NHK学園 認知スキル×感情リテラシー 教育の本質
★文部科学省が開催している「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議があります。要は通信制が全日制が置きざりにしてきた教育の根本的な問題を現場で柔軟に涙ぐましい創意工夫がなされ、その根本問題をなおざりにしてきた結果痛みを被っている生徒を引き受けているにもかかわらず、その柔軟性を逆手にとって、安易でショートカット的な学修方法が、公教育機関の在り方として本当にふさわしいのかどうかをチェックしようという会議です。具体的には「義務教育課程の中でもって教員配置も、登録している生徒に基づいて行われている。教科書等も配られているにもかかわらず違う、本来は不登校でもなければ中退でもなければという子供たちまで集め始めているということは明らかに、そうした形で、広域制通信高校が今までとは違った形で生徒の集め方をして、単にもうそれは不登校だとか中退者じゃないですね。もう積極的に広域制通信の持っている緩やかな弾力性をうまく利用して、生徒数の拡大を図っているという流れになってきている。やはりそういった点についてもう一度検証をしていく必要があるでしょうし、そういう点では実員と定員、それの乖離も大きく生じているということなどもきちっと検証していく必要があるのではないか」ということですね。
★何においても、悪用とか濫用というものはあるわけだから、そうならにようなチェックシステムは作らなければならないと私も思います。しかし、今までの公の議論というのは、そういう正義にむかって邁進する時に、なぜか本質を見落としていくということがありがちなのです。坊主にくけりゃ袈裟までにくいということがあります。この通信制の見直しの時に、制度の欠陥をクリティカルシンキングしているだけなのに、そもそも通信制は、全日制に比べてショートカットしているからけしからんという十把一絡げにしてしまう。
★議論している人はそんなつもりはないと言いながら、「合理的配慮」の繊細なコミュニケーションの実践の拠点である通信制の学校に、その配慮がない言動を認めている文部科学省があるのは、とても残念です。
★「合理的配慮」の根本は、教育の本質を見落としがちな日常のコミュニケーションのモニタリングにあるわけです。まともにそこに向かい合っている通信制が実践している教育の本質のあり方にちゃんと目をむけなくてはならないと私は思っています。
★もちろん、一方で文部科学省は、ここに向かい合ってもいます。リテラシーという言葉ではなく資質能力というコンピテンシーに着目したり、高校卒業に必要な74単位のうち36単位は柔軟にしていこうという動きはまさにそうです。
★NHK学園で、等々力理事長、伊藤副校長をはじめ5人の先生に話を伺ったり、キャンパスや授業を見学させていただきました。改めて、ショートカットしているのはもしかしたら全日制ではないかと思ってしまいました。
★同学園では、メディアリテラシーというクリティカルシンキングという認知能力を十分に時間を割いて教育実践をしています。一方で、ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)も十分に時間を割いて教育実践をしているのです。SELのほうは、法政大学の渡辺弥生教授と先生方が協働して教材を創ってもいます。
★全日においてもこのSELについては見直されてきています。しかし、時間が全く足りないでしょう。基礎学力というのを認知能力だと考えているようですが、それは認知能力のほんの一部です。しかし、あれらだけ膨大な時間をかけていますから、生徒の方は、クリティカルシンキングやソーシャル・エモーショナル・ラーニングを十分に受けていないために、教科学習が認知能力のすべてだと推論のはしごよろしくアンコンシャスバイアスを造ってしまっていることに気づかないのです。
★このことに違和感をもって感情リテラシーを十分にもっていない小中学校の時に、不登校になってしまう、はじかれてしまう子供がでてきてしまう。そこに学歴社的な階層ランキングという合理的配慮を全く欠いた世間の言説、それを煽るメディアの言説が、生き難い状況を作ってしまう。
★そんな世の中をそれでも生きていくためには、そのようなメディアの言説をクリティカルシンキングできるメディアリテラシーというアイテムを磨き、いわれなき世の中の言動から身を守る、感情リテラシーというアイテムを磨くという本質的教育を生徒1人ひとりに本当の意味で個別最適化しているのがNHK学園です。
★法人としては独立していますが、NHK講座というNHKの学びのリソースを活用しながら全日から見ればいわゆる教科学習の時間はショートカットしているかもしれませんが、全日が通信制から見ればショートカットしている認知能力のリテラシーと非認知能力のリテラシーの学びを充実させているのです。
★しかし、たしかに、この認知能力や非認知能力のトレーニングの時間を、逆手にとって、全く別の時間にあてている通信制もあるのです。そのような通信制で学ぶことは自由ですが、それで高校卒業資格がとれるというのは、教育関連法規上問題であるというのは当然です。法治国家ですからね。
★では、全日制と通信制の融合は果たして可能でしょうか?それはする必要がないのです。多様な学びのあり方があるのは生徒にとっては選択肢があるということだからです。それに、全日で十分にメディアリテラシーと感情リテラシーをトレーニングすることは可能なのですが、それは教材によるわけではないのです。では、どうすれば?
★GAFAMのようなユニコーン企業が、哲学や禅を欲しているところに大きなヒントがあります。そして、この道をすでに歩んでいる全日制の私立学校があります。NHK学園のような本質教育を実践している学校に学び、全日においてもその本質教育を行っている学校に学んでいけば、日本の新しい本質的で生徒も教師も保護者もその他の関係者もウェルビーイングになる効果を生み出せるはずです。
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