聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>
★聖学院の生徒は、気持ちの良い感情を生み出す意識を自分の内側にもてるように成長していきます。もちろん、いつもいつも快い気持ちがあふれているわけではありません。人間は喜怒哀楽に象徴される感情以上に多様な感情の塊です。この自分の中に湧いてくる、ある時は嵐のような感情を受け入れ気持ちの良い感情に転換する意識が生まれてくる学校。それが聖学院です。そして、この意識こそOnly One for Othersというコアな精神です。この<noble spirit>が軸にあるからこそ、いかなる困難(それは外部環境からやってくるばかりではなく、自分の内側にもあるのです)にも最初は恐れながらも向き合い、立ち臨んでいくわけです。そのストーリーが聖学院の生徒1人ひとりの成長物語を描いていきます。
★この<noble spirit>の軸は、毎朝の礼拝と聖書の授業によって構築されていきます。たとえていえば、空高くそびえるチャペルの十字架が礼拝で、命の泉を生み出す噴水が聖書の授業のような構図になっています。
★礼拝では、校長先生が中心となって、聖書の意味を生徒の内面に問いかけます。その問いは本当のところをいえば神学的ですが、一般の人にとっては哲学的だったり人類学的な問いでしょう。身近な問いですが、大きな根源的な問いです。
★そして、聖書の時間で、その根源的な問いが、聖書がリアルな世界で生きている具体的状況をリサーチしながら、自分事とし、いかに解決できるのか内省し、語り合っていきます。内省にも語り合いにもロゴスの対話が行われています。
★おもしろいことに、聖書解釈学ではなく、生徒は、ICTやアプリを活用して調べたり、編集したりしながら同時にリアルな対話もしていきます。最近では生徒は生成AIを自らのもう一人のパートナーとして対話しながらかつ仲間とも対話していきます。
★根源的な問いの対話が溢れているのが聖学院の聖書の時間です。本来は聖書の授業を担当している先生は牧師でもありますから、ヘルメノイティークなアプローチなのでしょうが、一般には外から見ていると哲学的だったり文化人類学的だったりバイオ倫理だったり、そんな感じに見えます。
★大事なことは、そもそも教科横断を意識しなくても、あらゆる教科や学問を超えて存在の学びを生徒と行っているのというのが聖学院の聖書の授業だと思うのです。したがって、礼拝ー聖書の授業という<noble spirit>軸は聖学院のすべての教育活動と相互に関連するのです。インタラクティブというよりトランザクションという感じですね。
★そしてこの<noble spirit>はOnly One for Othersとして具現化して生徒は経験し、考え、共感を広めていく活動をしていきます。感情を高邁な精神に昇華する「思」いとロゴスとしての「考」え。この二つのフュージョンが聖学院の「思考」の内包する意味でしょう。
★聖学院を訪れると、エーミール・シンクレールのように自己成長を求める少年とそれを導く友人マックス・デミアンがストーリーを織りなしているヘッセの小説をいつも思い浮かべます。第一次世界大戦に巻き込まれる学校の中で、自分とは何か、自分は何ができるのか、精神分析的アプローチとキリスト教文化と哲学とヘッセの「思想」がストーリーを編集しています。戦争という社会課題は、人間の生み出すあまりに凄まじく途方に暮れる困難性です。それにいかに立ち臨むのか、そんなマックス・デミアンの姿を追い求めながらも、憧憬ではなく自分を見出していくシンクレール。結論のない小説ですが、それがゆえに、究極の困難性に向き合う少年たちの生き様のスピリチュアリティに時代を超えて共感し、何もできない自分にそれでも勇気を出そうという気持ちを湧かせてくれます。
★聖学院は男子生徒がそんな自己成長の軌跡を描き続けられる奇跡の男子校です。
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