2026年麻布の国語の入試問題 やはり傑作
★昨日麻布中学の入試がありました。中学入試の傑出した問題と言えば、麻布の問題が輝いているのはあまりにも有名な話です。私も毎年楽しみにしています。そして、やはり今年も傑作でした。国語の入試問題は、いつも超長文の物語が一つ出されます。30年以上前には、詩と物語、論説文と物語ということもありましたが、それ以外は物語一題です。だいたい新刊本が扱われます。今年もそうでした。
★柊サナカさんの「天国からの宅配便 あの人からの贈り物 (双葉文庫) 2025/3/12」の中の「七十八年目の手紙」が取り扱われていました。途中から最後まで出題されています。省略した最初の部分は、簡単なあらすじが書かれていますから、物語の内容を理解するのに問題はありませんが、ある程度推理することも必要です。
★素材文の切り取り方で、受験生の読書の推理力も測れてしまいます。
★それに、なぜ柊サナカさんの物語を出題したのか?それは私のような素人にはわかりませんが、おそらく麻布の国語の教師の中に、文学を通して現代と普遍的な人間の葛藤の重なりを見抜いている方がいるのでしょう。
★柊サナカさんは、その意味でも注目されていて、「天国からの宅急便」は文庫でシリーズになって出版されています。今回のは第二弾ですね。物語というと、心情読解なのですが、今年の素材は、心情の変化だけではなく、時代を超えた人間関係と主人公の人間関係を重ね合わせる物語構造になっています。ですから、この重ね合わせを直観的につなげるにしろ、共感的な感情も読み取る必要があります。
★登場人物に読者が共感するというのも大事ですが、登場人物同士の共感性を共感する読み方。しかもその共感の難しさを超えて共感する対話のメカニズムを、ひいおばあちゃんが教師時代に言語ゲームを生徒とともに行ったというエピソードまで織り込まれていて、この言語ゲームが実は言葉とは何かという問いが物語の通奏低音として響き続けているわけです。葛藤解消のコードになっているのです。
★それゆえ登場人物の背景には歴史的で現代的な共通する葛藤があります。物語なのだけれど、社会課題を掘り下げる探究のきっかけになる物語でもあります。個人ではどうしようもないそれでも解決しなければならない嵐のような社会問題が吹き荒れている中でも友情はあるというリアリティ。それが78年前から目に見えない形でつながっているひいおばあちゃたちの友情といまここでの主人公の友情とがスクランブルするのです。
★しかも、そのスクランブル交差点には、ベトナムの友人、インドネシアの友人をはじめとして多くの多様な人々との共感的つながりも出てくるのです。
★グローバル教育はそりゃあ大事だよ。探究もそうだよ。しかし、このような物語の構造を論理的に読み取ったり、共感のメカニズムをメタ的に解明したりする言語能力や思考力、表現力を養うことがもっと大切だろうという麻布学園の根源的教育を追究するメッセージが聞こえてくるような素材選びと、素材を料理する問いの質。
★コミュニケーションや対話は確かに最高の学び方をつくります。ですが、それは物語を媒介に柊サナカさんのような作家と対話する問いを創れるかということでしょう。麻布に入学する生徒は、この門をくぐぐって入っていきます。
★それにしても、柊サナカさんの「天国からの宅急便」の第3弾は、今月2月10日に発売される予定です。出版業界の動きまでリサーチしている教師の存在。感服です。
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