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2024年12月 7日 (土)

工学院(1) 田中教頭インタビュー第2弾 学習する希望の組織着々

工学院大学附属中学校高等学校のサイトに、教頭田中歩先生のインタビュー記事第2弾が掲載されています。同校の広報部がインタビューしたものです。外から見ていたらわからないような教育の上質のそしてそれがゆえに重要な部分が描かれいます。必見です。

Ayumisensei

★中学に入学した生徒について、田中教頭はこう語っています。

「この8か月間は多くを学び、生徒との日々の関わりや新しい取り組みは、私にとっても深い成長の機会でした。
1年生の入学時に「10年後の自分」という課題で、10年後の自分と社会についてレポートと絵を提出してもらったんです。そこには、医師や科学者として社会に貢献したいという夢や、自分が成長して家族を支える姿などが描かれていて、濁りのない純粋な希望にあふれていました。」

★田中教頭の生徒中心主義の眼差しが明快にありますね。そして、常に教師も生徒と同様学習者であり、成長し続けるのだという学習者中心主義がその土台にあることも。そして、続けてこう語っています。

「生徒たちの描く将来のビジョンを尊重し、そのまままっすぐに夢が実現できるようにサポートしていきたい。生徒たちがデジタルネイティブであることは知識だけの経験不足を生む要因でもありますが、そこは我々がサポートすることで強みとして捉えていく、そんなモチベーションからのスタートでした。」

★ここで極めて重要なことは、田中歩先生が中学の教頭だということです。工学院は、校長室と高校職員室と中学職員室は別々にあります。したがって、中野校長と高校の奥津校長と中学の田中教頭はビジョンを日々共有し、刻刻とオンライン上のグループワークで軌道修正しながら、教育の実践計画を共有し、それぞれ高校、中学に浸透させているわけです。

★実際、中学の職員室の机の配置から言って、田中教頭は、フラット・フリー・フレンドシップという3F精神の雰囲気を作り出す役割を果たしています。だからこそ、生徒中心主義や学習者中心主義が完遂できるのです。

★多くの学校で、田中歩先生のような優秀な教員はいます。しかし、その優秀な教員と同じビジョンを学校が共有しているかどうかはわからないのです。むしろ、先生によってはそういう先生もいるし、そうでない先生もいるというのが、従来型の学校組織です。

★しかし、今の工学院は、ビジョンは学内で実践の隅々にまで浸透していく学習する希望の組織になっています。

★ですから、田中教頭のことばは、そのまま工学院の中学校のあり方そのものなのです。

★グローバル教育や探究、STEAM教育などどこの学校でも進み始めていますが、そもそもこのような学びを創り出したはじめのころ、今でもそうですが、MITのピーター・センゲの「学習する組織」や「学習する学校」という理論書に多くの先生方が学びました。MITメディアラボのシーモア・パパート教授たちにも学びました。 

★SDGsを標榜している学校は、無意識のうちに彼らの理論を学んでいます。もちろん、デザイン思考などもイギリスとスタンフォードの流れもありますが、今では、これらは現場ではフューージョンしています。それがゆえ、理論として言語化されることはだんだんなくなってきました。より実践研究になっています。しかし、実践研究は実践と理論を往還するので、工学院のように、学習者中心主義的であることは大事なのです。

★田中歩教頭は、10年前には、すでに心理学的なアプローチ(これは今でも中核です)で生徒中心主義的授業(PBL)を組み立てていたし、学習する組織とIBの学習者中心主義の考えをとりれていました。そして、ラウンドスクエアに加盟し、ケンブリッジイナターナショナルスクール認定校でもあるので、実践と理論の往還は当たり前になっています。

★しかし、当時は、それはまだ学内では、プロジェクトチームの先生方がまずは実験をやってみようという感じでした。多くの学校は、いまようやくこの段階です。ところが、田中先生が教務主任(他の学校の教務部長)になってから、プロジェクトレベルのものを学内全体に浸透させるアクションを起こしていました。

★とはいえ、あくまで教育の論理の話でした。しかし、教頭になった今、教育の論理と経営の倫理の両輪を回すリーダーシップを発揮する役割を果たすようになりました。

★教頭就任8カ月で、その浸透の速度が加速しています。学校全体が学習する希望の組織になる学校は、そうないのです。生徒中心主義は、生徒迎合主義だという派も学内にはいるのが普通の学校です(これを聞いて、あっ、ハラスメントの可能性があるというセンサーを保護者は持った方がよいのです)。教員というのは、ある意味、企業とは違い、専門家集団ですから、学習する組織になるのは難しいのです。この事実に受験生の保護者はそろそれ気づいた方がいいです。

★希望の学校、ウェルビーイングな学校は、組織で全体がフラット・フリー・フレンドシップの3F主義なんです。最近のキーワードでいえば、ハラスメントレスな学校なんです。教頭就任8カ月ですが、英語科主任、教務主任、教頭就任という10年かけて、小さく始めて大きく育てる忍耐強い田中歩先生なのです。

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