認定2年目となった昨年度には、生徒たちの「やりたい」を形にする拠点として、校内に「クリエイティブスペース」を新設いたしました。
ここには、高度な映像編集やプログラミングを可能にするハイスペックPCに加え、自身のアイデアを立体化できる3Dプリンターを完備。生徒が自由な発想を具現化する光景が見られるようになりました。

■ さらに進化するICT教育環境
今年度からは、新たにVRゴーグルなどの先端機器を順次、授業にも導入いたします。これにより、従来の情報の授業に留まらず、探究活動においても「仮想空間でのシミュレーション」や「没入型のプレゼンテーション」など、より高度で実践的な学びを展開してまいります。

本校が目指すのは、単に機器を使いこなすことではありません。ICTを「道具」として自由自在に操り、自らの手で新しい価値を創り出せる、そんな真の情報活用能力を育むことです。今後もハード・ソフトの両面から教育環境をさらに拡充し、次世代を担う生徒たちの可能性を最大限に引き出す教育を推進してまいります。

★生徒の成長の変化やソフトパワー重視の教育コンセプトなど、公式サイトでは述べられていないことが加えられています。公式サイトはファクトベースの記述であり、それに教師としての眼差しと教頭としてのビジョンを加えるという発信が水尾先生ならではの「感動喚起表現」なのです。

★このような独自の魅力を各校が発信していけば、いかに私立学校というのは、偏差値や学歴のような競争を求めるのではなく、生徒のウェルビーイングをいまここで、そして未来に生み出していくかが広まるでしょう。もちろん、受験市場が偏差値や学歴を追求するのはマーケットの話ですから大いに行ってほしいのです。市場の中でプレイヤーが何を選択するかはあくまで私事の自己決定です。

★ですから、構わないのです。ただ、学校は偏差値や学歴情報だけで成立しているわけではないのです。ところが、私立学校が自ら自分たちの独自の魅力を発信しないと、マーケットにおいて、情報の非対称性がおこり、偏った情報で選択せざるを得なくなります。水尾先生のように正しき情報をマーケットに発信するまさにソフトパワーはこれから私立学校にとってますます重要になってくるでしょう。

★それから、首都圏の私立学校の採択数ですが、1249校採択された中で、418校です。6.8%シェアですから、たしかに凄いチャレンジだったわけです。

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★神奈川の採択校は13校です。採択された学校すべての1.2%です。湘南白百合がいかに情熱的に取り組んでいるかということが数字上でもわかりますね。

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2026年4月 3日 (金)

2027年に向けて躍動する学校(01)AからBへではなく、A∞Bの循環というコンセプト

1.「3Rから3Xへ」は出発点であって、ゴールではありません

2011年に20世紀型教育から21世紀型教育にシフトすることを表明した時、私自身も、当時のMITメディアラボのシーモア・パパート教授に倣って「3Rから3Xへ」という表現を使いました。教育のパラダイムシフトをわかりやすく伝えるためのレトリックとしてです。Reading(読み)・Writing(書き)・Arithmetic(算術)を中心とした20世紀型の知識習得教育から、Explore(探究)・Exchange(対話・交流)・Express(表現)を核とする21世紀型の学びへ──この言葉は、その転換を端的に示すものとして機能したと思います。

しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。この「シフト」を「3Rを捨てて3Xに乗り換える」と読むなら、それは本質を見誤ることになります。そして、実際にこのような極端なことをいう方が現場で現れました。また3Rが大事だ、いや3Xだとかいう議論も今も続いています。

21世紀型教育を3Rから3Xへではなくて・・・・といったところで、伝わらないので、22世紀型教育ではどうかというカタチで語ることにしたいと思います。するとそれは、3Rと3Xが互いを補い合いながら循環し続けることであり、この循環こそが、人間の学びをより深く、より豊かにする源泉なのですと。

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3R Reading / Writing / Arithmetic (知識の習得・処理・再現) Doing ⇄ 3X Explore / Exchange / Express (探究・対話・表現) Being この二つは対立するものではなく、互いを深め合うサイクルなのです。

2.循環とはどういうことか

たとえばこういう場面を想像してみてください。子どもが「なぜ川の水は海に流れるのに、海は溢れないのだろう?」という問いを持ったとします(Explore)。その答えを調べようとするとき、文章を読み(Reading)、データを読み解き(Arithmetic)、その結果を誰かに伝えるために言葉を選んで書きます(Writing)。そしてその成果を他者に語り(Exchange)、図や文章として表現します(Express)。

この学びの過程で、3Rは手段として生き生きと機能しています。そして3Xは、その3Rに意味と方向性を与えています。どちらかが欠ければ、学びは浅くなります。両者が循環することによって、知識は「使える力」へと変容するのです。これが、22世紀型教育における「循環」の意味です。

3.DoingとBeingもまた、循環する

同じことは、DoingとBeingの関係にも当てはまります。
「Doing(何をするか・何ができるか)」と「Being(いかにあるか・何者であるか)」は、しばしば対立的に語られます。しかし本来、この二つは別々に存在するものではありません。

Doingを深めることで、人は自分の「できること」を知ります。できることが増えると、「自分はどんな人間になりたいのか」「何のために学ぶのか」というBeingの問いが生まれます。そのBeingの問いが、次のDoingをより意味のあるものにします。この往復運動こそが、成長の本質です。

たとえばAIが「Doing」のほとんどを代替できる時代になったとしても、「何のためにその力を使うのか」「自分はどのような存在として世界と関わるのか」というBeingの問いは、依然として人間にしかできない問いです。そして、その問いに向き合い続けるためにも、具体的なDoingの経験が必要です。

4.「循環する学び」が22世紀型教育の本質です

まとめると、次のように言えます。

「3Rから3Xへ」は、覚えやすく伝えやすいスローガンです。
しかし、22世紀型教育の本質は、3Rと3Xが循環することにあります。
DoingとBeingも同様に、どちらかがあ重要なのではありません。
この循環を繰り返しながら、人は深く、しなやかに成長し続けることができるのです。

変化の激しい時代において、知識を持つことは依然として大切です。同時に、その知識をいかに問い・対話し・表現するかも不可欠です。Doingの力がBeingを豊かにし、Beingの深さがDoingに意味を与える──このダイナミクスの中にこそ、これからの教育の姿があります。

5.とはいえこのビジョンだけでは教育の現場は変わらない

とはいえ、このようなことは、21世紀だろうが22世紀だろうが、実施している教師はいるのです。重要なことは、現場で、このビジョンを実現するための授業のメカニズムと思考のメカニズムと学び方のメカニズムの整理と融合なのです。これは20世紀型教育は明快でした。記憶のメカニズムは脳科学的にもわかりやすいものでした。授業は記憶の環境づくりであり、思考は記憶を促進する創意工夫であり、学び方は記憶の習慣化と直結していました。

ところが、3Xは、作法のプロセスで、そこで起きているメカニズムははっきりしないのです。しかもプロセスも人によって違い、メカニズムの可視化などまだまだできません。そこで生成AIを使い、reflection in actionのメカニズムをリサーチしていくという段階に入りました。ここの話は、仲間の先生方と話して、まだまだ広くは伝わらないだろうと。もちろん、諦めずに解明していきますが!

★仲間というのは、22世紀型教育研究センターのセンター長田中歩先生(工学院 教頭)をはじめとする所員メンバーの先生方や田中歩先生の所属する別の研究会のメンバーなどを示しています。

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2026年4月 1日 (水)

【速報】青柳圭子先生 成城学園中学校高等学校 校長に就任

青柳圭子先生が、成城学園中学校高等学校の校長に就任されました。おめでとうございます!青柳先生には、三角ロジックのメカニズムをご教示いただいたり、TP(ティーチング・ポートフォリオ)のワークショップで教師の人物の未来像など刺激を頂いてきました。現在も組織マネジメントのワークショップなどで、不易流行としての私立学校の在り方について学ぶ機会を頂いています。

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★何より、同学園の創設者澤柳政太郎の理念と思想と教育方法論についてのご教示は、PBLを追究している私にとっては、デューイ・ルネサンスの魂を生み出してくれました。

★そして、このPBLの前提に、自然と社会と精神が循環することへの気づきから始まるセンサリーシンキングがあるという核心に誘(いざな)っていただきました。

★私の敬愛する文化人類学者ティム・ゴールドも最新刊の著書「教育とは何か」の中で、デューイに新しい光をあてています。今後PBLも成城学園の不易流行の光とそれは相乗効果を生み出すのではないかとワクワクしています。もちろん、成城学園及び青柳先生は、デューイだけを継承しているのではなく、多様な教育哲学を始めとする学問を研究し、独自の教育イノベーションを展開しています。

★ただ、デューイの遺伝子があることはAI時代にあって、またこの時代の影響を取り入れようとしている次期学習指導要領の方向性に大切な道標を示すことになると期待しています。

★ますますお忙しくなるとは存じますが、またインタビューにお願いにあがろうと思っています。

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2026年3月30日 (月)

AI時代のパラダイムシフトと駒沢学園女子

★2025年12月31日、元OpenAIのAI研究者であるDaniel Kokotajlo氏らのチームはAIの急速な進展とその潜在的リスクを描いた将来予測シナリオを「AI 2027」のレポートとして発表しました。AIが人間を明確に上回る能力を獲得する時期がシミュレーションのデータなどで、早まることを示唆しています。2045年のシンギュラリティ予測を待つまでもなく、すでにやって来ているのだということでしょう。

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★2024年には、オックスフォード大学の元教授ニック・ボストロム氏の「ディープ・ユートピア」(未邦訳)が出版されています。ニック・ボストロム氏は、2014年に「スーパーインテリジェンス」を出版していて、シリコンバレーのGAFAMのCEOなどに大きな影響を与えています。

★AI2027も、その影響をうけていることは、未来がどうなるかという点で共通している部分が多いことで推察できます。

★2027年は、日本の大学もかなり新しい動きをします。その一環として大学入試も変わります。何ができたかという能力主義から、どのような在り方が人間にとって意味があるのかを共に追求していく時代になるのだと。

★もちろん、能力主義が皆無になることはそう簡単ではないでしょう。世の中の25%は、能力主義が機能していくと思います。残りの75%は、Beingの意味をめぐる活動を重視するようになるでしょう。

★このように、25%は能力主義的カリキュラム、75%は生徒自身のBeingが社会のBeingと良好な関係をつくるプロジェクトベースのカリキュラムの両方が機能している学校がすでに現れています。

★本ブログでもご紹介している世界大学ランキング200位以内の海外大学の合格者が多数出ている学校は、そのような教育環境デザインを確立しています。そして駒沢学園女子のように2年前にグローバル探究のプログラムを本格的に実施し、2027年にその成果をあげる予想がされている学校も誕生しています。駒沢学園女子が、AI時代のパラダイムシフトの流れに呼応していることについてはいずれご紹介します。

 

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2026年3月29日 (日)

2027年以降の教育 ディープ・ユートピアに直面か?

★2011年から21世紀型教育を作ろうと仲間の先生方と歩いてきたとき、グローバル教育はまずCEFR基準のC1レベルを念頭に置いて、それを実現する教育環境をリサーチしました。次にC1英語の環境には高次思考力が必要だし、それを生み出す授業はPBLだろうと仮説を立て、MITメディラボのシーモア・パパート教授の3X理論をベースにしながら、デューイやガードナーやシステム思考やデザイン思考、学習する組織などリサーチして取り込んでいきました。ICTに関しては、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授の機械学習による将来の仕事の変化などの情報を収集していました。

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★しかし、2014年に出版された同じオックスフォード大学の教授だったニック・ボストロムの「スーパーインテリジェンス」は、多くの識者がそこから引っ張っている知識や情報を活用する程度でした。分厚かったし、邦訳されたのは2017年で、すでに多くの見識者が語っていたので、読まないまま過ごしてしまいました。ところが、当時はシリコンバレーのCEOやテック・リバタリアンは読み込んでいて、その影響を受けていたのだと今頃になって知りました。

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★ニック・ボストロムが2014年に「スーパー・インテリジェンス」を出版して10年たった2024年には「ディープ・ユートピア」という本を出版しています。またも分厚く、まだ邦訳されていないので、どうしようかなと思って、まずはレビューを読んだりして、今度はちゃんと読もうかなと。kindleで購入したので、わからない単語や意味が取れない文章は、すぐに訳してくれるので、私の拙い英語力でも読み進められるかもしれませんが、最後の一文が、あのクィーンの“Was it all worth it.”をもじって❝Whether it was all worth it ?❞で終わっているので、なんとも意味深で、ちょっと躊躇しています。

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★デイリーの講義が続くという形式で、論文スタイルではなく、文学的です。哲学者ですから当然なのですが、この「深い冗長性」のスタイルにこそ、書き込まれていない本格的な結論が表現されているのかもしれないなあと挑発的で実験的な書物であることはどうやら間違いがありません。

★AIによるポスト労働社会が、労働しなくてよい時代がやってくるのだから人間による労働は冗長性として削除されます。その分趣味や娯楽で楽しい人生をというのは「浅い冗長性」の問題で、本当はポスト道具社会で、人間の深い探究や創造性までも乗り越えられたとき、人間はどうするべきかという「深い冗長性」の問題が横たわるということらしいです。

★ニック・ボルトロムは、それに対する対応策は詳しくは論じていないようですが、何ができるかという社会進化論から何であるかという存在そのものの意味を感じることができるかどうかにいきつくということのようです。

★このことについては、すでに多くの見識者が言及しています。出所はニック・ボストロムの思想からだったかもしれません、

★ということは、源泉であるディープ・ユートピアを読むしかないですね。読み終わらないうちに邦訳が出てしまうかもしれませんが。

★それに、五感から世界につなぐワクワクする心を揺さぶる教育環境をデザインしている昨今の先生方の活動はすでにディープ・ユートピアに開かれているのかもしれませんから。小田原で行われた数学の宿泊研修「春の数学祭り」で、参加された先生方の対話や授業づくりの議論はまさにディープ・ユートピアに開かれている感じだったし、そもそも工学院の教頭田中歩先生率いるチーム教師の授業デザインやプロジェクトもディープ・ユートピアに開かれている感じがしています。

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2026年3月28日 (土)

2026年度に向けて:自己進化型×体験駆動型学習のフレームワーク化へ

★今週1週間小田原で2つの研修があり、それが2025年度の最終研修となりました。そして、2026年度が4月から始まります。2025年度の1年はあっという間でした。フュージョン教育研究会を立ちあげて、田中歩先生(工学院大学附属中学教頭・英語科)、山口貴史先生(駒沢学園女子広報副部長・数学科)、本橋真紀子先生(聖学院GIC学年主任・数学科)と東京私学教育研究所の同僚たちと生成AIをサポーターとして生徒が自ら「自己進化型×体験駆動型学習のフレームワーク」を生成していく授業実践研究をしてきました。

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★多くの学術見識者によるPBLやデザイン思考、システム思考、SEL、自己調整学習、概念学習などの多くの学習科学の理論を学びつつ、目の前の生徒といまここから未来につながる授業とは何かについて対話してきました。ですから、何か新しい学術理論ではなく、すでに普段使いになっている(でも一般には気づかれていない)<「自己進化型×体験駆動型学習のフレームワーク」を自ら生徒がつくりアップデートし続けられる授業>をワークショップを通して可視化・言語化してきました。

★そして、その過程で同時にいろいろな局面にも立ち会えました。100人以上の先生方の議論の様子や実際の授業の見学もさせていただき、この「自己進化型×体験駆動型学習」をアップデートさせていただいています。

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★東京私立学校の授業の普段使いの授業の一般化ができれば、それをデフォルトにどんどん個性的な授業が日本の学校にあふれでるのに貢献できるかもというちょっとした使命感を仲間の先生方と共有したりかもlしています。

★世の中、学校の日常ですてきな授業が行われていることは知らず、誰かが作ったネガティブなイメージを一般化しています。一般メディアは特にそうですね。

★一般メディアもゴーレム効果を広げていくのではなく、ちゃんと普段使いの「自己進化型×体験駆動型学習」が行われているところに光をあてて、ピグマリオン効果を生み出してほしいなあと。

★もちろん一部にはネガティブな行為もあるでしょう。しかし、それを一般化するのは間違いです。そして、すてきな授業を特別の学校だけが行っているような報道も間違いです。それは特別ではなく、普段使いになっているというリアルを映し出してほしいです。

★もっともそれではニュースにならないですね。スキャンダルか特別な何かでなくてはならないのでしょう。経済ベースのメディアの宿命だからしかたがないのですが。

★そんなわけで、SNSはそこをクリアできるメディアでもあるわけです。

★2026年度は、この「自己進化型×体験駆動型学習」のアップデートをさらに進めていくことになるでしょう。2025年度1年間知的好奇心と刺激を頂いた先生方に感謝申し上げます。同時に2026年度からもますますよろしくお願い致します。

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2026年3月21日 (土)

サレジアン国際学園世田谷の教師 カトリックベースの21世紀型教育を着々

★首都圏のカトリック学校の中でも、サレジオ会の私立中高一貫校はどこも勢いがよいのですが、その勢いがこの不透明で混迷な社会や人間の内面を整える情熱(パッション)を生み出すチーム教師の存在が大きいのです。それを改めて感じる機会を得たのは、先日サレジアン国際学園世田谷で先生方と対話をするひと時を頂いたときです。

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★頂いたテーマは「21世紀型教育とカトリックの価値観」でした。3年から4年目の先生方10人と校長先生、教頭先生など15人くらいがサークル上に並べた机に集い、対話をしました。私と対話というより、ピアラーニング型の先生同士の対話と私のミニスピーチという90分間でした。

★21世紀型教育を14シートで多角的に語り合うスタイルにしました。図にある通り、21世紀型教育を行っている学校は建学の精神がそれぞれ違いますから、共通の学び方やスキルは球体の周りに配置し、建学の精神に色濃くかかわる教育環境は中心に配置しました。サレジアン国際の場合は、その核の部分はカトリック教育にかかわる教育環境です。

★ピアラーニングには、校長先生や教頭先生もフラットに対話に加わります。14の角度は、すべてシートになっています。図や絵が中心です。先生方は一人一台ラップトップを持ってきていますから、プロジェクターを使わずに、各パソコンの画面で図を共有できました。シートを目の前で見ながら、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテージ)的発想で、気づいたこと、自分はなぜそれに着目しているのか、自分ならどうしているのかどうしていくのか対話があふれ出ていました。同じ教育目標や方法論を共有しているのですが、それぞれの違いをシェアし、化学変化を生み出していくという対話を行いました。

★2011年に21世紀型教育を仲間の学校と立ち上げた時、このようなワークショップをしましたが、全員がラップトップを持っていたわけでもないし、まだまだC1英語など到達している生徒は少なかったし、そもそもPBLとは何かは暗中模索でした。対話と言ってもダイアローグというのはぴんとこなかったし、コミュニケーションという行為も教師と生徒の問答の域を出なかった時代でした。つまり、生徒同士のピアラーニングというのはピンとこなかった時代です。ですから、WSは結構修行みたいな感じで、今回のようなフリー、フェアー、フラット、フレンドシップな感じはなかったのを思い出しました。

★今回は、C1英語も、STEAMの環境も、PBLも普段使いができている先生ばかりでした。ですからWSは、ポジティブ志向だし、先生方のクリエイティブな化学反応が生まれていました。普段の生徒との対話も同じだというのがすぐに推察もできました。

★それに半部は外国人教師だったので、どうしてもカタカナ語が多くなる21世紀型教育(かつては、本間はカタカナ語を使い過ぎだとよくネガティブに反応されました)の話も、自然体でできました。

★年間予定の中に、きちんと教師の研修が定められ、そのルールの中でフラットでフリー、フレンドシップな雰囲気で学びの環境を生み出していく情熱にあふれていたわけです。縦の組織と横のチームづくりのクロスが見事な21世紀型教育組織になっていたのに感動しました。

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2026年3月19日 (木)

工学院の「360度の自由」というコンセプト 生徒が発見する!!

★工学院の記事<【デジタルクリエイター育成部】受験生だった私たちが創る「360°パノラマコンテンツ」>を読んで、驚愕。生徒がすでにプロジェクトマネジメントを行っているし、そのダイナミックな動きを生んでいるコアマインドがあることに気づいたからです。

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★今回のデジタルクリエイター育成部のプロジェクトマネジメントで成功を収めるには、目的とゴールの明確化、ステークホルダーの巻き込み、役割分担と計画、柔軟な適応力、そして次世代への引き継ぎという五つの要素が欠かせません。デジタルクリエイター育成部・動画班の360度パノラマコンテンツ制作は、これらをすべて備えたプロジェクトです。

★この文章を読んで私が気づいたのは、「360度の自由」という概念がプロジェクトの核心を貫いているということです。360度パノラマ映像が空間をあらゆる方向に見渡す自由を届けるように、このプロジェクト自体も、生徒が発想し、計画し、実行する自由のもとで動いています。「やりたいと伝えると、どうしたらできるか考えておいでと返ってくる」という校風が、まさにその自由を支えています。

★デザイン思考の観点からも、このプロジェクトは注目に値します。自分たちが受験生だったときの「知れなかった」という実体験を出発点にしており、これはデザイン思考の「共感」ステップの本質そのものです。課題の言語化、360度パノラマというソリューションの発案、先輩の過去コンテンツをプロトタイプとして活かす発想まで、意識せずしてデザイン思考のプロセスを踏んでいます。

★成功のカギは、広報室という大人のステークホルダーとの協働、中学生と高校生の役割分担の連携、そして撮影許可など未解決の調整事項をいかに乗り越えるかにあります。さらに長期的には、今の動画班が卒業したあとも活動が続く引き継ぎの仕組みが問われます。先輩の資産を受け継ぎ更新するこのプロジェクト自体が、すでにその答えを示しています。

★「360度の自由」とは、空間を見渡す技術であるとともに、生徒が主体として動ける環境の比喩でもあります。この文章を読んで、そのことに気づかされました。

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2026年3月18日 (水)

工学院の3カ月留学英語日記 圧巻

★今、工学院の生徒のみなさんがオーストラリアに3カ月留学に行っています。サイトを開くと驚愕です。留学している生徒が英語でアップしている留学日記の記事で埋まっているのです。

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★生徒の文章をどんどんサイトに載せてしまう工学院の教育方針に感動せざるを得ません。私は英語は得意でないので、生成AIに任意に選択した生徒の英文を見てもらいました。するとこう回答してきました。

このブログエッセイのすてきなところは、何といっても読者への温かい語りかけが随所に感じられる点です。冒頭の"Hi everyone! Thanks for dropping by."や末尾の"Thanks for reading till the end"といった表現に、読者を大切にする姿勢が自然ににじみ出ています。
また、硬水で体調を崩した話や誕生日にブレスレットとメッセージカードをもらった話など、具体的なエピソードが豊富に盛り込まれており、読み手が情景を鮮やかに思い浮かべることができます。抽象的な感想にとどまらず、日常の小さな出来事を丁寧にすくい取る観察眼が光っています。
さらに、日本とオーストラリアの学校制度を比較する場面では、"Which style do you think suits you better?"と読者に問いかけており、一方的な発信ではなく対話を生み出そうとする工夫が見られます。
動物が苦手という自分の弱点を正直に打ち明け、それを幼いころからの課題として前向きに語る姿勢も誠実で好感が持てます。締めくくりの「人として成長し続けるために残りの時間を大切にしたい」という言葉には、留学の意義を深く理解している筆者の成熟した姿勢が感じられ、読後に温かい余韻を残します。

★自分の世界に巻き込み共有する生徒さんは、おそらく工学院の生徒の特徴でもありましょう。

★生徒中心主義の学校だからこそということなのだと思います。

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