大学入試

2024年9月17日 (火)

新しい社会の在り方を「人間—テクノロジーー世界」の多様な関係性でとらえる世代

★東京私学教育研究所の理事長校長会でお招きした青山学院大学の香川秀太教授の講演を聞いた何人かの先生方が、教育の中に新しい社会のとらえ方のスコープを埋め込み始めています。まだまだリアルな領域の話ですが、それは学校という器の今のところ限界です。学校はプロトタイプで終わらせることはできず、プロジェクトにして実践しなくてはならない宿命があるからです。

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★ところが研究所の場合、プロジェクトを実施する前のプロトタイプ段階で終えなくてはなりません。プロジェクトはあくまでも学校の先生方が実施するからです。

★ところが、プロトタイプでよいのであれば、メタ的な絵柄を生み出せばよいわけで、リアルな学校の器を越境して社会の在り方のモデルを創れます。香川秀太教授の講義の中からコンヴィヴィアルという概念に共鳴した研究所の若い世代のM氏が、緒方壽人さんの上記の書籍を引っ張り出してきて、新しい社会の在り方のヒントになりますよとメールを送ってくれました。

★デザインとテクノロジーを結びつける集団が存在していて、テクノロジーといえば、ハイデッガーをどう読み解くかなんだとかいう話になって、哲学がまさにSTEAMに大いにかかわっていることがわかりました。

★M氏は、このコンヴィヴィアルテクノロジーについて総務省も研究しているとメールをくれ、イリイチの考え方を企業や官が取り入れているとはなんて時代なのだろうと改めて驚きました。

★文部科学省のいう「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適な学びと協働的学びの一体化」など、「テクノロジーからの哲学」で考察すれば、なんて先進的なことを行っているのかということに驚きます。

★STEAMが教科と探究をつなぐんだというようなことも言っていますが、コンヴィヴィアルテクのロジーという言葉を学習指導要領の中に引用や参照するだけで、あっさり次の次元に学校は飛べるのに、わざわざ新しい漢字交じりの日本語フレーズに変換して、今やっていることは、まるでそこに行くのを回避するように誘導しているかのようです。

★一体文部科学省は何を隠そうとしているのでしょうか。すでに大学や民間でこのコンヴィヴィアルテクノロジーをとりまく技術と実践と哲学が三位一体になる研究や商品開発がどんどん進んでいるのに、そこに追いつかないSTEAM教育や探究の成果を発表しあって満足しているとはどういうことなのでしょう。

★文科省は知っているのに、それをなぜ隠すような日本語で学習指導要領を編集しているのは一体なぜでしょう。実に不思議です。

★まあ、それはともかく、東京私学教育研究所のM氏のように学校に所属していないことで、その隠されている大切なビジョンを見抜くことができるというそういう場で、この年寄りが若き世代に刺激を受けて学ぶことができるなんて、とても幸せなことです。

★M氏とは、ここを掘り起こす作業を地道にやっていくことになりました。

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2024年9月 8日 (日)

2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望

共愛学園前橋国際大学の児浦准教授の講義を拝見したりゼミの生徒のみなさんとお話できる機会を得たりして、大学と自治体(南牧村)と民間セクター、行政セクター、非民間セクターのコラボレーション型都市創りに希望を感じたことについては、以前本ブログで取り上げました。今回改めて、児浦准教授が白石克孝教授・ 西芝雅美教授・村田和代教授が編集した「大学が地域の課題を解決する(2021年 株式会社ひつじ書房)」をSNSで紹介していたのを読んでみて、やはり私の確信通り、児浦准教授のチャレンジは、共愛学園前橋国際大学による独自のチャレンジであると同時に、西芝教授が行っている「社会に関与・貢献する都市型大学(EUU:engaged urban university)」づくりに重なっていると感じました。

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★同書の中で、CBL(コミュニティー・ベースド・ラーニング)の要素として次のように8つあげています。

1.実質的な学習効果と有意義なサービスを生み出すのに十分な期間と適度なエンゲージメント活動

2.学習目標とプロジェクト目標の合致

3.系統だった組織的プロセス

4.学生、教職員、コミュニティのメンバー、および関連機関が互恵的(共創的)に協働する事で、共通の目標を達成し、またパートナーのすべてが能力を高める

5.学生が「公正性の観点」から物事を見る見るように指導する

6.教科の学問的学習目標達成に、少なくとも市民学習目標を加え、出来ればその他の学習カテゴリー(例えば、個人の人格形成、専門能力の養成、異文化対応能力、調査研究における倫理観の育成、研究能力)も加える

7.学びを生み出し、より良い実践を目指し、市民としてのアイデンティティを養成する事を念頭に置き、授業での体験を批判的に省察する

8.幅広く成果を評価する(白石克孝; 西芝雅美; 村田和代. 「大学が地域の課題を解決する 」(p.54). 株式会社ひつじ書房. Kindle 版)

★児浦准教授はさらにスタートアップ的な要素も加えていますが、重なるところもあります。「前橋×国際」の意味に改めて感じ入りました。

★また、児浦准教授とご一緒させて頂いてきた21世紀型教育機構で行っている中高段階でのPBLもこのCBLにきちんと接続することができるなという予感がし、今後の中高大連携の道がはっきり見えました。これは「希望」です!

★さらに、私事ですが、私の居住地の二子玉川もまた西芝教授が行っているポートランド州立大学のこのEUU実践が必要です。二子玉川は、楽天の移転と東急ライズが開発するまだまだエンゲージド・アーバン・コーポレーションの都市ですが、少なくとも私立中高一貫校が近隣に集積している場です。どこか協力的で強烈な大学が二子玉川でEUUができるといいのですが。共愛学園前橋国際大学と成城大学などがコラボしてやってくれるとありがたいですね〈微笑〉。

★というのも、成城学園ー二子玉川ー田園調布は国分寺崖線庭園都市なんです。最後の国土計画五全総のメインモデルはこの地域です。渋沢栄一―五島慶太の田園都市構想の継承だったのです。それは、多くの市民は気づいていませんが、意外と日常の中に取り入れられています。ただ、土日の多摩堤通りから玉川高島屋近辺にいたる渋滞は、とても環境にやさしい田園都市という感じではないですから、今では幻の田園都市構想でしょう。

★それでも、二子玉川はポートランドと新しいエコシティーの交流を開始しています。ポーオランドの都市景観は、スケールは違いますが、二子玉川にも似ています。ポートランドの日本庭園は、策定者は京都の造園家ですが、その修復には隈研吾さんがかかわったそうです。

★田園都市構想のモデルになっている日本庭園は、京都庭園ではなく、大名庭園です。この庭園と学校誘致とプレミアム住宅街をつくったのが五島慶太率いる東急電鉄ですが、それは今も継承されている構想です。

★渋谷が開発され、ヒカリエの向かい側に、渋谷スクランブルスクウェアというビルが建っています。その15階に渋谷QWSという新しい知の拠点があります。東急とJRとメトロが出資しています。今後世界の70%は都市化するといわれています。問題はユートピア都市にするのかディストピア都市にするのかですが、渋谷をユートピア都市のモデルにしようと、産学共同プロジェクトがその拠点からたくさん生まれています。

★たぶんこの渋谷QWSには児浦准教授もなんらかのカタチでかかわっていると思います。

★歴代の首相や岩崎家、高橋是清、五島慶太、森村家がこの二子玉川の国分寺崖線上の大名庭園型の別荘で、この田園都市構想を着々と描いていたのです。ただ、大学がまだ主体的ではないので、これからが希望ですね。

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2024年8月26日 (月)

「問いの力」AI社会でも変わらないコンセプトレンズ創出力~福島県私学教育研修会でWSを実施して

★8月22日・23日郡山で、福島県私学教育研修会の「教育課程部会」で、5時間のWS(ワークショッ)型研修を実施しました。主催の福島県私立中学高等学校協会の教育課程部会の大テーマは「新学習指導要領とこれからの授業デザイン」です。それをうけて「問いの力~授業と探究と教育活動を有機的に結合する」という小テーマに焦点をあてて、5時間先生方と楽しみながら深まっていきました。

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★かつて聖パウロ高等学校で校長をやりながら当時の企画戦略室室長・広報部長・数学副主任の伊東竜先生(今は互いに違う教育研究所に勤務)とコラボして「数学の時間」や「探究の時間」、「総合型選抜WS」、「保護者との対話WS」を実施しながら、トリニティークエスチョンを、生徒自らが解決したり、自らそのようなクエスチョンを創ったりするメタ問いであるコンセプトレンズとしての「問いの力」を見出すWSを教育一般化して開発したプログラムを、福島の先生方が受け入れれくださり、行えました。

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★今年ムーンショット目標に10個目「フュージョンエネルギー(核融合エネルギ)」が加わり、いよいよ2027年以降の新学習指導要領の方向性が見えたこともあり、身体を動かしたり(ロボットアクティビティ)、クロスクエスチョン(トリニティクエスチョンの1つ)を考えたりとチームで行いながら、なおかつ、参加者一人一人が幾度も「プロンプトエンジニアリング」をしながら、WSを進めました。

★昨年プロンプトエンジニアリングはまだ活用しなかったので、参加者は少し腑に落ちない部分もあったようでしたが、今年リピートしてくださった先生からは、非常に腑に落ちたとフィードバックをもらえました。

★プロンプトエンジニアリングはセルフPI(ピアインストラクション)で、リアルPIとディスカッション、アクティビティという協働的な活動の中に織り込むことによって、参加しながら自分の軸が見えてくるようです。

★それも伊東さんが、グーグルフォームなども使いながら、生成AIのアドバイス(初めて活用される先生もいました)をしながら、スマートに進めてくれたからです。私は東大や京大などの先生方との経験やリベラルアーツ的な知の背景をゴツゴツした感じでところどころ講義をするだけでした。30歳の教師と70近い元校長とのコラボなのですが、その知性の新しさと古さの違いが分かり、それも参加した若い先生方に希望と勇気を抱いてもらえたのではないでしょうか。

★伊東さんと私の共通点は、数学的思考(コンセプトレンズの根っこ)と対話型授業を楽しめるということです。そして「思考コード」を共有しています。それがなければ、こういうコラボは続かなかったでしょう。そこに生成AIの登場です。それが使えたので、WSでの思・考・動(情緒と思考と行動)の回転速度を加速でき、この類のWSを開発できたと思います。来年は、さらにおもしろいことになりそうです。

★私自身は、青山学院大学教授の若き俊英香川秀太教授の研究に親和性を感じています。別の研修にもご登壇いただきました。そこに参加した聖パウロ学園の小島校長も共感し、さっそく学内の研修でお招きする話が進んでいます。

★AI時代になっても変わらない生き方があるというのが、香川教授の軸ですが、先生自身最先端の情報分野で研究されています。そして商業経済と人間経済との循環というか融合のアイデアを持っています。生成AIやICTをどこまで道具として人間は活用していけるのか?を研究テーマの一つとしていると勝手に思っています。

★私は人間の最高の道具は「記号(言語と数学の両方の言葉)」だと思っています。私たちは自在に使う言語を道具だとは意識しないでしょう。手などもまたものを掴む道具でありながら同時に私自身のアイデンティティの1つのあり方です。

★しかし、一方で私たちは自分の言葉に溺れ、数学的思考を日常生活では関係ない道具としてみなしてしまうことがあります。それはAIやICTについても同様です。そうなってくると、人間自身の本来的なあり方を創出していく「問いの力」もまた消失するでしょう。そのとき人類は危ないですね。ですから、そうならないようにウェルビーイングな地球を問い続けていける「問いの力」を多くの方といっしょに探していきたいというのが伊東さんと私の願いです。

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2024年8月13日 (火)

2027年新学習指導要領 経済面が強く影響?

★2027年に改訂予定の新学習指導要領。中教審の動きを見ながら推察していくと、基本現行の学習指導要領の内容を変えるつもりはなさそうです。ただ、STEAM教育(積極的に中教審では、この言葉は使われていませんがDXと使っているし、文理融合も唱えているので、この教育を想定しているとみてよいでしょう)とグローバル教育という名の時空を超える教育は、多様性の背後にしっかり位置付けられていくでしょう。しかも、この多様性は、国の違いだけをいうのではなさそうです。

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★こうなってくると、この2つの教育の背景には、イノベーションによる経済活動への寄与ができる人材づくりというのが見え隠れしてきます。教科学習の是非は、教育的価値よりも経済原則によって決定されているというのがよくわかります。

★人間の在り方をカタチづくる教育に各教科の基礎学力が必要だというのは、実は今までの資本主義経済活動を動かすために必要だっただけで、人間の本質的な在り方を支えるための基礎学力ではどうやらなかったということかもしれません。

★ですから、つい先ごろ行われた令和6年8月9日(金)中央教育審議会初等中等教育分科会(第 145 回)で配布された資料の中に、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024 年改訂版(主な初等中等教育関係記載の抜粋)」があったわけです。

★これはいうわまでもなく、デジタル田園都市構想の一環の話です。

★ここにきて、2050年を目標とした10個のムーンショット目標が定まり、「ムーンショット目標8」のシンポジウムでは、東京都教育委員会が後援するといころまできています。

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★そして、「ムーンショット目標2」のプロジェクトの図が示すように、どの目標も学際知という文理融合的な科学技術が展開されるわけですが、そこに共通して現れてくるのが数理モデルというデータサイエンスです。

★現行学習指導要領の「探究」という学び方は「グローバル教育」「STEAM教育」の両方で重要な方法論です。地球規模の課題を解決するイノベーションを生み出すクリエイティビティ創発のトレーニングがより強調されます。

★そのための継続審議項目が、昨年出された「高等学校教育の在り方ワーキンググループ 中間まとめ」(令和5年8月31日)で次のように明記されています。

 • 生徒の多様な学習ニーズに応えるための遠隔授業配信センターの体制等の在り方について
• 全日制・定時制・通信制という課程の区分に関して、実態等も踏まえた、その在り方の見直しについて
• いずれの高校においても、全ての生徒の可能性を引き出し、生徒が、社会の一員となるための多様な資質・能力を身に付けた上で次のステップに移行することが可能となる教育システムを一層構築するために、必要な取組とその支援の在り方について
• 「総合的な探究の時間」を教育課程の基軸に据えながら各教科等における学びを充実させるとともに、文理横断的な学びや実践的な学びを一層進める上で必要な体制・環境について
• 次期高等学校学習指導要領に関して、内容をおおむね堅持しながら学校現場への浸透に時間をかけていくべきなどの各種意見等も踏まえた、今後の望ましい在り方について
• 高校がやるべきことの整理・明確化、学校における働き方改革の推進や、教職員の配置を含む高校の指導体制の充実のための方策について

★さりげなく書かれていますが、ここには、柔軟にSTEAM教育、グローバル教育、文理融合、実用的な学びとしての教養、人的資本経営などを押しすすめていく制度的な体制づくりをしていくよというねらいが見え隠れしています。日本経済再生のために。それは前回もご紹介しましたが、「ムーンショット目標10」が付け加わったことで、より強まったと思います。

★私立学校は、この新しい資本主義体制に対して、明治近代化の影をモニタリングしてきたように、本当にウェルビーイングな新しい資本主義になるかどうかモニタリングはし続けながら、日本の教育に貢献していく構えになると思います。

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2024年7月21日 (日)

児浦准教授のプロジェクト型講義=ゼミ=研究=アントレ

★共愛学園前橋国際大学の児浦准教授の講義を見学しました。同大学の講義はほとんどが20人前後の学生が参加していますから、講義なのかゼミなのか区別がつきません。特に児浦准教授の講義は、はじめゼミなのだと思っていました。ところが、講義の始まる前や終了後に児浦ゼミ生が、何か情報共有しに児浦准教授のところに行き来していたので、これはいわゆる講義だったのかと改めて認識したほどです。

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★最初に紹介されたゼミ長のSさんが、その講義に出席していたこともあったし、Sさんのチームの企画が、資金調達も考えながらだったのを見ていて、これはゼミだと思っていたのです。それに最初児浦准教授の研究室を訪れたときに、OCTANのFounder&CEO鈴木雄祐さんもいて、講義でアドバイザーをするということだったので、ますますゼミだと思い込んでいたのです。

★それにしても、児浦准教授は、聖学院時代の生徒と今もつながりがあり、こうして鈴木さんとジョイントしているのですから、さすがです。鈴木さんは聖学院のOBでSFCに進んで、今でいうライフシフトなアントレプレナーです。何より資金調達のアイデアが豊かです。

★鈴木さんは、南牧村に移住してそこで大きな古民家で事務所を開いています。脱空間的な仕事をしているのですね。そして、その南牧村の役場と児浦准教授と共愛学園前橋国際大学のコラボレーションもヘルプしているそうです。児浦准教授は、さらに地域と連携して補助金などもゲットしながら、ダイナミックな講義をしていて、ゼミではもっと激しく行っているというのですから、まさにクリエイティブクラスのチームですね。

★児浦准教授とはこのクリエイティブクラス(21世紀をクリエイティブクラスの世紀だと唱えたリチャード・フロリダ教授のコンセプトで、落合陽一さんも紹介している)育成というのは、共感してきました。ある意味、これを中高でやりましょうと。中高ではしかし、「死の谷」段階までがやっとで、限界もありましたが、大学だとそこを突破し「ダーウィンの海」に出られるという実感を抱けました。さすがですね。

★というわけで、児浦准教授の講義は、ゼミであり、プロジェクトであり、アントレであり、ダイレクトに研究そのものです。自治体や民間、学校、それから工学系の大学の教授陣との連携をし、まずは目の前の地域から世界へという大胆で細心の注意を気遣った研究を学生と共有しています。研究というのは、こういうフィールドワークを行いながらプロジェクトを行っていく成果を数理モデル的な方程式に練り上げていくということを指します。児浦准教授は、数学や美術、情報の専門家でもあるので、この数理的なモデルという仮説検証が得意ということでしょう。

★このような児浦准教授と共に活動できるのですから、学生の皆さんは、自らのコアを見つけ、そのことに自信と希望を抱いているのは当然ですね。

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共愛学園前橋国際大学 3年後にさらに注目される

★共愛学園前橋国際大学。この名称に同大学の魅力が詰まっています。前橋市という自治体と国際世界をつなぐグローカルリーダーがどんどん輩出される大学というシンプルなコンセプトですが今もっとも多くの大学が欲しがっている教育と研究です。東京の大学群でも、一見同じような多様なグローカルプログラムは実施しています。しかし、多くの場合は、点です。それに参加した学生にはなんらかの経験値が備わりますが、大学や自治体、研究機関、民間、世界の要素がかかわって関数方程式を創り出すところまではいっていないのが現実です。

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★ところが、驚くことにというか、児浦准教授が活躍しているので、ある意味当然というか、期待通りなのですが、その関数方程式が確立されているのです。児浦准教授と学内を歩いていると、多くの学生とすれ違ったとき、児浦先生と学生の皆さんは、それぞれこの間のプロジェクトどうなった?とか、インターンシップでこんな面白い経験していますとか、学校経営について今度相談させてくださいとか、プロジェクトベースの対話が行われています。私も学校の魅力が広く浸透するには、他になんかアイデアありますか?とか問いをもらったり、地方再生のための資金調達の方法などについても対話したりしました。

★ここは大学というより、イノベーションコミュニティで、学生も同大学のオープンスクールの企画運営をしていたり、スタッフさながらです。社会課題について研究する大学は山ほどありますが、それが実際にアクションとして行政や経済に影響を与えることは一部の学生に限られます。多くのコンテストもありますが、まだまだ死の谷に直面してそれを乗り越えるグローカルスキルを身につけている段階にはなかなか進めません。

★ところが共愛学園前橋国際大学は、ダイレクトに「魔の川」→「死の谷」→「ダーウィンの海」への研究プロセスを歩めるようにしています。おそらく3年後、今も話題の大学ですが、それが実際に社会に現れ出でて、注目を集めるでしょう。

★何せ、グローカル科目を学生全員が体験する講義というか、プロジェクトが満載なのです。おそらくこの科目デザインに児浦准教授は深くかかわっているのでしょう。児浦先生は、デザイン思考×アート思考×システム思考×SELなどをインテグレートしたプロジェクトデザインを今までたくさん創り実践してきたし、その過程で、中学生起業家、高校生起業家を輩出しています。彼らは大学に進んでも株式会社を設立したり大活躍です。

★海外大学に進学した生徒も、先進的なコンピュータサイエンスとデザイン思考を組み合わせて、面白い研究=ビジネスを行っています。兄ようについては企業秘密というか、IPの問題があるので、語れませんが。

★今や大学は、従来の中高の延長上の単位履修をして卒後してよりアドバンテージの高い企業に就職するというキャリアデザインだけではやっていけません。そもそも国際競争力がある企業ランキングで、かつてはベスト10に3社もはいっていたのに、今は1社もはいっていません。勝ち馬に乗るための競争レースは、あまり意味がなくなっていることも確かです。

★学生自身が、多様なインターシップやプロジェクトで自分のコアを見つけ生かしていける新市場創出ができたり、それを支援できる新しい行政畑の仕事を生み出したり、都市の公衆衛生のあり方をデザインしたり、資金集めのプロになったりすればよいだけです。日本の経済を支えているのは、90%の中小企業です。ここが大企業の従属機関になるのではなく、自主自立したりすればよいのです。

★これを目指すと、一人当たりのGDPは今の倍以上になります。世界経済を権威や権力でではなく、グローカル市民の頭脳と手と行動力で牽引する日本に、いや共愛学園前橋国際大学となるでしょう。

★APUや秋田の国際教養大学のような脱空間型のグローカルリーダーの第3の拠点になることは間違いないでしょう。なぜか?学内全体に英語とICTとプロジェクトの3種の神器と利他的社会起業力が共有されていれば、必然的にそうなるのは、あたりを見渡すと明らかだからです。それを実感した児浦准教授のプロジェクト型講義についてはまたご紹介します。

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2024年7月 6日 (土)

2026年中学入試も大学入試も、MIGRIT型に変貌する!?総合型選抜が全く違う意味で重要になる。

昨日GLICC代表鈴木さんと対話しました。日本の政治経済のみならず世界も変動しているのは、今が困った状態だからなのは言いうまでもありません。身の回りで、価値が急上昇しているものとそうでないものが現れていて、多くの市民にとっては、よい状態ではない。でもある限られた層は安泰というのが、あからさまになっています。こんな露骨な格差の状況の中で、サバイバルマインドとサバイバルスキルを身につけることが教育に求められはじめているのは当然だよねという対話でした。

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★配信終了後、二人でリフレクションして、同じことを言っているつもりでも、どこか違いがあったようなという対話になりました。私が中学入試のルール内で話している帰国生入試や英語入試の話が、鈴木さんのグローバルアドミッションから見ると狭いわけです。

★その違いはどこから来るのだろうかという話になっていたと思います。そこで気づいたのは、鈴木さんは、大学入試における帰国生入試から中学入試の帰国生入試や英語入試を見て語っているということに気づきました。

★大学の帰国生入試は、アフターコロナになって大きく変わっています。早稲田大学と慶應義塾大学で、帰国生入試を縮小や廃止する学部もでてきたわけです。両大学は来年2025年からそうします。大学入試における帰国生入試は、外国の高校を卒業することが条件です。ところがコロナによって阻まれ、海外就学経験はあるが卒業できなかったという生徒が増えているわけです。

★そこで、海外就学経験者に早稲田の政経は「グローバル入試」、慶應義塾大学の経済は「PEARL入試」といういわば総合型選抜を設けているわけです。これは国内生でもハイレベル英語学習経験者であればチャレンジできます。

★中学入試の帰国生入試は、大学の場合とは違い、一定期間海外就学しているということが条件で、海外の小学校卒業は条件にはないわけです。東京の場合は、公立と私立などの間で紳士協定があって、国内の英語学習経験者は、帰国生入試を受験する資格はありません。

★鈴木さんのグローバルアドミッションからすれば、大学は、帰国生入試を減らして、グローバル入試などの総合型選抜に変わっていく。そこにおいてはハイレベル英語学習経験者で創造的思考力などのクリエイティブな才能とそれを生み出してきた体験が重視されるというわけです。

★ハイレベル英語力と高度思考力と豊かな経験。その経験は文理融合的なものです。

★すると、中学入試も、その影響が大きく出てきます。2025年の早稲田大学と慶應義塾大学の帰国生入試と総合型選抜を融合した新しい入試への移行。海外就学体験者であれ、国内でハイレベル英語学習体験者であれ、区別なくチャレンジできる入試が注目を浴びます。同じようなタイプが2027年東大でも行われます。

★中学入試は、今まで2科・4科テストと新タイプ入試というように分けられてきましたが、2026年には、その区別はなくなり、要するに自分の得意な入試科目は何かという入試になるでしょう。大学入試はすでにそうなってしまっています。

★これは、まさにMI(多重知能)のどれか一つでも得意=好奇心旺盛な学びができ、その姿勢がGRIT(やり抜く力)であることを要求するという入試概念に中学入試も大学入試も変わっていくということです。これが確立したら順次高校入試も変わるでしょう。すでに適性検査型に変わっているので、あっという間だと思います。

★このようなコンセプトの入試をMIGRIT入試とでも呼んで起きましょう。そしてこれによって生徒1人ひとりの3Tが実現するわけです。タレントである才能はすべての生徒がオンリーワンのものをもっています。それが市場で売れるかどうかは、本人のアイデアと仲間力にかかっています。テクノロジーはICTのみならず感情や思考や行動、組織をマネジメントできるかどうかというスキルです。その道具として生成AIをはじめとするICTは今後は欠かせないでしょう。そしてトレランスという寛容性。こんな複雑な世界は、ひとりではサバイバルできません。仲間と共感し、自然と共生し、社会と共創するしかありません。多様な価値観やものの見方が衝突する世の中です。トレランスという寛容な心の余白が必要でしょう。

★この2026年のMIGRIT入試コンセプトの移行を、中学入試において促進するきっかけは、来春豊島岡女子が実施する算数×英語資格利用入試と八雲学園が実施するすべての2科・4科テストに英語資格利用を導入するということでしょう。

★自分の得意教科をいかし、自分なりの3T能力を磨ける学校探しが始まります。その学校探しを可能にするのは、MIGRIT入試です。もちろん、この言葉は使われないでしょうが、実質広がっていくということになります。

★大学入試において、総合型選抜がますますMIGRIT入試コンセプトが濃厚になっていくことは間違いありません。

★そうそう、このMIGRIT入試をすでに実施しているところがあります。それが湘南白百合と工学院大学附属です。

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2024年6月30日 (日)

デザイン思考そのものは終焉しないけれど・・・ 龍安寺石庭で

★先週の金曜日に京都で研修が終了して、久々に幾人かの友人と会い、飲みました。友人と言っても教育関係者ですから、結局はこれからの学校の新しい姿を描く話ですが。リアルには、限られた友人なのですが、並行してSNSで他の知人や友人から情報が上がってきますから、その情報も交えながら対話します。直接ビジネスの話ではないので、あくまでフレームストーミングで、次元をいかに変換していくか。対話の次元を上げるという発想も、その対話の中から生まれてきて、なかなかよい余白でした。

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★だいぶ飲みすぎたので、そのことを予め予想して、チェックアウトが11時までOKという宿をとっていました。何せ、新幹線も混んでいて、夜になるとたいへんだろうと思いながら、チェックアウトしたら早々に帰ろうかと。とはいえ、京都の北エリアの寺は一つみたいなあと。金閣は外国の方でいっぱいだと聞いたので、友人と龍安寺の石庭で待ち合わせました。

★本当は龍の和室から見たかったのですが、はいれません。外国人の方と並んで、私たちも縁側に座って1時間以上対話してしまいました。お昼時だったので、なぜか空いていたのです。近況について語りながら、どうしても私たちの考案している(すでに特許はとっています)学びのコンセプトの通用性や汎用性、レバレッジポイントになるかどうか等々話していました。

★その一方で、私は、昨年末米IDEOの事業縮小・日本やミュンヘン撤退の報道があってから、「デザイン思考終焉論」がメディアで語られていることが気になっていて、時々この方丈庭園を数学的思考で解き明かすとどうなるのかねと友人に尋ねたりしていました。幾何的な話や視点の話など、それから庭園上空が昨日の大雨と打って変わってさわやかだったので、そっちの話になったり。特に正解は、いつもながらないのですが。

★ただ、おもしろかったのは、方丈全体の絵柄は、15個がいっぺんに見えないねという定番の話をしながら、小さな砂のような白い石が敷き詰められ、宇宙的な模様が描かれているのが、やはりこれはアート思考だなと。

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★そして、一つ一つの島のような石を眺めているうちにこのフォーカスされた造作はデザイン思考だなと。そして石庭の上空は、人工的な石庭を包むような大空と雲がくっきり。水蒸気と湿度と気温が京都の琵琶湖とつながっている地下水脈と循環しているのが描かれている驚きのシーンが石庭とマッチしているのに二人で感動していました。

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★これはシステム思考のアナロジーになるなと。アート思考もデザイン思考もシステム思考も世界の切り取り方がちがうだけで、その切り取られた世界を認識したり、あるときは石庭や寺の杜のように人工的に創ったりするときに、それぞれの切り取られた世界ごとに適切な方法なのだと。

★よって、なぜIDEOが撤退するのか、わかりませんが、デザイン思考そのものがなくなるとかという話ではないだろうなあと感じた次第です。ただ言えることは、今トレンドの探究ですが、デザイン思考だけで押し通すことはやはり限界があります。それはアート思考もシステム思考も同様です。

★学びの系譜をたどっていくと、やはり方法は多様ですから組み合わせることが大事です。

★ただ、問題はこの組み合わせるアイデアが何であるのか?私たちは、そこをコンセプトレンズと呼んで、細々とずっと高校生や先生方とワークショップを行ってきました。アブダクションして、モデルをつくり、実際に授業などやってみて、テストをして。。。あれッ?デザイン思考使っていますね(笑)。

★ともあれ、なんか幸せな気分だったので、京都駅にまっすぐ向かい、久々に食したいと思っていた東洋亭の「まるごとトマトサラダ」つきランチを食べて新幹線に乗りました。やはり混んでいましたが、なんとか座席は確保できました。帰宅したら、孫が玄関から飛び出て歓迎してくれました。いっしょに風呂に入り、寝床でカブトムシやクワガタ、スズメバチなどについて描かれているドラえもんの漫画を二人で読んで、はしゃぎました。3歳の孫は、カブトムシになったり、クワガタになったり、スズメバチになったりして、布団の上を跳ね回り、私のお腹に勢いよくぶつかってきます。

★文字など読めないはずなのですが、絵を見ながら勝手にス―トーリを描きながら飛び跳ねているのです。のび太やドラえもんの表情や行動から推測しているようです。すでにコンセプトレンズは作動し始めているなあと思ってふと横を見ると睡眠の世界に没入している孫でした。

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2024年6月27日 (木)

Deschool化進む向こうはどうなるのか?独り言

★イギリスのパブリックスクール、インターナショナルスクールが日本にどっとやってきていますが、一方でN校は、S校に続きR校をつくるということです。さらにいくつかの自治体で公営塾をAIを使って開始しました。文科省も、現行学数指導要領を実施するのお並行してIB200校計画を実施してきたし、今年の4月から、省令改正で高校の74単位のうち36単位を柔軟に活用できるようにしました。今や日本の学校は脱構築の過程を歩み始めているのです。このことを「Deschool化」と呼びましょう。

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(制作はBing)

★この動きは、明治以来の国が主導の学校制度の制度劣化を補完する動きとして始まっているのでしょう。しかし、国による教育改革ではなく、現実の問題に対応するために、また問題があるから、そこから、いろいろな動きが生まれているのですから、教育改革というよりは、なし崩し的に生まれているのです。それゆえ、Deschool化と私の独断と偏見ですが呼んでいるのです。

★この流れはどういう方向に進んでいくのでしょう。善い方向に進むことを期待しますが、歴史は紆余曲折あります。その過程は結構悲惨な状況が起こるのも歴史のセオリーです。そこで、私立学校はこの絶望的状況を希望に変える不易流行を保守していくでしょう。

★一方公立学校は、教師不足、財政不足が深刻です。私立だって同じですが、経営時の自由と教育の自由があります。したがって何とかしよと各学校が動けます。

★しかし、公立学校は、自治体次第です。公設民営の学校はすでに生まれています。今始まっている公営塾は、やがて、教師不足ですから、午前中、体験ベースの授業が行われ、午後からは公営塾に知識の理解と活用を委ねるでしょう。財政的支援はするものの少ないですから、公営塾はAI教師と少ないスタッフで賄っていくでしょう。この先は、公立学校全てが公設民営という流れだってあるわけです。

★一方N校のような通信制高校は、もはや一つの自治体の高校生を集めているようなものです。もっと加速するでしょう。もはやデファクトスタンダードは確立されていますから、大学によっては、IBやAレベルを認定するように、N高卒業資格(必ずしも文科省が規定している日本の現状の卒業資格ではなくなるかもしれません)を入学試験の条件に入れるところがでてくるでしょう。これを決めるのは、大学次第です。

★文科省の制度の及ばないところで、つまりそれは法律で禁止されていないという論法で、Deschool化が進んでしまうのです。

★しかもグローバルと生成AIを活用することによって日本ではいろいろあるのですが、世界の学校はダイレクトに結びついてしまいます。

★私立学校自身も、学習指導要領をちゃんと守りながら、発展的なことをすでに行っています。善い意味でのDeschool化を行っているのです。

★そもそも、「探究」だとか「主体的・対話的で深い学び」とか「CEFRベースのCLIL」だとか導入したのは国です。Deschool化の多様化の時代はそこから始まっている、いや仕掛けていると言っても過言ではないでしょう。

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2024年6月21日 (金)

中学入試で「シンプルな考え方=コンセプトレンズ」を身体化する学びができる

★中学入試準備の学びはいろいろなやり方があります。中学入試問題から逆算して、小学校低学年にもできるようにブレイクダウンして、徐々にハードルをあげるカリキュラムデザインが一般的でしょう。これはできる子にとっては、どんどん難問に挑戦していき楽しめます。しかし、一方で、躓き始めると、進めなくなります。ここで必死になるわけですから高ストレスになるのは当然です。

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★これは実は何も中学入試に限らず、大学入試準備の学びも一緒です。つまり、学習指導要領も同じなのです。ですから、個別に補習することが必要だったり、ピアインストラクション(PI)などの創意工夫がされています。あっ!PIは意外と実施されていないかもしれません。

★もしPIをやると、考えるコツみたいなものがそれぞれの生徒の中に宿り始めます。身体化されるわけです。ただし、これは、自分でどんどんできる子も宿っています。PIによって宿ることもあります。個人指導でも宿ることはあります。

★しかし、このコツ、つまりシンプルな考え方=コンセプトレンズを身につけられるようにというビジョンがあれば、多くの生徒が自覚的に身体化していくことになります。

★そして、このコツは、1人ひとりによって微妙に違います。最大公約数の5つの視点はあるのですが、それを教えても身体化しないのです。

★3歳の子どもがラジコンスタントカーで楽しんでいる場合、ここに「0」「1」の真偽の計算を自動化しているなと教師が意識し、コントローラの操作を対話しながら、楽しみます。もちろん、真偽の論理を教えるわけではありません。

★小学5年生とスマホの通信の波形を見える化して、直角三角形とどうかかわるか尋ねてみたりしてみます。別に三角関数を教える必要はありません。しかし、この教師の意図は、やがて真偽の論理や三角関数を理解できるようになることではないのです。その単元に出会ったときに、経験が結びついたり、結構シンプルな考え方で解けるなという感覚が身に付くことが必要なのです。

★この感覚が、あらゆる局面で活用できるようになることがポイントです。もし、それができるよういになったら、コンセプトレンズが見事に身体化したことになるでしょう。身近なものには、電子顕微鏡にそのコンセプトレンズを装着して考えるとよいし、遠くのものには電子天体望遠鏡にそのコンセプトレンズを装着するとよいわけです。

★そんな自分なりのコンセプトレンズを身につけることを、GLICCでは、国語と算数と英語で学びながら実施しているのです。本日21時から、盟友のGLICC代表鈴木裕之さんと対話します。GLICCで学んでケンブリッジや東大、一橋、早稲田などに進学した帰国生が身体化していったコンセプトレンズですね。

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