問いは命がけ トゥーランドットの3つの問いともう1つの問い
★新春恒例「NHKニューイヤーオペラコンサート」を見ました。いや聴きましたかな。第68回目ということを知り、日本にオペラを広める努力が続いていることにちょっと感動。しかも今回のテーマは「歌がえがく 心のかたち」というのですから、目に見えないものを言葉と音楽とアーティスティックな時空でデザイン。何か感じるかもと初めてまともに見ました。
★オペラは「神話」か「恋と死の物語」ばかりだからで、音楽性と物語性の価値のギャップがあると思い込み、全曲を聴くということはしてこないで生きてきました。今回それは機会損失だったなと思い知りました。パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスという三大テノールのオペラのハイライト曲集しか聞いてこなかったのです。彼らが日本に公演しに来た時、チケットを購入したいくらいですから、オペラの音楽的な可能性は感じていましたが、全く浅薄でした。
★ニューイヤーオペラコンサートも全編はとても時間が足りないので、各作品の超要約版でした。しかし、物語の価値を高めるような演出にちょっと驚きました。特に最後の「トゥーランドット」のパフォーマンスはすてきでした。トゥーランドット姫が異国の王子にほかの王子の求婚の時と同じように、3つの謎を問いかけます。答えられなければ死です。異国の王子はすべて解いてしまいます。トゥランドットの心はとり乱れます。そこで、異国の王子は明日の朝までに、自分の名前をあてられたら、私は死にましょうと問いかけます。ここらへんの異国の王子を愛して名を言わぬまま死んでいく従者の娘のことは、心痛め泣いてしまい、身勝手なアッパークラスの行為に怒りを感じますが、そこはともかく、最後はハッピーエンドです。詳しくはググっていただければと。
★私がこの「問いの試練」という物語の構造は、結末や犠牲者という登場人物がいろいろ違いますが、たくさんあるなあと。この認識は発見ではなく、多くの人が語っていることです。研究論文にもなっています。竹取物語やスフィンクスの神話などそうでしょう。
★そう思うと、ユングやフロイトなんかも物語や神話を心理学的に分析していたなあと。言語学でも物語の構造として研究がされていたでしょうし、社会学的にも文化人類学的にもこの構造をどうとらえるか研究はなされているはずです。
★どの視角や視座から分析するのか実に興味深いですね。心理学的には、おそらく拒絶という「自己防衛」や「恐怖」「不安」などの象徴でしょう。同時に解かれた時の「解放感」「癒し」などが対になっているでしょう。なるほど、正解のない問いが世の中的に人気がないのは、結構命がけだからですね。
★また、自分を理解してくれる人の探索の象徴でもあるかもしれません。解けなかったら死だというのは、ちょっとサディスティックだったり、孤独の極致ですよね。誰もどうせ理解してくれないという。
★社会学的には、階級格差の象徴でもありますね。入試問題の問いが、選別の手段として使われていると思ってしまっているところに、現代社会の危機が潜んでいるかもしれません。問いの重要性をこの視角で捉えることはリスクがあるかも。もちろん、リスクは危険であると同時に好機でもあります。ただ、だれにとって好機なのでしょう。
★文化人類学的にはイニシエーションの象徴かもしれません。古い自分を捨て新しい自分になる儀式は、文化人類学の一つのテーマでもあります。
★神話という物語構造としては、聖域の境界線を象徴しているかもしれません。結界とか。異世界転生が流行るのも、もしかしたらこういう構造が時代を超えて受う継がれているからかもしれません。
★こうしてみていくと、問いの重要性とは、多様な視角からとらえても、抽象的には変容や解放を生み出す発想ですね。
★そして、問いは、選抜や研究に限定されるのは、もったいないですね。もちろん、資格を得るわけです、階層構造の上位を目指すわけですから、それもまた社会学的には問いの一つの機能でしょう。しかし、最近注目されているSTEAMというイノベーション教育は、もっと多様な問いの大切な働きを取り戻す教育なのかもしれません。
★つまり、この中にAという芸術があるからです。アートの奏でる問いは、自己変容であり、社会変容であり、世界変容を問いかけているのかもしれないからです。通過儀礼だとしたら、それは自分を変えるけれど、それは秩序を守るメンバーになれるかという問いです。変わるのは自分ですが、自分の内面から変わるかどうかは「?」です。
★自分を変え、社会も変え、世界も変える。なぜ?これがトゥーランドットの異国の王が投げかけた問いの解答かもしれません。
★問いについては、いろいろな視角や視座で考える必要があります。もしかしたら、これが「探究」の最終的な問いかもしれませんね。
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