グローバル教育3.0

2019年5月18日 (土)

工学院を語るわけ ダブルPBL

★2014年以降、工学院が時代に対応する教育を行い、同時に世界を変える教育を行っているという二重性について、多くを語ってきた。取材も行いその都度その様子をメモしてきた。しかし、その記事の正当性、信頼性、妥当性は、読み手には、なかなか判断がつかない。出版社の情報誌に登場するシンクタンクの見識者のように、頻繁に公の雑誌に登場するわけでもない私は、実際にお会いした人以外は、ピンとこないのは当然だ。

★ブログもSNS時代スタート時には、ブロガーとかいう言葉が流行ったが、今ではもっと最新のSNSが登場して、長々と文章で表現するのはどうなんだと疑問の声も聴く。

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★出版社だと毎度おなじみの偏差値が高い学校の記事はたくさん出てくるが、そうでない学校の情報はなかなかでてこない。でもどんな学校も最初から偏差値が高かったわけではない。麻布だって、一期生は10人もいなかった。洗足学園や鴎友学園女子の偏差値も、当初は40レンジ前後からスタートした。

★学校とは進化するものだ。そういう意味で、2014年以降の工学院は注目していたのだ。私がただ語っていてはホンマノオトの独断と偏見、主観に過ぎないと思われるのも、そりゃそうだろうなと私自身思いつつ、にもかかわらず書きたくなるのだ。

★そんな思いでいたが、昨年末から、工学院の教育全般が公の情報誌や雑誌で取り上げられる機会が多くなった。オッーと思っているうちに、大学進学実績も出るようになってきた。サンデー毎日(2019年5月19日号)の「難関大学合格者 10年間で伸びたベスト500校」という特集で、難関私大の関東・甲信越エリアで、工学院は100位にランクインしている。

★私立高校だけに絞ると、42位である。首都圏私立中高一貫校は300弱あるから、たしかに工学院の大学進学実績の飛躍は相当なものだ。

★一方、晶文社「首都圏中学受験案内2020」に掲載されている思考コードから「深い思考力」を入試で出題している学校のランキングを出すと、首都圏の共学校の中で、第3位となる。これも、晶文社編集部が掲載しているデータから言えることなのだ。

★つまり、アドミッションポリシー、ディプロマポリシーにおいて世間の目に触れる部分で工学院の教育力の一端が表現され始めたわけである。

★こうして、受験生にとって魅力であるカリキュラム、進学実績を出すカリキュラムの中核である工学院のPBL型授業について書くことは、いよいよ意義があるということになるのだ。

★今、教務主任の田中歩先生は、工学院の教師になって2年未満の先生方とプロジェクトチームを立ちあげている。PBL型授業のリサーチやブラッシュアップ、新しいPBL型授業など、かなり創発的なチームをつくっている。私も、光栄にもときどき手伝いに出かける、授業リサーチは、各先生方の50分授業をまるまる観察して分析して、シートをつくり、それを共有しながら授業終了後の10分休みに、廊下で立ち話をするわけだ。

★田中先生と一緒にする場合もあるし、そうでない場合もあるが、基本授業リサーチは、先生方のタレントを結果的にエンパワーメントすることになる。

★昨日は、中間試験直前の授業を見学しに行った。中間試験直前期間は、多くの場合、テスト対策講座になる。いつものPBL型授業とどう変わるのだろうかと。しかし、ダイレクトにテスト対策をするだけでははなかった。

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★柳田先生の世界史の授業は、四大文明がテーマだったが、現代の環境問題を解決するために四大文明のどんな点を生かすことができるのか、プレゼンテーションするものだった。そして、プレゼンの後のフィードバックのところで、エンパワーメント評価すると同時に、テスト範囲の知識を問答するというPBL型授業だった。

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★中村先生の生物(化学)の授業は、光合成と呼吸の比較を問答していたかと思えば、化学反応という現象をどう科学的にとらえるか、身近な問題からディスカッションしながら考えていくPBL型授業が展開していた。中村先生は、常にいまここでの現象を科学的なものの見方に置き換える問答を繰り返しているのが特徴的である。

★今回も、梅雨の季節を迎え、洗濯物を干すと臭いが気になるだろうが、その臭いをできるだけ消すために洗濯するときどんな工夫をするのかと。スライドでは、洗濯洗剤のパッケージがいくつか映し出され、あとは生徒は図録で調べながら、考えていく。

★生徒たちは、図録にある、酵素の特徴、温度、湿度との関係、PHとの関係などのグラフを活用しながら紐解いていく。いくつもの条件のレイヤーを重ねて、絞り込んでいく。おもしろかったのは、行きつかなくてもプレゼンをするというところだった。ゴールに行き着いたチームと行き着かなかったチームのプレゼン内容の比較が、思考錯誤のプロセスを共有することになるからだという。

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★新海先生の中3の数学は、順列と組み合わせの範囲を寺子屋型PBLで展開されていた。ハンドアウトが巧みに制作されていて、進むにつれて、壁が少しずつ高くなっていく。セクションごとに個人ワークをして教え合う。その段階で、先に進めないことがあるから、チームごとにアドバイスしに新海先生は飛び回っている。

★数学は、最近接発達領域を生徒と教師が共有する対話と最近接発達領域の仮説を前提にしたハンドアウトというファシリティーを活用するとこに重要な意味がある。

★生徒にハンドアウトの構成について尋ねると、計算→基本問題→応用問題→発展問題となっていますと回答するのかと思っていたが、「置換」操作が複雑になっていきますよ。例えば、この問題なんかは、最初2を1に置換、再び1を2に置き換えていくところに気づくかですねと教えてくれた。

★どうやら、中間テスト勉強をダイレクトにしているかと思えば、もっと大事な学びを生徒は経験しているようだ。

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★新海先生は、大学時代、統計学とプログラミングを研究していた。直接、数学の問題を解決することが、間接的には、もっと大きな問題に生徒が興味を持つように、とくにAi社会に突入する時代に生きる生徒にとって、そこに思いを馳せながら授業は展開したいのだと話してくれた。

★そのとき、ふと振り返れば、柳田先生は、四大文明の問題を解決する中間試験の学び以上の学びを行っていたし、中村先生も目の前の現象を通して、科学的思考を常に経験できる授業を展開していた。

★カーネギー・メロン大学のランディ・パウシュ教授が、末期がんで亡くなる前の年、「最後の授業」というシリーズを家族のため、学生のため、同僚のため、世界のために行った。余命宣告を受けていたから、終身教授として大学が準備してくれたのだろう。感動的な授業で、今では本にもなっているし、YouTubeで見ることもできる。

★教授が、自分の幼いころの学びを説明するところで、“head fake”という名で「間接的な学び」について語っている部分がある。フットボールを一生懸命やっていたころがあった。練習はきついし、楽しいというわけではなかった。フットボール選手にもなれなかった。でも、人生にとって大事な学びを体験できたと。

★工学院のチーム田中の先生方のPBLはだからこそ、Problem based Learningではなく、Project based Learningなのだと腑に落ちた。田中歩先生は、このような、観察→分析→対話→シェアという授業リサーチや研究会を構築しようとしている。

★平方校長は、このPBLのうち問題解決に力点をおくのは、高2.高3で、それを戦略的PBLと呼ぶのだと。そして、問題解決を通して生徒一人一人が自分にとって大事なものを発見してくことに力点をおくのが、高1くらいまでで、それをエンリッチメント(拡充型)PBLと呼ぶのだと語る。「ダブルPBL」システムとでも呼びたくなる。生徒の内発的モチベーションが湧き出てくるのは、このダブルPBLの力点のバランスが、生徒の成長と共に変容するのだろう。それは今年一年田中歩先生といっしょに歩きながら見極めていくことになると思う。 

★とにも、ランディ・パウシュ教授がいまこうしているのは、幼いころの“head fake”の学びがあったからだという体験とシンクロする発想が、工学院にはあるということだ。それは受験生にとってますます魅力的になるだろうし、大学進学実績もますます出るようになるだろう。

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2019年4月22日 (月)

21世紀型教育の意味(15)知識と知るというコト

★21世紀型教育というと、知識ではなくて考えることだという話になる。しかし、これは標語だったり、商品広告のコピーみたいなもので、本意ではない。20世紀型教育が知識を憶えるためのモノとして扱ってきたことに対し、それとの違いはわかりやすく表現しただけである。

★本当は、知識は、知識が形成される過程が記憶された種であり、その種が芽吹く環境設定が学びであるということなのだ。しかし、こういうとわけがわからないということになる。だから、知識を憶えることが勉強だと思っていることに対し、憶えるのではなく、考えることが重要なのだということになってしまった。

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★エッ!ということは知識の中に収納されている考える過程を引きだすだけで、プログラム通りの人生を歩かなければならないのと思うかもしれない。たしかに、多くの場合そうだったのかもしれない。画一的教育なんて言葉もあった。

★しかし、種は環境によって成長の仕方も花弁の美しさの度合いも違うし、品種改良だって昔からある。個性もあり、イノベーションもあるのだ。

★問題なのは、種の名前だけ憶えて、それぞれの種の成長の、つまりここでは思考のメカニズムを学ぶ機会が、ほとんどなかったというのが20世紀型教育だった。では、21世紀型教育ではその思考のメカニズムを解明できているかというと、残念ながら、思考のメカニズムが作動する、つまり比ゆ的には、種が芽吹く環境づくりをするファシリテーターなるもので満足している段階にいるということだ。

★医療であれ農業であれ、現場と実験と学術研究が循環するシステムになっているのに、教育は、すべて現場の出来事で、実験と学術研究が循環するシステムを構築していない。

★実験や学術研究はもちろんあるが、それが全部現場の教育活動の効果をあげるノウハウ研究に終わっているのだ。学びの社会への影響、学びの自己への影響、学びの脳神経系との関係などは、社会学、心理学、脳科学などに任せられている。

★知識と知るというコト(つまり考えるというコト)の関係のメカニズムを学問的に解明する機会が訪れることを期待している。

★私の場合は、U理論がベースになっている“generative scribing”とタキソノミーとコンピテンシーを掛け合わせた“思考コード”を結び付けて、メカニズムを先生方と研究しているが、やがては脳神経科学と結びつかなければと思っている。

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2019年4月13日 (土)

21世紀型教育の意味(08)聖学院 授業デザイン研究会アップデート 学習する組織とU理論を統合 ①

★聖学院の先生方と授業デザインのアップデート方法を模索して10年が過ぎるだろうか。そのとき聖学院の教師ではなかったがステークホルダーの1人として児浦先生もかかわっていた。学習する組織とU理論をベースに研修を模索していた。

★ところが、そのときの若きメンバーが今は聖学院の基盤のリーダーとなり、児浦先生も聖学院の教師となってから、急激に聖学院の教育の質はアップデートしまっくっていたし、当初の「思考力入試」が、さらにパワフルになった。学内は創造的雰囲気、ワクワクする気持ち、自らの想いに深く深く歩んでいく空気に満たされるようになった。

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★そして、今春その雰囲気が受験生やその保護者の共鳴共振共感を得て、多くの生徒が果敢に挑戦してきた。3つの思考力入試も応募者は100名を突破したし、思考力入試だけで30名の入学があった。特待入試も応募者が集まり、結果偏差値も3ポイント以上上昇した。

★今年は児浦先生は、21教育企画部長であると同時に広報部長(実は国際部長でもある)でもある。教育活動のラインナップをわかりやすく発信するだけではなく、思考力入試セミナーなど経験も大切にする広報活動を行い、教育活動の生徒と教師の内なる絆と信頼感が、いかに学びの意欲を生みだし、生徒一人一人が自分の才能を開示し、仲間と協力して、共に飛びたてるようになるかシェアする広報活動も行っていく。

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★そのためには、教師や生徒がさらに一丸となることは重要である。児浦先生は、ステークホルダーを巻き込み風通しのよい学校組織を強化しているが、一方で内側から研修もできる人材を仲間同士が協力して形成できる学習する組織を創ることにも余念がない。

★ちょうど今年は、生徒も増え、団塊世代の教師も退職する時期にあたる。それゆえ、新しい教師をたくさん迎え、盛り上がっているこの時期に、きちんとビジョンを共有し、チームワークをパワフルにできる学習すす組織を創る仕掛けをしている。それに、学校が3ポリシーのゾーンが循環し、良質重力場を創っていくには、感性と知性の豊かな葡萄の木ができなくてはならない。この葡萄の木をシステム思考というが、これを活用するのは学習する組織の基盤でもある。

★聖学院の先生方は、互いにメンタルモデルを理解し、寛容にそれを尊重し合って、豊かな信頼関係をもともとつくる特徴がある。これはおそらく毎朝礼拝を教師も生徒も全員で行っているからだろう。また協力するパワーも強いが、一方で自分の道を追求する自己マスタリーも大事にしている。ウェル・ビーイングは、自己の道と仲間との支え合いがあって成り立つが、これが「学習する組織」の醍醐味である。

★もちろん、教師の学習する組織は、そのまま生徒にも感染する。聖学院全体が学習する組織として発展し、そのベースにシステム思考という知の葡萄の木が豊かに成長する。この学習する組織と知の森の好循環を教師も生徒も参加して創っていく学校に、自覚的になろう(メタ認知も豊かにしよう)というのが、児浦先生のビジョンであり、その戦略が教師の授業デザイン力というソフトパワーの強化なのだろう。

今年の聖学院のリーダーのラインナップが同校ホームページで公開されている。なるほど創造的かつ戦略的リーダーの布陣ということのようだ。

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2019年2月 6日 (水)

新タイプ入試―学びの原点。それは世界を変える問い。(04)共立女子 伝統主義と進歩主義の中庸の意味

★もともと共立女子は、大妻同様、伝統主義教育で人気を持続していた。しかし、ここ数年、進歩主義的教育(アクティブラーニング×グローバル教育)も実施し、伝統主義と進歩主義の程よい中庸路線が、大きな注目を浴びている。

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(写真は、同校サイトの「2020年教育改革への取り組み」から)

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2019年2月 4日 (月)

新タイプ入試―学びの原点。それは世界を変える問い。(03)かえつ有明 スーパー中高生のインキュベーター

★かえつ有明は、昨日で中学入試を終えた。広報部長宇野岳史先生と広報主任内山誠至先生によると、応募者総数は、1210名。昨年が1649名だから、隔年現象。しかし、一昨年1187名だから、実数は変わらないか増えているかもしれない。

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新タイプ入試―学びの原点。それは世界を変える問い。(02)文杉の躍進の意味

★今年の文化学園大学杉並(以降「文杉」)の中学入試応募者総数前年対比は112%(2019年2月2日現在:首都圏模試センター調べ)になった。最終的にはさらに伸びるだろう。文杉の人気は、大注目を浴びた高校のDD(ダブルディプロマ)コースの準備教育を本格的に中学でも実施する準備が整ったからである。

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(文杉高1DDコース。理科の授業シーン。)

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新タイプ入試―学びの原点。それは世界を変える問い。(01)駒込の進撃の意味

★今年の駒込の応募者総数前年対比は119.1%(2019年2月2日現在:首都圏模試センター)。伝統主義的教育に進歩主義的教育を掛け合わせ、子供たちが未来を拓くためいまここでの教育環境の最適平衡をつくりだしている。

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(写真は同校サイトから)

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2019年2月 3日 (日)

八雲学園 5月から始まる本物教育の画竜点睛の完成

★昨日2日午後入試、八雲学園に立ち寄った。快晴の中、少し険しい表情の受験生もいた。2日目と言いながら、4回目の受験かもしれない。疲労がたまり不安が募っているのかもしれない。八雲学園のウェルカムの精神に触れて平静と自信を取り戻して欲しいと願いながら見守っていた。

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2018年9月28日 (金)

GLICC 塾業界でグローバル教育3.0牽引 日本の別次元の文化資本を創出

盟友鈴木裕之氏が主宰している「C1英語×高次思考」塾GLICC。グローバル教育3.0(GE3.0)の環境そのものを塾業界で初めて作っているのではないだろうか。

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2018年9月27日 (木)

八雲の野望 教育はロックンロールだ!

★八雲学園の理事長・校長近藤先生は、ピアノを演奏しながら歌い、空手の達人でもある。一般財団法人の東京私立中高協会の会長も久しい間務め、文武両道ならぬ多彩な教養私学人である。まさにリベラルアーツのヒーロー。よって自ら経営する八雲学園の野望は、実に高邁である。

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( カナダで開催される今年のRound Square国際会議に行く前に、ニューヨークで世界のトップを体験する八雲の高2生5人。)

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