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2024年11月

2024年11月30日 (土)

2025年中学入試動向(24)アントレプレナーシップ推進の学校 社会の世界、自分の宇宙を変える

首都圏模試センター発行の「shuTOMO11月号」の特集は、「アトレプレナーシップを育む私学の教育」です。ノイタキュード代表の北岡優希さんの14ページにもわたる傑作です。文科省が、GAFAMやユニコーン企業の動きに対応すべく東京大学をはじめとする大学でスタートアップを奨励していますが、その流れが高校にも来ています。その象徴的というか先駆け的リーダーシップ、まさにアントレプレナーシップ的発想で創設された情報経営イノベーション専門職大学の紹介から始まっていて、具体的な時代の動きがわかりやすく編集されています。

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★そして、ドルトン東京学園、品川女子学院、新渡戸文化学園の起業家体験が丁寧に紹介されています。いずれも新しい学びや教育に挑戦して人気を獲得している学校ですね。

★ページ数の関係で、他の学校を紹介できなかったと思いますので、少し紹介しておくと、実際に起業してしまう、まるで情報イノベーション専門大学で行っているようなことを中高で実践しているのは、聖学院です。東大総長もスタートアップの拠点として評価している渋谷QWSで、起業家や大学の専門家、自治体のメンターとコラボしながら社会課題を解決し世界を変え、自分の宇宙をイノベートする提案を毎年2月に公開しています。聖学院の特徴は、アントレプレナーシップやリスキリングのコンサルタントや金融教育家などが最近語っているリベラルアーツや哲学、文化人類学の必要性もちゃんとベースにしているということですね。さすがです。

★このQWSを活用して探究のプロジェクトを行っている学校は、実践女子学園もそうです。

★また工学院は、八王子の都市の関係者とプロジェクトを行っていて、そのマインドやスキルを世界に出て実施するグローバルプロジェクトを高2生全員が行ってしまいます。

★もともとアントレプレナーシップは、シュンペータによると、資本主義の萌芽であった中世の都市に遠隔地商人のように傭兵を雇いながら世界をまたにかけて商品を持ち込む大冒険の進取の気性に富んだ人々によって行われたようです。

★だから、文部科学省はグローバルアントレプレナーシップの養成を大学のみならず高校にも奨励しているのです。

★文化学園大学杉並も授業以外にSTEAMプロジェクトという100人以上参加する新コミュティを生成しています。この動き自体先生方のアントレプレナーシップのなせる業ですが、生徒自身がどんどん外部とコネクテッドをつくり起業家精神を発揮しています。

★そしてこの元祖コネクテッドの動きを実際に農村の復興や企業連携で起業のアイデアもだしているのが和洋九段女子です。

★おそらく「アントレプレナーシップ」は総合型選抜にも直結するし、米国のHTHのようにダイレクトにライフシフトのキャリアデザインのマインドとスキルに結びつくプロジェクトとして多くの学校で増えていくでしょう。デザイン思考とかシステム思考とか探究に取り入れている学校は、2027年にはその方向性にならざるを得なくなります。

★それゆえ、今からグローバルアントレプレナーシップを行っている学校を探しておくことは将来性があるということなのです。本当に英語と生成AIとパソコンを持って世界を冒険せざるを得ない時代が多くの人に開かれざるを得ない時代が2050年ですから。つまり、今の12歳が、38歳になったときですね。そのとき世界とどうかかわっているのか。リスクマネジメントとしての学校選択も大事です。

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2025年中学入試動向(23)多摩大目黒の図書館 自分と時空を超えた他者との出会いのスペース

★首都圏模試センター発行の「shuTOMO11月号」には、多摩大目黒の図書館の紹介があります。司書の坂巻先生へのインタビュー記事です。そして≪特別編として≫、坂巻先生と生徒の皆さんとの対話が同センターのサイトに掲載されています。読書好きの生徒だけではなくそうではない生徒さんも参加して、フラットでフリーでフレンドシップな3Fの雰囲気の対話が展開されています。

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★両方を読んで、気づいたことは、

❶心理的安心安全の場が広がっている

➋ビブリオバトルなど自己を見つめ時空を超えた他者である作者との出会いと自分の関係に想いを馳せるスペース

➌探究など総合型選抜への道を支援するキャリアをデザインする基地

❹主観的感情を論理的言語化へ導くメンターがいる時空

➎自分を変える成長の契機がある居場所

★などなどです。

★ある意味、これは同校の若い先生方が「学習する組織」を形成し、生徒自身のコンピテンシーへの気づきとそれを豊かにする動きと連動していると感じました。

★またこのような空間があるからこそ、同校のグローバル教育は生徒の視野を広めるマインドやスキルを生み出しているのかもしれません。

 

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2025年中学入試動向(22)文大杉並 interactionからtransactionへ突き抜ける

昨夜、文化学園大学杉並の理事長補佐染谷先生と進路指導副部長でDDコースの担任の庄司先生、DDコースのOGでSTEAMプロジェクトのメンターを行っている岡本さんとGLICC代表鈴木さんと対話しました。文大杉並はグローバル教育×STEAM教育×PBL(探究)で満ちている学校であることはもはや有名すぎます。今回は、そのような有機的な循環が起きている教育システムがどうして成り立っているのか、興味深く本質的な対話になりました。大胆かつ細心の配慮がなされている心地よい対話で、学校現場における対話のイメージが180度変わる90分間になっています。文大杉並が躍進し人気が高くなっている理由は、この新たな対話が充満しているチーム文大杉並の広がりだということが伝わると思います。ぜひご覧ください。

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★動画の中の対話は、その広がりと深さとなんといっても笑顔が絶えないおもしろさが溢れているので、私が要約しても意味がありません。ぜひごらんください。一般の学校のイメージとは全く違う世界が広がっています

★2つほど気づいたことをメモしておくと、

❶DDコースのカナダからの教師が、日本に文大杉並という本当の教育を行っている学校を創ろうという情熱と文大杉並の日本人の先生方がもっともっと良くなる学校にしたいという情熱が響き合っているなあと。

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➋生徒と生徒、生徒と教師、教師と教師、教師と保護者・・・という対話(interaction)がフラットに一つのかけがえのない地球をつくるフレンドシップを大事にする対話(transaction)にフュージョンしているなあと。

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★だからこそ、生徒の成長は無限の価値を協働して生み出していく<感動>物語を描くのだなあと。そりゃ文大杉並の人気はうなぎのぼり、いや竜の如くということでしょう。

 

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2024年11月29日 (金)

2025年中学入試動向(21)渋田隆之先生の受験生と保護者に贈る魔法のことば77 受験を超えてウェルビーイングを生み出すことばとこだま

首都圏模試センターサイトに渋田隆之先生の著書の紹介が掲載されています。渋田先生は、33年間の受験指導の道を歩んで、出会った生徒と保護者は2万人を超えるほどの中学受験指導の達人です。中学受験を乗り越え成長できる希望をゲットできる魔法のことば77が祈るようにこめられています。そして受験生がその後の人生において多様な困難に直面するたびに乗り越える勇気をもらえることばです。

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★渋田先生は、「天使とは、美しい花を撒き散らすものではなく、苦悩する者のために戦う者のことです」 (フローレンス・ナイチンゲール)という言葉からはじめ、そこから中学受験勉強の時期ごとに、タイミングのよいことばを77声かけしています。

★苦悩するもののために戦うナイチンゲールさながら。読みながら感じたことは、

❶心理的安全性を生み出しています

➋ゴーレム効果を排し、ピグマリオン効果が生まれます

➌エンパワーメント自己評価に勇気づけられます

❹他者とくらべるのではなく、自分の成長の軸を生み出せます

➎今の努力が将来大きく成長する実感がもてます

➏自分を支えてくれる多くの人の愛情を感じることができます

➐受験勉強であっても考えている内容は真理に真摯に向き合っている自分の姿を俯瞰できます

★この本を読んでいて、上記のようなことに気づきました。そして今一度この7つを振り返ると、中学受験の学びの「中学受験の」をかっこにいれても、生涯の学びの局面において座右の銘として時折ページを開きたい本であることがわかるでしょう。

★苦悩する子どもと共に戦うすべての人に贈る書物です。何より中学受験生に!

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2025年中学入試動向(20)異なる分野の2冊のスクランブルに建学の精神があることを実装している学校が重要か?ロールモデルあるなあ。A.T 先生とK.O先生

★文芸評論家の三宅香帆さんの本とReskilling Camp Company代表の柿内秀賢の本をザッピング読みをしました(時間もないというより集中力がないので。。。著者の方には申し訳ない想いです)。三宅さんの本は、「読書生活と価値観」の明治時代からの変遷史で、サブカルチャーの変遷史の本はよくあるのですが、読書ベースの教養文化の変遷史というのは目からウロコでした。柿内さんの本は、多くの企業のリスキングコンサルという生々しい経験値から抽出された視点に基づいたリベラルアーツが必要なんだというリスキングリーダーシップ論は組織脱構築リーダーシップ論という汎用性のある考え方だなあと感動しました。

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★三宅さんは、明治から今にいたるまで、私なりにすっ飛ばして理解すると、教養読みから対症療法的読みに変遷してきたから、新教養読みを提案しています。たしかにバグやノイズを排除して自分の仕事にすぐ役立つ情報収集読書に特化しているのが現代社会の読書のトレンドかもしれません。

★柿内さんは、あるシンクタンクのデータから、日本人はなぜ学ぶなくなったかと分析し、リスキリングする学びを構築することの大事さを説き、それにはリベラルアーツも必要なのだと。

★さらにおもしろいのは、三宅さんは紙の本にこだわっていず、タブレットで電子書籍を読むことも推奨し、学術的な本も文学もサブカルチャーものも全部フラットに扱っています。

★お二人の現代の読書や仕事に対するトレンドの分析と批判による新しい提案は、私立学校の精神に基づいた先見性・先進性・多様性を発揮して独自の教育を実装している動きと共感・共振するなと私は感じたのです。というのも、教養やリベラルアーツのような人間の本来性を問い続けるマインドとそれを持続可能にするべく時代のイノベーションを学びのツールとして活かしていく教育を私立学校は実装しているからです。

★「探究」で、文献リサーチ、フィールドワーク、生成AI検索などをしながらのディスカッションを介して論文編集や多様なパフォーマンス創作を当たり前のようにしている学校もあります。その学校の基本のテクノロジーやエンジニアリングは読書とSTEAMですね。この両方がバランスよく実践されている学校もそう多くはありません。

★このような建学の精神リーダーシップ=組織脱構築リーダーシップを発揮しているロールモデルとして、すぐに思い浮かぶのは、英語が堪能なA.T先生とK.O先生です。

★英語という教科にこだわらず、心理学や社会学、哲学、サブカルチャーなど幅広い教養を読書や広いネットワークとの対話によって蓄積し、STEAMという領域のツールも使いこなして教育を実装しています。

★教科を超えて広く深い見識ある対話ができる先生というのは、意外と多くないのです。そういう意味では、このようなリーダーがいる学校を探すことは重要ですね。精神論者でも技術合理主義者でもなく、その両歩をフュージョンしているリーダーのいる学校がポイントです。

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2024年11月28日 (木)

2025年中学入試動向(19)八雲学園の数学の授業もアートの力も破格

★八雲学園といえば、破格のグローバル教育で有名なのは言うまでもないでしょう。ところが、数学の教師でもある友人からメールがあって驚いたのは、数学の授業が素晴らしい!ということです。授業を見学する機会があったというので、いろいろな教科を見てきたらしいのです。英語はもちろん、ほかの教科も素晴らしい授業だったということですが、自分が数学の教師でもあるからひいき目かもしれないが、幾人もの数学の先生方がPBLを行っていたり、生徒と対話しながら、チャートなどにはない新しい解法の筋道を帰納推理的に生徒が見つけていく問いかけに感動したというのです。

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(会長賞作品:同校サイトから)

★もし私がその先生の授業を見学したら、推理の方法に感動したでしょうが、それがチャートなどの発展的な参考書などに掲載されていない新しい方法だということまではわからなかったでしょう。教科固有の専門性の重要性に改めて気づきました。

★さらに、今回「第52回東京私立中学高等学校生徒写真・美術展」においてYさん(高3)が3回目の会長賞(グランプリ)を受賞したということです。また、朝日新聞社賞(2位)、奨励賞(3位)、特選(4位)の受賞者もそれぞれいたということです。そして、3人が入賞を果たしたということです。写真部門でも入賞者がいるということです。アートの力も圧巻です。

★数学とアート部門で評判が聞こえてくる八雲学園。グローバルでSTEAM教育も万全ということでしょう。

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2025年中学入試動向(18)私立学校の思考力 創造的モニタリング実装と改善的モニタリング実装の両輪

★尊敬している東大教授本田由紀先生オシの本がゆえに手に取ってみました。それに私立学校ががんばっている土佐の町議ということもあって鈴木大裕氏の下記写真の本を手にとってみました。鈴木さんが念頭に置いている公教育は公立学校を概ね対象にしていますが、私立学校も公教育の一翼を担っているので、鈴木さんの批判を真摯に受けとめました。

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★それに私立学校は、新自由主義的な動きには警戒し続けているし、鈴木さんが最終章で、デューイの言葉やミヒャエル・エンデの「モモ」を引用されているところなどは、その精神は私立学校の建学の精神にも通じるところがあります。

★そのうえで、改めて私立学校の現状を考えてみました。できるだけシンプルに表現しようと思って浮かんできたのが次の図です。

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★私立学校の建学の精神は、それぞれ文言は違いますが、善き社会を創るリーダーシップや人間教育を目標にしています。ですから、現在の国家の教育制度や教育行政に対し、常にモニタリングをしています。善き社会からはみ出るような行為を国家がしようとしたら、そこは改善的モニタリング実装を発動します。善く社会を創るには、権力に対し自由を守る思考力と判断力と実行力が必要ですから。

★一方、学校自身が動けませんが、PBL型の探究やグローバル教育、STEAM教育などで、善き社会を生徒たちが構想し、実践するモデルやプロトタイプをする動きが盛り上がっています。これは創造的モニタリング実装です。国家だってこれでよいというシステムではありません。アップデートしていくのが歴史の常です。

★私立学校によっては、改善的モニタリング実装>創造的モニタリング実装だったり、改善的モニタリング実装≦創造的モニタリング実装というようにいろいろなバランスを形成しています。

★もちろん、改悪的モニタリング実装になるリスクは、公立私立問わずあります。正義を主張して善き社会とは真逆のディストピアを実際に生み出している歴史的事実は第二次世界大戦だけではなく、それ以前にも現在にもあります。

★2021年から、東京の私学の協会は、私学全体で21世紀型教育を進める動きをしています。その肝は倫理、哲学、リベラルアーツなどです。改悪的モニタリング実装を生徒がしないように生徒自身がクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングを発動できるようにというわけです。

★この象徴的動きをしている世界的な私立学校の同盟コミュニティがラウンドスクエアです。日本にも、小さなコミュニティですが、21世紀型教育機構(通称「21会」)があります。

★私立学校は慎重に熟慮・熟議しつづけています。何をか?それは善き社会とはそもそも何か?国家とはそもそも何か?善悪とは何か?などソクラテス以来、自然法則のように確固たる解答はない問いの道を求めています。もちろんそれは生徒と共に開かれたまま、対話を継続しているのです。

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2024年11月27日 (水)

2025年中学入試動向(17)和洋九段女子 フランス語を話す生徒 カリタス、湘南白百合、雙葉、聖ドミニコ、大妻中野、駒沢女子なども

★フランス大使館のX(インスタ)に、和洋九段女子の生徒が訪問したという情報が掲載されていたので、同校を訪れたときに話題にしました。するとフランス語を、カトリック学校のように授業で扱っているわけではないけれど、ヨーロッパのフランス語圏に留学して戻ってきた生徒がいるという話でした。

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★和洋九段女子はグローバル教育を促進していますから、在校生の世界的視野は広いのですが、世界の限界は言語の限界ともいわれています。多様性は多言語を学ぶ環境も必要だというのでしょう。フランス大使館を訪れたのは、文化祭で発表する探究の一環だったようです。そういうコネクテッドな学びの環境がフランス語の学びに興味を持つということは大いにあります。

★主幹の水野先生から、「国際関係の団体や機関が見学に来ることは多いのですが、そのときにフランス語圏の方々がフランス語で話せる生徒の登場に、日本に来て英語ばかりでしたから、やっとフランス語が話せてよかったと感動していた」という話を聞きました。

★このようなエピソードは、日本のグローバル教育の広さと深さが豊かになってきたことを示唆していますね。

★フランス語と言えば、カトリックの学校は授業で取り入れています。カリタスのフランス語教育は有名です。その他に湘南白百合、白百合、雙葉、聖ドミニコ学園などもフランス語の教育を行っていますね。

★宗教学校ではない大妻中野もフランス語を学べるシステムがあります。

★仏教学校である駒沢学園女子もフランス語講座を開講しています。グローバル探究を促進していますから、多様性・多言語主義というのは考えてみれば当然なのかもしれませんん。

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2025年中学入試動向(16)国士舘中学校 プレゼン型入試

首都圏模試センターのサイト記事「24年「新入試体験! 私立中コラボフェスタ」レポートVol.2」を見ると、国士舘中学校は、2025年入試で新設のプレゼン型入試のワークショップを行ったとあります。ここ数年、基礎学力の徹底と好奇心や興味関心を広げる学びのシステム及び背筋がピンとし自分の精神を豊かにしていける武道の経験を体育の中で積み上げることができることなどが評価されています。

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★6回入試のチャンスがありますが、そのうちの1回はプレゼン型入試を実施します。初めてのチャレンジだからということもあるでしょうが、2026年以降はさらなるチャレンジがあるかもしれません。

★小学校6年生の可能性は、燃える意欲があれば、中高でどんどん伸びるのは多くの人が経験済みでしょう。ただし、この燃える意欲の火を内燃し続けるマインドは学びのサポートがなければ消えかけることもあります。

★国士舘の学びのサポートはここがしっかりしています。なんといっても今も日本人の傑物たちに継承される吉田松陰の精神の継承者が国士舘の先生方からですね。そして在校生もそうなのです。

★詳しくは、首都圏模試センターの国士舘中学校の教育について記事を掲載しています。参考になります。

 国士舘中学校 夢なき者に成功なし 精神的柔軟さと確固たる土台(1)

 国士舘中学校 夢なき者に成功なし 精神的柔軟さと確固たる土台(2)

 

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2024年11月26日 (火)

聖書・宗教の授業・礼拝 聖ドミニコ学園・聖学院・桜美林・恵泉・湘南白百合・女子学院・普連土など 自己を見つめ世界の痛みに向き合い対話し言葉を紡ぐ

★キリスト教系の学校では、聖書の授業とか宗教の授業とか、毎朝の礼拝などがあります。偉い学者が聖書の解釈について聖書学的あるいは神学的に講ずる聖書の授業や宗教の授業もあります。受験生・保護者の皆さんのイメージだと、なんだか厳かで眠たそうな授業と思うかもしれません。実際そういうケースも少なくありません。

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(聖ドミニコ学園:左手は校舎、右手は聖堂)

★ところが、聖ドミニコ学園、聖学院、桜美林、恵泉、湘南白百合、女子学院、普連土などの聖書の授業、宗教の授業、礼拝は、実にロゴスの活動が多いのです。

★もともとマックス・ウェーバーやシュンペーターは資本主義経済の光の部分をキリスト教の教えや修道院の活動に見出しています。最近の金融教育で、贈与の問題などとか共助の問題とか議論されていますが、これも聖書の中にあるのです。商品価格の設定がどうして決まるのか、そのことについてアリストテレスと聖書を結合して論じているトマス・アクイナスは欧米ではよく引き合いに出されます。市場の規制と緩和の議論もここに由来しています。ICT分野におけるコモンズの悲劇についての話も聖書をきっかけに考えることができます。

★法律だって聖書から由来していることが多く、京都大学や慶應義塾大学の法学部の論述式の問題で、自然法と実定法の違いや共通点を具体的な事例で考える問題が出題される時もありますが、自然法論の源は、啓蒙思想だけではなく聖書だったりします。欧米では、サマリア法というのがありますね。パンデミックでメディアで取り上げられたトリアージの解決のルールですが、これも聖書の中の善きサマリア人の話から由来しています。

★教育でいえば、ファシリテーター論や才能開発の話やPBLで使われる小さく始めて大きく育てる方法論も聖書に由来します。

★自然と社会と精神のサーキュレーションについても実はそうなのです。ぶどうの木のたとえ話ですね。

★ですから、先に挙げた学校の聖書や宗教の授業は、社会の問題や世界の痛みを考えるきっかけを聖書の文言から導き出すPBL型が多いのです。はじめにロゴスありきという聖句を大切にするし、タラントの話も重要です。言葉とアクションと社会貢献を身近な問題に結びつけ、世界を変えるにはどうしたらよいのか。そもそも自分を見つめ、自分のミッションやビジョンを生み出すリフレクションはこのような授業や礼拝が大きな役割を果たしています。

★キリスト教に限らず、仏教やイスラム教などはグローバル教育におけるロゴスとしての智慧の基礎です。AI時代にあって、この智慧は大切です。倫理の基礎でもあります。本来倫理とはウェルビーイングを生み出す生き様を規定するアイデアの源泉です。

★よき宗教や聖書の授業に巡り会えた生徒の内省的成長は本当にウェルビーイングです。

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城西大城西が新タイプ入試を行うリアルなもう一つの理由

首都圏模試センターサイトの「24年11月3日和洋九段女子中学校高等学校会場の様子をレポート」を見ると、城西大城西のワークショップについて記事が載っています。適性検査型と英語資格型入試の面接のワークショップを行ったようです。

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★このような多面的なエバリュエーションを行う新入試を行うのは、生徒一人ひとりの才能に対応することが目的であることは間違いないでしょうが、もともと同校は、大正自由教育の拠点の1つですから、それだけが目的ではありません。

★むしろもっとリアルなグローバルキャリアデザインを描いているからでしょう。

★同校は、デュアル/ディプロマプログラムを実施しています。国内の学校に通いながらオンライン授業を通してアメリカの高校を同時に卒業、2つの国の2つの卒業証書(デュアル ディプロマ/ダブル ディプロマ)を取得できるプログラムです。

★海外大学進学準備教育の一環として、骨太の思考力と高度な英語力を養うプログラムでもあります。それゆえ、この道にスムーズにつながる新入試を行っているのでしょう。

★自分の才能と高度で豊かな言語能力と思考力。日本の学習指導要領だけではこのようなグローバルな能力はなかなか身に付かないのですが、世の中そのことに気づいている人は意外と少ないのです。城西大城西ではそんな希少な価値を生徒と共有できるのです。

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2024年11月25日 (月)

2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開

★2025年の中学入試において、日本大学豊山女子は、10種類の入試を実施しますが、そのうち4科・2科の入試、国算2科の入試は4つです。つまり、それ以外は、英語インタビュー入試や一科目入試、課題解決型入試など多面的なエンパワーメント評価ができる入試を実施します。驚きなのは、入試要項にアントレプレナーシップ養成のためのルーブリック(思考コード型)が公開されているのです!

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★詳しくは上記入試要項を見ていただきたいのですが、ルーブリックが公開されているということは、受験生一人ひとりの才能を活かせる入試が有効であることを長年新タイプ入試を積み重ねてきた同校だからこそ示すことができるという宣言でもありましょう。

★2027年以降、大学入試はグローバル入試や総合型選抜などのやはり多面的評価ができる入試に移行するといわれています。大学附属のアドバンテージを活かしながら新しい大学入試の流れにも対応する二刀流が、中学入試の時から緻密にプランされているということでしょう。

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2025年中学入試動向(14)JGの人気は 矢島家の文化遺伝子が生みだし続けている?

★2025年のJG(女子学院)の中学入試では、受験業界によると人気のようです。2026年は2月1日が日曜日ですから、JGは2月2日に入試日をシフトします。いわゆるサンデー毎日で、応募者はさらに爆上がりでしょう。しかし、同校にとっては、それは自分でしかけていることではないので、だから何だということでしょう。

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★というのも、150年前以上から、矢島家のグローバルなプロテスタンティズムが脈々と続いているからです。この文化遺伝子は、日本の教育において広範囲に影響を与えています。しかも初代院長であった矢島楫子の生き様は、今もJGに無意識のうちかもしれないけれど相当影響を与えているでしょう。

★現在、ようやくジェンダー問題をなんとかしようという動きが日本でもでてきていますが、矢島楫子は先頭に立って、活動していたのです。そのリベラルなプロテスタンティズムの活躍に、当時の麻布の江原素六や幾つもの私学に影響を与えた内村鑑三なども一目置くどころか、かなわないなあと思ったほどでしょう。

★とにかく、ロゴスと行動力がすさまじく、米国にも今でいうジェンダー問題を解決するために渡航しているほどです。

★その精神が如実に表れているのが、JGの中学入試問題です。たとえば、国語の課題文をみてください。また問いを見てください。比較の視点、置換レトリックの視点、小論を書く視点、物語の構造を問う視点がさりげなく配列されています。

★そういう視点を内蔵している課題文が活用されているのですが、これは何を意味しているのか?

★実は、JGの生徒の多くはよく本を読み、よく哲学的(神学的)プレゼンをし、よく論文を書き、よく物語を編集します。探究などの大前提にこのようなロゴスの学びが溢れています。

★ですから、卒業時までにJGの生徒が書く文章のレベルは、中学入試で出題された課題文と同じか超えるものになります。

★このロゴスの力こそ、矢島家の文化遺伝子です。このことについては、中学受験の情報知の塊であるN研のI氏なら詳しく語ってくれるでしょう。矢島楫子のアクロバティックな凄まじい生き様を。

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2024年11月24日 (日)

2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる

★和洋九段女子の先生方11人が、生成AIを活用して生徒の才能が豊かになる勉強会を開始しました。管理職である中込校長、新井教頭、本多教頭も参加しているのが本気度を示しています。主幹の水野先生がファシリテーター役を果たしていました。私も友情助っ人という感じで、参加させて頂きました。

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★生成AIに何かをつくらせるというやりかたではなく、論理力とか思考力とか知識のつながりとか創造力とかが豊かになっていく使い方で、一般に論じられている使い方とは違う展開でした。要するにプロンプトエンジニアリングの方法が違います。

★一般には、プロンプトの条件式をどうするかという話になりますが、もちろんそれは変わらないのですが、それだとその条件が限定的です。限定して活用するのですから、それは当たり前なのですが、それだとファクトの整理にはいいのですが、世界を広げることにはなりません。

★とはいえ、何でもかんでもいいとなると、平均的なおのができておしまいです。組織内で共有する告知的な文章はそれでよいでしょうが、生徒の才能がエンリッチメントになる方法論を和洋九段女子の先生方は、実験しながら対話しながら行っていました。

★和洋九段女子はPBL授業であふれています。したがって、今回の勉強会もそのPBL授業のストーリーをいつものように展開していくものでした。さすが!です。

★プロンプトの書き方は、実にシンプルなもので、生徒の才能が豊かになるきっかけ分析(生成AIが才能を引き出すことはできないのですが、そのトリガーになる整理は得意なのです)を行う問いかけをしていました。

★一般的には詳細に条件を書かなくてはならないのですが、二つのキーワードをつなげた魔法のワンフレーズを活用するだけでいけるのです。それが何であるかは、特許にかかわることもあり、ここでは示せませんが、<才能トリガーワード>でした。

★この才能トリガーワードは、限定しながらも拡張するという両義的な言葉です。

★生成AIは言語機能が得意ですから、それを言語哲学を土台に、活用していくと言語と思考一元論である欧米的な世界を生徒は観ることができます。同時に和洋九段女子は日本の文化をしっかり学べるので、九鬼周造的な言葉と感情を結びつける言語の世界も学べます。

★そのような欧米と日本の言語観を新たに融合するのは、新井教頭の言葉を使いながら、その過程を超越して感情に向き合うマインドフルネスの活用も徐々に広がっている和洋九段女子だからこそという気づきもありました。

★生成AIを活用することで新しい言語活動も広がっていくことでしょう。柔らかい和洋九段女子のSTEAM教育のワンシーンも観ることができました。

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2024年11月23日 (土)

2025年中学入試動向(12)湘南白百合 女子校のパラダイムチェンジ着々

★まずは、こちらの動画をご覧いただきたいと思います。世界のあらゆる領域で活躍できる同校出身の女性の姿がイメージできます。現在でも世界の医療現場でエッセンシャルワーカーとして活躍したり、ハーバードで研究したりしているOGはたくさんいますが、今後はもっと多くなるでしょう。もはや今までの女子校のイメージでは同校は語れないのです。

GLICC Weekly EDU 第193回「湘南白百合学園中学・高等学校ー実績と展望」

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★詳しくは、動画をご覧いただきたいのですが、見どころのポイントを幾つか挙げておきます。

❶情報化がコアカリキュラムを生み出すハブになっている。教科横断をテクノロジーとエンジニアリングでカバーしているので、すべての教科がSTEAMに変貌していくでしょう。

➋破格の高大連携の数。6つのコア高大連携プログラムと柔軟にその都度生まれてくる無限ともいうべきトピカルな高大連携プログラムの存在がすごいです。これは他にはないですね。しかもグローカルシンキングを生み出す幅広い範囲で行われています。

➌栄光、聖光、サレジオ学院、逗子開成、鎌倉学園などとの男子校とコラボした学びの経験ができます。女子校でありながら年間200人くらいの知的意欲の高い男子と協働的な学びができます。

★特に➌については、女子校でありながら、共学以上のアカデミックな学びが男子生徒とできてしまう。これはすばらしい新しい女子校の姿です。これだけの高大連携を持っている女子校等他にあり得ないわけです。それは男子校も共学校もそうです。しかも、すでに生成AIも駆使しています。来年度からは男子校や共学校にもないような情報基地ができてしまいます。そこに男子校の生徒が参入して協働学習ができてしまうわけです。

★男子の目を気にしてとか女子の目を気にしてとか、そんな忖度をしてのびのびと学べないなんていうことはまずないのです。

★女子校ですから、当然男子の目を気にする必要はないのです。しかし、プロジェクトとして男子生徒と協力する場合、パーパスが明快ですから、男子生徒も学びに意欲的なわけです。もちろん、必ずしもそうでない生徒もいるかもしれませんが、強制的なプログラムではありませんから、意欲がある意識が高い男子生徒だけがサバイブできるシステムです。

★湘南白百合の生徒で、自分は男子と一緒に学ぶのはちょっとねという場合は、それらのプログラムを選択しなければよいだけです。他のプロジェクトがいっぱいあるわけですから、そちらを選択すればよいのです。

★女子校だから男子と一緒に学べない、だから共学校という学校選択は湘南白百合の場合は、成り立たないのです。関西の男子生徒ともコラボするオホーツク学の探究活動もあります。

★ジェンダーの問題をなんとか解決したいから、コラボして欲しいという男子校もでてきているそうです。

★意欲的で意識が高く教養もある男子生徒が、まるで「私といっしょに学んでください」とかつてダンスを誘うかのように、学びのイベントが湘南白百合では生まれていくことでしょう。

★新しい学びのあり方を生み出す湘南白百合。まさに女子校のパラダイムチェンジを着々と実現しているのです。

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湘南白百合のクリスマスツリー点灯イベントがすてき

★今の時期、クリスチャンスクールではクリスマスツリーの点灯式が行われます。カトリック校女子校湘南白百合でも行われましたが、他の学校とはだいぶ違うイベントだったようです。

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★クリスマスまであと1ヶ月ですが、定期テストの準備もそろそろ始まるでしょうし、クリスマスイブにはもう冬休みに入っているでしょう。そこでこの時期に点灯式を行ったようです。

★そして、そのイベントは、点灯式自体は厳かに行われたと思いますが、その後、ダンスや音楽のパフォーマンスがロマンチックなムードを演出したようです。様子は同校サイトで写真をご覧ください。

★大事なポイントは、湘南白百合は広報から空間リノベーションから多くの学校づくりの場面で生徒全員が主体的に協働するということです。このクリスマスツリー点灯式のイベントのプログラム企画や運営も生徒が中心になって行っているでしょう。

★品川から60分くらい通えるので、東京からも同校に通っている生徒がいます。東京の学校にはないというか世界にもないOnly Oneの女子校です。白百合グループの学校はいっぱいありますが、新しい女子校として進化しているという点で独特です。開放的で愛という自律の軸を育てることができる学校です。男子はもちろん通えませんが、逗子開成、聖光学院、栄光学園、サレジオ学院、鎌倉学園など同校と高大連携ならぬ高高連携している男子校に通えば、湘南白百合で学ぶ機会も得られますよ。年間200人ぐらいの男子生徒が多様な探究的な学びを湘南白百合の生徒と共に学んでいます。

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聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>

★聖学院の生徒は、気持ちの良い感情を生み出す意識を自分の内側にもてるように成長していきます。もちろん、いつもいつも快い気持ちがあふれているわけではありません。人間は喜怒哀楽に象徴される感情以上に多様な感情の塊です。この自分の中に湧いてくる、ある時は嵐のような感情を受け入れ気持ちの良い感情に転換する意識が生まれてくる学校。それが聖学院です。そして、この意識こそOnly One for Othersというコアな精神です。この<noble spirit>が軸にあるからこそ、いかなる困難(それは外部環境からやってくるばかりではなく、自分の内側にもあるのです)にも最初は恐れながらも向き合い、立ち臨んでいくわけです。そのストーリーが聖学院の生徒1人ひとりの成長物語を描いていきます。

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★この<noble spirit>の軸は、毎朝の礼拝と聖書の授業によって構築されていきます。たとえていえば、空高くそびえるチャペルの十字架が礼拝で、命の泉を生み出す噴水が聖書の授業のような構図になっています。

★礼拝では、校長先生が中心となって、聖書の意味を生徒の内面に問いかけます。その問いは本当のところをいえば神学的ですが、一般の人にとっては哲学的だったり人類学的な問いでしょう。身近な問いですが、大きな根源的な問いです。

★そして、聖書の時間で、その根源的な問いが、聖書がリアルな世界で生きている具体的状況をリサーチしながら、自分事とし、いかに解決できるのか内省し、語り合っていきます。内省にも語り合いにもロゴスの対話が行われています。

★おもしろいことに、聖書解釈学ではなく、生徒は、ICTやアプリを活用して調べたり、編集したりしながら同時にリアルな対話もしていきます。最近では生徒は生成AIを自らのもう一人のパートナーとして対話しながらかつ仲間とも対話していきます。

★根源的な問いの対話が溢れているのが聖学院の聖書の時間です。本来は聖書の授業を担当している先生は牧師でもありますから、ヘルメノイティークなアプローチなのでしょうが、一般には外から見ていると哲学的だったり文化人類学的だったりバイオ倫理だったり、そんな感じに見えます。

★大事なことは、そもそも教科横断を意識しなくても、あらゆる教科や学問を超えて存在の学びを生徒と行っているのというのが聖学院の聖書の授業だと思うのです。したがって、礼拝ー聖書の授業という<noble spirit>軸は聖学院のすべての教育活動と相互に関連するのです。インタラクティブというよりトランザクションという感じですね。

★そしてこの<noble spirit>はOnly One for Othersとして具現化して生徒は経験し、考え、共感を広めていく活動をしていきます。感情を高邁な精神に昇華する「思」いとロゴスとしての「考」え。この二つのフュージョンが聖学院の「思考」の内包する意味でしょう。

★聖学院を訪れると、エーミール・シンクレールのように自己成長を求める少年とそれを導く友人マックス・デミアンがストーリーを織りなしているヘッセの小説をいつも思い浮かべます。第一次世界大戦に巻き込まれる学校の中で、自分とは何か、自分は何ができるのか、精神分析的アプローチとキリスト教文化と哲学とヘッセの「思想」がストーリーを編集しています。戦争という社会課題は、人間の生み出すあまりに凄まじく途方に暮れる困難性です。それにいかに立ち臨むのか、そんなマックス・デミアンの姿を追い求めながらも、憧憬ではなく自分を見出していくシンクレール。結論のない小説ですが、それがゆえに、究極の困難性に向き合う少年たちの生き様のスピリチュアリティに時代を超えて共感し、何もできない自分にそれでも勇気を出そうという気持ちを湧かせてくれます。

★聖学院は男子生徒がそんな自己成長の軌跡を描き続けられる奇跡の男子校です。

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2024年11月22日 (金)

聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化

★聖学院は、仕組み化が巧です。同校の教育活動すべてをつなぐものは、Only One for OthersというトリプルOのマインドですが、そのマインドは見えないものですから、実感するには仕組み化が大切です。その象徴が思考力入試やGICなのですが、それはシンボル的存在ですから、そのシンボルの背景にはブドウの木のごとき豊穣な循環があります。しかし、それはなかなか見えないですね。私はラッキーでした。

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★というのは、たくさんの授業を見ているうちに、国語と社会がSTEAMのSやMそしてAのレベルの授業を行っているのを目撃したからです。

★理科や数学は、ある意味教科書の枠内だとしても、授業は数理関連の学問的理論を使っています。教科書を超えるというのは、教科書にある問題以上に難しい問題を解くというということではなく、数学的科学的理論に結びつくということです。

★聖学院の理科や数学はそのレベルに到達するので、GICのSTEAMが破格のプログラムを展開できるのは、そもそもその土壌が中学から日常化しているということです。

★一方、国語や社会は、なかなか人文科学や社会科学の理論的リソースを活用するところまではいきません。日常言語で理解が足りるように教科書ができているからです。

★哲学や社会学、人類学など文系の学問的見識が使われたとしたら、どうなるでしょう?そうです。理科や数学のレベルになるのです。

★聖学院の国語は、言語哲学や文化人類的見識をダイレクトに授業で展開する優れた教師がいます。社会には、政治経済学や社会学、経営学、文化人類学などの見識をやはりダイレクトに授業に結びつけることができる優れた教師がいます。

★英語は、言語学の意味論や語用論を駆使したオールイングリッシュ授業が展開しています。ネイティブスピーカーだけではなく、日本人の英語の先生も同様です。ですが、驚いたことに音楽の教師も英語が得意な国際生には、英語で授業をサポートしてあげてもいるのです。

★もちろん、知識や論理中心の授業もあります。しかし、それはこのような学問的な授業が必要とする知識や論理的思考を供給する重要な役割を担っています。この授業間の連携循環が聖学院の教育活動の仕組み化です。そしてだからこそOnly Onr for Othersが生成されるのです。

★が、これだけではまだ聖学院独自のOnly Onr for Othersが生まれてはきません。

★ここまでだと。他校でもできる可能性がありますね。しかし、聖学院でしか生まれてこない独自のOnly One For Othersが生まれる仕組みがあるのです。

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聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている

★聖学院のたくさんの授業を見学する機会をいただきました。すべての授業が有機的につながっていてあるいは宇宙を構成していて驚きました。最初見学しているときは、それぞれの授業で生徒が深く考える様子に感動していたのですが、最後に聖書の授業を拝見し、ここれはあ!っと思ったのです。

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★つまり、全部がつながっているのです。現在、新学習指導要領を押しすすめている日本中の学校で、教科と探究をつなぐには?教科横断はいかにしたら可能か?文理融合はできるのか?STEAMやグローバルはどこまで可能なのか?生成AIの活用の仕方は?など共通するそして重要な問いが生まれています。ですから、それを共に考えるワークショップや研修の企画運営もしているのですが、すべての回答やヒントが聖学院にあったのです。

 

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2024年11月20日 (水)

2025年中学入試動向(11)和洋九段女子 PBL×SDGS×グローバル教育×STEAMで成長した高3生に出会う

★本日、和洋九段女子でアクレディテーションという授業研究に伺いました。1,2時間目中1から高2の全クラス一通り授業を見学します。65項目のルーブリックで複数人のアクレディテーションコーディネーターと見学しながら、パソコンで集計して、現状の教育のリフレクションを校長と教頭などとミーティングを行います。もう10年近く、21会(21世紀型教育機構)の加盟校は行っていて、簡易質的リフレクションを行って、各加盟校は軌道修正をしたり、新しい学習戦略について語り合います。

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★年に何回か、加盟校の教師と生徒が集まって、それぞれのPBLのプログラムの情報交換をして、共に創ったりしているわけです。アクレディテーションと各校の越境知の交流などで、21世紀型教育のブラッシュアップしていくわけですね。

★このWS交流の中で、生徒の皆さんが、対話や議論、プレゼンテーションを共に行っている姿は本当に頼もしいのです。

★今回、和洋九段女子を訪れて、見学後集計している時、二人の高3生が訪ねてくれました。私が見学に来ているのに気づいたので会いに来てくれたのです。休み時間だったので、多くは話せませんでしたが、二人ともすでにしっかりとした理系のキャリアデサインを描き、先に進んでいました。二人が高2の時に、PBLの中で社会課題を見出し、SDGsに貢献する姿を、21会のワークショップで私も見ていましたから、やはりこんな風に成長するのだという確信的感動を抱きました。年寄りですから目頭があつくなりましたが、そのときは我慢しました。

★和洋九段女子のPBL×グローバル教育×SDGs探究×STEAM教育の環境は、今年もますますバージョンアップしていました。

★それはまるで生徒と学校組織が共感共鳴共振して共に成長していくかのようです。

★21会の各校を訪れると、同じようなシーンの中にいる自分に気づきます。21会を先生方と立ち上げて13年が経っています。合同学校説明会ではなく、授業と教育を協働して高め合っていく不思議なそしてすばらしいコミュニティです。今では、生徒も参加しています。

★コミュニティとしては大きくはならない(事務局機能がビジネスではないのでキャパがない)のですが、各校の教育の質は豊かになっています。結果生徒も集まり経営と教育の両輪の好回転が生まれています。海外大学の強烈な躍進は目を見張りますし。

★和洋九段女子に訪れて、改めてそんなことを思いました。しみじみと。

★そうそう、和洋九段女子は、来年度、またまたバージョンアップするということです。

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2025年中学入試動向(10)富士見丘 「グローバル教育×STEAM教育×探究」あふれる

★富士見丘は、インターナショナルスクールでないにもかかわらず、在校生全員が「グローバル教育×STEAM教育×探究」があふれる学びの環境に浸っています。ふだんの授業の中で、グローバルワークショップやグローバル演習などがあります。マレーシアやハワイ、台湾などグローバルフィールドワークもあります。特別なクラスの生徒だけではなく、全員がその恩恵に浴せます。そのうえで高2の生徒はロサンゼルス修学旅行です。

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(写真は、すべて同校サイトから借用)

★グローバルな探究授業をベースにしながら、修学旅行もロサンゼルス。日本の学校とは思えません。修学旅行はめちゃくちゃ楽しそうですが、ちゃんとUCLAキャンパスツアーにも参加しています。同校から海外大学進学者は多いですから当然ですね。

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★それから姉妹校での交流も行ってきています。同校は他にイギリスなど姉妹校もたくさんあります。

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★通常の授業がグローバルワークショップのような感じです。英語で慶応義塾大学の先生方がワークショップを行います。上記のビデオでおもしろいことに、レゴを使いながらパソコンを使わずにプログラミングを学ぶワークショップの場面を観ることができます。グローバル教育×STEAM×探究の一コマを観ることができます。

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★もちろん、パソコンや生成AI、3DプリンターなどDX関連の授業も満載です。プログラミングを理論とhands-onの両方から学べるのが富士見丘の強みです。

★私の知り合いの家庭に息子がいます。富士見丘のような男子校があれば、行きたい!と。日本の1条校で、インターナショナルスクールレベルを超える(同校は部活が充実しているので、超えているのです)男子校は、頂点が東大ですから、なかなか難しいのですね。。。。。

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2024年11月19日 (火)

2025年中学入試動向(9)大妻中野のグローバル教育の意味

★今年も大妻中野の11月22日の帰国生入試の出願状況は人気のようです。同校のグローバルリーダーズコースの英語教育やグローバル教育、海外大学の実績などについては私がもはや説明するまでもないでしょう。

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(高1のグローバルリーダーズコースの生徒が留学先から同校にメールを送ってきた際に掲載)

★同校は、インターナショナルコースではなくグローバルリーダーズコースと名前を付けています。これは何が違うのでしょうか。それは気概や魂が違うのです。

★インターナショナルは、インターナショナルスクールに接近しようという意図が無意識のうちにあるかもしれませんが、グローバルはそことは違うという意志を表明していることが重要です。

★世界はグローバルに向かっていますが、その実国家間の争いや交易の問題や分断の問題など、とても一つのかけがえのない地球という感じではありません。そこをサバイブするために交渉するためのエリート養成はインターナショナルな教育です。

★一方グローバル教育は、そのような断絶や問題が起きているインターナショナルな世界の根源的な問題を探して、なんとかしょうという気概があります。

★どちらも問題を解決しようというところでは同じように見えますが、インターナショナルな教育は現状の中でどう立ちふるまうかです。一方グローバル教育は現状の根源的な問題からなんとかしようという高い志があるわけです。

★それこそが大妻中野の「恥を知れ」という建学の精神の気概です。

★そうそう、学校によっては、グローバル教育を行っているのですが、広報上インターナショナルコースという言葉を使い、グローバルとインター^ナショナルの両方を併用しているところもあります。そのような学校は基本的にはグローバルの魂が根っこにあります。

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2024年11月18日 (月)

2025年中学入試動向(8)グローカルなリスクを回避できる思考力を養える学校を探す

★ここ最近は、米国大統領選、衆議院選挙、知事の選挙など、私たちの生活が、これらの政治的変動にダイレクトに影響をうけていることを感じるのは皆様と一緒だと思います。そして、ウクライナやガザなどの悲惨な状況や気候変動の途方に暮れる状況が、世界的レベルだけではなく身近な社会でも起きています。地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスク、権力リスクなどグローカルな複合リスクをいかに回避するか。クリティカルシンキングやモニタリングシステムなど一部の行政マンや政治家だけが考えるのではなく、市民が1人ひとり思考し行動する時代です。

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★SNSによる選挙が今までの状況を大きく変える一因だという見識者の発信は、まさに市民一人ひとりのレベルまで世界や社会の意思決定に影響を与える時代だということを示唆しているのは、私がいうまでもないわけです。

★この状況において、見識者は、民意によって選ばれたのだから、私が間違っていたと謝罪したり、民意を尊重しはするが、民意を動かす価値観などには批判的に検討していく必要があると語る見識者もいます。

★たしかにそうですね。私たちの身体×メンタル×人間関係×生きる意味の融合的なウェルビーイングな状況に、地政学リスク×気候変動リスク×ハラスメントリスク×権力リスクなどの複合的なリスクは、回避しなければ、悪影響を被るし、回避すればなんとか持続可能にしていけそうです。

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(複合リスクの一例をBingに作成してもらう)

★SNSが選挙の情勢を変えたということは、18歳選挙が機能し始めたということですから、高校におけるクリティカルシンキングを養成することと、その思考が発動できる環境として3F精神(フラット・フリー・フラタニティ:公平・自由・友愛)を響かせる学びの環境も必要になります。

★これは高校だけではなく、小中学校も同じだし、大学も同じです。

★web3.0の世界は、システムとしてこのような環境をつくる可能性がありますが、これとは真逆に権威主義的システムを作るのにも役立ってしまうでしょう。人間1人ひとりの3F精神が極めて重要ですね。

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2024年11月17日 (日)

2025年中学入試動向(7)心理的安全は本質の一部で本質そのものかどうかはモニタリング

★今、多くの学校で生徒と教師、生徒と生徒、教師と教師などの人間関係に心理的安全をつくることが大事であると言われるようになりました。私もとても大事だと思います。3F(フラット・フリー・フラタニティ)の精神が響いている状況はとても大事です。しかしながら、それだけが本質ではないのです。心理的安心を創るのが目的であって、そこから生徒たちがどのように育つかは、生徒たち自身の問題で、そこは自由で、主体的に生きていけばよいのだ、大学進学は副次的なものであるし、それを目的にするのは本質ではないと言われるときもあります。しかし、それはそれでよい子供とサポートが必要な子供がいて具体的状況は子供たちによって違います。この違いを相互に認め、見守るというサポートをするのか、アドバイスというサポートをするのか、ファシリテートというサポートをするのか、コーチングというサポートをするのか、・・・それは多様なのです。

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(bing作成)

★たいていの場合、「〇〇が本質だ」と声高に言う人のことばは、少し差し引いて聞いた方がよいですね。「〇〇が本質だ」=「〇〇は自分にとって大切だ」といっている場合があるからです。

★結局、本質はまずは自分の軸を見つけることです。できるならば、それは同時に社会に貢献する軸であってほしいと願うのですが、そうでないものを本質だからと押し付けてくるかもしれませんから、モニタリングする観点をお忘れなく。

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2024年11月16日 (土)

2025年中学入試動向(6)女子校か、男子校か、共学校かという視点は本当か?

★併願作戦を組むとき、前回ご紹介した魔の三角形にさらに、女子校か、男子校か、共学校か、大学附属校かという識別基準を加えるのが普通になっています。受験生自身にとって、そんな普通の尺度をあてがっていいのかどうか、考えなくてはいけないのではないかと思う今日この頃です。

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★基準は受験生それぞれの才能を認め、拡張できるかどうかにすると女子校にもそういう学校もあるし、そうでない学校もあります。男子校もそうである学校もあるし、そうでない学校もあります。共学校もそうである学校もあるし、そうでない学校もあります。

★世の中は地政学リスクと気候変動リスクに囲まれていますが、それらのリスクを回避できない原因の一つは、実はハラスメントリスクをマネジメントできないからという考えもあります。

★地政学的リスクも権威主義的なリーダーが生んでいることは間違いないし、気候変動リスクのマネジメント放棄も権威主義的なリーダーの鶴の一声ということが平気で報道されています。

★女子校であれ、男子校であれ、共学校であれ、ハラスメント撲滅を行っている学校は、生徒中心主義になっています。生徒迎合主義なんかダメだというリーダーがいる学校は、すでにアウトですね。

★学歴主義推奨者も、ハラスメントリスクを回避できないとごろかハラスメントを遂行しているということになります。

★かわいそうだからと」一見弱者の見方のようなものいいもハラスメントに抵触するおそれがあるのです。

★互いにフラット・フリー・フラタニティ―という3F精神を共有共創していける学びの環境を有している学校をまずは探すというのが大事ではないでしょうか。

★どうやって探すのか?校長の言葉と広報部の先生の言葉ですぐにわかりますよ。

★偉そうだったり、妙にへつらったり、このような言動は、パワーの格差を生み出すので、ハラスメントを撲滅しようというパーパスがないということがわかります。

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2025年中学入試動向(5)併願の魔の三角形から抜けてみてはいかが?

★中学入試の準備も大詰め。受験生は志望校に向けて過去問を学んでいるころでしょう。この学びは、集中できるし、自分と志望校のマッチングを調整するのに大いに役に立ちます。しかし、2科・4科の入試だと、そもそもこの試験そのものが自分に合っていない場合があるのですが、それを自分の勉強が足りないからだとか、偏差値が低いからだという合理的でない因果関係に悩まされるのが偏差値マッチングによる併願の魔の三角形に陥る時もあります。受験生によってはハッピー三角形で、人によるのですが。ここでは悩める原因の三角形の側面から考えます。

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★よく、第一志望校は変えずに、偏差値を5ずつズラして併願作戦を組もうという話になっていますが、要は偏差値順に併願校を並べて、必ず合格する作戦を立てようということです。偏差値軸で学校をマッチングしていくので、上記の図のように、偏差値が低いと、2科4科では、知識・理解のトレーニングが中心になっていて、偏差値が高いと論理的に理解するレベルまではいきます(論理的に表現するところまで行く学校は麻布・開成・武蔵・桜蔭・雙葉・光塩女子ぐらいか)が、そこが頂点になります。中学受験の偏差値というのは、そもそも知識・理解がベースで少し論理的思考をたどる問題の枠の中で産出されるものです。

★ですから、上記のような三角形の中での競争になります。一見合理的のように見えますが、子どもというのは、階段状にまず知識・理解ができて、次に適用・論理の力がついて、最終的に批判的・創造的思考にいきつくというわけにはいかないのです。

★中学受験塾に行かず、習い事で、批判的・創造的思考をトレーニングしていると、知識が欠落しているということはあります。直感的で、まだ論理的に思考するという段階ではない生徒もたくさんいます。その生徒を2科・4科で選抜しようとすると、あのプロクロステスのベッドの話になります。

注)プロクロステス(Procrustes)は、ギリシア神話に登場する悪党です。彼は「均整の神」を自称し、旅人を招き入れては、彼らの体を自分のベッドに合わせるために切断したり伸ばしたりしていました。このため、「プロクロステスのベッド」という言葉が「一律に均整を取る」という意味で使われることがあります。彼の話は、均整を求めるあまりに他人を無理やりに変えようとすることの危険性を象徴しています。 

★だから、偏差値軸で併願作戦をたてるのは、リーズナブルな合理性ではないですね。生徒の才能開花の状況を無視して、偏差値軸をあてがって決めるのは、一見論理的で合理的にみえますが。

★だから、この才能軸で学校を選んで併願作戦をたてるのをマッチングと呼ぼうと思います。偏差値で選ぶのもある意味マッチングですが、こちらは多様な才能を考慮しないので、たんに併願と呼びます。才能軸で選ぶことの方をマッチングと呼んでおきます。

★マッチングは、生徒1人ひとりの創造的才能に向き合います。私立学校も25%は、新入試を2科4科に組み合わせていますから、自分の創造的才能に将来論理的思考も付加できるようになる学校はどこか選択するというマッチングが可能になってきています。

★少子化の時代、マッチング学校選択をした場合、まず不合格になるということはないでしょう。併願作戦は、偏差値にどうしてもこだわりますから、そのこだわりが、プロクロステスのベッドになることは今までもたくさんあったのです。その現象を中学受験の過熱とメディアはいうのですが、メディアの本来の役割は、批判的精神をもって見ることです。魔の三角形以外の入試があることをきちんと取材しなくてはなりません。今、この領域の正当性・信頼性・妥当性を取材しているのは、首都圏模試センターの発行しているshuTOMOという雑誌だけでしょう。

★大手メディアは、この魔の三角形を結果的に煽り、そこで悩める受験生をクローズアップするのはちょっと困ります。受験生が自分でそうなりたくてそうなてっているのではなく、その魔の三角形に飲み込まれてしまっているのですから、そこをクローズアップして欲しいですね。どこかの大統領のようなことが起こるのが、民主主義のパラドクスだとそもそも理論化されているぐらいですから、したがないのかもしれません。

★最後は、私事の自己決定ということでしょう。おせっかいかもしれませんが、魔の三角形に陥るのを避けることはできます。もちろんハッピー三角形としてチャレンジするモチベーションが燃えている受験生は、そのままがんばってください。

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2025年中学入試動向(4)工学院 傑出の理由 ケンブリッジインターナショナル×ラウンドスクエア×ムーンショット目標

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第192回「工学院大学附属中学校・高等学校ーグローバル教育の広がり」で田中歩教頭からお話を伺いました。まさに進化するグローバル教育×STEAM教育を豊かに生徒たちと歩んでいるという感じが伝わってきました。

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★高2の時に行われるグローバルプロジェクトがきっかけで、バングラディシュの高校と同国で野球というスポーツを新興するプロジェクトが立ち上がり、そこに工学院の野球部の生徒がアドバイスにいく交流まで行われています。スポーツは国全体への健康の善き影響を与えます。すると国全体の都市創りの経済基盤だけではなく、公衆衛生の基盤づくりにも一役買います。

★スポーツ科学という大学での学問もさらに発展するでしょう。スポーツ科学は身体の健康だけではなく、メンタルヘルスや人間関係づくりの学びも生み出します。工学院のグローバルプロジェクトの動きが、こんな大きな動きにつながっていくのです。工学院の野球部の生徒は、自分の才能でまさに世界を変えるアクションをおこしていることになります。

★しかし、この動きは、一般的な学校のグローバル教育だと限られた生徒たちの話になるでしょう。ところが工学院の場合は全員がこのようなグローバル教育の恩恵に浴することができるのです。

★そしてさらに、海外大学に行きたいと思えば、インターナショナルコースで学んでいけばよいのです。このコースは中学入学段階で相当高い英語力をもっていますが、高校になるともはや50%以上が準1級以上です。要するに英検2級以上は全員ということでしょう。

★しかし、海外大学進学で英語ができるのは大前提で、それだけで合格できるわけではありません。グローバルな探究やSTEAM体験がたくさんあるからこそ、自分の世界を広げ深めていくことができるし、何よりフラット・フリー・フラタニティ―(公平・自由・友愛)という世界各国のエスタブリッシュスクールのグローバル教育に共通する3F精神を学べます。田中教頭が生徒中心主義で対話ベースの環境を創っているというのはそういうわけです。

★そして、さらに驚くのは、インタナショナルコースだけではなく、工学院の生徒全員が、ケンブリッチインターナショナルスクール提携校としてAレベルの試験に挑戦できるのです。生徒がどのようにAレベルに挑戦しているのか、今回詳細に田中歩先生が説明してくださっているので、ぜひ動画をご覧ください。

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★それにしても、Aレベルで物理を選択すると、実験やレポートだけではなく、丸ごとセオリーを学ぶというのが、本格的なSTEAMです。日本の教育では、実験やレポートや知識・公式を学び、その前提のセオリーについては少し触れるだけです。さすがはイギリスのサイエンス教育ですね。ニュートンというロールモデルがあるからなのでしょう。

★このSTEAMに関しては、ほとんどの学校でまだ気づいていない内閣府のムーンショット目標について田中歩先生はいつも語っています。SDGsの次に来る画期的な未来社会のテクノロジーとエンジニアリングの話ですが、工学院の生徒の才能は中学入学当初から、ムーンショット目標につながる創造的才能があると田中由美先生は、生徒のアウトプットした表現から見出しています。

★生徒の日ごろからブツブツ湧いてくる才能を見出し、そのつながりを未来のパーパスに結びつけるリーダーシップ。ここが重要なのだ田中歩先生の教頭としてのリーダーシップに期待が高まりました。

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2024年11月14日 (木)

2025年中学入試動向(3)文大杉並 今年も人気!

★文化学園大学杉並の11月20日の「第1回国内帰国生入試」の応募が締め切られました。同校サイトを見ると驚きです。男女合わせて77名が出願しています。前年対比202.6%です。

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★DD(ダブルディプロマコース)の世界的にも質の高い教育のエッセンスを、文大杉並全体に浸透させているところが、仮にDDコースに進まないとしても恩恵に浴することができる学校です。

★しかもIBを中心とするインターナショナルスクールとは違い、部活や多様な研修活動、体験が多いことと、何よりSTEAM教育や探究教育も充実していて、生徒が自分のやりたいことを学校の中で大きく育てていけるのも魅力です。

★この出願者数の情報を提供していただいた入試広報部長の西田真志先生も授業や探究のベースになっているPBLのファシリテーターの達人です。

★実は、人気のある学校の広報の先生の特徴は、西田先生のようにPBLが得意だったり、STEAMなどの最先端の教育にチャレンジしている先生が多いのです。

★このような先生方の共通点は、生徒が学びの中で知のケミストリーを生み出すファシリテーションが巧ということです。おそらく、学校説明会で出会った受験生や保護者もそのような先生のパッションと魅力に共感し感動するのでしょう。人気の秘密はここにあります。

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2024年11月13日 (水)

世界を変えるとは?

★今朝はさわやかな空が広がっています。もうすぐ冬なのですが、まだ温かいですよね。心地よいのですが、気候変動リスクは心配ですし、この空のかなた西の方では悲惨な状況が続いています。遠くの出来事ですが、その影響は実際に身近なところでも起きていて、地球はつながっています。

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★心地よい瞬間も大きな深い不安につつまれながら、私たちは生きています。最近よく言われる自分事として社会課題を解決して世界を変えようというのは、つい自分もいってしまいますが、世界を変えるとはそもそもどういうことか。

★目の前の子供たちの悩みを共感するだけで、だから何を変えられるのだろう。そういう毎日です。

★にもかかわらず、世界を変えようと言わざるを得ないのです。

★ただ、玉ねぎの皮のように世界は積み重ねっています。一口に世界と言っても、あまりに多様です。

★学校を変える宣伝文句ではなく、賢明に諸世界の関係を分析して対話して、一つ一つどうするのかコツコツ研究するしかないと思っています。

★そのためのキャタライザーとしてグローバルな視点、STEAM的な視点、人類学的な視点を活用することは有益だと思っています。

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2024年11月11日 (月)

2025年中学入試動向(2)生徒が無限の価値を生み出す学校

★岩尾俊兵さんの「世界は経済でできている」はおもしろい。日本が低迷しているのは、「価値は有限だ」というアンコンシャスバイアスが通念になっているからだと。たしかに学歴社会や偏差値は、枠組みが固定していて、その中で相対的な競争主義が当たり前になっているから、この枠を超えた価値があるという希望はなくなってしまったのかもしれない。しかし、そんな通念を打ち砕いている私学がいっぱいある。

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★建学の精神という不屈のマインドを軸にグローバル教育とSTEAM教育のフュージョン教育を行っている私学がそれだ。

★必ずしもフュージョンはしていなくても、アート教育が、既成概念を脱構築して、新しい価値を創造するような取り組みを行っている学校がある。たとえば、駒場東邦とか、世田谷学園とか、日本工業大学駒場などは、フュージョンとまではいかないかもしれないが、グローバルとSTEAMにも目配りしながら、アート教育が傑出している。

 

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2024年11月 7日 (木)

2025年中学入試動向(1-2)学校選択の新しい見方

注)前回のを簡単にしてみました。

2025年の中学入試を迎える受験生が卒業する頃には、社会が大きく変わっています。

AI社会への対応として、グローバルとSTEAMのフュージョン教育を行う学校の選択が重要です。

特に、STEAMのAをAnthropology(人類学)に置き換えることで、多様性や多角的な視点を学べます。この視点で学校を選び、共に考えていきましょう。

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2025年中学入試動向(1)学校選択の新しい見方

★2025年中学入試に挑戦する受験生が卒業するときには、社会がガラッと変わっています。それがどう変わるかは、多くの人が語っているので、折に触れ観ていきたいと思いますが、結論からいって、そのときに、自分がどんなに大きく成長し、AI社会の新たなカタチの研究や仕事に取り組んでいるかは、グローバルとSTEAMのフュージョン教育を行っているあるいは行おうとしている学校選択に着眼するかどうかがレバレッジポイントになると思います。

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★グローバル教育とSTEAM教育のフュージョンのカギは、STEAMのAをAnthropology(人類学)の頭文字に置換えられるかどうかです。人類学は心理学、比較文化、遺伝子学、ジェンダー学、美学、哲学、社会学、生態学など多様性への視点や多角的なものの見方かんがえ方を学べます。

★現在行われているPBLなどで、生徒同士が対話によって、どのような感情を共有しているか、どのような人間関係をつくっているか、どのように共創共生ししているかなどを観る教師の眼差しは人類学的な着想があります。

★イメージはベイトソンですね。21世紀型教育をつくるとき、よく学んだ学者の1人です。コミュニケーションと精神科学を結び付けた臨床学的人類学をベイトソンは研究したと思いますが、今の合理的配慮などの必要性をすでに予告していたと思います。

★人類学はフィールドワークや比較研究は基本ですから、グローバルプロジェクトとしての海外研修を行っているところは、すでに人類学的手法を活用しています。また、グーグルアースやGISアプリケーションを使って地理学を授業している学校も人類学的知を使っていますね。博物館と連携している学校もそうです。

★そしてこの人類学的活動をしようとしたら、最低C1英語は必要になるのです。

★前回ご紹介した工学院×文大杉並×和洋九段女子はグローバルとSTEAMのフュージョン教育を行っていますが、ご紹介した活動はまさにAbthropology的活動です。

★今後のこのレバレッジポイントの視点でいろいろな学校をいっしょに観ていきましょう。

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2024年11月 6日 (水)

工学院・文大杉並・和洋九段女子 シンプルに深く教科と探究をフュージョン

21世紀型教育機構に今年開設された22世紀型教育研究センターの先生方が、「問いの問い生成ワークショップ」を開催しました。その内容はぜひ同サイトをご覧いただきたいのですが、結論から言うと、一つの問いについて4つのセッションで行ったとき、数学教師、英語教師、理科教師、国語教師がファシリテートすることによって、数理モデル、心理学的哲学対話、仮説推理、マインドフルネスリフレクションが行われたのです。

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★実はこれは、教科のコンテンツではなく、教科の固有の論理が活用されたのです。論理的思考として共通はしているのですが、論理展開や構成は、各教科違います。エーッ!論理展開は普遍なんではないかといわれるかもしれません。

★実は、違うのです。各教科の先生方がまず一つの文章をどう読むのか対話をしてみると、それはよくわかります。

★これらの異なる論理的思考は、生徒が使い分けたり、統合したりしくのです。これによって、豊かな探究活動ができます。1教科の先生が探究をやるとそこに導くのはなかなか難しいのですね。

★智慧とはこのような使い分けやフュージョンを自由自在にやってのけることだと確信しました。3つの学校の生徒が大学合格実績は言うまでもなく、もっと大きな領域で実績を上げていキャリアデザインの見通しがついているのはこういうわけだったのですね。

★いろいろな連携はもちろんおもしろいのですが、教科の先生方が連携することのおもしろさにまさるものはなさそうですね。

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2024年11月 2日 (土)

ZEN大学開設認可の衝撃 ミネルバ大学と力点が逆

★NHK(2024年10月29日)によると、「IT大手などが開校を目指していたインターネットですべての授業が受けられる通信制の大学が来年4月に開設されることになりました。入学定員は3500人で18歳人口が減るなか、通信制大学としては、異例の大規模校となります。」通信制大学はすでにありますが、ポストコロナ以降に開設されるZEN大学の意味は革命的なのです。文部科学省が認可するとは!次期学習指導要領に大きな影響を与えますね。

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(bing作成)

★ミネルバ大学のようにリアルスペースとサイバースペースのハイブリッドですが、ミネルバ大学は海外の拠点を巡るフィールドワークがベースで、オンライン上でアクティブラーニングを行っていきます。それに入試は難しいですね。

★ZEN大学は、サイバースペース上での学びや研究が中心で、リアルスペースは主ではありません。それに入試もそれほど難しいというわけではないでしょう。通信制のN高等学校の卒業生が概ね学ぶのでしょう。ただ、規模は東京大学並みです。

★パンデミックによって、ミネルバ大学はフィールドワークは困難だったと思います。しかし、ポストコロナに誕生したZEN大学はそのようなときにも学びや研究を十全にできます。

★そんな対面でなくて学びはできるのか?という方もいるでしょう。たしかにコロナ禍においては、それは問題になりました。

★しかし、今、対面型の研修や講義が復活していますが、DXが学習ツールとして媒介しない研修や講義は、効果的でしょうか。1人1台端末を有している時代に、DXをうまく使えない研修や講義は、オンライン講義や研修に比べ、実は効果がでていないのです。そんな馬鹿な、データエビデンスを出せと言う人もいるでしょうね。

★でも、実は、対面型が巧みな人ほどDXを巧みに使いこなします。生成AIの時代です。それも同じように使いこなしながら対話もします。

★対話が大事なのですが、同時に対話が難しいということはよくわかっているから、その難しいところをDXを媒介してクリアしています。

★だいたい、双方向に話をしていれば対話が成り立っているかというと、LOT(Lower oder Thinking)はできていても、HOT(Higher orde Thinking)は出来ていない可能性があります。対話には安心安全が必要だと言われます。マインドフルネスが必要だと言われます。なぜかというと、安心安全だったりマインドフルネスがあると、自由な発想やアウトプットする勇気が出てくるからです。つまり、マインドフルネスとHOTは相乗効果が生まれます。

★それに、3人以上になると、アウトプットと内面の気持ちがアンバランスになります。100人を超える研修や講義では、参加型にしないと、このアンバランスを修復することができません。そこでハーバード大学のマズール教授はPI(ピアインストラクション)を開発しました。かつてはクリッカーを1人1台用意しなくてはならなかったので、金銭的コストもバックオフィスの準備コストも高かったのです。

★今ではグーグルフォームやもっと便利なスライドなどのアプリがあって、だれでもがスマホでできてしまします。

★ポストコロナの授業も見た目は一方通行ですが、実際にはオンラインを併用しているので、参加型授業になってきています。

★老眼である私には眼鏡が欠かせません。眼鏡は道具ですが、今となっては体の一部です。そんな道具は人によっていろいろあるでしょう。サイボーグ人間の初期段階と捉えることもできるかもしれません。

★ZEN大学は、そんな感じで、日本の学びや研究のあり方を決定的に変えます。特にオンラインで海外との連携を行っていくことになりますから、このようなスタイルにシフトチェンジしない大学や初等中等教育は淘汰されていくでしょう。

★高大連携や企業などの団体との連携は進みますが、学習指導要領の教科授業の補完程度で活用していては、先がないのです。もちろん、それも重要なのですが、2040年、つまり次期「次期学習指導要領」では、文理融合が進みますから、74単位のうち、基礎知識は30単位分でいいということになるでしょう。共通テストも資格試験化しているでしょう。

★44単位は、10個のムーンショット目標が教科化し、そのうち2教科ぐらい選択すればよいということになるでしょう。2050年には、74単位すらあるかどうかわかりません。

★そんなあ!基礎知識はどうするんだあ!と。大丈夫それはあります。ただ、それは言語リテラシーと理数リテラシーと社会課題リテラシーぐらいになるでしょう。言語のロジカルとメタファーの性質、理数の変化率と確率を様々な現象で認識し応用するリテラシー、社会課題を見出し、ヤヌスプロセスで解き明かしていくリテラシーがあれば、現状の大学入試レベルの問題はクリアできるでしょうから、そもそもそのような大学入試問題も必要ありません。

★決定的なことは、ZEN大学のような新しいタイプの大学にシフトしていくことによって、学びや研究の度合いに応じてベーシックインカムの度合いも変わるでしょう。学びや研究が特許ベースになるので、同時に学生は働くことにもなります。ジョブ型のベースを大学でつくっていけるのです。

★フュージョンの時代です。働き方改革は24時間の時間配分だけではなく、同一時間に学びも仕事も出来てしまうということになります。

★実際にそのような兆しはいっぱいありますが、まだ微分化状態で政策として積分化されていないだけです。そこに気づいている人は、学生だけれど、ラップトップとスマホを持って、やっていけています。スタートアップと今は呼ばれていますが、すでにWeb3.0の世界は開かれています。

★なぜ私のような70代前後の老人がダメなのかは、多くは、DXを自分で使って稼いでいないからです。私たちは、若者にエールをおくり、昔の話でも価値あるものはあるものですから、それを短い言葉で伝えていくことぐらいです。

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2024年11月 1日 (金)

綿あめで世界を学ぶ ものとことの関係総体

★お祭りやイベントでレインボー綿あめなんかを子どもたちがもってニコニコ笑っているのをみることがあるでしょう。食べ過ぎると、虫歯になったり、高糖分接種など、母親は心配になってしまいます。

★健康を優先するか楽しいという心理的状況や一緒に楽しんでいる友達どうしの人間関係を優先するのか。一見小さなことでもマルチレンマに陥ります。

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★極めてローカルな悩みなのですが、実はこの悩みも説明するまでもなくグローバルな社会課題やイノベーションの希望の両方を考える世界に連れて行ってくれますね。

★今述べたように、綿あめは、しばしば子供時代の楽しさや無邪気さを象徴します。文学作品においても、綿あめは懐かしい記憶や失われた純粋さを表現するために使われることがあります。

★視覚的にも鮮やかで、ふわふわとした質感があるため、情景描写において豊かな表現を生み出します。例えば、祭りのシーンや遊園地の一場面などで、綿あめを描写することでその場所の雰囲気や感情を読者に伝えることもできますね。

★綿あめは、はかないものや一時的な幸福のメタファーとして使うこともできます。その甘さと消えてしまう儚さが、人生の儚さや瞬間の幸福を表現するために利用されることでしょう。

★説明するまでもなく、文学的な側面以外からもアプローチできます。綿あめは、砂糖を高速で回転するヒーターで溶かし、細かい糸状にすることで作られます。このプロセスは、砂糖の融点(約160度)を利用して液状にし、遠心力を用いて細かい糸にする物理的な現象を含んでいます。めちゃくちゃ物理の学びの素材にもなります。

★その構造は、非常に軽くてふわふわしているため、表面積が大きくなる特性を持っています。これにより、口の中で瞬時に溶ける独特の食感が生まれますのですが、これなんか感覚を増幅する時のIT分野でのヒントにもなるでしょう。

★それに、砂糖の結晶構造を一時的に壊し、再び冷却することで再結晶化する現象を利用しているわけですから、化学の世界に没入する入り口にもなりますね。

★ですから、医学や素材科学など他の分野でも応用されています。例えば、ナノファイバーの生成や細胞培養の足場材料として利用されています。

★しかし、こんないいことばかりではありません。作物として、大量の水や農薬を活用するわけですから、環境を破壊する恐れもあります。価格変動による消費経済への影響もあるでしょう。

★それにザラメは砂糖です。砂糖は植民地経済の影響を大いに受けてきました。つまり、格差問題と人権侵害の問題を生む世界商品でもあるわけです。

★というわけで、綿あめが導く世界の問題。目に見えるものである綿あめには今言ったような問題が目に見える形で張り付いているわけではありません。ですから、その多岐にわたる関係性を思考するトレーニングが必要です。

★多くの経験は重要です。しかし、今言ったことをすべて経験することは難しいですね。ですから、本をはじめとする情報をリサーチする能力は必要です。

★しかし、同時に、リアルな世界で人々の痛みをどう解決するのか政策や解決案をつくることも必要です。ただ、最近、多くの経験をすることが目的になって、以上のような多岐にわたる関係性を構造化したり抽象化したりする思考トレーニングがなかなか追いつかないのも事実ですね。

★こういう内省する時間を生徒と共にする余白をどうやったらできるのでしょう。カリキュラムマンジメントの腕の見せ所です。

★それには、たとえば三角形と綿あめの「もの」と「こと」の多様なかかわりの構造を捉えるコンセプトレンズは同じだということに気づくとショートカットできますよね。転移すればよいのですから。トランスフォームすればよいのです。シンプルに置き換えるでもよいのです。

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大妻中野 新思考力入試を廃し、そのエッセンスを全教科入試に移植することの意味

★今年諸橋先生は大妻中野の校長に就任しました。いろいろな改革を押し進めていますが、もっともわかりやすいパーパス表明は、中学入試の変更です。「新思考」を「アドバンスト入試(国算理社入試」(午後は2科)に変更したのです。これにより、全アドバンスト入試を数年かけて、「思考力色がしっかりと伝わる入試問題」に変えていくための意思決定だということだそうです。

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(大妻中野の精神)

★これによって、大妻中野は、開成や麻布のような教科入試に思い切ってシフトすることを宣言したことになります。

★すでに高い人気を獲得し、グローバル入試は大成功しています。これは引き続き行うので、一般入試も徐々にハードルを上げていきます。

★2025年は、各教科20%思考型問題を挿入しますが、これ以外の問題ができれば合格できます。ですから、実質受験生は怖がる必要はありません。

★ただ、3年間は様子をみて、2027年には40%に広げていく可能性もありますね。すると、いきなり偏差値はあがるでしょう。

★受験生や塾の方々に気にするなと言っても気にしてしまう大学合格実績はどんどんあがっていきますから、この3年のうちに、思考型問題にもチャレンジする生徒が増えていくはずです。

★合格するだけではなく、6年間知的好奇心の翼をのびやかにひろげて楽しい学園生活をおくるために、考える力はそもそも大切ですから。

★これによって、大妻グループ全体が上昇気流に乗ります。

★2027年には教育の世界は完全に変わります。今ままでは基礎学力といえば知識の体系でしたが、やがて基礎学力とは論理的思考力ということになっているでしょう。諸橋校長がいかに慧眼の持ち主か了解できます。

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全国私学教育研究集会で エヴェリット・ロジャーズのファントムに出遭う・・・

★今年の全国私学教育研究集会は大分で行われています。昨日は全体会で一般財団法人日本私学教育研究所の吉田晋理事長から厳しい社会状況の中で国や自治体とどのように交渉をして私立学校がその建学の精神に基づいた生徒の成長を育成する独自の先見性・先進性を発揮した教育環境デザインを持続可能にするのかビジョンとその戦略について講演がありました。このビジョンの向こうには、受験市場とは違う第3極の教育に対し、私立学校がどうするかということが予告されています。

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★それを受けて同研究所所長の平方邦行先生が、そのビジョンと戦略を実現する方略として21世紀型教育からプレ22世紀型教育へシフトするパーパスとその方略ツールをいくつか紹介しました。その中で印象的だったのが、思考コードの取り扱い方でした。この思考コードが生まれた背景には、実はジェフリー・ムーアの理論との出会いがありました。2005年にムーアは、自身のキャズム理論を展開した一冊をまとめました。上記の写真の本ですが、1960年代に世に登場した社会学者エヴェリット・ロジャーズのイノベーション理論に基づきながらもキャズムをどう超えるのかについて発展的に展開した理論書です。この本の読みどころは、後半のキャズムがどうしてできてしまうのか、どうしてなかなか超えられないのか、社会や組織の疎外要素や諸関係を論じているところなのですが、そこまであまり世の中では言及されることはありません。

★しかし、平方先生は、それを思考コードの活用が停滞しているところにあると私立学校が今後超えるべき次元を提示されたわけです。そして、現状の確認として、その場で、自分はどの次元にいるかをグーグルフォームでアンケートをとりました。その項目は、次の通りでした。
➊ 新しい知識を受容する
➋ 獲得した知識をつないで理解を深めている
❸ 理解したことを多様な事象に適応したり、自分の理解とは反対の考え方を
  どのように捉えなおすか論理的に思考している
➍ 理解を深めている事象を規定している枠組みを批判的に検討し始めている
❺ 批判的に検討した枠組みやルールを新しい枠組みやルールに変更している

★すると驚いたことに、このアンケート結果は、まるでロジャーズのイノベーション理論のような結果になったのです。

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➎イノベーター(Innovators):冒険心が強く、新しいアイデアをいち早く採用する人々。
❹アーリーアダプター(Early Adopters):社会的に影響力があり、他の人々に新しいアイデアを広める人々。
➌アーリーマジョリティ(Early Majority):慎重に検討しながらも、比較的早い段階でイノベーションを採用する人々。
➋レイトマジョリティ(Late Majority):平均的な人々よりも遅れてイノベーションを採用する人々。
❶ラガード(Laggards):変化に対して非常に抵抗があり、最後にイノベーションを採用する人々。 

★ロジャーズの仮説の割合とはアンケート結果は完全に一致しませんでしたが、ほぼ傾向はこんな感じでした。イノベーターとアーリ―アダプターはもう少し多かったということは、参加者である私立学校の先生方がやはり世の中より先見性・先進性を発揮しているということでしょう。

★しかし、1960年代の理論であるロジャーズの考え方が今でも生きているというのは、さすがはムーアがこの考えを引き継いで、21世紀によみがえらせただけのことはあるなと感動しました。ロジャーズのファントムに遭遇し、すこし恐ろしくも希望が見えました。

★ただ、平方先生は、ロジャーズの理論をさらに進めているのです。私立学校の教職員も生徒もイノベーターでありアーリ―アダプターであって欲しいということなのですから。刺激的と感じるか、恐ろしいと感じるか、それは参加者次第ですが、受験市場や第3極とせめぎ合いサバイブするには、何をするべきかの方向性は明快だったのです。

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