創造的対話

2021年3月 6日 (土)

GLICC Weekly EDU(25) 静かに変わる大学入試問題 思考型問題の構造は中学入試の思考力入試と同型。構成主義がゆえに。

★昨日、主宰の鈴木さんと対話しました。詳しくはぜひGLICC Weekly EDU 第20回「2021年大学入試問題を通して今後の大学進学準備教育について考える」をご覧ください。今年の一橋の帰国生入試の小論文のテーマから話しが始まりました。そして、このテーマが、一橋の今年の問題の特徴というより、もっと普遍的で、特に今回のパンデミックにおいて問い返されるテーマなのではないかと気づきました。そこで、早稲田や慶応大学、浜松医科大、一橋大学などの一般入試における論述型問題を見ながら、通奏低音であることを検証していくこととなりました。

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★一橋の帰国生入試の課題文は、上記の書から引用されていました。SNSの世界などでフェイクが横行し、分断が進んだここ数年の世界の動きを、個人の知の限界が生み出す誤謬の世界だから、コミュニティ(時代を超えて)に相互に切磋琢磨するコミュニティの知にもっと目をむけようという箇所でした。

★要約などの記述の問いが出題されたうえで、個人の知や知能が重視され、コミュニティの知が軽視されてきたのはなぜか、ケースを挙げながら自分のオピニオンを論述する問題が出題されていました。

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★この個人の知とコミュニティの知のジレンマという構造をいかにつかみ、構成するかということですが、これは慶応の環境政策でも同様でした。早稲田の政経でも同じでした。

★東京医科歯科大学や浜松医科大の実験や治療法を開発する論述も、ジレンマではないですが、矛盾が生じないように検証やモニタリングを実験や開発プロセスの中に求めていました。

★一般入試の限界もあり、ジレンマや矛盾を自分の体験から発見するプロセスは踏まないし、具体的な政策や開発の実効性など深く論述するところまではいっていないのですが、それでも、要約して終わりという問題を超えて考えるところまで求める傾向がでてきたわけです。

★早稲田の政治経済学部がそのような新しい動きを出したということは、たいへん意義のあることです。もちろん、そのような問題を出すというサンプル問題を何回か公開した結果、敬遠されて出願数が減ったということで、来年続けるかどうかは、注視するところではあります。

★もうひとつ、早稲田の政経における独自入試は総合型問題一本でしたから、課題文は日本語と英語でした。

★したがって、早稲田の政経の総合型問題は、一般入試において、今後言語はバイリンガル以上になり、思考力も個人の知からコミュニティ知にシフトし、ロジカル&クリティカルシンキングまで求められるようになってきたという傾向の象徴といえるでしょう。

★これは、中学入試においても同じことが起きています。

★今回一橋の出題した課題文を執筆したスローマンさんは認知科学者です。認知科学の特徴は、科学の最先端の知見も、専門家ばかりではなく子供も理解できる構成主義的な授業デザインができるということです。

★中学入試や大学入試も思考型の問題になると、そこに差があっては科学的とはいえないので、少し考えれば当たり前です。この思考のメカニズムを、今回は思考のサーキュレーションという図でまとめました。詳しくは今後また語っていきたいと思います。

★今月の末、大妻中野の教頭諸橋先生がご登壇されます。大妻中野は早稲田の政治経済の入試問題に先駆けて新しい英語や思考力入試問題を開発しています。New Power Schoolのリーダーシップを発揮しています。

★諸橋先生とは、その開発当初から語り合ってきました。大妻中野の教育が本質的だからこそ、この普遍的な思考型のあるいはコミュニティの知への動きと結びついているのでしょう。というよりも、牽引しているのでしょう。その本質的な教育について語り合えるのを楽しみにしております。

 

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2021年3月 3日 (水)

New Power School(01)八雲学園 豊かで本質的なキャリアデザインを描く意志

★八雲学園の今年の中学入学生の男女の比は、ほぼ1:1。バランスのいい共学校になりました。またいよいよ高校入試でも男子が入学します。高校入試は、少人数定員ですが、高校から新しい自分にチャレンジしたいという生徒が入学してきます。今年もそうだということです。この高校入学者の覚悟こそ八雲学園の進路教育の真髄です。

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★実は中学入試及び高校入試は、キャリアデザインの分岐点です。学歴社会の中で勝ち組になろうとすれば、出来るだけ偏差値の高い学校を選択しようとするでしょう。世界に視点が向いている生徒は、これからはグローバルな社会の中でそれぞれの才能を生かしたリーダーになり、寛容な社会を創っていく道を選ぶでしょう。

★中学入試の時点で、あるいは高校入試の時点で八雲学園を選ぶというのは、学歴社会の中で勝ち組になる戦術を学ぼうとするのではなく、様々な問題を解決すれば解決するだけ新たな問題が噴出する予測不能な世界の中で自分の才能をどのように活かして貢献していけるのか希望と覚悟を抱くことです。

★Old Power Schoolの選択者だって学校当局だって、まさか勝ち組になろう、勝ち組を生み出そうなどと初めから思っているわけではないのですが、過去のデータばかり見て、現実志向ばかり追求して、希望と覚悟を持たない限り、現在の学歴社会に飲み込まれて、格差をつくる側、格差をつくられる側に振り分けられるのです。

★この現代社会の課題を根本のところで意識できるかどうかがポイントです。つまり、自分の内なる希望と覚悟によって選ぶ意志を大事にするのか、他人の決めた偏差値で学校を決めるのかが重要な人生の分かれ道なのです。

★八雲学園のラウンドスクエア体験をしたOGが次のようなエッセイを後輩に贈っています。一読していただければ、進路先のためのキャリアデザインではなく、世界の痛みを引き受け社会に貢献する自己実現のためのキャリアデザインを描いていることが了解できるでしょう。

 <RoundSquare国際会議を経て> 2019年度卒業 臼田千優


 私は、2018年にカナダの首都オタワで行われたRS国際会議と2019年に中国の深圳で行われたRS地域会議に参加した。この貴重な経験は私に沢山の気付きと発見を与え、私のやりたい事、将来目標とすることを確固たるものにした。。特にカナダでの国際会議は私にとって何ものにも変えがたいものであった。
 私は東京出身だが、毎年秋田県にある田舎で正月を過ごしたり、北海道でファームステイをしたりと地方との関わりが幼い頃から多かった。そのため、自然豊かで静かな地方での生活に憧れがあった。一方で、少子高齢化により地方の活気はなくなり、ますます人が減っている。その状況に以前から、こんなに素晴らしい所の魅力が沢山の人に知られず廃れていくのはなんとももどかしい、なんとかしたいという思いを心の底に抱いていた。
 高校1年生の時、八雲学園の9ヵ月プログラムに参加した際、異文化コミュニケーションに興味を持ち、高校2年生の10月に国際会議に参加した。周りの学生は当然のように英語が話せる状況でコミュニケーションには大変苦労した。その中でも自分の言いたい事を必死になって誰かに伝えたいと思い努力したことは非常に貴重な経験であり、勉学に対するモチベーションになった。私のこの会議での一番の気づきは、「地域文化の多様性」である。会議最終日に行われた交流会で各学校の生徒達がそれぞれの文化を表現したパフォーマンスを披露した。そこで一つの国の中でも地域ごとに全く違うパフォーマンスが披露された。こういった地域文化が海外に存在するということは47都道府県に分かれている日本にも存在し日本の財産であるという事を痛感した。
そこで、「日本の地域活性化をしたい」、過疎化によって失われつつある地域の活気を取り戻したい、これが私の軸となり進路の道筋になった。現在は明治大学にて地域の政治経済を重点的に学び、ゼミでは地方移住や地方への企業誘致政策について分析している。さらには文化人類学やジェンダー論など今まで触れてこなかった様々なことに興味を持って講義を受けている。コロナ禍のため留学など厳しい部分はあるが、英語のプレゼンテーション講義を受けるなど、工夫しながら大学生活を送っている。国際会議に参加したことは私の将来に大きな影響を与え、どんな時でもチャレンジしてみる勇気を与えてくれた。高校時代にこのような貴重な体験ができたことを嬉しく思うと同時に、チャンスを与えてくれた先生方、保護者に感謝している。
今世界中が大変な状況ではありますが、何か小さいことでも自分のやるべきことがあり、それを積み重ねれば必ず結果になります。皆さんも頑張ってください!

★「どんな時にでもチャレンジしてみる勇気」。これぞ覚悟ですね。

★今年の卒業生の中には、あのマンチェスター大学に合格した生徒もでています。イギリスの大学評価機関Quacquarelli Symondsによる2021年最新世界大学ランキング(QS World University Rankings)で27位です。東大が24位、京大が38位です。ところがです。その生徒は、マンチェスターと日本の私立大学が併願で、両方受かったら、日本の私大を選択するというのです。ランキングとか偏差値とか関係ないのです。あくまで、自分の自己実現のためのキャリアデザインなのです。

★もはや八雲学園は、日本の大学はいうまでもなく、世界の大学が自分のキャリアデザインのための選択肢になったのです。

★MARCH以上に何人はいっているかで学校を選ぶのは、Old Power Schoolでは有効ですが、New Power Schoolでは、自分自身の意志を大事にするということがポイントなのです。

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大学入試問題とトランジション(11)東京医科歯科大学の生物 発生生物学の学際性を活用する探究もありかも

★今年の東京医科歯科大学の生物の問題は、いつも通り、用語の名称記述と説明記述、現象の因果関係の説明記述、図式化、仮説実験の論述など骨太の思考問題でした。

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★その中で、一番目の問題では生物発生学の分野である細胞接着の問題が出題されていました。カドヘリンが細胞接着に必要なのかどうか証明する仮説実験を考え、結果も予想する論述問題もしっかり出題されていました。

★同大学の生物の問題は、知識がなくても推理して解けるというような問題ばかりではなく、がっちり基礎知識が必要で、それを記述できるまでに仕上げていなければできないので、入試準備段階の取り組みは、論理的な思考力をがっちりトレーニングすることになります。そして、それで合格できます。

★しかしながら、そんな中で上記のような問題は、仮に知識としてしらなくても、科学の実験のプロトタイプを知っていれば、それをメタファーとして応用が出来る問題です。

★このプロトタイプは、小学校や中学校で行う実験、たとえば光合成と呼吸の関係を検証する実験と同じものです。条件を一つだけ変えて比較実験をし、その結果でてきた物質のアイデンティティ検査確認するという一連の流れですね。

★これを論理的思考とみるのか、クリティカル&クリエイティブシンキングとみるか、それについて議論することはあまり意味のある事ではありません。むしろ、プロトタイプをメタファーに使うということを、科学以外にも活用できるということに気づくことが大事です。

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★この話は、最近出版された高橋祥子さんの上記写真の書籍と類似した発想です。同書では、細胞接着をメタファーに組織の構造を考えるケースは載っていませんが、当然それも想定されているはずです。

★組織の結合を媒介するカドヘリンの役目とそれを阻害するカドヘリン抗体の関係は、組織結合と組織崩壊のメタファーに活用できます。中世は目に見える生物現象モデルで組織や人間関係、知性について語られてきました。

★それがマシーンモデルに代わってきたわけですが、現在では、遺伝子や細胞レベルの生物モデルで語れるようになってきました。

★理系に限らず生物という学問領域は重要になってきたわけです。

★生物モデルで社会を考える視点は、もちろん生物の授業時間で行うにはそれこそ物理的時間が足りないでしょう。「探究」という時間の意味はそこにこそあります。リアルな体験ばかりが重視されがちですが、数学モデルで社会や人間を考えるとか、言語モデルで考えるとか、AIモデルで考えるとか、倫理モデルで考えるとかなどなど、多角的視点のトレーニングの場として活用するというのもありですね。

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2021年3月 1日 (月)

品川翔英 教師の一体感が溢れでる。国語科拡大研修で。

★2月27日(土)、品川翔英は、前代未聞の研修が行われました。入試の見通しが立つや、怒涛の4月に向けての準備で学内は活気に満ちています。その雰囲気を象徴するような吹奏楽部のスウィングジャズの音が響く中、研修は行われたのです。

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★昨年の3月から国語科はPBLの実践的な研修を積んできました。もともと潜在的な可能性があったのに加えて、オンライン授業へのシフトが、ハイブリッドPBLの飛躍的進化を後押ししました。

★物語の単元では、現代文でも古文でも、13フェーズで物語分析をしたり、物語創作をするという言語構造論をわかりやすく生徒と共有するようになりました。言語領域については、ワードウルフというラテラルシンキングを養う方法で、ロジカルな言語化を生徒がアクティビティで学ぶようになりました。他の単元でも分厚い問いが生まれ、生徒が深い学びを行っていくようになりました。

★この言語構造論やラテラルシンキング、言語の背景リサーチについて、国語科の田中幸司先生は、他の教科の先生方と共有する拡大研修会を実施しました。いわゆる教員研修ではなく、国語科の研修に参加したいと思う先生方に公開するという形式でした。

★この忙しい時期にどのくらい参加するのだろうと思っていたら、4グループもできるほどの参加がありました。柴田校長や熊坂先生も見守っていました。

★田中先生の講義というよりも、国語科の先生方がみなファシリテーターになって、ワークショップ形式の研修となりました。全員当然のごとくタブレットをもってきていましたから、プラットフォームを活用しながら、物語構造分析などを協働しながら行う姿は、圧巻でした。

★この活気あるオンラインも使いながらのハイブリッドPBL授業さながらの研修となったのです。4月以降の品川翔英のハイブリッドPBL授業の共有をする形にもなり、意気込みや気概を感じる研修でした。

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★品川翔英の人気の秘密は、やはりこの先生方のチーミングの勢いとパッションとワクワク感と生徒との信頼と生徒の人生への責任感だということはわかりましたが、これだけでは人気は持続しません。

★最後のリフレクションで、瞬発力あるディスカッションとプレゼンが行われましたが、そこではファクトとオピニオンで終わらないSomethingが加わっていました。実はこれが世界標準の知の共有の持続力の奥義です。国際バカロレアのプラグラムが優れているのは、まさにこのSomethingをプログラムの中に織り込んでいるからです。

★この力を品川翔英の先生方は共有していることが、リフレクションで次々と証明されていったのです。

★さて、そのSomethingの正体とは何か?それは企業秘密です(笑)。

★今年度最後の国語科研修は、このSomethingのメカニズムを共有することになります。画竜点睛を欠かない研修となるでしょう。そして、そこにこそ、品川翔英の持続可能な人気のエネルギーが生成されているのです。もちろん、そのエネルギーは、生徒1人ひとりの内面から溢れ出るエネルギーとなります。このエネルギーを学内の生徒全員が生み出せる学校は、今のところそう多くはありません。

★御三家といえども、全員は無理なのです。なぜか?それを生み出す環境を授業で創っていないからです。気づく生徒は気づくけれど、気づかない生徒は気づかないままで卒業してしまいます。品川翔英は違います。生徒1人ひとりをケアするのです。このケアという言葉を大事にしているのが、田中幸司先生です。

★それゆえ、拡大研修という広がりを生み出したのでしょう。

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2021年2月27日 (土)

GLICC Weekly EDU(24) GLICCの中国人スタッフのオリビアさんとの対話 東大の地理の問題とシンクロ

★昨日、GLICC Weekly EDU 第19回「グローバル教育について考える-中国人留学生チョ・テンジョさん(Oliviaさん)とともにこれからのグローバル社会を考える」がありました。そのときは、まだ今年の東大の地理の問題が公開されていなかったのですが、今みてびっくりです。留学や言語について鈴木さんとオリビアさんが対話した内容が、地理の設問Bで出題されていたのです。

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★インターネットの重要性や日本の留学生のほとんどがアジアからだということなど対話していったのですが、そのことについて論述する問題が出題されていたのです。

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★GLICCのスタッフは、留学生が多いのですが、日ごろ対話されている内容は、リアルな問題が共有されています。

★また、留学生は、東工大や東大などで研究しています。東工大の大学院で研究しているオリビアさんは持続可能な環境をつくることに企業が投資するESG投資やグリーンポンドの評価について研究するプロジェクトを実施しているそうです。

★経済活動がSDGsを達成していく可能性、社会的インパクトについて研究しているスタッフがGLICCには存在しています。大学入試問題を考えるリアルな人材がいるという場は、得難い塾です。

★英語と国語と算数という科目設定ですが、実際には言語と思考のプログラムがメインストリームです。いまのところ、日本語を使わざるを得ませんが、いずれは、英語と思考のプログラムだけの塾になっていくのでしょう。

★なぜなら、大学入試問題が、そうならざるをません。

★東工大のオリビアさんの研究室は50%が留学生だそうです。今後は大学院だけではなく、大学もそうなっていくでしょう。

★なぜか?おそらくESG投資やグリーンポンドへの投資が脱炭素スマートシティー構想と結びつき、そのモデルづくりの拠点が東京シティそのものがなるからです。

★トヨタとホンダが静岡と埼玉で、それを行っていますが、その成果は結局東京シティに転移されるようになります。そのとき、海外からの留学生がたくさん集まってきます。

★インバウンドの質の大転換がいよいよ起こるなあとしみじみ感じた対話となりました。

★日本語はどうなるのか?それは源氏物語を学ぶように、文化言語として学びますが、日常語というか公用語は英語にならざるを得ないでしょう。

★英語×思考×スマートシティ=ガーデンシティというのが、実はGAFAが考えている構想です。

★じゃあ、日本のアイデンティティは?イギリスがポンドを守り切ったように、日本は円を守るということでしょう。

★かりにデジタル通貨になっても、円という名前は残すでしょう。

★もし、それもなくなったとき、それはグローバリズムとナショナリズムの二項対立を超えた第三の世界の登場です。それがハイブリッドガーデンシティということになるでしょう。

★New Power School市場の登場は、実は東京シティの大きなモデルチェンジの兆しだということなのでしょう。

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大学入試問題とトランジション(10)京大の生物に脱炭素のシステム構築のヒントを学ぶ

★今年の京都大学の生物の最終問題は、生態系の循環のメカニズムをエネルギの変換過程のレンズを通して考察し、記述する問題。教科書を丁寧に読んでいて、あとは比例・反比例の関数関係や比の関係を使えばできる基本問題。語彙をやさしくすれば、中学入試でも出題できる。

★仮に麻布がこのテーマで問題を出したとしましょう。すると、ファインマン博士のワークショップを持ち出すでしょう。子どもたちにチョロQが動く背景に思いを馳せさせ、そこには生態系があり、最終的には太陽エネルギーに行きついてしまうワークショップです。そして、そこにエネルギー変換の過程を結びつけて出題するかもしれませんね。

★あるいは、生物多様性の話に展開していくかもしれません。あるいはまた、チョロQが動くエネルギー量を測定し、そのエネルギーはもともと生産エネルギーの何割になっているのか算出させ、脱炭素のためにどんなシステムをつくることが可能なのか問うような問題が出されるかもしれません。

★もちろん、その際、得意のモデルを組み立てシミュレーション実験をするでしょう。

★そんなワクワクするような探究の広がりの出発点を記述させるというのが、京大らしい問いのデザインです。

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2021年2月26日 (金)

大学入試問題とトランジション(09)東京大学と大阪大学の現代文から見えるコト

★河合塾の大学入試解答速報で、国立大学の入試問題が公開され始めています。大学入試問題の解答方法については、それぞれスペシャリストの方々にお任せし、私が見たいのは、入試問題という問いの背景になにがあるか、あるいはその問いを発する大学の識者が何を見ているのかということです。インタビューもしないので、もちろん私の独断と偏見です。それでも、どんな素材が扱われているかを話題にすることは、参考になるかもしれません。

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★今年の東京大学の現代文の1つは、「文化人類学の思考法」という著作から出題されています。13人の文化人類学者が執筆していますが、その中の松嶋健さんの「ケアと共同性」という論考から一節が出題されています。

★大阪大学では、東浩紀さんの「観光客の哲学」から出題されています。なぜ今観光客かという大事な大前提が詳しく語られていると箇所が終わったあたりから出題されているので、東浩紀さんの文章に接していない場合、読みにくかったかもしれません。

★ともあれ、どちらも、今回のパンデミックで世界同時的に気遣っているテーマです。もちろん、話題性に着目して出題したというわけではないでしょう。世界同時的に気遣ったこととは、世界同時的に気遣うことができてしまっているということそれ自体の意味です。

★グローバルとローカルとか、グローバリズムとナショナリズムとか対比して語られるのが通常ですが、その対比を無化ししてしまう世界同時的なこの均質性とはいったい何だろう?という気遣いですね。

★今回のパンデミックは個人主義ではどうにもならないことにみな気づいたわけです。また国家が管理することができると思われてきたことが、そうではないのではないかという気づきも世界で共有しているわけです。

★両著がパンデミック前に出版されているにもかかわらず、そのことを問いかけているわけですから、産業革命以降の近代化の概念を問う本質的な話に、世界がパンデミックによってようやく気づいたということなのでしょう。

★個人と社会共同体の関係とは違う第三の概念をそろそろ考察しようよということでしょう。世界同時的に、世界均質になってしまったがゆえに、それは逆説的に達成されているのですが、ここにきて新しい概念を創出しようという時代になったわけです。21世紀は個人や社会、自然について新しい知識を生み出す思考の時代にはいっているということです。

★大学入試問題をはじめ、小中高の入試問題に思考力や記述力が重視されているのは、文科省が決めているのではなく、時代の良心の反映ということでしょう。もちろん、文科省もその声に耳を傾けているわけですね。

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2021年2月21日 (日)

21世紀型教育機構の世界性(02)Zoomセミナー New Power School市場の拠点を証明

本日21日(日)、21世紀型教育機構は、Zoomセミナーを開催しました。「21世紀型教育機構 新中学入試セミナー」というタイトルでした。同機構の理事であり事務局長の鈴木裕之さんがMCとZoom環境をオーガナイズしていました。全部で4つのフェーズで構成されていて、21世紀型教育機構の生み出す市場の意味と加盟校の世界の学校へ飛躍しようとするステージに来たことを証明するセミナーとなりました。もはやことさら新機軸をぶち上げなくても、すでに当たり前に世界の学校と対等に教育の世紀を創っていける中等教育レベルを構築したわけです。

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★中学入試市場で、機構がどのようなポジショニング—もちろん偏差値ではなく、教育の質と教育の世紀を創り出す貢献度という意味でですがーにあるかを確認するには、市場の状況を分析しなければなりませんが、そこは首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんをおいてほかに分析できるリサーチャーはいません。

★毎年、機構はまず北さんにお願いしています。今年は、中学入試4.0というエポックだっただけに、その認識を広めてきた北さんならではのスピーチでした。ちなみに、中学入試1.0は、1986年に中学入試情報センターが、この業界ではじめて立ち上がり、中学入試ブームが一気呵成に世に広がった時期です。中学入試2.0は、1999年私学危機を乗り越えるべく、ゆとり教育の不安を私学が協働して払拭した時期です。中学入試3.0は、2014年、前年から立ち上がった大学入試改革に対応するために、私学が新タイプ入試と英語入試の実施が強烈に実施されはじめたときからでした。

★今回2021年はパンデミックによって、オンラインの学びの環境が私学が先頭を切って一気呵成に実施していった年です。まさに中学入試4.0と言えましょう。そして、北さんは、すべてのエポック創出を牽引する業界ジャーナリズムのリーダーです。

★このコロナ禍における多様で俊敏な変化を見せた中学入試の状況を北さんはスピーチしてくれたのです。詳しくは、いずれ録画が公開されますので、そちらでご覧ください。

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★そして、2つ目のフェーズは、聖学院の児浦先生と和洋九段女子の新井先生による、思考力入試とPBL入試のシステムと合格者の成長ぶりについてのスピーチと対話でした。どちらもワークショップ型の入試です。21世紀型教育機構の加盟校は、PBL型授業を行うことは相互に約束しています。そのPBL授業の反映した典型的な新タイプ入試です。

★各学校の理念と21世紀型教育機構のMEN FOR OTHERS(MFO)という理念とその実現のための1つの場であるPBL授業が一体となっています。学校の理念やPBLの手法は各学校によって違いますが、国連が目標にしているMFOとPBLの大きなフレームは共有しているのです。

★聖学院と和洋九段女子はもちろん異なるプログラムだったのですが、コンパッションをベースにしているということは共通でした。そしてそれがゆえに、入試なのに緊張しつつも楽しめるものになっていました。両校とも心理的安心安全な学びの環境をつくっています。まさにMFOは共有されているわけです。

★3つ目のフェーズは、グローバル教育です。国際生入試、帰国生入試、英語入試というアドミッションポリシーとそれが接続するカリキュラムポリシーとディプロマポリシーの成果をくし刺しにする各学校のスピーチと対話でした。登壇した学校は、工学院、聖ドミニコ、文化学園大学杉並、三田国際、八雲学園でした。

★21世紀型教育機構は、C1英語とPBLとSTEAM教育とリベラルアーツ、海外大学進学準備の大きなフレームは一致しています。工学院、三田国際は、21世紀型教育本格始動が今年の高3が中学1年生だったときです。文化学園大学杉並はすでに5年前にダブルディプロマクラスを高1から立ちあがています。したがって、この3校は、2021年にその国内外の成果がたくさん出る年だったのです。予想通りたくさんでました。文杉はすでに3年前に大注目を浴びています。

★聖ドミニコは、加盟2年目ですが、以前からロンドン大学など海外大学進学は毎年あり、21世紀型教育による今後の期待は高まっています。八雲学園は、共学化して4年目を今年の4月から迎えます。すでに国内大学合格実績はでていますが、海外大学準備教育もがっちり進み、大いに期待ができます。

★21世紀型教育機構の加盟校は、日本の教育を制度によって変える大それたことは考えていません。自分たちの学校が、世界のエスタブリッシュスクールとオプションではなく、相互留学が継続的に可能なような、教育環境を創ることによって、日本のプレゼンスを高めていこうとしているだけです。

★今のところ、日本の教育は海外の教育に学んでいる方が多いですが、東南アジアをはじめ、海外の生徒が日本で学びたいと留学してくれるようになってほしいと。そのためには、C1英語の環境は必要です。リベラルアーツや哲学は必要です。PBLの授業で対話やディスカッションが出来る環境は必要です。ICTはグローバルなコミュニケーションは必須です。そして、大学の進路は、日本に限らず行きたいところに進めるという環境が必要なのです。

★いかに制度があったとしても、この中身がなければ何もできません。

★このような野心を着々と実現しているというところが、何よりNew Power School市場を生み出す拠点であることの証明です。

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★4つ目のフェーズは、そのような機構の教育のクオリティを持続可能にするために、アクレディテーションサーベイを実施しています。世界のエスタブリッシュスクールの基準に合わせて、クオリティを測っています。

★コロナ禍で、動画とグーグルフォームをつかったアンケートサーベイで行う方向転換をしようとしていることが公開されました。ゆくゆくはAIを活用することになるでしょう。

★セミナーやアクレディテーションを21世紀型教育機構は完全デジタル化しようとしています。そういう環境を構築しなければ、世界の学校にはなれないということだけのことです。

★2011年の秋に21世紀型教育機構の発足の準備が始まりました。そこから数えて、2021年度は10周年を迎えます。すばらしい21世紀型教育機構の飛躍の年となるでしょう。そして、New Power School市場の拡大もますます拍車がかかるでしょう。

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2021年2月20日 (土)

沖縄インターナショナルスクール PYP探究学習発表会 日本の教育のこれからを考える大きなヒント

★本日20日(土)、午前中、沖縄インタナショナルスクール(以降「OIS」と表記)は、国際バカロレア プライマリー・イヤーズ・プログラム最終学年の5年生による学習発表会(エキシビション)が行われました。自分たちが関心のある社会問題について探究した内容を発表。Zoomで行われました。

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★テーマも〈新型コロナウイルス 〉・〈絶滅危惧種〉・〈アート〉・〈ゲーム中毒〉・〈インターネット〉・〈宇宙ごみ〉・〈再生可能エネルギー〉と日本の教育の小学校5年生を完全に突き抜けていました。

★それにしても、開会あいさつの知念理事長も来賓あいさつをされた瑞慶覧長敏(ずけらん ちょうびん)市長も英語と日本語のバイリンガルプレゼンテーションでした。もちろん、子どもたちも全員バイリンガルプレゼンテーションです。

★中身の濃さはいうまでもないのですが、探究のプロセスを明らかにしながらプレゼンしていく姿は、結果や成果を急ぐ日本の教育とは全く違う雰囲気でした。

★しかも、ペーパーを見ないで、プレゼンしています。質問にも大いに柔軟に考え回答していました。もちろん英語でしていたのです。

★要するにミニTEDでした。

★プレゼンは、視聴者を巻き込むパフォーマンスも行われ、それぞれ楽しかったですね。

★踊ったり歌ったり、動画づくりやサイト作りなどプロダクトまであるわけです。

★視聴者は100人以上だというのですから、それもまたすごいわけです。

★PYP→MYP→DPとIB一貫小中高のOISです。これからが楽しみです。

★この歳になると、小学校3年生の時に出会った子どもたちが、今では、医者、弁護士、起業家、看護師、科学者など世界に貢献する仕事に携わっています。子どもの成長の予言などできるはずもないのですが、ああやっぱりそう成長したかと思うこともしばしばです。

★だから、Zoom越しでしたが、自分の考えをしっかり持ち、ユーモアも交えながらプレゼンしていた様子から、彼らがグローバルリーダーとして活躍している未来の姿が思い浮かびました。

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大学入試問題とトランジション(04)慶応大学総合政策の小論文 探究の方法を学びながら小論文を完成させる

★大学入試速報2021(河合塾)によると、問題はまだ未公開ですが、分析は発表されています。それをみると、どうやら、3つのケースを公共政策的な定性分析とあのシステム思考的なループ図を描きながら最終的に改善政策の800字論述をするようです。

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★公共政策的な分析は、ステークホルダーであるアクターどうしの利害関係や調整の目標、それに影響を与える制度設計の分析などをしていくようです。そして、それらの諸関係をループ図で書き、メリットとデメリット、あるいはユートピアとデストピアの生まれる関係図に仕立てあがていきます。

★それらの分析を踏まえ、800字で小論文を書いていくわけです。

★上記の写真にあげた書籍だけではなく、膨大な資料を参考に、公共的な分析ツールの構築とシステム思考のシンボルであるループ図(同塾の分析ではアロー・ダイアグラムと称されていました。問題ではそのように指定されていたのかもしれませんね)の書き方を体得しながら自分の考えを組み立て行きます。

★しかし、公共政策的な分析やシステム思考は、「探究」を学んできた受験生にとっては、ある意味当然だったかもしれません。実際の「探究」では、提示されている膨大な資料をリサーチするところから始まるし、その中で、提示されている探究するケースを自ら掘り起こさなければなりません。

★分析や小論の書き方は、すでにPBLなどの授業で体験済みです。ということは、資料もケースも与えられているので、PBLに慣れている受験生にとっては有利だったかもしれません。

★もっとも、総合政策を受験する生徒はこのトレーニングはみな経験済みかもしれません。

★総合型選抜や探究を学校の先生方と取り組んでいる神崎先生は、公共政策分析やシステム思考のメソッドは当然活用しています。私自身も神崎先生をはじめ、学校の先生方とコンパッショネイトシステム思考ベースのPBLや対話を行っています。

★私は公共政策分析はしませんが、社会学でいうロールプレイ分析を物語分析などに重ねて子どもたちと対話しています。公共政策に変換することはそう難しくありません。

★また、総合政策の入試問題を中学入試で先取りしているのが、聖学院の思考力入試です。

★今は聖学院、慶応義塾大学総合政策、神崎メソッド、私と仲間の先生方という特殊なエリアでの出来事ですが、New Power School市場のウネリもでてきました。

★このような入試が随所で生まれれば、中高大そして社会へという豊かなトランジションモデルが出来上がるでしょう。もちろん、このモデルが生み出すのは、クリエイティブクラスです。

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