2025中学入試動向(41)駒場東邦の国語の入試問題 転移学習の視点 入試段階からカリキュラムが始まる
★今朝田園都市線に乗って仕事場に向かってると、例によって「日能研のシカクいアタマをマルクする」が目にとまった。「らしさを疑え!」と日能研ラシイセンスだなと。すると駒場東邦の昨年の国語の入試問題からだ。この版型スペースに国語の問題を載せるのは難しいはずだ。だからたいていは漢字やことわざなどの問題になりがち。ところが、入試問題の課題文章を載せずに、「問いそのもの」を掲載しているではないか。「問い」の時代と言われ、思考を喚起する問いだとか、高次思考を震わせる問いだとか、本質的問いだとか、良い問いは何か毎日のように私立学校の現場では問われている。その現場のカリキュラムの本質的議論を、そのまま入試問題に反映させる駒東は言うまでもなくさすがだが、それを掬い取る日能研の教務陣のセンスは相変わらずステキだ。
★駒東の課題文の選択もすばらしい。子供どうしの何気ないコミュニケーションの中に、アンコンシャスバイアスや偏見、先入見、ジェラシーなど微妙にある会話の配列が見事な物語。村上雅郁 さんの「きみの話を聞かせてくれよ(フレーベル館文学の森)」から出題。長文だが、巧みに、文脈を切断しないように中略しながら出題している。
★そういう手法もさすがなのだが、最後の問いが感動的。日能研は、その問いをリリースしたわけだ。
★その問いというのは、黒野先輩というこれまたちょっと世の中俯瞰する視点をもった、それでいていやそれだからこそ設定はちょっと枠からはみ出ている感じの登場人物が、枠から外れることの不安から人間はあるあるの言動をはくという趣旨のことを語っているところについて語り合っている生徒同士の対話文を載せて、そのようなあるあるの言動の事例を挙げてみよという推理型記述(転移学習の視点)の問題。
★麻布の先生だと、児童文学の成長物語としては定番の物語と言うかもしれない。でもこの定番さ加減は、筋金入りだ。ヘルマン・ヘッセのアプラクサスになぞらえた殻を破る自己成長の物語に通じる、あるいはユング的な象徴的ストーリーだ。日本のアニメにもこの発想は意識してかどうかはわからないが、通じる話。最近の異世界転生ものにも通じる。もっとも、中学入試が広がり始めた1986年から連載がはじまった「ぼくタマ」という漫画と中学入試で出題される物語は、テーマがシンクロしているから、この定番は中学入試の重要なシンボルだろう。
★なぜヘルマン・ヘッセ?ヘッセの「荒野の狼」は、あのGAFAMのルーツの子どもたちのバイブルだったという話がある。出る杭になれ!クレージーになれ!と叫んだGAFAMのCEOたち。中学入試を推進する日能研は、その精神を私立学校に期待した。私立学校は、それをどう受けとめたか?受けとめたかどうかはわからない。でもシンクロしているのは了解できるのではないか。駒東の問いはそれを物語っているような気がする。
★中学受験は、このような企業と学校のゆるやかな連携によって善き中学入試市場がひろがることで、受験生の成長を豊かにする場となるだろう。
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