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2024年9月23日 (月)

東京の私立学校の信念(3)文科省が今後の教育課程であえて語らないこと

★先週文科省は「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会 論点整理」を公開しました。たまたま私は電話でですが文科省の教育課程担当の1人の方と話をして、次期学習指導要領はいつ公開かなど尋ねました。すると歴史を振り返っていただければわかるように、いつもようなスケージュールだと思いますが、具体的な年月はまだ決まっていないということでした。それはそうだろうと思いながら、変わるべき学習指導要領の内容はどうなっているのか?今回の新学習指導要領のときのように、国立教育政策研究所は、学習の方法、評価などについて各国のリサーチを盛んに行っているという雰囲気ではないですね。むしろ現行の学習指導要領をもう少し実施ししながら、その質を高めたり、普通高校のあり方や不登校の問題などにかなり議論を重ねているようですがと尋ねると、概ねそういうことでしょうが、具体的なことは何も語れませんが、本間さんが言うような内容に有識者検討会の資料もなっていますから、そちらをご参考くださいということでした。

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★前述の今後の教育課程についての論点整理は、これからの社会像の整理から始まっています。簡単にまとめるとこんな感じです。

「これからの社会像は、人口減少や少子高齢化、地球環境の有限性を踏まえた持続可能な社会の構築が求められます。一人一人の可能性を開花させ、資源や環境を考慮しつつ、環境・福祉と経済の両立が必要です。多様な子供たちが豊かで幸福な人生を送れるよう、教育的支援を強化し、グローバルな協働を進めることが重要です。生成AIの発展に伴い、生涯学び続ける姿勢が求められ、質の高い知識が社会の革新を支えます。」

★より良きウェルビーイングな社会ということでしょうが、こんなふんわりとした社会像を文科省が描いているはずがありません。というのも、今回の論点整理は、今までと違って読みやすいし、会議の中でプレゼンした有識者の分厚い資料がPDFですぐに開くことができるようになっています。

★この会のメンバーではないのですが、招かれた二人の教授の資料も掲載されています。広井良典教授(京都大学人と社会の未来研究院副研究院長・教授)と安宅和人教授(慶應義塾大学環境情報学部教授)がその人です。お二人の著書は、私も参考にしていますが、その中では、現実社会の改善だけを示しているわけではなく、もっと根本的な議論を展開しています。

★しかし、この論点整理では、2030年ころまでの話で終わっているのです。不思議だなと思い、ムーンショット目標について今度の改訂学習指導要領では何か言及があるのですかと尋ねてみました。するとそれはお答えできませんと。

★たしかに、今度の学習指導要領の改訂実施は、2027年から2030年ころの話ですから、まだSDGsの延長上です。ムーンショット目標は2050年の話です。そこを通り越して回答することはできないというのは少し考えると当然ですが、実際には東京大学でも経団連でもその目標に向かって動いています。実は、いくつかの学校では、このことについての説明ワークショップを生徒向けに行っています。当然文科省が支援していることです。

★それでもあえてそれは語らないという姿勢なのです。しかし、昨年末話題になり今年の春に10番目にムーンショット目標が追加されました。それはフュージョンエネルギーの開発です。この開発は、SDGsの目標どころから新しい社会のさらに向こうを拓く決定的な出来事なのです。

★まあ、しかしそれは予測不能の部類ですから、次期学習指導要領に盛り込む必要はないと。やりたければ、探究を大いに活用してということでしょう。倫理資本主義が必要なのは、まさにこれによってもたらされるニューコモンズの悲劇をおこさないためなのです。広井さんは資料の「補足」のところで、そのビジョンを明快にではないですが暗示しています。

★安宅さんはそもそもAI時代とはそういうことですよとさらりと言っているので、それが2050年の話につながる決定的な変化なのだと読み込まれていないかもしれません。

★東京の私立学校では、夏の初任者研修をはじめ、いろいろな研修ですでにムーンショット目標の情報を共有し、実際に開発している教授と対話もしています。もちろん、知のニューコモンズの悲劇を起こさないために。

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