グローバル教育3.0

2024年9月15日 (日)

人的資本の学校経営 桜美林新宿キャンパス文大杉並WSで出会ったある先生から感じたコト

★教師のことを「人的資本」というと教育界では、少しひかれます。かといって、創造的才能者とかクリエイティブクラスというとドン引きされます。面倒見がいい先生とか教師力という表現だとおちつくみたいです。どれも同じ意味で私は使いますが、無限の価値を生み出すエネルギッシュな意味を付加するには「人的資本」とか「創造的才能者」とか「クリエイティブクラス」とかいう方が伝わるかなと。

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★そんな中で、文大杉並の理事長松谷先生は、「人的資本」を大事にすることだよ、クリエイティブクラスいいじゃないか、創造的才能者はうちにはたくさんいるよとニコニコしながら話してくれます。

★実際クリエイティブクラス集団はどんどん豊かになり拡大し、今では学校をはみ出し、越境して多次元多層な団体や人々と結合することによって新しい次元の教育を生み出しています。このエネルギッシュなクリエイティブクラスに引き付けられて多くの生徒が同校にチャレンジしてきます。人的資本やクリエイティブクラスは、新しい価値を次々生み出します。各人の才能や思考力や人としての魅力があり、時代の最先端のテクノロジーを法令遵守しながらフル活用します。

★この活動自体がSTEAMだし、PBLだし、グローバルだし、探究だし、哲学だし、学問だし、遊びだし・・・・簡単に言うと「ワクワク」するわけですね。

★そういうわけで、昨日桜美林新宿キャンパスで行われた文大杉並の博学連携というグロバール・STEAM・探究・PBLが最強の正四面体結合を生み出すWSに参加しました。他にもおもしろそうなWSがあったようですが、私はその一つしか目指さず、妻とのイベントがあったので、終了したらすぐに車で会場に向かいました。

★ですから、そんなピンポイントな時空で、しかも20人参加したらパンパンになる教室ですから、ますます知人に出会うという確率はめちゃくちゃ低いはずですが、なんとそこに現れた一人の探究やSTEAMを牽引するK学園のU先生が現れたのです。

★そのK学園も「人的資本」とか「クリエイティブクラス」は豊かでたくさん存在しています。その1人で、なおかつ探究において学内だけではなく学外でも活躍されているU先生。

★思わず、目が合ったときに「そういうわけですね」と声をかけると、「そういうわけですね」と回答がすぐにありました。

★私のむかしからの知人安修平さんがりょうゆう出版を立ち上げ、ワークショップを行うという連絡がはいったので、参加した時があります。そのWSのチームで、U先生と出会いそこで対話をしたのですが驚きました。この方はまさしく豊かな「人的資本」だし、「クリエイティブクラス」だと感動したのを思い出します。

★というわけで、ときどきその活躍の様子を眺めていたわけです。U先生の所属しているK学園も躍進しています。グローバル・STEAM・探究の塊の学校で、もちろん大学合格実績もすばらしいわけですが、文大杉並同様、その成果は生徒のキャリアデザインの1要素で、大事なことはもっと総合的なものです。

★文大杉並の活動に同じような感性でU先生も私も引き寄せられたのかもしれません。ふだんはそれぞれの職場で仕事をしていても、こうして文大杉並の先生方とU先生と出会えるのです。共感共鳴共振している価値の創造磁場みたいなものが世の中にはやはりあるのだと。その磁場がこうしてどんどん強くなっているという実感は、まさに希望です。

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2024年9月 8日 (日)

2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(06)児浦准教授のEUU構想に希望

共愛学園前橋国際大学の児浦准教授の講義を拝見したりゼミの生徒のみなさんとお話できる機会を得たりして、大学と自治体(南牧村)と民間セクター、行政セクター、非民間セクターのコラボレーション型都市創りに希望を感じたことについては、以前本ブログで取り上げました。今回改めて、児浦准教授が白石克孝教授・ 西芝雅美教授・村田和代教授が編集した「大学が地域の課題を解決する(2021年 株式会社ひつじ書房)」をSNSで紹介していたのを読んでみて、やはり私の確信通り、児浦准教授のチャレンジは、共愛学園前橋国際大学による独自のチャレンジであると同時に、西芝教授が行っている「社会に関与・貢献する都市型大学(EUU:engaged urban university)」づくりに重なっていると感じました。

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★同書の中で、CBL(コミュニティー・ベースド・ラーニング)の要素として次のように8つあげています。

1.実質的な学習効果と有意義なサービスを生み出すのに十分な期間と適度なエンゲージメント活動

2.学習目標とプロジェクト目標の合致

3.系統だった組織的プロセス

4.学生、教職員、コミュニティのメンバー、および関連機関が互恵的(共創的)に協働する事で、共通の目標を達成し、またパートナーのすべてが能力を高める

5.学生が「公正性の観点」から物事を見る見るように指導する

6.教科の学問的学習目標達成に、少なくとも市民学習目標を加え、出来ればその他の学習カテゴリー(例えば、個人の人格形成、専門能力の養成、異文化対応能力、調査研究における倫理観の育成、研究能力)も加える

7.学びを生み出し、より良い実践を目指し、市民としてのアイデンティティを養成する事を念頭に置き、授業での体験を批判的に省察する

8.幅広く成果を評価する(白石克孝; 西芝雅美; 村田和代. 「大学が地域の課題を解決する 」(p.54). 株式会社ひつじ書房. Kindle 版)

★児浦准教授はさらにスタートアップ的な要素も加えていますが、重なるところもあります。「前橋×国際」の意味に改めて感じ入りました。

★また、児浦准教授とご一緒させて頂いてきた21世紀型教育機構で行っている中高段階でのPBLもこのCBLにきちんと接続することができるなという予感がし、今後の中高大連携の道がはっきり見えました。これは「希望」です!

★さらに、私事ですが、私の居住地の二子玉川もまた西芝教授が行っているポートランド州立大学のこのEUU実践が必要です。二子玉川は、楽天の移転と東急ライズが開発するまだまだエンゲージド・アーバン・コーポレーションの都市ですが、少なくとも私立中高一貫校が近隣に集積している場です。どこか協力的で強烈な大学が二子玉川でEUUができるといいのですが。共愛学園前橋国際大学と成城大学などがコラボしてやってくれるとありがたいですね〈微笑〉。

★というのも、成城学園ー二子玉川ー田園調布は国分寺崖線庭園都市なんです。最後の国土計画五全総のメインモデルはこの地域です。渋沢栄一―五島慶太の田園都市構想の継承だったのです。それは、多くの市民は気づいていませんが、意外と日常の中に取り入れられています。ただ、土日の多摩堤通りから玉川高島屋近辺にいたる渋滞は、とても環境にやさしい田園都市という感じではないですから、今では幻の田園都市構想でしょう。

★それでも、二子玉川はポートランドと新しいエコシティーの交流を開始しています。ポーオランドの都市景観は、スケールは違いますが、二子玉川にも似ています。ポートランドの日本庭園は、策定者は京都の造園家ですが、その修復には隈研吾さんがかかわったそうです。

★田園都市構想のモデルになっている日本庭園は、京都庭園ではなく、大名庭園です。この庭園と学校誘致とプレミアム住宅街をつくったのが五島慶太率いる東急電鉄ですが、それは今も継承されている構想です。

★渋谷が開発され、ヒカリエの向かい側に、渋谷スクランブルスクウェアというビルが建っています。その15階に渋谷QWSという新しい知の拠点があります。東急とJRとメトロが出資しています。今後世界の70%は都市化するといわれています。問題はユートピア都市にするのかディストピア都市にするのかですが、渋谷をユートピア都市のモデルにしようと、産学共同プロジェクトがその拠点からたくさん生まれています。

★たぶんこの渋谷QWSには児浦准教授もなんらかのカタチでかかわっていると思います。

★歴代の首相や岩崎家、高橋是清、五島慶太、森村家がこの二子玉川の国分寺崖線上の大名庭園型の別荘で、この田園都市構想を着々と描いていたのです。ただ、大学がまだ主体的ではないので、これからが希望ですね。

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2024年9月 4日 (水)

2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(03)本格的なSTEAM教育は始まったばかり

★2021年に、文部科学省は「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進」のサイトを開設した。世界では2006年以降、STEAM教育が行われ始め、オバマ大統領も国家戦略として重視していたという記憶がある。2016年ころに現行学習指導要領に向けて文科省も研究を本格化して、ポストコロナにようやく推進の旗を振り始めている。Society5.0に向けて、高度人材不足が大きな問題になってきたからというのもあるだろう。

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★STEAM教育は、探究と教科をつなぐ文理融合的な位置づけにもなっている。それゆえ、2025年から共通テストにも「情報」が実施され、コンピュータやAIが浸透した社会づくりへの教育がようやく始まったのである。東京都も今年の3月第5次教育ビジョンの中で、STEAM教育を重視していくことを盛り込み、委員会なども立ち上がっているようだ。

★私立学校は、コロナ禍にあって、一気呵成にSTEAM教育を推進した。とはいえ、生成AIが広まった昨年からは、その活用は進んでいない。

★そんな中2050年社会に向かって対応もしくはそれ以上の新しいウェルビーイングな社会構想を生徒と共に描きながら進んでいる学校もある。いったいどんな学校か?ぜひ探してみてほしい。

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2050年社会をユートピアにするかディストピアにするか(02)新しい私立中学選びの座標軸

★2050年社会がどうなっているか?地政学的リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクという3大ディストピア要因を切り抜ける社会像はすでに描かれている。そのことに気づいている学校とない学校がある。だから、気づきたいと思う受験生・保護者は次の座標を見て考えてみることも大いに参考になると思う。

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★各ポジションのアルファベットと数字は、思考コードの領域を表現している。そのポジショニングの学校のコア思考コード領域を示している。ただし、この思考コードの領域を実践する授業をしているとしても、それだけではこのポジショニングを得ることはできない。グローバル教育とSTEAM教育とPBL型探究が揃って、そのコア思考コード領域が実践されている教育環境デザインがなされている学校が、そのポジションに位置する。

★脱偏差値というのは、偏差値がいらないということではなく、偏差値以外に20世紀型教育から22世紀型教育へシフトする各次元を掛け算してみる必要があるよということである。

★開成のように上記の新学校選択座標で、B3C2のような学校もあるが、富士見丘や八雲学園のようにB2C2のポジションにいる学校がある。やはり人気校であるが、2050年社会では、思考コードのB軸は生成AIでどうにでもなっているので、開成と富士見丘と八雲学園は、偏差値ではなく、それぞれの教育環境デザインの特色によってえらばれることになるだろう。

★幸い、私立中高一貫校で、20世紀型教育次元にいる学校はもはやない。21世紀型教育に移行している。A2B2のポジションの学校の中に、B2C2のポジションにシフトしようとしている学校がある。さて、どうするかなのである。2025年中学入試は、こんなことを考えないで、21世紀型教育次元でとどまりつづけるかもしれない学校を選んだら、どうなるだろうか。。。

★もちろん、学校と個人は違う。今はまだB3C3のポジションの学校はないが、生徒個々人は、そこにいる才能児がいるものであるからだ。

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2024年8月29日 (木)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(06)八雲学園 父親も感動する学校

★私学展の八雲学園のブースを訪れた後、知り合いにバッタリ。八雲学園の娘を通わせている父親です。つもる話を一通りした後、そうそう娘に「お父さんありがとう。八雲学園を見つけてくれて」と言われてねと、目が潤んでいるので、それはよかった、本当によかったと共感を表現しながら、なにかあったのですかと尋ねてみました。

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★すると、中学3年生でサンタバーバラの研修から帰ってきた時、娘の中で世界が何か広がったようなのですと、その感動を伝えてくれたんですよと。

★私立学校とは、生徒にとってのみならず、父親にも、もちろんふだんは母親といっぱい話しているのでしょうが、感動が伝わっていくものなのだと改めて感じった瞬間でした。

★しゅとも9月号には、八雲学園のイエール大学との国際音楽交流についての記事が載ります。9月1日に是非見てください。

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2024年8月28日 (水)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(05)富士見丘 グローバル教育の真髄

★東京国際フォーラムでの私学展でもたくさんの受験生・保護者が富士見丘のブースに並びました。7月に行われた首都圏模試センターの合判模試の志望校データでも、冨士見丘は昨年比増だと聞き及んでいます。人気の秘密は、グローバル教育に欠かせない部活動の強さです。テニスは中学でも高校でも全国で優秀賞を獲得するほどです。少林寺拳法も強いですし、模擬国連部も全国大会で活躍しています。

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★そして、多様性の受容システムが凄まじいわけです。留学生や帰国生は、英語は抜群ですが、日本語は不得意という場合、個別最適化のサポートが手厚いわけです。逆に日本の生徒の場合は、英語が得意でないという場合があります。英語のサポートも個別最適化なわけです。そして、英語が得意な生徒にはネイティブスピーカーがさらにその言語の才能を伸ばす個別最適化のサポートをする体制ができています。それは国語が得意な生徒に対しても同様です。

★つまり、富士見丘にとって、英語も日本語も言語としてサポートする個別最適化のシステムがあるわけですね。

★英語や日本語を、学習指導要領の教科の枠組に収めていると、このようなサポートは放置されます。

★教科横断とか学際的という言葉は、今の学習指導要領で注目されているのですが、まずは、指導要領が規定しているカリキュラム越境型ができるかどうかなのですね。教科横断型だけでは、学習指導要領内で、グローバル教育にはマッチングできないのです。この生徒の具体的な才能に応じた個別最適化は、世に言われているものよりもはるかに痒い所に手が届く大胆で細密な学びの環境なのです。これぞグローバル教育の真髄です。

★一般的なグローバル教育はマニュアル的なプログラムが多く、富士見丘のようなグローバル教育の真髄を見落としがちなのです。AIやOCTで個別最適化などと言っていますが、それは教科書内の話で、教科書越境型の対話ベースの個別最適化は、生成井AIでもまだまだできないのです。当面2050年までは、ここは教師の腕の見せ所ですが、富士見丘のような教師陣はなかなか得難いのです。

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2024年8月26日 (月)

探究の次の次元が見えてきた~2027年新学習指導要領

★2027年以降に新学習指導要領の改訂の方向性は、時代と共振するので、どうなるか予測しやすいですね。国立教育政策研究所も表立って新しい学習指導要領の方法論的な研究はまだ公表していません。では改訂する予定はないかというと、そんなことはあるはずがないのです。2027年はSDGsの到達目標年2030年前夜に相当します。これを無視した動きになるはずがありません。

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(たとえば、ムーンショット目標4とムーンショット目標10の場合)

★すでに内閣府は2030年から2050年までにウェルビーイングな地球をつくる国家的規模の開発事業を始めています。2020年ころから公開され始め、現行学習指導要領の本当の目的がこれだったということがわかります。グローバル教育やSTEAM教育、そして両方をまとめる「探究」は、この開発目標を拡大できる高度人材を確保するために教育のピッチを上げたのでしょう。とはいえ、まだムーンショット目標に飛べるほど熟してはいません。

★一方で、国のために教育があるわけではないという方もいますが、今や政財官学と個々人が協働して地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクに立ち臨まなければどうしようもない地球及び人類の危機に向かっているのです。

★もちろん、それに賛同するもしないも私事の自己決定ですから、それぞれが意思決定すればよいのです。

★しかし、学習指導要領は包括的な公の教育を創出するので、そこはムーンショット目標に掲げられた高度技術を理解しあるいは自ら高度技術を創造するようなクリエイティブクラスを生み出す必要があるのです。

★ムーンショット目標は10個ありますが、それぞれつながっています。目標10が今年加わったことにより、それが見える化されました。化石燃料を使い続けて社会課題を解決しようとしても、元の木阿弥なケースが多いわけですが、核融合によって1グラムで8トン分のエネルギーが創出されるならば、あくまで理論的な数値でしょうが、かなり希望がもてます。温暖ガスも排出しないし。

★そのためには、そうなればよいとかそうなるべきだか道徳的な言動だけでは足りず、文理融合的な技術を駆使して、実際に生み出していく高度技術の知が必要です。

★グローバル教育やSTEAM教育、そして探究はまさにこの次元に飛べるようになっていくでしょう。高大連携も今のところこの技術においては中高と大学はギャップがあり過ぎますから、そこを埋めるプログラムが発動するでしょう。

★そうはいっても、中高段階でそのような施設はないですから、その前提の「問いの力=思考動コンセプトレンズ」を同時に身につけるプログラムを開発する必要もあります。

★高度人材は思考動できるエンジニアリングやテクノロジーを駆使していくことになるからです。公共政策や公衆衛生、地球規模の災害対策なども構想しつつ。

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2024年8月19日 (月)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(01)文化学園大学杉並

★2日目の私立学校展早朝、準備のため会場を歩いていると、文化学園大学杉並のブースで理事長松谷先生と入試広報部長の西田先生がスタンバイしていました。ダブルディプロマに中学から接続できる体制を整え、非認知能力も認知能力も、メタ認知能力も身につけて、社会の困りごとを生徒の興味関心ある学びの分野で解決してくリーダーがたくさん輩出されている学校として、人気が高い学校です。

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★現行学習指導要領に変わる議論が行われる前夜である2013年あたりを機に、私立学校は、難関大学に合格するための知識力という認知能力を豊かにする学びだけではなく、モチベーションや情熱、考える力、行動する力といった思・考・動の非認知能力やメタ認知能力を豊かにする学びも開発していきました。

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★文大杉並も同様です。生徒がⅠの教育環境の中で学び時期は、久しくたちました。

★ですから、同校は、このⅠの領域を足場に、いよいよ新たな次元にシフトする準備ができたと認識しているようです。それが何であるかは、これからのお楽しみだそうです。それにしても、不易と流行の循環が次元を変えていく広がりに転ずる仕組み、そのコアは何でしょう。松谷理事長は、1つは何といっても人材戦略ですねと語る。確かに、今人的資本を豊かにすることは、教育の世界を超えて共通の課題です。

★私立学校の経営者として松谷先生の手腕はさすがです。

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2024年8月16日 (金)

極めて当然だけれど改めて重要な「個性」の質の大きさ フュージョンの時代へ

★工学院大学附属の教頭田中歩先生が同校中3のオーストラリアの研修から帰国して、メールを頂きましたが、やはり生徒のリアルな成長がすばらしかったようです。今度詳しくお聞きしますが、歩先生の生徒中心主義的な学習観(学習者中心主義と学校の公式用語では言っていますが、歩先生の教育活動は先鋭的な生徒中心主義だと勝手に思っています)はゆるぎないなあと感じました。徹底的に生徒が成長がする教育環境デザインをするのだけれど、歩先生の「知」は教師側から見た「学校知」ではないのです。経験的な知も学校知に回収されがちですから、そのような経験も大切にしていますが、学校を超える“One Earth”としての「超学校知」の環境もデザインしています。

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★学校知はクリエイティブティを支える基本的な世界の原理を学ぶところです。学習指導要領だけでは足りないので、工学院は破格のグローバル教育やSTEAM教育を実施しているし、その両方を探究活動にうまくつなげています。その基本原理を使うわけですから、生徒は同じように思い、考え、行動するはずなのですが、当然そうはなりません。

★それぞれ個性がありますから、それぞれ独特の思いと考えと行いが表出してくるのです。そこにクリエイティビティが生まれているわけです。しかし、学校知はやはり日本の国の制度的な制約は免れません。しかし、海外大学など進学する時、それ以外の知が必要になります。

★しかし、それは世界の基礎原理が足りないということではないのです。原理は世界共通ですから。では何が違うのか、それは「個性」です。当たり前のことを言うようでなんだということなのですが、でも実際は、その個性は主観的なことで、客観的な原理を優先するというアンコンシャスバイアスが意外とあるものです。

★歩先生は、生徒中心主義という活動を身体を張って遂行しているのは、この「個性」の質の大きさを大事にしているからです。だから、オーストラリアで成長する生徒の姿に感動できるのでしょう。もちろん、オーストラリアにもオーストラリアの学校知があるのですが、日本とはまた違うところもあるのです。世界を経めぐる工学院は、このズレを生徒が感じ取る対話力を育てています。

★このズレの融合体が、「超学校知」になるわけです。超学校知×学校知が、個性と社会貢献を生み出す工学院の教育なのだと改めて感じるわけです。フュージョンの時代です。

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2024年8月 6日 (火)

PLIJサマーキャンプ2024 STEAMがコアテーマ

★昨日から3日間、東大駒場ⅡキャンパンスでPLIJ(一般社団法人学びのイノベーション・プラットフォーム)サマーキャンプ2024が開催されています。

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★日本私立中学高等学校連合会の会長吉田晋先生も顧問としてかかわっているので、新しい社会や教育について学んでくるようにと促され、オープニングの講演に参加させて頂きました。テーマは「STEAMを通じた探究力とグローバル人材の育成」でした。

★産官学が協力して立ち上げていて、初等中等教育段階でグローバル人材及び高度人材を育成する新しい学びを広げていこうという感じのコミュニティです。私たち東京私学教育研究所では、教育の枠内ですが、知の創造とそのスキル及びその知財を守るうリーガルマインドについてどうしても中心になるのですが、今回登壇された有識者の方々は、大学人、財界人、自治体の組長がキーノートスピーチをしていました。

★知の側面、経済の側面、行政の側面から広くグローバル人材や高度人材をいかに育成していくのかそれぞれがビジョンと具体的な取り組みについて語られていました。そして、知の側面は、かなりおもしろかったです。

★というのも、大学人は2人登壇され、1人は東京大学総長の藤井輝夫教授です。もう1人は東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授だったからです。藤井総長は、めちゃくちゃおもしろいOMNIプロジェクトの話をされました。

★この海洋観測技術は、まさにSTEAMの結晶で、地球と人類社会の課題を解決するグローバルSTEAM人材が活躍するプロジェクトです。麻布出身らしい発想だなと。というのも麻布の理科の中学入試で、深海では光が届かないが、植物の光合成に変わるシステムがある生物現象を素材にしていたことがあって、一般には光合成の定番の問いが出題されるのに、そのことは既知として未知を拓く問いを出す発想と親和性があるプロジェクトの話です。

★深海には「地球の電池」という鉱物に酸素が生成されているかもしれないというような謎がまだまだあります。そこに挑む発想は、麻布の中学入試でも示されているように、中高段階で十分に育めるという格好の事例です。

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★一方小泉准教授は、あの小泉先生です。テレビのコメンテーターで有名人です。Youtubeでもロング対談をいくつもされています。実に面白いのは、社会をみるときに、私たちは教育の場面で、軍事的アプローチはあまりしないでしょう。平和教育の中の一部として捉えていると思います。それは政治も実は同じです。公共を中心とする社会科の中の1情報として捉えています。

★教育に政治や軍事力の話を持ちこむのはあまりに高度な政治上の問題が横たわりセンシティブだからです。

★ところが、近代民主主義の国際政治のダイナミズムの中で生きていく時、軍事力、経済力、教育力は3点セットです。ただ、1989年ベルリンの壁崩壊後、日本の場合は戦後からですが、国際政治は、軍事力から経済力、経済力から知(教育力)へと変遷しているという理想が現実にあるかのような未来社会が描かれてきました。それぞれをマッスル、マネー、マインドと置き換えて、3Mの変遷といった感じで、語られてきたものです。

★しかし、地政学的リスクが高度になっているところから、再び軍事面から国際政治を問う時代がやってきて、そこで一躍有名になったお1人が小泉准教授です。

★小泉准教授が語ったテーマは「物騒な世の中の眺め方」でした。インテリジェンスという意味での情報を収集し国際政治のダイナミズムを読み解くそのスキルについての講演でした。国際政治の動向を読み解くには、スーパーハイレベルな人工衛星情報は欠かせないし、多言語の理解は必須です。

★まさに小泉准教授自身がグローバルSTEAM人材の典型なのですが、実におもしろいのは、何か重要な情報がICTによって得られるわけでもないし、どこかのシンクタンクがいち早く新情報を教えてくれるから、それらを頼りに読み解くわけではないというのです。

★あらゆる情報を徹底的に読むことによって、未知の既知情報や既知の既知情報の背景に未知のものがあることに気づくというのです。何よりも不確実で得体のしれない未知の未知情報に気づかないでいるのがもっとも危ないわけで、そのためには情報をアナログだけれど徹底的に読みまくる。

★そのうえで、ICTやフィールドワークで別角度のアプローチに出会えればさらに読み解きの確率があがるというわけですね。

★世界中に流れている多言語のニュースをどう処理できるかがカギなのだと。

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★東京の私立学校が行っている探究やPBLも実はそのことに気づいています。大学入試の総合型選抜も、そのような広さと深さと仮説的思考とその検証の方法など必要とするところが増えてきました(SFCの大学院で研究し、学究的な探究や総合型選抜の対策など小手先ではない本質的な学びを押し進めている神崎史彦先生の著作が増刷りされているのはこのことを示唆しています)。

★今私の周りで行われている多様な研修は、今回もそうでしたが確実にグローバルSTEAM人材をつくる教育環境デザインが描かれています。今回のサマースクールは、6つのワーキンググループに分かれて、しかもそれぞれWG6チームずつですから、かなりの多くの政財官学の先生方が集結して、今回のテーマについて熱い議論を交わしています。「参加者の見解集」も事前に配布されています。STEAMの新たな考え方やコンセプト、実践例などが豊富です。

★こんなに創造的な教育が行われているのかと驚き、希望がもてました。

★それから、キーノートスピーチの財界側からの登壇者は、日本経済団体連合会副会長でアサヒグループホールディング株式会社取締役会長兼取締役議長の小路明善氏でした。日本の経済の再興を果たすべく初等中等教育における具体的なビジョンとアクションプランについて語られました。米国の小説家レイモンド・チャンドラーが代表作で書いた「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」という言葉を最後に語られたとき、驚きました。具体的な教育プランといい、最後のこの言葉は、まさに私立学校の建学の精神と親和性のあるマインドだったからです。あまりにプロテスタンティズムの発想に、日本の財界の奥行きの深さを感じました。

★そしてもう一人、大分県知事佐藤樹一郎氏。あまりに有名で、大分県を教育キングダムにしている具体的な手腕の事例は圧巻でした。まるで東京の私立学校で行っている留学制度やDX・GXプロジェクト、ハーバード大を中心とする米国大学の学生との連携プログラムなどが公立学校全般に完備されているかのようです。しかも、時空を超える学びの教育環境デザインまで挑戦しています。これは今年4月省令改正によって示された高校の柔軟な36単位の画期的な活用のモデルになる可能性があります。

★大分の地経学的な戦略もなるほど有効だと思いました。おそらくこの成功事例は他の自治体にも影響を及ぼすでしょう。

★今回のサマーキャンプで感じたことは、STEAM教育やグローバル教育によって、生徒1人ひとりが地球の自然と社会と精神の循環リソースをいかに活用できるのかというヒントがいっぱいあったということです。One Earth Projectをゆっくりではありますが進めている私にとって本質的な学びになりました。

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