中学入試

2019年7月17日 (水)

【未来の自分を創る中学入試問題01】首都圏模試センターの分析を生かそう!

★「中学入試」と「中学受験」という言葉は、類義語であるが、「中学入試」は「入試を通してキャリアを考える場の機会」という側面が強く、「中学受験」は、「受験生が志望校に合格するために競争に勝ち抜く場の機会」という意味が強いような気がする。「中学入試頑張ろう!」「中学受験頑張ろう!」とはたしかに使う。しかし、「中学受験生がんばれ!」とはよく言うが、「中学入試者がんばれ!」とはあまり使わない。やはり違いはあるようだ。主語が違うということなのではあるが。

★「中学受験」という言葉は、勝ち抜くヒーロー物語として、感動物語がよく語られてきたが、それは涙をのんだ多くの生徒の上に成り立っている。そこをカウンセリングとして、合格した学校が第一志望校なんだよと発想の転換を塾の先生方は熱意と愛をこめて行ってきた。ここにもう一つの大きな感動物語があった。しかしながら、この感動物語に乗れない受験生もいて、メディアを騒然とさせるような悲惨な事件のきかっけになることもある。メディアに載らなくても、ギリギリくるしんでいる中学受験生もいることは否めない。

★だから、そのような受験生の救いの場の大きな役割を果たしているのが、おおたとしまささんや中曽根陽子さんの著作であり講演であろう。

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★そして、実は、「中学受験」という意味に「中学入試」という意味を付加することによって、中学受験の2つの感動物語以外の路線もあるのだということを示す動きを「首都圏模試センター」は追加している。

★それは、一つは、新タイプの中学入試の情報をきちんと集め、この新タイプ入試によって、中学入試の3つめの感動物語があることを取材していることだ。首都圏模試センターが情報を収集整理して発信することで、2020年の大学入試改革とシナジー効果を生みだして、新しい中学入試のウネリを創ったことは確かである。

★それからもう一つは、同センターの教務陣の問題作成の方法と実施結果の分析の方法の大きな転換である。その作成方法や結果分析の方法の基準に「思考コード」と「思考スキル」を開発導入し、それを生徒と共有までしているのである。

★そして、今年になって。「偏差値5を上げる!この1問」という分析を、「統一合判」終了後に掲載している。これもまた知のイノベーションだ。

★今回の国語の「この1問」などは、「誤答率」より「無答率」が多いことがデータで示されている。記述式だからともしかしたら単純に回避してしまった生徒もいるだろう。たしかに「思考コード」は「B2」だから、論理的にタフな問題である。しかし、解答は課題文章の中にきっちり書いてあるから、それを見つけるとよいのだということを丁寧に示している。

★これは、合格するためには、この問題を捨ててもよいが、そういう「中学受験」的な側面よりも、このような論理的にタフな問題も諦めなければ大丈夫だよ、自分の未来を創るには、この「諦めない」気持ちがあるから、タフな論理を複数の思考スキルを組み合わせて考えていけるのだというエールを生徒に贈っている。

★算数もまた実に興味深い。正答率が「32.2%」、誤答率が「56.7%」、無答率が「11.1%」の問題を取り上げている。この問題が出来るようになれば、たしかに他の問題にも応用が利く大事な「思考スキル」を身に着けることができるから、「誤答率」や「無答率」が下がり、「正答率」が上がるがる可能性がある。

★この問題は「思考コード」は、B1だから実はそれほど論理は複雑ではない。それゆえ、「無答率」は低くなっている。要するに「誤答率」が高くなっている。その理由は、問題文の情報整理がきちんと行われていないからだという指摘が、首都圏模試センターの教務陣からなされている。実は、算数や将来の数学の問題文は、いったん情報整理して、箇条書き(フローチャート化ということ)とか図とか表とか、グラフとかに「置き換える」必要がある。もちろん、試験最中は頭の中で行っていかないと時間が足りなくなるから、そこはトレーニングが必要。同サイトの中で、その情報整理の仕方が丁寧に示されている。大いに参考になるだろう。

★理科も算数同様、問題文の情報整理を、足し算引き算で考えるのか、比という関係でとらえるのか、立ち止まって考えてみようとフィードだバックされている。この問題は、すべてトンボの数を数えきれないから、だいたいの推定をするのであるが、この感覚はフェルミ推定と呼ばれるタイプのもので、大学や社会にでたときに、非常に役立つ論理的思考というより創造的思考の一種なのである。このような問題に挑戦すること、そしてたとえ間違ったとしても振り返ることは、もちろん合格への道につながるが、それ以上の大きな収穫があると考えてよいのではないか。

★社会もまた実に興味深い、今回も資料を読むことによって根拠を見出すという思考のプロセスを必要とする問題が取り上げられていた。「無答率」が59.8%であるから、明らかに暗記型の問題以外は回避するという姿勢が社会の勉強では多いようだ。しかし、今回日清戦争と日露戦争の「比較」をして違いが分かれば、その違いについて重なるルールが資料の中にあるから、それを根拠として記述できる問題であることがわかる。

★日清戦争と日露先生に関しては、それぞれ関連情報が知識として整理されて格納されていなければならないが、あとは、目の前の資料とどう結びつけるかということ。この「結びつける」という推論は、記憶に依存するとなかなか飛べない。勇気が必要んである。だから、思い切って間違ってもよいからまずはチャレンジしてみようというエールが贈られているのである。「無答率」より「誤答率」が多くなることの方が、まずは望まれるということなのだ。

★今新しいトレンドとして勢いを増している「新タイプ入試」は、以上のような問題を考える時に使われた「思考スキル」を丁寧に、試験最中にトレーニングしながら思考して解いていく問題が出題される。いきなり上記のような問題を解く前に、情報整理やフェルミ推定の試行錯誤をやてから、本格的思考にチャンレンジするというタイプ。したがって、以上のような思考力を身に着けるには、各学校で実施される新タイプ入試の対策講座に参加してみるのも一つの作戦である。仮に新タイプ入試を受けなくても一度はチャンレジしてみてはどうだろう。新しい気づきがあるかもしれない。

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2019年7月15日 (月)

公立中高一貫校の衝撃 日本の教育をどこに連れて行くのか。

★公立中高一貫校の意味は、どんどん大きくなっている。2020年大学入試改革の年の卒業生、つまり2021年春の大学合格実績の様相が随分変わる。しかも、その合格実績は、Old Power Schoolの進学準備で出るだけでなく、New Power Schoolの教育によってもでてしまう。

(表1)

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★今までは、入学時で高偏差値の学校は、合格実績も高かったのだが、2021年春以降は、New Power Schoolという偏差値よりも教育のイノベーションで選択される学校の合格実績も高くなっている。もっとも、今ではNew Power Schoolの学校の中から高偏差値校も出てきてしまっているが。

★どんな学校も2030年や2040年の時代の変化に対応するから、完全にOld Power Schoolという学校はない。ただ、傾向としてOld Power Schoolという分類にはいるか、New Power Schoolの分類にはいるかどうかである。いずれにしても、従来の学歴ブランド校が頂点に集中するピラミッド構造は崩れている。

【表2)

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★東京都の中高一貫校のうち、公立中高一貫校の数のシェアは5%で、公立中高一貫校の私立中高一貫校に対する教育力の影響は、東京私学にとってはまだ危機的な意識の段階にはないかもしれない。ところが、京都府では19%シェアで、公立中高一貫校の教育の質が私立中高一貫校に大きな影響を与えているのは、京都府の受験業界も、私立学校当局も実感している。

★この影響を脱するためには、New Power Schoolへの体質改善が必要であることも理解されている。しかし、だからといって、New Power Schoolの動きが京都で広がっているかというと、まだまだ意識の段階で、実行段階はこれからだ。

★そういう意味では、東京はすでにその動きは始まっている。21世紀型教育を推進するNew Power Schoolの中でも、特に三田国際のようにすでにイノベーティブブランド校として、学歴ブランド校の併願校になり、綱引きを始めている学校もでてきているぐらいだ。

★こうしたNew Power Schoolの学校はどんどんふえ、その特徴的な動きは、公立中高一貫校の適性検査型入試を新タイプ入試として実施する勢いになっている。

★この動きは、同時にさらに公立中高一貫校の存在意義を高め、私立の学歴ブランド校の幾つかは、すでにその教育の質でも、大学合格実績でも溝をあけられるようになった。

★この動きは、2021年の中高一貫校のポジショニングを (表1)のように変えてしまう。御三家というような超学歴ブランド校を頂点とするピラミッド階層構造はなくなり、(表1)のような長方形の階層構造になるだろう。だからといって、フラット構造になるとはいえない。

★一般の公立中学が、置いていかれる。教育の階層構造の在り方が変わるだけで、この格差をどうするかはますます重大な問題として浮上してくる。

★しかし、公立中高一貫校が、私立の学歴ブランド校と競り合うことができる存在になることによって、フラット構造への希望は開かれたと認識してもよいかもしれない。

★その未来予想は、大阪市立水都国際中学校・高等学校の生徒の教育活動の様子を見れば明らかである。ここの生徒は、たとえば、開成、麻布、武蔵、桜蔭、雙葉と比べても、グローバル市民のリーダーとして資質や思考力、英語力は引けを取らない。

★学校自体を生徒自らが教師といっしょになって「しなやかでタフな学校」にしていこうと動いている。

★桜蔭や麻布、武蔵が学校の特徴的な教育として骨太の論文制作をしているが、これとても水都国際のTOKベースの授業が、もっと好奇心旺盛で、オープンな精神で、おもしろい探究活動を学校全体に広げている。

★このような学校が、歯が立たない(もっとも競争する必要はまったくないのだが)学歴ブランド校はおそらくJGだけだろう。ただ、水都国際の生徒は、JGのような斜めから見る精神の構えはない。それがよいかどうかわからないが、それが公立学校の所以でもある。たいへん素直な生徒が多い。

★時代が変われば、学校のポジショニングも変わるのは当然だ。それをどう読みとるのか?それは各教育情報シンクタンクの見識によるだろう。いずれにしても、その読みのアプローチに、公立中高一貫校の適性検査と教育の質のアップデートは欠かせない存在になっているのである。

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2019年7月 9日 (火)

聖学院の難関思考力入試と麻布の社会の中学入試と東大帰国生入試 「X」なるものが必要

★多様な学びをつなぐ「X」なるものが育つと、好奇心はさらに旺盛になり、開放的精神とどこまでも追究しようという意欲が湧き出てくる。このような科学者や詩人などの創造的才能者が有している精神を生み出す「X」なるものとはいかなるものだろうか。

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(写真提供:聖学院21教育企画部長児浦先生。同校の難関思考力入試では、いきなり論述を書くのではなく、様々なデータを読み取ったうえで湧き出てくる発想をいったんレゴで可視化する。指を動かしながら自分の考えを編集していく。)

★それは、明快にこれだというものを示すことはなかなか難しい。ただ、この「X」なるものがなければ、次のような東大の帰国生入試は問題解決できないだろう。

≪2020 年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される予定であり、2025 年には大 阪で万博(万国博覧会・国際博覧会・World Exposition)が開催されることが決定した。こ うした国際的で大規模なイベントを現在の東京や大阪に誘致し開催することの是非を、過去 に開催された東京オリンピック(1964 年開催)および大阪万博(1970 年開催)と比較しな がら多面的に論じなさい。 平成31年度外国学校卒業学生特別選考小論文問題 文Ⅱ≫

★この問題は、たんなんる小論文のような書き方ではうまくいかない。歴史的知識や歴史的変化による価値観や政治経済の変化、世界の情勢の変化、イノベーションの進化など多方面から考察し、メリットとデメリットを考えるだけではなく、むしろメリットの背景にあるリスクを論じ、その是非を問うところまで詰めていく必要があるだろう。

★多大な知識が必要とされているように見えるが、それを並べただけではだめである。むしろその知識は大雑把であっても、ある歴史的見通し、経済的価値観の捉え方などを展開し、メリットとデメリットの整理で終わらずに、メリットの背景にあるリスクというパラドクスにまで至る必要があるだろう。

★これが「X」なるものの正体である。パラドクスの発見という高次思考(=クリティカル&クリエイティブシンキング)が必要であり、ロジカルシンキングできれいに整理しただけでは、世界の問題を見抜けないのだ。さらにいうと、「X」なるものは、この高次思考という複合的システム思考という関数になっている。システム思考はループ関数がどんどんつながって拡大していくが、「X」がなければ、何も生まれない。

★東大の一般入試は、ロジカルシンキグで十分なのに、帰国生入試はそれを超えているのである。これは東大推薦入試も同様である。東大は、合格者の数が少ないから目立たないようにふるまっているが、東大推薦入試と東大帰国生入試で随分以前から大学入試改革を実行していたのである。

★その人数があまりに少ないがゆえに、一般入試を受ける生徒にとっては、無関係とばかり、顧みてこなかったのが受験業界なのである。

★しかしながら、麻布の中学入試問題は、すでにこの領域にもっと昔からあったのである。だから麻布の生徒は、中学入試の準備段階で、すでに「X」なるものを身につけてきた可能性が大なのである。自覚的であるかどうかはわからないが。

★そして、このところメディアが取り上げている聖学院の思考力入試、特に難関思考力入試は、入試対策講座の中で、受験生は準備をしながら「X」なるものを身につけるのである。もちろん、6年間の学びの中でそれはさらに豊かになる。特にレゴなどに転換する過程で、「X」なるものをメタ認識するのである。だから、中学当初はいわゆる偏差値はそう高くないが、高校卒業時に大いに化けるのである。

★ともあれ、論より証拠、今年の上記の東大帰国生入試と同じテーマの問題が麻布の社会の中学入試で出題されたし、実は聖学院の難関思考力入試でも出題されたのである。ただ、聖学院の場合は、レゴなどを使い、考える過程を可視化しながら考えていく入試になっているから、意欲のある才能者すべての受験生(もちろん男子校なので男子に限られるが)に開かれた試験なのである。

★IBの高スコアや高偏差値という壁がある東大や麻布の入試とは、そこが大いに違う。この違いが聖学院という学校が有している社会的使命である。すべての生徒が才能者になれるのだと!

 

 

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中学入試における多様な学び方の化学反応を引き起こす「X」なるものの作り方。

★2013年以降の中学入試は、「2科・4科の学び」「新タイプ入試の学び」「おけいこと習い事の学び」「学校選択としてのキャリア教育の学び」など多様な学びを体験しながら受験に挑戦できる。そして、その傾向は年々強くなっている。

★1986年~2012年くらいまでは、中学受験と言うと「2科・4科の受験勉強」のみで、学校選択も、偏差値か大学合格実績を基準に選ぶから、学校選択というより、併願戦略によって必ずどこかは合格するということが目的。

★中学受験によって将来自分がやりたいことを決めて学校選択するという話はほとんどなかった。キャリア教育は、その学校に入学してから考えればよいという時代だった。

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★ところが、多様な学びが必要になってからというもの、多様な学びに応じた才能が重視されるから、自分の才能と適合する学校はどこか、その自分の才能を生かしたキャリア実現の確率が高い学校はどこかという学校選択とキャリア教育が重なり合うようになったわけだ。

★しかしながら、中学入試段階でのキャリア教育は、進路先教育ではなく、自分の才能を開花する学び方を学ぶということがメインになる。

★したがって、その自分の才能を開花する学び方という「X」なるものを明快にしつつ、暗黙知として自動化する学びが重要になる。

★しかし、意外と、それは難しく、現状ではその「X」なるものは、学の中で意識されているわけではないから、家庭教育や就学前の幼稚園での教育などで暗黙知として身につけていれば、多様な学びの中で自分独自の才能を開花できるが、そうでない場合(これが意外に多い)は、多様な学びを体験しても、自分の才能を見出すことができない。

★そこで、「X」を急遽生み出すために「X´」なるものを学び直すことになる。しかし、その「X」や「X´」なるものが何であるのか、実はよくわからない。

★ただ言えることは、麻布の中学入試問題や聖学院、かえつ有明、工学院の思考力入試は「X」なるものが身についていないと思考が回転しないので、これらの問題にチャレンジすることで、「X」や「X´」なるものを生成するきっかけになる。

★そうはいても、その「X」なるものや「X´」なるものが形式知化しているわけではないので、これらの入試問題を体験すれば、体験者は全員「X」なるものや「X´」なるものを身につけられるかどうかは、これまたわからない。ただ、言えることは、これらの問題に挑戦することがおもしろいと感じることができる生徒は、「X」なるものや「X´」なるものと共振共感しているからおもしろいと感じるのであって、今まで自分の中にあった「X」なるものに気づかなったのが、発掘されるという事態にはなる。

★麻布や聖学院、かえつ有明、工学院などを受けるか受けないかにかかわらず、麻布の入試問題、聖学院、かえつ有明、工学院の思考力入試を解いてみるのもよい。

★思考力入試は対策講座を、上記3校は行っているが、いつも定員がすぐに満席になる。「X」や「X´」なるものの響きを感じて学びがおもしろいと興奮する受験生は案外大勢いるということだろう。

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2019年7月 8日 (月)

中学入試を巡る学びの使い方によって、未来への才能を開発するコンピテンシーを生成することができる。

★制度改革は必要であるが、それには時間がかかる。今目の前の状況を変えるには、制度改革以外の方法も活用する必要がある。それはいまここで、自分の意識を変えることと価値の転換をすることで、まずは何とかなる。

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★もちろん、制度改革がなければ、どうしようもないことがある。制度改革の必要性は、たいていの場合、悪法が正義の衣服をまとっていることに気づいたとき起こるから、そのような気づきが起こるクリティカルシンキングとどう変えていくべきかというクリエイティブシンキングが必要になる。

★悪法も論理的に考えるだけでは、悪法を論理的に正当化してしまうから、制度は変わらない。それどころか抑圧は極度に達する。従来の最高学府でも論理的思考までしか学ぶ教育しかなかったから、悪法も法として存在し続けてきたし、今もそうなっている。

★ところが、私立学校というのは、すべてではないが、クリティカル&クリエイティブシンキングを育成するカリキュラムがデザインされているところもあるから、ときどき悪法も法でいいのかと風穴を開けようとする人材がでてくる。

★しかし、それは今までは一握りだった。それが、今、私立中高一貫校の入試に大きな変化が起き、知識と論理的思考のみならず、クリティカル&クリエイティブシンキングもトレーニングする必要性のある新タイプ入試や認知能力のみならず非認知能力も受け入れるようになってきた。それゆえ、おけいこや習い事を通じての「体験」も重視されるようになった。

★多様性も受け入れる英語入試という新タイプ入試も生まれ、複眼思考を受け入れる環境が整ってきた。

★そうはいっても、すべての私立中高一貫校が、上記図のようにすべてを行っているわけではない。したがって、従来は学校選択は偏差値と大学合格実績で選んでいればよかったのが、多様な選択肢が現れたのである。

★これは、学校選択を考えることによって、これからの新しいキャリアの在り方を考える機会が、中学入試において生まれたことを示唆している。

★さて、そのとき大切なことは、多様な学びの機会をバラバラに取り扱うのではなく、それをつなぐ「X」なるものは何なのか?考えることが重要になる。もし、つなげる「X」に思いつかなければ、急遽いまここで形成して「X´」を身につける必要がある。中学入試を経験しないと、この機会をスルーしてしまうから、大学入試直前に「X´」がないことに気づき、大いに苦労する。

★苦労するのであればまだよいのだが、ここでもスルーしてしまう可能性がある。そのとき未来は閉じられる。これが今新しい学びが論られている部分のまだ気づかれていないリスクである。

★新しい学びはたしかに未来を拓くが、もし新しい学びを体験しないと未来は閉じられるのである。新しい学びを否定する学校や教師は、いまここで自分たちの生活を守るだけで、生徒の未来を閉じているのだということに気づいていない。教育もSDGsの1つのゴール項目に入っているが、SDGsにある世界の問題は、近代の時にその原因は生まれたが、それだけを追究していると見逃すことも多い。

★近代の構図が再帰的近代に変化したことの重要性をまだきちんととらえていない教育現場の枠内で、解決しようとしても罠にはまっていくだけだという恐ろしい現実を。

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2019年7月 7日 (日)

品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任

★2020年度から、小野学園女子中学校・高等学校は、共学化し、校名も「品川翔英中学校」・「品川翔英高等学校」(以下「品川翔英」と記す)となる。改革コンセプトは「未知の世界に挑戦する気概を持った未来志向の若者を育む」。

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(上記写真は、同校サイトから)

★そして、今回、この新たに生まれ変わる品川翔英の準備と進化を学内の先生方と共にタッグを組んでいく副校長として柴田哲彦先生が着任した。

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★このような未来志向型の教育改革を牽引する教育者は、今や東京の受験市場では受け入れられているし、もともと柴田先生はこのタイプのリーダーとして認知されている。したがって、東京エリアで仲間も相当多い。20年くらい前からこの方向性で活躍しているから、その当時の仲間は、今ではそれぞれの学校で校長・教頭になり、革新的な教育を生みだしている。

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★創立者・理事長小野安之助先生と初代学校長小野進子先生が創り上げてやがて90周年を迎えようとしている。

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★柴田先生は、改革と言っても、すでに質の高い教育が存在し、教師も生徒も柔らかい人間力を有している学校がゆえに、それに基づいてアップデートするということだと思っていると。なぜアップデートかと言うと、今後テクノロジーの進化が凄まじいわけで、そこで必要な能力資質は、ソフトスキルだと言われているし、私もそうだと思うと。

★つまり、人間関係形成力や想像力、協調性、コミュニケーション能力などのソフトスキルがこれからは重要であるし、さらにサイエンス的な思考力も大切である。実はこれはもともと小野学園が創り上げてきた教育であるから、それをさらに新たなテクノロジーと統合しながら発揮できるようにアップデートすることが重要だと。もっとも、すでにその方向性は先生方が考えていることであるから、自分の役割は、先生方のやろうとしていることをサポートすることだし、こんなに良い教育が行われていることが、まだまだ市場には知られていないから、市場における評判作りをしていくことであると。

★伝統と革新の統合ということだろう。校舎を少し見学させていただいたが、たしかに豊かなキャンパス。訪問したのは土曜の夕刻だったが、高3生が自学自主をしていた。各教室には電子黒板用のプロジェクターが設置されていたので、授業で活用された場合、今までとは違いますかとたずねたら、「先生方は、多様なメディアを映し出して授業を展開してくださるので、幅広い世界がひろがって、おもしろいですよ」と即答。

★品川翔英としてスタートする準備として、wifi環境もかなり充実しているという。確かな学力と豊かなソフトスキルがICTというテクノロジーと相乗効果を生みだす期待が高まった。

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2019年7月 2日 (火)

【2020年首都圏中学入試動向02】豊島岡女子と本郷の良い影響。

★日本経済新聞の記事「中高一貫校、高校の募集停止相次ぐ 豊島岡や本郷など」(2019/6/30 5:00)によると、「東京都内の有力中高一貫校が相次ぎ高校募集を停止する。本郷高校(豊島区)は2020年度入学、豊島岡女子学園(同)は21年度入学を最後に高校入試を取りやめる。都立中高一貫校5校も順次、高校の生徒募集を停止する。高校選びの選択肢が狭まり、中学受験を検討する家庭がさらに増えそうだ」ということだ。

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★両校の高校廃止の理由は、日比谷高校をはじめとする進学指導重点校の勢いがよく、成績優秀者を高校から獲得することができなくなったからとか、都立中高一貫校もすべてが完全中高一貫校になろうとしているため、中学からの成績優秀者の獲得競争にも備える必要がでてきたからとかいうのが、受験業界の常識だろうし、果たしてそうだろう。

★しかしながら、豊島岡女子のここ数年の動きは、桜蔭路線ではなかった。海城や聖光が、麻布のように完全中高一貫体制で、教科のみならず幅広い教養や感性を身につけられるプログラムの開発実施、グローバル教育への視野の拡大を実現していった道を歩み始めているような気がする。

★立教大学河野哲也教授の哲学カフェを行ったり、GAFAレベルの企業と連携してイベントを実施したり、洋書のビブリオバトルを開催したりしている。SSH認定校になったということもある。

★東大・医学部にまずはたくさん合格させ、同時にリベラルアーツの現代化=STEAM×哲学も実施。2つの合力を強烈につくっていく。まさに海城、聖光学院の戦略であり、麻布がモデルになっている可能性が高い。

★本郷と豊島岡女子が高校を廃止することが、中学受験者数を激増させるかと言えば、微増はあるが激増はないだろう。ただし、私立中高一貫校の教育の在り方において、合格実績促進教育と教養拡充教育の合力をつくるダイナミックな質の変化が起こることは確かだろう。

 

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麻布の奥行 首都圏模試センターが取材。

★昨日、麻布の平校長に、首都圏模試センターの北氏(同センター取締役・教育情報部長)と山下氏(同センター取締役社長)がインタビューをした。その内容は9月に公開する予定だという。

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★それにしても、麻布の奥行きは想像以上に深い。大学入試改革や未来予想など、世は喧しいが、そんなことは、1989年のベルリンの壁が崩れたときから予想し、着々と対応を考えてきた節がある。

★しかも、その対応の判断基準は、あくまで江原素六の建学の精神である。だから、英語教育も対話型授業もICTもグローバル教育も全部そのころからブラッシュアップしているし、そもそもリベラルアーツの現代化は、すでに麻布が新教養主義の一環としてつくりあげてきた土曜に行っている教養総合に結実している。

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★探究だとか論文指導も、社会科の論文(あまり世の中に公開されていないかもしれない)や「論集」に象徴されている。

★だから、外部との連携において、相手が新自由主義やポピュリズムの延長上にあるとみなすと、厳しくはねのける。自由で世界に開かれてはいるが、なんでもありありではない。

★麻布学園内の自然状態と一歩外に出た後の契約社会との識別がはっきりしているし、精神の式典に対し、自由と言えども厳かな雰囲気を尊重する自由がある気がする。

★首都圏模試センターの記事が待ち遠しい。

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2019年6月12日 (水)

【未来を創る学校10】和洋九段女子 UPAA(海外協定大学準備制度)に加盟。

★和洋九段女子は、PBL(Problem based Learning)1.0のプロトタイプを学内で共有するシステムにすることによって、高校からは生徒が主体的にに活動するPBL(Project based Learning)2.0に発展した。

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★これによって、キャリアデザインやディプロマポリシーの視野が大きく広がった。国内外の大学でPBL型の探究活動が盛んだところに接続しやすくなったし、生徒自身の意識がそうなったわけだ。

★そこで、最終的には生徒自身が決めることだけれど、海外のエスタブリッシュな高校と同じ土俵を創らなければ、格差を背負たまま生徒に挑戦させることになる。これは、グローバル教育を提唱している同校にとっては、なんとかして解決したい問題であった。

★そこで、システム上同じ土俵にするために、海外大学が連携している大学進学準備教育を実施しているUPAA(University Partnerships for Alternative Admissions)に加盟することになった。

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★UPAAに入ると、4大学までは、一回出願すれば共通して活用されるし、合格発表の時期が異なっていても、高校卒業の3月までは入学するかどうか待ってもらえる。したがって、奨学金などの結果で、合格したがいけない場合、日本の大学に進む機会も保証されているのだ。

★しかも、イギリスアメリカなどの大学進学準備の制度の違いなどのカウンセリングもオンラインでできるし、e-learningでC1英語までトレーニングできる“College Pathway”というシステムも活用できる。

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★すでに日本の大学は100校以上このシステムを活用している実績がある。たとえば、一橋大学、東工大、東北大、名古屋大、筑波大、慶応義塾大、上智大、青山学院大、東京理科大など。

★中込校長は、「UPAAの母体はTOEFLの問題などを作成している団体の1つだというから、頼もしい。それに、UPAAに加盟している大学はThe University of Manchester(マンチェスター大学 / イングランド マンチェスター)をはじめとする世界大学ランキングでもトップ大学も多数加盟しています。しかも、その数は、今後も増えていきますから、大いに期待しているのです」と。

★新井教頭も、「和洋九段女子の教育のエンジンは、中学から高校になるにしたがって、PBLⅠからPBLⅡに成長し、それが海外のエスタブリッシュスクールと同じ土俵でキャリアデザインを生徒自身が練り、羽ばたいていける条件につながりました。手ごたえを非常に感じています」ということである。

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【未来を創る学校09】和洋九段女子 PBLからPBLへ

★今年改革学年が中1~中3まで揃った和洋九段女子であるが、その影響はすでに高校段階にも及び、中学の日常のPBL(Problem besed Learning)授業が、様々なPBL(Project based Learning)を生み出している。

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(写真は新井教頭から)

★昨年の高1から、グローバルな視野をもつには、母国日本の文化の根っこを深く理解し、自分なりの想いを内発的モチベーションとしていくことも重要であると、長野県の芋井地区と飯綱町と農業体験の連携を始めた。実際にやってみて、相当の手ごたえがあったし、地域の方々も、和洋九段女子の生徒の真摯な姿に感動し、体験で終わらすのではなく、本格的にコラボレーションをしようということになった。

★そして、今年の高1は、1泊目は民泊で、2泊目はホテルに宿泊するプロジェクト型学習に進化した。実際に民泊して、農業体験をしたから、地域の人では気づかない観点を発見することができる。それを生かすプロジェクトを創出したということのようだ。

★最終的には、今回受け入れサポートをしてくださった方々にプレゼンしたようだ。豊かな自然やキャンプ場の施設などのPR不足を解消するために、地域の専用サイトのアップデートを提案したチームもあるという。「QRコード」を活用して、もっと誘引率をあげようという企画だったという。クラウドファファンディングを活用して、新たな施設も建てたいという企画も提案されたようだ。

★しかし、商業目的というより、日本の自然、とくに宿泊して、日本の星空の美しさに見入って欲しいという価値を見出したところが、地域住民に感動をよんだようだ。

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★さらに、この民泊農業体験は、地域の農産物をつかった商品開発のアイデアを出して、実際に地域で新商品を制作して販売していくコラボレーションにも発展した。

★このように教室のPBLを飛び出して、実社会とのつながりを生みだし、いわばプロジェクト型インターンシップに発展しているのが和洋九段女子の今の未来型教育である。

★このようなPBL型インターンシップは、多くの企業と連携してSDGsの取り組みにも広がっている。世界中の先進的教育では、このような社会とのつながりのあるPBL、それはオーセンティックな学びと言われているが、このような取り組みが広がっている。和洋九段女子は、世界のエスタブリッシュスクールの先進的な教育や学びと同期していると言えよう。

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