中学入試

2019年5月20日 (月)

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(7)新しい風が吹く聖地

★今年開校したドルトン東京学園。生徒募集は成功して大人気。学費が高くても、集まる魅力は何だろう?合同相談会のブースには、たくさん受験生・保護者が集まっていた。

★連休明けの海外帰国生対象の説明会もなかなか好評だったと聞き及ぶ。ニューヨークやワシントンで学校の教師とは質感が違うジェントルマンがドルトンの教育を語る。その豊かな知恵とものごしにすっかり魅了されたようだったということだ。

Dsc02632    

★いすれにしても同校関係者は、今後は尖った教育を創り上げていくというコトだった。何せ、大正自由教育で我が国に紹介されたドルトン教育は、軍事教育にはまったく相反するもので、そういう意味では、なかなか大変だったようだ。IBやラウンドスクエアを創設したクルト・ハーンも同時期に同じ憂き目にあった。

★それゆえ、尖ったというのは、コントロールから自由で、新しいものや世界を生み出す才能が開花するような教育を行うということだろう。当然学習指導要領など気にしないだろうし、社会科や理科なども知識を憶えるようなことはするはずがないだろう。

★民主的な法律以上の細かい校則などもないはずだ。自由と協働という理念を全うするのだからわくわくする。しかし、どんな教師を集めたのだろうか?「自由」と「協働」という矛盾を抱え込む教育を実践する教師というのはどこから集まってきたのだろう。

★自我を捨て、こだわりを捨て、世のしがらみを捨て、ただひたすら生徒の自由な精神に奉仕する教師。そして、その自由が協働によってますます真理として成長する。

★デューイのヘーゲリアンウェイの自由の弁証法とモンテソッリーの型と時間制約が生み出す自由の生成。そういう根源的な人間存在を支える自由を生み出すことは、いかにしたら可能なのだろうか。

★入試問題も、文科省の期待する適性検査のスタイルではないだろうし、塾予備校が作る模擬試験型でもないだろう。どんな問題だったのか。じつに興味深い。いずれ、公開されるだろうから、楽しみである。

★とにかく、日本の今までのあたかもカント的な自律=規律を重視する教育に、それをぶち壊す自由の弁証法を対峙していくことになると推察するが、それはいまだかつてない偉業となろう。

★それにしても、成城学園前駅からすぐ近くのロケーションにある。そもそも成城学園は、創設当初ドルトンの教育を実施していたらしい。桐朋女子―ドルトン東京学園―成城学園が集積するこの世田谷区隣接エリアは、国分寺崖線に含まれるのだとしたら、それはICUにまで延びる。国分寺崖線には、まだまだ私立中高一貫校がたくさんある。再び教育の聖地が現れるかもしれない。大いに期待したい。
   

|

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(5)風格

★175校も集結していると、風格のある学校がいくつか見えてくる。その一つが麻布である。中学入試の教養人の憧れの星である。今もその輝きは失っていない。共感だとか、協調だとか、貢献だとか、声高に叫ばれている今日、それらの甘い香りが、自由を脅かすリスクのあることを鋭く見抜きながら、理性的なものは現実的であり、現実的なものでは理性的であるというロゴを論集の表紙を飾りながら歩み続けている。

Dsc02616  

★そして三田国際、2015年の校名変更、共学化、21世紀型教育の実施から、いきなり生徒募集成功、偏差値右肩上がりで、はやくもレジェンドになっているが、その根っこにはフッサール、ヴィトゲンシュタイン、レヴィ・ストロースを現代的構成主義に置き換えることができる実践的知恵者が教育をプロデュースしている。世にはびこるマーケティングの概説書など歯牙にもかけない戦略家がいる。同校ブースはあふれかえっていた。

Dsc02636


★そして、海城。いわゆる御三家を追撃する勢いであるが、プロジェクトアドベンチャー、ドラマエデュケーション、帰国生への門戸開放、パーソナライズドなICT活用の充実など、教育イノベーションも忘れない。麻布同様、分厚い同窓力が、教育を支えてもいる。

Dsc02660

★海城学園は、その長い歴史の中で、軍国主義の波を超え、学歴社会の波を超え、三度新しい社会創造人材を育成する魅力的な環境をデザインしている。第三の波は、海城自身が生み出すのだといわんばかりの情熱が、ブースから湧き出ていた。


 

|

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(4)聖なる次元と英語

★フォーラムの内と外を歩きながらふと気づいたコトがある。それは、ダライ・ラマの精神を受容する学校があること。曹洞宗の世田谷学園は、ダライ・ラマが何度も訪れているのは有名だ。東大を始め、大学合格実績が良好なのも、有名だが、知の光を育成することは、世界平和のために必要である。20世紀末から、NZ留学や英語にも力をいれてきたのは、男子校としても俊敏な動きだった。

Dsc02625

★算数一科目入試など、入試改革もいつも時の流れに敏感だ。したがって、生徒募集も好調。フォーラムでは、来春も期待できる雰囲気だった。

Dsc02716

★6年前だったか、八雲学園にも、ダライ・ラマは、お忍びで突然現れた。聖なる祝福は、今も八雲学園を包み、それ以来、奇跡が次々と起こっている。その年の卒業生も見事な成果をあげたが、そのOGの力が再び学園を大いに支えることになっているのもその一つ。訪れたその日、ダライ・ラマは英語で世界とつながることができる効用を語った。当時も、英語教育と言えば、八雲学園だったが、その時以来、その教育に拍車がかかり、別次元の英語教育になっている。

Dsc02668  

★かえつ有明は、毎年東大もはいるし難関大学の実績もよい。帰国生にも人気ナンバー1。直接ダライ・ラマ法王は訪れていないが、その弟子であるかのごとく精神を継承している中核メンバーが、共感的コミュニケーションをベースにディープ・ラーニングを学内に浸透させている。

★その柔らかいコミュニケーション環境の中で、生徒のマインドは、内側から光を放つ。中高時代から社会貢献活動が盛んな学校だ。

★キリスト教以外に、アジアの聖なる次元も学内に浸透させることができるマインドの多様性を感じられるのは、私立学校ならではの教育だ。

 

|

2019年5月19日 (日)

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(3)異次元

★今年、東京外国語大学入学式で、ある新入生代表が挨拶した。トップ合格で入学したその新入生代表の1人は、文化学園大学杉並のDD(ダブルディプロマ)コースの卒業生である。もしもこのDDコースの授業を覗いたら、そのときこう気づくはずである。日本一の授業がここにあると。

Dsc02647  

★しかし、まだまだ多くの人はそのことに気づいていない。しかし、昨年このコースの一期生が卒業したが、驚くような大学実績がでている。ただし、少人数がゆえに、見識者しか気づかない。

★同校も、このDDコースと中高一貫コースをはじめとする他のコースとのシナジー効果を生むまで、大きなPRはまだしていない。

★しかしたしかに、このDDコースはIBスクールも驚くほどの教育力なのである。なんといっても、カナダBC州の教育がそのまま実施されているのだから。

★BC州の教育は、公立学校用の教育なのに、日本の教育をはるかに超えている。日本の私立学校でなければ、受け入れられないほどの教養と21世紀スキルとICT力ともちろんハイレベルな英語力が丸ごとコンパクトに一つの授業に収納されているだ。そして、私立学校でなければ受け入れられない決定的な理由は、グローバル市民教育という点なのだ。

★日本の公立学校は、どんなに英語のスキルアップしたところで、学校組織がグローバル市民になっていない。垂直的抑圧構造の組織が基本だからだ。どんなに学習指導要領をアップデートしようと、文科省―教育員会―校長といったビューロクラティックな枠組みを変えることは、今のところ難しいだろう。それがゆえに、優秀な教師が、私立にシフトする動きがどんどん生まれている。

★文化学園大学杉並自身、DDコースに学んでいるが、他の学校も学ぶ時がやがてくるだろう。ただし、だからといって、見学させてくださいという学校が殺到したら文化学園大学杉並は困るだろう。見学者もTTP(徹底的にパクる)は当たり前だという姿勢で訪れるのはやめたほうがよい。

|

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(2)異変

★中学入試の受験生や保護者のキャラクターが明らかに変わりつつある。フォーラム内を歩いていると、幾人かの見識者と出遭うが、二極化ではなく、2つのタイプに分かれつつあるねということで話が一致する。かつては、偏差値の高低という意味で二極化だった。しかし、今は偏差値を基準に選択するタイプとグローバルな環境を基準に選択するタイプ(国際理解教育は英語とか異文化理解が中心だが、グローバルな環境とは、海外のエスタブリッシュスクールと同質の環境というコトを示唆する)の2つが併存するということ。

Dsc02597

★聖学院は、思考力(その中でも数学的思考のソフトパワーの強化)とグローバルな教育環境を今年もさらにアップデートしている。清水副校長先生は、ニューヨークやシカゴ、ワシントンなどで海外帰国生対象の説明会から帰国したばかりだ。現地校の生徒が、海外での学校生活と同質の環境を求めると共に、日本語などのケアを求めるが、一人一人に応じた丁寧な対応をする聖学院に個別相談が黒山の人だかりとなっていたと聞き及ぶ。

★帰国生の行動特徴が、鮮明に中学入試の選択動向に反映しているのがなんともおもしろい。帰国生の中にも、従来通り偏差値を基準に選ぶタイプもいるが、そもそも偏差値という眼鏡をもっていない帰国生もいて、教育の質と自分のアイデンティティと共感できるかどうかを基準に選ぶタイプがいる。最近は、後者も増えてきたのだ。

Dsc02628

★したがって、開場されるや否やグローバルな教育環境を求めて聖学院のブースに駆けつける受験生・保護者も多かった。

Dsc02630

★そして斜め迎えの聖ドミニコ学園のブースにも、同校が今年開設したインターナショナルクラスについて話を聞きたいという受験生・保護者がやってきていた。すでに塾説で授業見学が行われて、その反響はすさまじい。

Photo_50

★また、八王子の工学院のブースにも参加者が集まっていた。国際フォーラムに八王子エリアの学校の相談会に参加するというのは、ある意味珍しい。たしかに、新宿からシャトルバスに乗って登校できるのだが、この話題がそんなに広まっているわけではない。

★広報部長の水川先生によると、国際フォーラムでは、ハイブリッドインタークラスの情報を収集しに来られる帰国生がどうしても多くなりますということだ。

Dsc02683


★富士見丘学園も同様のことが起こっている。帰国生にしてみたら、世界大学ランキング100位内の大学に実績を出している富士見丘学園は、かなりの魅力であるという評判が海外で轟き始めている。

|

2019年東京私立中学合同相談会 in 国際フォーラム(1)

★本日19日(日)、国際フォーラムで「2019年東京私立中学合同相談会」が開催され、盛会の内に幕を閉じた。10時開場直前、主催者の一般財団法人東京私立中学高等学校協会会長の近藤先生から開会の挨拶があった。迷うことなく私立学校が前へ前へと進むことが、子供たちの未来を、日本の未来を、そして世界の未来をカタチ創ることになるという確信を語られた。

Dsc02605

★まだ開場の時間になる前から長蛇の列が続いた。会場内は、受験生、保護者、教師の熱気があふれた。今回初めて参加するという保護者もいたが、ずいぶん昨年からのリピーターも多くなった。来年は、2020オリンピック・パラリンピックのために、私学展が、この時期に前倒しになるため、私立中学だけの合同相談会はお休みになる。

★このようなイベントも時代の変化に柔軟に対応しなければならないほど、あらゆる局面で時代は動いている。

Dsc02708

★私学展の方は、高校受験生が多いため、この中学合同相談会は、中学受験生にとっては貴重なチャンスであるが、来年は私学展の方に合流せざるを得ない。いったい会場はどうなるのだろうか。果たして身動き着くだろうか。

Dsc02652

★時間差で入場がコントロールされることになるだろう。

★学校の様子をこれだけ一望できる機会は他にない。合同相談会、私学展も新たなステージにシフトしていくことだろう。

|

2019年5月18日 (土)

八雲学園 教育の存在理由を語る(1)

★本日18日(土)、八雲学園はミニ説明会と体験教室が同時開催された。体験教室の定員が40名くらいだろうか、満席で、その保護者を対象とするのがミニ説明会であるが、保護者だけで参加しているケースもあって、説明会会場も体験教室も満席だった。

Dsc02545

★ミニ説明会は八雲学園が共学化する決断をしたときから開始したから、もう3年目になるが、近藤校長が登場したのは、今日がはじめて。9月からはじまる学校説明会には、必ず登場されるが、ミニ説明会では今までは登場されなかった。

★しかも、今日は近藤校長が登場する予定はなかったという。だから、最初は、ミニ説明会会場を背後から見守っていただけだったようだ。ミニ説明会と体験教室が同時開催なので、体験教室を見ていた私が、説明会の最後の部分を覗いたら、そこに説明会の演者である横山先生を優しい眼差しで見守ている近藤校長がいらしゃっていて驚いた。

Dsc02515

★そして、横山先生の話が終わった後、近藤校長は自然体で挨拶をされた。詳しい話はまったくしなかった。それは横山先生が十分に話したから、私も満足だと。とにかっく、ようこそ八雲学園にいらっしゃったというメッセージを分かち合いたかったのだと。

★そして、「今、横山が説明したように、毎日が感動を巻き起こす教育をしています。子供たちが成長するには、内側から燃えるものが必要です。それには感動の機会をいかに創意工夫していくかです」という「感動教育」というキーワードに絞って、簡単に語って終わった。

★たしかに、生徒の間では、今日はどんなサプライズがあるのかということは、いつも話題になっているし、自分たち自身もサプライズの世界を生み出すことが学園生活の中のミッションでもあるぐらいだ。

★八雲学園は、近藤校長をはじめ先生方自身も生徒自身も、一体自分たちは何者なのか?その存在理由を情熱をこめて語り、行動する。共学化になってから、その渦がますます大きくなっている。いったい私たちをどこに連れて行こうとしているのか。

★確実なことはグローバルな世界と学問の世界を巻き込んで、さらに八雲学園自身もパワフルになっているということだ。



 

|

2019年5月15日 (水)

「深い思考スコア」と「偏差値」(06)首都圏共学中学校 ここに未来が潜在している

★前回、首都圏共学中学校112校を対象に、全体「深い思考スコア」と首都圏模試センターの「偏差値」の相関グラフを作ったデーターから全体「深い思考スコア」でソートしてベスト30の一覧を出してみた。

19_1

※表の「女子校」という項目は、「共学校」の誤りです。

★このベスト30の中に、偏差値40レンジの学校が11校入っている。30%以上の学校が、いわゆる高偏差値校に挑戦しているわけだ。しかし、偏差値50以上の学校も、その11校同様、新タイプ入試を行っている結果、ベスト30に入っているところが13校ある。

★つまり、80%が、全体「深い思考スコア」のうち、論理的思考力だけではなく、創造的思考力も問うているのだ。この「事実」は極めて重要である。

★この「事実」をいつまでも無視して、創造性を入試で問う変な試験をしてよいのかと揶揄するとしたら、それは表現の自由でよろしいのだけれど、歴史的にあとで振り返れば、かなり社会的問題を無視した発言になりかねない。

Photo_47

★新タイプ入試の「深い思考」を除いて、算国だけの「深い思考」で「偏差値」との相関を上記グラフでみてみよう。すると、これは相関係数が0.74で、強烈な相関がある。しかも、算国の「深い思考」はB2B3という論理的思考の複雑な難問に限られ、C2C3のような創造的思考はほとんど含まれていない。

★したがって、上記のグラフの80%は、偏差値の高低にかかわりなく算国の「深い思考スコア」が40以下なのだ。しかもさらに細かく見ると国語はB2B3以上はほとんど出題していない。

★もし新タイプ入試がなければ、共学校80%の中学入試準備段階の学びは、結局知識を詰め込むだけの準備になり、ワクワクするような学び体験や深く考える喜びを体験しないままになる。

★これによって、探究格差が完全に出来上がってきたのだ。しかし、この80%の学校の中から新タイプ入試を開発して実施するようになったのが昨今である。新タイプ入試を加えると、前回示した次のグラフになる。

Photo_48

★ここに、中学準備段階からワクワクする探究の学びを体験したり、没頭して考える時間に喜びを感じる生徒が増える画期的な真の教育改革が起こっているのである。ここに未来が潜在しているともいえる。

★いろいろな学校の適性検査型入試や思考力入試の対策講座のワークショップを拝見しているが、本当に鼻を膨らませ、目を輝かせ、興奮して思考に没入し、プレゼンしている中学受験生の姿をたくさんみる。

★そのワークショップは、リフレクションが挿入されているのが常だから、そこで子供たちは、こんなに文章書いたことがないと自分で自分をほめることになるし、もっともっと考えなくてはと自分にエールをおくることにもなる。もちろん、考えること、描くこと、発表することがこんなに楽しいなんてという“Hard Fun”を感じるのは、みな共通だ。

★新タイプ入試を実施する学校は、試験回数も多い。一方では生徒募集のための戦術でもあるからだ。だから、ワークショップのハンドアウトやプログラムをその都度デザインするのは、なかなかたいへんだ。しかし、生徒のその“Hard Fun”を乗り越える果敢な姿をみると、先生方自身も興奮してくる。やはり生徒の成長に出遭うとモチベーションあがりますねと口々に語る。

★今では、MITメディアラボのレズニック教授らの影響のもとに開発されたレゴのシリアスプレイなどのプログラム(シリコンバレーなどの会社でも活用されるワークショップ)に象徴されるように、数多くの様々な最先端の構成主義的学習のプログラムが実施されている。

★そこには、組織開発、人材開発の最先端のプログラムが創意工夫されている。U理論、学習する組織、構成主義的学習、クリエイティブラーニング、アルゴリズムラーニング、CLILなどレゴに限らず多様なプログラムが開花している。基本全てはPBL型ワークショップである。

★先生方も、様々な専門的な研修に参加し、自己マスタリーを積極的に行っている。新タイプ入試を通して、生徒も教師も学び、入学後のカリキュラムに、いうまでもなく、その最先端の学びが根付くことになっている。

★新タイプ入試が、アドミッションポリシーのみならず、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーにも影響を与え、その学校の教育力の質を結果的に磨き上げることになってきたのである。

★この動きは止められない。また止めてはいけない。ここに未来が潜在しているからだ。大学入試改革がどうなるかわからないが、大学入試が変わらなければ学校は変わらないといつまでも言っている教師も実はだんだん少なくなってくるだろう。

★なぜなら、これほどおもしろい教育が新タイプ入試と共に広まりつつあるのだ。いつまでも、そんなことを言っていたら、変化したくない自己都合の理由を言っているに過ぎないと評価されることになるからだ。それに、実は、学習する組織を導入したPBL型授業は、教師の負担感(業務自体は減らないかもしれないが)がなくなるということにも気づかれ始めている。

★発想の自由人、発想の転換、考える喜びの共有、創り出すおもしろさ、好奇心のふくらみ、なぜだろうという探究心の広がりと深まり・・・こういった学びの姿勢を、入試だからストップさせるのではなく、この学びの姿勢を支持する入試にシフトしていくことは望ましいことではないか。このような挑戦をしている学校は、偏差値以上に価値があるのではあるまいか。挑戦する学校及び先生方を応援しようではないか。

★これはある意味政治的社会的動物である人間として、幸福な社会を創ろうとするかしないかの政治的決断である。教育の選択は、実は政治的決断と行為でもある。だから、そこは自分で決めなければならない。論理的思考力だけで社会を運営するのか?創造的思考を生かして社会を共に創っていくのか?どちらを選択するかという問題でもある。

|

2019年5月14日 (火)

「深い思考スコア」と「偏差値」(05)首都圏共学中学校  異変は確実に起こっている

晶文社学校案内編集部発行の「首都圏中学受験案内2020年度用」に記載されている「思考コード」で「深い思考スコア」を算出し、首都圏模試の「偏差値」との関係を読み取っているが、今回は、首都圏の共学校112校のデータで相関グラフを作成。

Photo_45

★やはり首都圏女子校同様、偏差値の高低にかかわりなく、共学校も全体「深い思考スコア」が高いところもあるしそうでないところもある。この全体「深い思考スコア」と「首都圏模試の偏差値(男女が違う場合があるので、男女の平均偏差値)」の相関係数は、0.28であるということはそういうことを示唆している。

★共学と言えば、今や渋谷教育学園グループ。アジア圏の帰国生にとって、圧倒的な人気校でもある。グラフでも高思考力、高偏差値のポジショニングの絶対的な覇権を有している。

★しかし、高思考力だけでみれば、工学院、東洋大京北、本庄東、三田国際、宝仙理数インターが肉薄している。偏差値的にも三田国際は迫っている。

★共学校というのは、昔から、偏差値の高くない学校が、グローバル教育と考える授業に本格的に取り組むことによって、急激に注目を浴びるチャンスのある領域である。男女御三家のような歴史的しがらみがない場であるということもその理由の1つであろう。

★しかも、今や東大合格実績では男女御三家も脅かしている渋谷教育学園グループは、だからといって東大合格を目的にしているわけではなく、東大以上のクオリティの高い海外大学の進学も多数輩出している。この領域では、御三家も太刀打ちできない。

★だから、大学合格実績を出すことを第一の目的とするかどうかについて、受験業界に右顧左眄する必要がない。本物の教育の道を大手を振って進んでいくことができる。そうすることで、かつて渋谷教育学園グループがそうだったように、結果的に大学実績も伸びていく。

★上記の高思考力の入試を設定している学校では、高2までは、自分の興味のある分野を深堀していく探究活動がしっかり行えるから、高3になって戦略的な受験勉強に切り替えれば、十分受かってしまうという事態が常態化するのである。5年間の才能開発、地頭開発が、それを起業に応用しようと思えばできるし、受験勉強に応用しようと思えばできる状態を生みだしているのである。

★だから、中学入学前に、偏差値が高くなくても、考えることに抵抗がなければ、なんとかなるのである。考えることに抵抗がなく、高偏差値であれば、現状の共学校の覇者渋谷教育学園グループに挑戦すればよいし、小6段階で高偏差値はゲットできていないが、考えることは好きである場合は、自分の才能を開発できる共学校を選択すればよい。

★グローバル教育と深いあるいは高い思考力を基礎にして探究活動ができる自分ごとのプロジェクトを創発できる学校から多くのすばらしい人材が活躍するようになるのは、まず間違いない。

★新たな価値ある学校がたくさん生まれる時代がすぐそこまでやってきている。

|

2019年5月13日 (月)

三田国際学園のさらなる進化(03)中1MSTクラスの新しい学際的地理学 

★2時間目は、教頭田中潤先生による地理の授業。田中先生は、「理系人になることを入学時から目標にしている中1MSTクラスであるから、予想通り、地理は暗記科目で、モチベーションがあがらないという生徒もいました」と。しかし、レヴィ・ストロースをはじめとする文化人類学に造詣の深い田中先生は、待ってましたとばかり、その先入観を砕いていく。

Dsc01777

★田中先生は、今年の中1は、MSTのみならず、全体的に優秀であるが、それは従来の中学受験における勉強における優秀性で、本格的にフィールドワークを行ったり、問題を自ら発見したり、解決の方法論を工夫したりといった探究の学びは未開拓であるという。

★だから、地理を暗記科目だなんていう先入観は、新しい世界を開く格好の出発点。探究の真髄に生徒1人ひとりの知が開かれていくマインドセットを行えるよき機会だと捉えている。

★そこで、地形や気候を扱う場合、その内的営力と外的営力のメカニズムのダイナミクスを解明する思考実験授業を行っていく。私が見学した時は、プレートテクトニクスと世界の地形の相関関係を推理し、データによって解き明かしていくPBL型授業が遂行されていた。

Dsc01765

★そのとき、地図に地形の3つのカテゴリーを色塗りしてみてくれるかなという田中先生の言葉を聞いた。あれっ?色塗りの手作業をアナログで行っていくとは!田中先生なら、タブレットを活用して、デジタル対応していくはずだが・・・と思ったのだ。

★すると、もうすぐタブレットが届くから、このような直接手を使って考える作業は、今日ぐらいかな。だからとっても貴重な体験だよと。連休が長かったことと、機種のバージョンアップがあったので、今年は手元に届くのに少し時間がかかているということだ。

★しかし、それがかえって、新鮮だった。デバイスを使わなくても、本質的なものの見方・考え方は学ぶことができる。それは、当然なのだが、最近は、私自身も含めて、デバイスありきになっている風潮があることを改めて感じた。田中先生は、デバイスは、その本質への気づきをもっと効果的に行える大事な武器ですよと。合理的な思考のプロセスが、真逆の野生の思考を生み出す気づきを得られるからですと。さすが文化人類学的視点。

Dsc01718

★世界各地の標高と面積や人口との関係を、メッシュマップによってデータに変換する作業も行っていた。東大の今年の地理の問題でも出題されていたが、今回の授業で、その問題も中1段階であっさり解けてしまうほどパワフルな展開だった。

Dsc01741

★タブレットを使えば、グーグルマップとGISのかけ合わせで、自分たちで創っていくことになるというのだから、もはや地理はデータサイエンス的な側面も持っている。

Dsc01749

★また、このメッシュマップの発想は、白地図の空間に多重の情報レイヤーを重ねて、保険のマーケティングや地政学的リスクリサーチや自然災害予測学などに応用できる思考方法であることが、実際に一枚一枚のレイヤーを読み解きながら、ディスカッションしながら体得されていく授業だった。

Dsc01751

★最後は、4つの地域の高度別面積分布のグラフを見せて、それがどの地域のものか考える問いを投げた。どれがアジアなのか、アフリカなのか、南アメリカなのか、ヨーロッパを示しているのか。プレートテクトニクスによって世界の地形の歴史を1時間で一気呵成に「思考=計算」してきたので、このような問題は中1MSTクラスのメンバーにとっては難しくない。大事なことは、どうやって考えていくか、計算していくのか、そのためにどんな情報やデータのレイヤーを重ねていくのかということだと田中先生は語る。

★ちなみにこの問題は慶応大学の入試問題であるということだ。

★田中先生は、「大学入試問題の中には、研究の最前線の成果を活用した良問もあります。大学入試悪玉論を語るのではなく、現場では、考える良問を活用することの方が有用だし、生徒が進むキャリアデザインにも希望があります。こんな研究をしている大学なんだということがわかるからです。中学入試は学校の顔と言われるが、大学入試も同じです」と語る。

Dsc01781

★進学指導は、大学入試問題の背景にある学問の成果を生徒といかに共有していくかということである。そう考えれば受験勉強も学問の入口に立つことであり、生徒によっては、もっと先に進めるだろう。好奇心旺盛になり、開放的精神が開かれ、なぜだろうというワクワクする問いが自分の内側から生まれてくる。

★中1MSTクラスでは、もはや地理を暗記科目であるとみなす生徒は1人もいなくなっただろう。むしろ、地理学として、MSTクラスの学問対象のフィールドとなったことだろう。さすがは、田中潤先生。21世紀型教師の教師である。

|

より以前の記事一覧