これからの教育(05)聖学院 創発型教育活動②
★先日、聖学院で高1のGICの3D空間デザイン展がありました。ミカン箱くらいの空間に、各チームのものの見方・考え方・感じ方がデザインされていて、鑑賞する側に様々な思いや考えを喚起するアッフォーダンス型の設計になっています。それだけではなく、各チームのプレゼンテーションは、たんなる説明ではなく、鑑賞者と対話しながら自分たちの想いを共有すると同時に鑑賞者の想いも融合しながら新たな価値観を生んでいく作品でした。コンテンポラリーアートのインスタレーション型の空間モデルです。それぞれの空間を小さなギャラリーに拡張して展示すればすぐにコンセプチュアルアートとして成り立つものばかりでした。ギャラリストの方々は、ぜひ顧問の山本周先生にご連絡してみてはいかがですか?新しいアートの世界を開くと思います。
★とにかく、10チームぐらいが制作していたので、すべてをご案内できないのが残念ですが、いくつかご紹介します。この展示会のコンセプトを理解するには、いくつかの事例が必要だからです。
★暗闇の部屋に映し出される白い手の下にネットでつながっている人々がいます。一人ひとりネットがまかれている回数は違います。手から遠のくにつれて、ネットの巻き付き回数は少なくなります。そして監視カメラ。
★要するにジェレミー・ベンサムが考案した一望監視装置というパノプティコンが、ICTなどのテクノロジーによって、見ていないのにパノプティコンが機能しているシノプティコンになったというノルウェーの社会学者トマス・マシーセンの発想に通じるコンセプトを3D空間にしてしまったわけです。
★鑑賞者にそんな発想を喚起する空間です。そして、生徒の皆さんは、あなたはどのへんにいると思いますかと。だいたいは、バランスのよいポジションを回答するのですが、果たして本当にそうですかとさらに問いかけるのですと。アンコンシャス・バイアスをゆさぶるコンセプチュアルアート全開でした。
★GICの生徒のみなさんは、みなコンピュータや生成AIを使いこなしています。今回の3D空間デザインも、多くはデジタル社会が背景にあるのが了解できるものだったのですが、この黒板のある教室は、なんともアナログです。そのことを問うと、五感に関する学びがGICのカリキュラムにあるので、五感を研ぎ澄ます空間にしましたというのです。
★テーマは「ギリ16歳」という心理的空間ということのようです。中高時代の教室といえば、ホワイトボードではなく、黒板なのだというわけです。きれいに消されているのではないところあたりが実に細かいですね。教室の隅にはなぜか白百合の花束があり、カーテンにはヒノキのアロマがしみこまされています。窓の外からドライヤで風を送ると、その香りが教室中に広がります。木造の教室ということでしょうか。
★そして風鈴がなぜか教室の中心から垂れていて、風に揺られて風鈴の音が聞こえてきます。これは、青春の心の動きだそうです。そこは「青春」なんだそうです。それから、個人的に二番目に気に入ったのは、ノートです。風で、どんどんページがめくられていくのです。青春はあっという間に過ぎ去るという時間を可視化したものだというのです。
★そして、一番気に入ったのは、天井に敷き詰められたわたのような繊維ですね。非常に柔らかい手触りなんですが、底まで手を鎮めると、手のひらに異物感が伝わってきてハッとします。青春って美しく甘いもののようですが、実は痛みもあるということです。葛藤あって青春ということでしょう。五感を通して、あまりに人間的なアンビバレンツな心理を表現する3D空間デザインです。
★ほかにもデュシャンの便器に相当するような作品もあって、ご紹介したいのですが、私の紹介が、所詮は私の想いでしかなく、GICの皆さんのはるかに豊かで大胆で繊細な世界の痛みを感じながらそれを乗り越えようとする冒険心を矮小化するのはもったいないので、このへんにしておきます。
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