大学入試

2022年9月30日 (金)

教育の質の高い中身を選択する時代(03)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味②

★高校入試の複合的な壁。この壁は実に不思議なパラドクスの産物です。明治維新以降、一高→東大という学歴社会の原型ができ、やがて、府立一中→一高→東大というエリートコースができます。明治維新以降の優勝劣敗主義、権威主義ができあがっています。戦後、現在の教育制度に移りますが、府立一中は日比谷高校となります。しかし、東大を頂点とする学歴社会の強化の役割を日比谷高校は担ってしまいます。これもまた実はパラドキシカルです。戦後民主主義は、平等、自由、博愛をコンセプトにするわけですから、権威や世襲や門地、門閥に関係なく、学力実力主義で、成功を獲得できるので、大学入試によって未来が拓けるのは当時は善だったわけですね。

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★ところが、特定の小・中学校→日比谷高校→東大というエリートコースと呼ばれた固定化されたラインができてしまうと、そこは新たな権威主義を生み出します。おそらく、そういう偏狭主義的な事態をなんとかしようと、1967年に学校群制度が実施されることになります。

★そして、1971年以降実施された現代化カリキュラムという詰め込み教育という言葉で表現される学習指導要領ができ、学力格差が思い切りでき、日比谷高校もその影響を受けます。

★このころから、私立中高一貫校が東大を頂点とする大学に合格させるようになっていきます。

★文部科学省は、一方で現代化カリキュラムを、その後ゆとりカリキュラムといわれることになる学習指導要領の改訂を繰り返していきます。ますます都立高校の学力的な差が私立学校とできていきます。

★それゆえ東京都の方は、2001年以降、進学重点校や都立中高一貫校の設置など、公立の巻き返しを図ります。日比谷高校は、今では東大合格者を多数輩出し、毎年注目されるようになったのは、周知の事実です。

★ざっくりわかりやすい変化を挙げてきましたが、これらは、みな制度設計の変更によって生まれています。戦後の制度設計の変更は、いずれも民主主義的原理に照らし合わせて策定実施されてきました。しかし、必ずしもうまくいっていないわけですね。そのうまくいっていない課題が制度設計の変更の度に生まれ、解決されないまま制度変更がなされてきたため、それらの課題が複合的にいくつかの壁を作りだしているのが高校入試の壁です。改善したいという理由で変更したのに、それが壁になってしまう。パラドクスです。

★この壁にどのようなものがあるのかは、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんが、今回の巻頭座談会でまとめていますから、いずれ紹介します。ここでは、そのような壁をどう乗り越えるのか、プロジェクトメンバー1人ひとりがアイデアを述べていますから、しばらくそれをみていきます。

★まず、庄司正義さん(シンクアンドクエスト取締役社長)。庄司さんは、現代の高校入試の原型は生徒急増期につくられたものだから、生徒減少急激の現在には適合しなくなったという認識をまずもったほうがよいのだというわけです。そして、高校生人口急増期に進学率も90%を突破するようになります。現代化カリキュラムもはじまる時と重なりますから、個別最適化などなかった時代です。どうなったか想像するに難くないでしょう。

★もちろん、ゆとりカリキュラム化の過程を経たり、反ゆとり教育になったり、両方を統合する今回の学習指導要領になったりとかするわけですが、高校入試の制度設計の大枠が変わらないわけですね。

★これを突破するには、教育の中身の変更に合わせた入試制度の変更もしたほうがよいと。

★教育の中身は、「主体的・対話的で深い学び」と「ルーブリック評価」と「個別最適化」と「協働学習」などがキーワードになっています。

★したがって、庄司さんは、こう言います。「受験生・私学・公立中学3者が使える評価軸の創設がポイントです」と。

★現在でも、受験生・私学・公立中学3者は、入試相談などで、情報を共有することはできるのですが、対面で、互いの評価基準のすり合わせをするのであって、共通基準に照らし合わせるのではないのです。基準がバラバラだから、個別に会ってみなければわからないのです。わからないので、中学側は、過去の経験データに基づいて進学指導をせざるを得ないのです。未知なる学校は、合否が読めないわけです。

★高校進学率が100%に近くなっている今、合格が読めない進学指導はできないのは当然です。

★じゃあ偏差値がいいじゃないかという方もいるかもしれませんが、それはさまざまな問題を生んできたから、制度設計の改訂が行われ続けてきたのです。ですから、別の軸を作る必要があるということでしょう。

★多角的な評価軸の共有。これは、新学習指導要領のねらいでもあります。

★庄司さんのアイデアは、夢物語でもなんでもなく、現実化への道が文科省によってもなされつつあるという裏づけに基づいています。

★おそらく庄司さんの会社では、当然ながら、この新しい軸を開発しつつあるのかもしれませんね。今は、アプリでそれが可能だからです。AIを導入するともっと複雑な計算ができますし、基準を作りだしてもくれます。

★今回のプロジェクトミーティングは、回数を重ねるほど、いろいろなアイデアと、ICTによる実効性が議論されているはずです。どこかで手ごたえを感じているからこそ、この動きが生まれているのでしょう。ここに未来の教育を生む希望があります。

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2022年9月27日 (火)

2023年度入試覚書(03)八雲学園と工学院大学附属 オックスフォードでラウンドスクエア国際会議に参加

★ラウンドスクエア(RS:Round square)認定校の八雲学園(以降「八雲」と工学院大学附属(以降「工学院」)は、それぞれ高1・高2のメンバー6人が、オックスフォードで行われているラウンドスクエア国際会議(RSIC:The Round Square International Conference)に参加しています。

★コロナのために、2019年にインドで行われたきりで、久しぶりの対面によるRSCI。満を持してという感じがするのは、RSの拠点イギリスのオックスフォード大学で開催されたからというのもあるだろう。

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(写真は、八雲と工学院とRSのサイトから)

★今回は第53回目のRSIC。世界50カ国の認定校から800人以上の代表者が集まり、顔を合わせ、イギリスの今を代表する見識者のキーノートスピーチを聴き、世界の課題を語り合ったり、互いの文化をプエレゼンしたりします。後半は、英国の4校に分かれて、それぞれの学校のアドベンチャープログムやボランティアプログラムを体験します。もちろん、授業も。

★これは、RSの理念である"I.D.E.A.L.S.(「国際理解」、「民主主義の精神」、「環境問題に対する意識」、「冒険心」、「リーダーシップ」、「奉仕の精神」)を体験する目的があります。

★現代世界で起こっていることは、まさにこのI.D.E.L.Sを揺るがす出来事です。オックスフォードで、行う大切な意味はここにあります。

★RSの創設者は、ドイツ人でありながら、ファシズムに抗い、危機一髪で、先日亡くなられたエリザベス女王の夫となるエディンバラ公などの尽力で、イギリスに亡命。この命をかけた体験があったからこそ、クルト・ハーンは、I.D.E.L.Sという理念を持続可能にする教育を創ることに生涯をかけたのです。

★彼は、IBの一号店アトランティック・カレッジの創設にもかかわっています。

★したがって、RSやIBの意義とは、今こそ注目されなければならない、先進的教育環境です。

★八雲と工学院は、このRSの理念を継承するために教育を実施していると言っても過言ではありません。これぞトランジション教育の構成要素の一つである先進的教育環境のスーパーハイスペックなシステムです。

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2022年9月25日 (日)

myTYPE特集「大切なことは全て、ゲームから学んだ」北岡優希著 現代のロジェ・カイヨワ

★「myTYPE2022.9(shuTOMO別冊)」を頂きました。特集は「大切なことは全て、ゲームから学んだ」。執筆者はあのノイタキュード代表北岡優希さん。北岡さんは、映像を駆使したインタビュー記事を多数発信している新しいタイプの教育ジャーナリストです。今回の記事は、ゲームを思考コードのA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプの3つに分けて論考しています。思考コードを使っているわけですから、切り口が今までにない論考になっています。

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★自分の人生を決定づける感情、思考、行動を生み出す大きなきっかけは、人様々。ローバート・フルカムは、人生の大切なことは幼稚園の砂場で学んだと言ったし、建築家フランク・ロイド・ライトは、積み木から学んだと言いました。最近のZ世代なら、レゴから学んだと言うかもしれません。

★北岡さんの場合は、ゲームだというわけですから、時代精神とシンクロしていますね。ジャーナリストは何かしら時代精神を汲み取る独特のツールを媒介にするわけですが、北岡さんもそうだということですね。

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(教育キーワードVol.14 「自己変容」 聖パウロ学園高等学校 本間勇人先生) 

★北岡さんは、時代の精神を象徴するような教育キーワードについてインタビューして動画と原稿の両方で発信しています。私もインタビューをしてもらいましたが、北岡さんの教育ジャーナリストとしての経験値の進化は、なるほどRPGのような自己成長物語を地でいっているなあと感じていたところです。

★ゲームはとかくゲーム中毒だとかゲーム脳だとか警鐘が鳴らされるツールです。実際、社会問題になっている部分もあります。しかし、ウルトラQやウルトラマンが始まったころに出版された少年漫画は、当時今のゲームのようにやり玉にあげる教育評論家はたくさんいました。今では、日本の芸術文化を代表する漫画やアニメですが。

★また、現在は当たり前の英語ですら、20世紀末には、日本語が大事だと英語表層論みたいな議論を大学の識者たちが大真面目に論じていました。今では、国内大学の進学準備キャリアデザインは人気ですね。

★とはいえ、それらのマイナス面が今でも完全になくなったわけではありませんが、今のゲーム警鐘論ほどではありません。しかし、こうして過去を振り返ると、あらゆるものは、メリット・デメリット、アンビバレンツ、トレードオフなどの両義性を持っているのが健全で、だからクリティカルシンキング、北岡さんの言葉ではメタ認知能力が必要だという話なのでしょう。

★今でもそうかもしれませんが、麻布に進む小学生の中には、星新一の作品が好きだし、ドラえもんが好きだし、マイクラも自在だという生徒もたくさんいます。スクラッチコーディングのプログラミングも自在の生徒がたくさんいます。

★麻布の国語は、物語の構造論を活用して読みますが、この物語構造論を活用しているのは、RPGです。特に神話構造はベースになっています。もちろん、映画、たとえばスターウォーズやロードオブザリングもそうですね。視聴率の高いドラマも、ここはよく計算されています。

★ゲームは、かくして、ただ与えられたルールにのっとって時間浪費をしていくだけだとちょっと怖いことになるのですが、C軸発想で、プログラミングの仕掛けとかストーリー構造をプロデュースする側の視点、つまりメタ認知的スタンスでアプローチすると、北岡さんのように豊饒な学びがあふれます。

★実際に、ゲーミフィケーションのアプリを導入しながら授業を展開している教師もたくさんいるし、カウンセリングにゲーミフィケーションを活用する研究もされています。

★ゲームは、コンピュータゲームだけではなく、あらゆる遊びの基礎です。遊びとは交流です。コミュニケーションです。対話です。政治学における権力の優勝劣敗ゲームという危険なゲームもあります。そのゲームの構造を見破り、well-beingにするクリティカルシンキングゲームも政治学や文化人類学や社会学、哲学などで行われているのが昨今です。もちろん、経済学以外では、ゲームの理論という言い方はしないかもしれませんが。

★交流やコミュニケーションは、常にアンビバレンツ、パラドクス、ジレンマ、トレードオフなどと呼ばれる状況に直面します。それをワクワクC軸タイプゲームで乗り越えるか、B軸タイプで、ジレンマに陥りダブルバインド状態から抜け出るにはどうするか問題を発見し、悩みぬくこともよいでしょう。A軸タイプだとやりすぎると、無意識のうちに経済社会の負のループに巻き込まれるので、そうならないように生活規則を守るようにするわけです。

★つまり、ゲームの3パターンは、キーガン博士の3つのマインドー環境順応型マインド、自己主導型マインド、自己変容型マインドーに相当するのかもしれません。ダブルバインド状態に取り込まれているのに気づかないか、ダブルバインド状態の仕掛けを見破り回避するか悩むか、ダブルバインド状態を解除し解放するクリエイティビティを発揮するか。

★もしこのダブルバインド状態をC軸視点でグローバル市民が議論できるようになると、パンデミック、戦争、気候変動の現代の3大社会課題を解決する域に達するでしょう。

★北岡さんとともに、多くの人が対話をして、C軸タイプ対話を楽しんでください。気づいたときには、ホインジーガーやロジェ・カイヨワの次元に高まっていることでしょう。

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2022年9月24日 (土)

GLICC 広尾校を新規開校する鈴木さんとの対話~2030年を見据えた新しい学校のあり方

昨日21世紀型学びの拠点塾GLICCの代表鈴木裕之さんと対話しました。3連休の初日ですから、今回はゲストをお招きせず、私と2人の対話となりました。受験雑誌「shuTOMO」に記事を寄稿している鈴木さんと私の教育を観るレンズを重ねて、2023年の中学入試における学校選択動向について対話しました。そして、最後に鈴木さんからインパクトある宣言が公表されました。10月10日あたりに、「GLICC広尾校」を新規開校するというのです!時代は、ナショナルカリキュラムからグローバルカリキュラム、そしてユニバーサルカリキュラムへ。その中核は、Thinking in Englishだというビジョンをさらに広めようという鈴木さんのブランドアクショニズムがいよいよ大きく展開します。

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(GLICC Weekly EDU 第96回「2023年中学入試ー学校選択の新しいポイント」

★さて、対話はまず最初に、鈴木さんがshuTOMO11月号の記事を編集するために、取材した5校の話と、続編のために取材最中の幾つかの学校について、語っていただき、そこから、コンパラティブスタディーとして麻布や開成、成城学園、城西大城西、神田女学園、湘南白百合、静岡聖光学院などの話に飛んだりしました。

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★また、対話して、再確認できたのは、私立中高一貫校というのは、すべてトランジション教育型学校であるということがわかりました。そのうえで、コア教育機能がA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプがあるという確認がとれました。このトランジション教育型学校については、ここのところホンマノオト21で静かに語り始めていることなので、鈴木さんとの対話で、ある手ごたえを感じることができました。鈴木さんありがとうございます。

★C軸タイプ40校(東京の私立中高一貫校)のリストを発表しようと思いましたが、C軸タイプがよくてその他は劣るというような誤解を生みそうなので、今回は取りやめようということになりました。

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★たとえば、内向型人間、外向型人間などタイプに分けたとき、それぞれの特徴の傾向にすぎず、そこに優勝劣敗的発想は持ち込まないことが大事ですが、なかなかそういうメタ認知やエポケー認知が一般化していないので、公表中止と判断したわけです。

★とはいえ、GLICC鈴木さん主宰のGWEに登壇される先生の学校は、みなC軸タイプであることは確かです。どうしても、互いに共感共鳴共振するゲストが集うことになるのは当然です。

★今回話に挙がった鈴木さんが取材された学校あるいは予定になっている学校は、次の通りです。

八雲学園

三田国際学園

工学院

文化学園大学杉並

広尾学園

開智国際

かえつ有明

富士見丘

順天

どんな対話になったのか、詳細は、ぜひ動画をご覧ください。

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2022年9月23日 (金)

トランジション教育型学校(7)コア教育機能のクオリティC軸 と 3タイプの割合

★TQschoolの教育機能のうち、コア教育機能のクオリティを思考コードを参照基準としてみているわけであるが、東京の私立中高一貫校179校のA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプの分布を調べてみた。独断と偏見の振り分けであるが、傾向は見えると思う。

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(A軸タイプは、学びの広さ深さがA1~A3の範囲で濃淡がある。B軸タイプは、A1~A3、B1~B3の範囲の濃淡がある。C軸タイプは、A1~A3,B1~B3、C1~C3の範囲で濃淡がある。たとえば、C軸タイプで、A1~C3まですべてカバーしているところもあれば、B1・B2・C1・C2の範囲に限定されてるところもある。)

★東京私立中高一貫校の中に、「受験指導型学校」は当然ながらない。なぜなら、バッファー教育機能である体験プログラムは程度の差こそあれどこも充実しているからである。また、先進的教育環境もなんらかの先進的環境をセッティングもしているからである。

★したがって、内容の違いはあるが、構造的違いはない。すると、やはり、コア教育機能の3つのタイプは学校の特徴を鮮明に表す。のはずだが、ここの分析は、受験情報シンクタンクでも教育関連シンクタンクでもまだなされていない。

★さて、C軸タイプだが、イメージ図は次のようになる。

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★コア探究型体験プロ五グラムとほぼすべての教科授業がつながっていて、知の循環が起こっている。あるいは化学反応が起きている学校である。

★このタイプは、探究か教科かという形の違いはあるが、T字型とQ字型の学びがどちらの授業でも行われているため、つながるし、それを学校が意識して、学校として取り組んでいる。

★もし教科授業までPBL型授業を貫徹させているとしたら、思考コードA1~C3までのすべての領域を教科と探究型体験プログラム循環の中で行えている。スーパーハイスペックの深い学びが行われていると言えるだろう。

★しかし、教科授業はPBLスタイルでなくても、問答型でも、C軸対応は可能である。ただし、そのときは、A1~C3まですべてをカバーしているわけではない。だから、タイプに分けたが、そこに3つのレベルでさらに分析をするとクオリティの差異がもっとはっきりする。が、そんな分析は、各学校のフィールドワークをする大規模なリサーチが必要で、現状それは不可能である。インターネットで収集できる情報では、ざっくり3タイプにわけるところまでである。

★なお、クオリティといっても、高い低いではなく、どの質感を好むかというだけであって、そこは価値自由である。本日のGWEで、C軸タイプ40校については、ご報告したい。クオリティのランキングなどはないが、C軸タイプのTQschool(トランジション教育型学校)の中に、2030年問題を乗り越える未来型学校がある確率が高いからである。

★C軸タイプの学校は、進路指導が東大ピラミッド型ではなく、国内外大学開放型であるということもいえる。

★なお、勤務校聖パウリ学園は、中学は設置していないが、C軸タイプである。ただし、現状は、A1~C3すべてをカバーはしていない。もちろん目指してはいるが。

 

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2022年9月22日 (木)

トランジション教育型学校(6)コア教育機能のクオリティ B軸

★コア教育機能のクオリティが、B軸タイプというのは、コア探究型体験と幾つかの教科授業が循環している段階に進んでいることを示す。教科授業で思考コードのB軸がレベル3まで到達すると、コア探究型体験と教科授業を結び付けようとしなくても、自ずと循環し始める。

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★もちろん、コア探究型体験プログラムも見学型体験だけではなく、自ら新しいつながりを見出す調べ学習から検証エビデンスを見出す広がりというか深さに移行する問いを自ら発見し、その新たな問いを調べるというより検証する段階がB3レベル。

★問題解決のアイデアに到る一歩手前だが、問題解決のアイデアが生まれる前の地道な探究がなされることは大学など研究機関に進むとき、あるいは経済学・経営学におけるマーケティングに進むときの基盤づくりになる。

★A軸は、いわゆる受験学力=基礎学力の基盤づくり。

★B軸は、研究に必要な意味でのリサーチや仮説検証の基盤づくり、研究の足場づくり。研究の基盤作りは、大学に行ってからでよい。というか、時間的にはそこに行き着く生徒は少なく、総合型選抜も研究の資質能力という素養があれば十分だろう。

★では、C軸は?次回考察しよう。

★なお、コア教育機能がB軸レべるになると、バッファー教育機能とのシナジー効果が生まれ始めるため、海外大学進学準備は、一部の生徒だけではなく、学内全体に国内外の進学準備の射程が共有されるようになる。

★もし先進的教育環境に、海外大学とのAP連携や海外の高校とダブルディプロマの連携が可能なものになっているとしたら、国内外両方の進学準備は、学校の取り組みとして明快に表現されたことになる。この先進的環境を導入できるのは、実はコア教育機能がB軸タイプに進化していなくてはならないのだが、最近では、このような先進的教育環境が最初にできて、A軸タイプがB軸タイプに進化するというケースもある。

★環境から整備される場合は、経営的判断が必要だが、コア教育機能のB軸進化が優先すると、現場力のパワーアップがすさまじく、実は先進的教育環境のグローバルキャリアプログラムが自前でできるコンパクトスクールになる可能である。

★この段階だと、海外大学の世界大学ランキング100位から250位だと特に外部団体や塾に頼らず、道が開ける。これでも、十分ハイスペックな学びなのだが、日本は、なぜか世界大学ランキング10位くらいにはいる学びでないとハイスペックな学びでないと幻想を抱いている自虐性があって学校当局としては困惑するだろう。

★いわゆる日本の御三家は、世界のエスタブリッシュスクールと学校全体としてコミュニケーションができない超優秀な特異点で、世界標準としてモデルにする理由はないが、なぜか国内ではまねたがる私立学校が30%はある。学歴社会製造装置として、そこらへんは社会学がすでに分析しているところである。

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2022年9月20日 (火)

トランジション教育型学校(5)コア教育機能のクオリティ A軸

★コア教育機能は、「コア探究型体験プログラム」と「教科授業」の関係によって、クオリティが決まる。コア探究型体験プログラムが見学型や調べ学習型だと、思考コードでいえば、A軸がメインになる。A3に達すると知識や情報が複雑になったり、新しい結合もあるので、それはそれで深い学びであるが、教科授業と結合しにくい。なぜなら、体験プログラムの知識は、教科知識に比べると詳細度が高くなり、教科を超え、それは個人の博学的関心として尊重されるが、大学入試には関係ないよねとなる。

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★コア教育機能A軸タイプは、バッファー教育機能がなければ、実は受験指導型学校と重なるのである。

★一般選抜と総合型選抜だと、一般選抜を選択する生徒が多くなろうだろう。

★バッファー教育機能は、有志や希望者が、A軸もB軸もC軸も思考コードの領域を広めレベルも1から3に深めていくから、そのタイプの生徒は総合型選抜を選択する。

★ただ、このA軸タイプの場合、学校全体としては一般選抜を推奨する。総合型選抜を選択する生徒の多くは、外部の団体に総合型選抜対策を依頼することになる。

★総合型選抜対策塾がたくさん誕生してくる現状は、TQschoolという意匠は出来ているが、コア教育機能がA軸タイプである学校がまだまだ多いということを反映している。

★これを過渡期とみるか、結局は、このようなA軸タイプの学校は、総合型選抜の塾と連携するほうが、はやいとみるか、それは経営判断であり、どちらが正解ということはまったくないが、きちんとそのような判断をしていることを学内で共有しないと、連携はとん挫することが多い。

★なお、バッファー教育機能があれば、学校全体で取り組まなくても、海外大学進学準備は、特定の生徒に対して学校が独自に取り組むことができる。その点は、バッファー教育機能を意識的にデザインしていない受験指導型学校とは違うところである。

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2022年9月19日 (月)

トランジション教育型学校(4)Thinking Seedsの構造

★探究型体験プログラムは、たしかに体験を重視している。体験を1人行うとしても仲間と行うとしても、複眼的インテリジェンスを活用するし、自然や動植物、もちろん他者に対する気遣いが必要になる。最近の言葉でいえば、認知能力と非認知能力の両方が協奏するわけである。

【Thinking Seedsの構造イメージ】

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(→の価値が重要である。ここで多様な問いが生まれるのである)

★ポイントは、このとき思考が生まれるわけであるが、思考はどんなサイクルを生み出すのだろうか?サイクルを生むことによって、あるいはトルネードを生むことによって、多様な知識を巻き込んでいく。上記のような図は、勤務校で教師も生徒も共有しているモデル。いくつかあるのだが、説明会の校長の最初の5分間スピーチでは、これを活用する。

★この図のことを詳しく話すと、時間がいくらあっても足りないけれど、イメージとして提示して、それぞれの要素の具体的なケースを先生方や生徒が語っていく。あくまでこの図は、Tinking Seedsの内的構造のイメージに過ぎない。

★しかし、私は、毎朝行う10分間朝会で、2,3分は、この図のどこかしらを手を変え品を変え、先生方と共有する。どこかしらというのは、最初の7分くらいは、イベントや生徒のことなどの情報共有がなされるので、その共有された情報に関連するように、上記の図のどこかを少しリフレーミングしてリンクさせることにしている。全体朝会終了するやその場で学年朝会に移行する。最初の10分間の全体朝会の話が、学園に具合的に変換されていく。

★生徒との志望理由書に基づいた面談の時も、上記の図の箇所について一通り問いを投げかける。宗教のワークショップの時も同じである。

★また、先生方と教科授業のデザインについて対話する時も同様である。保護者会、父母の会の委員会でも同様。

★Thinking Seedsが、教師、生徒、保護者の中で発芽し大きな木になっていけば、複眼インテリジェンスと黄金律ベースの心が統合される知の森が、学園に広がる。コンパクトスクールは、最初のカラシダネをどうするか。このシンプルな図についても企画戦略室室長と何度も対話し、複数描いているが、引き算の美学というコンセプトに従って、結局、説明会で使うのは、この図にした。これは正解でも何でもない。いろいろあってよい。

★好奇心→開放的精神→批判的思考→・・・でももちろんよい。しかし、引き算の美学過ぎるので、少し足し算したわけだ。また興味と関心から始まるのもよいが、実際には、体験と発想の間の矢印の過程で、問いが生まれて、思ってもいない興味関心に気づくものなのである。

★気づいたものは、仲間と分かち合いたくなるのが、人間である。対話によって共有すれば、互いのメンタルモデルもわかり、共創するマインドセットが生まれる。そして改めて自分を振り返ると、いろいろな発想が結合し、小さいと言えどもブレークスルー。このサイクルがグルグル回っていくと、ようやく理想と現実のギャップを埋めるビジョンが見えてくる。

★Thinking Seedsが発芽して育っていく環境や機能を生み出すことが学校の役割でもある。こんなことを実践しているうちにきっとTQschoolも生まれてくるのだろう。

★なお、体験とは、森や海という環境で行う「純粋体験」とwebや読書などの「媒介的体験」の両方があるが、大事なのは、どちらにしても人間はその体験を自分の身体脳神経系全体で写像変換して思考したり感じたりするのであって、外界の物質的な違いにこだわる体験論はあまり意味はない。その前提があって、私たちは体験を重視しているのである。

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トランジション教育型学校(3)TQschoolの構成 2つの機能と1つの環境

★TQschool(トランジション教育型学校)の構成のイメージ図は、前回紹介したので、ここでは構成する2つの機能と一つの環境の要素について語りたい。前提として要素分解してその諸関係が化学反応を起こすというイメージをもっていただきたい。要素還元主義とか構成主義とかいろいろ語られているが、その議論は社会学者をリスペクトするとして、現実的には、両者のいいところどりをしたほうがよいだろう。いまだにどちらが正しいのか決着はついていないから、学者でもない私は良識というコモンセンスを基準にしたい。もちろん、それもメタ認知=リフレクションしながらであるが。

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★今年から高校は本格実施の新学習指導要領に移行している。注目されている教育に「探究」というのがある。「総探」とか言われて、時間的制約を建前に、EEschool(受験指導型学校)では、入試問題の演習の時間にあてられたりしているのが現状だろう。それは、教科中心主義的だから、そもそも「探究」という分野が目に入らないだけのことで、EEschoolで、「探究」をやること自体が、学内では矛盾なのだ。2030年問題対応という視野と奥行きの次元では「探究」は当然なのだが、個人的な価値観ではなく、スクールパラダイムという意味での価値観が違うから、それを無視して「探究」を導入してもなかなかうまくいかない。

★「探究」をやるのなら、TQSchoolにパラダイム転換するしかない。条件を無視すれば、数学の難問は解けないことは、受験指導型学校は、よくよく知っているのだから。

★だから、探究ってなんだ?できないよと言っている学校は、自分たちの学校は、受験指導型学校だという前提を確認しているだけのことである。それはそれで寛容に受け入れなければならない。ただ、2030年問題対応というのは、よいのかわるいのかは判断中止するとして、世界の60%以上はスマートシティ化する。マンションの稼働率が下がっても、そこはバーティカル農法にリフレームされる。先進諸国は人口減になるから、都市の70%は自然林や海と接続する。森は、カーボンニュートラルの最高傑作である。ただ、里山の維持の労力が凄まじいがゆえに、それをAIドローンや森林AIインストラクターロボットによって、動植物との共生を図るデジタルネーチャーになっていく。輸送は各スマートシティシェルター内で行われるから、自動運転トラックやドローンによって賄えるようになる。

★シェルター同士は、道路などのインフラの整備には時間がかかるから、しばらく今までの通りだろう。

★生活用品は、3Dプリンターでプロダクトされる。したがって、食料、インフラ、生活用品はスマートシティで自給自足できる。もちろん、閉鎖的ではない。このアイデアをweb3.0の世界で共有できるwell-beingインテリジェンス機能がグローバルに機能する。

★スマートシティでは、車や輸送は、空を飛ぶから、道は人間の健康維持のためのスペースになる。森と海と道。仕事は、ほとんどがオンライン。健康ケアのために、一定時間外で多くの人とコミュニケーションをとる。健康とは、身体と心と人間関係の循環。それから死はいずれ迎えなければならないので、スピリチャリティケアがしっかりする。もはや宗教は文化になり、どの宗教にも共通するスピリチャリティケア(黄金律ベース)が機能的に一般化しているだろう。

★水については、森による名水がこんこんと湧くことになるだろう。「成長には限界があるが、愛には限界がない」という個人とスマートシティの価値観パラダイムが一致するかどうかメタ認知できる複眼的インテリジェンスと感性は、TQschoolが担うことになる。制度設計には、この複眼インテリジェンスが必要。

★その複眼インテリジェンスを生み出す泉が、TQschoolのコア教育機能である。1人も取り残すことがないように、全員があるレベルの探究体験プログラムがデザインされている。そして、そこにつながるようにコースやクラスが設定されている。問題は教科である。教科も必要なのは、スマートシティは、マインドとスキルとナレッジがないと循環をスマートシティー市民全員で自分事にして運営できないからである。

★もちろん、この知識は受験学力知識ではない。それぞれの知識は、分子や原子、陽子などの電子結合の組み換えを行えるような知識である。

★それには、教科も、探究体験型プログラムと結びつくようにデザインされている必要がある。

★そのうえで、バッファー教育機能は、それぞれの才能・技術・寛容という3Tを伸ばす、自分の関心を世界に転移する体験プログラムが山ほど用意されている必要がある。ここの部分は、外部の知と交流する場でもある。

★そして、このような機能=function=関数が成立するためには、先進的教育環境が必要である。ハコモノキャンパスではなく、スマートシティの小さなモデルがそのままキャンパスになっている物質的空間と、多様な世界とコネクトできるコミュニティという精神的な空間の両方があり、それが相乗効果を生み出すようになっている。2030年には、ここはメタバース空間が、その両方の化学変化を引きおこす媒介空間となっているだろう。

★このすべてが完成しているTQschoolは、まだないが、シフトしつつある学校はかなり出現してきた。どこか?それはGLICC代表鈴木裕之さんが主宰しているyoutube番組GWE(GLICC Weekly EDU)に登壇している学校は典型例だろう。

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トランジション教育型学校(2)トランジション教育型学校=TQschoolへ

★トランジション(transition)教育型学校を、別名TQschoolと呼ぶことにする。トランジションは、偏差値という枠内での学力スコアの伸び率も含むが、それ以上に、自分が置かれているシステムや制度、習慣などの枠組をメタ認知することによって改善や次元を変える自己変容を起こすことである。既存システムに対して視野を広げ深層に迫り、問題を発見して責任を引き受けるがゆえにクリティカルシンキングをし、それによって発見されたさらなる実際的な問題を解決するアイデアを出し、行動するクリエイティブシンキングを身に付ける結果、新たな次元に自らを設定する自己変容型知性(self-tranforming mind)を身に付けることである。

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★Tというのは、「━」という視野を広げる共感力を示している記号と「❙」という深堀していく思考力を示している記号を統合したイメージを表現している。Qというのは、「〇」という現状のシステム循環を示している記号と「\」という現状をメタ認知するクリティカルシンキングを示している記号を統合したイメージを表現している。トランジションの過程は、このTとQを組み合わせ、その化学反応としてクリエイティブシンキングが創造的破壊をもたらす道のりである。それゆえ、トランジション型教育学校は、別名TQschoolなのである。

★一方で受験指導型学校は、Entrance Exams SchoolとしてEEschoolとしておこう。

★このシリーズでは、教育機能において部活と行事を括弧にいれると前述したが、それはもし括弧に入れないと、EEschoolとTQschoolの差異が覆い隠されるからだ。部活や行事は両方の学校で行っている共通部分で、ここは感情的に感動を生む場所であるが、その感動の質の違いは、見えてこない。結局、オープンスクールなどで体験して、感動してしまえば引き込まれる。すべての学校のオープンスクールを体験し、比較して選択することは困難である。

★私は、部活も行事も昨今のメディアなどが取り上げているような否定はしていない。やりようによって、いくらでも自己変容を起こす環境にできる。実際、多くの現場では創意工夫をしている。

★だから、部活や行事で学校選択をするのは難しい。ただし、従来型のEEshoolの教育は、実は受験指導中心であるから、そこでは偏差値や大学合格実績の違いしか見えないため、学校の付加価値として部活と行事でしか判断できないのである。この選択は従来はよかったと思う。というよりそうならざるを得なかった。ただ、実際には、受援指導と部活や行事のそれぞれが偏差値や大会やコンクールで勝ち負けスコアで選ぶことになり、人口成長論やGDP成長論のベースになった優勝劣敗論教育がベースにあることは否めない。

★2030年問題対応とは、新しい成長論へのパラダイムシフトができるかどうかなのである。ドネラ・メドウズがいうように、化石燃料を燃やし続け欲望の消費経済の生活パラダイムには限界があるが、愛には限界がない。愛とはもちろん、一定の学力エリートだけではなく、誰一人取り残すことのないwell-beingを生み出すことである。

★すべての人のそれぞれの才能(talent)を開花し、すべての人が技術(technology)を共有し、すべての人が互いに寛容(tolerance)である世界を創ることなのだ。TQschoolのTは、この3Tも含んでいる。一方で、EEschoolは学歴社会という優勝劣敗の象徴的システムの結節点の1点である。一部の学力エリートの才能と彼らのハイテクノロジーを育成し、優勝劣敗という明治維新以来教育の根幹に据えてきた不寛容教育を継承してきた。

★文科省も経産省もそれに気づき、自己省察を進めてはいる。たしかに、EEschoolのEEをエコとICTという道具で置換えようというイノベーションを進めている。それはそれで、頑張って欲しいが、2030年問題対応に間に合うかどうかは予測不能だ。

★それゆえ、私立学校の中には、2011年の3・11の反省と省察と洞察からTQschoolにパラダイムシフトする学校が生まれ、今もまだまだ少ないが、毎年チャレンジする私立学校が生まれていることは確かだし、それは従来の成長論の限界が来てしまったのだから、当然の動きなのである。グレートリセットという言葉をダボス会議でも昨年使っているが、もともとは21世紀が始まるや、リチャード・フロリダ博士が、クリエイティブクラス論を展開したときに生み出した言葉である。このクリエイティブクラス論については、優勝劣敗をアップデートするデジタルネイチャーやデジタルアートで活躍している落合陽一さんも見直している。

★「落合陽一」という記号は、実は優勝劣敗論からは遠い経験をして今のポジショニングを自ら得ているところが、EEschoolではなく、TQschoolのシンボルだと思っている。

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