昭和女子大昭和 好奇心の個別最適化(2)
★2月14日(土)昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校で、授業公開研究会が行われました。そのことはすでに紹介していますが、ここでは見学させていただいた大野智久先生の「生物基礎」の授業についてコメントします。テーマは「免疫システム」です。授業は、まず振り返りあるいはすでに生徒が自宅で学んできている反転授業的な雰囲気で始まりました。免疫システムを図解で講義をしていきます。
(この記事をGooglenotebookLMのインフォデザインで描いてもらった。私のカスタム指示がうまくいかなかったので、謎の漢字のような文字が散見されますが、そこはご容赦ください)
★この図解の説明がまずおもしろいのです。高1が対象ですから、免疫システムの専門用語だけで語っていくのではなく、すでにNHKや映画で「働く細胞」が放映されていますから、あの闘いの様子を彷彿させるレトリックも交えて説明していきます。しかし、図は専門的ですから専門用語はそこにはあります。客観的な知識とレトリックの言葉のイメージのズレが実におもしろいのです。
★さらに、電子黒板を使っているにもかかわらず、説明する場所を指すのは、指でその場所を直接示すのです。この気遣いがすばらしいのですが、実はこの一連の図・専門知識・レトリック・直接指で説明場所を示すという方法は、学力を向上させるVTSのいうアーティスティックな手法で、まさにSTEAM教育がさらりと挿入されているのです。
★そのことが明快に了解できたのは、講義の後に、4種類の映像によるそれぞれの免疫の食作用や攻撃の様子を流したときです。というのも、それぞれ2分から3分の映像をみたあと、3つの問いについて考察することになったからです。もちろん、映像で打ち出されている免疫の動きをよく観察しながら考えていきます。一つは、事実を確定する、二つ目は驚いたことなど意外性について書くこと、そして3つ目は気づいたことや発見したことをまとめるのです。
★映像は、クラスルームの中で共有できているので、画面を2分の1にして、片方は動画を流し、もう一方はまとめるシートに書き込んでいくというワークが行われたのです。そして、それは、チームで行われますから、生徒は対話をしながら進めていきます。
★<講義→観察→対話→問いを考察→編集→振り返り講義>という流れになっています。50分の授業ですから、最終的何か大きなものを「つくる」ということまでは、今回はしていませんが、問いの解答を編集するという意味では「つくる」というタスクがはいっています。
★同校の探究のコンセプト方程式は、「さぐる・ためす・ねばる・つながる・つくる/おもしろがる・ふしぎがる」なのですが、50分の授業の中にもきちんと収まっているというのが驚きでした。教科と探究をいかにつなげるかは、多くの学校でも頭を悩ませる問題です。
★たいていは、コンテンツやコンピテンシーで結びつけようとするのですが、中途半端になりがちです。ところが大野先生は、教科学習と探究を同じ学びの構造でつないでいくわけです。
★しかも、何より「おもしろがる・ふしぎがる」という好奇心をゆさぶる授業になっているわけです。MITメディアラボのプレイフルラーニングそのものなのです。
★ただ、この学びの環境デザインを創りあげるには、相当手間がかかっています。たとえば、免疫の食作用の様子を顕微鏡でみているだけでは、実は動画のように2分で動きがわかるわけではないのです。しかも、そもそもそのような撮影はマウスを使うにしても倫理の問題があります。これらの問題をクリアし、なおかつ長時間を2分に短縮しながらも早回しを感じさせない動画を創るには、プロに任せるしかないのです。ですから、大野先生は、外部リソースと連携し、このような動画ができればよいという企画・提案・アドバイスなどプロデュースすることによって、動画を作成してもらうわけです。
★ここに学校が外部と連携するとはどういうことかがはっきり了解できます。決して、外部リソースに丸投げせずに、コミュニケーションをとったり、アドバイスまでしながら連携していくことの醍醐味がここにはあるのです。
★50分授業にかけるここまでの準備とデザイン。感動を生み出す心揺さぶる授業は、並大抵の仕掛けではできないでしょう。
★この50分ではあるけれど、ダイナミックなプロセスの仕掛けは、どこかの地点で生徒は好奇心を抱きます。どこで好奇心を抱くのか、最初は関心がなかったとしても、図を見たときとか、映像を見たときとか、友人と対話した時とか、解答記述を編集しているときにとか、生徒によって世界が変わって見えるシーンが訪れる瞬間は違うでしょう。
★感情と知識と論理とイマジネーションと対話と。複眼視点が満載の授業。私たちは自然を前にし感動した時、人によって見ているところは違います。そして、それは偶然もあるでしょうが、人とは違う自分の好奇心とマッチするところが自然にhあるからでしょう。
★大野先生の授業が無数の視点からアプローチできるように仕掛けられているのは、もしその仕掛けが一つの視点からだけであるならば、それぞれの生徒の好奇心すべてがマッチングすることはなかったでしょう。
★好奇心の個別最適化が生徒の側から自然体で適合されるようにデザインされている最高の授業でした。
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