これからの教育(07)主体的というコト
★主体的ということについて、学校現場だけではなく、企業などの組織でも話題になります。ウェルビーイングという言葉の背景の一つにOECDのエージェンシーという概念があって、それが新学習指導要領にも影響を与えているし、企業においてもそれは同様でしょう。OECDはそもそも経済に影響を与える機関ですから。
★そして探究という学びと総合型選抜がカップリングされて論じられるようになってきて、それを推進する場合、学校現場では主体的な学びが必要だとなり、一方で、塾などでは、別に主体性は必要ないとする立場もあるし(入ればよいわけですから)、研究的な立場を考える塾長などは、そんなのは主体的でも何でもないと論陣を張る場合もあります。
★学校現場では、命令ルールで勉強させるということに対しては、今では割とそれは違うなと考える教師は多くなってきました。しかし、学校が前提にしている命令ルールの是非を問う前に、その直接的「べき論」を緩和する環境設定をして、その環境内でフリー、フラット、フレンドシップという心理的安全をつくって、生徒が自由に自分の好きなことを探究していくモチベーションを生み出すということが重要だというのが主流です。しかし、社会課題と言いながら、その環境内だと疑似的な主体性=para-agencyということで終る場合がほとんどです。
★これに違和感を感じ悩む教師と、学校現場の限界としてpara-がむしろいいのだと考える教師もいますね。悩もうが然りと思おうが、環境設定をして主体的な発想や活動を生み出すことに変わりはありませんから、その点ではよいのだと思います。
★しかし、そもそもそんなのはシミュレーションにすぎず、本物ではないと論陣をはる教師というより塾関係者に実は多くいると思います。意識していないかもしれませんが、それは学校という命令ルールは、その塾には直接関係のないことですから、そこに抵抗するリアリティはありません。したがって、環境設定というより、現実の問題を乗り越えて新しいルール(正しいかどうかのモニタリングは当然する)を創る側に立つような指導をしていくところもあります。
★魅力的ですが、社会の命令ルールはまだ存在するので、そこに対するモニタリングはどうなのかというと、塾ですから、そこをメタ認知すると経営はできなくなってしまいます。
★したがって、上記の図のように、疑似主体性から世界を創る主体性に完全移行することは、たぶん不可能です。玉ねぎの皮をむくように何重にも命令ルールは存在します。それに、人によって他者命令ルールなのか自己承認ルールなのかは認識がズますから、そこはますます厄介です。
★さて、どうしたらよいのでしょうか?こんな議論をし続け、身近なところで、新ルールメイキングの体験を皆が積んでいく機会や環境をやはりつくる以外にないのでしょう。いまここでは遅々として進まなくても、不思議なもので、10年経って、振り返ると大きな変化が生まれているものです。結局私たちにできることは、理想のルールを創るというよりは、小さなところで疑似主体性の殻を破り、世界を創る主体性を生み出す挑戦をすることだけです。その挑戦は、終わったと思ったら、またしても別の命令ルールの中に包摂されていますから、疑似的主体性になっています。
★しかし、そこで立ち留まらず、再び次元をあげるために挑戦するしかないのです。もしその挑戦をやめたときどうなるのか?思考停止ということになります。そうなっていよいのかどうか?それは自分の意志決定です。。。
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