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2025年10月

2025年10月30日 (木)

才能開花型成長と競争型成長

★今や子供たちの成長には2つのタイプの輪郭が明快になってきています。イメージにするとこんな感じでしょうか?

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★競争型成長は、ピラミッド型の格差構造を作り上げてきたことはだいたいイメージできると思いますが、大切なことは、自己の存在基準が偏差値などの相対的な他者との比較によってできてしまった基準です。それがもしアイデンティティ×メンタルモデルになてしまったらどうでしょう。勝ち組はそれでもよいかもしれませんが、そうでないクラスは耐えられないでしょう。

★やはりそれぞれの才能開発型成長の学びの環境のDE-SIGNしたいものです。それには、自己理解=アイデンティティ×メンタルモデルが、比較ではなく、自分自身のものであることが大切です。よく自分事がだいじだと最近言われますが、自分事になるには、他人との比較の基準ではうまくいきませんよね。

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2026年度中学入試(14) 青稜 モダンアートの空間が好奇心を駆動する

★入試問題は学校の顔というわけで、青稜中は特に新タイプ入試をしているわけではなく、大学進学実績もとてもよいので、いわゆる進学校路線一本だろうと思っていました。ところが、どうもそれは私の先入観にすぎなかったかもしれません。

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★というのも、私が信頼している研究者であり教育ジャーナリストでもある市川理香さんが、首都模試のサイトで「この春、青稜中学校・高等学校にヴンダーカンマーができました。」(2025年10月29日)という記事をアップしていたからです。

★モダンアートで埋め尽くした「驚異の空間」をDE-SIGNしたというわけです。

★同校の青田泰明校長の発想と構想の実現だそうです。印象派とかキュービズムとかではなく、モダンアートで埋め尽くす。しかもその空間をドイツ語で「ヴァンダーカンマー」と表現する斬新さ。

★ヴァンダーはワンダフルで、カンマーはルームではなく、キャビネットくらいの意味?英語でどう訳するのかというと、やはりキャビネット・オブ・キュリオシティーズらしいのです。それに室内楽の室はドイツ語で「カンマー」です。

★「驚異の空間」というより意味が広がりますね。アートの空間は、自分が求めなくても実は語りかけてくるらしいのです。建築家はそういう空間の仕掛けのことをアフォーダンスといっていますが、このことは現代文の大学入試でもでてきます。

★つまり、大事な教養というより、高校生なら身につけておきたい知性ということです。何を語りかけてくるのかは、人それぞれです。傾聴とか受容というのは、何もコトバだけの話ではありません。パフォーマンスやオブジェやアート作品など様々なモノが好奇心を駆動します。

★慶応義塾大学のKMDの教授なら、それらは知を引き出すメディアですと言うかもしれません。市川さんにいざなわれて、今度青稜の学校説明会にでも出かけてみようかな。すてきな記事をありがとうございました。

★それにしても、ググってみると、青田校長は、いろいろなメディアで教育のイノベーターという視角でいっぱい記事になっています。もっと私立学校を知る感度を高めなくてはと反省です。

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こんな私立中高一貫校の見つけ方(03)大学や企業と連携して教育の真価を発揮している学校を探す

★今やどこの私立中高一貫校でも、キャリアデザインや探究の教育活動において、大学や企業、NPOなど学外の組織と連携することは当たり前のようになりました。時々その連携活動に立ち会うときがあります。そこで気づいたことは主体性を生み出す原点は「アイデンティティ×メンタルモデル」だということです。

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(アイデンティティとメンタルモデルの共通点や相違点と互いの関係性についてCopilotと対話して、最終的にその内容をマトリクスにまとめてもらった)

★生徒にとって様々な体験は、結局自分とは何か、その自分は世界をどう把握し、影響を与えられるのかという「自己理解=アイデンティティ×メンタルモデル」の方程式を見出すことであり、その方程式の実現のための自分のメディアやツールをDE-SIGNすることなのだと。それは主体性の動きにつながっていくのではないかと思ったのです。

★学校もそして学校外組織も、実は同じように組織としての「アイデンティティ×メンタルモデル」があります。それはそれぞれ違いがあります。そして生徒自身の自己もまた違います。

★生徒の「自己理解=アイデンティティ×メンタルモデル」は、その違いの中で育っていくし、生徒は、自らその「自己理解=アイデンティティ×メンタルモデル」がどの組織が自分に合っているかどうか、違っているときはどのように自己理解方程式を修復あるいは変容していくのか自己調整していくことになります。

★このプロセスは相当複雑です。俯瞰視点と没入視点の両方が必要ですが、生徒一人では没入視点に支配されがちです。そこでプロジェクト型の探究が行われるのは、仲間との対話、外部組織との対話によって、俯瞰視点あるいは構造的視点を内蔵するようになるわけです。

★このようなところまで仕掛けられているプログラムを丁寧に作っている学校は、たくさんあります。思いつくまま挙げていきますと、昭和女子大学附属昭和、湘南白百合、聖学院、八雲学園、富士見丘、工学院、駒沢学園女子、城西大城西、成城学園、大妻中野、山脇、開成、麻布、武蔵、女子学院、和洋九段女子、サレジアン国際グループ、文大杉並、中村、芝国際、京華女子、共栄・・・。これらの学校が、生徒の「自己理解=アイデンティティ×メンタルモデル」を生み出せるのは好奇心駆動型×学習者中心主義の「アイデンティティ×メンタルモデル」をエンジンにしているかなと仮説を立てています。

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2025年10月29日 (水)

八雲学園 グローバルリーダーへの強いロードマップをDE-SIGN

★八雲学園は、グローバルリーダーを育てることを明快に宣言しています。グローバルリーダーとは、国や文化の垣根を越えて人々を導き、国際的な課題に取り組む力を持つ人物です。ビジネス分野での活躍が注目されがちですが、その力は社会、教育、文化、環境など多岐にわたる分野でも発揮されるのです。これを実現するための大きな仕掛けが、中3が全員サンタバーバラにある八雲レジデンスを拠点とする海外研修、高1のUCサンタバーバラでの3カ月海外プログラム、イエール大学との国際音楽交流、ラウンドスクエアの国際会議への参加、ラウンドスクエアの加盟校との交換留学が挙げられます。

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★そのような海外でのあるいは海外との交流体験は多くの学校は真似はできません。もちろん、国内にあっても、レシテーションコンテストやスピーチコンテスト、英語際、イングリッシュ・ファン・フェアなどたくさんの英語だけではなく異文化理解のプログラムが積み上げられています。そして、C1英語を目指す英語の授業が毎日のように行われていて、グローバルリーダーになっていくロードマップが大胆にそして緻密にDE-SIGNされているのです。

★このように、語学力や異文化理解、コミュニケーション力などの基礎スキルを習得し、次に、広い視野と柔軟性を持つグローバルマインドセットを確立し、協調性と共感力を高める緻密なロードマップを実施するには、教師が一丸となって取り組まねばなりません。そして、さらに、イエール大学やラウンドスクエアと協力する海外プロジェクトへの参加や国際チームでのリーダー経験は、戦略的思考や意思決定力を強化します。何より、このような継続的な学習と自己研鑽を重ねられるには、教師や先輩メンターとの対話する機会をチューター制度としても確立しているのは傑出しています。

★このようなダイナミックで細心の注意を払ったグローバルリーダーへのロードマップの重要性に気づきはじめた受験生が徐々に増えてきました。また、中3で、サンタバーバラにある姉妹校でもあるケイトスクールに訪問して、1クラスが15人程度であるのをみて、八雲の中学校のクラスが1クラス20人前後なのは、海外のエスタブリッシュスクールの教育環境と同質だと改めて感じて帰国してくる生徒もでてきました。

★未来の八雲のグローバルリーダーは、単なるビジネスの成功者になるだけではなく、世界をより良くする変革者として、多様な分野で活躍する存在となるミッションを、イエール大学の学生やラウンドスクエアの加盟校との交流の中で気づき、成長していくのです。このことに魅力を感じる受験生が現れてきたと副校長の近藤隆平先生と副校長の菅原久平先生は口をそろえて語ります。

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2026年度中学入試(13) 京華女子の人気を支えるもの 学びの共同体のメタ言語の生成

★京華女子は、少人数教育で人気が定着している女子校ですが、決して女子校全体が人気という風潮がない中で、その状況を持続可能にしているものは何でしょう。それは誰もが知りたいことです。先日同校教務主任の二俣潤也先生にお会いする機会がありました。そして、お話を聞きしながら、これだと思ったことがあるのです。それはすべての教科や教育活動の共通言語であるメタ言語を生み出しているからです。

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★二俣先生は、授業を通して学びの理論を4冊の本としてAmazonで出版しています。共感をベースに学びの共同体を作っている同校です。そこには心理学やキャリアカウンセラーの資格を有して、知を支えるベースである非認知能力を持っている二俣先生のリソースが生きていると推察します。

★それを土台に、グローバル教育やSDGsなどの探究活動、そして学力を確かなものにする授業が有機的につながっています。

★有機的につながるというのは、体感とかレトリック(比喩)の意味でよく使われますが、同校の場合は、そこがしっかり「仕掛けの構造化」がなされています。単なる表現ではなくリアリズムとして「有る」のです。

★学校説明会などでは、この目に見えない学びのメカニズムについては詳しくは語られないでしょう。時間的制約があるからです。目に見えないものは大事であるとよくいわれますが、学校教育において目に見えないものとは、この「仕掛けの構造化」です。

★とはいえ、二俣先生は、教育関係者には、本を出版し、その共通言語として、つまりメタ言語として「論理」の仕組みを明らかにしています。

★この学びの仕掛けの構造化が、同僚と共有され、やがては生徒も自ら使えるようになるならば、さらに学力は確かなものになるでしょう。そしてグローバル教育にも力をいれています。そのためUPASにも所属しています。海外大学への道も今後大きく開かれるでしょう。

★海外大学や2027年以降に東大や都立大、東北大を先頭にどんどん海外大学に近い入試が行われていくストーリーが進んでいます。メタ言語としての論理の仕組みは必須となります。3年後時代の変化の先頭に立っている同校の姿が思い浮かびます。

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2025年10月28日 (火)

こんな私立中高一貫校の見つけ方(02)理数教育×科学者教育を行っている学校

★理数教育に力を入れている学校といえば、開成、桐朋、本郷、駒東、海城、世田谷学園、佼成学園、桜蔭、豊島岡女子、工学院大学附属、芝浦工大グループ、渋谷教育学園グループなどとすぐに思い浮かぶでしょう。そして、さらに理数教育×科学者教育となるとどうでしょう。エッ!?理数教育とどう違うの?当然そうなりますね。しかし、たとえば、昭和女子大学附属昭和をみてみましょう。

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★1年の成果というか秋の実りが豊かになる10月、昭和女子大学附属昭和の生徒の皆さんは、サイエンスの多様な分野そして外部のステージで、研究してきた成果を発表して受賞もしているのです。

★最近同校公式facebookに投稿されたニュースを貼り付けたのが上記の写真ですが、本当に大活躍です。

★これらの成果発表の凄いところは、大学生や企業の方々と混じって臆することなく発表していることです。

★また、サイエンスコミュニケーションを行っていて、世の中にサイエンスの楽しさを伝えるプロジェクトもあります。また、中学受験生を対象に理科実験をリードするチームも立ち上がっています。

★もはや昭和女子大学附属昭和の理数教育は生徒の科学者のキャリアを拓いているといえます。科学者は大学の先生のことばかりをいうわけではありません。企業の研究所などでも科学者は活躍します。中高の理科の先生の中には博士で研究を続けている場合もあります。

★その意味で、好奇心旺盛で、自分の研究をオープンマインドで世の中に共有しようという意志と行動力があって、その共有の過程で新たな問いを見つけて、それを解決すべく研究していくという姿勢は、すでに科学者の才能を開いているといえるでしょう。

★理数教育×科学者教育までカバーしている学校は、昭和女子大学附属昭和以外に、思いつくまま挙げると、大妻、山脇、工学院、新渡戸文化、広尾、三田国際科学学園、文化学園大学杉並、聖学院などです。

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2026年度中学入試(12) 首都圏模試山下社長が展望する2027年に向けて変わる私立中高一貫校

★今年9月20日首都圏模試センターは35周年記念式典を行いました。そのことはすでに本ブログ「【衝撃!】ONETESの登場!教育市場が変わる!!」でお知らせしました。社名が「ONETES株式会社」に変わるということが宣言され、今までの中学入試の模擬試験は、もちろん継続しますが、それ以外のことも挑戦していくということなわけです。たしかにもう5年前に高校受験情報誌も出版するようになっていますから、中学受験の枠内には収まり切れない事業構想が実装され始めているのでしょう。

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★しかしながら、思考コードという多次元偏差値(偏差値を9つの領域で活用することで生徒一人ひとりの才能の特徴を発見できます)を開発し、それも実装していますから、単に中学受験、高校受験、大学受験とテスト事業を拡張するという話ではなさそうです。

★ONTESが稼働するのは2026年4月からですから、何が起こるか楽しみです。

★そんな中、現在発刊している中学受験情報誌「shuTOMO」を覗いてみると、山下社長がコーディネートしている連載が載っています。「Only One Earth Project」がそれです。首都模試編集部と対話をしながら、山下一さんがメッセージを発信しています。

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★先週、落合陽一さんが1時間語る講演を聞いてきたのですが、落合さんはデジタルネイチャー(デジタルと自然の融合する地球)の時代にあって、新しい地球危機とそれをAIなどで乗り越えていく希望について語っています。

★なんと山下社長もそこは共有されているのです。このシリーズでは、まさに地球課題を身近なところから発見し、それを解決する道具を作って実装している私立中高一貫校やその道具を作る際の数学や理科という理数教育に力を入れている学校やそもそもその道具の意味や社会における歴史的意味を検証するユニークな学びを行っている学校を紹介しているのです。

★「shuTOMO10月号」のそのシリーズのテーマは、「多様な世界体験をデザインする私立中高一貫校~UTokyo College of Designに最も早く対応」というものでした。2027年以降、東大をはじめ、都立大、東北大など新しい学部や学科を開設します。おそらく落合陽一さんの課題意識とシンクロしています。

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★そこで紹介されていた学校は、工学院大学、聖学院、駒沢学園女子、八雲学園、本郷、麻布でした。これらの学校が生徒の多様な世界体験をデザインしているということです。具体的な内容はご購読ください。

★いずれにしても、今までの1つの領域での偏差値で比べると見えてこないラインナップです。山下社長ならではの、9つの領域というか9つの複眼で見るから見える私立中高一貫校の新しい姿です。新しいと言っても、どの学校も急ごしらえではなく、すでに実践し続けてきたことなのです。

★私たちは、見れども見えていなかった教育のすばらしさを山下社長に導かれているのです。

★ONETESは、このようなすてきな価値の発見をし、それを共有していくことがベースにあるのでしょう。そして、おそらく、それは理念だけではなく株式会社という組織としてウェルビーイングな社会インパクトを生み出す何らかの仕掛け=MEDIAをDE-SIGNしていくのではと勝手に推理し楽しみにしています。

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2025年10月26日 (日)

2026年度中学入試(11) 石坂康倫先生の子どもの可能性を開花させる私立中学の教育力を探る眼差し「思考コード」

★中学受験情報誌shuTOMOには、石板教育研究オフィス 代表石坂康倫先生の連載「子どもの可能性を開花させる~私立中学の教育力を探る~」が掲載されています。工学院の中野校長をはじめ多くの学校の校長先生に直撃インタビューされている記事です。毎回興味深いのは、インタビューの後に石坂先生の教育哲学の眼差しが思考コードに結実していることです。

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★石坂先生との出会いは、東洋大学京北の校長に就任されたときでした。同校の哲学教育を探究の流れに再構築されていました。はじめ、たまたま同校が学祖井上円了の東洋哲学をベースにしているから、そこをうまく現代化するリーダーシップを発揮したのかと思っていました。桜修館、日比谷の校長を歴任していたので、哲学を前面に出すプロジェクトは当初は想像していなかったのです。

★ところが、それからときどきお会いする機会があって、お話をお聞きすると、最近は日本でも大手企業で哲学者のアドバイスに耳を傾けるのですが、石坂先生はそのような哲学アドバイザーやファシリテーターの活動もされていて、そもそも教育哲学に造詣が深いのだということに気づきました。自分はなんて浅薄であるのかと反省させられました。

★今、私立中高だけではなく、小中学校や一般市民、企業でも哲学対話が注目を浴びています。ある意味石坂先生は、多くの学校で校長として哲学対話を実践されてきたのだと思います。だからこそ、子どもの可能性を開花する眼差しがあるのだと思います。

★哲学には問いをたてるとか考えるとか正解のない問題に立ち臨むとか、いろいろな役割があると思いますが、なんといっても子どもそして教師や多くの人々が自分の可能性を開くときに哲学している瞬間に直面しているのだと思います。

★石坂先生は同連載で、インタビューするときに、その眼差しで校長先生方にインタビューしています。そしてその眼差しでインタビューのまとめをしています。

★しかも眼差しを9つの複眼(石坂先生独自の思考コード)で温かく見守っているのです。shuTOMO9月号では城西大城西の神杉校長にインタビューされていました。10月号は大妻中野の諸橋校長にインタビューされていました。

★お二人と私も対話の機会を頂いた経験がありますが、石坂先生は、子どもの可能性を開花する教育の螺旋的プロセスを9つの眼差しで、それぞれまとめていらっしゃるのに感服しました。私にとって知っているつもりで知らない両校の特色について語られているのです。

★両校とも最終的(C3)には地球課題に向き合う主体的な人間として育っていくのですが、城西大城西は、生徒が社会に働きかける向き合い方が特徴的だし、大妻中野は多様な視角から深く考えるメカニズムの養成という違いが明快になっています。広くて深い眼差しに感銘を受けました。

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中学受験情報誌shuTOMO10月号 哲学者の永井玲衣さんのインタビュー記事 渋谷教育学園幕張のような学校が選ばれるもう1つの理由

★中学受験情報誌shuTOMO10月号に哲学者・作家の永井玲衣さんのインタビュー記事が載っています。かつて池田晶子さんの「14歳からの哲学」が中学入試でも課題文として多くの学校で出題されました。文体やテーマは永井さんのほうがわかりやすいので、永井さんの「水中の哲学者たち」も出題されるでしょう。実際今年の春渋谷教育学園幕張で出題されていました。さすがです。

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★もちろん、中学入試の対策のために読むというのではなく、中学や高校、大学、社会に進んでいったとき、いろいろなもやもやな状況や解決するために思考を思いめぐらさなくてはならないときに、一見わかりやすいけれど、深く根っこに還って考える本を読んでおくというのは大切なことかもしれません。

★特に中高に入ると「哲学対話」とかその名称で呼んではいないのですが、哲学対話と同趣旨の対話が授業や探究で行われます。正解がない時代と言いながら、では正解が出る問題を演習することは無意味なのか、本当に正解はないのか、そもそも正解ってなんなのかなど自分なりに問いを生み出し考える感覚を身に着けていないと、2027年以降大きく変わる大学入試問題や社会の変化に翻弄されるかもしれませんね。

★shuTOMO10月号のインタビュー記事の中で、永井さんはこんなことを語っています。「対話の中で人々が語る言葉は、社会を反映した言葉なんですよね。その時代や状況や色濃く映し出します」と。

★生成AIと対話したとき、同じ言葉でも、生成AIが出してくる言葉は、いったいいつの時代や状況を反映しているのかチェックしないと、実は対話になっていないことのほうが多いですね。

★抽象的な言葉というとき、具体的な状況を引き出す高感度な抽象とリアルな状況がその対話のシーンにマッチしていない空虚な抽象的な言葉があります。一般にはわかりにくい難しいというネガティブな文脈で抽象的すぎるといわれがちですが、集合論のような抽象的な思考様式がないと社会を俯瞰することができません。

★永井さんの言葉はさりげないけれど、大事なことを語っています。私たちは自分のことや社会のことはその時代や状況の複雑な具体性を全部知ることは難しく、確からしさという推理をしながら対話しています。経験をしたり読書をしたり他者と対話することで、その確からしさがより確かになるだけですから、対話の持続可能性こそ大切です。

★哲学対話やその名称を使わなくても、授業や探究やそのほかの教育活動で対話を大切にしている学校を探すことも重要なことかもしれません。

★そういう意味で、渋谷教育学園幕張のように人気ある学校のもう1つの理由は、そこにあるのかもしれません。

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2025年10月24日 (金)

こんな私立中高一貫校の見つけ方(01)「グローバル探究と哲学対話と生成AI」の角度から見てみると

哲学対話が今注目を浴びています。教室の中でオンラインリサーチが行われたり生成AIの活用も徐々に広がっています。探究に限らず、教科の授業でもそれは同様です。

そうなってくると誤情報をどうチェックするかが大切になっていきます。その情報が誰が発信しているのか、どこの組織が発信しているのか、ニュースであれば大手新聞社の同じ内容のニュースを調べるとか、発信源である原典に当たるとかエビデンスとの照合モニタリングをする必要があります。

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このような情報の真偽性や真理性などを疑い信頼性・信憑性・妥当性を証明するのは確かに哲学の一部かもしれません。しかし、哲学という言葉を用いなくても、この情報のアイデンティティをチェックするのは、どの教科でも探究でも、情報の時間でも行っています。

ですから哲学対話という言葉をわざわざ使わなくても、探究で本格的な論文編集をしているところは、哲学的な議論はしているといっても言い過ぎではありません。

でもですよ、富士見丘、田園調布学園、女子美、国立音楽大学附属のようにデザイン思考やアート思考を学校全体でベースにしている学校、リベラルアーツを実施している聖学院などは、実際にもう少し深い哲学的対話を哲学という言葉を使わず行っています。

城西大城西や成城学園のように、デューイ流儀のPBLにルーツがあり、それをさらに発展させ現代化しているところは、そもそもデューイはプラグマティズム哲学の元祖ですから、哲学対話を行っていないはずがありません。

また文大杉並のようにダブルディプロマを行いそのエッセンスを学内全体で共有しているところは、カナダのBC州のカリキュラムに哲学自体があるし、探究活動にはクリティカルシンキングがマインドセットされているので、深い哲学的な学びがあります。

三田国際科学学園、サレジアン国際学園グループ、工学院、聖ドミニコ学園、広尾学園、芝国際のようにインターナショナルコースあるいはグローバルコース、国際コースがあって、ネイティブスピーカーの講師がたくさんいる学校では学びの文化それ自体に哲学的な深い学びがすでにあります。

キリスト教や仏教の学校は、そもそも哲学の基盤があります。ですから鴎友学園女子や恵泉、普連土、香蘭などのプロテスタントの学校や駒沢学園女子や世田谷学園、立正のような仏教系の学校も同様です。

開智日本橋のようにIBを行っている学校もTOKという認知哲学が行われているし、かえつ有明も哲学対話を実施している有名な先生が社会などを教えているし、帰国生のクラスでは英語で哲学を教えています。豊島岡女子も立教大学から哲学対話を実践している教授を招いて行っていたりしています。

工学院大学附属は、インターナショナルコースではやはり英語で哲学を学ぶ授業も行っていますが、数学と社会の先生が有志を対象にして哲学対話の機会を設けたりもしています。それに中学の道徳はすべて田中歩教頭(未来哲学者:教育の中で行われているようで行われてこなかったこれから注目される領域のフロンティア。誰にでも学びは開かれる感動を響かせる。)IBL授業を行っていて、哲学的・文化人類学的・精神生態系的・エトセトラな深い学びを実践しています。

開成でも哲学対話を授業の中で実践している教師もいるそうです。東洋大京北は、学祖がもともと東洋哲学者井上円了で、哲学の講座を実施しています。

哲学という言葉を使うか使わないかはともかくとして、クリティカルシンキングを通して先入観や既存の価値を覆す発想を養っている学校はすべて哲学的対話が行われているはずです。またよくリフレクションが大切だという話は聞きますが、このリフレクションが気づきをさらに深め、本質的なものの見方考え方を発見したとき、それは哲学といえるかもしれません。

そういう意味では、昭和女子大昭和や大妻中野、駒場東邦、桐朋女子、桐朋は、ジェンダーに対するアンコンシャスバイアスを払しょくするWSなどが頻繁に行われていますから、ここにも哲学的深さが横たわっています。

八雲学園や工学院はラウンドスクエアの加盟校ですが、この世界の私立学校のコミュニティでは、まさに哲学的対話が、加盟校同士の生徒が留学し合って行っています。もちろん、年一回行われる国際会議は圧巻です。

本質を見抜く目を養う授業、先入観やアンコンシャスバイアスを払しょくする学び、価値を転換し新しい価値を創出するプロジェクトなどをグローバルに行っている学校は、哲学のみならず、文化人類学、社会学、自然科学などの知見を融合して行っています。

そして生成AIの活用です。生成AIのハルシネーションを回避するために哲学対話が有効であると同時に、哲学とそれ以外の学問を融合して生徒自身の発想を豊かにしたり鋭角のクリティカルシンキングを育成するために、生成AIがサポーターになる活用の仕方も研究されています。工学院の田中歩教頭、駒沢学園女子の山口先生、聖学院の本橋先生はチームになってその研究と実践をしています。

哲学対話の様々な視座のうち生徒自身が自分の価値を創造するところまで行っています。さらに聖学院の山本周先生や土屋遙一朗先生、伊藤豊先生は、それを社会的インパクトに生徒自らが結び付けるところまでプロジェクトをDE-SIGNしています。

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2025年10月23日 (木)

2026年度中学入試(10) 先進的かつ根源的私立中高一貫校 10年後も生きのびれる私学

★2027年以降、大学は大きく変わります。東大が新しい学部を開設するという動きに、都立大も東北大学も呼応しています。文部科学省もその流れを促進しようとしています。この流れ以上に私立中高一貫校の中には先進的で根源的な教育をDE-SIGNしている学校がでてきました。このような学校は、この大学の変化はすでに織り込み済みです。

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★それを強く感じたのは、サレジアン国際学園世田谷のシスター森下校長からお話をお聞きしたときでした。校長自ら生成AIを活用しながら、教師像の本質をカテゴライズしながら先生方と研修をしているというのです。先進的な学校であると同時に、根源的な内面の充実を生成AIを活用しながら言語化し学内で共有しているのです。

★また、工学院大学附属の教頭田中歩先生、駒沢学園女子の山口先生、聖学院の本橋先生と対話をしながら生成AIを活用して生徒自身の内面で行われるリフレクションを教師と生徒が言語化していくプログラムを作っているときに、ああここにも先進的かつ根源的な教育があると感じました。

★富士見丘でデザイン思考をベースにしたグローバルワークショップや大手テック会社と連携したSTEAM教育の現場を見た時にも感銘しました。

★八雲学園の副校長近藤隆平先生や副校長の菅原久平先生とラウンドスクエアの根源的なコンセプトを現実化するダブル5Eの学びの理論の話をお聞きしときもやはり先進的かつ根源的だと。

★昭和女子大学附属昭和の真下校長から多様なグローバルでイノベーティブなプログラムとそのプロセスを経て理系分野で活躍している在校生の話を聞きながら、もう一方で生徒の内面の学びのメカニズムを学校全体で探究している話をお聞きして、なぜ同校が勢いがあるのかわかりました。先進的かつ根源的だからです。

★芝国際の吉野校長の根源的な話はさすがは吉野校長とだれしもが納得しますが、さらに先進的な学びのプログラムもたくさん実践しています。

★武蔵の赤間先生の長年にわたる数学の先進性と根源性の研究は圧巻です。

★それから開成。落合陽一さん、安野貴博さん、角野隼斗さんの母校です。先進的かつ根源的なビジョンとスキルを実装した人材が、開成の教育を象徴しています。

★そして、これらの学校の先進性をささえる共通するアイテムは、やはり生成AIなのです。ICTからSTEAMへ、STEAMからAIと先進性はバージョンアップしています。そのうち量子コンピューターが加わってくるでしょう。

★10年後も生き残れる学校。AI×グローバル×根源的内面の学びのメカニズムをDE-SIGNしている私立中高一貫校ということになっているでしょう。

★そして、もっというなら、この根源性に本質性が内包されていることが重要ですが、このことはいずれまた。

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2025年10月22日 (水)

作家とランチ おいしく頂きます

安修平さん(合同会社りょうゆう出版代表社員)から、新刊書「作家とランチ インタビュー・児童文学の13人」(日本児童文学者協会編)と「『作家とランチ』おまけ「編集長とおやつ」を頂きました。ありがとうございます。まだお一人とおまけしか読んでいませんが、とてもすてきです。ぜひおいしく頂きたいと思います。

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私はまず「おまけ」を頂き、それからぱっと開いたら13人のうちの1人石井睦美さんのインタビューに出会いました。そして読んでいくと、私の児童文学との出会いの1985年から1995年の10年間の記憶と重なり、驚きました。

今井祥智さんと「飛ぶ教室」は、仕事柄よく読んでいたのです。また藤田のぼるさんにもいろいろ教えていただきましたが、「解説」は藤田のぼるさんでした。

懐かしいと同時に、児童文学の子どもの才能がひろがっていく媒介メディアに期待をかけていた当時のことを思い出します。

今では、すっかり児童文学から遠のきましたが、子ども一人ひとりの才能を、一握りのではなく、すべての子どもたちの才能を見守り、支援する場とは何かは今も模索中です。そんな試みの一つが安さんと仕掛けている(私は言っているだけですが)WSです。

函館にこれから旅立つところです。もっとも仕事なので無目的ではないのですが。。。いやだからこそ、大事なコトを見落とさなないためにも旅の友としていやランチとして大事に携帯していきたいと思います。

それにしても、「おまけ」で同書でインタビューしていた編集長の奥山恵さんが、逆インタビューされているのですが、インタビューの極意みたいなコトが述べられていました。勝手な解釈ですが、作家と作品の媒介としてのインタビュアーや評論家というのは、作家の思いと作品に表れている作家の思い以外のコトあるいはそれ以上のコトを引き出すメディアとして自己DE-SIGNしているのだなと。つまり作家と同じ編集を実はしているのだと。なんと作家とインタビュアー、評論家の境界線がゆらいでしまうわけです。

私が児童文学と接していた時、企業の中にあって教材編集をする制約があって、ピュアがゆえに社会の根源的な痛みを子どもがストレートに抱えるところはなかなか扱えなかったけれど、実はそこを石井さんも奥山さんも政治や官僚のお思惑や制度上の壁をものともせず、描くその意志に児童文学だからこそそこはピュアに描けるのだと。ピュアとは美しいとかいう意味ではなく、枠や制約を解除して痛みそれ自体をあらわにすることなのだとちょっと恐怖も感じました。心理的安全、わかりやすさ、穏やかさ、心地よさ、協調性・・・・・・。大事です。それを求めることは重要です。でも、求める前にそこに在るもの。その状況をどうすることもできない自分が、自分は心理的安全を保とうとする。

そんな問題性をどうするのかその問いを携帯するためにもこの本は大切です。どうやら旅の意味が変わりそうです。

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安野貴博さんのお話を聞いて AIによるブロードリスニングの応用が多彩

昨日の「Stech I Forum 2025」の最後のセッションに、チーム未来党首安野貴博さんが現れました。首相指名決選投票が終わって駆け付けたわけですが、なぜか自分に2票入っていたと聴衆のつかみは上々でした。

というわけで、民意を政治にダイレクトにできるだけ反映させる政策などをつくるために、今まで行ってきたあのブロードリスニングの仕組みや意味を語ってくれました。ブロードキャストは一方的に多くの他者に発信するコミュニケーション。これでは、市民の声は限られたものしか反映できない。

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だからといって、SNSで多くの市民の声を受信したとしても、それを整理するのは時間もかかるし、実に難しい。そういえば、アンケートも自由記述の声を分析するのに膨大な時間がかかります。

そこで、市民の声と安野さんの間に、市民の声を整理するメディアをDE-SIGNしたわけです。自動的に整理されるし、AI安野などは、24時間質問に答えていける。そのログをまたAIを使って分析すれば、政策はどんどんいいものになっていくというわけです。

このブロードリスニングの、多くの自由記述や音声をAIで分析するメディアDE-SIGNという媒体装置は、多くのものに応用ができます。私たちもアンケートのみならず、PBL授業の中でグループワークの時の対話を整理していく対話分析にも活用できます。

問題は、国会という異世界でどう立法化するかだと。起業家安野が政治家安野になる瞬間ですね。何せファックスが生き生きしていて実に新鮮な異世界だと安野さんは目を輝かしているのですから。

それはともかく、ブロードリスニングの仕掛けの応用は、議会では合意形成にも活用できます。実際、安野さんはあのAlphaGoを開発したGoogle Deep Mindが「ハーバーマスマシーン」を開発する論文を書いていて、合意形成をAIによって行う実験を始めているという情報を提供しました。

ハーバーマスは、コミュニケーション行為を戦略的コミュニケーションと生活世界コミュニケーションに分けて、合意形成をするコミュニケーションについてもそれこそ深く分析している90歳を超える哲学者&社会学者です。

それで、Deep Mindは、ハーバーマスの名を選んだのでしょう。AIの仕掛けが哲学による熟議を発展させるなんて!実は、このアイデアは、すでに学校のPBLやIBLの授業の中でも使われ始めています。もちろん、まだアプリ化してはいませんが、2027年には先生方が自前でアプリを創るようになるでしょう。

それもGoogleが推し進めています。さてMicrosoftはどんな新開発をしてくるのでしょう。どんどんツールはアップデートしていきます。しかし、大事なことはどんなコミュニケーションをDE-SIGNするかという私たちのアイデアですね。作ったり、ち密に詰めたりしていく作業はAIがやってくれるので。。。

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3人の起業家の話を聞いて 今なぜスタートアップなのか

教育において、今アントレナーシップとかスタートアップというキーワードが広がっています。これを表面的だとか探究の商品化だとかいう方もいます。そういう側面もたしかにありますが、そのデメリットをメリットに変えようと葛藤しながらネガティブケイパビリティを発動している先生方がいることも一方で事実です。

3人のAI起業家のパネルディスカッションを聞きながら、教師の中にも彼らと同じような才能を持っている先生方がいると気づき妙に感動しました。

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AI起業家は、外資の大手テック企業からの競合に対応する場合、自分たちの技術を磨き上げたり、自分たちの強みは何か自分の軸をしっかりもち、競合相手をどうせコントロールできないのだから、マーケティングとしてリサーチすることは大切だが、だからといってひるむ必要はない。お客様と真正面から向き合い、どうやったらお役に立てるかやりぬくのだと。そして実装なのだと。

もちろん、大事なことは、中長期ビジョンだけではなく、目の前の利益をあげなくてはならない。社長自ら営業だってするのだと。

どこか知り合いの先生方の姿が浮かびました。もちろん、お客様のところは生徒や保護者です。

だから、学校でも、技術として、やはりプロジェクト的な動きは必須だし、将来外資の企業ともやりとりするのだから英語も大事です。ITも重要ですが、この流れはICTからSTEAMそしてこれからはAIというバージョンアップをしていくことなのだと確信を得ました。

英語力とPBLのようなディスカッションやチーム作りができること、そしてAIをパートナーとして使うことは基本中の基本となるでしょう。

(Stech I Forum 2025に参加して)

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落合陽一さんのお話を聞いて:次の教育ビジョンは、本質と物質の融合に向かう 無目的の祝祭を創り楽しむ

私たちの周りには、ハードやインフラを整え、アップデートすることを目的に物質の機能で溢れています。その物質の機能の進化は、物質の進化であって、人類そのものの進化ではない。落合陽一さんはそんなことをデータサイエンス的発想で語ります。

でも、だからといって、本質こそが大事だなどとは言いません。そこがケインズの予言とは違います。物質の進化は、人間が働かなくなり、本質を再び考えるようになるみたいな論調とは落合さんは違いました。

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(このコンセプトが生き生きと広がっている。それを落合陽一さんが自らDE-SIGNしている)

デジタルネイチヤーですから、そこは物質と本質が融合してしまうのです。融合すると人間の身体は物質から解放されますから、物質をつくる目的がなくなります。物質をめぐって競争もなくなります。

物質と共に人間は無目的に祝祭を楽しめるようになるのだと。地球規模の課題はその物質の競争から生まれてきたが、それがなくなったとき、地球規模の祝祭を楽しむのだと。それができるには、AIなどのテクノロジーがなければできません。

地球規模の課題を解決するのは、解決競争ではなく、地球規模のデジタルネイチャーと本質の融合です。無目的に祝祭を過ごせることが実は新しい本質だと。

そのように落合陽一さんが語ったかどうか実はわかりませんでしたが、聞き手の私が勝手に妄想したのはそういう世界でした。

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地球規模で祝祭ができる。経済的な心配はなくなるからできるのです。政治的軋轢がないからできるのです。軍事的脅威がないからできるのです。

いったいそのような祝祭とは何でしょう。落合さんが禰宜(ねぎ)を演じて、祝祭に参加なんかしているといいます。障害のある子が今までできなかったことをできるようにデジタルによってできるようになる身体拡張を生み出していもいます。

祝祭は、このようにできなかったものをできるように自らDE-SIGNし、自ら楽しむことです。これぞ学びの神髄ではないですか!

(Stech I Forum 2025に参加して)

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2025年10月19日 (日)

芝国際 実践と理論の相乗効果が生み出す成果

先日、芝国際の吉野校長と川上広報部長のお話をお聞きしました。芝国際が立ち上がって3年目。年々学校の風格と品格に磨きがかかり、生徒の皆さんものびのびと自由に挑戦・創造・貢献の3Cマインドをフルに発揮している様子もうかがえました。

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★その3Cマインドが豊かになるのは、学びの環境としてC1英語とPBLとSTEAM教育が完備していることと、その土台の上にAI活用とかアントレプレナーシップ教育とかケンブリッジ国際ベースのグローバル教育などが有機的に展開しているからです。

★川上先生が、その芝国際の現況の教育の成果やのびのびと主体的に探究している生徒の様子を語ってくれました。

★そしてその実践や実態の背景に、芝国際の独自の先進的教育の理論が着々と構築されていることについて吉野校長が語ってくれました。その教育の間口の広さと奥行きの深さは感動的で、3年間でここまでくるスピード感に圧倒されました。

★しかも、まだまだこれからなのだと、改革の後はアップデートを続けていくという覚悟に感銘を受けました。

詳しくは動画をぜひご覧ください。吉野校長と川上先生の生の声を実際にお聞きになることをお勧めします!

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2025年10月18日 (土)

駒女の国語の授業 2027年以降の大学入試改革に対応 作家という他者と読者としての自己との対話

★昨日午後から、駒沢学園女子中学高等学校(以降「駒女」)の国語科教諭の上山昴輝先生のミニ授業研究会がありました。生成AIをパートナーとして生徒は自分の思考のメカニズムをブラッシュアップしていく授業です。東大をはじめとする国公立の2027年以降の大学入試改革に対応する思考のメカニズムのコーチング型授業でした。ミニ授業研究というのは、東京私学教育研究所の研修委員会の1つ「プロジェクト部会」のメンバーである駒女の土屋校長が、その部会の研修でお招きする野中潤教授(都留文科大学 教職支援センター長 文学部 国文学 教授)と研修を行うにあたって現場の状況を一緒に見ながら打ち合わせをしようと急遽決まったからです。

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★というのも、野中教授は、その日の午前中は、駒女のキャンパス内にある駒沢女子大学で講義をしているため、終了後すぐに駒女を訪れることができるからです。そのプロジェクト部会のテーマは<「学校教育2.0のための生成AI実践講座」 ~10年後も「選ばれる私学」であり続けるために~」>です。したがって、生成AIをパートナーとして授業を行っている駒女の授業リサーチは野中教授にとっては、現場の実態—―生成AIがどのように使われているかを知るうえでちょうどよかったということもあったでしょう。

★駒女は、数学や英語でも生成AIを教師及び生徒のパートナーとして活用している先進的な授業を行っているということもあり、野中教授にとっては、教育にとって有効な使い方をしている事例だという認識を持ったようでした。そして、国語の教科教育法で先進的な授業方法を研究されていますから、上山先生の授業が進むにつれて、好奇心駆動型の探究的な学びに没入していく生徒の姿やギャラリーウォークで楽しく真剣に対話している姿に、授業はこうでなくてはと確信もされているようでした。

★野中教授はICTを駆使した授業づくりを全国の公立私立問わず多くの教員と共有共創しています。そして今生成AIの登場と加速度的に進化する生成AIを実験的に使いこなし、現場で使いやすいようにアレンジしています。ご自身でアプリを作り、それを使って、グループワークで対話をしている言語活動を一瞬にして収集し、対話分析ができるものまで作っています。対話は重要だと言われていますが、ここまで生徒のリアルな対話の分析をするのはのは従来は難しく、まして、日常の教室では、対話の重要性やその構成要素を確認する以上はなかなかできなかったのです。そこを開く、つまりあの憧れの最近接発達領域の場のプロセスを解明できるところまできています。

★今回も、上山先生の授業を録音したり動画を撮ったりしながら、授業終了後の振り返りで、生成AIがそのデータを瞬時に書き起こし、それを見ながら振り返りができました。11月の実践的な研修が楽しみです。

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★そして、この研修の見通しが立ったのは、上山先生の先駆的な生成AI活用授業があったからです。先駆的というのは、まずは生成AIをRIA(リフレクション イン アクション)ができる対話に使用していたことです。ROA(リフレクション オン アクション)というのは、すべてのイベントが終わってから振り返るというリフレクションですが、RIAは、思考や対話をしている過程でリフレクションが同時並行で行われる手法です。RIAとROAは両方あって相乗効果を生み出します。ですから、今回も授業終了後ROAを行っていました。

★これは数学科の山口先生の授業を見た時にも感じたことですが、データサイエンス的手法を使ったRIAを上山先生は行っていました。驚きやおもしろさおかしさそして好奇心などはズレから生まれてくると言われています。データをグラフ化したりデータマイニングでどの言葉がたくさん使われているか大きさの違いをみると、まずは驚くし、同時にいろいろなアイデアが生まれてきます。データサイエンスの手法は実はふだん好奇心がなかったものにも、目を向けてしまう好奇心駆動型のプログラムです。

★授業は国語でしたから、言語社会学者鈴木孝夫さんの文章を読解する時間でしたが、いきなり文章を精読するのではなく、鈴木孝夫さんが言語における人称の多様性をリサーチする手法の疑似体験を生成AIで生徒が体験できる仕掛けをデザインしていました。国によって人称の数や使われ方がデータサイエンス的に違いが明らかになったとき、当然生徒は驚き、そしてその理由を考えるアクションが生まれてきます。その自分の理由と生成AI(もし鈴木さんになったつもりでと条件付けをしたら、鈴木さんと対話ができるかもしれません)の考え方のズレを対話するというRIAを仕掛けることによって、鈴木さんの文章を読む前に、英語でよく行っている複数のキーワードからインファー(推理)する思考が働いていました。

★従来型の一般選抜では、精読から始め、その文章を正確に読むーー正確に読むというのはトウールミンモデルでいう作者の三角ロジックを分析し、要約するということでしょうが、この読解方法が有効でした。作家と対話するのではなく、作家の言いたいことや考え方や感じ方をまずは受容するということです。これは傾聴にもつながり大事ですよね。

★しかし、2027年以降は、他者の考えを正確にあるいは客観的に(客観的というのは教育の世界で使われている意味と哲学や文化人類学、自然科学で使われる場合は違い、社会にでたらあまり役に立たない見方です。それを学習指導要領内でデータサイエンスが崩すので、教育界の中でも混乱しています)受容するだけではなくなっていきます。データ(量的データと質的データの両方)をエビデンスとして、一般には気づかれないような社会課題を見抜き(だからこそ好奇心が広がります。自分が先に見つけたという。もちろん、調べていったらすでに気づかれていたということのほうが多いのですが。だからリジリアンスが重要です)、自分で考え、仲間と協働し、生成AIをパートナーとして思考し行動するメカニズムが重視されるようになります。すでに総合型選抜はそうなっています。

★しかし、2027年以降は、それが一般選抜でも導入されるようになっていきます。とはいえ、まだその割合は一般選抜では正確に他者の考えを受容するということのほうが多いでしょう。それでも他者と自分の考えの違いを把握したり、第三の考えを結果的に共創したりする思考のメカニズムが必要とされるのがAI時代です。

★上山先生は、その両方を授業で展開しているわけですが、そのビジョン、ミッション、パッションは、「教科書や大学入試の枠を超えて大学や社会に出た時に生徒が自らウェルビーイングな生き方ができる力を身に着けてほしい」ということのようです。

★限られた時間でこんな欲張りな授業を展開しているのが駒女です。それも生成AIを活用する先進的な授業開発に学校全体で取り組む舵を切っている土屋校長の戦略的マネジメントがあるからでしょう。ますます期待値が高まります。

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2025年10月17日 (金)

富士見丘 中2のSTEM教育 テクノロジーカンパニー4社と連携

★富士見丘の中学2年生は、5月から5か月間、テクノロジーカンパニー4社と連携してエンジニアリングの技術や創造的なプロジェクトチームの作り方など、STEM教育の一環として探究を行いました。そして先日「中学2年生 Girls Meet Stem 企業訪問 成果発表会」が行われました。このプログラムは女子校の理系人材育成を推進する公益財団法人山田進太郎D&I財団の協力のもと行われました。

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★結論から言って、すばらしいプレゼンでした。富士見丘は高校生になるとその多くのイベントで英語でグローバル探究の成果がその都度発表されます。模擬国連部などの英語での交渉術はすさまじく、そのグローバル教育は、世界大学ランキング100位以内の海外大学に多数合格していることからも明らかなように、きわめて大きな成果をあげていると評判です。

★帰国生に人気があるだけではなく、小学校で英語を学んできたり、これから学ぼうとする意欲に満ちた生徒が入学してくる学校として多くのメディアから注目を浴びています。

★今回の中2生のプレゼンがもしすべて英語で行われたら、もうそれは同校の高校レベルのプレゼンに肩を並べるくらいのクオリティでした。もちろん、企業訪問によるリサーチの報告会ですから、同校が高校で行っているデザイン思考ベースの探究とは違います。つまり、社会課題の問題解決のための実装プロトタイプまでは行っていません。

★しかし、大事なことは、同校の高校のこのデザイン思考にすでにつながっている、あるいは中2生が高校になったら先輩同様大輪の花を咲かせるだろうと予想ができたということです。いや、もしかしたらそれ以上かもしれません。というのも、同校のグローバル教育は突出していて他の追随を許さない環境デザインがされていますが、STEAMに関しては、他行に比べてかなり行ってきたものの、同校の実施している破格のグローバル教育に比べると発展途上でした。

★それが、今回メルカリ、オイシックス、サイバーエージェント、IBMという大手テクノロジーカンパニーと協働探究を始めたのです。中学2年生が世界のイノベーションを丸ごと把握し、自分たちの才能を開く好奇心を旺盛にしているモチベーションが、プレゼンで明快に伝わってきました。

★挑戦・創造・貢献という3Cマインドにあふれていました。

★プレゼン自体も、スライドの論理的構成とデザイン力はかなりのクオリティです。さらに論理構成をプレゼン用にインパクトある順番に変えるなど聡明な編集がなされていました。スピーチも中2生でありながらペーパーを持参せずものの見事に物語っていたのです。

★審査員が2人、質問したり講評をフィードバックしたりしました。山田財団の方と大変光栄でしたがなぜか私もその一人でした。山田財団の方は、内容に深く迫る質問をしていました。それにすぐに熟慮しながら明快に簡潔に答えていました。山田財団の方も私もそして聞いている仲間も感銘を受けていました。

★私は、この日初めてこの活動を知ったので、質問は今回の発表に至るプロセスで重視した方法や価値について問いかけました。すると、エンジニアの方やスタッフの方にインタビューしたことを根拠に新しく気づいた価値にについて即答でした。すでに世界を創るセンスや視点が生まれています。

★4年前から、今のように富士見丘は注目を浴びはじめました。しかし、この破格のグローバル教育は10年前から行われていたのです。注目を浴びるまでに6年かかっています。その理由が、今回よくわかりました。その6年間、今回の中2のようなしっかりとした探究的学びとグローバル教育をしっかりと積み上げてきたということでしょう。

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2025年10月15日 (水)

2026年度中学入試(09) 記憶のメカニズムと思考のメカニズムの両方を充実させている学校

★教科の授業は座学中心、探究は少しという学校は、記憶のメカニズムを徹底している学校です。暗記と記憶は少し違います。暗記は忘れる量が多いですが、記憶は論理的思考が少し絡むので、忘れる量は少ないし、論理の枝に新しく知識が結合するので、知識量も増えます。重要な点は、記憶のメカニズムは、インプットーパターン学習ー演習ーテストーフィードバックという流れがだいどこでもできていて、記憶術のツールやアプリなど効果的なものがたくさん生まれています。したがって、生徒自身が自分で記憶のメカニズムを使えるし創意工夫できるのです。ですから、放課後学習で外部団体と連携しやすいのです。

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★一方思考のメカニズムは、探究で象徴的に行われていますが、デザイン思考、システム思考、SEL、IBLなどの多様なPBLスタイルがあり、それゆえ、そこで行われている対話が論理的思考に終始したり、創造的思考に偏ったりして、まだ安定感がありません。

★論理的思考から批判的・創造的思考までカバーすることによって、認知能力だけではなく非認知能力まで養うプログラムになるため、教師の力量の差が出がちです。個性的になるといわれるゆえんです。

★どんな方法でも構わないのですが、一つを続けるよりも、IBLを行っている先生のように、フュージョンして創意工夫するのがパワフルです。それにIBLは、各学校でいろいろな方法を使っている先生方のいいとこどりができ、結果的に学内全体がパワフルな思考のメカニズムを使っていきます。しかもフュージョンし続けることによってアップデートもできます。

★大事なことは、このように学校全体が思考のメカニズムを創っていくというプロセスを生み出していることです。なぜなら、生徒が思考のメカニズムのモデルを受容でき、自分の中でさらに「マイ思考のメカニズム」を作ることができます。

★こうして「マイ記憶のメカニズム」と「マイ思考のメカニズム」を生み出せた生徒は自律して挑戦、創造、貢献という3Cマインドを駆動できます。

★思考のメカニズムは、記憶のメカニズムに比べ、まだまだ安定していません。ですから一つの手法を使えるようになったからといって、それで満足すると、「QWERTYのパラドクス」に陥ります。なぜ協働的学びが必要かというと、互いに「マイ思考のメカニズム」をアップデートできるからです。

★この協働的学びの参加者がダイバーシティになっているとなおさらそのアップデートは目覚ましいものになるでしょう。

★学校教育の強みは、生徒自身が「マイ記憶のメカニズム」と「マイ思考のメカニズム」を自ら作り互いにアップデートできる学びの環境がDE-SIGNされているからです。そうそう生成AIをサポーターとして活用することで、この両メカニズムのマイ進化を生み出すことも可能になっています。

★この強みを全面的に生かしている学校は、順不同で、思いつくままあげると、麻布、女子学院、工学院、文杉、聖学院、富士見丘、八雲、聖ドミニコ、和洋九段女子、駒沢学園女子、桜美林、渋谷教育学園グループ、広尾学園グループ、三田国際科学学園、サレジアン国際学園グループ、城西大城西、昭和女子大昭和、芝国際、大妻中野、田園調布、山脇、佼成学園グループ、鴎友学園女子、洗足学園、湘南白百合、カリタス女子などたくさんあります。

★この中で、工学院の田中歩教頭のちょっと驚くべき戦略は、中学の時の道徳の時間をグローバルなIBLにして、すべての中学の全クラスを歩教頭がみていることです。ここに他教科の先生とのコラボが生まれ、生徒はマイ思考のメカニズムをつくりながら、高校の探究論文やグローバルプロジェクトに接続していきます。学校全体で取り組む要にマイ思考のメカニズムをマイ進化できるツールとして、生成AIなどのICTツールの環境も完備しています。これは日本の教育の一つのパワフルで柔らかいスーパーモデルの一つでしょう。

★それから女子美や国立音楽大学附属や桐朋女子は、ぶっちぎり「思考のメカニズム」が展開している学校です。

★「記憶のメカニズム」がパワフルな学校ももちろんあります。どのメカニズムが充実しているから人気があるという相関性はまったくありません。選ぶ側の受験生の志向性によるわけです。

★とはいえ、どのメカニズムに対しても究極のメカニズムを追究して日々アップデートを絶やしていないところが人気があるということは言えるのはないでしょうか。

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2025年10月13日 (月)

対話 OutsideとInsideの往還体験の重要性 知のメカニズム

★一般財団法人日本私学教育研究所は、全国の私学を13ブロックに分けて、毎年初任者研修を行っています。先日13ブロックの初任者研修の委員長(校長が中心)がアルカディア市ヶ谷私学会館で一堂に会しました。東京私学教育研究所もその中の1ブロックです。

★2025年度の初任者研修を終えて、各ブロックのミッション、目的、プランニングの方法、プログラムの内容、次年度の課題などについて報告し、全国私学で共有します。

★各ブロックの特徴的なねらいや創意工夫があり、多様なプログラムが実施されていますが、共通の基盤は、座学のみならずなんらかのディスカッションや対話をプログラムに織り込むということです。

★今では当たり前かもしれませんが、最近までは座学が中心の初任者研修が多かったのですが、ここ3年くらいでついに全国でディスカッションや対話を導入するようになったのは、画期的です。

★知識や技術の注入だけでは、AIの時代には、研修として成り立たないという意識も明確にあったのには驚きでした。

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(このアイデアは英語で哲学を教えているアレックス・ダッツン先生の授業から刺激を受けて)

★そして、次の段階ではディスカッションや対話の質です。ここをどうするのか?そこで哲学対話やデザイン思考、システム思考、IBL(探究ベースの学び)などの多様なPBLのスタイルが行われることになるのです。

★このことだけで、教師は十分に世界を広げ思考を深めることができます。しかし、これを教室現場にもっていくとどうなるかというと、いくらディスカッションや対話をしても授業としては満足度は高いのですが、生徒一人ひとりひとりの世界が広がり思考が深まるかはまた別問題です。世界が広まり思考が深まる生徒もいれば、そうならない生徒もいるのです。

★このため、教室現場では、結局知識を注入し、チェックテストなどで定着させる方法がどうしても多くなります。このことをもって教育や授業はなかなか変わらないのだと言われるわけです。ディスカッションや対話などのPBLは、おしゃべりで終わり、身にならないから、結局大学入試に役立たないと。

★一方で、探究などPBLを究める生徒もいて、総合型選抜や思考型の一般選抜で成功を収める生徒もいるため、効果がないということではなく、やり方次第なのだと反論もあるわけです。しかし、なかなか納得されず、変わらなければとかそんな必要はないとか平行線が続きます。

★学習指導要領も長年この両極を振り子のように揺れ動きました。しかし、現行学習指導要領に続き、次期学習指導要領もこのディスカッションや対話を導入するPBL型の学びはやめるつもりはなさそうです。

★なぜなら、インターナショナルスクールやイギリスのパブリックスクールなど続々日本に上陸し、それらの学校はIBやAレベルを行っているので、ディスカッションや対話を授業のベースにしています。やはりPBL型の授業は効果があるのだと、それがエビデンスなのだと言うわけでしょう。

★しかし、だからといって、このタイプの授業を行っても、やはり世界を広め思考を深める生徒は全員というわけではありません。

★インターナショナルスクールやイギリスのパブリックスクールや米国のプレップスクールでは、もちろん全員というわけではありませんが、そのタイプの授業環境の中で世界を広め思考を深める生徒が育つ確率は日本に比べ高いのは確かでしょう。

★いったいその差はどうしてできるのでしょう?それは意外とシンプルな回答です。知識や技能を注入する授業は、確かなあるいは固定的なパターンを反復練習し、テストでチェックし、スコアというデータ化ができているのです。つまり方法論が熟成しているのです。

★一方、日本では、ディスカッションや対話による授業で、世界を広め思考を深める知性と感性を生徒一人一人が生み出す方法が確立されていないし、それをチェックし、スコア化するような方法論がまだ確立されていません。

★知識・技能の獲得もできる生徒はできるけれどそうでない生徒もいますが、そうでない生徒を導く方法論があるわけです。

★ところが、ディスカッションや対話の授業では、それがないので、なかなか導けないのです。ルーブリックを作ったところで、達成していないことは分かったけれど、そのゴールに向かうにはどうすればよいのかという方法論を生徒自身が自分で工夫できるかというとまだその段階にはないのです。

★ところが、インターナショナルスクールやパブリックスクールやプレップスクールではそれがあるのです。

★それは何かというと、日本の場合は、ディスカッションしたり対話をしたりした場合、そこで終わりがちです。生徒にとって、それが内面にどのように定着しているかはあまり問題視されません。リフレクションもしますが、世界を広めたり思考を深めたりするメカニズムのチェックではなく、気づきが何かを出し合って終わることが多いのです。

★このディスカッションや対話のリアルな体験をアウトサイド対話としておきましょう。そして、生徒が内面でそのアウトサイド対話を丸ごと自分の内側で行うことをインサイド対話としておきましょう。

★アウトサイド対話では、仲間の中の一人として対話しています。インサイド対話では、仲間の対話も自分の対話として獲得します。アウトサイドでは、自分の見方や感じ方や考え方が投じられます。インサイド対話では、仲間の見方や感じ方、考え方を自分のものと比較しながら整理していくわけです。そして新たなものを生み出します。ケミストリーが起こるわけです。

★ディスカッションや対話で傾聴が重視されるのは、アウトサイドで行われているディスカッションや対話のやりとりをすべてインサイド対話の中で、教師なしで自分で整理をするということを行うのです。このアウトサイド対話とインサイド対話の往還がどのくらいできているかをモニタリングするのがリフレクションです。

★そしてインターナショナルスクールやパブリックスクール、プレップスクールでは、少人数のクラスなのは、そのインサイド対話の出来具合がどうなのかルーブリックで一人一人と教師が対話しながらモニタリングして定着するようにしていくのです。このようなアウトサイド対話とインサイド対話の往還と生徒一人一人がその往還でどんな知のケミストリーを起こしているか、それが世界の広がりと思考の深まりですが、教師との対話によってさらに発展していくのです。この教師とのリフレクションの対話のことをチューター制度とかメンター制度とかカウンセリング制度とか言っているのです。

★ルーブリックも教師が作って生徒にあてがっているだけでは、インサイド対話が稼働しにくいのです。先ほどの海外の学校は、教師もルーブリックを示しますが、それをモデルとして生徒は自分でアレンジをすることを行います。やがては、自分でルーブリックを作ります。

★ですから、ルーブリックを言語化するには、いつも具体的なルーブリックを見せられていては応用がききません。ルーブリックをつくるメタルーブリックのメカニズムを生徒が体得する必要があります。たとえば、工学院大学附属は、IBもAレベルも研究していますから、それをやっています。思考コードという抽象的なメタルーブリックを教師も生徒も具現化していくわけです。

★IBやAPを導入している学校も、学校全体でそのエッセンスを共有していると、やはりそのようなアウトサイド対話とインサイド対話の往還と生徒自身がリフレクションして世界を広げ思考を深める知のメカニズムを体得しています。

★IBやAPのコースでだけでそれが行われている場合は、それ以外のコースではそのメカニズムを体得している生徒は多くはないでしょう。

★そして、ここまで話していくと、座学とディスカッション型の両方の授業が必要なわけが見えてくるでしょう。座学は、端的に記憶のメカニズムの体得なのです。ディスカッションや対話型の授業は知のメカニズムの体得なのです。

★人間である限り、両方のメカニズムが必要です。たしかにAIは両方得意です。ただし、記憶のメカニズムは人間よりはるかに得意ですが、知のメカニズムはまだ人間のほうが得意かもしれません。というのもAIは既知のものを整理することは得意ですが、既知の枠組みの中でのつながりしか今のところ回答してきません。枠組みを逸脱して新たな知を生みだすことは今のところしないようになっています。というのは、逸脱したときその新たな知の正当性や信頼性、倫理的な正しさを判断することが今のところできないからです。

★ですから、12人くらいのクラスでない限り、メンターやチューターはなかなか難しいので、ある程度のところまでは生成AIをサポーターとして活用し、それで終わらせずに、マルチミニ対話をこまめに生徒としていく新しいメンターやチューターあるいは学習カウンセリングを創っていく必要があるでしょう。

★知識・技能を放課後外部の団体を入れて定着を図っているように、知のメカニズムのサポートの仕組みを作る必要があります。つまりアウトサイド対話とインサイド対話を往還しているかどうかをモニタリングし、どこまで世界を広げ思考を深めているかもサポートできる仕組みです。これをTM(Thinking Media)と私は呼ぼうと思っています。このTMについてはいずれまた。これも実にシンプルなのですが。

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2025年10月12日 (日)

哲学対話や哲学教育がトレンドになる理由 創造的破壊

★思想10月号や田村耕太郎さんの新刊、多くの私立学校や教育機関で英語で哲学を教えているアレックス・ダッツン先生の人気は、日本の教育に哲学対話や哲学教育が浸透していることが象徴されている動きとして捉えることができます。

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★仮に哲学という言葉を使わなくても、探究でまず身近なところから始め、問い返しながら本質を見出したり、矛盾を解き明かす挑戦をしたりというのは、すでに哲学的行為といっても言い過ぎではないでしょう。

★このことは哲学対話で全国を回っている永井玲衣さんが「水中の哲学者たち」の中で語っている「手のひらサイズの哲学」といえるものと同値かもしれません。

★ただ、永井さんは「わかる」と「わからない」は連続しているものだと捉えています。「わかる」と思っているものは、実は「わからない」と気づくこともあるし、「わからない」と思っていることが、わからないままではあるが、相互に納得いく対話に行きつくときもあるというまさに「手のひらサイズの哲学」なのですが、今はやりの探究のように問題解決に到達してわかったと思うのは、どうやら哲学的ではなさそうです。

★だから、私は、哲学的対話は必要だけれど、探究活動とはまた違うものだと思います。哲学者は哲学対話は教育において、進路などの目的の手段になるジレンマを感じると「思想10月号」の中で口々に語ります。

★それを何とかしたいという真摯な思いに感銘をうけますが、哲学とはそういうものでよいと私は思います。AI時代、最後は工藤直子さんの詩「てつがくのライオン」のごとく「てつがくのわたしたち」でよいのでしょう。わかったと到達したらAIに取り込まれてしまいます。AIは回答をだそうとしますからね。そこが「てつがくのわたしたち」と違うところです。

★だから探究は哲学的な部分があってよいのですが、同時に実利的でもよいのです。目の前のことにこだわるのは対処療法で、もっと先を考えよといわれるかもしれないけれど、今目の前で困っている人を見て、長期的に見れば、このように困っている人が生まれる制度や社会の構造をなんとかしなくてはと咄嗟に考えますか?

★もしそれが哲学だとしたら、たんなるアホですね。目の前のことを何とかしようと、自分なら何ができるのか、できない自分を責めて絶望するんです。そこからどうやって立ち臨むか。そんな勇気こそが地味で手のひらサイズの人間の思考と行動と意志と情緒の塊でしょう。

★それゆえ、哲学といっても哲学対話をして気づくだけの哲学以外に、実利的なプラグマティックな発想と創造力も必要なのです。そして実はこれもまた新しい哲学です。

★哲学はおそらく学問であってはいけないんだと思います。哲学者は学問としてあるのはもちろんよいのです。ただ、AIを駆使してなるべく働かなくても生活を維持でき、余白の時間がいっぱいあって、そこで個人の主観を豊かにしていく生活を創るというライフキャリアの思考力が哲学であればよく、学問である必要はないのです。もちろん、人生哲学のことを言っているわけではありません。

★かつて、ソクラテスやプラトン、アリストテレスなどが、AIの代わりに奴隷制度によってその余白を享受しました。その意味で、私は古代の哲学者の発想に諸手を挙げて賛同できません。

★現代においては、余白そのものが仕事として成り立つ組織やチームを作ることが、新しい哲学を生み出すことができると思っています。手のひらサイズの哲学というよりは、自分とチームが日々の中で地味に創り上げる新しい哲学です。

★実はカントやヘーゲルだって、そうだったのです。彼らの哲学の権威は後世の人がつくりあげていったのです。彼らだって、ぎりぎりの生活を維持する仕事をしながら、余白をどう生み出すかへの挑戦をしていたのです。

★近代以降はその権威を大学という組織で作り上げていったのです。しかし、だから人類全員が余白を享受できるようにするには、知を権威から解放して等しく人類みなに分かち合える必要があるのです。

★そのために、AIは欠かせないし、閉塞した権威に有利な状況を創造的に破壊するためにグローバルな対話が必要なのです。

★そこまでの過渡期として、今哲学対話や哲学教育、手のひらサイズの哲学は必要でしょう。限られた資源を公平に分けるのは確かになかなか大変です。権威競争や戦争にまで発展してしまうのですから。

★ですが、知は限られた資源ではないのです。限られた資源にしているのは権威なのです。そうしないと自分の身が危険だからです。生成AIは、限られた資源としての知を無尽蔵の知に変換します。活用しようと思えば、だれでもが活用できるようになるのです。

★この世界を作るためになら哲学対話は歓迎ですが、そのための手段として哲学対話を使うのはジレンマだと哲学者がいうのは、その人が哲学者だからです。わたくしは一市民だから、哲学対話が、人類すべての人が無尽蔵に知を活用できるようにする目的のためであれば手段でもよいと考えます。

★本質というのは、哲学の本質的な使い方なのか?人類のみながウェルビーイングになるためなのか?それは私事の自己決定ということでお願いしたいのです。

★この新しい哲学という意味で、子供から大人まですべての人が哲学を楽しめ深めることができる思考実験をしているのがアレックス・ダッツン先生です。対話のアウトサイドとインサイドを往還する思考のメカニズムを個人が開発できるのです。哲学者のアシストなくしてできるようになるメカニズムです。

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神奈川私学のインパクト 個の独立と群の創造

★10月2日・3日の2日間、パシフィコ横浜とビジョンセンター横浜で、全国私学教育研究集会神奈川大会が実施されました。一般財団法人日本私学教育研究所が毎年各地域で全国研究集会を行っています。今年は関東地区私立中学高等学校協議会と一般財団法人神奈川県私立中学高等学校協会が実施しました。後援は神奈川県、横浜市、日本私立中学高等学校連合会で、本当に大規模な研修大会でした。参加都道府県は46で、参加した先生方は860人を越えていました。

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★初日は、全体集会で、参加者が一堂に会して一般財団法人日本私学教育研究所の会長吉田晋先生(日本私立中学高等学校連合会会長・富士丘学園理事長・校長)と同副理事長の山中幸平先生(学校法人山中学園学園長)から「教育政策と私学情勢について」報告がありました。

★全国私学大会のことだけあって、教育を取り巻く環境について語るお二人の先生の視野が実に大きかったのに改めて感銘を受けました。日頃は、東京エリアの私学のことについて考えを巡らしているので、自分の視野を広める刺激を受けました。

★私立学校は社会との関係をつくり、その関係がより良きものになることによって、その社会で活躍するように巣立っていく生徒の教育に貢献できるし、またその生徒がさらに社会をより良きものにしていく。このような考えくらいはわたくしも持っていますが、問題はその社会の中身です。

★社会といっても複合的で一つのビジョンに基づいて同心円状になって、学校→街→自治体→国→国際社会と広がっていくわけではありません。たしかに、異なるミッションやビジョンが競合しあい、衝突もし、危機的な状況が生まれる場合もあります。そして、そこに気候変動などの地球のダイナミズムが加わります。また、個人のミッションやビジョンも違いますから、それぞれの組織や社会の中で人間関係も複雑です。特に最近は、SNSに象徴される個人が自在に使えるテクノロジーが発達し、良い方向性と悪い方向性同時に影響を与えています。

★この複合的で複雑な関係性の中で、多様な問題が生まれていて、それらの矛盾をどうするのか?全国私学の経営陣が集結して、国や自治体と私学の世界を守り創っていく教育と人間育成の意味を対話し、いかに協力関係を作っていくか、その精神と戦略方法について1年間全国私学が実行してきたことについて情報共有し、さらに近未来を予測しながら今後の動きについて確認をされていました。ネガティブケイパビリティーという矛盾やパラドクスを乗り越える高邁な精神に感じ入りました。

★少子高齢化時代、経済が不安定の時代、政権も一寸先もわからない状況下で、助成金をどのように確保していくか、そのためには、日本にとって重要な役割を果たす教育を今後も磨き上げ、日本の教育をけん引していくだけではなく、世界から憧れられる教育を創出していくのだというミッションとビジョンを共有したのです。

★その意味で、異文化理解だけではなく、国際的な政治や経済、文化をしっかり見据えたグローバル教育のシステムを築いていこうということです。また、テクノロジー分野でDXハイスクール構想を広げていこうと。その実績を積み上げていくことによって、各自治体や国に補助金の協力を引き出せるのだと。もちろん、引き出すには、政治家の理解が必要です。直接文科行政に要望しても官僚は動けないのです。

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★国民や市民の信任を得た政治家が動くことによって、法案や省令となって初めて動けるのです。そのためには、国民や市民の代表である政治家が法案という根拠を作る法創造の作業をしなくてはなりません。

★法を創造するには、国民や市民の生活の課題情報を収集し、事実を把握し、打開策を講じる必要があります。そのための知恵を吉田先生をはじめ、日本私立中学高等学校連合会は行政や議員に要望を対話によってなんとか構築し続けているのです。

★そして、行政や政治家が集結するのは東京ですから、東京私立中高協会の会長近藤先生(八雲学園理事長校長)をはじめとする役員の皆さんも、父母の会の皆さんと吉田会長とともに運動しています。

★そして、その根拠は、やはり生徒一人ひとりがウェルビーイングになる教育なのです。それゆえ、全国の私学の各地域の協会で教育研修が創意工夫されて行われています。東京も協会の中に東京私学教育研究所が設置されていて、そこのメンバーが各学校の先生方と協力して、年間50を越える研修を開催しています。

★したがって、神奈川大会の2日目は、「私学経営部会」「教育課程部会」「法人管理事務運営部会」「生徒指導部会」「グローバル教育部会」「ICT・AI教育部会」が行われたのです。

★全体集会では、吉田先生と山中先生の報告後、次のキーノートスピーチの演者を迎えるにあたり、神奈川私学のクラブ活動の紹介がありました。光明学園相模原高等学校の和太鼓部による「和太鼓」の迫力はすさまじかったです。参加した先生方の脳神経身体全体に響きが伝わり、私学が大事にしている共感とそれを生み出す各学校の独自の教育活動がしっかりと響きました。

★そして横浜女学院中学高等学校チアリーディング部による「チアリーディング」のパフォーマンス。会場は広いとはいえ、普段のスポーツ大会で行われるようなスペースはありません。同校の平間宏一副理事長・校長は、目を細めながら、それをコンパクトにアレンジした生徒たちの発想力と技術力を讃えていました。

★その話を聞いて、これでコンパクトなのかと逆に驚嘆しました。多くの部員がぶつかることなく、スムーズに縦横無尽に動き、空中で生徒が何度も回転したのですが、そのたびに、天井に届いてしまうのではないかと思いました。普段ならその天井を軽々と超えていたことでしょう。女性にとって見えない社会の天井を越える意志のパフォーマンスとして改めて感動でした。

★それが終わると、いよいよキーノートスピーチ。演者は俳優の紺野美沙子さん。カリタス女子中学から慶應の高校・大学に進んでいるので、神奈川私学ゆかりの方ということもあるのですが、長年国連開発計画親善大使を務めあげていて、国際協力分野で活躍された貴重な経験から世界や社会の課題をリアルに語ることができるという点で神奈川私学が初任者研修の講師として迎えているという普段の研修の象徴としてお招きしたようです。

★また、広島のあの体験をつづったある母親の本を動画にして、それを背景に「紺野美沙子の朗読座」も主宰していて、神奈川大会当日その朗読を披露され、深い感動が広がりました。そして参加者に平和を守る教育を共にさらに行っていこうという意志を新たにさせたキーノートスピーチでした。

★それにしても、全体集会の司会が、すばらしく、はじめ企業などでは、このような大規模なイベントでは、プロのアナウンサーに依頼するので、今回もそうなのだなあと勝手に思っていたところ、実はカリタス時代紺野さんと同じ演劇部で切磋琢磨していたカリタス女子の校長萩原千加子千先生だったのです。紺野さんのスピーチの過程の中でも、当時の仲の良い友人関係がこうして今も続いていることを思わせる会話もありました。

★神奈川私学のエネルギーと芸術性の高さのインパクト。さすがは個の独立と群の創造というビジョンを遂行している工藤誠一先生(一般財団法人神奈川県私立中学高等学校協会理事長・聖光学院中学高等学校理事長校長)がリーダーシップをとっている大会でした。

★来賓あいさつに神奈川県の黒岩祐治知事も駆けつけていましたし。

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2025年10月10日 (金)

2026年度中学入試(08) 人気の女子美 Art Englishが受賞!

★時事通信社は9月25日、創造性に富んだ特色ある教育で顕著な成果を挙げた学校をたたえる第40回教育奨励賞(文部科学省後援、公益財団法人新聞通信調査会協賛)の優秀賞を発表しました。私立女子美術大学付属高校・中学校が受賞したということです。独自カリキュラム「Art English」の開発が受賞に輝いたそうです。

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(bing作成)

★このArt Englishとは次のようなプログラムです。

美術と英語を融合した独自科目「Art English」を2019年から導入しています。週1回、中高6年間にわたり行われるこの授業は、英語で自分の作品を発信する力を育むことを目的としています。英語科と美術科が協力して作成した教材は、遊び心を取り入れたアウトプット重視の内容で、生徒が楽しみながら学べる工夫が満載です。例えば中学では、アニメキャラになりきって会話したり、英語表現を使って4コマ漫画を描いたりします。高校では、美術作品を英語で説明したり、自作のゲームを英語でプレゼンするなど、より専門的な内容に発展。生徒たちは自分の好きなことを表現したいという強い意欲があり、英語の負担を感じることなく積極的に取り組んでいます。「Art English」は毎年進化を続ける、創造力と発信力を育てるユニークな授業です。 

★この内容については、(一財)国際ビジネスコミュニケーション協会のサイトを参照しました。詳しくは同サイトをご覧ください。

★最近のアートの世界は、アーティスト同士コラボしたり、展覧会ではアクティビティで対話のセッションがあったりします。当然いろいろな国のアーティストが集結します。

★女子美は、洋画以外にもデザインなどがありますが、その世界もまた英語は必須です。アート資本主義といわれているほど、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、香港、台湾などは、アート市場が確立しています。日本の市場は弱小ですから、アーティストやデザイナーはグローバルに活躍するしかないというのが本当のところです。女子美の同プログラムは、まさに未来のアーティストやデザイナーへの贈り物になるでしょう。

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2026年度中学入試(07) グローバル教育の大転換を推進する私立中高一貫校 しゅとも9月号特集記事

★首都圏模試センターが発行している「shuTOMO9月号」の特集記事は「グローバル教育の大転換」。グローバル教育の変遷をまず5つのステップに分けています。

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(同記事の図を参考に本間が描いてみました。デザイン力がまったくなく、きちんとしたものは同誌をお読みください)

★2011年ころから、私立中高一貫校では、国際理解教育からグローバル教育という言葉が使われるようになりました。現行学習指導要領が立ち上がる時、CEFRやタキソノミーという基準が話題になり、世界標準とか海外大学で学べる語学力とかが注目を浴びました。しかし、パンデミックと生成AIが突如として現われ、そこを起点にグローバル教育の大転換が起こったのだというのが首都圏模試編集部のポイントのようです。

★その象徴が、偏差値の高低に関わりなく、グローバル教育の大転換を推進している学校が、海外大学に飛躍的に合格させていることだと。同記事では2024年度卒業生の海外大学合格者数順に一覧を掲載しています。ここでは、そこから3人以上合格した学校をたんに五十音順で並べます。

青山学院
桜美林
大妻
大妻中野
海城
開成
開智
開智日本橋
かえつ有明
関東六浦
暁星
公文国際
光塩女子
工学院大学附属
佼成学園
駒場東邦
桜丘
サレジオ学院
渋谷教育学園渋谷
渋谷教育学園幕張
湘南白百合
昭和女子大学附属
女子学院
聖学院
成蹊
聖光学院
聖ドミニコ学園
成立学園
洗足学園
玉川学園
桐光学園
桐朋
東洋英和
ドルトン東京学園
広尾学園
富士見丘
文化学園大学杉並
三田国際科学学園
武蔵野大学附属
茗渓学園
八雲学園
横浜女学院
立教女学院 

★ここに挙がっているだけでも、首都圏私立中高一貫校の15%もあります。このシェアを小さいとみるか大きいとみるかわかりませんが、1人以上も加えるともっとすごいシェアになります。しかも、サレジアン国際グループのように新たに立ち上がっているところも、あと3年もするとこのリストに加わり頭角を現してくることでしょう。

★したがって、グローバル教育の大転換を推進する私立中高一貫校はますます増えるでしょう。

★その本当の意味は、この特集記事では、実はフェーズ6にシフトするというところにあるようです。フェーズ5の哲学的思考や倫理的探究の段階の次にグローバル教育はいったい何があるというのでしょう?それいついてはまた別の機会に考えてみたいと思います。2027年以降の大学の変容も関係しますから。

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2025年10月 9日 (木)

2026年度中学入試(06) 2027年以降学士・修士5年制拡大 中学入試への影響は?

★文部科学省は8日、中央教育審議会の部会で、学士と修士課程を計5年の一貫教育で修了できるようにする新制度案を示しました。今年5月くらいからすでに検討に入っていたようですが、このノーベル賞ウィークに発表とは!?それはともかく、すでに東京大学がCollege of Designという新しい学科で学士・修士5年制度を2027年から始めることが話題になっていました。東大が動けば、みな動くだろうと語ってきましたが、文科省が動き出したわけですね。

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★文科省の資料によると、「国内外における国際的な競争環境下で活躍できるよう、優秀な学生が学士・修士課程を5年間で履修する大学を大幅に拡充するため、適切な学修時間の確保や教育研究の質の確保を前提とした制度改善について検討を行う」とあります。

★初等中等教育に関しても「調整授業時間制」という❝less is more❞がコンセプトですが、高等教育でも同じということでしょう。

★前回田村耕太郎さんの書籍から、博士課程まで研究する人材を増やす必要があるという主張を紹介しましたが、どこか連動していますね。

★いずれにしても、これによって、余白と流動性が生まれますから学際的な研究ができます。それに最近のノーベル賞は単独受賞だけではなく複数人で受賞というケースが増えています。

★科学の世界も、異分野のコラボレーションは当たり前になっていますから、それができる環境を整えることは歓迎です。

★イギリスなどは、学士・修士4年もありですから、これから日本ももっと加速するでしょう。

★ただ文科省は相変わらず「優秀な学生」という表現を使っていますね。才能者は山ほどいます。その才能を開花する環境づくりをしているのであって、一握りの学生をターゲットにするのは転換したほうがよさそうです。

★Adobeの調査で、日本人は先進諸国の中で自分たちは創造的だと認識している割合が低いというデータが示されています。しかし、その一方でその先進諸国が、創造的な国はどこかというアンケートに、日本が1番だと回答しているのです。このギャップは何でしょう。日本人が謙虚というのか自虐的というのか。。。

★少子化といえども、まだ小学生から高校まで1200万人はいるのです。それぞれの才能を開花する環境づくりをしたほうが国力のためにもよいのですよ。もっとも、第一は子供たち一人一人が自分の好奇心を研究にまで発展できる世界それ自体がウェルビーイングで、その結果として国力も豊かになるというのが本筋だとは思いますが。

★いずれにしても、私立中高一貫校は、すでに大学院レベルの探究活動を始めています。今後高校・学部・修士が6年で進むようなコースも可能でしょう。もしこれができたら、海外から多くの留学生が、観光だけではなく学びに日本に中学や高校段階からやってきます。

★だからグローバルイノベーティブな教育が大事なのです。その先頭を行っている私立中高一貫校は、すでに首都圏では20%以上です。高度な英語力と生成AIを駆使した教育が展開しています。絶望を希望に転換する教育です。

★当然そのような私立中高一貫校の中学受験は創造的思考力まで必要とする楽しくも深い問いが出題されます。

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2025年10月 8日 (水)

2026年度中学入試(05) シンガポール国立大学から見る近未来の私立中高一貫校

★私立中高一貫校の併願戦略を固め始めている時期だと思います。もしも迷ったら、田村耕太郎さん(シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授)の新刊「君はなぜ学ばないのか?」を読んでみましょう。ご自身がNUSの公共政策大学院で企画デザインして実施している人気の「アジア地政学プログラム」のこととこのプログラムを有効に活用するのに哲学が必要だという趣旨の書籍なので、直接中学受験に関係ないのですが、この視野を持っている私立中高一貫校は、すでにあり、しかも未来はそれらの学校に期待が市場ではかけられているのは、受験市場だけの話ではなくもはやOnly One Earth として世界が政治・経済・教育が動いている観点からも納得がいくかもしれないからです。

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★もちろん、田村さんの拠って立つところはビジネスですから、私立学校の教育システムにダイレクトにはつながらない部分も多々ありますからトポロジー変換(要するに読み手がチューニングして読む)をして、耳を傾ける多様性を大事にする寛容な構えは必要です。

★しばらく、田村さんのものの見方・考え方と私立中高一貫校の教育観を比較考慮しながら、これからの私立中高一貫校の選択について考えてみましょう。

★田村さんは、経済成長=人口×資本×イノベーションだと方程式をつくっています。日本は資本主義社会ですから、これは大前提です。ただ、私立学校は、教育組織ですから、田村さんのいう哲学は大事にしています。ですから、経営陣だけではなく探究で、教師も生徒も、哲学対話などの手法を使っていると表現していなくても、経済成長とはそもそも何か?人口は多い方が良いのか?格差なき資本を生み出すにはどうするのか?イノベーションとはそもそも何か?など問い返すわけです。このことは田村さんも否定はしないでしょう。

★しかし、田村さんは、事実として、日本は博士号を取得する率が低いことを挙げて、このことが意味することは何かを問いかけます。

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(2023年 文部科学省 科学技術・学術政策研究所から)

★実は、学士号も他国と比較すると低いのです。これらのことは何を意味するのか、田村さんの本を読まなくても推測できる方もいるかもしれません。

★イノベーションは、人々の智慧とテクノロジーと世のため人のためという愛から生まれます。このことは田村さんご自身が述べています。そして、国際比較をすることはグローバルな視野を広げる(井の中の蛙にならない)ことだと考えれば、なぜ私立学校でグローバル教育が必要かということがわかるでしょう。グローバルな時代は終わったとか国際理解教育でよいのだとかまずは国語教育だ(国語教育は必要なのはあたりまえのことです)とかいうコメントは結構多いですが、グローバルな状況に目をやらなければ、それこそ日本丸やその乗組員である国民は、タイタニックさながらになるわけです。

★また、田村さんはご自身の「アジア地政学プログラム」が売れているのだと。つまりソフトパワーを日本人も作りなさいと。今、私立中高一貫校は、海外に学ぶだけではなく、海外から憧れられ、日本の私立中高一貫校に留学したいという価値を生みだそうとしています。

★このことについては、shuTOMO9月号の特集「私立中高一貫校 グローバル教育の大転換」で首都圏模試センター編集部がまとめています。

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★この流れを見据えている学校が、50校近く何らかの形で紹介されています。紹介はされていませんが、共学化などで新たにコースなどが開設されて、グローバル教育の成果がこれからという学校も含めると首都圏私立中高一貫校の20%は、すでに動き始めているということでしょう。英語教育のフェーズを超えて、世界が憧れる学校という意味です。

★そして、イノベーションを生み出すソフトパワーですが、なぜ探究に力を入れている私学が多いのか?その回答がそこに行き着きます。学習指導要領で想定されている以上の取り組みを行っているのです。高大連携や大学の教授とその大学院生とコラボしてプログラムをDE-SIGNしているのです。

★しかも、生成AIは、事務機能として活用するだけではなく、パートナーとして授業でも活用され始めています。毎年、東京だけでなく、全国で私立学校向けの研修が目白押しですが、最近では、生成AIの話題や、ワークショップで当然生成AIを使いながらというプログラムが急激に増えています。

★テクノロジーやエンジニアリングの活用は必須の状況になっています。したがって、この環境で学んだ生徒は、将来博士号を取得する動機づけをここで生成しているといえましょう。もちろん、博士号を取得しなくてもジョブズやビルゲイツのように活躍できますが、一握りの人間だけが才能者になるのではなくと考えた時、博士号取得は今後重要になってくるでしょう。もちろん、その取得の仕方は、多様になっていきますから、その変化を私立中高もリサーチしていくことになるでしょう。

★ですから、大学合格実績は学校を選ぶ指標として大きくなります。しかし、それはどうやら偏差値が高い大学かどうかということではなさそうです。ソフトパワーを生み出せるかということですね。大学受験情報誌は、アプローチを変えてくれると嬉しいのですが、市場のプレイヤーの価値観しだいですね。

★いずれにしてもこれまでの話は、新しい価値の創出ということだし、問い返しということです。本質を見抜くということです。このことを田村さんは哲学だと言っています。

★哲学対話を実施している学校も多くなりました。大いに結構です。しかし、哲学対話という言葉を使っていなくても、田村さんの言う意味の哲学は、デザイン思考、システム思考、アート思考、IBLなどを行っている学校は哲学を実施しているといえるのです。

★哲学対話は、内省がメインです。デザイン思考やシステム思考、アート思考、IBlなどはベースがPBLです。PBLは実はプラグマティックな哲学と置き換えることができるのです。

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2025年10月 5日 (日)

2026年度中学入試(04) 昭和女子大学附属昭和 知的好奇心から研究し大学へ そして学び続けるライフデザイン

★先日、<GLICC Weekly EDU 第228回「昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校ー女性活躍の時代のグローバル教育」>で、同校の校長真下峯子先生のお話をお聞きしました。同校の3つのコースについての物語は実にすてきでした。グローバルコースとスーパーサイエンスコースと本科コースは、それぞれ学際的につながっていながら、特徴的なシステムが広がっています。

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★グローバルコースは、もちろん準1級以上の英語力が養われているのですが、それは海外大学入試のためにというわけではないのです。ボストンの昭和カレッジでは中2の段階で全員が訪れるわけですから、英語力の育成はグローバルコースだけの特徴ではなく、3つのコースで当たり前のように実施されています。

★ではグローバルコースの特徴は何かというと、高1でカナダで10カ月の留学に行ったり、同校のキャンパス内のBST(ブリティッシュスクール)やテンプル大学で学ぶことができるということなのです。そのためには、CEFRでB2以上なければ講義は受けることができません。このような素晴らしい国際的な環境では、英語を学ぶのではなく、英語で学びたい授業に参加して単位を取得したり、国際文化を互いに学び国際感覚を身につける探究を行っているわけです。

★スーパーサイエンスコースでは、知的好奇心を研究に発展させ、そのキャリアを大学にも求めていくわけです。もちろん、研究の方向性は、理系にすすみながら文系にシフトするということも全く問題ないというところまで学ぶわけですが、昭和医科大学で、医者や看護師、薬剤師になることがだけが目的ではなく、医療関連の専門分野に進んだり、脳科学や薬学の応用の研究に進んだりします。山田新太郎財団と連携して、女子学生の理系キャリアを開発することなど、いろいろな外部団体のプログラムに挑戦しています。

★そして、BSTの理科の授業や実験にも参加できます。そのためには、サイエンスコースの生徒も英語は学ばなければならないわけです。

★本科コースは、グローバルコースとスーパーサイエンスコースの基礎でもある「知る、考える(探究)、つくる」という思考の基本的なメカニズムを体得し、探究をしていく学びを行っています。ある意味、日本語をベースにグローバルな社会課題やデータサイエンスを学ぶプログラムを行っているのです。

★この「知る、考える、つくる」というプロセスは、非常にわかりやすいのですが、現場では、「知る」ことの立体的な構造や「考える」ことの多様な方法論が広がっています。「つくる」ということも、プログラミングをして3Dプリンターでプロトタイプをつくることもあれば、論文を編集することもあるし、プレゼンのパフォーマンスをすることもあるし、アート表現を生み出すということもあって、多様なわけです。

★そして、とにかく3つのコースとも国内大学の研究者とコラボして最先端の研究分野を昭和女子大学附属昭和の生徒と共有しているのです。

★真下校長が生物の研究もしてきた長い経験もあるということで、修士や博士のレベルの研究を中高現場につなげているわけです。今回の真下校長の教育のデザインの実践のお話は、これからの私立中高一貫校の教育は、知的好奇心を深めていき極めていくレベルが、高校卒業レベルではなく、修士や博士につながる学びのシステムレベルだという未来が見えた瞬間です。

密度の高いお話でしたから、詳しくはぜひご覧いただきたいのです。そして、今回はまだ前編で、後編は12月に真下校長先生が再びご登壇されます。乞うご期待です。

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2025年10月 2日 (木)

2026年度中学入試(03) 哲学対話を実施している学校 学校全体に浸透するスタイルは多様

★岩波書店「思想10月号」の特集は「哲学教育」/哲学対話」。「思想」といえば、哲学者や哲学を学ぶ者の専門雑誌ですから、それにガッツり各論文が掲載される時代になったのかとちょっと驚きです。ちょっと読み進むとなるほど哲学教育を学術的な側面で研究がなされるようになってきたため、同雑誌のテーマになりえたのだとなんとなく了解できました。

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★哲学教育といえば、子供のための哲学で、NHKでもその手法の番組がありました。また東大の入試問題にも出題されたりしましたから、中高でも注目され、導入されている学校も増えています。

★かえつ有明のように、帰国生の取り出し授業で英語で哲学を行ったり、同雑誌に掲載されている同校の社会の先生も哲学教育を実施しています。学校全体の取り組みというより、哲学教育や哲学対話を行う先生が行っているという感じですが、同行はアクティブラーニングベースの授業を全体で取り組んでいるので、当然対話やディスカッションの中で、そのエッセンスの影響は広がっています。

★同様に工学院もインターナショナルコースでは、文学や哲学を英語で教える授業があります。また中学では田中歩教頭がIBLを全員に行っていますので、哲学的対話のスタイルも取り入れられています。田中教頭自身英語の教師でケンブリッジインターナショナルの認定校を推進しているので、当然ともいえます。また国際部長の教員も海外大学卒業組みで社会学を専攻してその成果を英語の授業で取り入れています。そして、数学の先生と社会の先生がコラボして哲学対話の時間を運営したりもしています。さらに、学校全体でPBL型授業に取り組んだり、IBのTOKの研究をしたりしている教員もいて、「思想」で語られている哲学文脈のものもそれとは異なる文脈の対話型のものが多様に実践されています。いずれにしても学習者中心主義の授業を行っているという点では共通しています。

★開成や豊島岡女子でも、哲学対話に取り組んでいる教員がいるとも聞き及んでいます。

★東洋大京北は、学祖井上円了が東洋哲学者で、その影響下の哲学が全体で取り組まれています。

★そして、多くの学校でデザイン思考やシステム思考も取り入れられていて、「思想」の文脈では必ずしもありませんが、アンコンシャスバイアスを見つけ、それがなぜ無意識層に埋め込まれたのか社会や人間関係の課題を見出し、新しい問いを発見して探究するという学校が増えています。

★なぜ「思想」の文脈でいう哲学教育というのがそのまま学校に入らないのかは、同雑誌の中で哲学者自身が語っています。教育と哲学のパラドクスがあるのだというのです。哲学者は専門家なので、このアポリアともいうべき問題をどう解決するか深い思考を巡らしています。おもしろい雑誌です。

★しかし、このパラドックスは文化人類学や社会学、経済学、デザイン思考やシステム思考、デューイ的PBLなどをフュージョンするアプローチによって実は解決するのです。ただし、その解決は、「思想」の文脈の哲学教育と学校のパラドクスになっている「学校」の在り方自体をすでに変容させているから解決しているといえるかもしれませえん。このフュージョンを実践している典型例は聖学院です。

★哲学教育と学校のパラドクスは、学校の在り方そのものを変えてしまうことによって解決するわけで、その意味で哲学教育と親和性のある学校かそうでないかによって、それぞれの学校の未来の姿が逆照射されるというスコープになります。

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2025年10月 1日 (水)

2026年度中学入試(02) 伸びる24校は、実にシンプルの意味

★伸びる学校をどう見つけるのか?多様な体験環境をDE-SIGNしている学校は多いですね。それは大いに結構です。生徒1人ひとりの好奇心が生まれる体験は様々ですから、主体性や自主性や自律性などの起点である好奇心駆動型の体験の学びは大切です。そして、その好奇心を発展させ、ファクトのみならずオピニオンやアイデア、世界制作のスキル実装などにわたる幅広いアウトプットが創発・創出できる思考のメカニズムの確立が重要です。これができているところは、多様な教育をシンプルに収束させるあるいはまとめることができるわけです。この収束のメカニズムにこそ、ミッションやビジョンが効果的に実行される秘密があります。

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★上記の図のように思考のDE-SIGNのサイクルを完成しているあるいはしつつある学校は、直接校長や現場の先生方と対話しているとわかります。次の24校がすぐに思い浮かぶ思考のDE-SIGNサイクルを実施している学校です。多様な体験もデザインしています。実際に生徒募集やグローバル環境やSTEAM環境や海外大学などの進学実績や卒業生のキャリアなど注目されています。五十音順で紹介します。もちろん、直接話していないだけで、私が知らないだけで、思考のDE-SIGNサイクルを構築している私学はまだまだあります。

足立学園
大妻中野
共栄学園
京華女子
工学院大学附属
駒沢学園女子
サレジアン国際グループ(赤羽と世田谷)
城西大城西
湘南白百合
昭和女子大学附属昭和
聖学院
成城学園
田園調布学園
羽田国際
広尾学園
富士見丘
文化学園大学杉並
本郷
三田国際科学学園
武蔵
八雲学園
山脇
和洋九段女子

★まず体験ですが、これらの学校は、本当に多様ですが、まるでハワード・ガードナー教授(ハーバード大学)のMI(多重知能)を彷彿とさせるような知能の刺激を与える体験が勢ぞろいです。生徒の才能発見には多角的な体験が在るのが望ましいのです。

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★20世紀末にハワード・ガードナー教授が知能のカテゴライズをする時、7つにするのか8つにするのか9つにするのか考えていました。最初は7つで、あとからやはり実存的というか内省的というか哲学的知能を加えました。あれから相当時間がたっていますから、私は勝手に9つめに「AI協働的知能」を追加しました。

言語・語学知能:話す・書く・読むなど、言葉を使って表現・理解する力。説得や記憶にも優れる。
論理・数学的知能:数字や論理、因果関係を扱う力。問題解決や仮説の構築、分析に強い。
視覚・空間的知能:空間やイメージを認識・操作する力。絵を描く、設計する、地図を読むなどに優れる。
音楽・リズム知能:音やリズム、メロディを感じ取り、表現する力。演奏や作曲、音感に関わる。
身体・運動感覚知能:身体を使って表現・操作する力。スポーツ、ダンス、手先の器用さなどに関係。
対人的知能:他人の感情や意図を理解し、関係を築く力。コミュニケーションや協働に優れる。
内省的知能:自分自身を理解し、内面を見つめる力。自己認識や自己管理に関わる。
博物的知能:自然や環境への関心が高く、分類・観察・発見する力。動植物や天候、地理などに敏感。
AI協働知能:AIとの対話・編集・共創を通じて、思考・表現・学習を拡張する力。意味生成の共同体験を編集する知的能力。 

★すべてに好奇心旺盛な生徒もいるし、どれかに好奇心を見出す生徒もいるでしょう。そこから思考のメカニズムが働きます。思考のメカニズムは、神経細胞や脳内細胞の化学反応が起こっているわけですが、ここは脳科学と認知科学で今研究中です。私たちは、その研究成果を使いながら、現場に適用しているわけですが、事実や意見やアイデアや世界制作の見取り図を生み出す反応が起きる時、生徒は内的な道具をどのように使い、視座をどのように発展させているのかを洞察します。

★すると、必ずしも上記の学校が、❶トゥールミンモデルだとか❷オズボーンのチェックリストだとか➌グッドマンのコンセプトスキルだとか❹思考コードだとかいう言葉を使っていなくても、これらに相当する思考のプロセスやスキルという内的な思考の「道具」を独自に開発している、言語化していることがわかります。

★シンプルとは、外的な学びの体験(ステージ)や学びのプロセス(シナリオ)を設定して終わりにするのではなく、それらを内的な思考の道具の関連システムである思考のメカニズムを確立しているということを意味しているのです。

★グローバルで探究的な教育活動が国内外の大学進学に結びつくには、この「思考のDE-SIGNサイクル」ができているからということなのです。探究教育、総合型選抜対策、思考型一般選抜対策などは、興味関心の重要性だとか問いの立て方だとか論文の書き方だとか体験値の重要性だとかなど断片的にデフォルメされて語られていることもしばしばですが、それらが適切に循環している思考のDE-SIGNサイクルが確立されているかどうかが決め手です。

この一端を、東京私学教育研究所のフュージョン教育研究会の委員の先生方をはじめとして多くの委員会の先生方がWSや研修を企画運営しています。東京私学は、このような情報を共有して、ゆるやかな理念(建学の精神)共同体として前に向かって行っているわけですね。

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