大学入試

2022年5月 5日 (木)

5月の連休で思ったこと メモ

★4月の20日以降から、体調を崩し、学校も3日間も休んでしまい、関係者の皆さんには本当にご迷惑をおかけしました。しばらくホンマノオトも書き込めない状態が続きました。15年書き込んできて、こんなに書かなかった日はありませんでした。書く意欲が湧かないなんて!あるのだと自分の事ながら驚きましたが、少し動けるようになって、久しぶりに和洋九段女子で行われた21世紀型教育機構の総会に参加し、仲間と対話でき、かなり刺激を得て、少し勇気が湧いてきました。翌日、GLICCの鈴木さんに励まされながら、同僚とGWEに登壇させていただき、また力を得ました。

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★その前週、成城学園の青柳先生と対話する予定が、そんな状態だったので、参加することができませんでしたが、後から動画を視聴し、またまた勇気を頂きました。健康を取り戻したときに再度青柳先生と対話をお願いしたいと切に思いました。

★もちろん、PCRの結果は陰性でしたから、まずは学校には迷惑はかけなくて済んで、ほっとしているわけですが、どうも昔の疾患が再発している感じでふと不安がよぎるのですが、とにかく少しずつホンマノオトに書き込み始められるようになりました。

★首都圏模試の山下さんや北さんにも元気づけられ、寄稿のための原案も考えられるようになりました。長野の森の中で、ビールを飲みながら、孫と戯れながら、ぼーっと空を眺め、風の音や虫の羽音、木々から色々なものが降ってくる音に耳を澄ましながら、八雲学園のトランジションについて思い巡らしているうちに、ふといろいろ降りてきました。近藤隆平先生、菅原先生と約束したアイデアを表現したいという意欲も湧いてきました。

★DISCOVERに向けて平方先生と私立学校の模索について一杯宿題をもらいましたが、それらは、21世紀型教育機構のメンバーとの対話や勤務校の同僚との対話ともだんだん結びついてきました。

★同時に、受験業界からの目線と学校からの目線の両方を公平に見られるようになっている自分にも気づきました。受験業界も学校も実はかなり変わってきていて、互いに批判している視点や価値観がかなり古くなっているということにも気づきました。

★やはり私立学校は、進路指導が大事だと。しかし、その進路指導は受験指導という狭い範囲に限られないから大事なのだと。一般に外から見た場合、進路先の結果が目立ちます。氷山の一角です。たしかに、かつては一般選抜のために受験指導をメインストリームとして受験業界も学校でさえもが行ってきたことがあるかもしれません。

★しかし、今では、海面下の見えない部分が重要で、受験業界も学校も、ここの学びの質の部分には力を入れているわけです。ただ、受験業界と学校は、得意不得意がそれぞれあって、たとえば、B社のような教育産業の情報と学校が連携することは必要です。

★その連携の際、氷山の一角の見える部分の情報だけを共有するか、海面下の教育の総合力を共有するのかでは、生徒の育ち方に差異がでます。

★そのことは、今や受験業界も学校も十分にわかってきています。

★進路先でそして社会や世界に出たとき活躍できる人的資本として成長するには、やはり教育の総合力が必要です。最近は学校の働き改革で、なんでも合理化して、この教育の総合力を圧縮しようとする動きがあります。

★そして逆説的なのですが、この合理化は、受験指導という狭い範囲に学校を導いてしまう結果になるわけです。そして、このことが大学合格実績は出せども、人的資源は枯渇するというディストピアを導くことにもなりかねないのです。

★授業をPBLにするだけで、総合的な探究の時間を行うだけで、教育の総合力ができるかというと、それはできませんね。

★合理的なことを推奨する人々の共通点は、自分が苦労して成功している人に多いですね。そんな苦労はしなくてよいという経験からくる考え方です。苦労しないで成功する人は、実は基本いないので、結局そういうことを言っている人々は、個性的というより一つの偏った見方ですね。

★むしろあれもこれもしたかったけれど、自分はできずに成功できなかったという人々の考え方も大事にした方がよさそうです。

★その発想こそがクリエイティビティを生み出すし、コラボレートなんてのは、一見するとあまり合理的ではないですから、やはり成功しなかった人の方が必要とするのです。また、ケアリングも成功者にはあまり湧いてこない発想です。

★学習指導要領は、合理的に考えてよといいながら、合理的にできない現場の時間性を物理的にしか再考しないから、いつまでたってもうまくいかないわけです。

★直線的時間と円環的時間の両方で考えていくと、片方から見ると不合理的に見えたり、非合理的に見えたりするものだということが了解できます。

★直線的に考えると収まり切れない仕事。円環的に考えると収納される仕事。前者は、氷山の一角で、後者は海面下にあるものです。

★それでいて、両者はつながっている。この両方をつなげてみると、今までの教育の議論が大きく変わるわけです。

★そのような氷山全体の諸関係を捉えている教育の総合力が進路先、社会、世界にでてC軸クラスとして活躍する人的資本を生み出すことになります。そのような世界環境をいかにしたら創れるのか。そのような世界環境とはいかなるものか。教育の総合力の出番です。

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2022年5月 2日 (月)

21世紀型教育機構 新たな次元へ

★先週の木曜日(28日)、和洋九段女子のフューチャールームで2022年度の21世紀型教育機構の第1回総会が開催されました。各校のマネージャーとSGT(スーパーグローバルティーチャー)、及び首都圏模試センター、アクレディテーションチームなど協力団体が一堂に会しました。同機構教育情報センターの主席研究員の児浦先生や田中歩先生、主任研究員の新井先生、田代先生、染谷先生も参加し、熱くSGTの未来構想を語り合いました。

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★そして、理事の大橋清貫先生からは、本格的にSGM(スーパーグローバルマネージメント)部会の座長として、理事長・校長・マネージャーの資質能力向上のためのビジョンが示されました。

★SGTーSGMという21世紀の教育と経営の両輪をいよいよ走らせる段とななったわけです。

★VUCAの時代と言われて久しいですが、今まさにVUCAの真っ只中にいます。もともとVUCAは軍事用語です。それが経済の世界で語られるようになったのですが、現状はまさに軍事用語としてのVUCAの展開を毎日目にしています。私たちも対岸の火事では済まされません。教育で何ができるのかを問い返す総会の雰囲気が広がりました。

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★ですから、最後に八雲学園の副校長菅原先生が一本締めをする際に、この現状化において、グローバルリーダーを輩出することの重要性を説きました。各校well-beingを求めています。しかし、それは新しい平和を生み出すグローバルリーダーを育成してこそ達成できるでしょう。

★グローバルリーダーとはひと・もの・かね・情報を公平にかつ自由市場を持続可能にしながら活用し、民主主義的社会や世界をマネージメントしていく人的資本です。

★したがって、その高邁な精神という理想と活動資金という現実的な力を得る必要があります。理想と現実を一致させる資質能力ですね。グローバリリーダーになれば年収5000万以上は得ることになるでしょう。半分は家族という未来の世界を創る無形資産を持続可能にするために、そしてもう半分は未来を創る資本として自身の活動のために活用されるでしょう。

★教育の世界は、お金に対する正しい認識を教育することを少し怠ってきましたね。イマニュエル・カントでさえ、平和を創るには、金が市場で循環している環境を創ることだと語っていました。教育において道徳はカントが主役ですが、このカント経済循環のお話はほとんどマスクをかけられたままでした。いやいや金融教育をやっているではないかと。いやお金の光と影の両方のシステムをきちんとオープンにしていないのは誰も否定しないでしょう。

★しかも、ライフシフトの時代です。クリエイティブ資本と無形資産の新しいBS(バランスシート)をイメージする必要があるのです。この領域は思考コードでいえばC3の領域です。グローバルリーダーは、この領域を重視します。

★独断と偏見ですが、21世紀型教育機構は、資本と資産の関係を次の図のように描こうとしているように感じました。

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★こうして分類すると、思考コードのC3は年収5000万以上、B3は2000万以上、B2×C2は3000万以上、A3は1000万以上ということになるでしょう。根拠は、それぞれのカテゴリーで活躍する人的資本を想起してということです。具体的には、あまりに衝撃的なので、ここでは述べられませんが。

★起業家精神豊かな生徒はC3ですから、思い起こせば、そういうことになります。このC3人的資本を生み出す教師がSGT[だし、そのような環境を創るのがSGMです。では、SGTの年収は変わるのか?はい、ライフシフトの時代を引き寄せることができると、大転換が起こります。教師になりたいという状況が生まれるでしょう。ただし、SGTの資質能力が必要になります。

★いずれにしても、21世紀型教育機構の加盟校は、すべて海外の大学への道をたくさんの生徒に開いています。これはC3の道でもあるというわけです。中でも三田国際は、140名を超える生徒が海外大学へ進むパスポートをゲットしたということです。21世紀型教育機構は、この教育をはじめた1期生が2021年前後に海外大学進学率を飛躍させると予想していましたが、それは実現しました。

★同機構のSGM及びSGTは、理想と現実を一致させる資質能力を有していることが証明されたわけです。今後は、この高邁な精神と現実化力の両方が機構内で共有されるシステムができたわけです。新たなケミストリーに期待がかかります。

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2022年4月13日 (水)

変わるというコト(02)質を上げても次元が変わらないコトもある、質を上げなくても次元を上げるコトもできる

★学校は、教育の質を上げることは当然です。しかし、質を上げても全体としては何も変わらないというコトもあります。実に判断が難しいですね。質が変わっても次元というか組織の枠組みが変わらないということがあります。

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★タイプAが、そのタイプです。質を向上して、飽和状態になると次元がnからn+αになりそうなのですが、実は質の飽和状態とか沸点は読めないのです。多くの場合、携わっているメンバーの自己満足になりがちです。

★質が不十分でも、テクノロジーを加えると化学反応が起きそうですが、そうでもないというのが、Bタイプです。

★テクノロジーを使う場所をn+αの次元で行えば、実は現状の質が不十分でも、高い次元で質を充実できるということがあります。

★ここでいうテクノロジーとは、デジタル技術だけではなく、身体技術、心の技術、人間関係形成技術、ケアリング技術などを含みます。

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★タイプA´は理想的なように見えますが、コストがかかりすぎ、持続可能が難しいかもしれません。そもそもこのようなテクノロジーの使い方はあまり意味がないのです。

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★しかしながら、タイプDという場合もあります。というよりも、この場合が多いかもしれません。

★なぜこうなるのか?

★それは次元nと次元n+αの差異を明快に了解していないからです。

★「了解」?

★正解があるわけではないので、n+α次元は創造しなくてはなりません。構想力が必要です。

★それがなかなか難しいですね(汗)。

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2022年4月 9日 (土)

Gのチカラ(05)東大合格者を輩出する学校及びGLICCの特徴 知識か思考力か?「身に着ける」コンセプトで統合する

★昨夜、GLICC代表鈴木裕之さんと対話しました。東大合格者数多い順20位までの学校の学びの特徴と新たにでてきた学校の学びの特徴を対話しました。前者は、知識と思考力のトレードオフを解決する学びを行っています。後者は洗足学園モデルの学びの特徴を持っているのですが、前者と戦略は違いますが、コンセプトは同じなのです。そのコンセプトに着目して多様なプログラムを創っているのがGLICCでもあるわけです。ぜひ、<GLICC Weekly EDU 第74回「東大合格から見える私立学校の意味ー帰国生入試で文科2類に合格したGLICC生2名の学びを通して考える」>をご視聴ください。

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★東大は、他の大学と違い、≪私学の系譜≫と≪官学の系譜≫の軸と能力主義をうくる≪垂直的秩序化≫と能力主義を批判する≪水平的多様化≫の軸のスクランブルの座標が、東大の初綜理の時代から埋め込まれていました。その背景を考えながら、建学の精神を持っている私立中高一貫校の意味も、東大合格実績をめぐって見え隠れします。

★今回はそこはさらりとしか対話していません。メインストリームは、知識と言葉のトレードオフを解決している高校が東大合格者を多数出しているということです。

★一般には、知識を覚えなければ思考力は身につかないと言いつつ、結局知識暗記で終わる学びになりがちです。それをクリティカルに、知識偏重を批判し、論理的思考や批判的思考、創造的思考を身に着ける新しい学びが立ち上がるのですが、これは、知識の暗記に注目すると思考力の学びが軽視され、思考力を重視すると知識の取り扱いが軽視されてしまうわけです。

★知識と思考のこのトレードオフを解決するにはどうするか?それは、知識は覚えると言うが、思考を覚えるとは言はないところに注目すると見えてきます。思考は身に着けるといいます。知識も身に着けるということができます。

★したがって、「身に着ける」というコンセプトレンズでみると、知識と思考のトレードオフは解決できます。

★今回取り上げた学校は、この知識と思考の「身に着ける」方法が違います。しかしながら、コアコンテンツは、東大の帰国生入試の小論文の発想(結局IBのTOKの発想なのですが)です。最近の公立の高校入試の推薦入試で出題される小論文、特に日比谷の小論文問題は、この発想が埋め込まれています。

★つまり、東大合格者の半分は、帰国生がIBやAレベルで学んできた「身に着ける」コンセプトを持っています。「身に着ける」は、思考コードの縦軸の3つのレベルの進化があります。当然3レベルの「身に着ける」になっているわけです。

★これは、リベラルアーツで身に着けるかグローバル教育で身に着けるかの違いはあります。もっともグローバル教育は、自然とリベラルアーツになるので、結局3レベルの「身に着ける」=リベラルアーツという具合になるのでしょう。

★今回はそこまでは対話していません。対話後、そんなことを思いめぐらしていたので、補足しておきますが、なんでそんな論理が飛躍するような話になるの?と興味をお持ちいただいたら、その前段階の対話をぜひご視聴ください。

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2022年4月 3日 (日)

Gのチカラ(02)洗足学園 東大合格者数20名

★ホンマノオト21の3月のアクセスランキングを見ていてあれっと感じたのは、2018年9月21日 (金)の記事「洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。」が33位に入っていることでした。3年前以上の記事ですから、何か話題になっているのだろうと、この時期ですから東大合格者数を調べました。すると、20名ということがわかりました。それは話題になるはずです。

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★この記事を書いたときは、まだ新型コロナウィルスの外部環境の変化を考慮に入れていないので、東京オリンピック・パラリンピック後の中学受験人口の予想は外れていますが、洗足学園の東大の合格人数が伸びるであろうことは予想通りでした。

★洗足学園のグローバル教育の破格さが、大きな理由だと書いていますが、その通りですね。

★最近の同校のサイトを見ると、各種模擬国連や研究論文などで生徒が活躍している様子がわかります。また、それをささえる2日間にわたる教員研修のワークショップの様子からも、自信をもちつつも油断することなく進んでいることが伝わってきます。

★グローバル教育とは、英語教育や国際生教育のみならず、自然と社会と精神の循環を研究するグリーン化、そして予想不能な事態にもGRITの精神で立ち向かう勇気が含まれています。つまりGのチカラを育成する教育です。STEAMやPBLは当然Gの力を生み出す学びの環境です。

★この意味のGの力をたっぷり生み出す洗足学園の教育。2023年の中学入試においても注目されるでしょう。

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2022年東大合格者数から見える「東大と私立学校の矛盾を乗り越える希望?」

★サンデー毎日創刊100周年記念号の学校別の東大合格者数のデータから20位まで表にしてみました。受験業界では、例年通りということなのでしょうか。毎年風物詩のようにサンデー毎日で公表されるデータの背景には何があるのでしょう。世間的にはほとんど興味と関心のない話ですが、≪私学の系譜≫から見ると、結構重要なので、少し触れます。

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★開成とか日比谷、麻布が毎年のように上位にランクインしているのですが、これは、明治の近代教育が誕生して以来、ある意味変わらないシーンです。旧制一高ー東京帝国大学という流れがあって、このトランジション(移行)によって輩出されたのは、日本近代を形成した多くの人物です。思いつくまま並べてみると、夏目漱石も芥川龍之介もそうです。澤柳政太郎、天野貞祐、斎藤茂吉、川端康成、南原繁・・・。Wikipediaで調べれば、ものすごい数です。

★この旧制一高にたくさん合格させる学校が、開成や日比谷、麻布だったわけです。旧制一高ー東京帝国大学は、ざっくりいえば今の東京大学のことですから、今回の結果も昔から変わらないわけです。

★一見どうでもいような話なのですが、当時、東京の私立学校から東大に進学するとそこに矛盾がうまれたのです。というのも、開成の初代校長の高橋是清は、開成から東大にたくさん入れて、正しい官僚制を行えるようにしようとしたと言われています。

★東大自身、そのような面を持っている反面、戦前はそのような普遍主義的な啓蒙主義を捨て、社会進化論的発想で優勝劣敗教育システムを推進した時期もあったのです。開成から東大に入った、石川角次郎はすぐに反論し、反論しているだけでは修正できないと、東大を去り、アメリカに留学。帰国して聖学院の初校長になります。

★戦後は南原繁や矢内原忠雄が、内村鑑三や新渡戸稲造の薫陶を受けていて、高橋是清や石川角次郎とシンクロするような教育政策を推進します。その象徴が戦後教育基本法の作成と成立です。多くの私学人がかかわりました。

★彼らは多くが内村鑑三、新渡戸稲造の薫陶をうけていました。しかし、この二人は今の北海道大学である札幌農学校に進み、東大ではありません。ただ、旧制一高とはかかわりを持っていました。

★二人は、この矛盾の中でどう乗り越えるか時代に翻弄されながらも、思想を貫いていきました。内村鑑三は最後の講和で、「パウロの武士道」を語り、二つのJの考え方にこだわり続けました。新渡戸稲造もあの「武士道」を書きました。エジソンが、平和を考えるために、「武士道」を座右の銘として愛読したほどでした。

★≪私学の系譜≫の第一世代は、福沢諭吉、江原素六、新島襄ですが、東大出身者ではないし、彼らの影響を受けた第二世代の内村鑑三、新渡戸稲造も東大出身ではないのです。しかし、石川角次郎のように、東大に入るけれども矛盾に直面し、米国留学するというケースもあり、矛盾をなんとかしようという東大出身の私学人が多数でます。

★資本主義と民主主義の矛盾をはらみながら、それを軌道修正しながら近代は進み、いまだに未完であると語られるわけですが、その矛盾に気づきそれを解決するように思考し活動する動きが、私立学校が東大に多数合格させる歴史的遺伝子、つまり≪私学の系譜≫が続いていると信じたいわけです。

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★東京大学の教育社会学者の本多由紀氏や中村高康氏は、国全体に多大な影響を与える巨大な学校システをの批判的に研究し、特に能力主義や学歴主義を見える化しています。学問の自治や自由があるとはいえ、その矛盾を発生させる拠点であり、同時にその矛盾を解決しようという学問の拠点でもあるヤヌスの側面をもった東大に所属しています。

★もしこのヤヌスの顔のうち≪私学の系譜≫的側面を失われたとき、日本社会はどうなるのでしょうか。垂直的序列化と水平的多様化の両方がいつもトレードオフ状態になっているのが、現状です。

★ほかの国立大学の合格状況は、20位以内の8割弱が私立学校だということはありません。≪私学の系譜≫の影響力を維持できるのは、良し悪しは別にして、東京大学だけです。ここに希望があると思わなければどこに希望があるのだろうか。。。とふと思うのです。

★とはいえ、この20校の合格者数で、東大入学者3084名の43%を占めています。このような偏りは、能力主義を生み出す危険性があるのは説明するまでもないでしょう。

★私立学校は、高橋是清のように東大に進めることによって近代の正義を保守するのか、内村鑑三や新渡戸稲造のようにグローバルな思索と行為で近代の正義を保守するのか。東大に私学が進路を進める場合、このような理念やマインドを忘れなければよいなあと思うわけです。

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2022年3月25日 (金)

2089年から考える21世紀型教育(06)反自己啓発というパラドクス ウェルネス症候群を超えるには

★最近おもしろい本を斜め読みしました。スヴェン・ブリンクマン教授の新しい翻訳書「地に足をつけて生きろ! 加速文化の重圧に対抗する7つの方法Evolving (2022/3/9) 田村 洋一 (翻訳)」がそれです。

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★次の目次をみると、かなり挑発的です。

イントロダクション 生き急ぐ人々
第1章 己の内面を見つめたりするな
第2章 人生のネガティブにフォーカスしろ
第3章 きっぱりと断れ
第4章 感情は押し殺せ
第5章 コーチをクビにしろ
第6章 小説を読め ―― 自己啓発書や伝記を読むな
第7章 過去にこだわれ
結論 加速文化におけるストア主義 

★しかし、世の中が政治経済や生命の危機に直面している時には、人間とは何かが問われますから、このような本が緊急出版されるものです。私たちはこのような本におそらく善い影響をうけるので、それはよいことでしょう。1995年の関西淡路大震災、サリン事件に襲われたとき、ソフィーの世界という高校生対象の哲学物語がベストセラーになりました。2011年の東北大震災の時も、ルソーをはじめ啓蒙思想のルネサンスがありました。そもそもバブルがはじけた1990年代の経済の空白時代にヒットしたのは「清貧の思想」でした。

★ですから、今回もそのサイクルだろうと思いましたが、反自己啓発だったり、内省を批判したり、オットー・シャーマーを名指しで批判したりしていたので、反自己啓発はともかく(私自身も商品化された自己啓発ものは、枠組みに収納される心理学の悪用だと思っています)、それ以外は、私自身への批判でもあるかもしれないと思い、kindle版がまだでていないのに、ハードカバー本で購入しました。ルーペ―を通して読み進むので、全編を読むのは辛いですね。それで、つい斜め読みになります。

★それでも、驚いたことに、私の批判どころか、私とシンクロするところばかりなのです。なんというパラドクスだと微笑みながら大笑いしながら読みました。

★要するに、あらゆる物事は物象化(典型が商品化)されるので、それに対してネガティブなストア主義的視座でとらえようということです。

★≪私学の系譜≫としての21世紀型教育は、あくまで権威や権力に屈しない啓蒙思想的な影響を受けた建学の精神といういう意味での伝統を保守し、それぞれの時代の革新に応じてアップデートもしようということですが、ブリンクマン教授の言っている21世紀というのは、加速文化をコモディティ化するトレンドを批判しているわけで、そうではなく、過去を大事にし、歴史という物語を大事にしろということですから、まさにこの精神は21世紀型教育そのものです。

★いずれにしても、21世紀の影の部分であるwell-beingを商品化してしまってそれに依存してしまっているウェルネス症候群から解放されるには、閉鎖的な内面をリフレクションするのではなく、地に足をつけ、内面と外界がつながった身体の内省化の協働によってWorld Makingをやっていこうよということです。それが21世紀型教育のManagement Learningです。

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2022年3月24日 (木)

2089年から考える21世紀型教育(05)2050年から考える流れは定着

★東京大学にしても慶応義塾大学にしても落合陽一さんにしても2050年という近未来は、もはや予測不能ではなさそうです。ほぼ見通しが立っているのでしょう。ソサイエティ5.0とかグリーン社会を目指してとか政府が目指しているのも2050年です。

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★実は2017年の東大工学部の推薦入試で次のような問題が出題されました。

以下の設問を読み、小論文解答用紙(別紙)に解答しなさい。 (600~800 字)
「ルネサンス期にヨーロッパに大きな社会的変革をもたらした「火薬・羅針盤・ 活版印刷術」は三大発明と呼ばれている。なぜ三大発明と呼ばれているかを簡単 に考察した後,2050 年頃までに期待する3つの技術革新を挙げ,それらの相乗 効果がもたらす社会的変革を説明せよ。」

(平成 29 年度 東京大学工学部推薦入試 小論文課題 ) 

★この問題を、ワークショップ型で、かえつ有明のプロジェクト科1期生と思考を深めたときがあります。今のかえつ有明の自由な発想、アグレッシブな活動、コミュニティシップの広がりを生み出す生徒のプロトタイプでした。

★いろいろな議論になったし、アイデアを生み出すプロセスもそれぞれの考えを統合していく見事なもので、詳しい中身はわすれましたが、プラクティカルな知恵が育っているなあと感動したものです。

★その中で、口々に、なぜ2050年という設定なのか、もっと未来でもいいのではという議論がでていたのは、印象的でした。そこが入試問題の限界だよねと。

★一見、正解はないようで、近未来はだいたい決まっているから、あまり突飛な発想はできないと。

★ルネサンスはすでに宇宙論が展開されていましたから、当然未来は新たな宇宙論を展開するのだという議論も興味深かったのを記憶しています。

★いずれにしても、2050年問題は、高校生が十分に議論できる問題だし、すくなくとも、今のZ世代高校生は、2050年の主体者です。しかも生産年齢人口が少ない時代です。とても、今と同じ生産道具ではやっていけません。生徒が他人事≒自分事としてイノベーションを発案できる学びの環境、クリエイティビティを発揮できる学びの環境が必要なのはいうまでもありません。

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2022年3月17日 (木)

学校が変容するというコト(25)早稲田大学教育学部の国語の入試問題の選択肢問題

★JCASTニュースに結構衝撃的な記事が掲載されました。それは<早大教育学部の入試国語めぐり著者が問合せ→回答に猛反発「誠実な対応を」 大学「発信は認識」>2022年03月15日20時44分という記事です。こう始まります。「 早稲田大学教育学部の入試で出題された国語の問題について、問題文に一部内容が使用された書籍の著者である明治大学の重田園江教授(政治思想)が、自らの問い合わせに説明がなかったことに納得できないと、教養情報サイト「SYNODOS(シノドス)」上で早大に抗議した。」

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★重田教授と言えば、ミシェル・フーコーの研究者であり、著書も複数執筆しています。政治経済学部や法学部が課題文としてとり扱うのは違和感はないのですが、教育学部が出題するというのは、オッ!と思いました。で、何が問題なのだと、続きを読むと、こうあります。

「2022年2月19日に行われた教育学部の入試では、国語の第1問で、重田教授の著書『フーコーの風向き-近代国家の系譜学』(2020年)から出題があった。第1問には、問1~8まであり、重田教授は、このうち学部が示した問1~4までの解答例について、3月14日のシノドス投稿で疑義を示した。」

★同大学同学部の国語の入試問題は、選択式問題ですから、著者と作問者のズレがあるのは、結構あるあるです。しかし、そのことをシノドスに寄稿して抗議したというのは、「あるある」では済まされない何かがあるのではと思いました。そこでシノドスの記事を読むことになるのですが、その前に私も解いてみようと。問題になっている問1から問4までを課題文を読まずに解いてみました。

★たまたま、昔ストラスブール大学の日本語を研究する学部の方々とPBL型の学習ツアーをやっていたので、フランス人の学部生や大学院生からフーコーのことはよく聞いていたのです。もちろん私はフランス語はできません。彼らは日本語がペラペラです。CEFRでB2の日本語の実力を持っていました(当時日本語のCEFRの認定はB2までしか測る機会がなかったのです。実際にはC1以上だったでしょう)から、日本語を話したくて仕方がないという前のめりの学生や研究者ばかりです。ですから、とうとうフランス語を学ぶ機会を逸しました(ということにしておきます。ようはやる気の問題です)。

★ストラスブールを彼らとフィールドワークした時に、今ENAはストラスブールにもあるんだよと。運河の向こうに見える閉鎖的な建物を指して教えてくれました。そして、昔は監獄だったり、修道院だったりで、今は学校と微笑みました。彼らは、フーコーの監獄、病院、学校、たぶん修道院もそうだと思いますが、権力の同構造のことを、その建物を見ながら教えてくれていたのです。

★彼らは、ストラスブール大学の教授マルク・ブロックを誇りに思っていました。教授はレジスタンス活動をして最終的にはドイツ軍につかまり銃殺刑になりました。そういう意味では、フーコーとはどこか親和性もありますが、私が出会ったフランス人の学生は、ヒーロー扱いはしていなかったですね。基本リスペクトでした。

★そして、当然、建築構造や空間の話になりますから、パノプティコンの話もしてくれました。彼らは、権力には本当に敏感です。日本の学校の先生方とファシリテーターとして協力してくれる彼らが対話が出来る状況にもっていくのが私の役割でしたが、今でこそPBLは当たり前ですが、インタラクティブな関係をつくることは、その当時はまだまだ難しかったですね。

★そんな感じで、選択肢問題を解いたら、叱られるかもしれませんが、問三以外は、重田教授と同じ解答になりました。問三は、単純にフーコーは一般的な意味で「人口」を捉えていないだろうから、消去法で選んだわけです。すると解答と同じになったのです。

★しかし、重田先生のそれでいいのだろうかという考え方を読んで、いかんいかんと反省し、ようやく課題文を読みました。

★そんな不真面目な読み方でですから叱られたとしても、それは当然ですが、重田教授の指摘は、課題文と問いの選択肢の同期をきっちりつめているのであって、私のように、フーコーについて耳学問したおぼろげながらのイメージで解くことは厳しく論外だというのです。

★つまり、ご自身が著者であるのだから、自身の研究を深めているフーコーの思想からいって、選択肢が違うということを指摘しているわけではないのです。「最も適切なもの」を選びなさいといったとき、たしかに消去法で残る選択肢があったとしても、その選択肢の内容が課題文のどこにも根拠が見いだせない場合、本当に適切なのかと指摘するのです。

★「最も適切なもの」だから、消去法で残ればいいのだという入試問題の作り方は、ある程度暗黙の了解なのですが、やはりその信頼性や正当性についても考えるようにしなければ、私とは違って、入試でよく出題される重田教授の本を読んで、学んできた受験生にとっては、???のままではないのか。それは問題の信頼性、正当性としてはどうなのか。妥当性だけでよいのかということを指摘されています。

★重田先生の指摘は、社会学的に選択肢の正解と課題文のアイデンティティをどのように検証するのかというものでしょう。しかし、これはテスト測定学という学問と同期します。このことの重要性は、早稲田の教育学部だけではなく、ほとんどの大学でも当てはまるでしょう。

★選択式問題の信頼性、正当性、妥当性をどう検証していくのか、やはり考えなければならない時代になったのでしょう。

★それからもう一つ、「読解」ということについて、重田教授は逆説的な指摘をしているともいえます。どういうことかというと、文献リサーチの場合、書籍の一部を切り取って、その切り取られた枠内を出て問いを作成することは、「読解」方法として可能なのだろうかという問いかけです。切り取られた課題文だから、その枠内で重田教授は解答を出していきます。そして課題文のその枠を超えた場合、フーコーの研究者として、その作問者の推理がどれほど信頼性や正当性があるのかと論じているわけです。

★そういう意味では、そこをきちんと考えて問題を作成しないと、「読解」方法に関して間違ったイメージで、大学に進んでくるのではないかという懸念をも語っているわけです。

★うまく伝えることができませんが、入試問題の作り方も、学問としてのあり方が必要なのだということでしょう。

★そして、そのことは私たち中等教育段階の教師にも同じことがあてはまります。授業ーテストー評価という循環を回しているのが教師です。実践知としての問いの作成と理論知としての問いの作成の結びつきを、私たちはどうやって創っていけばよいのでしょう。

★途方に暮れてもいられないので、少なくともIRT(項目反応理論)のさわりでもいいので、同僚と対話してみることにします。

★いずれにしても、「あるある」で終わらせないで、暗黙の了解事項あるいは常識的な考え方を転換させる重田教授の記事は、多くの人が読んでくれることを期待しています。そこから、また教育の変化が現われるでしょう。もっともそれもまた生権力にからめとられてしまうかもしれませんが。。。

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2022年3月12日 (土)

工学院の大学合格実績 更新情報

★昨日11日、工学院大学附属中高(以降「工学院」)の進路指導部主任の鐘ヶ江先生から、連絡がありました。先日ご紹介した記事「【速報】工学院の大学合格実績今年も飛躍 その意味の重要性」で紹介した合格実績がさらに更新されたということです。東京工業大学、千葉大学の合格者が新たな誕生し、慶応義塾大学が7名ではなく8名であったということです。下記に、前回の記事の数字を更新しておきます。

Honmanote

【国公立大学】14

東京工業大学2、北海道大学、東京医科歯科大学、東京学芸大学、電気通信大学、
東京農工大学2、千葉大学、新潟大学、東京都立大学3、防衛大学校

【海外大学】12(浪人を含むと14)

【早慶上理ICU】31(浪人を含むと34。慶應が3人いるところまでは確認できている)

早稲田大学4、慶應義塾大学8、ICU 1、上智大学12、東京理科大学6

【GMARCH】49(浪人を含むと51)

青山学院大学5、中央大学9,法政大学9、明治大学10、立教大学14、学習
院大学2

【工学院大学】71

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