御三家人気は健在の意味 VLL (Value Line of Learning)
★4月1日のYahooニュースで、<《2026年中学入試》麻布中学の志願者減少は“御三家離れ”の象徴なのか? それでもなお「御三家人気は健在」と言える根拠>という記事が掲載されています。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』を出版しているノンフィクションライター・杉浦由美子さんのレポートです。
★SAPIXやONETES(旧首都圏模試)のインタビュー及びデータなどの情報を活用して記事が書かれているので、麻布という学校の教育がコンセプトの違う受験市場形成者にどう見えているかがわかります。また私もリスペクトしている中学受験専門の国語塾PREXの渋田隆之塾長のインタビューもしていて、現在の塾の受験指導の傾向が昔(私の時代)と変わったということも実感どおりでした。
★内容については杉浦さんの記事や上記写真の本を読んでください。なんだかんだといって偏差値をベースにしているので、新しい見方と従来の見方が交差しています。それゆえ、どう読むかは読者次第ですが、マーケティング戦略としては、どの価値志向の読者にも読めるようになっているのが凄いですね。
★だから、偏差値という知識の出し入れの能力を是とする立場だけではなく、生徒1人ひとりの才能と生き方というBeing(最近こういう言う方がされていますね。特にAI時代はDoingからBeingだと。定義問題なのでキャッチコピーとして理解しています。本質は両方の循環が大事です)を是とする立場にも視野が広まっている受験情報を流しているライターが現れたのは大歓迎です。
★今までは、ONETESの取締役の北一成さんだけが奮闘していましたが、北さんに続く編集者が現れてくることは私にとっては歓迎です。
★さて、麻布に関してですが、人気は不動です。ですが、この人気については、私は麻布のような「青年即未来」という創設者江原素六の生きざまそのものを継承している教育は、日本の歴史において極めて重要で、もし麻布の人気がなくなったときは、日本の歴史が全く違うものになっていると考えています。それほど麻布の人気は歴史のバロメーターですね。
★麻布の歴史は、官学の系譜と私学の系譜をどう考えるかということですが、表面的には気づかれないディープな日本の近代史の本質がそこにはあります。もっとも、こんなことは受験市場にとっては関心がないので、マーケティング的にはどうでもよいことかもしれません。しかし、クリスマスという市場があることによって、その根っこにキリスト教という本質があることが気づかれなくなってもそれが「ある」ということは変わりはないわけです。
★それと同じで、麻布が人気である市場が継続されることは、私学の系譜の第一世代の一人である江原素六の気概が継承され続けるということですからクリスマス市場と同じように重要なのです。江原素六の発想は、戦後教育基本法に受け継がれています。同法が改正されるときに、その精神が崩されそうになったため、東京私立中学高等学校協会、つまり東京の私学人は一丸となって、その精神の継承を守る言論を展開しました。
★その戦後教育基本法を成立させた座長のお孫さんが、当時の麻布の氷上校長で、氷上先生も機会があるたびに論じました。私はその講演で、当時の共立女子の渡辺校長と同席し、講演後氷上先生と対話をしました。そのときから「私学の系譜」というフレーズを使い、その視点で私学の建学の精神をみてきました。
★ところで、受験市場のマーケットという角度から麻布の人気をみると、私学の系譜とは全く違う様相になっています。まず、2015年以前は、偏差値ピラミッドで学校選択は行われざるを得ませんでした。知識ベースのテストの結果が偏差値です。ですからそのマーケットで偏差値55でも、麻布型の思考力の素養がある生徒は、そこは偏差値では測れませんでしたから、塾の指導によって確かに合格していきました。
★しかし、2015年から、麻布ならではの思考力型問題とはまた違うどちらかという英米哲学ベースの思考力入試という新タイプ入試が、偏差値にかかわらず多くの学校で実施されるようになりました。今では20%市場です。そして、東大には、共通テストという基礎学力という名の日本的試験が壁になって、才能豊かな生徒がチャレンジできなかったのが、そのような生徒が英語で思考することができるようになるカリキュラムのある学校から東大以上の世界大学ランキングの海外大学に入るようになったため、偏差値55の生徒が麻布にいかなくても満足できるようなってきたのです。
★つまり、中学受験市場が100%偏差値競争主義から、25%は偏差値競争主義+75%才能開花主義という整理がされるようになってきたわけです。かつては、その75%の層から、麻布を受けていたのですが、それがなくなりました。そしてもともと御三家を対象とする市場は25%だったのです。ですから、その25%、つまり首都圏の受験生12500人が御三家市場規模だったのですが、それが明白になったというわけです。それゆえ、この12500人の中で、人気があるないという話ですね。
★ところが、首都圏中学受験の人数50000人というのは、ざっくり今の日本の小学6年生の人口を100万人とすると5%シェアです。大学受験や高校受験の偏差値と意味が全く違います。
★この5万人は、実に才能者です。本当のことを言えば、子どもはみな才能者なのですが、そのことに意識を集中させている家庭層がこの5%です。今や御三家にいかなくても才能開花は十分に可能です。このことはもちろん2015年前からわかっていたことですが、実績という目に見えるものに魅力を感じがちなのは世の常です。
★ですから、世界大学ランキングの海外大学に50人も入るという実績を見て、やっとその学校の教育の内容の質に気づくというのが、最近の傾向なのです。
★この25%と75%の境目を「学びの価値ライン=Value Line of Learning=VLL」と呼びましょうか。VLLがあるおかげで、それぞれの価値領域で才能開花を行えるようになったわけです。メリトクラシーとビーイングという違いはあるけれど、それがよいわけです。価値意識は違う才能者があふれることくらい世の平和はありません。偏向主義からフラットにしていく運動は、まあ自然の成り行きではありましょう。
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