全国私学教育研究集会で エヴェリット・ロジャーズのファントムに出遭う・・・
★今年の全国私学教育研究集会は大分で行われています。昨日は全体会で一般財団法人日本私学教育研究所の吉田晋理事長から厳しい社会状況の中で国や自治体とどのように交渉をして私立学校がその建学の精神に基づいた生徒の成長を育成する独自の先見性・先進性を発揮した教育環境デザインを持続可能にするのかビジョンとその戦略について講演がありました。このビジョンの向こうには、受験市場とは違う第3極の教育に対し、私立学校がどうするかということが予告されています。
★それを受けて同研究所所長の平方邦行先生が、そのビジョンと戦略を実現する方略として21世紀型教育からプレ22世紀型教育へシフトするパーパスとその方略ツールをいくつか紹介しました。その中で印象的だったのが、思考コードの取り扱い方でした。この思考コードが生まれた背景には、実はジェフリー・ムーアの理論との出会いがありました。2005年にムーアは、自身のキャズム理論を展開した一冊をまとめました。上記の写真の本ですが、1960年代に世に登場した社会学者エヴェリット・ロジャーズのイノベーション理論に基づきながらもキャズムをどう超えるのかについて発展的に展開した理論書です。この本の読みどころは、後半のキャズムがどうしてできてしまうのか、どうしてなかなか超えられないのか、社会や組織の疎外要素や諸関係を論じているところなのですが、そこまであまり世の中では言及されることはありません。
★しかし、平方先生は、それを思考コードの活用が停滞しているところにあると私立学校が今後超えるべき次元を提示されたわけです。そして、現状の確認として、その場で、自分はどの次元にいるかをグーグルフォームでアンケートをとりました。その項目は、次の通りでした。
➊ 新しい知識を受容する
➋ 獲得した知識をつないで理解を深めている
❸ 理解したことを多様な事象に適応したり、自分の理解とは反対の考え方を
どのように捉えなおすか論理的に思考している
➍ 理解を深めている事象を規定している枠組みを批判的に検討し始めている
❺ 批判的に検討した枠組みやルールを新しい枠組みやルールに変更している
★すると驚いたことに、このアンケート結果は、まるでロジャーズのイノベーション理論のような結果になったのです。
➎イノベーター(Innovators):冒険心が強く、新しいアイデアをいち早く採用する人々。
❹アーリーアダプター(Early Adopters):社会的に影響力があり、他の人々に新しいアイデアを広める人々。
➌アーリーマジョリティ(Early Majority):慎重に検討しながらも、比較的早い段階でイノベーションを採用する人々。
➋レイトマジョリティ(Late Majority):平均的な人々よりも遅れてイノベーションを採用する人々。
❶ラガード(Laggards):変化に対して非常に抵抗があり、最後にイノベーションを採用する人々。
★ロジャーズの仮説の割合とはアンケート結果は完全に一致しませんでしたが、ほぼ傾向はこんな感じでした。イノベーターとアーリ―アダプターはもう少し多かったということは、参加者である私立学校の先生方がやはり世の中より先見性・先進性を発揮しているということでしょう。
★しかし、1960年代の理論であるロジャーズの考え方が今でも生きているというのは、さすがはムーアがこの考えを引き継いで、21世紀によみがえらせただけのことはあるなと感動しました。ロジャーズのファントムに遭遇し、すこし恐ろしくも希望が見えました。
★ただ、平方先生は、ロジャーズの理論をさらに進めているのです。私立学校の教職員も生徒もイノベーターでありアーリ―アダプターであって欲しいということなのですから。刺激的と感じるか、恐ろしいと感じるか、それは参加者次第ですが、受験市場や第3極とせめぎ合いサバイブするには、何をするべきかの方向性は明快だったのです。
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