2025年中学入試動向(18)私立学校の思考力 創造的モニタリング実装と改善的モニタリング実装の両輪
★尊敬している東大教授本田由紀先生オシの本がゆえに手に取ってみました。それに私立学校ががんばっている土佐の町議ということもあって鈴木大裕氏の下記写真の本を手にとってみました。鈴木さんが念頭に置いている公教育は公立学校を概ね対象にしていますが、私立学校も公教育の一翼を担っているので、鈴木さんの批判を真摯に受けとめました。
★それに私立学校は、新自由主義的な動きには警戒し続けているし、鈴木さんが最終章で、デューイの言葉やミヒャエル・エンデの「モモ」を引用されているところなどは、その精神は私立学校の建学の精神にも通じるところがあります。
★そのうえで、改めて私立学校の現状を考えてみました。できるだけシンプルに表現しようと思って浮かんできたのが次の図です。
★私立学校の建学の精神は、それぞれ文言は違いますが、善き社会を創るリーダーシップや人間教育を目標にしています。ですから、現在の国家の教育制度や教育行政に対し、常にモニタリングをしています。善き社会からはみ出るような行為を国家がしようとしたら、そこは改善的モニタリング実装を発動します。善く社会を創るには、権力に対し自由を守る思考力と判断力と実行力が必要ですから。
★一方、学校自身が動けませんが、PBL型の探究やグローバル教育、STEAM教育などで、善き社会を生徒たちが構想し、実践するモデルやプロトタイプをする動きが盛り上がっています。これは創造的モニタリング実装です。国家だってこれでよいというシステムではありません。アップデートしていくのが歴史の常です。
★私立学校によっては、改善的モニタリング実装>創造的モニタリング実装だったり、改善的モニタリング実装≦創造的モニタリング実装というようにいろいろなバランスを形成しています。
★もちろん、改悪的モニタリング実装になるリスクは、公立私立問わずあります。正義を主張して善き社会とは真逆のディストピアを実際に生み出している歴史的事実は第二次世界大戦だけではなく、それ以前にも現在にもあります。
★2021年から、東京の私学の協会は、私学全体で21世紀型教育を進める動きをしています。その肝は倫理、哲学、リベラルアーツなどです。改悪的モニタリング実装を生徒がしないように生徒自身がクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングを発動できるようにというわけです。
★この象徴的動きをしている世界的な私立学校の同盟コミュニティがラウンドスクエアです。日本にも、小さなコミュニティですが、21世紀型教育機構(通称「21会」)があります。
★私立学校は慎重に熟慮・熟議しつづけています。何をか?それは善き社会とはそもそも何か?国家とはそもそも何か?善悪とは何か?などソクラテス以来、自然法則のように確固たる解答はない問いの道を求めています。もちろんそれは生徒と共に開かれたまま、対話を継続しているのです。
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