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2025年2月

2025年2月28日 (金)

工学院 <社会課題—教科―学びの根っこ>のフュージョンな学び(FBL)

★昨日、工学院にお邪魔しました。教頭の田中歩先生と新しいリサーチ研究会を創発することに関しての対話です。歩先生の未来への理想は、学校現場の中から生まれてくるものです。現場では生徒一人ひとりの喜怒哀楽が湧き出ています。そこからモチベーションやクリエイティブティ、アクションが飛び出てきます。

★教頭歩先生は、それを仲間の先生方とすばらしい学びの泉にすべく日々奮戦しているわけです。その泉は、生徒一人ひとりの命の水です。人はパンだけでは生きていけないとは誰かが言った言葉ですが、まさに命の泉は、身体脳神経全体に流れるエネルギーです。

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★歩先生は、この命の泉が生まれる環境を先生方がデザインするだけではなく、そのデザインをする知の仕組みを生徒全員一人ひとりが自ら身体脳神経全体に内蔵できるようにしたいと先生方と対話型組織をつくりながら計画を立て実行しています。

★先生方一人ひとりが身体脳神経全体に内蔵しているそのような環境デザインの智慧は、ふだんは見えません。ですから、対話型組織は、それを言語化・記号化して共有しています。それを生徒にもというわけですが、ただ言語化・記号化したものを見せるだけでは身体脳神経全体に内蔵(血肉になるという意味)されないのです。

★それには、社会課題と結びつく学びの外部環境をデザインして、多様な体験を生徒ができる学びの外部環境状況をつくる必要があります。モチベーションは非日常の時空から生まれてくる可能性があるのは、誰もが経験済みでしょう。

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★そして、そのモチベーションが好奇心にシフトし3F(フラット・フリー・フレンドシップ)精神と3T(タレント・テクノロジー・トランスフォーメーション)スキルで探究心旺盛になっていくには、学校の内部環境である教科の授業同士の巻き込みデザインが必要になってきます。この内部の巻き込みを仕組みに変えるまでに工学院は10年かけてきました。

★この外部環境と内部環境のデザインの仕組みの持続可能には、毎年リフレクションして修正をかけていくところまでしなくてはなりませんが、そこは対話型組織ですから先生方は情熱的にイノベーションを展開しています。

★何より、歩先生は10年前から学習者中心主義というよりむしろ生徒中心主義者ですから、そのようなデザインの中で生徒が気づきを生んでいるだけでは理想ではないと。理想は、生徒全員一人ひとりが教師の外部や内部を巻き込んで学びの環境をつくる知恵そのものを身体脳神経全体に内蔵することなのです。そのためには、外部と内部を巻き込んだ多様な気づきの学びの環境デザインが必要だったのです。

★この<外部環境—内部環境―内蔵環境=社会課題—教科―学びの根っこ>のフュージョンベースな学び(FBL)を他校の先生方も巻き込んで日本の生徒一人ひとりが内蔵できるようにしようというのが、目の前の現場を通して未来に映し出される歩先生の理想だと対話しながら明快に気づきました。

★シンガポールやフィンランドの教育はたしかにすばらしいのですが、全人口が両国とも600万人いかないのです。日本は少子化と言えども、小中高生だけで600万人をこえます。この生徒一人ひとりの身体脳神経全体にこのような知が内蔵され、多彩な経験を通して、それぞれの知に変容していくわけです。日本の未来は希望に満ちているではないですか。

★歩先生のミッション・パッション・イノベーション・トランフォーションに感銘を受けました。

★そして、東京23区に比べ、多摩エリア、特に西の端である私立中学校群は、みな苦戦しています。工学院もその例外ではないのですが、受験生・保護者は中野校長と教頭歩先生とその仲間の先生方及び生徒の3F精神と3Tスキルが創り出すステキな雰囲気にセレンデピティを感じ、これだと思ったといいます。

★このエリアの中学入試において定員充足を導く学校運営ができるリーダーシップは、実に貴重なケースです。もし工学院が港区にあれば、一気に高人気になるでしょう。地理的条件とブランド力だけで生徒は集まらない時代がもうすぐやってきます。工学院に学ぶことに気づいた人は幸いです。もっとも、点だけ見ていても何も見えないのですが。。。

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2025年2月25日 (火)

2026中学入試準備(22)クリエイティブクラスが生まれる巧みのマインドとスキルの仕組み

★誰もがクリエイティブクラスになるには、巧みのマインドとスキルの仕組みを共有すると前回述べましたが、どうやってでしょうか?決定的な方法を開発するプロジェクトを4月から行っていきますが、その前に、白井俊さんの新刊「世界の教育はどこへ向かうか」中公新書2025年2月25日)に少しヒントが載っています。

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★例によって、気になる箇所しか読んでいないのですが、第5章の「何をどこまで学ぶべきか」はヒントになります。広く深くなのか広く浅くなのか狭く深くなのか。。。このバランスをとるには、コンテンツ主義ではオーバーロードになるから難しい。ではコンピテンシー主義で行くのか?これもまたコンテンツなしではできないから、二項対立ではだめだ。バランスだ。

★ではどうやってバランスをとるのか?そのヒントがカナダのブリティッシュコロンビア州の教育とニュージーランドの教育。前者はビッグアイデアというコンセプトベースの学び、後者はキーコンセプトというコンセプトベースの学び。

★両方ともコンセプトベースなのだけど、前者は領域をまたぐ大きなテーマコンセプトのようなものか。後者は各教科の固有の考え方というキーコンセプト。この両方を統合させるとよいと。

★どうやって?白井さんの面白いところは、解答が出ないところ。どんどん先に道が広がっていく。あとは自分で考えよと。

★そう、この先に決定的な巧みのマインドとスキルの仕組みがあるのです。そしてカナダとニュージーランドとも違うコンセプトベースの学びでもあります。そこはまた4月以降の4人の巧みといっしょのプロジェクトでリサーチしていきますので、またご報告しますが、この巧みのマインドとスキルの仕組みが大事だと予想している白井俊さんに改めて勇気をもらえました。ありがとうございます。

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2026中学入試準備(21)クリエイティブクラスを生み出す学校がポイント

★いろんな識者が、現代危機論をうったえ、乗り越えようと提唱していることは賛成です。あとは、でどうするのということです。そこを考案し実践している学校がすでにあります。それらの学校の特徴は、対話型組織で、3f精神(フラット・フリー・フレンドシップ)と3T(タレント・テクノロジー・トランスフォーメーション)スキルに満ちています。

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(「巧み」はここでは巧みな人、優れた人のことを意味します)

★そして、そのような学校は、すでにセカンドステージまで掘り起こしています。ファーストステージは、外部団体と連携し、外部を巻き込み巧みとしての人材がいて、その巧みが仕組みをつくっています。持続可能になるには、その巧み自信を生み出す=人的資本を生み出す仕組みが必要ですが、そこは一足飛びにいかないので、とりあえず、マニュアルをつくります。巧みがいる間は大丈夫ですが、移動/異動などすると徐々に劣化します。

★セカンドステージは、内部を巻き込む巧みとしての人材がいて、その巧みが仕組みをつくります。ファーストステージと同じで、持続可能にするには仕組化することがポイントです。外部とは違い、内部の仲間はアイデンティティやミッション、パッション、イノベーションなどの共有ができやすいので、マニュアル以上の仕組化は可能です。

★このファーストステージとセカンドステージまで掘り当てている学校は、凄まじくパワフルです。

★エッ!たいていセカンドステージまで行っているのではないか?と思うかもしれません。

★いや学校の場合、わかりやすいのですが、教科書とか電子教科書とか電子黒板とかは外部を巻き込んでいるというか巻き込まれているだけで、セカンドステージまで到達していないのです。カリキュラムマネジメントもたいていは、時間割の調整とかで、それはそれで巧みの領域ですが、内部を巻き込んでいるわけではなく、内部はそれに従って動けるだけです。

★ですから、学校の場合は、最初はそのようなカリキュラムマネージメントをしながら、3年ぐらいでセカンドステージを徹底的に掘り起こし、あとからファーストステージを拡張するというところが勢いがよいのです。

★しかし、さらにサードステージを掘り起こすことによって、教師も生徒もみなクリエイティブクラスとして活躍できるのです。

★もちろん。ファーストステージ、セカンドステージで、巧みの背中を見て、クリエイティブクラスになっていく教師や生徒もいます。

★しかし、それはいつも限られた人数案尾です。

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2026中学入試準備(20)八雲学園 30年前からサンタバーバラの海外研修 今なお最先端

今、八雲学園の中3生は全員カリフォルニア州のサンタバーバラ海外研修に行っています。八雲レジデンスを拠点に、姉妹校で八雲と同じラウンソスクエア加盟校ケイトスクールとの交流、サンタバーバラ大学(2025THE世界大学ランキング67位)で学んでいます。もちろん、中3生ですから、ロサンゼルスの自然史博物館やミュージカルなども観賞し、マックやスーパーマーケットでも買い物を楽しんでいるでしょう。ステーキレストランのラッキーでの食事にはちょっと驚きです。シネマスターやセレブが行くところですから!このようなさりげない破格の海外研修(八雲学園ではこれは多様な海外研修プログラムの1つ)を中3で、全員が参加できるなんてアンビリーバブルなのですが、30年前から行っているのは、凄すぎます。

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(写真は同校サイト)

★早稲田大学など学生を全員短期・中期の留学体験をさせる計画を立てていますが、八雲学園は、30年前から中学生が全員留学体験をします。ここから高校に進んで、9カ月プログラムやラウンドスクエアの国際会議など多様などで、1人ひとりの目標に向かってのキャリアプログラムとグローバルリーダーへの道が広がり深まっていきます。

★何より、サンタバーバラという穏やかで豊かな街と一体になっていて、グローバルコミュニティと連携しているのが八雲学園の教育の特徴です。サンタ―バーバラの街とそこにあるケイトスクールとUCサンタバーバラとは、一年間なんらかの交流があるのです。

★ケイトスクールは姉妹校でありラウンドスクエアの加盟校ですから、当然毎年国際交流もあるし、交換留学も行われている程です。

★その成果は、学校説明会、英語祭、英語演劇祭、イエール大学との音楽交流会などで実感できます。八雲生による英語パフォーマンスは有名ですから。

★そして、八雲はグローバル探究活動も活発で、英語で世界の問題を考え、ディスカッションし、プレゼンする学びの文化が根付いています。戦争など地政学リスク、異常気象などの気候変動のリスク、差別などのハラスメントのリスクで世界が覆われ、地球はどんな声をあげているのでしょう。

★ジョン・レノンの「イマジン」にインスピレーションを与えた、オノ・ヨーコの詩集「グレープフルーツ」には「聞いてごらん、地球の回る音を。Listen to the sound of the earth turning.」という一行詩があります。

★八雲の生徒は、東京とサンタバーバラを往来し、しっかり「地球の音」を聞き、その痛みの声を引き受けているのです。

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2025年2月22日 (土)

2026中学入試準備(19)文化学園大学杉並新機軸「BSICE(文化杉並教育イノベーションセンター)」ともう一つ立ち上げる!従来型受験勉強は終わりを告げる時代の要請。

★文化学園大学杉並の理事長補佐染谷昌亮先生が、メタで次のように新規事業立ち上げの告知をされました。

このたび、所属校にて2つの挑戦を始めることとなりました!
*学校併設の教育研究機関 BSICE の立ち上げ
:ご案内資料のごく一部を添付しました。少しでもご興味をお持ちくださった方は、ぜひご連絡ください!日々奮闘されている全国の先生方、学校教育の現状に何か思うことのある企業・大学・NPO・自治体等の皆様、ぜひご一緒させてください。多様なパートナーとともに、歩んでまいりたいと考えています。
→詳細は4月本格オープンの特設サイトよりご覧ください。今はまだ、簡易告知サイトです:https://bsice.jp/
*2026年度に向けた新コースの設置構想
:仮称「イノベーションリーダーズコース」の設計を始めています。上記BSICEとの関連も深いため、4月以降段階的に情報公開してまいります。
こうしてまた新しい挑戦ができるのも、ここまでご支援くださった多くの皆様のおかげです。引き続き、どうかよろしくお願いいたします🚀✨

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経緯については、同校サイトでご覧になれます。

★BSICEと2026年に向けイノベーションリーダーズコースの2つの事業を立ち上げるというのは、日本の教育制度の中で、学校文化を否定することなく、教師と生徒がスクールアントレプレナーシップを創発するということです。

★まずは教員がBSICEでスクールアントレプレナーシップを企画運営し、最近トレンドの従来型企業とはまた違う新しい資本主義的な発想のアントレを行うということです。

★そして、コースをつくって、生徒もいっしょに中高時代からアントレのシミュレーションをしてしまうということです。

★なぜ文杉でそれができるかというと、DDコース以外のコースでも英語が活用されることが多く、バイリンガルスクールになっていく可能性が見えているからでしょう。DDコースでは、すでにSTEAM系の授業は当然英語で行われています。

★それにDDコースでなくても、プログラミングの授業は、もはやブロック型のスクラッチなどは使っていません。当然英語でプログラムを創っているのが文杉の中高生です。

★グローバルとSTEAMとアントレの3要素がDDコースとイノベーションリーダーコースのそれぞれで融合するのが2026年以降の文杉です。

★今年からの慶應義塾大学や早稲田大学の大学入試の改革をみていけば、2027年には、英語で複眼思考ができ、数学を社会課題解決に実装し、テクノロジーを駆使できる即戦力が欲しいというのは明快です。

★ふんわりとしたグローバル教育や探究では、大学に入れても、大学が直面している世界との知の競争/共創でリーダーシップはなかなか発揮できません。18成人に期待される世界をリードするこれらの知性。従来型の受験勉強は終わりを告げる時は近いですね。

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2025年2月21日 (金)

2026中学入試準備(18)東京立正がV字になった意義

★今年の中学入試で東京立正がV字を描く総出願数となりました。校長梅沢辰也先生のメールによれば、「中学入試の結果です。全てが過去最高値となりました。出願数前年比180%(171→307)。手続きも初めて定員充足90%を超え94%となりました。6年生とのコンタクト数前年比126%でした。他県の学校(根室・沖縄・能登)とのネットワーク、「日本のことを自分事に」や政治家との公開ディスカッションと質問力強化や福島県との協同・杉並区への提言などにご注目いただいたと感じています。」ということです。

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★梅沢先生は、かつて中村中をV字回復した名校長です。業界では超有名人の一人です。中村をV字回復した時、やはり学校を超えてネットワークをつないでいくコミュティーシップに満ち、海外の先進的な教育も取り入れ、説明会もまだだれも使っていなかったiPadとモニターをつなげて軽快に説明会を行っていたのを想い出します。

★しかし、何より凄かったのは、小6の受験生とできるだけ対面で対話をする姿勢でした。学校のポリシーを共有するのは、校長と未来の在校生とが対話するのが一番です。

★この対話の姿勢を東京立正においても広げたのでしょう。特に東京立正は、日蓮聖人の精神を受け継ぐ仏教主義の学校です。フラットでフリーでフレンドシップな対話型組織の土壌があったのだと思います。この土壌はGAFAMが喉から手が出るほど欲しがるエネルギー源です。

★そして日蓮聖人は、なんといっても精神のイノベーターです。梅沢先生とシンクロするわけです。V字のカーブを描くのは当然なのです。学内全体がいい雰囲気であるからこそそうなるのですが、その雰囲気は教師と教師、教師と生徒、教師と保護者、教師とステークホルダーなどの良質な関係性が生み出します。

★近代教育の学校は、久しい間学歴階層構造の△型で、その中でどうハッピーに生きるかそれとも覇権を握るかという優勝劣敗組織でした。しかし、今では、そのような階層を全部外し、誰もがクリエイティブクラスとしてこの地球全体のことを考え行動するそれぞれの才能を見出し、無限の価値を生み出す〇型の学校環境が出現しました。

★首都圏の私立中学においては、△型学校:〇型学校は7:3です。どちらを選ぶかは、受験生・保護者の私事の自己決定です。ですが、選択肢の幅が増えたのがここ数年の中学入試です。それがはっきりしたのが、2025年中学入試の大きな特色でしょう。東京立正は、もちらん3f精神に満ちたイノベーティブでクリエイティブな〇型学校です。これからも注目を浴びるでしょう。

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2025年2月20日 (木)

2026中学入試準備(17)足立学園さらに動く

★足立学園の今年の中学入試の出願総数は、2024年比107.6%、2023年比145.6%(首都圏模試センター調べ)。首都圏中学受験生は微減であるにもかかわらず、足立学園を支持する層は中学受験市場において分厚いわけです。その理由はいくつか考えられます。それは足立区が区民のウェルビーイング政策を推進し、その中で新しい学びを提案しています。いうまでもなくその最先端モデルは足立学園です。

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★そして、昨年95周年を迎えた同校は突出したグローバル教育の証である「志グローバルプログラム」を定着させました。率先してグローバルサウスの国々でそのプログラムを展開しています。しかも、これは足立区の期待でもあります。というのは、現在は足立区の人口の5%が外国人ですが、2035年には10%を超えます。2070年には20%超える予想がたっています。

★おそらくこの予想を超える外国人が移住してくるでしょう。そのための環境を教育の面からサポートするのは、足立学園のモデルということになるでしょう。

★そして何より、教育でも民間企業でも、今最も大事なことは人材育成です。足立学園は東京大学のあの栗田佳代子教授のTPの研修を全教員が受講する取り組みを始めたのです。

★この研修は、座学ではなく、自分の授業を改善するWSです。柔らかくもストイックな研修です。自分の授業に向き合う有効な仕組みがすでに作られていますから、その仕組みを先生方がみな内蔵するのです。すでに1回目は昨年行われています。

★研修というと外在的な環境や道具の使い方になりがちですが、AI社会にあってハートをいかに形作るかが重要になってきます。経験値は大事ですが、その経験値を普遍的な次元に持っていく仕組みがポイントなのですが、日本の教育は経験がものをいい、人材づくりの内蔵の仕組みは開発されてこなかったのです。教師の達人という「巧み」は重要ですが、新卒の教師がすぐには「巧み」にはなれません。

★これからは外国人も英語だけではなくそのほかの教科においても日本人同様の教育に携わるでしょう。そのときに経験を積みなさいでは教師のなり手は多くならないでしょう。「仕組み」が重要になってくるのです。

★時代を見据えた次世代の教育の仕組みを足立学園は創るチャレンジをっしているのです。そんなすてきな教師集団がいる学校に我が子を入れたいと思うのは当然です。

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2026中学入試準備(16)駒沢学園女子 グローバル探究×生成AI

★駒沢学園女子を訪問しました。中学入試、高校入試も落ち着くや、すぐに新しい動きを実行するという話を聞いたからです。中学入試で英語入試やプレゼンテーション入試を行い、数日前に中学生のWS探究のプレゼンを行い、中学生はシンガポールに、高校生の英語コースはニュージーランドに研修に行き、高校生全体ではコマジョクエストという探究活動を行っています。この6年一貫教育の流れは、実は2027年以降、慶応や早稲田大学、東大をはじめとする大学入試が「英語×数学×探究」に収束しくしていくグローバル入試改革の流れにちょうど結びつくというのです。

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★そんな話を今年の慶應義塾大学の経済学部の小論文入試のテーマについて、仏教と宗教のアプローチで生成AIをパートナーにしながら対話をしました。

★その小論文は、限られた資源を平等にわけるにはどうするのか?というものでした。限られた資源ですから、早い者勝ちだったり、力があるものが独占したり、弱者を排除したりと世の中の問題を引き起こす根源的問題がここにはあります。

★入試問題では、それをハーディーの救命ボート、トリアージ、アファーマティブン・アクションの3つの観点から論じて、どれでもない方法を考えるのが最終ミッションになっていました。

★まさにこのミッションは駒沢学園女子の教育理念だと土屋校長は語ります。そして、数学科教諭で英語も堪能な広報副部長の山口先生は、数学と生成AIを活用して考えていました。経済学の問題ですから、たしかに倫理的に考えかつ数理モデルで考えていくのはなるほどですが、すぐにそこにいきつくのは中高段階では難しいですね。しかし、そんな学問横断的なフュージョンに挑む山口先生のような教師が現れてくれば、日本の未来に希望はあります。生成AIをカリキュラムマネジメントする知性をもった教師の出現。

★2027年度以降、駒沢学園女子の進化/真価は大きく発揮されるでしょう。

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2025年2月19日 (水)

2026中学入試準備(15)今年から2027年にかけて変わる慶應義塾大学の入試問題 才能創発型入試とシンクロしだす 

★2025年の慶應義塾大学の法学部の入試問題の変更と2027年の経済学部の入試問題の変更については、要注目です。今年の法学部は、外国語と歴史と小論文でした。歴史は150点満点のうち50点以上が論述問題になっています。世界史では300字論述が2問出題されています。1つは金本位制崩壊後の歴史的経緯の説明ともう一つは宋時代の政治と経済の崩壊に向かうダイナミズムの説明。たぶん山川の教科書を丁寧に読んでいればある程度できるのでしょう。ただ、前者では為替と国際経済の関係について原理を理解しているかいないかで論述が決まるかどうかだったでしょうし、後者も宋時代だけではなく、国の軍事力と政治と経済の普遍的な歴史的なサイクルを理解しているかどうかがカギで、暗記型論述とは違いました。コンセプトベースの学びをしていた生徒にとっては標準的な論述だったかもしれません。

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(Bind作成)

★小論文は、これまでの論述問題と違い、ローマ法の一部の文言があるだけで、あとは法と正義の尊重は両立するかどうかを両立するという考え方としないという考え方の複眼思考をせよというビッグクエスチョンが出題されていました。慶応の法哲学者の本を読んできてと言わんばかりのリーガルマインドを入学段階で問うておるのに驚きました。しかも、自分の経験を論拠にするのではなく普遍的例を論拠にせよという条件まであります。

★一般選抜の教科問題で、知識問題が60%くらいで、40%は骨太の思考力問題。まるで最近の中学入試の教科の問題のようです。そして小論文は新タイプ入試のようです。この両方を統合した入試を慶応義塾大学の法学部は実施するようになったのです。

★経済学部は、次のような2つの方式の一般選抜試験になります。

A 方式:外国語〔英語〕(100 分、200 点)+数学(100 分、200 点)
B 方式:外国語〔英語〕(100 分、200 点)+地理歴史〔世界史、日本史のいずれかを選択〕(100 分、200 点) 

★経済学部は、論述問題はなくすそうです。論述式の思考形式と経済学部における専門的な思考様式とは必ずしもマッチングしない。むしろ一般選抜の教科の中で複眼思考の論述問題を出したほうがマッチングするのではないかと、議論され検討された結果だということのようです。

★そういうわけもあったのでしょう。今年は論述問題ではあったのですが、その内容は経済学部で研究していくときに必要な経済学の発想システムを問うダイレクトな問題でした。限られたリソースを差別なく配分する考え方を論述するわけですが、その前提として、ハーディーの救命ボート、トリアージ、アファーマティブアクションの違いをまとめる問題を出しています。

★新自由主義的経済発想、厚生経済学的発想、修正資本主義的発想を整理し、どれでもない自分自身の考えにチャレンジする問題でした。

★中学入試問題は、武蔵や麻布のような入試は、すでに2027年の慶応大学の経済学部の入試スタイルです。今年の法学部の問題は、聖学院の教科入試と思考力入試を統合したような入試でした。

★ますます、中学入試問題と大学入試問題は、シンクロし、従来のような受験勉強入試から才能創発型入試へとシフトしていくのかもしれません。

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2025年2月18日 (火)

2026中学入試準備(14)問いの循環思考が行われる授業 すてきです。

★前回は私立学校の先生方がどんな授業をしているか?について触れました。それは生徒自身による「問いの循環思考」が行われる授業だと。では、その「問いの循環思考」とは何か、私なりのイメージを図式化してみました。

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★昨日は理数系の先生方でしたから、このブラックボックスである現象は、自然現象だったり、数理的せかいだったりします。まずAの段階では曽於現象を理解する問いを生徒共に考えていきます。知識のつなぎがわるいとエラーを起こすので、そこを調整していきます。

★しかし、なぜ調整できるかというと、その現象を生み出している「原理」があるからで、現象の中に矛盾が起きていることを問うことによって、その調整ができる原理を帰納推理と仮説推理で考えていきます。このBの段階では、帰納的にはカテゴリー分けと具体と抽象の関係ですね。そのとき、もしもこう分けたらとか、もしもこう抽象化できたらとかなどと仮説を立てていきます。

★検証は現象の中で起きている矛盾が解消することでひとまず原理にたどりつきます。あとは演繹的にその原理を具体に適用していくことになるわけです。この問いの循環思考ができれば最高なのですが、ここでとどまりません。

★その原理を生成する条件はさらに何か?といなるわけです。このC段階は、理数系では超難問です。すでに存在している原理ですから、それがなぜあるのかを問うのは、哲学の領域に入ってしまいます。

★今回は、理数系の授業から問いの循環思考を抽出したのですが、おそらく文系にもこの問いの循環思考は転移できると思っています。この転移によって文理融合の道が開けるのではないかと。

★ただ、文系的世界の社会現象や文学的現象を生み出す原理は多様です。ですから、それらをどうまとめるのかさらにメタ的にみる視点が必要になります。理数系では難しかった世界制作視点を見つけていく問いが立てられます。

★ところが、おもしろいことにこの世界制作の視点は理数系から提供されるものでもあるのです。世界は当たり前ですが文理融合的思考でできているわけです。文理融合ってこのように考えると、幼児期の非認知能力と認知能力の融合ということです。幼児期ははじめからこれらは未分化状態だったのが、成長するにつれ分裂し、そのままではなく、どこかで融合するのが人間的だったのでしょうが、どこかでそれができなくなったのかもしれません。

★AIの出現で、その融合という本来の人間回復が希求されてきたという時代かもしれません。

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2025年2月17日 (月)

2026中学入試準備(13)東京私立中高の理数教育の教科横断性 実に深い

本日、アルカディア市ヶ谷(私学会館)で、東京私学教育研究所の理数系教科研究会が、<令和6年度「合同授業実践報告会」~教科横断的な授業実践・生徒の興味が高まる取組・ICT や実物教材を用いた取組の報告~>を開催しました。8つの学校の理数系の先生による授業が報告されました。理数系の教科が一堂に会して、授業報告するというのは、従来はなかったのですが、今年委員の先生方がチャレンジし、教科横断的視点を参加者がそれぞれに発見するという機会をつくりました。情報交換会もあり、それぞれ気づいた視点をシェアしたことでしょう(私は都合により3人の先生の報告を聞いて去らねばなりませんでした)。

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★3人の先生の報告を聞くや、普段の授業の中で、生徒が目からウロコの連続であることに感銘を受けました。教科横断とは、この目からウロコ体験が、多様なものをつなぐ回廊になっているのかもしれないと感じました。

★そして、その目からウロコというのは、先生の創意工夫した問い作りにカギがありました。生徒が知っている知識を問い進んでいくと、その知識の積み上げがある矛盾にぶつかるような仕掛けがなされているのです。

★生徒はそこからなぜ、どうして、おかしいじゃないかと問いの連鎖という思考を展開していきます。

★そして、この目からウロコ体験を積んでいったところで、今度は目からウロコ体験を生徒自らが生み出す問い作りの探究が普段の授業の中で行われているのです。

★探究の時間ではなく、普段の授業の中で実は行われているのです。ある一つの単元の残りの20%から30%はミニ探究活動になっているのです。教科と探究がつながっているのに驚愕しました。なぜつながるのか?それは問いの循環思考が作動しているからではないかと。これについては、次回もう少し述べたいと思います。

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2026中学入試準備(12)3Fマインドと3Tスキルを大切にする教師がいる学校を探そう

昨日、和洋九段女子で、22世紀型教育研究センターは「問いの生成WS」を開催しました。3校の生徒の皆さん10人と先生方が共にWSを創っていました。いろいろなセミナーがありますが、一般には、先生方が学び合うものが主流です。生徒の探究発表というのもありますが、その発表に到るまでのプロセスを生徒と教師が共に3F(フラット・フリー・フレンドシップ)な雰囲気で行うものはほとんどありません。それを同センターの先生方は生徒と共にやってのけました。

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★なぜできたのか?それは、生徒と教師の学びのベースは普段の授業です。その普段の授業が同センターの先生方は参加型授業だし、かつ広い視野を生徒と共有する仕組みを作っています。多くの場合、PBLやIBLの授業ですから、今回のWSそのままという感じです。普段の授業が上記の図の3F雰囲気であるというのは、日本の教育の世界ではまだまだレアケースです。

★一見参加型授業でも誘導的で、結果的に型に収まる学びだったり、広い視野を持ち込む授業でも一方通行型授業だと、おもしろいのですが、その先生のトークに憧れてしまいます。心地よい授業ですが、そこに自分の学びの座標軸が生まれる可能性は高くないのです。

★受験生や保護者は、それを見抜く心の目をこれからは学んでいく必要があります。

★学校改革を強く主張する学校は、たしかに素晴らしいのですが、それが誘導的だったり、憧憬的だったりする場合、入ってから子どもたちは何かが違うと思えばまだよいのですが、何も気づかず、そのまま社会に出て、多様な改革の次元がある中で、一握りのアイデアだけで様々なコンフリクトに出合います。そのコンフリクトを自分が創る場合もあります。

★6年間はハッピーでも、その後はどうなるかわかりません。

★いかなる局面でも広い視野で3Fの精神で乗り切る学びの座標軸が育つ環境を探そうということですね。そして、3Fと重なりますが、やはりタレントとテクノロジーとトレランス(寛容)の3Tのスキルも重要です。

★同センターのWSは、デジタルあり、付箋紙あり、何より対話ありで、3Fマインドと3Tスキルが自由自在に闊達に展開していました。

★どうしたらそのような環境があるのがわかるのか?それは教師をみればわかります。ハラスメントを起こさない配慮の行き届いた教師なのか、自分自身ハラスメントを引き起こしていることに気づかない教師なのか。学校説明会に行けばすぐにわかります。

★そのためにも、ハラスメントリスクを回避する感性を大事にしましょう。

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2025年2月16日 (日)

2026中学入試準備(11)生徒と共にワークショップを創る 21世紀型教育機構

本日21世紀型教育機構は、和洋九段女子のフューチャールームで、22世紀型教育研究センターによる「問い生成のWS」を行います。生徒と教師が共にコラボして、問いの問いである良い問いをつくる条件や仮説を立てて、実際に創ってコンテスト形式で、問いの意味や価値を生みだしていきます。今、同センターの先生方が最終打ち合わせをして、環境を整えています。

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★同センターの先生方は、ご自身でもPBL型授業やIBL授業の達人で、学校全体と地域、海外、企業、大学を巻き込んだプロジェクトを学内の先生方とプロデュースしている先生方です。

★そのビジョン、パッション、ミッション、イノベーションを生徒と共有して、生徒自身が自らプロジェクトをプロデュースする対話型組織を生み出せるように、こうして共にWSを創っているのです。

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★対話型組織の生まれ出ずる泉は良い問いの生成だというのが、先生方のコンセプトです。今回の動きは小さなトリムタブですが、おそらく生徒の中にダイナミックな知恵のトルネードが世の中に影響を与えていくでしょう。当然私立学校の躍動にも。実施後、またお知らせします。

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2025年2月15日 (土)

2026中学入試準備(10)富士見丘の突出型グローバル教育 チームワークと自分の言葉としての英語へ

★富士見丘は、中学受験業界で、英語教育型グローバル教育ではなく突出型グローバル教育をデザインし、子供の知性を育てる独自の教育が大いに支持されています。今年の中学入試においても、2024年比で出願数は125.2%、2023年比では181.3%と大幅な増加(首都圏模試センター調べ)を見せています。昨日2月14日、その突出型グローバル教育のある意味集大成の成果を発表する行事「2024年度WWL課題研究発表会」が行われました。在校生、保護者だけではく教育行政関係者も見学しにきているほど充実しています。文部科学省にとっては良質のグローバル教育ロールモデル校です。

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★というのも、富士見丘は、文部科学省が支援している「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム」を構築する拠点校として、この突出型グローバル教育を実施しているからです。この事業は、高校と国内外の大学、企業、国際機関が協力し、高校生に高度な学びを提供する仕組みを作り上げるためのコンソーシアム構築が目的です。

★ですから、鹿児島県の池田高校とも連携しています。池田高校はSSH認定校です。富士見丘はもともSGH認定校です。したがって、WWLコンソーシアムの1つの目的でもある文理融合的探究活動のプロジェクトデザインも実施しているのです。毎回、このWWL課題研究発表会では、池田高校のサイエンスチームも成果発表をします。今回も鹿児島から参加していました。

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★また、WWLコンソーシアムの事業の一環として多くの高大連携によるプロジェクトを実施しています。今回の行事が行われたメインアリーナのロビーでは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の准教授(今回の審査員の1人でもある)とその研究生・留学生が英語でグローバルな探究プログラムとして高1で行っているグローバルワークショップの成果をポスターセッション空間にしていました。

★開演前は、見学者がたくさんポスターセッションに参加していました。まるで知の序曲の演出で、すてきでした。

★今回は高2のグローバルスタディー演習課題研究の2グループの発表でした。1つ目のグループは、マレーシアフィールドワークチームが6チーム発表しました。2つ目のグループは、グアムフィールドワークチームです。5チームが発表しました。

★いずれも、年間通じてのプロジェクトです。もう10年続いています。実はこの発表会は、コンテスト方式でオーディエンスである在校生も投票します。ですから長時間の会ですが、みな真剣に耳を傾けています。先輩の知の勇姿を観ることは、大きなロールモデルエフェクトを生み出します。それが10年間続き進化してきた理由の1つでしょう。

★6分間の短いプレゼンですが、1年間のリサーチ、インタビュー、データ分析、ワークショップ企画、ソリューション提案など議論をしながら・富士見丘の先生や大学の先生、現地の先生方との協力を得ながら・チームワークを充実させていきながら(もちろんその過程は紆余曲折というグループダイナミクスがあったでしょう)の試行錯誤・創意工夫の跡が刻まれていました。もちろん、このプロセスはすべて英語で行っているのです。

★教育行政関係の方々は驚愕でした。目の前の景色は、日本の学校なのか!と。吉田晋校長は、外国の優れた教育を学ぶのは当然ですが、そこから外国の学校もなかなかできなくて困っている教育の根本問題を解決するチャレンジは、私たちがしていかなければと。それが生徒と共に私たちが社会に・世界に貢献することではないかと語りかけているのです。吉田晋先生の哲学は、高みから見ているだけの思想ではありません。実践の中から本物教育を組み立てている実存的哲学そのものです。

★発表会の具体的な内容はとても語り尽くせないので、またいずれYoutubeなどで、先生方と対話してお知らせしたいと思います。

★今回驚き感動したことを一つ書いておきたいと思います。それは会が終わったときに副校長の吉田成利先生から少しお話が聞けたその内容です。成利先生は、「今回チームづくりができことが大きかったですね。そして何よりうちの生徒は英語を自分のことばとして語れるようになったことが嬉しいです」と。

★チームをつくるにしても、ことばを自分のものとして語るにしても、生きる座標軸が自分の内側にしっかり生成されていなければ、それはできません。たしかに、日本とマレーシアやグアムの文化の違いを超えて共に多様な問題を解決していこうとするには意志がしっかりとしていなければならないでしょう。それが学内外の多くの知性と英語で語り合うことで、自らの中に生み出していく教育。富士見丘の突出型グローバル教育とは、本物の人間教育をしているという意味が含まれていたのです。感銘を受けました。

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2025年2月14日 (金)

2026中学入試準備(09)CCSからOOEへ 時代の精神

★昨日、平方邦行先生(東京私学教育研究所所長/一般財団法人日本私学教育研究所所長)と時代の精神を改めて読み直す対話をしていて、昨日紹介した図をさらに変えなければと気づきました。ですから次のようにしました。

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★2015年ころにケインズの「孫たちの経済的可能性」という論文が話題になっていました。世界恐慌の最中の1930年に100年後の2030年を予想した論文です。その2015年の識者はAI社会の到来がケインズの夢を実現するかどうか議論していたのです。ケインズは、すでに今でいう地政学的リスクや気候変動リスク、ハラスメントリスクのない平和な世界をつくれば、1日3時間労働で豊かな生活が送れるようになるし、孫のためにそうしなくてはと考えていたようです。

★その予想が当たるかどうかというより、21世紀型教育を提唱し推進している私たちは、この考えに共感してきたわけです。

★2024年春にIMFが同じようなことを言ったり、ケンブリッジのキングズカレッジ(ケインズの母校)でもそんな議論をしていたので、やはり今もケインズのコンセプトは不易なのだと。

★ハラスメントリスクを回避するということは、階層構造による経済的・心理的・人間関係的等々によって引き起こされる格差の抑圧をなくすことで、それによって創造性を開放することにつながります。IMFは人的資本という言葉を使いますが、私立学校は、それも当然含みながらケインズも言っているように、経済や学歴はAI社会では欲求の対象ではなくなるので、もっと本来的な人間とは何かに行き着くだろうと。

★そんなわけで、CCS(Class Confict Structure)はOOE(Only One Earth)を目指すCreative Classに地球市民全員がなるという人づくりをするのが私立学校だとしてはどうかなと対話していたのです。

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2025年2月13日 (木)

2026中学入試準備(08)MiddleからCreativeへ ようやく

★いろいろな国で、Class Warが起きています。しかし、このWarはどの階層が勝利するのかという話ではありません。従来のClassの概念というかコンセプトが変容するよということなのです。オバマ大統領が中間層の経済政策や教育政策に力を注いだり、トランプ大統領が労働者階級に力を入れる(のかどうか本当はわかりませんが)とか、言われていますが、イギリスでも日本でも同じような政策協議が行われています。しかし、これは近代社会が生まれてからずっと行われてきたことで、その過程で生まれる悲劇が収まることはなさそうです。それで、オードリータンさんとその仲間たちが、この階層構造とは違うコンセプトをじわじわと広めています。

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★それはMiddle Classではなく、みんながCreative classになればよいというコンセプトです。中流階級とか中間層とかいう言葉は、社会学や経済学で使われてきて、その概念の枠の中で、産業政策が行われ、それをメディアが報道していますから、当然です。しかし、それだと、その階層構造そのものが変わりはませんよね。

★大学入試や高校入試もその枠組みの中で行われています。だから公平と平等と自由のClass Warが永遠続きます。続いた方が得する階層があるからです。

★さて、それを誰も困らないように変容していこうというのが、みんがCreative Classになろうよということですね。これは21世紀に入って、リチャード・フロリダが唱えたコンセプトです。そしてそれがグレートリセットを生み出すのだと。

★しかし、これはAIのようなイノベーション革命で世の中は終わらせ、リチャード・フロリダの真意を押さえつけてしまいました。しかし、落合陽一さんや安野貴博さんは、このクリエイティブ・クラスを継承しています。お二人は開成出身者ですね。

★開成出身者が自ら頂点に立てる階層構造をリセットするというのだから実に興味深いですね。

★いずれにしても、中学入試が才能創出入試に変容してきたのは、このみんなクリエイティブクラスになろうよというトリムタブの動きなのです。

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2025年2月12日 (水)

2026中学入試準備(07)東京都 本来の人間とは何かをどうとらえるか議論が進み始めている

★第6期東京都いじめ問題対策連絡協議会(第1回)に参加してしみじみ感じたことは、これほど多くの関係者が、いじめを防止しようという対策を実践しているということに改めて日本の未来はなんとかなるのではないかということです。いじめ問題だけなく、子供の周りには多くの問題があるし、しばしば子供自身問題に巻き込まれます。その問題ごとにこのような政策を都は議論し実施しているのです。

★また、同協議会では、令和5年に都が主催した高校生いじめ防止協議会 議事録が紹介されたが、高校生の声は全くその通りだと思いました。

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★いじめの問題が起こる構造的な認識は、3つの層で語られていました。法的制度という環境の整備がどうなっているか?そしてその効果はどの程度なのか?それから人間関係がどのように形成され、それが阻害されるのかの構造の議論。3つめは子供のマインドの状況、たとえば、自己肯定感が低い状況はどのような構造があるからなのか?それぞれの委員の置かれた仕事のミッションから真摯に語られました。予定された時間を超えた熱い協議会でした。

★これは、いじめの問題だけはなく、多くの問題にも適用可能な議論でした。法的制度と人間関係が拘束力や同調圧力の強さの加減で、いろいろな問題が起こるがゆえに、法的制度や人間関係、そして個人のマインドのそれぞれの価値観を変容させていこうという議論であったからです。

★同協議会が終わった後、何人かの委員の方と立ち話をしましたが、やはりこれらの諸関係の法制度と社会の習慣などと子供の主観的なマインドの矛盾はいかにしたら解決できるのかみな同じ悩みを抱えていました。

★個人はたしかに、物理量としては、大きな制度や習慣の中の点ですが、本来は、制度や習慣は子供の無限の価値を生みだすシステムであるはずです。経済学や法律学、社会学、心理学、生命科学、文化人類学、教育学など多様な学問で、今人類の永遠の問い「本来の人間はいかにして可能か?」に立ち臨んでいますが、それは東京都及び関係する機関もまた同じでした。

★そして、これは東京都ばかりではなく、各自治体でも行っていることでしょう。価値観の転換へ!とすぐには飛躍はできないでしょうが、じわじわ変容はしていると感じました。高校生が、授業のあり方を議論や話し合いができる仕組みにすることを提案していました。これは授業だけはなく、あらゆる集団組織にも適用できます。

★「対話型組織作り」と「対話思考」のフュージョンが生まれつつあります。

★一見遠い話のように思うかもしれませんが、中学入試というのも制度です。新タイプ入試が、この対話思考を開いていることの重要な意味があるということもこのような変容とシンクロしているなと改めて感じました。

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2025年2月11日 (火)

2026中学入試準備(06)知られざる工学院と聖学院の思考力セミナーものすごいバックボーン

★中学入試の新タイプ入試の対策として、工学院と聖学院は思考力セミナーを年に何度も行っています。新タイプ入試は生徒獲得のためのもちろん入試ですが、才能発掘入試として重要な役割を演じています。そして、その対策は塾ではなかなかできないため、学校が独自で開催しています。その中で、両校の思考力入試は傑出していますが、そのバックボーンが学際的でグローバルであることは知られていません。ディズニーランドのようにバックヤードツアーがあるわけではないのでわからないのは当然です。

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★それに見たとしても、なぜ中学入試でそこまでやるのかと、難しすぎると表現ができずに諦めてしまうケースが多いでしょう。だから、この内容を話しても、なかなか日本では興味と関心を持つ人はいないのです。もしこれが欧米のエスタブリッシュスクールならみなピンと来るはずです。

★ですから、両校はタンタンと新タイプ入試を行っています。工学院は、毎回すべてが新タイプ入試になっていて、それに気づかない程自然に行っています。バックボーンが凄いことは目立たないようにひっそりと。

★聖学院は、3タイプの思考力入試を行っているのは有名ですが、こちらもバックボーンについて語ることはありません。本質的なことは伝わりにくいし、難しく思われるのは本意ではないからでしょう。

★この両校のバックボーンは、上記の図のようになっている要素が循環して一つになっているThinkingXができる教師チームが創っています。彼らは、普段の授業でこのThinkingXを生徒とさりげなく共有してもいるのです。すばらしいですね!

★さらにすごいのは、この思考力セミナーのプログラムを企画運営している教師は、外国人教師ではなく、日本人教師です。彼らは英語が堪能なのです。英語の教員というよりは社会学の専門家だったり、心理学や学習理論の専門家だったり、数学の教師だったりするのです。彼ら3人は英語の力が外国人教師と何ら変わりません。

★ThinkingXというのは、explore × exchange × expressという3Xをフル回転させながら、トランスフォームシンキングをして、学際的な広がりと深さを追究していく思考法です。このThinkingXをアナログなAIエージェントを作りながらそれを活用しながら行っていく計画を立てています。新しいものを見出すというより、今まで行ってきたことを見える化するということですが、その過程でさらにイノベーションが起こるでしょう。

★上記の図を見て、これが日本の学習指導要領では到達できないコンセプトベースな学びを創り出す発想法だということが分かると思います。突出したグローバル教育とは、日本型の教育とコンセプトベースな学びが融合するところにあります。日本型教育とは「道」の教育ですが、これがあることによってGAFAMなどからリスペクトされるわけです。そして、それとコンセプトベースな学びが融合することで世界をリードするグローバル教育を実践できるのです。本質的学びと生徒獲得の融合。まさに渋沢栄一の論語と算盤という私学の心意気に通じる先生方がいるわけです。日本の未来はなんとかなるでしょう。

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2026中学入試準備(05)すべてが才能創出型入試の中で海外進学準備もしている学校は

★前回ご紹介したように、今や首都圏の中学入試すべてが才能創出型入試ですが、その中でさらに海外大学進学準備教育の仕組みを創っているところは、新入試ベースの多様な入試を行っている学校がその可能性が高いですね。入試問題は学校の顔だからです。新入試を行っていても、基本は2科4科ベースで多様な入試を実施している学校もあります。

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★2科4科ベースの多様入試の準備をする場合、2科4科の準備時間がない場合が多いかもしれません。この入試で入学しても、十分に国内大学も狙えるのは言うまでもありません。海外大学も個人でなんとかなる時代でもありますし。ただ、学校が仕組みを持っているが、合格のしやすさには違いがでてきますが。

★いずれにしても、新タイプベースの多様入試を行っているところは、30%はありそうです。

★2科4科オンリー入試を行っている学校で、全体の3%の9校が突出したエリート校です。そしておもしろいのが、新タイプベース多様入試を行っている学校の中にもやはり全体の3%の9校が突出したグローバル教育校です。

★6年後生徒が伸びるのは、後者です。単純な話です。入る段階の状況が前者の9校の方が偏差値的には高いからです。しかし後者の9校は入学段階では偏差値ではそう高くありませんが、6年後卒業する時には前者に追いつくうあるいはそれ以上位になるからです。もちろん東大の数でではありません。視野の広さと根源的問題への深まり具合は変わらないでしょう。いやそれ以上かもしれまっせん。

★文部科学省の方も、前者の9校は、だいたい予想がつくでしょう。しかし、後者の9校はまだまだ予想がつかないと思います。それがつくようになると、日本の国力も盛り返してくるでしょう。文科省が省庁の中で重要な役割を担うことになります。現状の制度的眼鏡だけでは残念ながら見えません。だから見えるようになると、すごい事態になるのです。そのためには、アクレディテーションをしてみなくてはわからないのですが。

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2026中学入試準備(04)すべてが才能創出型入試へ

★2025年の中学入試市場の価値意識が大きく2つに分かれました。対立ではなく、私立中学の教育の質を上げる二項相乗効果の雰囲気になってきました。それは2013年ころから始まった10年強の中学入試の歴史が積み上てきた多様な入試が、時熟したという感じです。中学受験生は、2科4科だけではなく、多様な入試の中から選択して準備を進めることができるようになったのです。まず受検生のタイプと多様な入試の関係を見てみましょう。

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★英語環境にどのくらいあるかで受験生のタイプを3つに分けてみました。1つ目は、英語は公立小学校の教科で学んできたという国内生。2つ目は帰国としての条件を満たしていないけれど、海外経験があるとか、インターナショナルスクールで学んできたとか、ご家族の生活がバイリンガルであるとかなどの国際生。3つ目は、現在日本に在住し、原則として海外在学期間1年以上、帰国後3年以内の生徒または現在海外に在住し、帰国が決定しており、帰国までの在学期間が1年以上の生徒などの条件を満たしている帰国生。

★帰国生は、従来から2科4科受験が主流だったのですが、最近は英語型入試だけという学校もあります。もちろん、その入試はレベルの高い英語力を求めています。国際生についても英語型入試だけでチャレンジできますが、英語のレベルは学校によって違います。また、2科4科というよりも、国算のどちらか一つと英語のコンビネーションという学校が多いですね。それから国算を受験するにしても、英語資格利用ができるところも多くなってきました。

★国内生ですが、実はこのタイプの生徒にとっては、本当に多様な選択肢があります。従来のように2科4科だけの受験校は、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)ではもはや50%です。残りの50%は、2科4科受験もできるし、新タイプ入試もできるという状況です。

★多様な入試を活用することで、国語と算数は、比較的基本的な学びをしながら、自分の興味と関心のある分野の探究や習い事も続けながら中学入試にチャレンジできます。かつては、この新タイプ入試の数が少なかったので、リスクが高かったですが、新タイプ入試で併願校を組めるほどになりました。何せ50%の学校が設定しているのですから。

★この中学入試の多様化が意味することは、すべての中学入試の準備が才能を発掘する作業になったということです。ですから今や中学入試はすべて「才能創出型入試」になったということではないでしょうか。

★2科4科入試しかない頃は、中学に入ってから数学や英語で力を発揮し、STEAMやグローバルな領域で、あるいはその両方を横断する学際領域で才能を発揮する生徒が、挑戦できない場合があったのです。そして、そのまま自分の才能に気づかずに大人になっていくということが多かったでしょう。これが日本にとって大きな機会損失の原因の一つであった可能性があります。

★しかし、今は2科4科も含めて多様な入試があり、2科4科に向けて準備し、学問的な才能に目覚める生徒もいるでしょう。彼らににとってやりがいのある思考型を埋め込む2科4科入試も開発されてきたのです。そして、ストレートに思考力や表現力、非認知能力などを準備していけばよい入試も開発されました。英語の入試は4技能と英語で学際的思考力をみる問いも開発されています。

★開成や聖光学院、麻布、武蔵などのように4科目入試の準備をして、なおかつピアノや学問、政治、スタートアップの世界で才能を開花する生徒もいますが、聖学院の思考力入試にチャレンジする準備で、中学入試段階から自分の才能を無限に広げて大人になっていく生徒もいます。

★現状は2科4科目の準備をしていった生徒の活躍が目立ちます。というのも新入試の歴史はまだ10年強ですから、これからです。現状では新入試にチャレンジした生徒が将来活躍するだろうと予測する指標は、この新入試を実施している学校から大量に海外大学合格者が出ているということです。

★東大や早稲田、慶應などで学んだ生徒の中には活躍する生徒が多いわけで、それは海外大学だと同様かそれ以上のことになる予想は誰もができるでしょう。もちろん、そのような大学に出なければダメなのかというとそんなことは全くありません。制度的な確率の話と個人のマインドのすばらしさの話を混同してはなりません。ただ、学校は制度やシステムです。才能開花や才能発掘の確率が高くなるように仕組みを作るかどうかはとても重要です。

★個人としては、どんな状況下にあろうと自分の無限の価値を生みだす力を発揮すればよいのです。ただ、そのために自分はどの環境や条件を見つけあるいは創るのかは必要です。人類の歴史は、道具を携えるところから始まり、道具を発展させることによって人類も進化してきました。この点に関してはおそらく不易でしょう。もちろん、生きる意味をしっかり内燃させていくことが根源的価値であることに変わりはありません。

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2025年2月10日 (月)

2026中学入試準備(03)聖光学院工藤校長出版!「男子校中高6年間でやっておきたいこと」

★聖光学院工藤誠一校長が、KADOKAWAから「男子校中高6年間でやっておきたいこと」という本を出版しました。2月19日販売ですから、予約してください。購入してから中身を知りたいという方が多いと思いますから、詳しくはいずれですが、一つだけメモしたいことがあります。

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★本書を読むと、工藤先生の信念は、東大、リベラルアーツ、グローバル、ICTなどすべて生徒自身の自己変容のプロジェクトであり、大事なことは、そこから人生の座標軸である「自らの価値を発揮できる知性とリーダーシップ、他者の傷にそっと触れることのできる心の温かさ」を生徒が自ら生み出す教育環境をデザインすることなのだということがよくわかります。

★ニューヨーク国連も宗教や民族、男女の違いに関係なく共通している黄金律をメッセージとして創作された美術作品をディスプレイしていますが、それと工藤先生の信念はシンクロしています。

★「おわりに」で、工藤先生は、あえて旧約聖書の伝道者の書から美しいことばを引用されています。聖光学院はカトリック学校だという印です。また、しばらくしたらメモします。まずは皆さまお買い上げください!

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2025年2月 9日 (日)

2026中学入試準備(02)聖セシリア女子中学入試 未来型入試定着

★首都圏模試センターのサイトに中曽根陽子さんの取材記事が掲載。「数ある英語入試のなかでもユニークな、聖セシリア女子中の英語表現入試」がそれです。入試の背景や入試のプロセスがわかりやすい記事で、未来に向けて何が起きているのかヒントになります。聖セシリア女子のカリキュラムは、心理的安心を教育環境の仕組みとして確立しているのは言うまでもないのですが、生徒自身が人間関係や社会問題などから幸せや逆にダメージを受ける局面に向き合うときまず心理的安全を自分の内面に広げて感じ・考え・行うマインドを育成するプログラムがあります。その前提があるので、このようなユニークな英語のパフォーマンス入試ができるのでしょう。

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★同校は、A方式とB方式の2タイプの一般入試を行っています。A方式は、2科目・4科目の入試です。いわゆる従来型の入試です。B方式は新入試と言われているもので、国語か算数の1教科入試と英語1教科の入試に分かれています。さらに英語は、英語資格優遇もある英語入試と中曽根さんが取材された英語表現入試というパフォーマンス型の入試があります。各入試をA方式とB方式に分けて出願状況を観てみました。

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★全体の出願数は、前年対比は93.5%でしたが、B方式は前年対比が111.6%で増えています。A方式にしろB方式にしろ、2023年と比べれば増えています。したがって、隔年現象とみることもできます。

★ここで注目してみたいのが、A方式出願数:B方式出願数です。徐々に7:3に近づいているのがわかります。聖セシリア女子中学にも<ななさんの風>が吹き始めています。

★英語のパフォーマンス入試は、イギリスのAレベルテストのダンスや演劇の実技試験に似ています。Aレベルは大学に入るための資格試験ですが、聖セシリアの英語表現入試は中学入試です。

★イギリスのAレベルテストのように生徒1人ひとりの才能によりそった入試の開発をしているのが聖セシリアなのでしょう。昨年はあのトロント大学に3名も合格したのですから、突出したグローバル教育を神奈川エリアで展開していくことでしょう。もちろん早稲田や上智などの合格実績も右肩上がりです。そして、何より聖セシリアは、音楽やバレーなどSTEAMのAはもともと豊かな教育を実施してきました。グローバル教育の条件はアートも大切です。

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2025年2月 8日 (土)

2026中学入試準備(01)私立学校選択に<ななさんの風>が吹く

★2025年中学入試は、2月11日麻布・開成・武蔵・筑駒などが一斉に新入試向け説明会を開催した時だいたい繰り上がりの動きは収まってきます。そして、すぐに2026年の中学入試の準備が各学校は始めます。たとえば、駒沢学園女子は2月22日にはやくも中学説明会・授業見学会を行います。グローバル探究×ZENの学校で、徐々に人気がでてきています。2026年に向け風が吹くでしょう。工学院も3月8日に入試報告会を行います。同校の入試はすべてが多様な才能の生徒に開かれた「才能発掘入試」です。強烈なファン層との絆が広がっています。新しい風が吹く準備を開始しています。多くの学校が、2月3月中に中学入試報告会など開始するのが、高校入試のイベントスケジュールとは違う点の1つかもしれません。

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★さて、この新しい風の正体は一体何でしょう。それは私立学校選択の新しい指標が確立したということだと思っています。上記の図のように、70%の中学受験市場と30%の中学入試市場という境界線が明確になったということです。この7:3の割合で中学入試市場に新しい風が吹いているということで、この風を<ななさんの風>と呼びたいと思います。

★昨日GLICC代表鈴木裕之さんと『GLICC Weekly EDU 第202回「2025年中学入試を振り返るー学校選びの”やばい”新指標」』で、この新しい指標を「やばい新指標」と題して対話しました。11時間前に公開したのですが、すでに400人弱の視聴者の方がいるのに驚いています。いつもは、1年間で200人くらいの方がご視聴している番組で。サレジアン国際グループや広尾学園の先生方がご登壇される時はたくさんの方にご覧いただきますが、私たち2人が対話する時は、何せいわゆる中学受験の話はしないし、ウダウダ話しているので、知る人ぞ知る動画なのです。だから、一日mたたずに2倍の方がご視聴されているということに驚かないわけにはいかないのです。

★鈴木さんは、GLICCという学習塾を経営していて、英語をベースにした学びに興味と関心がある生徒が入塾します。わかりやすい言い方をすると、帰国生入試、国際生入試、英語資格利用入試を受験したいという生徒が学んでいます。豊かな言語能力と高次思考力と非認知能力をトレーニングできる場です。スタッフは、鈴木さんをはじめ、みな英語が堪能で、ネイティブスピーカーの教員が多いですね。ケンブリッジ大学など出身のイギリス人の哲学英語の講座なども人気です。要するに鈴木さんの教育観は海外志向です。

★もともとは、大学の帰国生入試の準備講座からはじまったのですが、最近は大学もグローバル入試にシフトしてきて、それが中学入試に拡張してきたので、中学入試と大学入試のグローバル入試の領域がGLICCのコア事業だと思います。

★私は、広く日本の教育とこれからの世界の教育を眺めながら私立学校の動向リサーチをライフワークしているので、世の中の価値観の転換のところは鈴木さんと共感しています。ただ、鈴木さんの領域は、中学入試の領域では30%の市場ですから、70%の動向も考えにいれている私とは見方が違うところがあります。だからこそ2人で対話が、202回も続いているのだと思います。

★そんなわけで、鈴木さんとの対話を通して<やばい新指標>は<ななさんの風>だと気づきました。そこで、対話の時に用意した図に、気づいたことを加えて再編集しました。図の説明については、動画をご覧いただければお分かりいただけると思います。

★70%市場と30%市場のラインは、しばらく固定すると思います。30%の中学入試市場を形成している学校の教育の質がどんどん豊かになる時期が続きます。30%の中学市場で舞い始めた<ななさんの風>が<ななさんの嵐>になったとき、そのラインは動き始めるでしょう。それは2027年をまたなければなりません。

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2025年2月 6日 (木)

2025中学入試動向(65) 東京私立中学入試 第3ステージに 才能発掘入試始まる

★東大文系の出願数が、共通一次導入以降最小の数だと各紙が報道している。共通テストの足切りラインを引き上げたため、ボーダーラインの受験生が敬遠したためだという。共通テスト神話。教育改革だと言っていながら、共通テストでうまくいかなかった生徒の中にいる隠れた才能者を切り捨ててしまう。というのは言い過ぎかな。生徒はみな才能者だから、東大に行っても行かなくても、勝手に才能を開花していくだろうから。

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(AI時代の才能者たちをBingに描いてもらった)

★ところがだ、なかなかそうはいかないのが現実だ。植物の種と同じで、育つには環境の条件が必要なのだ。才能者の生まれる環境とは何か?それが分かったら苦労はしないが、その研究を多くの国では長い歴史の中で行ってきた。日本はやってこなかった。形式的平等でヨーイドンでスタートして勝ち組が注目を浴びる。才能者は一握りでよいのだという国力を決して成長させない発想がベースにある。人口が多い時はよかった。しかし、少子化時代は、日本の1学年70万人全員が才能を開花する環境を研究しなくては。中高で、ざっくり420万人はしばらくいる。

★フィンランドの教育はすばらしい、シンガポールもすさまじい。しかし、それぞれ全人口は600万人いかない。日本の中高生がみな才能を開花したら、それこそ凄まじいことになる。本質的平等を求めたいところだ。機会が与えられているだけでは形式的すぎる。全員がなのだ。

★しかし、これが、制度的に行ってもおかしなことになってしまう。才能者は人類や宇宙の宝であり、一握りの権力者のための道具になっては困るからだ。制度というのは、常に痒いところに手が届かない。形式的システムなのだからしかたがない。

★その足りないところを発想でつないでいく役割が私立学校にあった。それぞれ独自の教育を行う。公立は、それをリサーチし、制度を改善してきた。エッ~!と思うでしょうね。公立中高一貫校ができたのだって、進学指導重点校ができたのだって、先行していたロールモデルは私立学校だったんです。

★明治維新以降、初めから私立学校は独自路線だった。まだ官学の制度ができていない時代だから、あとからできた制度に合わない私立学校は斬り捨てられようとした。しかし、生き抜いて今日を迎えた私立学校も多い。

★話が長ーい!と思っている方お許しを。この前提があって、本日2月6日以降、東京の私立中学の入試は第三ステージが始まっているのだ。

★そして、その真の狙いは「才能発掘入試」なのだ。もちろん、生徒獲得のための戦略でもあるが、私立学校は、数を集めればよいとは思っていない。どのような生徒といっしょに6年間学ぼうかという価値が加わっている。

★第2ステージまでで決まらなかった生徒もまだいる。受かったもののマッチングがうまくいっていないという生徒もいる。公立中高一貫校しかうけず、合格しかなかったら公立にいこうと考えていた受検生が、友人たちの話を聞いて、私立に行ってみたいと考えが変わる受験生が現れる場合もある。全く中学受験を考えていなかったが、昨今の世界情勢の中の日本を眺めて、グローバル教育に真剣に取り組んでいる学校を探そうと思ったら、それは私立学校にしかなかったと思い立ち駆け込みたいという受験生もいる。東大の2027年のグローバル入試の話題がここのところ広がって来た。ということは他の大学もグローバル入試を始めるなと思いはじめ、調べてみると、同じシステムではないが、似たような入試がすでに始まっていることに気づき受験しようと。

★人生は塞翁が馬である。それは受験生にとっても、私立学校にとってもだ。このことに気づくことが、実は大きな転機になるというのが、6年後今を思い出し語ることになるだ。この第3ステージこそ、私立学校の諦めることのない見えない才能発掘戦略なのだ。

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2025年2月 5日 (水)

2025中学入試動向(64) 明日2月6日工学院大学附属中学の最終入試

★東京・神奈川エリアの中学入試の第2ステージも最終段階。明日2月6日には、工学院大学附属中学校の最終入試。ざっくり分けると教科入試と適性検査型入試の2タイプ。しかし、詳細にみると、国算・英算・英国・適性検査型の4タイプなのである。いわゆる偏差値表や倍率速報などでは、ここまで詳細な出し方はされない。だから、工学院がいかに多様な才能の生徒と学習者中心主義の教育環境デザインをしているのか意外と知られていない。

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★破格のグローバル教育については知られているが、このグローバルとはSpaceship Earth(宇宙船地球号)の感覚で、宇宙から見たかけがえなのない地球という次元でデザインされているというのも意外と知られていない。

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★いろいろな才能を持った生徒が、好奇心から始まる多様な経験と思索を仲間と共に学び、探究論文を通して自分の興味と関心を広げ深めていくT字型(横のラインは広がり縦のラインは深まり)の学びを展開していく。そして、このT字型にはもう一つの意味がある。教師と仲間と共に学び、学校を超えて絆も広げ、フレンドシップを豊かにしていく。

★今年の中学入試の傾向通り、飛躍的出願の伸びはなかったかもしれない。それでも工学院は1日午後と3日は昨年を上回った。実受験者数も昨年と変わらない。しかも、工学院ファンという強力な絆と工学院の教育の理解と期待が半端ない生徒ばかりになっている。

★6日の試験は午後から。出願締め切りは明日入試直前の11時59分までだ。

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2025中学入試動向(63) 八雲学園 未来発見入試始まる

★本日2月5日八雲学園は未来発見入試を実施する。今年の傾向は、見た目の出願が飛躍する学校は少なかったが、Web出願ということもあり、受験生は丁寧に手堅く出願した。そのため、実受験者数は、昨年と変わらずであるというケースが多い。八雲学園もそうだという。

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★ただ、八雲学園の場合は、今年すべての教科入試に英語資格利用ができるようにした。そのため英語資格のスコアを利用する生徒が多かったという。八雲は基本的には英語が得意でなくても、6年後まるで帰国生だったかのようなレベルにまでに育つ。言うまでもなく、英語力だけではなく、グローバルリーダーとしての資質能力が身に付く。

★しかし、時代の希望の精神とシンクロしてきた八雲学園だから、英語に興味関心ある受験生も増えてきた状況に対応するのは、自然なことだった。

★未来発見入試も、英語で受験することができる。そして八雲学園のどんな自己成長物語を描くのか表現する試験である。

★2週間後、カリフォルニア州サンタバーバラにある八雲レジデンスに中3の生徒は渡米する。高校に進学する飛躍の自分を確かめに、研修に旅立つ。八雲学園は、日々人生の旅へワクワクするように立ち臨む学びがいっぱいだ。

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2025年2月 4日 (火)

2025中学入試動向(62) 駒沢学園女子 出願総数前年を上回る

★2月4日現在で、駒沢学園女子の出願総数は前年を上回る。前年対比は120%。グローバル探究は魅力的。そしてそのベースにSpaceship Earthの宇宙観がある。生徒一人一人が、小さいけれど宇宙そのものの存在だ。人は見える世界だけで見ていると、社会や世界の一部分と思える。しかし、坐禅をしながら内省していくと、自分の心が宇宙の存在そのものだと気づく。

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★駒沢学園女子は、永平寺がつくった学園。だから、毎年生徒は永平寺を訪れる。そして永平寺賛歌を合唱する。僧侶の皆さんの心をゆさぶる感動の歌声を響かせる。

★僧侶の心が動くのは、宇宙に響く慈悲の音を聞くからだろう。

★明日5日の最終試験の出願は、本日23時59分まで

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2025中学入試動向(61) 和洋九段女子 出願総数前年を上回る

★2月4日現在、和洋九段女子の出願総数は581名、前年対比103.6%(今年の出願数は同校公開データから・前年の出願数は首都圏調べ)。最終試験日10日は、明日から出願開始だから、まだ伸びる。

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★やはり、同校広報宣伝部の皆さんの活躍が光ったのだろう。PBL入試体験で、ファシリテーターを広報宣伝部の皆さん全員で行っている。なぜそんなにできるのかと尋ねたところ、いつもの授業がPBLですからとあっさり回答されたのを想い出す。

★PBLはそれぞれの個性と才能を協力することによって開いていくワクワクするような体験。

★グローバル教育も同校では破格に行われているが、7人もいる外国人はPBL型をベースとする。

★そして、このPBLをすべての教師が行うことによって、何が起きているのか?それは学校の組織自体が対話型組織としてウェルビーイングな雰囲気が広がっているのである。

★明日の入試は、明日の集合時間の1時間前まで出願できる。

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2025中学入試動向(60) 2月3日東京・神奈川の中学入試終え 第二ステージへ

★昨日2月3日、東京・神奈川の私立中学入試が実施された。東京の状況を観てみると、男子校は、海城②、佼成学園SE、聖学院第3回アドバンスト、足立学園第3回、東京都市大付属グローバル、日大豊山第3・4回などの出願が前年を上回る。

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(ニューパワースクールのイメージはBing作成)

★女子校は、トキワ松第4回、鴎友学園女子第2回、恵泉女学園第3回、佼成学園女子午前・午後、三輪田学園第3回午後、山脇理数探究、実践女子第5回、十文字得意型、女子聖学院4回・5回、女子美術大学付属、東京家政学院午後、冨士見丘第3回・午後、和洋九段女子第5回などが前年の出願を上回った。

★共学校は、かえつ有明午後AI思考力入試、安田学園第5回、郁文館第2回・第3回、共栄学園第4回、広尾学園小石川第3回、広尾学園国際生、桜美林午後、三田国際科学学園MST、芝国際特待午後、淑徳巣鴨第3回スカラーシップ、淑徳スーパー特進第2回、駿台学園午前、上野学園、新渡戸文化2科第3回、青山学院、多摩大目黒第3回、貞静学園午前・午後、日本工業大学駒場第5回、八王子学園八王子午後、明星第3・4回、立正大付属立正第3回など

★並べ順は、日能研倍率速報(2025年2月3日現在)の入試倍率サマリー≥試験日順の一覧に並んでいる学校の中から順に昨年を上回っている学校をそのまま抽出した結果。

★こうしてみると、エリートスクール、ブランドスクール、ニューパワースクール、ザ・ウェイスクールどれもが選択されていて、中学入試市場の健全性が証明されている。

★さて本日2月4日から中学入試の第2ステージが始まている。ここからは、出願倍率は、実数とは相当かけ離れているから、受験生は、気にせずに、諦めずに、自分の性格や興味、学びのタイプ、チャレンジしたい夢などにマッチングする学校を選んで頑張って欲しい。特に、明日2月5日からはほぼニューパワースクールかザ・ウェイスクールの入試が多くなるので、受験生によっては新しい価値にこの時期に出会うことになるかもしれない。そしてそれが思ってみなかったウェルビーイングな未来を開くということは、実は多くのケースがある。

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2025中学入試動向(59) 桜蔭・JG・雙葉・フェリスの出願数いずれも微減

★本日2月3日中学入試が終わり、少しずつ全貌が見えてきた。いわゆる女子御三家とフェリスは、2月1日一回入試だから受験者の動向はつかみやすい。4校の出願数の合計は、2023年が2180人⤵2024年が2129人⤵2025年が2052人(首都圏模試センター調べ)。ここ数年徐々に減少。この4校に関しては少子化の影響はまだないだろう。今年77人が他の私立学校に出願したということ。2月1日の東京女学館、山脇英語入試A、立教女学院は増えている。2月1日の出願数を合わせると593人で、前年対比129.2%。134人増えている。77人が全員この134人の中にシフトしたとは言えないが、これは一例で、このようなシフトは起きているのだろう。

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(作成はBing)

★これらの7校は、偏差値と東大合格の数の違いはあるが、教育の質や東大以外の大学であればあまり変わらない。もちろん、校風は全然違う。だから、自分の娘の学びのタイプや成長の仕方にあった学校選びを積極的にするようになってきたという各受験情報シンクタンクの見立ての通りではないだろうか。

★ピラミッド価値観からフラットな価値観へということか。それと女子受験生が女子校を選択するもう一つの重要な理由は、階層構造の圧力が無意識の中にジェンダー問題を引き起こしがちだから、そのリスクを回避するといういうこともあるだろう。偏差値の高い学校が、生徒を抑圧しているということではない。その社会的ポジションイグに対し、無意識の中で構える心的構造の問題である。

 

 

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2025年2月 3日 (月)

2025中学入試動向(58) 筑駒の中学入試の国語の問題に脱帽 身近な生活の中で社会の根源的な問いに触れる自分の感性

★2025年2月3日、筑波大学附属駒場中学の入試が実施された。国語の入試問題をみて、さすがだなと深く感じ入った。随筆が2つと詩が1つ出題されていて、どれも考えるメタ視点の稼働が共通している。テーマは「自由」「美」「嘘」なのだが、その意味は社会的な意味と個々人の意味の違いがあって、そこの小さな葛藤をどのように捉えるかもちろん論理的になのだが、その繊細な違いに気づく柔らかくも鋭い感性とか主観とかをメタ認知する、別の言葉で置換えると、リフレクションする視点を記述していく。

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(今回筑駒の国語の入試問題で扱われた文章は、この3冊の本から)

★作家も湯浅誠さん、矢萩多聞さん、東田直樹さん。多様性が求められながらもそこから遠のくかのような事件が世界中で起きている。大きな社会問題を他人ごとのように見ているかもしれない私たちに、身近な生活の中に同じようなことが起きていることに気づかせてくれる3人の作者。作者自身それぞれに社会の葛藤と日々向き合っている。

★いわゆる国語の読解と記述の問題なのだが、さりげなく国語の範囲を超えて十分に総合型問題になっている。発想の融合がさすがだ。

★探究とは、たとえば、この3人の作者のような体験に自分なりにどうアプローチし、そこでコミュニケーションをとり、対話を重ね、根源的な問いを見出し、その問いが生まれてくる背景をリサーチする方法を考え実施し、それを世界に共有するところから始めればよいのだということがしみじみわかる。

★すぐに問題解決の答えを急がなくてもよいし、必ずしもツールを創り出す必要はないということがしみじみわかる。問題解決策やモノ作りまでしなければ総合型選抜はうまくいかないというのであれば、それはそのようなところまで要求する大学を受験するにはそうせざるを得ないが、根源的な問いを見出し、公に表現するところまでで十分大事な学びを行っていると評価したほうがよい。

★このような根源的な問いを発見していれば、一般選抜でたとえそのような問題が出題されなかったとしても、決して無駄ではない。むしろ、総合型選抜であれ一般選抜であれ、根源的な問いを探究する経験が重要であり、それが受験勉強に直接結びつくかどうかは、あまり問題ではない。

★もし根源的な問いを探究する経験をしないまま、大学に合格したら、大学に入ってからそうすればよいが、数学や英語の受験勉強の範囲を先取りするより、根源的な問いを探究する経験が中高時代にある方が大事なような気がする。

★このような国語の入試問題を出題する筑駒の6年間は、この体験をするよという予告編なのだろう。

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2025中学入試動向(57) 東大が変わるという記事が拡散し始める昭和100年時代 中学入試も連動する?

★2025年は、昭和だとしたら昭和100年。大きく変わらざるを得ない年である。そんなとき、2027年の東大の新しい動きを見据えて、現代ビジネス(2025年2月3日)にこんな記事が掲載。<「東大文一・法学部が日本最難関」の時代は完全終了…「文二の躍進」「超エリート学部設立」で東大がもうすぐ「まったく違う大学」に変わる>がそれである。本ブログでも2027年の話はしてきたから、詳しくは同記事をご覧いただきたい。中学入試とどのようにかかわるかというと、東大にたくさん合格する生徒は私学出身者が多いから、当然東大をたくさん入れている私学は関心があるだろう。しかし、そうでないところは、この話は大学選択の1つとして、それほど関心がない。そういう時代。さすがに昭和100年だ。価値観は変わる。

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(未来の東大音雰囲気とプロンプトしたらBingが描いた)

★要するに2013年ころまでは、東大ピラミッドの階層構造に私立学校は紐づいていた。これが偏差値階層構造に重なていたから、この社会的抑圧に立ち臨む私学と抑圧から解放されようと動いた学校に分かれた。ざっくり言うと前者がエリートスクールで、後者がニューパワースクール。ニューパワースクールは2015年には10校以上になった。その6年後の2021年に、それらの学校をはじめ、多くの私立学校から合わせると200人くらいは世界大学ランキング200位以内くらいの海外大学に合格し始めた。

★東大級の大学の選択肢の幅が一気に拡張。その流れは止まらない。入れ替わりに中国人の留学生が増える。それにともない東南アジアからも、彼らは母国語と英語を流ちょうに使えるから、2027年というのはちょっと遅いと思うが、東大もグローバル入試に切り替えていく。まだまだ定員が少なすぎるが。

★そんなことをしているうちに海外大学に日本の優秀生(偏差値ではない。高次思考力とC1英語を有している生徒)がどんどん進む。でも、彼らは日本を捨てるわけではない。世界的視野を持って活躍しながらも日本のプレゼンスを高めてくる役割を果たすことになる。

★もう東大が良いとか海外大学が良いとか、そういう時代ではない。グローカルな時代というか、Only One Earth=Spaceship Earthの持続可能性のための経済生活とグローバルールと教育を再構築するために力を尽くすわけだ。

★だから、昭和100年の中学入試は、是が非でも御三家でなければ、偏差値が高いところでなければという、階層構造主義的価値観は60%はなくなった。もちろんまだ40%はエリートスクールには残っている。それはそれで大事。東大が良き変わり方をしてもらわなければ、日本の国力が心配だ。心のアナーキズムが進んでも、権威発動の機能はなくならない。これがなければ、パスポートのパワーが減退してしまう。今はまだまだ頼りになる。

★昭和100年を迎え、経済に対する価値観も変わる。現在メディアが報道している価値のスキームはまだまだ成長神話物語。そこも変えていく必要があると、オードリータンや開成出身者の安野さん。善き方向に変わることを期待。

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2025年2月 2日 (日)

2025中学入試動向(56) 女子美 今年もさらに総出願数伸ばす

★女子美術大学付属中学校の入試2日目は、自己表現入試。大テーマは「考える力・伝える力」ということは入試要項に予め公開されている。しかし、具体的な課題は本番になるまでわからない。幾つかの場面設定などの条件が設定されて、小論文を書くわけだ。この試験スタイルがすでに、インスタレーションやコンセプチュアルアートかもしれない。おもしろい。

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(作成はBing。女子美の様子を描いてもらうのは難しかった。。。)

★とくに絵画や工作などの入試はない。教科入試と自己表現入試だが、基本は言語と数理問題。でも、女子美を志望する生徒は、絵を描いたり、ものづくりは大好き。絵画教室に通ったりしている生徒も多いだろう。

★美術で仕事につけるのか?もちろんつける。ただし、アート市場は日本は小さいから、海外に進出することになる。英語ができないと困る。ところが女子美は英語とアートを融合させて学べる機会がものすごく多い。

★デザイン学科に進む生徒が多いが、美術史やプロデュースの道に進む生徒もいる。アートのキャリアは多様で、それについて普段の学園生活の中で理解していくことができる。こんな美術をベースにした全日の学校は他にない。総出願数がまたも昨年よりも多くなったのは当然だ。

★男子生徒が、女子美のような男子校や共学校はないのかと探すが、高校からでないとなかなかない。世の中グローバル×STEAMの時代。男子校や共学校にも女子美のような学校があるとよいのだが。

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2025中学入試動向(55) 自由学園・新渡戸文化・かえつ有明

★2025年中学入試は、価値観の変化が起きている。自由学園は2月1日と10日しか中学入試を設定していないという徹底ぶり。自由学園を選んで、他を受けるのは自由だけれど、いろいろな学校を受け続けるのは、小学校6年生にとってどうなのだろう。判断は自由だけれど、自由学園は、1回チャレンジするので十分なのではないか。いろいろ受けて、何か疑問に思ったり、疲れたりしたら、10日に戻っておいでよと中学受験体験から何か大切なことを見失っていたことに気づいた生徒に門戸を開くというメッセージ。私立学校はさまざまな価値志向があるので、こういう自由学園があってよいのだ。そして2月1日の出願者は110人で、前年対比115.8%。自由学園の精神を求める受験生が増え始めている。

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★広大な自然のキャンパスの中で、自分の夢を夢だと思っていたけれど、夢じゃなかったと実現していく探究活動をしている。最近、心のアナーキズムが見直されている。商品交換経済で高ストレスでメンタルを追い込まれる社会に対し、贈与という贈り物以上に愛情を贈られる絆を豊かにする経済社会との資本主義の融和を唱える考え方が多くなってきた。東大の現代国語の入試問題でも出題されるようになってきている。ある意味Web3.0の社会はそれを先取りしているともいわれている。徹底した共感と共生の人間性と社会デザインを探究のテーマにしている自由学園は、まだ多忙なのに経済状況が思わしくなくて、目の前のことでいっぱいいっぱいになっている状況の中で、知る人ぞ知る新しい【道】を開く学校なのだ。

自由学園の学園長更科幸一先生は、東京私学教育研究所の初任者研修の委員長としても活躍していて、委員の先生方とOSTという対話型で心のアナーキズムを融合した研修を実施。組織の中でルールを遵守しつつも、誰に囚われるのでもなく自由(それを心のアナーキズムとここでは呼んでいる)でいられる人間作りを果たしている。参加者は大変多い。同研究所のメンバーもOSTをいろいろな研修に取り入れている。

★当然、自由学園でも教職員とOSTスタイルで対話しているし、生徒も同じだ。このOSTは、ラウンドスクエアの国際会議や国連の会議で活用される<バラザ>と親和性があるようだ。この雰囲気にピンとくる受験生・保護者がいるということが、中学入試市場がポピュリズムではないことの証であろう。

★このブログでもすでに新渡戸文化も受験生が増えていることについて述べたが、自由学園とは一見違うが学校だが、何者にも偏見や先入観にも囚われの身にならずに自分の道を歩む学びが展開していて、やはり共感と共生がベースになっている学校だ。

★かえつ有明は、今年は受験生が多少減ったが、総受験者数は定員の10倍はあるだろうから、生徒募集においては何ら問題ないのだが、おそらく減った理由は、大学進学実績などのいわゆる塾が気にする路線と生徒の心理的安心をベースとした共感的コミュニケーション場づくりの二刀流をやめて、後者の路線に徐々に一本化するカリキュラムマネジメントに受験生が気づきはじめたからだろう。この路線を遂行する強烈な教員集団が形成されている。

★この3つの学校の受験市場のサイズは、これから拡大していく可能性が大ではないか。2025年の中学入試は、それぞれの<価値圏>が着々と確立しているように思えてならない。

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2025中学入試動向(53) 本郷・佼成学園・足立学園

★今年の男子校の入試で、注目されているのが本郷と佼成学園と足立学園。いずれも正しきエリート校である。本来「正しき」という冠をつける必要はないが、エリートというと、高偏差値という意味と間違われる。確かに、本郷の偏差値は高いが、東大や医学部を目指し、これからさらに困窮する日本や国民の生活に貢献しようという生徒を輩出するという意味で正しきエリート校というコト。

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(足立学園はアフリカやアジアでの海外研修にも力を入れている。写真は同校サイトから)

★ただ、佼成学園はさらにグローバル×探究×アントレプレナーシップにも力を入れているし、足立学園も同様だが、さらに自学自習のサポート体制が教員ばかりではなく空間作りまで徹底している。

★それぞれの学校を選ぶ生徒の成長の出発点が違ったり、生徒のそれぞれの学びの特徴が違うため、教育環境づくりは違う。だから本郷にちょと背伸びをして挑戦する場合、その背伸びの程度に応じて、佼成学園や足立学園などを併願するのだろう。逆に本郷に確信をもって受験する生徒は、合格を獲得したら、神奈川の聖光学院などを挑戦する生徒もいるだろう。

★本郷の勢いからいって、2月1日は、第一志望者が多いはずだ。そして、佼成学園や足立学園、あるいは高輪など最近注目が高い学校が揃ってきたことによって、それらの学校で対流が起きているのかもしれない。「本郷・佼成学園・足立学園」圏という6,000人規模の目に見えないサークルができている可能性がある。もちろん、この考え方は私の独断と偏見で、エビデンスを示せるわけではないことはお断りしておく。あくまで、ものの考え方の一例に過ぎない。

★さて、この圏にどのような男子校が参入してくるのだろうか。要するに何が起きているかというと、学校選択がある1つの階層構造内で行われてきたのが、多様な圏の複合体になろうとしているのではないかということなのだ。中学受験生が、合格可能性がそう高くなくても、まず受けるだけは最上階層にチャレンジし、受かるところを併願にするという時代から、ある価値意識が共感できる圏内の中から併願を考えるという時代にシフトしたのではないかと。すると、倍率はあまり関係なくなってくる。ほどよく実受験者数の2倍から3倍くらいで、適正な受験市場がでてくるということになるのではないか。

★もちろん、併願戦略を立てる時にすでにそうなっているのが、意識と現実は違っていたのが、意識と現実が一致してきたということではないか。偏差値という夢から自分の成長への夢に、夢の立て方がシフトしてきたと言い換えてもいいかもしれない。

★そのような圏の中での受験デザインは、ある意味心理的安心安全を生み出す可能性がある。他人が作った偏差値基準を参考にしながらも、それに振り回さっるのではなく、自分の価値基準に合わせて学校を選ぶことは、抑圧感に苛まれることは防げる可能性が高い。

★この価値圏(と仮に呼んでおく)の形成をどうしていくかによって、2027年以降の学校のサバイバルが決まるということかもしれない。

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2025中学入試動向(52) 2月2日入試 予定通り始まる

★2月2日、東京・神奈川の中学入試は、降雪の心配もあったが、雨になり、予定通り始まる。今朝のNHKのニュースでも、恒例の八王子駅がでてきて、今のところ雪は降っていない、交通機関も通常通りと報道された。八王子が雪となれば、中学入試では工学院が映されるが、同校の広報部によると、雪が降ったらメディアが来る予定になっているということだった。それはなさそうだ。

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(工学院の中野校長の中学受験生への応援メッセージ動画 同校応援メッセージサイトから)

★工学院のサイトにはこうある。

中学入学試験 雪の対応について[2月1日(土) 8時50分現在]
明日2月2日(日)は天気予報では関東地方に降雪の可能性があると報じられていますが、現時点では時程どおり実施の予定です。
時程を変更する場合は、改めて本校ホームページに対応について掲示しますので、ご確認いただきますようお願い申し上げます。
なお、八王子方面は気温が低いので暖かい服装でお越しください。
万が一、交通機関等に障害があって遅刻しても、入試で不利にならないよう対応いたしますのでご安心ください。

★なんとか無事予定通りとなったが、多摩エリアの電車網は、一部予定がズレると玉突きに遅延する場合もある。雪は降らなくても、冷え込むと路上はうっすらと凍てついたりする。すると交通機関は徐行運転になったりする。

★だから、なんらかの交通インフラのトラブルで遅刻しても、大丈夫大丈夫だよという対応は、受験生にとってはとても安心する言葉なのだ。

★多摩エリアの中学は、山の中にあるケースが多く、ほとんどがスクールバスだ。だから駒沢学園女子のように、予め1時間遅らせて試験を行う変更を告知しているところもある。

★2014年高校入試のときに、降雪量27cm降って、八王子エリアは、本当に大変だった。神馬街道沿いの住宅は雪に阻まれ生活が困難になったこともあった。それ以来というわけではないが、私立学校は、どこの学校でも、毎朝毎夕校長・教頭・事務局長・生徒指導部長などは、天候の状況と交通インフラの状況をリサーチし、地域と協力しながら、生徒の通学の安全性に配慮をする。

★また入試の時などは特に地域の警察とも連絡し合う。最近思いもよらぬ事件が起こるからだ。順調に教育が進んでいるように見えるのは、背景に多様なリスクに対するマネジメントが稼働しているからだ。

★昨夜、即日合格発表を行うと同時、翌日の降雪情況について議論されていた私立学校の様子が目に浮かぶ。先生方の中には、学校近接のホテルに泊まって業務を遂行している先生方もいる。本当に頭が下がる。

★午前の入試がおわったころに、天気が急変するかもしれないので、受験生同様先生方の緊張感も凄まじいだろう。うまく乗り切れることを祈っている。

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2025年2月 1日 (土)

2025中学入試動向(51) 教科の中学入試問題が安定的な問題に。新タイプ入試や大学の総合型問題の質に並ぶ市川の教科の問題

★毎年2月1日東京の中学入試の問題を観て、このような思考を喚起する問いに立ち臨むのは、小学6年生にとって幸せなことだ思うのが常だった。今回、市川の入試問題がワクワクするような思考を喚起する問題だったため、東京でもとワクワクしていたのだが、極めて安定した問いで、文句のつけようがないのだが、きちんと枠に収まる問題だった。ロジカルシンキングや記述はしっかりあるのだが、クリティカルシンキングという思考のコンピテンシーをみるような問いがあまりなかったように見えた。ざっと見たので本当は違うのかもしれない。

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(作成はbing)

★思考のコンピテンシーであるクリティカルシンキングなどは、新タイプ入試、中でも思考力入試やエッセイライティングのある英語入試ではむしろ当たり前。

★最近の大学入試で総合型選抜だけではなく、総合型問題が個別入試で設定されるようになったが、ここではやはりクリティカルシンキングが必要になる。

★入試問題とその学校で学びたいと志望する生徒のタイプはある程度親和性がある。だから、生徒の才能のタイプの柔らかさがなくなるのは困るはず。

★最近は、模擬試験が本物以上に本物にできてしまうから、まるで模擬試験が入試問題で出されているような錯覚に陥ってしまう入試問題がある。受験勉強はやりやすくなるし、塾の指導もやりやすくなる。どことは言わぬが、これぞ中学入試というのに東京では今のところ出会ってない。

★学校は、その安定性にマッチングさせるのではなく、むしろその安定的な勉強の枠を外して広げる役割をもっていたはずだ。模擬試験が追いついたのか、学校が安定的になったのか。

★ちなみに、思考力入試のような新タイプ入試は、なかなか塾では対応できない。本質的な思考を喚起するから、そもそもマニュアル化できない。そのような問題を教科の入試問題でも出題するとよいのだが、ここは時代が変わったのか。

★もし変わったのだとしたら、その変化をどう読み解くのか。

★もしかしたら、教科入試のタイプが、共通テスト型タイプと総合問題型タイプの2つにわかれていくということなのかもしれない。そして新タイプ入試は総合型選抜タイプという感じになっていくのかもしれない。中学受験準備の学び方の変化が起きるのが2025年からなのか。今後入試問題をしっかり見ていきたい。

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2025中学入試動向(50) 湘南白百合の中学入試における歴史的役割

★2月1日午後、湘南白百合は国語と算数の一教科入試を行っている。神奈川エリアは、男子校は勢いがよいが、女子校、共学校は停滞している。これは今始まったことではなく、ここ数年続いてきた。その中で、湘南白百合は毎年新機軸を打ち出し、輝いていた。一教科入試、英語入試など神奈川エリアのハイレベルの女子校グループは見向きもしなかった。しかし、それを東京の女子校や共学校が見逃すはずがない。多くの学校が湘南白百合を研究をした。豊島岡女子まで動かすダイナミズム。一気呵成に多くの学校に英語資格利用入試を実施する勇気を与えた。

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(全校生徒で、一般入試の準備をしている様子がサイトに公開されています。さすが愛ある学校)

★敵ではないが、塩を送ったのである。そういう大きな流れをつくったところは、知のコモンズの悲劇を被るのがセオリーである。だから、今年は爆増はなかった。もしかしたら、学校当局はこの事態をどう捉えるのか議論されているかもしれない。しかし、公立中高一貫校も倍率が4倍いかなくなり、落ち着いてきた。

★湘南白百合も、落ち着いてきたと見たほうがよい。しかし、80人弱の定員対する総出願数は、9.3倍である。いかに昨年がすごかっただが、依然として湘南白百合の中学入試やその背景にあるカリキュラムデザインは、私立中高一貫校に影響を与え続けることは間違いない。

★それに隔年現象ということもある。神奈川エリアは少子化が急激だし、県の財政も東京に比べると苦しいから私学助成も辛いところだ。湘南白百合は学校であるから、自力でその外部環境を乗り越えるのは難しい。

★にもかかわらず、また新たな経営と教育イノベーションを起こすであろう。そしてそれは水面下で着々と進んでいるであろう。これからも期待したい。

 

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2025中学入試動向(49) 八雲学園のハイブローなグローバル教育の宣言

★2月1日の東京の午後入試、幾分温度もあがり、寒さも和らいだ中、始まった。八雲学園は、1月30日現在で2月の午前午後出願数は、昨年の90.5%まで追い上げた(首都圏模試センター調べ)。31日の分を足すともっと昨年に迫っているだろう。一昨年に比べると超えているかもしれない。これは驚きだ。実は八雲学園は、今年から英語資格のスコアをすべての教科入試に加えたから、英語に興味のある生徒に優遇制度を立ち上げたことになる。国算社理が得意な生徒にも英語の得意な生徒にも門戸を開いたのだから何ら問題ない。とはいえ、やはり英語に関心を持った生徒に偏ると予想される。

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★今年から豊島岡女子が算数と英語資格利用入試設置に踏み切ったことに象徴されるように、いかにグローバル教育の必要性が痛感されているとしても、まだまだ中学受験市場の価値意識は、2科4科目学力重視主義。ニューパワースクールがそこに風穴を開けているが、そのニューパワースクールでさえ、2科4科だけの入試も準備している。全面展開するというリスクテイクする八雲学園はさすがだと感嘆しつつ、ちょっと心配でもあった。

★しかし、見事に数字上は今までの生徒数を維持しそうだ。しかし、八雲で学びたいという生徒から八雲の破格のグローバル教育で学びたいという生徒に変化する、つまりハイブローな教育にシフトすることが今回の入試の背景では起こっているに違いない。

★同校が、そう判断せざるを得ない環境は、ラウンドスクエア加盟校であり、サンタバーバラコミュニティのメンバーであり、全米の超エスタブリッシュでハイブローのケイトスクールと親密な姉妹校であり、UCサンタバーバラやイエール大学との学びやリベラルアーツの交流をしているからである。凄い世界が八雲学園の教育には広がっているのだ。

★実は英語に関心がなければ、これらの世界になかなかはいれない。

★この世界の重要性は、英語に関心がなければ見えないし、2科4科学力重視の中学受験市場では40%くらいの受験生にしか気づかれていない世界だ。2027年になったら、このシェアは急激に拡大するのだが。

★つまり、あえて中学受験市場全体を対象にするのではなく、時代を見据え、その40%を対象にする入試を実質上行ったのである。それゆえ凄いリスクテイクをしたとそのチャレンジをリスペクトし同時に心配もしたのだ。

★しかし、受験生を迎える若い先生方は明るく、生徒の可能性を開く教師像の光を放っていた。

★八雲の受験生の皆さんは、希望を持ちながらも苦境に陥る世界を救済するグローバルリーダーに向かって燃えて欲しい!

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2025中学入試動向(48) 工学院 奮戦する先生方

★東京の23区は、中学受験人口は多いが、多摩エリアになると実は少なくなる。東京のエリアの中学受験と言っても東西に長い東京では西と東ではだいぶ様相が違う。2月1日工学院の入試は、そのような状況の中で、先生方が奮戦している。1月31日の段階で出願延べ人数ではなく、出願者の実数では前対比95.8%まできた。2月2日以降、中学受験生の中には併願校を変えるケースも出てくる。そんな時、工学院を考えてみるのもよい。

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★6年後、本当に可能性がめちゃくちゃ広がっているからだ。教育の中身については、同校サイトが実に詳しい。困ったときにぜひサイトにアクセスしてみることをおススメする。勇気と希望をもらえる。

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2025中学入試動向(47) 富士見丘 Will入試、一般入試増える

★2月1日午前富士見丘のWill入試が始まった。Web出願で前日の24日まで出願できるため、各シンクタンクが公開しているデータよりも、実際には増えている。81名が受験した。富士見丘でぜひ学びたいという固い意志をもってチャレンジする入試。長い歴史をもつ同校独自の特別入試。今でいう新タイプ入試で、面接もあるので、いわば大学の総合型選抜の先駆け的な入試である。基本的な言語能力と数理能力と冨士見丘でどんな学びや生活を送りたいか表現する入試である。

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★Will入試の出願は、2023年が47人、2024年が68人、2025年は81名と右肩上がり。富士見丘の魅力が広がれば広がるほど増えるのは当然。実際今年一般入試がもっと増えているという。つまり、グローバル教育の富士見丘ということで、帰国生に人気があったのが、帰国生のみならず、一般受験生にも浸透したということを示唆している。

★日本の文化やその精神を忠恕という言葉に込めて品格ある生き方の「道」を大切にしながら、破格のグローバル教育と先進的なSTEAM教育と中学から6年間探究活動を継続できる教育環境デザインは確かに魅力的だ。そして海外大学をはじめ憧れの大学にも進める。

★今年は、中学のみならず高校も人気だ。不易の根本的な人間のあり方を継続するために先進的でイノベーティブでクリエイティブな教育を行っている。AI時代において、富士見丘の教育こそ重要だということになるだろう。

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2025中学入試動向(46) 2月1日入試始まる 受験生数は横ばいか? 東京は共学受験生・女子受験生、神奈川は男子受験生が増加か? 偏差値の背景意味変わるか?

★本日2月1日(土)、東京・神奈川の中学入試が始まる。雪は大丈夫だが、寒いので、中学受験生には暖かくして少しストレッチをするなどして臨んで欲しい。善き緊張感とリラックスをといってもなかなか難しいので、とにかく思い切って。さて、1月31日現在の日能研倍率速報のデータをつかって次のような表をまとめてみた。

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★午前午後入試が合算されていることと、東京は青山が2月3日に、神奈川は、栄光、聖光、湘南白百合(4科目)が2月2日に実施されるので、それらを考慮すると、首都圏の中学受験生は横ばいではないだろうか。埼玉の動きが、開智と開智所沢がダブルカウントだったり、東京・神奈川から受けに行っているから、各業界シンクタンクが細かく分析するのを待てばよいが、2025年も首都圏中学受験生はたくさんチャレンジしているということだろう。

★東京は、共学校が再び勢いを増し、女子校は昨年に続き踏ん張っている。神奈川は男子校の勢いがよい。多様性に関する問題に東京は敏感になているということもあるかもしれない。多様性というのは、単純に外国人教師の充実やインターナショナルコースの充実ということだけではなく、ジェンダー問題の捉え方に対する意識が高まっているのが東京の特徴でもある。更に繊細な領域にも配慮が進んでいる。東京エリアは、都をあげて取り組んでいるということもあるだろう。

★さて、出願総数に関しては、web出願がすっかり定着し、そもそも消費経済のデジタル化が進んでいるから、賢明な出願をしている。それゆえ、以前のように目立つ倍率の学校は少なくなった。公立中高一貫校の倍率も落ち着いてきている。

★また新タイプ入試や英語資格利用入試が増えたため、模擬試験にその分は反映しない。それゆえ、いわゆる4模試で応募状況推計をしている業界シンクタンクも読みにくくなっているのも事実だろう。中学入試市場の新たな姿が出現したのかもしれない。

★いずれにしても、新タイプ入試や英語入試ばかりでなく、今年の市川の入試問題のように、教科入試も思考を喚起する骨太の問題が出題されるのも定着してきた。偏差値そのものの意味も変わってきた。偏差値で学校を選んだからといって、知識重視の受験勉強でよいというわけではない。

★受験準備の学びは、どのようなタイプの資質能力を有した受験生が、その学校を受験するのかをつまりライバルの学びの特性を洞察して学校を選ぶ時代になった。つまり、

❶偏差値

➋大学合格実績

➌学校の教育環境デザイン

❹学内の心理的安全を生み出すコミュニケーションデザイン

➎どのような仲間が受ける傾向にあるのか(入試問題の背景にある資質能力観)

★ということになってきたかもしれない。今ままで➎はそれほど注目されてこなくなった。偏差値は模擬試験によって算出されるが、模擬試験には資質能力観が反映していないのが通例。だから、2025年は、ここをどのように分析していくかということか。

★ともあれ、がんばれ中学受験生。

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