21世紀型教育

2024年12月29日 (日)

次期学習指導要領議論始まる(2)スマート教育にならざるを得ない X-skills(変容スキル)の必要性

★前回掲載した文科省の資料を見て頂ければわかるように、要は車や船がスマホ化しているように教育もスマホ化、つまりスマート教育にならざるを得ない。エネルギーをはじめとする物質的なリソースばかりか、人的資本力が不足しているのだから、当然だ。しかし、時間や空間、DX装備、インフラ整備などハード面だけの整理整頓では、スマートになるにも限界がある。もっとソフト面が必要である。

Xskills

★スマホのハード面は、プロセッサーや記憶装置、バッテリー、カメラなどだろう。ソフト面は、なんといってもOSであり、外部からインストールするアプリなどが代表的。

★時期学習指導要領に限らず、学習指導要領の改訂は、いつも教科書という記憶装置、ハード面としてプロジェクターやデバイス、時間割という画面の配置などが中心。OSをどうするのか、授業というアプリをどうするのかという話は教師が現場でつくってねと。

★それでいて、教員の資質能力は大切だと。しかし、その資質能力の実装アプリや、それを不具合なく動かすOS機能はあまり組み立てられない。

★記憶装置の使い方は教科書ガイドなど膨大に多いが、ガイドが無くては動かないというのでは、ソフト面が形成されていないというコト。

★IBならTOKのような知のソフトがある。日本だって道徳があるじゃないかと言うかもしれないが、その道徳が教科教育や探究などに転移学習機能を持っているかどうかは人による。

★ところが、TOKや欧米の哲学という授業は、各教科の授業など他の教育活動に転移学習機能を持っている。

★この転移学習機能を生み出す力こそ教員の資質能力だが、そこは目に見えないままなのが日本の教育。だから日本の教育で精神というと根性になっていまいがち。

★これでは、どんなに学習指導要領を改訂しようと、OSができない。それは現場に任せたよということなのかもしれないが、だったらそうはっきり明言したほうがよい。そのための自由な時間と空間という余白をつくるとよいのだが。

★そんなことをいっていもそこは変わらないので、自分たちで創っていくしかない。そのような転移学数機能をもったOSを生み出すスキルをX-skills(変容スキル)と呼んで、このスキルをデザインしていく動きを来年から3年間していこうと仲間の先生方と動き始めた。

★知のOSと知のアプリなどなどを生み出すスキルをX-skillsとして動きたいということになった。

★言語化はもちろんしていくが、生成AIの活用は必須である。言語化は知のOSで、生成AIを使うことは知のアプリというレトリックになるかも。

★これによって、混合型カリキュラムマネジメントから化合型カリキュラムマネジメントになりスマート教育に移行することができるだろう。学数指導要領を逸脱することなく。

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2024年12月27日 (金)

次期学習指導要領議論始まる(1)質の充実化へ

★12月25日、文部科学省は、中央教育審議会に「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問。審議項目を見ると、新しい学びの方法論は、現状の新学習指導要領以上のものは一見ないですが、生成AIはたんに「情報」の中に納まりきれる感じではなさそうです。

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★また。教科、探究、そのほかの教育活動の結びつきをなんとかしたいという方向性は今まで以上にありそうです。

★全・定・通の制度的見直しや教育課程の時間の伸縮自在な柔軟性もこれまで論じられてきたことを踏まえています。

★社会に開かれたとありまますが、それがグローバル化の時代の国内に限られているのかどうかはわかりません。もちろん国際教育というのはこれまで同様あるのですが、外国から見た国際教育なのか日本国内からみた国際教育なのかは、暗黙の了解があるようです。というか憲法にのっとっているので、当たり前ななおかもしれません。

★私立学校がグローバル教育というとき、もちろん複眼的なので、学習指導要領の想定するミニマムの範囲を突破することになります。

★ダイバーシティの考え方も私立学校と公立学校とは現実問題の次元では違いがでてきます。

★教師の資質能力の向上についても、物理的時短が前提になっていますから、私立と公立ではやはり違いがあります。

★私立学校の場合は、同一時間でも各教科間や探究などとの生徒の思考や感情のつながりが構造化され内的連関が循環するので、密度があがります。物理的時短だけではなく、学びの内的連関についても目を向けています。

★この連関に生成AIも結びつくので、その密度はどんどん高くなります。

★生産年齢人口が少なくなっていくわけですから、学びは多様な項目の「混合」ではなく「化合」というプロセスを重視していく必要があります。少ない時間や人材で、大きな成果を上げる学びや仕事のやり方を考えるという学びのイノベーション時代が次期学習指導要領が求めていることでしょう。

★そうでなければ、現状のの膨大な学習指導要領の学習項目はこなせません。

★学習指導要領は、最小限これは学んでほしいということらしいですが、最小限がこんなに多くてどうするのだろうと途方に暮れている現場もあります。

★もし、審議事項にあるように、子供たちの興味と関心を喚起したいのならば、もっと選択意思決定が作動するような学びの項目の作り方が必要でしょう。DX化は、こういうところで本来有効なはずです。

★これも試練ということで、今まで10時間かっかていたことを3時間ぐらいでできるような学びの内的連関の構造を組み立てるしかないようです。

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2024年12月15日 (日)

2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功

GLICC Weekly EDU 第196回「富士見丘中学高等学校ーグローバルスタディから世界に羽ばたく」を拝見。いつもは、コメンテーターとして参加しているのですが、米国渡航のため飛行機の中にいたりしてそれがかなわなかったのですが、それがかえって客観的に見ることができ、改めて驚いたのです!というのは、グローバル教育を推進していくと、たいていの場合、学習指導要領にプラスアルファーしていく傾向があるし、グローバルクラスとそうでないクラスがセパレートされる傾向もあるのですが、富士見丘は、学習指導要領そのものをグローバル教育化しているのです。ですから、帰国生ばかりか、国内の一般生全員が同校の6カ年一貫教育、もしくは高校3年の教育の中で、グローバルコンピテンシーを身につけていけるのです。

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★中学のクラスや高校のコース分けは、4種類です。英語4技能のコンピテンシーをCEFR基準で分けているだけです。便宜上わかりやすいので、英検のスコアでわけていますが、学習指導要領の教科のコンテンツはどのクラス/コースも変わらないのです。

★このCEFR基準で分けるということは、4技能のコンピテンシーで分けますから、英語の技能面で分けているのではないのです。CEFR基準というのは、多言語の共通コンピテンシーの基準ですから、英語であれ、日本語であれ、スペイン語であれ、フランス語であれ、何語であれ、コンテンツを分析したり、統合したり、批判したり、創造したりする思考力・判断力・表現力の非認知能力・認知能力の発達段階は同じなのです。

★ですから、学習指導要領のコンテンツへの学びのアプローチを4つの段階に分けて学んでいけるのです。この包括的思考力を日本語と英語の両面で学んでいくというのです。富士見丘生全員がそうなのです。日本語>英語→日本語≥英語→日本語≒英語→日本語=英語というバイリンガルのコンピテンシーのバランスが最終的にC1日本語=C1英語以上になっていくという感じなのです。

★ですから、日本語≥英語の言語能力で入学してきても、日本語≦英語の言語能力で入学してきても最終的にC1日本語=C1英語以上のバイリンガルになって卒業するのです。

★そのために日本の優れた体系化された学習指導要領のコンテンツをそのまま、このグローバルコンピテンシーのグラデーションに合わせて個別最適化したグローバル教育化へのトランスフォーメンションに成功しているのです。

★4つにクラスやコースの編成上分けますが、実際には、先生が個別最適化したコーチングさながらの指導をしていきます。

★「経験→探究→ハイブリッドフィードバックシステム」というPBL型プロセス循環が、すべての教科の授業に埋め込まれています。それがコースに応じて英語活用量が増えていくのです。

★探究のプロセスでは、多様な高大連携のロールモデルも使われています。ハイブリッドフィードバックは、オンラインやアプリを使ったり対面のチュータリング方式を使ったり、両方が巧みなコンビネーションで使われています。そして、このフィードバックの特色は、エンパワーメントエバリュエーション型なので、自信をもって自ら改善して進める評価システムです。包括的評価のみならず形成的評価の両方が活用されています。

★英語教育ではなく、バイリンガルな包括的な教育を行っていると言っても過言ではありません。

★ですから、数学もSATーMATHなど英語で数学も行われています。

★生徒1人ひとりのキャリアデザインをいっしょに創っていくチュータリングやコーチングが基本です。

★こんなふうに、私の独断と偏見で一般化してみました。このような富士見丘の教育方法のディスプリンは独特ですが、あくまで学習指導要領をベースにしているところが、インターナショナルスクールやIBスクールとは大きく違うところです。特別な語学力を持っている生徒のための学校ではないのです。日本のグローバル教育のスーパーロールモデルですが、おそらく他校では真似ができないでしょう。

★それをいかにして実現したのか?その具体的な教育実践は、ぜひ動画をご覧ください。

★とにかく、ほかのグローバル教育は、かなり外部団体の助けを借りながら行うのですが、富士見丘は日本人の教師であれ外国人の教師であれ、富士見丘の内製型・内生型教師なのです。このような教師陣を揃えるのは、現状の日本の教師の育成環境上ほぼ無理だからです。この富士見丘の教員養成、つまり人的資本形成のシステムについては、いつかお聞きしてみたいと思います。

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2024年12月14日 (土)

八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育

本日、八雲学園は英語祭を行っています。この行事は、文化祭と同じように八雲学園の総合的な教育の集大成ともいえます。もちろん、英語の八雲の象徴であり、広く中学入試市場に知れ渡っています。中1と中2の英語劇がメインですが、そこには音楽があり、ミュージカルがあり、9カ月プログラムの報告があり、ラウンドスクエアの国際会議参加の報告もあります。クリスマスシーズンを味わえるイルミネーションもあります。

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(八雲レジデンスからの夜景、八雲生が訪れるサンタバーバラの街のイルミネーション、そして八雲学園のクリスマスイルミネーション)

★もともとケイトスクールとの姉妹校になったところから、革新的英語教育が展開したところから始まっています。その集大成のパフォーマンスとして、文化祭や英語祭を通して英語劇を行ってきました。米国のエスタブリッシュスクールでは、ドラマエデュケーションは重要な教育です。

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★ケイトスクールも例外ではなく、劇場施設もあるぐらいです。米国の名門大学によっては、書類の中に自分の通った学校の施設を説明する箇所があるところが多いのです。そのためというわけではないでしょうが、米国のスタブリッシュスクールは、テニスコートやサッカー場、馬術場などを記載したり、劇場があることを記載するところがあったりします。

★リベラルアーツをきちんと学んできたことが明快に伝わるわけです。ケイトスクールはスポーツクラブに入るのは必須です。体育はリベラルアーツの重要なポイントです。劇場もリベラルアーツのレトリックという大事な項目を象徴しています。

★日本の学習指導要領では、こういう体育や演劇に対する明確な意味を表現できていないので、八雲学園がこのようなリベラルアーツを十分すぎるぐらい取り入れていることに大学で教育を研究する学識者は気づけないのかもしれません。もったいないですね。ここにあなたがたが求める教育のエッセンスがあるのに。

★そして、イエール大学との毎年の国際音楽交流で、ミュージカル部であるグリーが結成されました。最初はサークルから始まりましたが、すぐに大人気になり部活に昇格して今も人気の部活です。

★さらに、もはや説明するまでもないですが、UCサンタバーバラと八雲レジデンスとサンタバーバラの都市を拠点に9カ月プログラムが結実しています。

★このプログラムは、もちろん英語教育の象徴ですが、サンタバーバラが同時にITのスタートアップで成功している方々居住しています。ちょっと北に行けばシリコンバレーですからね。実際UC系大学の中でも理系の研究で有名なのがサンタバーバラです。

★共学になって、当然サイエンスやテクノロジー、エンジニアリングに興味をもつ生徒がどんどん増えていくことでしょう。

★この英語祭における英語劇は、演劇の探究であると同時に、音楽の探究でもあります。文学的言語能力の探究でもあり、舞台芸術の探究でもありましょう。グローバルでSTEAM教育、特にA(アーツとリベラルアーツの両方)の教育、探究教育を通して生徒が身につけた全人的な総合力のパフォーマンス祭です。

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2024年12月12日 (木)

八雲学園をカリフォルニアから考える(6)中学選びの考え方・価値観を変える

★医学博士成田奈緒子さんが、中学受験準備や学校選びの考え方を変えることを提案しています。最終章で、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんと対談もしていますし、ご自身大学で教鞭をとるだけではなく、小児科医として子育ての相談にのる団体も立ち上げていますから、塾業界とも距離を置ける立場から、中学受験現場を鳥の目と虫の目の複眼視点で論考しています。特に身体の健康、メンタルの健康、人間関係の健康、生きる意味の豊かさを幼児期から大人になるまでにウェルビーイングな生き方にしていく自分の総合的な力をいかにつくるかということについて、脳科学的なグローバルな視野で考えているのが参考になります。

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★編集部による上記の新書のタイトルの付け方が、私にとってはちょっと共感的でなくて購入するのを躊躇しましたが、ネット記事で一部抜粋が紹介されていて、極めて本質的で受験生や保護者に寄り添ったアイデアが書かれていると直感し読んでみました。

★1つのことを除いて、ほぼ納得のいく話でした。この1つのことも、受験生・保護者の方に対しては十分に思いやりのある文脈ですから、同書の目的としては全く問題ありません。ただ、私立学校側としては、そうとらえては、教育の質もあげられないし、新たな経営もできないし、何よりウェルビーイングな社会を形成する気概や<考動>にブレーキをかけるなと思った次第です。

★その一つのこととは、完全なユートピアの学校はないから、自分の期待とギャップはあったとしても、それはどこの学校でもそうで、自分がどのように捉えるかが大事だというような趣旨です。

★たしかに、期待のし過ぎはよろしくないのですが、私立学校側としては、建学の精神やパーパスを共に創っていこうという意欲をもって入学する生徒の期待を裏切らないように全力を尽くしたいという気概があるものです。もちろん、神様ではないので、何でもできるわけではありません。しかし、お互いを理解して共鳴共感共振して人生をつくっていこうとする点で一致しているならば、その都度アップデートしていけるのが私立学校のユートピア的なマインドなのです。

★その決定的な例が、完全なユートピアは存在しないという境界線を懸命に乗り越えて進化してきた八雲学園の近藤理事長校長と共に教育を積み重ねてきた先生方です。

★八雲学園の中3の担任の先生方は、中3全員がカリフォルニア州のサンタバーバラの八雲レジデンスでの研修に当然同行します。その他多様なサンタバーバラを拠点にしたプログラムにも同行します。生徒ばかりか先生方も、全員が6年間に少なくとも一度はカリフォルニア経験をするのです。

★「八雲レジデンスーケイトスクールーUCサンタバーバラーサンタバーバラの中心地」のスクウェアをぐるぐるラウンド経験するのです。日本のすばらしさと限界、米国のすばらしさと限界の両方が見えると同時に、ケイトスクールの生徒やUCサンタバーバラの教授陣や学生が、そのすばらしさと限界を分析・認識し、問いを生み出し、限界を超えようとしている姿に驚愕するのです。それは生徒ばかりではありません。先生方もそうです。何気ないキャニオンと海岸の間におしゃれでフラットな雰囲気の街並みがありますが、そこで生徒とショッピングしたり食事をして驚くのです。日本では特別なところに行かなければ経験できない生活の豊かさを。もっともサンタバーバラに来ている時点ですでに特別なところに来ているわけですが。

★サンタバーバラのキャニオンから街並みとその向こうの海を眺めながら、同時に星々を眺めながら、Only One Earthの息吹を素直にストレートに受容します。

★完全なユートピアはないと思った瞬間、そこはデストピアです。ユートピアとデストピアは表裏一体だと私立学校は思っています。ユートピアを不完全なままでよいのだと思うことは、デストピアのままでよいと思うのと同じなのです。

★シアトル時代からカリフォルニアの友人ネットワークを豊かにしてきた八雲学園のグローバル教育の歴史は、近藤理事長校長にこう語らしめます。「これでいいと思うことはないのですよ。常に進化し続けようと思っています」と。不易流行の心意気のオーラを近藤先生は常にまとっています。私学人のスーパーモデルであるゆえんです。

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八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生

★八雲学園の3カ月留学には、毎年16人くらい八雲生は参加します。3か月の中に夏休みの期間をいれます。すると、その期間、UCサンタバーバラの学生寮を使い、同大学のキャンパスで、同大学の教授に英語という言語能力や言語文化を対話型で学びます。その他の期間は、サンタバーバラにある八雲レジデンスを使ったり、ホームステイなどを組み合わせます。

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★最近、高大連携がトレンドですが、八雲学園は、夏休み1カ月みっちりUCサンタバーバラで学ぶわけですから、随分前から海外大学と高大連携を行っているといえます。イエール大学とも国際音楽交流を毎年行っていて、これも高大連携のバリエーションの1つでしょう。

★このような日本の大学では考えられない、多様性が維持され、学部レべルでも研究への道をしっかり進めていく学生との交流が、刺激的でないはずがありません。海外大学に進む八雲生が爆増しているのは、そのような海外大学との高大連携が影響しているのは間違いないでしょう。

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★UC系の大学は、どこでも学生が真剣にそして大量の論文を読み漁り、理系も本格的な実験をしながら大学生活を過ごします。ラウンジでランチをとりながら、ラップトップをたたきながら、学んでいます。対話もしていますが、知的好奇心が溢れた感じです。

★実に羨ましいですね。自分の子どももUC系レベルの大学に留学させたいと思いますよね。

★でも、学費と寮費など生活費を合わせると年間1000万円はかかります。一般にはとても無理だと思われがちです。スカラーシップもありますから、挑戦すると必死に立ち臨みます。

★そして、実はご家族の皆さんも俄然頑張るケースが増えているのです。中学入試の準備をするときから、八雲に入学して6年後、海外大学を想定して、自分たちはどんな仕事をするのか、あるいは起業するのか、あるいは投資するのか、やはり必死に考え行動します。

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★偏差値競争などすっとばして、UC系大学レベルの海外大学を想定する中期のライフプランを立てると楽しいのです。それに、そこを目指して頑張っていると、進路変更しても、上智やICUなどもちろん早稲田や慶応なども自ずと開けてきます。そもそもそのような生徒を受け入れられるようにこれらの大学は入試改革をどんどん行っているのです。

★海外大学は、知性や感性、そして包括的脳神経身体系が豊かに育っていなければ合格は難しいのですが、こんな全人教育を経験できる八雲の6年間なら、中学受験競争で燃え尽きてしまうという心配もないわけです。他と比べて自分を考えるのではなく、自分の中の自分を鍛えていくのですから。

★八雲学園のような海外大学との高大連携を行う私立学校が増えてくれば、そこで学ぶ生徒の能力だけではなく、家庭の経済状況も向上します。日本の経済を支えることになります。

★中学受験のデメリットばかり、メディアは取り挙げがちですが、そんな雰囲気をポジティブに転換する方法を考案してもらいたいものです。ゴーレム効果をピグマリオン効果にシフトしたいですね!八雲学園に大いに学びましょう。

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工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味

田中教頭のインタビュー第2弾は、受験生を対象しているため、わかりやすく読みやすいけれど、示唆される部分もさりげなく盛り込まれています。

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(工学院×文大杉並×和洋九段のIBL型対話WSで)

★たとえば、こんな箇所です。

 どんなに静かな生徒でも、内に秘めた思考は必ずあるので、”伝えるべき時に伝えられるように”していく。逆に発語の多い生徒は他者の理解を得るためにまずは思考をまとめる力が必要かもしれません。それぞれに応じた力をつけていき、思考を拡げる機会を増やすこと、グッと一歩を踏み出す勇気を持たせることが私たちの役目です。

★工学院は、IBLやPBL型の授業をしています。したがって、心理的安全な対話の環境をデザインし、生徒1人ひとりがオープンマインドを生み出せるようにしています。

★しかし、このオープンマインドは、心理的状態だけではなく、オープンマインデッドネスというその心理的な受容と偏見を持たない公平な態度をとる様子をしっかり見守っている様子がこの箇所には書かれています。

★開放的というのは、笑顔で、言いたいことを何でも言えることではあるのですが、そのような態度はオープンマインドを生み出す多様な態度の一つに過ぎないのだと田中教頭は語っているのです。というか実践しているのです。

★ケンブリッジインターナショナルスクール認定校ですから、イギリスの教育もしっかりと受容しているのが工学院です。日本の小仲学校だと手を挙げてよく発言する生徒は積極的で、内向的で熟慮している生徒は消極的だと評価しがちなのですが、イギリスの教育では、そこは議論され、内向的だけれどオープンマインデッドネスとしての態度をとることができないわけではないことを理解しているわけです。

★オープンとは、快活であるなしにかかわらず、公平な眼差しを持っている自分軸の視座のことを、田中教頭は示唆しているのです。そして、そのうえで、GROWTH MINDSETを生成しているのです。グッと一歩生み出す勇気というGRITもですね。

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2024年12月11日 (水)

2025年中学入試動向(33)聖学院 STEAM教育 成果着々

★永井健太さん、おめでとうございます!聖学院のサイトに私にとっても嬉しい記事が掲載されています。<「日本図学会第一回高校生デジタルモデリングコンテスト」審査委員長賞を受賞!~デジタルモデリングで描く未来~>がぞれです。ぜひご覧いただきたいのです。

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(写真は、聖学院サイトから)

★12月8日(日)、日本図学会主催の第一回高校生デジタルモデリングコンテストにおいて、聖学院の永井健太さん(高1)が栄誉ある審査委員長賞を受賞したということです。このコンテストは、高校生たちがデジタルモデリング技術を駆使し、創造的なアイデアを形にする挑戦の場として注目を集めているようです。

★デジタルモデリングとかプロトタイプとか、いったい永井さんがどんなすてきなクリエイティビティを発揮したのかについては、同記事に詳細にまとめられていますので、そちらを是非ごらんください。

★私が嬉しいと感じたのは、なんといっても、聖学院を訪れたとき、ファブラボで生き生きとプログラミングなどをしている永井さんに会ったことがあるからです。それ以外でもすさまじいチャレンジングなスピーチに驚かされたこともあるのです。また、英語のイマージョン授業におけるミニ模擬国連のワークショップでも溌溂と取り組んでいる姿に出会っているからです。時間があれば、ファボラボでいろいろ制作しているんでいよと笑顔で接してもらったこともありました。

★その永井さんが受賞したというのですから、感動しないわけがありません。

★それと、もう一つ嬉しいことは、聖学院のSTEAM教育や環境(また新しい空間もできたようです。今度見学にいきたい!)の成果が着々と生まれているということなのです。

★聖学院のSTEAM教育は、部活でだけではなく、授業の中できちんと行われていて、一部の生徒だけが取り組んでいるわけではないのです。永井さんの多くの仲間がいるということが、今後ますます期待が高まります!

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八雲学園をカリフォルニアから考える(4)ケイトスクールとの類似点いくつも

★サッチャースクール、チャドウィックスクールなどカリフォルニア州のいくつかのエスタブリッシュなプレップスクールを見学したことがありますが、念願かなってケイトスクールを見学することができました。そして、驚きました。そのあまりの破格さに。何より姉妹校とは知っていましたが、八雲学園とあまりに類似点が多いことに感動しました。

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★その類似点は八雲学園の東京の八雲の地とサンタバーバラの八雲レジデンスの両方の学び舎を合わせて、ケイトスクールを見ていくと、それが見えてきます。ケイトスクールの図書室を見て、八雲学園のおしゃれなそして没入できるようになっている光の空間デザインは、ケイトスクールの図書館を見て、なるほど共振していると感動しました。

★それから、何気なくケイトスクールを歩いていると、目の前に広がる山また山。ケイトスクールの敷地だというので驚きです。がしかし、八雲学園のレジデンスも同じ山々(キャニオンが南北に走っていて、お互いに延長線上にあるので当たり前なのです)にあるのは全く同じです。

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(向こうに見える山もケイトスクールの敷地です)

★八雲学園の中3生は全員八雲レジデンスを中心に2週間訪れますが、そのスケジュールの中で、姉妹校ケイトスクールとの交流があります。両校ともラウンドスクエアの加盟校でもあります。その理念IDEALSの中の1つアドベンチャーも重要なプログラムです。あの山の中のハイキングを八雲生はケイトスクールの生徒と行います。

★ハイキングといっても、ピクニックではありません。この山は険しいし、キャニオン地形ですから、スカンクは当たり前のようにでてくるし、たくさん動物とも出会います。ただ、ケイトスクールの敷地ですから関係者以外は厳重なセキュリティが機能していて入ってこれないので、安心です(動物の中で人間が一番怪しい?)。アメリカのこのようなアドベンチャーは、日本でも有名なプロジェクト・アドベンチャー(PA)に代表されるように、自然の中での生活にチャレンジするものです。

★ワクワクもしますがドキドキもします。自然の表情の違いを見抜く5つの眼を研ぎ澄ます必要があります。鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目、心の目などですね。その目は1人では実現できません。協働作業です。勇気もいります。しかし、1人では不安です。互いに勇気を持つようにエールを贈ります。

★生徒が将来困難な局面に出会う度に、勇気と協力という非認知能力とメタ認知能力を駆使して<考動>できる体力が必要です。それを鍛えるエスタブリッシュスクールならではのプログラムです。

★そして、授業の教室が、ケイトスクールは15人がラウンドテーブルを囲んで学ぶ大きさというスモールサイズです。1クラスが15人までの小規模校なのです。ダイナミックな広い空間で寮生活しながら、授業の時には、小さなスペースで学ぶ。ケイトスクールが日本文化を好む発想です。そうですね。茶室発想なのです。あるいは坐禅堂かもしれません。

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(ほとんどのクラスに、このラウンドテーブルが設置。大きなスクエアテーブルも時にありますが)

★アメリカと日本の教育の違いは、クラスサイズですが、八雲学園はバラザミーティングなど、スモールサイズで対話型の学びを多く展開しています。バラザミーティングはケイトスクールもラウンドスクエア同士校として共有しています。

★このように、見た感じ似ているところもあるし、外見上は違うけれど、内面的発想は似ているというというところが随所にあります。

★ケイトスクールは、スペイン語クラス、中国語クラスなどの他に日本語クラスもあります。日本語クラスは人気で、15名満席です。そのクラスのメンバーが八雲学園を訪れて交流もしています。全寮制の学校なので、夜生徒たちだけで学ぶクラスがありますが、それは先輩たちがチュータリングします。チューターは誰もができるわけではありません。教師が認定した生徒のみです。このチュータ経験は、大学のアプリケーションで必要な経験を記載する上で有効です。リーダーシップのポイントになるのでしょう。その選抜にみな意欲を燃やすそうです。

★八雲学園にも、いろいろなシーンで、リーダーになる機会がありますが、同じようにオーディション機能があります。最近では総合型選抜などありますから、たしかに有効です。もっとも八雲学園は、大学のためという理由でリーダーシップを鍛えているわけではありません。大学入試や進路指導の違いは、教育行政の在り方の違いが反映するので、それはしかたがないですね。

★日本の場合、大学に行くために教育があるということはあからさまにはないのですが、欧米では大学に行くための教育と言って何ら問題ないのです。というのは、日本の入試のあり方は、教科の力をみるものですが、欧米の大学は、全人教育そのものを評価するシステムですから。

★もし、八雲学園が東大に入れることを目的にしたら、このような全人教育のような総合力を養う教育はしなかったでしょう。しかし、八雲学園の設立当初からカリフォルニア州と縁がずっと続いているのですから、その建学の精神が基礎学力だけを大事にする教育ではなかったのですね。

★それにしても、八雲学園の学費は、ケイトスクールの10分の1なのです。ラウンドスクエアの加盟校ですから、ケイトスクールのような学校の生徒と国を超え、グローバルな交流ができているのです。海外のエスタブリッシュスクールの学費は、みなケイトスクール並みです。

★それに、ケイトスクールに入学する確率は15%です。

★損得の問題をいうと品がないかもしれませんが、八雲学園は本質的な意味でお得なのではないでしょうか。本質というのは、教育行政の枠組のなかで、国を超えるエスタブリッシュな教育にチャレンジしている学校という意味で人間存在の本来的在り方が生徒の未来に映し出されるのですから。

★この気概と勇気こそ、私立学校のスーパーモデルたるゆえんです。

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2024年12月 9日 (月)

八雲学園をカリフォルニアから考える(2)インターナショナル≦グローバル

★カリフォルニア州は、日本がすっぽり入る面積で、平地が多く、人口も4000万人弱。それでいて、経済規模はドイツや日本に迫る勢いです。米国に属しながら州というグローバル市民社会として相対的に独立しています。連邦制度に属しながらも州としての自治権がかなり強いわけです。これは、日本と東京の関係も同様なのですが、日本国民は市民社会的発想はあまりないかもしれません。あくまで日本≧東京というイメージが濃厚です。この点における法制度的あるいは権利関係的な事実はきちんと比較研究しなければなんともいえないのですが、イメージとしては、下のような図の集合関係になると思っています。

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★ですから、八雲学園の<破格な>グローバル教育の<破格な>の意味するところは、インターナショナルとしての国家に従属する海外の自治体というイメージでグローバル教育ではないのです。これは日本の各自治体の国際理解教育に相当するイメージなのです。

★しかし、八雲の場合は、インターナショナルとしての国家に属すると同時に、自治体として独自の自治権を有している市民社会においてグローバル教育を行ているという点において<破格>なのです。

★この違いが何を意味するのか、国際教育では、国において「主体的」な人間力は確立できますが、グローバル市民社会の1市民として、国を相対化し、自由に独立して国を超えてリーダーシップを発揮するマインドとスキルは育たないでしょう。

★国際理解教育においてのグローバルリーダーは、政府高官あるいは国の代理人として活躍する企業人などのように特別な権威と権限を有しなければならないのですが、グローバル市民社会におけるグローバルリーダーとは、そのような権威や権限を持つリーダーになることもできますが、その前に1人のグローバル市民社会のメンバーとして、判断して、意思決定して<考動>(思考と行動はDNAのようにらせん状に連結しています)できる独立した自由な人間力のことをいうのです。

★八雲の近藤理事長校長自身は、このような確固たるグローバルリーダーたる私学人です。ですから、東京都や政府とも正しい法と権利は共有しつつも、私学というグローバル市民社会に貢献する人間力が生まれる拠点として、私学の自治権や経営権は保守するのです。

★このような私学人の精神が、グローバル教育にも浸透しているのが、<破格>ということでしょう。

★受験生は中学入試直前を迎えています。受験生の未来がどのスタンドポイントに立って人生を送るのか、未来社会を描くとき、どこから描いていくのか、実は大事なことです。偏差値競争社会は、日本の国内社会でしか通用しない指標です。グローバル社会だって競争はありますが、自分はこの地球上において何ができるのか、そもそも何者なのか、独立した自由人としてのクオリティの競争社会です。偏差値という世界では認定されていない団体の創り出した指標に依存して生きているとどうなるかは、火を見るよりも明らかです。

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