創造的才能

2025年5月17日 (土)

私立学校充足率V字回復5パターン❹充足率パターンBとA 成功方程式をきちんと実施すれば意外と簡単

★充足率V字回復の5つのパターンのうち、BとAは、成功方程式をきちんと実施すれば意外と簡単に速やかにV字回復します。もちろん、これも2011年以降の時代の精神の要請するところであるからですが。BとかAは、まずなぜここまで充足率が落ち込んだかということを謙虚に洞察することが大切です。それは、変える能力がないからではなく、定年するまで、潰れることはないから変えたくないという自己保身と抑圧主義があったからです。管理職にそのような人材配置がなされていたというのがわかりやすい結論です。

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★そのような管理職は、声高に時代の変化を語ります。しかし、その言説はメディアが言っているような内容で、その変化が自分の学校にどう影響を与えているのか現場を見ているわけではありません。ですから、痒いところに手が届かないし、説教だけして、教師や生徒と共に動くことをしないのですね。ですから、こうなったのは、私は一生懸命やっているけれど、教員が動かない、入ってくる生徒の偏差値が低い、いろいろな会議で忙しい・・・とか言って逃げて、定年まで時間稼ぎをしているというケースがかつてはあるあるだったのです。

★それに気づいて、なんとかV字回復したいと理事会が意思決定し、校長をはじめとする管理職をニューパワーにガラリと変えて、ビッグビジョンを掲げて成功方程式を緻密にやっていくことを宣言するわけです。

★その成功方程式は、三種の神器と(私が勝手に)呼んでいる学びの環境デザインを教師全てが徹底するわけです。説明会でもその姿をアピールするわけです。細かい改革の話をしても、受験生は魅力を感じません。大学合格実績を上げると言っても、今ままで出ていないのですから、そこには期待値は高まりません。

★脱偏差値を提唱し、どんな生徒も自分の才能を開花し、進みたい道を選択して自分物語を描けることを、新しい体制と教師が語り、授業体験という世界に引き込み、夢と希望と勇気を共有する説明会を繰り返していきます。技術的にはいろいろありますが、、説明会のリピーターは多く、足を運ぶたびに参加人数が増えている雰囲気を生み出します。

★すると、生徒募集で急激に受験生が増えます。すると教師の数が必要です。今まで充足率が20%前後ですから、新しい教師を入れると、おのずとニューパワー勢力が多くなります。従来からいる教師は、新しく自分を変えるか辞めるかですから、パターンAは、全員がニューパワーになります。この三種の神器の学びのデザインを全教員がやれば、大学実績も飛躍的に出るのは今では実証済みです。

★ですから、充足率が20%前後の学校は、その成功方程式を実施してきた人物を雇い、同じように速やかにV字回復していきます。

★パターンBは、そこまでニューパワーの教師を入れ換えられませんが、50%はそうなりますから、同じようにV字回復をします。ただ、成功方程式は、学内で対話型組織で自前でできるので、学内の雰囲気は穏やかです。人気がじわじわでてきます。パターンAと違うのは、対話型組織が大前提です。

★パターンAは、ギラギラしている雰囲気はやむを得ません。全員が3種の神器を同じクオリティで行うには研修が必要で、その研修は教育研修というよりは、ビジネス研修です。競争主義的だし、マーケティングもしっかりしています。したがって、脱偏差値は最初だけで、偏差値を上げることが裏カリキュラムになります。必ずしも対話型組織である必要はありません。効率のよいピラミッド型組織と言った方がよいかもしれません。民主主義国家が権威主義国家に押される時代です。やはり時代のある一面の精神を反映していますね。

★しかし、受験市場は、基本的にはリバタリアニズムが支配的ですから、そのようなユーザーにとっては、わかりやすいわけです。倫理や道徳もマーケティングによって決まっていくというリバタリアニズムは、東大や慶応大学、一橋の法学部では、そもそも主流です。

★このような在り方も私立学校ならではの価値観です。価値は神々の闘いですから、私学全体としては、そのような価値も互いに尊重し、独自の路線を進むのです。

★しかし、私学全体では、充足率V字回復パターンは、DとCが多いということになります。パターンAは、メディアが飛びつくわけですが、だからといって、DとかCのパターンの学校が、その方法をそのまま取り入れることは難しいというのはすでに先述しました。

★三種の神器を対話型組織がどのようにアレンジしていくのか?それがパターンDとCの醍醐味です。

★三種の神器とは何か?それをどのようにアレンジしたり、あるいは徹底的に浸透させるのか?それはまたの機会にしましょう。ある意味、ここから先は企業秘密的な感じですから。。。

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私立学校充足率V字回復5パターン➌充足率パターンDとC 最も難しい

★充足率V字回復5つのパターンのうち、DとCが最も難しい。図を見ていただければわかるように、充足率が90%や80%は、学内全体には、まだ大丈夫、たまたまだろう、少子化だからだろう、経済の空白が長いからという雰囲気が支配しているからです。この支配を払拭しないで放置しておくと一気呵成に充足率50%をきるという窮地に落ち込みます。ですから、経営陣は新しいプログラムを入れたり、外部コンサルタントを招いたりと体質改善を図ります。パターンDの場合は、それでうまくいくときもありますが、それだけだと3年後には再び充足率100%を下回ります。

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★充足率が100%いかなくなったとき、すぐに短期的な戦術を行うことは重要です。同時に、中長期的な戦略も立案して様々なリスクに備えるマネジメントをしておく必要があります。

★短期的には、入試改革(入試要項の変更)をまずします。すると、それを受験市場に周知徹底する動きを広報部がするので、学内の雰囲気は部分的に活性化します。それだけでうまくいくときもありますが、長続きはしません。

★やはり、教育内容とその内容を有効にする教育システムの内部要因も中長期的にどう変えていくかを、広報チームが市場に共有できるようにしていくことが必要です。そうすると、結局教育の質が大事なのですが、質は見えにくいので、丁寧に諦めずに共有していくこととして、市場が飛びつくのはどうしてもわかりやすい新しいトレンドをつくることです。

★前回ご紹介したパタンEの学校は、すでにブランド力を定着させているので、大学合格実績さえ出していれば充足率100%以上は持続可能にできます。しかし、パターンDは自らブランド力を創る必要があります。かといって、パターンEのブランドを超える様なことをぶち上げると、受験市場では反発もでます。日本人特有(実はどの国もですが)の出る杭は打たれるわけです。

★このとき、どういう表現をしていくかは重要です。それと覚悟が大事ですね。そんな新奇なことをいうと塾業界が引いてしまうと思うのか、覚悟を持って貫いていくと意思決定するのか。

★そのとき、学内の教員がどちらの価値を重視するのかです。前者が支配的になると、結局教育内容の質は変わらないように見えます。後者は相当対話型組織を教員同士がしっかり作っていかねばなりません。学校に限らず、この組織作りこそ厄介なのです。パターンDぐらいの状況だと、学内の教員の入れ替わりはないので、価値の転換を全員に求めても、サイレントキラーはいるものです。ですから、20%くらいの先生が対話型組織をつくれるように、教頭はエンパワーメントする必要があります。もっとも、教頭がサイレントキラーという場合もあります。理事長・校長はそこはきちんと日ごろから対話をしておく必要があるでしょう。というわけで、パターンDは、組織マネジメントがかなり難しいのです。ここで、成功している学校こそ、学校改革のスーパーモデルになるでしょう。受験生が、このような学校と出会った場合、対話型組織を教師と共に創っていくことになるので、豊かに成長していきます。

★パターンCも、実はDとある条件を除いて、ほぼ同じです。ある条件を除いていてというのは、充足率80%前後だと、教員が他の学校に逃げ出すことがあります。逃げる要因は、経営上新しいことをやらざるを得ないので、それには反対だと感じる教師や新しいことをやっても組織は変わらないと判断する教師などがでてきます。また、自分の人生の見通しが立たないのではないかと経済的リスク回避のためというのもあるでしょう。

★このような状況は、一瞬学内は混乱します。しかし、その状況下で新しい教師を採用する時に、新しい学校になることをいっしょにやってくれるかどうか確認をします。3年間くらいはこのサイクルを続けると、学内の20%と新人教師の割合20%が合わさって、40%前後は不易流行を実施するプラグマティックな動きができかつネガティブケイパビリティー旺盛な精神(矛盾や困難を引き受ける気概)も広がっていきます。学内組織は対話型組織に変わっていきます。この変化は内部要因なのですが、40%以上という量は対話型組織の3f精神(フラット・フリー・フレンドシップ)の雰囲気を外部に漏れ伝えていくことになります。

★口コミが広まり始めるし、そのような組織は生徒がアクティブになりますから、いわゆる主体性も生まれてきます。教師と協力するのも大歓迎です。大学実績がぐんと飛躍します。このような学校は、グローバル教育とSTEAM教育をやっていますから、総合型選抜、海外大学受験にも積極的になります。充足率を100%超えるようになるし、40%の量と質が学内全体、保護者も、市場もその学校のイメージを変えていきます。同時に40%の量と質が拡大します。

★しかし、この対話型組織を最適化し続ける戦略はかなりの難しさです。校長と教頭と各部長のリーダーシップの合力が並大抵ではありません。時代の精神に翻弄されないように同時に時代の先を歩んでいくタイプでもあるので、固定的なシステムを安定させることはできないからです。常に東大20人以上いれるとか、海外大学でトップ10の大学に5人以上入れ続けるとかいうのであれば、そこのシステムは固定化できます。しかし、そうなればパターンEのグループに入るのですが、そこに行くまでには、対話型組織の最適化の調整をし続けなくてはなりません。

★もちろん、そのような組織がうまくいっているとき、在校生は痛快です。小学校や中学校では、偏差値で学力差があるなどというアンコンシャスバイアスを自分の中にかかえていたものが、全くそんなものは幻想(ファントム)だったのだとポジティブ学園ライフを送り、行きたい大学に仲間と共に自分の力を高め進めるのです。もちろん、その先の未来に希望をしっかり胸に刻めるのですから。

★実は、これも、2011年の忘れてはならない3・11以降のダイナミックな価値の転換の流れをくむものです。それ以前には、このようなV字回復はなかなかなかったのです。そもそも対話型組織というアイデアすらなかったでしょう。

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2025年5月16日 (金)

私立学校充足率V字回復5パターン❷充足率パターンE 今後は限定的パターン

★前回ご紹介した5つのパターンのうち充足率V字回復パターンEは、隔年現象を繰り返しながらも100%を持続可能にしている私立学校。しかし、偏差値が高いから充足率が100%かというと、歴史的にはそうではありません。1985年から1995年にかけて、私立中学入試の黄金期がありました。このときには偏差値が高い低いに関係なく、各学校が充足率で心配することはあまりありませんでした。校内暴力や学級崩壊という教育問題が横たわっていて、私立学校への流れが生まれていました。実は中学入試において偏差値というものが活用されるようになったのもこの時期です。

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★したがって、市場も学校も新しい指標である偏差値を意識しはじめました。今も昔も教育理念や校風は大事ですが、それだけでは差別化ができません。当時、わかりやすかったのは、偏差値だったのです。

★そして、この偏差値をあげるには、今のように対話型授業など存在していなかったため、知識の効果的な記憶と活用の競い合いです。となると、当然大学入試の実績がものをいうわけです。MARCHという名称も、実はこの時代にようやく使われるようになったものです。

★1985年から2010年までは、この偏差値と大学合格実績のランキングが、学校選択の価値指標として固定化されアンコンシャスバイアスを形づくっていく時代でした。この1995年くらいから、この偏差値と大学合格実績をあげていった学校が、今では充足率V字回復のパターンEの学校です。

★たとえば、1985年には、偏差値30強だった女子校が、1995年委は50を超える近辺に来て、2010年には65を超え、今では70前後で、模試会社の偏差値表によっては、フェリス女学院よりも高いという女子校があります。

★この学校の戦略は、当時国際理解教育でぐんぐん評価をたかめてきた共学校と他の女子校を研究し、それを超える破格の国際理解教育を実施しました。国際学級も開設し、帰国生もたくせん入学してきました。

★外国人講師もそのときすでに20名くらいは雇用していたのではないでしょうか。21世紀に入るや、中学段階での短期と中期のアメリカの現地校の留学提携をしました。その体験者は、早稲田か慶應どちらかには進める学力を身につけました。

★東大はすでに激しいレッドオーシャンでしたから、まずはハーバード大学など海外大学に多数合格者を出しました。今のように受験市場は海外大学に反応しませんでしたが、確実に偏差値を超える総合的な学びの力を生徒の皆さんはつけていました。何より英語力が半端ないのですから、東大合格者が増加するのは時間の問題でした。

★2010年以降は、充足率が気になる時代に突入していました。そのときにその女子校は、それを心配する圏内はすでに超えていました。2013年からは開成なども海外大学の進学者を毎年多数出すようになる時代を迎えました。そして、海外大学は偏差値ではなく、国際理解教育やグローバル教育の教育の質で決まる時代になりました。

★その女子校は、一気に注目を浴び、偏差値の高い生徒も多数入るようになりました。今では、女子校において東大合格実績はベスト3にはいるほどになっています。

★パターンEは、1985年以降、偏差値と大学合格実績をどのように高くしていくかの戦略によって、そのポジションを創り上げました。

★したがって、2010年以降充足率が100%いっていない学校で、V字回復できた学校は、別の戦略でV字回復しています。偏差値と大学合格実績を上げる戦略では、V字回復できない時代になったからです。偏差値の高低にかかわらず、世界大学100位以内の大学に合格していく時代です。

★つまり、偏差値に変わる指標や広報戦略が有効な時代になりました。

★それはサイトを活用した広報戦略が、SEOからAEOにシフトしたことに象徴されています。つまり、広報の量のみから量×質に変わったことを示唆しています。

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2025年5月14日 (水)

多摩エリアの11支部の私学が注目されはじめる➍~日本全体の私学から注目されている

★多摩エリアの11支部の私学は、全国の私学から注目されています。というのも、東京23区の学校の改革は、人口動態や立地の条件がよく、それを前提とした学校や教育の改革・改善を行っていますが、多摩エリアは、その両方の条件がないわけです。にもかかわらず、持続可能にしているところが多い。それはなぜか?おそらく、全国の私立学校にとって、同じような背景があるため、その仕掛けをなんとか知りたいということなのでしょう。

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★駒沢学園女子のように、禅の文化を宇宙的視野に拡大したうえで、一人ひとりの個の成長を見守る教育は、実は世界の学校が欲しがる教育を実施しているのです。その土台の上に、骨太のグローバル探究があるのです。桜美林も単純にキリスト教の学校ではなく、そのルーツがそもそも世界の痛みを包み込むグローバル教育から出発しています。

★国立音楽大学附属中高も、クラシック音楽の殿堂から総合芸術をプロデュースする広いパースペクティブをもったリベラルアーツ学校に転換して、人気が戻ってきています。

★明治学院の先生方の研究に根差したイノベーティブな教師像と生徒と真摯に向き合う愛情は大きな魅力でしょう。

★明星中のように、受験生の3つのニーズすべてに対応できるカリキュラムマネジメントは、学内の先生方のチャレンジ精神なくしてはできないでしょう。超難関大学進路指導×アカデミックな探究×海外大学につながる国際理解教育の3つがそれぞれしっかりとしたシステムになっています。

★穎明館や八王子学園八王子、明大八王子のように確かな実績に根差した筋金入りの進路指導もまた大きな魅力でしょう。

★11支部では、最も西にある工学院大学附属は、ラウンドスクエアやケンブリッジいインターナショナルスクールの加盟校で、東京の周縁に、理想の学習者中心主義のグローバル教育×I(IBL,ICT,Innovation・・・)の魅力的な未来型学校が存在しています。文化人類学的には周縁と中心では、周縁こそ新しい動きが生まれるとされています。

★これ以外にも相当興味深い持続可能な学校が集結しています。今年は多摩エリアの学校をきちんとウォッチしていこうと思います。

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2025年5月11日 (日)

八雲学園 意志と論理と愛情の説明会

★5月10日、八雲学園は中学校のミニ説明会を開催。120名ぐらい入る会場が満席となりました。体育館で行う説明会は9月以降で、それまで小さいけれど丁寧な説明会を開いていくのは、ここ数年の八雲学園の広報の流儀です。しかし、今回は、八雲学園の教育理念や方針を近藤彰郎理事長校長が話され、グローバル教育(特にラウンドスクエアとサンタバーバラでの学び)と進路指導について近藤隆平副校長、文化体験とチューター制、入試要項については近藤嘉彦副教頭が説明されました。意志と論理と愛情の三要素が明快に発信される説明会となりました。

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★近藤彰郎理事・校長は、7日に起こった東大前駅(東京メトロ南北線)の切りつけ事件で容疑者が「教育虐待を受けた」ことを理由に挙げていることを例に、教育者として対岸の火事としては思えない。むしろそのような状況にならないように、生徒1人ひとりの個を受けとめ、共に歩いていく教育を八雲学園の先生方と保護者ともちろん生徒が協力し合って学校を運営しているという個を大切にしている先生方の情熱とその情熱が持続可能になっている教育システムの枠組を話されました。壮大なグローバル教育やこれまでに600以上積み上げている文化知見の実績などあるのは、むしろ当然で、大事な原点は個なのだと、もちろんその個が輝くには、個どうしの協力が必要で、行事や部活が盛んなわけはそこにあるということも語られました。

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★理事長校長の話を受けて、近藤隆平副校長は、その壮大なグローバル教育(ラウンドスクエア及びサンタバーバラの学びなど)とその結果として、共学化して2年目の卒業生の飛躍的な大学合格実績がでた進路指導についても丁寧に説明しました。海外大学も合格した30以上の海外大学のうち、21大学は世界大学ランキング100位以内であったり、早慶の進学実績も伸びている話をしました。

★そして、そのような個が育つ学びのシステムは<経験→議論→編集→発表→振り返り〉∞<探究→議論→編集→発表→振り返り>という2つの5Eサイクル(Experience,Exchange,Edit, Express,rEflection∞Explore,Exchange, Edit, Express, rEflection)が無限に循環しているということをさらりと説明していました。このような軸というかコアがあるから、多様な学びやプログラムが教育の総合力として好循環しているのだということが了解できました。このような軸を可視化してシステム化しているのは、IB(国際バカロレア)の特徴ですが、さすがはIBを創りラウンドスクエアも創ったクルト・ハーンです。多様なものは究極的には1であるというリベラルアーツの発想を落とし込んでいるなあと感心しました。ラウンドスクエア加盟校として八雲は、同様に学びや教育活動のコアを可視化して、学校全体で共有しているわけです。

★このようなシステムを論理的に可視化している学校は、日本ではそう多くはありません。これがあるからこそ八雲学園は壮大なグローバル教育を行えるのでしょう。

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★そして、近藤嘉彦副教頭は、そのような論理的システムも、最初から誰でもが展開しているわけでもなく、できたとしても常に順風満帆ということはないので、安心して欲しいと。不安はだれしもあるので、それを払拭する心理的安心を生み出すために、チューター制という生徒1人ひとりに教師一人が学習アドバイザーとして寄り添っているシステムがあるという話がありました。そして、その心理的安全は、多様な楽しい経験、仲間と共感できる文化体験が豊富にあるのだと。日本文化ばかりではなく異文化の体験も含めて文化体験であり、re-creationの本質的な意味を柔らかく語りました。

★意志と論理と愛情と。八雲学園で個がそれぞれに育っていく奥義が語られた説明会となりました。もちろん、受験生はディズニーランドに宿泊までして楽しんだり、グローバルな活躍をするためのテーブルマナーをホテルで食事をとりながら学ぶプログラムに大感動していました。

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ファシリテーション組織➌世界をエンパワーする対話 シンプルにこれが組織を持続可能にする例として工学院

★いろいろな武器や道具を使って学びの環境をデザインすることは、イノベーションの進化と共に当然必要です。多様性や視野を広げるために、国を越境したり、他領域の組織と連携することも当然です。しかし、言うまでもなく、「対話」ができている組織かどうか。このシンプルな知性と感性の交換ができるかどうかがポイントです。好奇心に満ち、風通しのよい開放的な雰囲気が広がり、なぜだろうという探究心を推奨する組織。対話の土壌です。

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(bing作成)

★このような土壌があれば、メンバーは誰に対しても、「ありがとう・ごめんなさい・いかがですか」という互いに尊重する言葉が心の底から自然にでてくるものです。

★振り返ってみると、こんな簡単そうにみえる対話の雰囲気がある組織は、意外と少ないのです。

★それは道徳の問題だと思いますか?これは実はリベラルアーツ的な言語能力(言語と記号のシステム)の問題です。道徳は、このシステムがうまくいかない状況を外発的・内発的に矯正するルールです。

★ところが、リベラルアーツ的な言語能力システムを学ぶ環境をつくらないで、やれ主体性だとかエージェンシーだとか深い学びだとか対話だとか叫んでも、それは道徳的な表現になってしまいます。

★このシステムを生み出す組織がファシリテーション組織なのです。ファシリテーションができる方が多いか少ないかではなく、組織メンバー全員ができるようになるプログラムが実行されているかどうかなのです。

★システム思考やOSTといったプログラムを研修のときだけではなく、あらゆるミーティングで浸透させるメタプログラムを開発している組織の例としては、工学院大学附属がまずは挙げられます。同じような組織を生み出す方向性があるところは、ディスカッションの機会が多いところがそうですね。もちろん、そのディスカッションが、ファシリテーターメンバーによって運営されるかどうかは、モニタリングするシステムつまりメタプログラムの稼働を開発する必要はあります。

★IB(国際バカロレア)に学ぶべき点があるのは、TOKというメタシンキングプログラムがあることですね。工学院大学附属は、このプログラムをIBLとして独自のメタプログラムとして実施しています。それが、探究論文やグローバルプロジェクトという活動に広がっていくトルネードカリキュラムマネジメントをしているわけです。

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国立音楽大学附属中高 変わる未来のリベラルアーツ学校

★国立音楽大学附属中学校・高等学校(以降「KUNION」)の副校長滝澤秀先生にお会いしました。この3年間学校改革が順調に進み、今年の中学入試・高校入試とも生徒募集は成功しました。立地としては国立という学問的雰囲気のある素敵な街です。一方で多摩エリアですから、中学受験市場としては、23区に比べてアドバンテージは高くないわけです。しかも、クラシック音楽を学ぶ殿堂ですから、サブカルチャーの勢いのある世の中にあって、トレンドであるとは一般には思われていません。しかし、滝澤先生は、学内の先生方と協力して、そのイメージを覆し、新しいKUNIONのイメージを描いているのです。

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★クラシックク業界自体、危機を感じ、もっとカジュアルに音楽を楽しめる方向も模索しています。滝澤先生は、だからKUNIONも転換のティッピングポイントを見つけることができたのですと。つまり、クラシック音楽に加え、サブカルチャーの音楽分野に進むキャリアデザインを生徒とともにつくっていく広がりを生み出したことが、生徒が集まりだした大きな要因だというのです。音楽業界は、決して演奏家と作曲家を育てるだけではなく、プロデューサーやイベントコーディネーター、音楽療法士、音楽サイエンティストなど、スポーツ業界のアスリートの環境全体がビジネスになると同じなわけです。音楽という芸術性を生かしたアイデアが生徒の中から生まれてくるようになっています。KUNIONのアントレプレナシップというわけですね。

★このように、時代の精神を読みつつ、生徒のキャリアの多様性に目を向けつつ、実際に、その多様性に気づく探究活動を3年間積み上げてきたというのです。それがKUNIONミライ探究ゼミです。

★もともと、音楽はクラッシックという領域だけではなく、リベラルアーツという土台があります。現在はSTEAMという領域にシフトしています。言語能力もAをリベラルアーツとすれば、養われますが、現実は、必ずしもそうはいかず、イノベーションやテクノロジー、エンジニアリングに引っ張られます。

★そこで、意識として、リベラルアーツをむしろ土台にして、KUNIONミライ探究ゼミを企画・開発・実施したということです。

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★そこは、滝澤先生が国語科教員でもあるので、言語能力にこだわるところがあったのでしょう。ゼミは、12種類あり、20人前後の生徒で構成されます。しかも、ゼミの講師は、身体表現、音楽サイエンス、音楽療法など学習指導要領を超えた分野が多数なので、大学や企業の専門家と連携して行っています。ディスカッションが活発で、いわゆるプロジェクト学習やチュータリング的な学びのプロセスが広がっています。

★もちろん、滝澤先生も「PRゼミ」を開設しています。イベントを企画したり、マーケティングを研究するゼミのようです。そして、ゼミのメンバーはKUNIONの説明会などイベントも企画するわけです。プラグマティックな組織運営を滝澤副校長は進めているのです。

★AI時代になって、創造的な感性や発想があらゆるビジネスシーンで重視されるようになります。AIが描く創造性を超えるのは、やはり人間の最後の役割かもしれません。

★音楽をベースにしたリベラルアーツは、AIの優れたシステムと共生できる人間の総合的な生き方のシステムという時が到来したのでしょう。KUNIONはその未来を生徒と共に生み出していく新しい展開を始めています。時代を導くKUNIONの教育。今後もウォッチしていきます。

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2025年5月 8日 (木)

落合陽一さんと落合ひとみさんの教育観 PBLの有効性に触れる

★落合ひろみさんと 落合 陽一さんとの共著<「好き」を一生の「強み」に変える育て方 サンマーク出版(2025/3/13)>は、これからの教育を見通すすてきな本です。グローバル教育に関しては、高校入試に立ち臨む受験生・保護者には勇気を与えるでしょう。一方、中学入試の受験生と保護者には、多少チューニングが必要です。それ以外は、小学校受験、中学受験、高校受験、大学受験をする生徒・保護者にとって実にウェルビーイングなキャリアデザインのヒントをもたらしてくれると感じました。

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★この本の中で、PBLを重視している箇所があります。落合陽一さんの学びは幼いころからまさにPBLあったということが了解できる本なので、当然ですが、この指摘がなければ、落合陽一さんの学びがPBLと親和性があるということを気にしないで読んでしまうかもしれません。ですから、PBLについて落合ひとみさんが触れていることは極めて重要だと思いました。

★落合ひとみさんが、PBLが学びにおいて重要だということを示すエビデンスとして、❝Cindy E. Hmelo-Silver.“Problem-Based Learning: What and How Do Students Learn?”. Springer, 2004. ❞を紹介しています。

★サイトを開くとサマリーが掲載されています。2004年段階では、主に医学系の学びやギフテッド教育という分野で限られて活用されていたようです。そこで、Cindyさんは、もっと広く学び全体においてPBLというのが有効だということをリサーチしたようです。今では、「主体的・対話的で深い学び」や「探究」という学びが定着しつつあるので、PBLが限定的だったというのは、改めて時代の変化を感じます。

★Cindyさんは、PBLの目的には、つぎの5つあると述べています。

1) 柔軟な知識の習得

2) 効果的な問題解決能力の育成

3) SDL(Self-directed Learning)スキルの向上

4) 効果的な協力スキルの醸成

5) 内発的動機づけの促進

★今では、その通りという感じです。そして、Cindyさんの研究の結論としては、PPBLが柔軟な理解と生涯学習スキルの育成に寄与する可能性を秘めた指導アプローチであることを示唆しているとしています。

★この生涯学習スキルの育成に寄与するというのは、日本のキャリア・トランジション研究でも同じ結論に達しています。極めて重要だし、楽しがり方を体感してPBLを続けている落合陽一さんを見ていれば、了解できます。なんといっても、落合陽一さんのプロデュースしている大阪万博のスペースは、毎日入りきれない人気だというのが、論より証拠ですね。

★ぜひ同書を手に取ってみてください。落合陽一さんを育てた母である落合ひとみさんがリアルに語っています。

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八雲学園 大学進学実績の飛躍のプラグマティックな理由

★今年、八雲学園は、共学化2期生が卒業しました。海外大学と国内難関大学の卒業生に対する合格者数の割合が103%でした。1期生の時もすでに85%で伝統と革新の統合を宣言して共学化した成果がでたわけですが、今年はさらに伸びたわけです。その理由は何か?同校副校長近藤隆平先生と対話しました。

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★詳しくは、今週土曜日5月10日の学校説明会でお話されるということでしたが、対話をしていてなるほどと感じたのは、多様なグローバルな教育環境デザインで有名な八雲学園ですが、実は、この多様性を抽象的にとらえる学びの活動のコンセプトがしっかりしているなということです。

★この学びの活動のコンセプトが、ラウンドスクエアの活動、9カ月プログラムの活動、多様な英語のイベント、体育祭、文化祭、何より教科授業に染みわたっているのです。ブレない学びの活動の軸があると言った方がわかりやすいかもしれません。

★この学びの活動の軸が、教師全員に共有されているし、生徒にも共有されているわけです。まずは教師がデザインした経験や与えられた課題をどのような学びの活動で解決していくか、積み重ねていくわけです。それによって、学びのモデルが生徒自身の中に出来上がっていきます。次の段階では生徒自身が自分の興味と関心があることについて好奇心旺盛にも自ら問いを生み出し探究を深めていくというプロセスが連続していくというのです。

★近藤隆平先生をはじめ、八雲の先生方は、長い間カリフォルニア州のサンタバーバラを拠点として、生徒と共に学んできました。それゆえ、このような学びの活動の軸やコンセプトを生み出す教育が伝統的に暗黙知として継承されてきたというのです。理論から始まるのではなく、経験から生まれてきたコンセプトを大事にする。まさに米国的なプラグマティックな発想です。

★そして、その暗黙知を抽象的なコンセプトとして可視化する対話が学内でなされていっているわけです。

★この経験とコンセプトの往還的な思考様式は、実は海外大学の学びの基礎でもあるのです。なるほど、今年世界大学ランキング100位以内の海外大学に21名も合格しているはずです。5月10日説明会で、そのコンセプトの話をお聞きできるというので楽しみにしています。

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2025年5月 7日 (水)

「成長」と「自己」❷最終的に自己とは新たなothersとの融合

★自己とは、客体と自分と分割して、その自分を自己とみなすのではなく、客体もまた自己であり、自己と自己´の融合が自己というまわりくどい言い方をしているわけですが、そうしないと、客体に飲み込まれたり、客体が壁になったりして乗り越えられない自分として閉塞状態の自己が現れてしまうため、客体も自己であるとみなした方がよいのではないかという私のn思い込みなのです。

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★自己が学んできた世界は、客体ではなく、自己そのものなのです。ただ、その世界という思い込みの正当性と信頼性と妥当性は、自己たちの対話によって、仮説や実験が立てられ、創造的に破壊されてある程度、自己たちの身体や精神、人間関係が循環しているかどうかによってモニタリングされています。

★その対話のプロセスは、図に至るまでに、4段階がありますが、それはここではすっ飛ばしましょう。その自己たちの対話によって、自己たちの思い込みの世界が崩れる時があります。新たな矛盾が見つかったり、もっと有効な循環ができることに気づいたときです。

★すてきな思い込みも固定観念化したり、既知のものとして形骸化したりします。それをつくっている自己(たち)の知の枠組を創造的に破壊することによって新たなothersが現れるわけです。

★こうして、自己は新たなothersと融合することになります。

★自己たちは、❶から➏段階、それぞれにいるので、たとえば、❶自己と➌自己と❹自己と➏自己との対話になる場合があります。この対話の成熟によって、どの段階に世界がとどまるかは、対話の質によります。

★そして、みなが➏自己たちになった時、それは❶自己たちに再び回帰します。新たな世界は既知の世界になるからです。➏にいたるまでを進化と言い、➏から再び❶に回帰するこの循環全体を永遠回帰と呼びたいわけです。

★発想はニーチェにもらいましたが、ニーチェがこのような自己たちを考えていたかは私はニーチェ学者ではないのでわかりません。

★市民プラグマティスととして、私は「自己」と「成長」を「進化」と「永遠回帰」の循環ループで考えています。子どもたちのキャリアデザインを考える時、進化=成長とすることが、危ないというのは感覚的なものですが、進化=成長という近代的な考え方が、閉塞状態になっていることも否めません。

★しかも、その真価は客体としてみなされている技術の話で、客体と分けられた自分という自己の成長は、その客体に対応できるかどうかで捉えられがちです。それが自分としての自己を世界から疎外することになってしまいます。生成AIをどうとらえかは今後需要ですね。

★それはともかく、要は考え方次第なのですから、前提の「自己」の考え方を転換することで、論理的帰結も変わってくるはずです。大学入試という社会現象も、このことに気づき始めています。一般選抜は、客体と自分を分割して成り立っています。総合型選抜は、自己と自己´の融合が自己であるという前提で成り立っています。

★「自己」に対するものの見方や考え方、価値観が違うだけですから、制度上どちらがよいかわるいかは、それだけでは判断できないのです。ただ、SDGsに象徴されるような事態が起きているのは、自然を自己とみなさず、客体とみなしていることから起きている可能性はあります。自己を守るということは、客体から自分を守るというのか?それとも客体と思いこまれているotheresとしての自己と自分と思いこまれている自己´の融合態を守ろうとすることなのか?

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