ムーンショット型研究開発が進み始めている 結びつくか初等中等教育
★2020年から順次ムーンショット目標が設定されその目標に向けて科学技術開発プロジェクトが立ち上がっています。2023年には、目標10が設定されました。このムーンショット目標について、内閣府のサイトでは次のように記載されています。
ムーンショット目標
全ての目標は「人々の幸福(Human Well-being)」の実現を目指し、掲げられています。将来の社会課題を解決するために、人々の幸福で豊かな暮らしの基盤となる以下の3つの領域から、具体的な10個の目標を決定しています。[総合科学技術・イノベーション会議決定(目標1~6:令和2年1月23日、目標8,9:令和3年9月28日、目標10:令和5年12月26日)、健康・医療戦略推進本部決定(目標7:令和2年7月14日)]
①社会:急進的イノベーションで少子高齢化時代を切り拓く。[課題:少子高齢化、労働人口減少 等]
②環境:地球環境を回復させながら都市文明を発展させる。[課題:地球温暖化、海洋プラスチック、資源の枯渇、環境保全と食料生産の両立 等]
➂経済:サイエンスとテクノロジーでフロンティアを開拓する。[課題:Society5.0実現のための計算需要増大、人類の活動領域拡大 等]
★そして、昨年設定されている目標10については、次のように内閣府のサイトには掲載されています。
ムーンショット目標10
2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現
ターゲット
・2050年までに、様々な場面でフュージョンエネルギーが実装された社会システムを実現する。
・2035年までに、電気エネルギーに限らない、多様なエネルギー源としての活用を実証する。
・2035年までに、エネルギー源としての活用に加えて、核融合反応で生成される粒子の利用や要素技術等の多角的利用により、フュージョンエネルギーの応用を実証する。
注:フュージョンエネルギーは、軽い原子核同士(重水素、三重水素)が融合して別の原子核(ヘリウム)に代わる際に放出されるエネルギー。太陽や星を輝かせるエネルギーでもある。
★このムーンショット型研究開発制度は、SDGsを継承するものです。2030年から2050年にかけて達成する目標が掲げれているところからも明らかでしょう。また、Society5.0の社会からSocietyXへ転換させる政策でもあります。大学やシンクタンク,企業が連携して研究開発しているので、知財の問題もあり、具体的な技術が必ずしもメディアによって公表されてこなかったこともあったのでしょう。わりと静かに進められてきましたが、ここにきていろいろな成果やその周辺技術が次々と発表されてきました。
★医療や気候変動、経済格差、メンタル、都市政策など多様な側面で研究されているわけですが、これらの研究が乗り越える最大の地球規模の課題は、化石燃料をできるだけ使わなくてもエネルギー問題を解決できるかです。
★化石燃料をめぐる政治経済的な奪取闘争が、経済格差や世界紛争に結びつく根本の問題です。もし、日本がフュージョンエネルギーを実用段階にもっていけたら、日本経済の再生もありますが、なんといっても地球規模の様々な問題を解決します。
★未病を発見することができたり、人口光合成の実用化ができたり、フュージョンエネルギーが実用化ができたりすると、健康問題、食糧問題、環境問題、経済格差問題などが解決する可能性があります。もちろん国際政治経済問題も解決するし、これらの解決にAIは欠かせないので、労働問題も解決するでしょう。
★そんな夢みたいな話と思う方もいるでしょう。しかし、生成Aiの誕生を考えれば、ディストピアとユートピアは表裏一体です。どちらの道を選ぶか、意思決定の問題ですね。
★このような意思決定に寄与できる教育を初等中等教育で育成することそれが、マルクス・ガブリエルの提唱する「倫理資本主義」の実現への1つの条件でしょう。2027年の学習指導要領の改訂は、そろそろ、このムーンショット目標実現へのメインドとスキルに直結する教科や学び方を組み立てることが必要です。
★実際今年4月に文科省が省令改訂した高校卒業単位の36単位の柔軟な活用は、現状あまり大きな動きがありませんが、2027年の改訂には寄与することでしょう。ムーンショット目標だけではなく、それ関連する多様な最先端の技術に直結する学習指導要領改訂を政財官学で考えているはずです。
★それは東京大学の総長藤井教授や経団連、幾つかの自治体の組長が、すでに「グローバル教育」「STEAM教育」「リベラルアーツ教育」という言葉を次世代教育の共通キーワードとして使っていることからも推察できます。
★こういうことを言うと、技術のために教育があるわけではないと語る方もでてくるでしょう。その気持ちはわかりますが、思考なきエンジニアリングに関しては警鐘を鳴らしつつ先の見識者は語っていて、当然メリット、デメリットの比較衡量はしています。その両方の議論をラジカルアクセプタンスして変えるものはかえていくことがいまさら言うまでもなく必要でしょう。
★ムーンショット目標10の背景には、根本的な近代社会の光と影の「影」の部分をようやく明らかにすることでもあります。この技術が本当に実用可能かどうかも重要な問題ですが、化石燃料を巡る根本問題がいつも回避されて気候変動の問題解決の方法が語られてきたことに対するクリティカルシンキングが生まれるティッピングポイントでもあるということを考えていきましょう。
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