中学入試

2019年9月19日 (木)

2020年からの中学入試(17)公立中高一貫校の「適性検査Ⅰ」の効用。

★東京都の公立中高一貫校の「適性検査Ⅰ」は、課題文が提示され、提示された文章を理解していることを示す問いが2つと課題文の趣意に沿って自分の意見を論ずる論述式問題が出題されます。問いの数は学校によって違いますが、大差はありません。ウム、大差はありません?

Photo_20190919154601

★実は、次の5校の「適性検査Ⅰ」は大差がないどころか、課題文も問いも全く同じ問題です。

小石川中等教育学校
両国高校・附属中学校
武蔵高校・附属中学校
富士高校・附属中学校
大泉高校・附属中学校 

★東京の公立中高一貫校の問題作成は、共同作成問題と独自作成問題の2種類あるのですが、上記の5校は共同作成問題を採用したわけです。

★ということは、最大公約数、生徒の思考のモデルは、この問題タイプだと予想できます。

★つまり、この「適性検査Ⅰ」に学ぶことは、一つの典型的な深い思考レベルを学ぶのに役立つのです。しかも、文章理解のための学び方がわかるし、事実と意見をわけ、意見を推理する方法もわかります。

★というのは、この共同作成問題は、どう考えていくのか丁寧に条件を示して問いかけてくれるので、自分は何をどう考えていけばよいのかわります。基本的に原因と結果、目的と手段という「因果関係」思考スキルを発動するようになっています。しかし、そのスキルをしらなくても、あらかじめ、そこは提示されています。

★また論述も、各段落何を書くのかきめ細かく条件が設定されていますから、論述の書き方を学ぶことができます。

★こうやって、読んで、考えれば、書けるのだという学びの体験ができます。

★したがって、統一合判を受けるにしても、最難関模試を受けるにしても、適性検査型模試を受けるにしても、この小石川をはじめとする5校が採用した共同作成問題である「適性検査Ⅰ」に学んでおくことは役に立ちます。

★また、公立中高一貫校の受検を考えているひとは、共同作成問題というプロトタイプを前もって理解しておけば、各学校の「適性検査Ⅰ」を解いたとき、各学校の特徴が見えてくる可能性があります。特に桜修館は全く違うので、思考の広がりを身に着けるのには最適です。「適性検査Ⅰ」は、共同作成問題と桜修館の問題に学ぶと、受験するしないにかかわらず、思考の大局を学ぶことができます。

★中学受験(受検)の段階で、このような読む力・考える力・書く力を身につけられるとは、ある意味ラッキーです。この手の学びは、スルーしても大人になることができます。もちろん、社会に出てから、いろいろな領域での活躍度に差がついてしまうのは明らかです。

★一方で、日本の教育はそれでよいのでしょうか。若者の読解力を嘆く前に、このような問題に真摯に立ち臨める環境をいかにして整えるのか考えなくてはならないでしょう。

|

2019年9月18日 (水)

2020年からの中学入試(16)学校選択 「探究」「自分事」「安心安全」という言葉を多様する教師が力を持っている学校は要注意!

★言葉というのは、奥行きがあります。同じ言葉を使ってもその意味は受け手によって異なります。それなのに、奥行きの浅い流行り言葉を多様する学校があります。何言ってんだ、本間だってわけのわからない言葉をいっぱいつかっているではないか!と叱られそうです。たしかにそうです。しかし、それは流行り言葉を置き換えてその奥行きへの気づきを喚起しようという意図があります。成功しているかどうかはわかりません。また、おまえのいうことは難しい、易しいことを難しい言葉で説明する奴はバカだといわれます。

★そうかもしれませんが、易しい内容ではないので、そのセオリーはあてはまりませんが、まあいいでしょう。またある人は、難しいことを易しくわかりやすく説明することが大事だといいます。なるほど、そうかもしれません。しかし、それは知のディズニーランドで、本当に大切なことは捨ててしまうのです。ディズニーラーンドははテーマパークですから、何の問題もありません。しかし、そこで語られる童話は、原作にある耳障りの悪いことはすべて捨てられハッピーエンドにデザインされています。

Direct-indirect

★よって、ディズニーランドはアートスペースではありません。デザインスペースです。では、学校や授業はどちらのスペースなのでしょう。アートスペースとデザインスペースの両方があります。商業的な学校は、デザインスペースです。創造的な思考を大切にする学校はアートスペースです。どちらでもない学校が実は多いのですが、それはモラルモードスペースです。麻布はもちろんアートスぺースです。JGもそうですね。

★麻布もJGも、「探究」「自分事」「安心安全」という言葉をむやみに使いません。使うとしたら、吟味したうえでしかたなく使うということはあるでしょう。そのほうが通じやすいのですから。

★しかし、「ハロウィン」や「クリスマス」と同様、今や「探究」「自分事」「安心安全」という言葉はその本質を切り捨てられて使われている場合が多いですね。「ハロウィン」や「クリスマス」がアイルランドやキリスト教に関係する祝祭だとは誰も考えず商品を売るためのサインとして活用していますね。

★今や、「探究」「自分事」「安心安全」も商品を売るためのサインである場合が多いです。それを見破るにはどうしたらよいのか?

★意外と簡単です。これらの3種の神器ともいうべき言葉を頻繁に活用する人は「起業家精神」という言葉が大好きな場合が多いですね。起業家精神を発揮するには、悠長な「探究」はできないはすです。探究そのものを脱構築する必要があるからです。再生産や再構築は起業家精神と反します。「自分事」などという「主観」に閉じこもる時間も実は「起業家精神」にはありません。かといって、「客観的な不動の安心安全」も求めはしないでしょう。そこでは、イノベーションの起こる芽は摘まれてしまうからです。

★ワークショップをやっていてゴールをはっきりさせてくれというインストラクショナルデザインを求められますが、ワークショップはアートですから仮にゴールを設定したとしても、そんなダイレクトな目標は通過点にすぎません。探究とは常に通過点でしょう。

★ゴールは思いもやらないものに変質してくのです。そして、今までの学び方があるいは解決策が通用しないのです。だから、そこでは再生産も再構築も力はありません。脱構築あるのみです。

★そのときはじめてアートが生まれます。STEAM教育とはここのレベルの話でしょう。探究もしかりです。自分事は実は不遜です。問題意識をもつことが自分事ではありません。遠くの悲惨な事件に共感しようというのが自分事でもありません。なぜそれが起きたのか、その根本問題を打ち砕く問題解決をいち速く実行する創造力が自分事として重要です。そんなことは安心安全の場でできるはずがないのです。

★そんなふうに言葉を吟味しないで、学校をデザインスペースとしてあるいは知のディズニーランド化している学校を選ぶと、たいへんなことになります。もちろん、吟味して使っているところは構いません。しかし、これらの言葉を使っているところは、SDGsも大好きです。

★SDGsこそ耳障りなことを無視できないのに、SDGsのディズニーランド化が起こっています。どうなってしまうんでしょう。でも、ディズニーランドは人気のあるテーマパークです。残念ながら、この流れを止めることはできないでしょう。

★であるならば、そこはなるように任せて、その間に、仲間と根源の淵を探し、そこをなんとか解決するチームをつくるしかないでしょうね。そういうチームが存在する学校があります。まだそんなに人気がでていません。人気がないわけでもありません。このことが、そこが本物の学校である証拠です。麻布やJGの併願校として、そのような学校を併願しておくとよいでしょう。

★それはどこでしょう?私が言うまでもなく、アンテナの高い方はおわかりでしょう。

|

2019年9月17日 (火)

2020年からの中学入試(15)この時期だから「読解力」を統一合判でアップデートしよう!

★子供たちの「読解力」が不足しているという幻想が世に出回っています。きちんと「読解力」を身に着ける学びの体験をしてもいないのに、そういわれる子供たちは、なんだかふんだりけったりですね。そうはいっても、次のような問題をうまく解けない子供がいるのも事実ですから、どうしたらこの手の読解ができるようになるか考えてみましょう。今年の9月の小学校6年の「統一合判」国語の2番の問7の記述式問題です。

<線⑤「たとえばあなたが雪の積もった原野を旅していて、その雪面に対してなんらかの表現をこころみようとした時、どんな言葉が出てくるでしょうか。思いつくところで『白い』『冷たそう』『かたそう』『まぶしい』といったところではないでしょうか」とありますが、このような言葉しか思いつかないのはなぜですか。本文中の「イヌイット」という言葉を用いて四十字以上六十字以内で答えなさい。>

★首都圏模試センターのサイトの記事<9/8第3回小6統一合判『偏差値5上げる!この1問』>で取り上げられていた問題です。同センターによると、この問題の正答率が 37.3%、無答率が 32.6%、誤答率は 16%でした。おもしろいのは、<減点された多くの受験生は「イヌイットは、雪質や気温や風によって微妙に変わる雪原の見え方や区別がつくので、言葉が生まれるから」と、イヌイット側からの立場 で答えを記述していました>ということのようです。

Photo_20190917191201

★この箇所は、文章の中に書かれてありますが、問いは私たちはそうではないのはなぜかですから、この箇所と比較して理由を推理する必要があったのですね。

★思考コードB2レベルの問いで、思考スキルは「比較」「理由」「推理」とちょっと複雑です。ですが、「推理」するための思考スキルの「理由」の書かれている場所を見つけるだけでも部分点がもらえるのであるから、無答はもったいないという指摘がされていました。

★その通りです。しかし、得点技術としてこの問題を取り扱うだけではもったいないですね。文章を読む際に、文章のどこに何が書いてあるのか探すことが読解力かというと、実はそうではないのです。

★文章から、自分はどう推理するのか、そしてその推理をサポートするエビデンス(証拠)はどこにあるのかという読み方を授業でトレーニングすることが要ですね。自分の主観をなくして、文章に書いてある事実だけをしっかり探しなさいでは、読む意欲がわきません。この姿勢では、筑駒の詩の問題は思考できませんね。

★自分だったら、どう考えるかのかをまず対話によって語り合い、それは文章のどこにエビデンスがあるのか、そして何より「ないものがあるかも?」というクリティカルシンキングを動員するのです。

Photo_20190917191202

★この文章では、雪面に関してはイヌイットの方がわたしたちよりも、表現は豊かですが、わたしたちだって、ぶりなどの出世魚に関してはその成長に合わせて多様な表現を有しています。そんな事例をあげながら、対話していけば、おのずと、この文章の話は、あくまで一つのケースであり、表現と文化と経験と言葉の関係辺りを一般化あるいは統合ができます。こうなると、思考コードはC3の次元に突入します。思考スキルは「置換・転換」を活用します。

★こういう事例の分析から一般化へジャンプするアイデアを語り合うのは、一度土曜日の教養総合で麻布の生徒とワークショップをやったことがありますが、麻布生は、こういう創造的思考の瞬発力は本当にあるなと感じ入りました。

★中学入試で、麻布の問題はこういうトレーニングを要するものを多数出題しているので、当然そうなるのでしょうが、毎回統一合判で出題される問題にもこの手の問題があるので、解法を理解するというより、推理とそのサポート文章を見つけるトレーニングをするという感覚で取り組んでみてはいかがでしょうか。

★そうそう、この問いは、記述式問題であるだけではなく「思考型問題」でもあります。「新入試」にもつながる発想がここにはあります。ただ、「新入試」は、先述したように「C3」にジャンプするのですが。

 

|

2020年からの中学入試(14)八雲学園 学内で、RS(Round Square)を通して、世界から学ぶダイナミズムが生まれているわけ

★前回、八雲学園の学内で中学からRS(Round Square)の意義を受け入れている大きな流れができあがっていることを紹介しました。その浸透力には、同学園理事長・学校長の近藤彰郎先生の英断が強く影響しているわけですが、それだけでは、こんなに速く浸透しません。

Dsc07277

Dsc07263  

★IB(国際バカロレア)もそうですが、このように外部機関と連携するには、大胆な外交官であり、優れたコーディネーターであり、繊細なファシリテーターといったマルチロールプレイヤーであるキーパーソンが学内側に存在していることが必須です。

★八雲学園は、英語科主任の近藤隆平先生が、まさにその役割を果たしています。米国の大学を卒業していて、活動拠点はサンタバーバラ―といっても過言ではないほど、米国と日本をいったりきたりしています。

★9カ月留学も、学園の外国人教師とUCサンタバーバラの外国人教師とをつなぎ、協働しながらプログラムをデザインし運営しています。このプログラムを土台にRSの活動が始まっていますから、RSのコーディネートも近藤隆平先生が世界を飛び回りながら行っています。

2019年6月23日(日) 順天学園で、第1回「未来を創る学校フォーラム」(主催 21世紀型教育機構)が開催されました。そのときのキーノートスピカ―として近藤隆平先生は登壇され、「Round Squareと共に未来を創る」と題して講演されました。手続き的な話や技術的な話もされましたが、何よりRSの理念を共有浸透するための「Baraza」の話は圧巻でした。

★これは、スワヒリ語で"集会・会議"を意味します。八雲学園が加盟するラウンドスクエアの国際会議で必ず行われるBarazaのプログラムでは、世界情勢や文化の違いなど、幅広い話題についての意見交換をするわけです。そして、この「Baraza」という<対話>を八雲学園に生徒自身が広める委員会を作ったというのですから驚きです。それは学内で広まるはずです。

Dsc07289

★そして、感動したのは、近藤隆平先生は、最後にもう一度RS創設者クルト・ハーンの次の言葉を共有して講演を締めくくったことです。

I regard it as the foremost task of education to insure the survival of these qualities: an enterprising curiosity, an undefeatable spirit, tenacity in pursuit, readiness for sensible self denial, and above all, compassion.

私は、次のような能力の資がいつまでも続く保証をすることを教育の最重要な仕事だと考えています。進取の気性、打ち負かされないスプリット、追究への粘り強さ、賢明な自己否定の準備、そして何よりも思いやり。

★この精神性は、八雲学園の建学の精神そのものです。世界の優れた私立学校が加盟しているという意義は、このような豊かで賢く高邁な勇気ある精神を共有しているということだったのです。

|

2020年からの中学入試(13)八雲学園 教育の総合力さらなる発展

★昨日16日(月)、八雲学園は学校説明会を開催しました。説明会の内容は、根本は変わらないものの昨年までとは大きく違っていました。根本が変わらないというのは、「グローバル教育」「チュータ制度」「文化体験」「進路指導」が充実していて、それらを「ウェルカムの精神やマインドフルネスな世界を深堀する精神性」でつながっている教育の総合力がしっかりと生徒の学びの基盤になっているということです。

Dsc01168

★そして違ったところは、特に「グローバル教育」がついに行くところまで行ったという発展ぶりが中心に説明されていたところです。IB(国際バカロレア)の創設の中心メンバーの1人クルト・ハーンが、IBを創る前に、世界の私立学校のコミュニティをつくりました。今では、世界50カ国180校の私立学校が加盟しています。それがRS(Round Square)です。イートンカレッジのようなパブリックスクール(エスタブリッシュなプライベートスクール)どうしの相乗効果を生みだし、世界がより善き社会に向かうように、自らの世界を広げていくリーダーを輩出することを目指しています。

★このRSについて、今までは、一握りの教師と生徒が語ってきたのですが、今回の説明会では、イングリッシュパフォーマンスで、中1~中3までの生徒が英語で説明していました。これは画期的なことです。RSは、9カ月留学で、CEFR基準でB2(英検準1級相当)やC1(英検1級相当)に到達した生徒が中心になって進めてきたのですが、今では学校全体がかかわれるようになったのです。それに、B2までは、全員が歩を進めるというのもすごいパワーですね。

★もちろん、あこがれのRSの国際会議に参加できるのは、英語力とエッセイ力と議論できる力とプレゼン力と自らが世界のために何ができるかというマインド全体の総合力が身についている先輩が選ばれるわけです。

Dsc01177

★しかしながら、それは今や学内では憧れになり、自分も行けるようにがんばろうとする後輩も多数出てきました。切磋琢磨が生まれています。今回も10月にインドで開かれる国際会議に参加する高2の生徒がなぜ自分はそうなったのかを英語でスピーチしていました。

Dsc01190

★そうはいっても、その参加メンバーに選ばれるかどうかだけだと、やはりモチベーションは持続できません。そこがRSの理念の1つ民主主義的なところです。RSの加盟校同士は、無条件で交換留学ができるのです。2週間から1カ月、人によっては違いますが、毎月のように世界から留学生がやってきます。

★今回も中1の男子の家族のところにホームステイしながら、八雲学園にやってきた加盟校の男子生徒が、八雲生といっしょに、日本文化を学んでいるスピーチをしました。八雲生は通訳兼ホスト役を演じていました。交換留学ですから、今度は、その中1生が行きたいと意志を示せば、その生徒の学校に留学できるのです。昨年も多くの生徒がこの制度を活用したということです。

★とにかく留学生が頻繁にやってくるので、ホストファミリーの生徒のみならず、学内全体でもてなします。したがって、八雲では「文化体験」が充実しているわけですね。日本文化について知らなければ、ウェルカムの精神は表面的になってしまいます。そして、RSの加盟国はそのたいていが共学校です。八雲学園が共学校になる必然性は、実はRSとの出遭いにあったのかもしれません。

Dsc01214

★八雲学園の理事長・校長の近藤先生も、RSとの交流で、どんなリーダーシップを発揮っしてもらいたいかというリーダー像にも触れていました。男子はナイト(Knight)のようになってほしい。そして女子はナイトを支えるので終わるのではなく、自らも女性のナイト、デイム(Dame)になってもらいたいと語りました。

★近藤先生ご自身空手7段の武道家で、2020東京オリンピック種目に空手を採用されるように働きかけたほどです。武士道というのがありますが、新渡戸稲造もさすがに当時は男子をイメージして世に著わしました。

★グローバルな時代にあって、その倫理の道は、男子も女子もということなのでしょう。

★もう一つ重要なサインがあったのですが、それは未来の八雲の学内組織の話なので、受験生のみなさんには直接関係ないのでここでは控えておきましょう。

★とにかく普段の授業を見学してください。英語が飛び交い、豊かなプレゼンテーションをベースにするPBL授業が展開し、1人1台ICTが活用されている光景は、実に新鮮です。しかし、説明会では、それについてはあまり広報がありませんでした。もはやそのような学びの環境は八雲学園にとっては、格別なことではないからです。RSの加盟校なら、どこでもふだんから行っていることです。

|

2019年9月15日 (日)

2020年からの中学入試(12)なぜ三田国際は人気の出る完璧な先進校になれたのか?鬼才田中潤先生の存在の重さ。

★先日14日(土)、三田国際は説明会とオープンスクールを開催しました。すでにご紹介した通り、大入り満員で、体験授業は大盛り上がり。その様子は同校サイトではやくも公開されています

Dsc01781_20190915210301

★このような先進的でかつ明らかに有効な教育を体験すれば、受験生は、ここで学びたいと思うのは必然だし、保護者は、ここで学ばせたいと未来で活躍しているわが子の姿に期待するでしょう。

★そして、何より昨年から新しい学校ができていますが、三田国際に学べといろいろなアプローチをして、その教育内容や広報戦略を研究しています。そんな学校が今までもたくさんありましたし、これからもたくさん出てくるでしょう。それは、アスリートがゴールドメダルを獲った瞬間から、いっせいに一流アスリートから研究されるのと同じで、当然の流れですね。

★しかし、どんなに研究し尽くしても、なかなか巧く行かない決定的な理由があります。それは本当のカリキュラムマネージャーがいないということです。本当のカリキュラムマネージャーとは、自分の教科以外の内容について造詣が深く、教科横断型を深い思考領域のレベルで話せる教師の事をいいます。

Dsc01680

(中1の生徒と、メッシュマップというデータマップで、日本の地形を推理する学びを行ってしまう田中潤先生。今年の東大の地理でも出題された手法です。)

★たいていのカリキュラムマネージャーは、自分の教科については深く話せますが、他の教科については、調整して教科の代表に話を振ります。したがって、テーマを共有する程度の教科横断型授業を展開はできますが、思考領域での展開はできません。よって、表面的な教科横断型のアイデアはでますが、それはたんに教師も生徒も忙しくなるだけで、力をためることができません。上滑りしてやらないほうがましという結果になりがちです。

★ですから、そのようなカリキュラムマネージャーのリーダーシップは人間関係調整型で、学際的なリーダーシップを発揮することができません。そもそも学際的なリーダーシップとは創発型リーダーシップですから、創造力と戦略的実効性があります。そういうリーダーを鬼才と私は呼んでいます。

★その意味で、三田国際の教頭田中潤先生は鬼才のモデルですね。ほとんどの学校に存在しないし、三田国際にも田中潤先生をおいて他にいないでしょう。よって、どんなに三田国際を研究しても、同じように人気のでる先進的な学校はなかなか生まれてきません。

★では、どうするか?学習する組織を人工的に戦略的に創るアルケミスト(錬金術師)型リーダーが必要ですね。自身は鬼才ではないけれど、化学反応が起きるような学びの組織化を巧むリーダーです。これは単純に人間関係を調整し、事が起こらⅡように単純再生産型組織を維持する調整型リーダーとはまったく性格を異にします。

Dsc00582

(源氏物語が世界最古のベストセラーである理由は、あはれをルールブレイクと置き換えるとわかるとミメーシスやミミクリー的な発想で切り込む視点を田中潤先生は持っています。そして、これこそ「まだ見ぬ教育」のエッセンスであると見抜いてしまっているところが鬼才たるゆえんです。)

★これはなかなか難しいですが、工学院に教務主任の田中歩先生とカリキュラムマネージャーの岡部先生という2人が協力した時、それが起こります。心理学とエスノメソドロジー的社会学のアプローチの融合です。これは、田中潤先生の野生の思考である文化人類的アプローチと同じくらいパワフルです。

★ただし、二人が単純に協力するだけではダメなのです。二人で一人のアルケミストが生まれるメタリーダーシップを発揮する時、その力は絶大です。

★そのとき鬼才田中潤先生が、ミミクリーに登場します。Z世代の進化ぶりの勢いが止まらない工学院が、ブレイクするのは、この両先生がアルケミスト型リーダーシップを生み出せるかですね。

★田中潤先生は、リアルに鬼才ですが、このような先生が他に何人もいるはずはないのです。ミミクリー鬼才が生まれるアルケミスト型リーダーシップをどう構成主義的に生み出すかということがポイントです。工学院はたまたまその例ですが、静岡聖光学院のように、教職員一丸となって鬼才を生みだそうというマインドセットをしている星野校長のようなリーダーシップもあります。

★田中潤先生の鬼才性に気づいた学校は、これから伸びるでしょう。

|

2020年からの中学入試(11)生徒1人ひとりのための破格の思考型問題のモデル~聖学院 偏差値主義の悪の帝国に挑む

★これまで、2つの記事「2020年からの中学入試(08)4科入試の思考型問題のモデル~海城の社会 」と「2020年からの中学入試(09)4科入試の思考型問題のモデル~麻布の場合」で、4科入試で出題される骨太の思考型問題のモデルを考えてきました。「2科4科入試」で思考型問題が増えることは、とても良いことですが、海城や麻布のような思考型問題を「2科4科入試」で出題しているかどうかは、実はまだまだ疑問だということを提示しました。

Photo_20190915104301

(聖学院のレゴキング大会のシーン。聖学院は、イベントのみならず、学内の授業でも活用されています。写真は同校サイトから。)

★考えることと書くこと話すことは、連動していますが、大学生くらいまでは、考えることと書くことと話すことは一体化されていないのが現状です。どんな生徒も考えることはできます。しかし、それを書いたり、話したりできるかというとまだまだ別のようです。しかも、今ままでの教育では、これらは、別々に行われてきましたし、特に話すことのトレーニングはなされてきませんでした。

★だから、偏差値エリートは文書主義的な論理的思考を発揮するのは得意でしたが、プレゼンテーションとなると意外やだめな人も多いですね。しかも論理的思考に特化してトレーニングを受けていますから、前提の視座を自分で構築する思考という最も重要な倫理的思考が抜け落ちています。だから、悪法も法なりという恐ろしい事件が毎日のように報道されています。

★「2科4科入試」でそこまできちんとすべての生徒の将来を見据えて「思考型問題」を開発しているところは、麻布や海城を除いて、ほとんどないというのが本当のところなのです。だから、「2科4科入試」で思考型問題が増えてきたから、偏差値で測れない「謎の入試」である「新入試」はやる必要がないというのは、子供の学習権から見てもおかしいのです。そんなことを言い続けていたら、チコ ちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られますね。

★その点、聖学院の「思考力入試」は、「思考力」と「書く力」と「表現する力」を、思考力入試に取り組んでいるうちに生徒が一体化できるようにプログラムされています。もちろん、入試なので時間制限があり、3つがバラバラで終わる生徒もいます。しかし、「書く力」が圧倒的だとか「表現力」が圧倒的だとかいう生徒がいます。その場合は、採点する先生方は悩みながら話し合います。ルーブリックでつけるので、どの項目もバランスがよいのか、限定的に際立っているのかは、合否を判断するときに大いに悩むでしょう。それが「謎の入試」と言われるゆえんでしょうが、生徒1人ひとりの可能性を見極める作業を徹底するのが、本来の私立学校の試験ではないでしょうか。

★それでは、あの海城の社会の問題(ココをクリックするとその問題を見られます)をどうやって出題すると、偏差値に関係なく、思考力があるのかどうかわかるというのでしょう。

★社会における問いは、本来「社会のダイナミズムやメカニズム」を考えることに目的があります。もちろん、イギリスをはじめ欧米のように地理学は世界戦略のためにその知恵を活用するというのが隠れた大きな目的ですが。

★海城の問題は、時の権力者の社会的心理構造を実は問う問題です。麻布だったら、それが平安後期の特殊な問題ではなく、歴史を通じて、似たようなことが起こることに気づかせる問題を矢継ぎ早に出題していくでしょう。この手の権力的な問題を好んで出すことはしない武蔵でも、問いのラインナップは、麻布に似ています。

★しかしながら、「末法思想」と「浄土教」についての知識を少し深く記憶していると海城の問題はできてしまいます。得点はとれるでしょうが、「社会のダイナミズムやメカニズム」を知ろうとしなくてもできてしまうというパラドクスがここにはあります。

★だから、麻布は、その垢おとしをするために、似たような構造の歴史的事件を分析させていくのです。しかしながら、結局はどれも知識限定的な力が働き、「社会のダイナミズムやメカニズム」が前面にでにくいのは否めません。それゆえ、最後の問題は、身近な自分の出来事に引き付けて考えさせるのでしょうが、それがなければ、やはり「知識」で解けてしまうという誤解を招きます。

★しかし、いずれにしても「思考力」と「書く力」をみることはできぞうです。話す力や制作能力が一体化しているかはみることができません。もっとも、麻布の問題が得意な生徒は、入試でそこを直接問わなくても、一体化している確率が高いのは経験上そうでしょう。そこは、麻布の建学の精神に憧れてチャレンジするわけですから。

★しかし、すべての受験生が、思考力があれば、書けるのかとか表現力があるのかといえば、そうとは限らないとみなさんお思いでしょう。しかしながら、それはトレーニングされていないからというのが実情です。なぜなら、知識を暗記することと与えられた素材を理解するトレーニングにのみ特化されているのが偏差値60未満の生徒です。偏差値階層構造の根源的な問題は、塾と学校が、偏差値を間違って使ってきたことによる学びの偏差値階層別固定化問題なのです。

★それをぶち壊したのが聖学院です。海城のような問題を聖学院なら、フィクションの物語に転換してまずは出題するでしょう。権力者たちが絶対的な精神的力をもった僧院に足しげく通うようになった物語を語り、その僧院はお金持ちにしか門を開かなかったこや、当時の天変地異のデータ、民衆の暮らしぶりの資料、民衆を襲う竜の話などするでしょう。

★そのうえで、実はこれは22世紀の話なのだ、すべてはメタファーだから、自由に物語を自分で変えて、レゴでその世界を創ってみてごらんと。そして、自分で創った世界をプレゼンする時間も設けます。そんなトレーニングをしたわけではないのに、鼻を膨らませて話します。まるでスターウォーズのような世界をとうとうと語ります。

★そして、話した後に、文章にも転換するのです。レゴで表現し、スピーチという表現をして、文章で表現するのです。この3者の中には、さんざん思考した痕跡があるのです。「思考力」と「書く力」と「表現力」が一体化される<新しい学びの経験>を思考力入試でするのです。

★もちろん、問いはこれだけでは終わりません。麻布同様で、自分ならどうやってその世界を救うのかという問いを投げかけるでしょう。レゴでそれを表現し、プレゼンし、書くのです。

★どんな生徒も、自分事として取り組めば、思考力は動き出すし、表現力も書く力も発揮できます。その環境を設定していないのに、偏差値60未満は思考力より、知識と理解力だと固定化されてきたのです。

★聖学院は思考力入試ばかりではなく、今までの2科4科入試も行っています。突然考えよと言われてもその用意ができていない生徒も、自分がやってきた力で入学してもらい、思考力入試と同じようなオリエンテーション、LHR、授業がありますから、そこで才能を開花する場があるわけです。

★「2科4科入試」で、海城や麻布のような骨太の思考型問題を出題していない学校は、残念ながら学校のカリキュラムは、その入試の延長上にあります。その延長上にさらに大学入試における「一般入試」があります。そして、その延長上に今までだったら大学卒業後の世界があるはずですが、2030年からはそこの門は閉じてしまいます。倫理的思考力・批判的思考力・創造的思考力がない人材は、ホワイトな企業はもはや採用しなくなります。研究者の道も当然閉ざされます。アーティストもありえませんね。

★世界はもうとっくにそうなっています。それが新しい経済格差の問題です。倫理的思考力・批判的思考力・創造的思考力がサーキュレーション・エコノミーを生みだします。この世界を共に創っていこうとするクリエイティブなグローバル市民になるかならないか。それは自己責任もありますが、子供たちの未来を見据える大人の責任でもあります。

★「謎の入試」とレッテル貼りをし、子供たちの未来のゲートをつぶす悪の帝国との闘いが、2020年の大学入試改革から始まります。海城や麻布のような学校が、偏差値にかかわりなく、存在する私立中高一貫校の世界の新しい展開が生まれるのです。

|

2019年9月12日 (木)

2020年からの中学入試(10)三田国際が今年も人気のわけ

★9月14日(土)、三田国際学園はオープンスクールを開催します。いつにも増して申し込みはいっぱいになり、午後の説明会を増設しました。残念ながら午後の部では、体験授業は実施されないということです。

Dsc01745

★体験授業のプログラムの紹介を眺めると、あまりにもおもしろいものばかりが並んでいます。たとえば、英語で社会を学ぶプログラムの内容はこう紹介されています。

You must form a new civilization on an island, but your resources are limited. How will you use your limited resources? What do you gain (or lose) from using resources in a particular way? Students will examine the economic concepts of opportunity cost and utility.

★日本語のガイドはないので、そのつもりで申し込んでくださいというなかなかのクラスです。私の方は、グーグル翻訳で、上記の英語を理解しました。こう翻訳されました。「島で新しい文明を形成する必要がありますが、リソースは限られています。 限られたリソースをどのように使用しますか? 特定の方法でリソースを使用することで得られる(または失う)ものは何ですか? 学生は機会費用と効用の経済的概念を調べます。 」

★まさしく、大学で学ぶ「ロビンソンクルソーの経済学」ですね。三田国際の人気は、教科書を超えて、中学生から学問を学べる学びを形成しています。

★デューイ、ブルーナーの流れを汲む進歩主義教育が先鋭化したものです。学問の最前線を生徒も学べるような授業にするのが、進歩主義的教育の面目躍如なのですが、この教育は、日本の教育では、1971年から1979年まで行われそうになったのですが、その後徐々にゆとり養育にとってかわられます。

★三田国際は、日本の国力を増大させたあの幻の現代化カリキュラムを麻布以上に徹底して実施しています。この三田国際の新しい学びの経験こそ、AI社会にシフトする2040年に、すばらしい人材を輩出するシステムなのです。そのことに気づいている進取の気性に富んだ保護者が、そのような学びの経験をといっせいに申し込んだのです。

★2020年中学入試も三田国際は難化するでしょう。そして御三家クラスの学校との併願もますます増えることになるでしょう。

|

2020年からの中学入試(09)4科入試の思考型問題のモデル~麻布の場合

★4科入試で思考型問題が増えてきたという傾向がでてきたと言われています。これは時代の要請から考えればよい傾向です。しかしながら、その質を問わなければ、記述でも記憶の問題だったりすというのは、前回述べました。という意味では、海城学園のような骨太の思考型問題を出題するところは実はまだまだ限定的かもしれません。

Dsc08048

★一方で、麻布の問題は、海城学園以上に深い思考型問題を投げかけてきます。もしも、海城学園と同じ末法思想と浄土教の関係を扱うとしたら、麻布の場合は、海城学園と同じような問題も出題はしますが、さらに平安後期の末法思想の時代に限らず、病や天変地異が同じように発生したり、時代としては行き詰まっている他の時代をいくつか素材文章の中に記述して、時代の変化と不安や恐れが生まれるメカニズムを考える問いを投げかけてくるでしょう。

★末法思想や終末思想、デストピア思想は、長大な歴史の中で何度となく出現します。そして、おそらくその変わり目のときには、それぞれの時代の都市生活がピークを過ぎている共通点がありますから、都市を多角的に考える問いを幾つか出して、社会の変化が生まれるメカニズムを広い視野で考えていく問いが配置されると思います。

★そのうえで、毎年必ず、現代の問題に到達します。たとえば、いろいろな国で起こっているデモや抗議運動など、共通のメカニズムや時代の違いを考える問いを出題したうえで、今日本で不安や恐れが原因で発生しそうな動きを予想させ、その不安を払しょくするために人々はどう動くのかまで推理させるでしょう。そして、君ならそのような情況をどのように解決しようとするのか最終問題で問うてくるでしょう。

★システム思考と言えばそうなのでしょうが、とにかく歴史や社会の変化のメカニズムやその構造を考える視座を広げる問いを設定し、現代の問題をどのように生徒が引き受けていくのか問いかけるのです。知識の問題ももちろん、出題されますが、そのような流れを大きく捉えるための問題ですから、教科書にある程度の基本的な知識です。

★このような問題は、適性検査では出題されません。適性検査型問題は、一つのテーマで作問することはないからです。

★すべての学校が、麻布のような問題を出題することはできないでしょう。何せ、麻布の問題は、2月1日1回だけで、問題を練りにい練って作成できますし、合格発表も2月3日と採点に十分時間をかけられます。

★ですから、即日合格発表を出す学校が多い中、2科4科入試で骨太の思考型問題を出題するというのは、実は無理なのです。記述の形式の問題は出題することはできます。しかし、それはキーワードがあるかないかで、減点していく採点しやすい問いです。

★それでは、この状況は麻布や海城のような学校に限られた話なのでしょうか。いいえ、それでは、受験生の才能を見出す機会が設定できません。そこで、出題したいでも時間的に難しいというジレンマを乗り越えるために創意工夫して開発されたのが、聖学院、かえつ有明、工学院のような思考力入試だったのです。

★これによって、偏差値にかかわらず、思考力を発揮するチャンスが生まれたのです。これは、偏差値階層は不動だという幻想を崩すきっかけになりました。中学入試の<新しい学びの経験>が加わることによって、このマーケットにも新しい息吹が広まりました。

|

2019年9月11日 (水)

2020年からの中学入試(08)4科入試の思考型問題のモデル~海城の社会

★適性検査型入試、思考力入試、自己アピール入試、算数一科入試、得意選択入試という<新入試>の根底には、知識優先ではなく思考優先の問題を出題し、従来型の優秀生とはまた違う才能をもった生徒を見出したいという考えがあります。

Photo_20190911071201

2_20190911071201

★そういう流れの中、いやそんな「謎の入試」をやるまでもなく、4科入試の中で「思考型問題」を出題できるという考え方もあります。いずれにしても、既存の知識の定着だけではなく、考える過程を重視する問題が出題されることは、未知なる事象や現象が多くなる時代にあって大切です。2024年以降の本格的な大学入試改革にも有効でしょう。

★しかし、それなのに、「2科4科」でいいんんだというこだわりはなんでしょう。そのこだわりには、「2科4科」は偏差値で測れるからよいというものです。ところが、そういう論者は<新入試>は偏差値で測れないから「謎の入試」だと否定的ですね。

★4科入試であっても、「思考型問題」は記述式になりますから、実は選択肢問題に比べて採点許容があり、そう簡単ではありません。

★たとえば、今年の海城の社会の入試問題の120字の論述問題などは、4科入試の思考型問題のモデルといえますが、やはり、採点はそう簡単ではなさそうです。この大変さは<新入試>でも同じ程度です。

★採点許容というのは、実はルーブリックと同じ考え方のものですから、偏差値で測れる測れないというのは、形式だけ見て判断されている可能性があります。海城の思考型問題も、適性検査型入試や思考力入試などの<新入試>の思考型の問題も、思考過程をみていくわけですから、採点許容とかルーブリックという内的な評価がされています。

★思考過程をみるというより、思考の構成要素をみるといった方がよいかもしれません。その構成要素の組み立て方が論理的構造になっているかもみるでしょう。

★さて、ここまできて、もう一度上記の海城の問題をみてください。この問題は、平安後期の上皇らの言動を情緒的側面からと社会現象の変化からの両側面から考えることと、情緒的側面と社会現象の変化の関係について考える問題です。さらに、記憶をひもとくというよりは、資料を読み解くリサーチ力も活用できているかどうかもみる問題です。リサーチというアクティビティと関係を考えるコンセプトマップなどを活用するアクティビティがふだん授業などで体験されてきたかもみることができます。つまり新しい学びの構えができているかどうかも見ることができます。上質の問いというほかありません。

★とはいえ、この問題は社会の問題ですから、記述の文章の中に、「末法思想」とか「浄土教」というキーワードが書き込まれなければ、そこは減点でしょう。しかし、この時代を表す知識を一般化することで、社会変化と人々の生活の変化と時代心理の関係の歴史的構造を見抜いた生徒がいたとしたら、どう採点するのでしょう。ここは、海城の場合どう判断するのかわかりません。少なくともこの問題に限れば、知識も必鶯ということははっきりしています。

★実は、この時代を超えた構造に着目して出題するのが麻布や聖学院の思考力入試です。これについてはまた考えるとして、ここで一つ注意をしておくことを述べておきます。

★4科入試でも思考型問題を出題するようになってきたと言われたとき、ただ記述式問題であっては、必ずしも思考型問題でない場合があります。たとえば、上記の海城学園の問題と同じ場所から問題を出している学校があるとします。

★そして、その学校が「末法思想」について50字以内で書きなさいとか、「浄土教」について50字以内で説明しなさいなどという記述式問題を出したとします。これは果たして「思考型問題」でしょうか?

★論理的に書かなければなりませんから、そういう意味では思考していますが、許容はそう難しくありません。なぜでしょう。これは知識問題で、憶えたことを記述という形式に転記するだけの問題です。思考コードで言ったら、A2ぐらの問題です。

★海城の場合は、「末法思想」とは何かや「浄土教」とは何かを記憶しておかなくても、資料から推理できますから、明快に思考型問題です。

★実は、記述形式でも簡単に採点できるようにするには、このA2レベルで、形式を記述式にするという操作ができるわけです。このように思考コード分析をしていくと海城の場合はB2ですから、同じ記述式でも思考の深さの差異がわかるのです。

★この観点から言えば、4科入試で思考型問題を出題しているところは、まだまだ限定的なのです。

|

より以前の記事一覧