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2025年9月11日 (木)

次期学習指導要領 カリキュラムの規制緩和 サイレントな内省的体験格差が広がる懸念

9月5日に中教審教育課程企画特別部会が公表した「論点整理(素案)」のポンチ絵集は、本当によくできています。113頁もあり、圧巻です。しかし、基本的な考え方のイメージの1枚と新たな観点別評価イメージの1枚のスライドを見ると、概要はざっくりわかります。❶現行学習指導要領をベースにし、❷教育現場の実態に合わないところの改善と❸デジタル化のさらなる活用と❹教師の働き方改革の反映❺民主主義の再自覚というのが見え隠れします。

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★この基本的な考え方は、まるでデューイ・ルネサンスという感じです。デューイ流PBLの肝は体験と思考を媒介する道具の機能を十全に生かすということです。体験と思考を融合する触媒として現代はデジタルということでしょう。しかも、具体的なページになるとわかりますが、徐々に生成AIがでてきます。

★グローバル教育というキーワードは文科省は使いたがらないので、でてきませんが、「民主的」の背景にはちゃんとそれが意図されているでしょう。そこは私立学校は先行して実施している部分です。何せ、権威主義国家と民主主義国家の関係性は、今後重要な局面にはいります。ここをDE-SIGNできるような能力をエンパワーメントしようということでしょう。エンパワーメントという言葉は直接出てきていませんが、興味関心を大切にしているポンチ絵ですし、「心理的安全性」というキーワードが、この限られた紙面の中に位置づけられているところからそれも見え隠れします。

★しかし、なんといっても「余白」というキーワードが凄いですね。調整授業時数制度のことを言っているのでしょうが、これは要するにカリキュラムの規制緩和です。従来の週当たりの強化の時間数を柔軟にカリキュラムマネジメントしなさいということです。生徒がこの余白をどう利用するのか、教師がどう利用するのか?教師については教師力の質を向上ということがこの限られた紙面の中に刻印されているわけですから、この余白を活用するのでしょう。

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★生徒はというと、ここではあまりはっきりとは見えてきませんが、好奇心をかきたてるには余白は必要です。生徒にとっては若干の解放ということでしょうか。通信性高校の生徒数が増加の背景を無視できなくなってきたということもあるかもしれません。いずれにしても、これがはっきりわかるのは、3観点別評価の取りやめです。「知識・技能」と「思考・判断・表現」は今まで通り評定するけれど、「学びに向かう力・人間性」は「個人的評価」はするけれど、「評定」はしないと。

★学びに向かう力とか人間性は、主観的なものだから、そこはエンパワーメントするけれど、総括的評価のような評定はくださいということのようです。

★評価の手法としてルーブリックを持ち出し、形成的評価のようなものを取り入れようとしたのですが、これは海外では1クラス12人とかの環境で行っている評価です。もっとも生成AIの誕生で、ある程度クリアできるのですが、2025年の段階ではまだ時期尚早という控えめな姿勢なのでしょう。だから、取りやめても、なくすのではなく、「個人的評価」という文言で残してはいるのです。

★ただ、もしも本当にそうなれば、ここは授業の中にリフレクションの機会を入れる教師とそうでない教師によって内省的体験格差が生まれます。この体験格差は、主観的個人的なものだから目に見えないので、実際にはスルーされます。

★いずれにしてもこの余白は市場の原理に任されるというのが実情でしょう。この余白をどうしたらよいのか現場では難しいので、リフレクション体験より企業などとの連携という名の外部委託です。

★これには、公立の場合、お金がかかりますから、自治体の財政の問題もあります。いわゆる物理的な体験格差が広がります。ここは目に見えますから、多くの見識者が批判するでしょう。しかし、実際には、本質的な内省的体験格差という目に見えない深刻な事態が起こる懸念もあります。

★私立学校は、もともとこの内省的体験は、日常の教育活動の中にしみ込ませていますから、大丈夫なのですが。むしろこの柔軟性は歓迎です。

★余白というキーワードは、なにか癒しのような素敵な言葉ですが、教育制度や政策は目に見えるものに予算をどう配分するかということです。東京のように財政が豊かな公立学校は、そこに予算がおります。その予算を外部に丸投げするか、私立学校のように拡大カリキュラムマネジメントをして、本当の意味で連携するか。

★文科省は、そこは教師次第だと。。。

★しかし、安心できるのは、この余白を探究的でかつ内省的な時間として学んだことは、2027年以降の大学入試改革の多様化によって受け皿となります。総合型選抜だけではなく一般選抜にもその要素が加わります。したがって、キャリアデザインによっては動機づけが可能です。次期学習指導要領が公示される頃には、大学入試改革の多様化と結合することになります。だからよいのかというと、もちろんそうはなりません。

★新しい道を開く生徒とそうでない生徒の見えない格差がまだまだついて回るからです。限られたリソースを適正に配分できる政治経済社会ができないと、多様な格差はなくならないのです。この教育と政治経済社会のもどかしい関係性を好転させるためにグローバル市民がいかに民主的にDE-SIGNしてくことになるのかについて批判的思考を発揮してくれるジャーナリストの出現に期待しています。

★もっとも、それを教師と生徒がコラボしてやってしまえばよいだけなのですが!

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