禅とチャペルと音楽と 私立学校は小林秀雄を受けいれて乗り越える
★多くの私立学校では、コーラス、吹奏楽、弦楽など音楽が鳴り響いています。校長先生の中には、クラシック音楽を嗜む先生も多いし、実際に芸大をはじめ音楽大学出身の方もいます。仏教やキリスト教の学校の校長先生の場合は、さらに僧侶の方も聖職者の方もいます。そうでなくても、禅や瞑想の意味を深く理解し、学内外にその想いを教育を通して広げていこうとしています。でも、ふだん支部会や研修でお会いした時に、クラシックの話や仏教やキリスト教の世界の話は対話の中にそれほどでてくるものではありません。
★それは何故でしょう?そもそもそのようなミーティングは、目的がはっきりしていて、そこに音楽の話も宗教の理念の話もテーマになることはないということもあります。
★それでも、SNSなど個人的なやりとりの中では、そのような話もでてきます。コンサートの季節でもあるので、演奏会に行ってきた感想を拝見すると、普段学校では話をしないような音楽の深イイ話をされているのがわかります。でも、その深イイお話は、少しデモーニッシュです。ふと私と同じくらいの世代の校長先生方ですから、この心性への共感はなんだろうと思いました。
★そして、この世代は、小林秀雄の「モオツアルト」を読んでいるなと気づいたのです。受験にも出題されていたので、きっと読んだことがあるはずです。そこで、引っ張り出してきて再読。もう60年以上も前に出版されています。ですから、私たちが高校生から大学のときに、ちょうど教科書的な文章として取り扱われていたと思います。
★開いてみて、いきなりデモーニッシュな心性が現れてきました。疾風怒濤の時代の心性です。啓蒙期の流れを汲むゲーテやヘーゲルの雰囲気が詰まっていました。もっとも小林秀雄ですから哲学的な書き方は全くしていませんが、理性としてのデモーニッシュな雰囲気を漂わせています。
★光と影を分断することなく、まるでモーツアルトの作品をルビンの壺のように両面性を同時に備えている通奏低音が響いています。
★おそらく、このアンヴィバレンツな人間の魂のテーマは、近代文学の通奏低音なのでしょう。ですから、常にユートピアはディストピアと混然一体となっていて、小林秀雄は、あの未完のレクイエムを作曲しているときの、モーツアルトを、日々死を覚悟して眠り、目が覚める度に再生を意識して作曲に取り組んだと。その姿はまさにデモーニッシュな神の憑依した感じです。
(駒沢学園女子の坐禅堂「照心館」)
★このことを別に小林秀雄に影響されてというわけではなく、小林秀雄が近代の心性の通奏低音を言語化しただけですから、この心性を共有している世代が今の校長先生なのでしょう。だから、学校では、このことを理解しているからこそ、人間はたしかにそうなんだけれど、にもかかわらず、光をということでしょう。
★だから、ふだんは光の部分しか話さないのです。その覚悟があるからこその気概ですね。そこを評論家は、真実を観ていないとか揶揄するのです。しかし、そのような近代文学の心性は真理でしょうか。そこはにもかかわらず乗り越えるにしても、さらにそれを超克することはできるのではないかと校長先生方は考えるのだと思います。
(桜美林のチャペル)
★だから、その超克する新しい心性を生み出す音楽に感動し、坐禅をして自らを超える新しい世界を見つめ、チャペルで祈りながら新しい希望を生み出す教育に挑戦し続けているのでしょう。
★校長は守護神ヤヌスでもありますから、片方の顔は広報に向け、もう片方の顔は人間の新しい本質に向いています。
★もちろんすべてがそうではないというのは、人間ですから当たり前です。マーケティングにばかり目が行き、それが巧みな校長もいます。本質だけにこだわりふんばる校長もいます。ただ、私の周りには、守護神ヤヌスさながらの敬愛すべき校長が多いということも事実です。
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