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2024年8月

2024年8月31日 (土)

聖パウロ学園高等学校 愛ある若き教師チーム(2)生徒1人ひとりの思考動のコンセプトレンズが生まれる愛の教育

★聖パウロ学園高等学校は、中学はありません。したがって、3年間で私立中高一貫校以上の教育を行うにはどうしたらよいのかを小島校長は試行錯誤/思考錯誤しています。その気概を愛ある若き教師チームも引き受けているということを、WSを通して改めて知り、頼もしいと感じました。

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★私立中高一貫校以上の教育になる必然性は、入学してくる生徒の思考動(想いやものの考え方、行動力)の資質能力が、圧倒的に潜在的な状態であるからです。偏差値はどうでもよいのですが、わかりやすいので偏差値でこの状態を考えてみましょう。中学受験の偏差値というのは、同年代の小6の10%の母集団が対象です。高校受験の偏差値はのこりの90%の母集団が対象です。するとたとえば、偏差値50前後というのは、中学受験と高校受験では同じ生徒のレベルを現しているわけではないのです。

★よく中学受験の時の偏差値50は、高校受験の時には65以上だといわれるのはそういうわけです。

★聖パウロ学園は、このような格差をふっとばすために、3年間で生徒の思考動を図にあるように拡大します。そのためには、一方的に知識を教え込んでいたのでは、何も変わらないのです。

★そこうで思考動を揺さぶる教育を行い、思考動を駆動させるコンセプトレンズを、生徒1人ひとりが見出し組み立て磨いていく教育環境デザインを小島校長率いる教師集団が創意工夫し世界を奔走してつくっているわけです。

★それには、愛と経験と挑戦が必要なのだと若き教師チームは熱く語るのです。そして、それを実現する多様な授業デザインや探究プログラムなどを日々追究しているわけです。

★この思考動のコンセプトレンズが駆動すれば、私立中高一貫校の生徒以上に想いやものの考え方や行動力がパワフルになるのです。もちろん、私立中高一貫校がこの思考動コンセプトレンズを身につけられる環境をつくれば、それは可能ですが、まだまだこの存在に気づいている学校は少ないのです。IBスクールは、この思考動コンセプトレンズを身につけるコアカリキュラムがありますが、聖パウロ学園にも同じような教育環境デザインが今組み立てられています。

★もっとも、このことは、パウロの先生方は自分たち自身では気づいていないのですが、高大連携のプログラムを実施していく中で、そこに立ち会った大学教授や有識者の方々に指摘されてハッとするようです。私がいくら言っても、身内ですから誰も納得しないのですが(汗)。

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2024年8月29日 (木)

聖パウロ学園高等学校 愛ある若き教師チーム

★聖パウロ学園は、夏期講習の真っ最中。9月の学校説明会の参加者も満員御礼。15時までの講習授業が終了後、若き5人の教師と小島校長とパウロの教育や授業の相互主観を生み出すワークショップを行いました。70近い私がファシリテーターでしたから、先生方の気遣いは身に染みました。

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★聖パウロの教育の特色をグルグルアクティビティで、1人ひとり語り続けていきます。聞く側の寛容な姿勢が、パウロの教師らしいなと思いつつ、ウェルビーイングの主観的な想いや哲学的な側面や公衆衛生的な側面から、各教科の専門領域からアプローチして語っていきました。

★こうして言語化を共有することで、相互主観の質が深まっていきます。

★トウールミンモデルをプロンプトエンジニアリングで活用したり、三角ロジックのうちアブダクションを共有したり、思考のスキル的なことも少し共有しました。

★しかし、そのスキルも愛というマインド以上のマインドがあるから、単なる技術として授業で生徒と共有するわけではない本質的な淵にたどりついたところで、チェックアウトとなりました。

★今回のワークショップの雰囲気自体がウェルビーイングな状態でした。本当にありがとうございました。

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2025年中学入試 次の次元に進む私学(06)八雲学園 父親も感動する学校

★私学展の八雲学園のブースを訪れた後、知り合いにバッタリ。八雲学園の娘を通わせている父親です。つもる話を一通りした後、そうそう娘に「お父さんありがとう。八雲学園を見つけてくれて」と言われてねと、目が潤んでいるので、それはよかった、本当によかったと共感を表現しながら、なにかあったのですかと尋ねてみました。

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★すると、中学3年生でサンタバーバラの研修から帰ってきた時、娘の中で世界が何か広がったようなのですと、その感動を伝えてくれたんですよと。

★私立学校とは、生徒にとってのみならず、父親にも、もちろんふだんは母親といっぱい話しているのでしょうが、感動が伝わっていくものなのだと改めて感じった瞬間でした。

★しゅとも9月号には、八雲学園のイエール大学との国際音楽交流についての記事が載ります。9月1日に是非見てください。

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2025年中学入試 次の次元に進む私学(06)かえつ有明 パトスとロゴスが満ちている学校

★私学展が終了する少し前に、かえつ有明のブースを訪れました。満面の笑顔で迎え入れてくださいました。パンフレットなどの資料はと尋ねるまでもなかったのですが、質問してみました。すると宇野先生が「見ての通りです。たくさん用意したのですが、すべてお持ち帰りいただきました」と。要するに2日間で、予想以上の受験生・保護者の方が訪れたということなのです。いつも想定外を楽しみかえつ有明の先生方です。

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★というわけで、非常に人気の高い学校ですが、その理由はちょっと特別です。それはアジキ先生の「満面の笑み」と「指先」に現れています。それは「パトス」と「ロゴス」の両立がなされていることの象徴です。

★生徒は皆ポジティブですが、自然と気持ちの流れがそうなるというのがパトスの源泉です。生徒はみなプレゼンテーションがうまいですが、それは参加したみなと共感したいという気持ちを実現するための論理的スキルを磨いているからですが、それがロゴスの源泉ですね。

★こうしてかえつ有明の雰囲気は、パトスとロゴスが融合しているわけですが、それは「愛」がそうさせています。

★社会課題に気づく経験と対話。それを解決する社会貢献のために起業したいという欲求がうまれてきたら、先生方はサポートします。そのために医学部に行きたい、ミネルバ大学に行きたいというのであれば、それもサポートします。

★いや、一般受験でこの大学に入りたいというのであれば、それもいいじゃないかとサポートします。

★生徒1人ひとりの夢をカタチにするサポート体制は万全です。教師の専門を超えることであれば、そのことがわかる外部人材とつながります。可能な限りサポートし、生徒が先生ありがとう!ここから先はもう自分で行けるよという解放感を生徒は最終的に味わいます。

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2024年8月28日 (水)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(05)富士見丘 グローバル教育の真髄

★東京国際フォーラムでの私学展でもたくさんの受験生・保護者が富士見丘のブースに並びました。7月に行われた首都圏模試センターの合判模試の志望校データでも、冨士見丘は昨年比増だと聞き及んでいます。人気の秘密は、グローバル教育に欠かせない部活動の強さです。テニスは中学でも高校でも全国で優秀賞を獲得するほどです。少林寺拳法も強いですし、模擬国連部も全国大会で活躍しています。

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★そして、多様性の受容システムが凄まじいわけです。留学生や帰国生は、英語は抜群ですが、日本語は不得意という場合、個別最適化のサポートが手厚いわけです。逆に日本の生徒の場合は、英語が得意でないという場合があります。英語のサポートも個別最適化なわけです。そして、英語が得意な生徒にはネイティブスピーカーがさらにその言語の才能を伸ばす個別最適化のサポートをする体制ができています。それは国語が得意な生徒に対しても同様です。

★つまり、富士見丘にとって、英語も日本語も言語としてサポートする個別最適化のシステムがあるわけですね。

★英語や日本語を、学習指導要領の教科の枠組に収めていると、このようなサポートは放置されます。

★教科横断とか学際的という言葉は、今の学習指導要領で注目されているのですが、まずは、指導要領が規定しているカリキュラム越境型ができるかどうかなのですね。教科横断型だけでは、学習指導要領内で、グローバル教育にはマッチングできないのです。この生徒の具体的な才能に応じた個別最適化は、世に言われているものよりもはるかに痒い所に手が届く大胆で細密な学びの環境なのです。これぞグローバル教育の真髄です。

★一般的なグローバル教育はマニュアル的なプログラムが多く、富士見丘のようなグローバル教育の真髄を見落としがちなのです。AIやOCTで個別最適化などと言っていますが、それは教科書内の話で、教科書越境型の対話ベースの個別最適化は、生成井AIでもまだまだできないのです。当面2050年までは、ここは教師の腕の見せ所ですが、富士見丘のような教師陣はなかなか得難いのです。

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2024年8月27日 (火)

SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)感性知の共創施設 疾風怒濤の現代化

★SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)は、渋谷スクランブルスクエアの15階に位置する感性知の共創施設です。産学からの多様な人々が交差・交流し、新たな価値を生み出す拠点になっています。本日東京私学教育研究所の公民の委員会が企画した見学研修会には、20人弱の先生方が集いました。
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(17階の展望カフェから)

★渋谷キューズエグゼクティブディレクターの野村幸雄さんがレクチャーと施設案内をしてくださいました。先生方は、QWZが単なるCOワークスペースではなく、産学から集まった多様な知が越境し交差し協働知をつくることによって、世界を変えるエネルギー態としての新しい価値を生み出す場なのだと興味津々でした。

★QWZは会員制のスペースで、多様なバックグラウンドの人々が集まっています。企業の新規事業担当者、社会起業家、NPO、自治体、学生、クリエイター、ベンチャーキャピタル、大学研究者など、幅広い層が集まっているのです。それに、感性知をゆさぶるアフォーダンスとしてのユニークな空間デザインはクールです。「リフレーミング」というコンセプトのもと、空間に“違和感”をちりばめることで、訪れる人の感性を刺激する設計と渋谷を一望できるランドスケープが地平線から非日常の感性知を運んできます。

★その会員メンバーが多彩なイベントとプログラムを生み、社会貢献活動や起業を生み出していく拠点でもあり、先生方は生徒を巻き込むには資金面ではどうするのか野村さんに質問していました。オーディションや奨学金のようなシステムに相当する設定があり、それを活用したり、3人以上でチームをつくれば、1人あたりの会費がリーズナブルになるので、さっそくチームを創ろうという動きをとる先生方もいました。

★それほど、魅力的な感性知の共創拠点です。

★野村さんのレクチャーの中で、リチャード・フロリダ教授の「クリエイティブクラス」の話がでてきました。彼らが創り出すクリエイティブシティが渋谷の再生のコンセプトのようです。

★このクリエイティブクラスの概念いついては、落合陽一氏も注目しています。

★今後世界の70%は都市化すると言われていますが、その都市のコンセプトデザインをどうするのか、アイデアと高度技術が交差する感性知が生まれる渦が巻き起こっています。

★理性よりも感性を重視したドイツの疾風怒濤時代や野生の思考を生み出した文化人類学の時代のフュージョンがこのQWZにはあるような気がしました。

★このような拠点で教育がときどき展開していくことは面白いし、今回集った先生方は、これからの教師像のロールモデルだと感じる感性を持ちえていました。

★すでに聖学院や実践学園女子はQWZを活用しています。なるほどなと改めて腑に落ちました。

★問いの感性を磨き、世界を変えるバタフライ効果を生み出すとは聖学院の伊藤校長の発想でもあります。伊藤校長は、この感性を磨き世界を変えるメタ感性としての感性知を実は日々言語化しています。

★産学共創のこのQWZの多様な対話の向こうにこの感性知があるし、その感性知が問いを生み出します。感性だけだと得意不得意がやがて生まれ、共創が競争になります。そこのところをしっかり見据えているのが聖学院の感性知です。

★でも、そこに気づく人はわずかでよいのです。要は楽しくてインパクトのある感性の問いが生まれてくることがイノベーションを生みだすレバレッジポイントであることは間違いないでしょう。とはいえ、イノベーションは必ずしも善ではないのです。この人間の不可解さ。エラーもあって人間です。AI社会にあってこの不可解さは許容されるでしょうか。

★リチャードフロリダは、タレント、テクノロジー、そしてトレランスがクリエイティブクラスには必要だと。マルクス・ガブリエルの「倫理資本主義」と親和性のある構想を描いていますね。

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2024年8月26日 (月)

探究の次の次元が見えてきた~2027年新学習指導要領

★2027年以降に新学習指導要領の改訂の方向性は、時代と共振するので、どうなるか予測しやすいですね。国立教育政策研究所も表立って新しい学習指導要領の方法論的な研究はまだ公表していません。では改訂する予定はないかというと、そんなことはあるはずがないのです。2027年はSDGsの到達目標年2030年前夜に相当します。これを無視した動きになるはずがありません。

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(たとえば、ムーンショット目標4とムーンショット目標10の場合)

★すでに内閣府は2030年から2050年までにウェルビーイングな地球をつくる国家的規模の開発事業を始めています。2020年ころから公開され始め、現行学習指導要領の本当の目的がこれだったということがわかります。グローバル教育やSTEAM教育、そして両方をまとめる「探究」は、この開発目標を拡大できる高度人材を確保するために教育のピッチを上げたのでしょう。とはいえ、まだムーンショット目標に飛べるほど熟してはいません。

★一方で、国のために教育があるわけではないという方もいますが、今や政財官学と個々人が協働して地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクに立ち臨まなければどうしようもない地球及び人類の危機に向かっているのです。

★もちろん、それに賛同するもしないも私事の自己決定ですから、それぞれが意思決定すればよいのです。

★しかし、学習指導要領は包括的な公の教育を創出するので、そこはムーンショット目標に掲げられた高度技術を理解しあるいは自ら高度技術を創造するようなクリエイティブクラスを生み出す必要があるのです。

★ムーンショット目標は10個ありますが、それぞれつながっています。目標10が今年加わったことにより、それが見える化されました。化石燃料を使い続けて社会課題を解決しようとしても、元の木阿弥なケースが多いわけですが、核融合によって1グラムで8トン分のエネルギーが創出されるならば、あくまで理論的な数値でしょうが、かなり希望がもてます。温暖ガスも排出しないし。

★そのためには、そうなればよいとかそうなるべきだか道徳的な言動だけでは足りず、文理融合的な技術を駆使して、実際に生み出していく高度技術の知が必要です。

★グローバル教育やSTEAM教育、そして探究はまさにこの次元に飛べるようになっていくでしょう。高大連携も今のところこの技術においては中高と大学はギャップがあり過ぎますから、そこを埋めるプログラムが発動するでしょう。

★そうはいっても、中高段階でそのような施設はないですから、その前提の「問いの力=思考動コンセプトレンズ」を同時に身につけるプログラムを開発する必要もあります。

★高度人材は思考動できるエンジニアリングやテクノロジーを駆使していくことになるからです。公共政策や公衆衛生、地球規模の災害対策なども構想しつつ。

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「問いの力」AI社会でも変わらないコンセプトレンズ創出力~福島県私学教育研修会でWSを実施して

★8月22日・23日郡山で、福島県私学教育研修会の「教育課程部会」で、5時間のWS(ワークショッ)型研修を実施しました。主催の福島県私立中学高等学校協会の教育課程部会の大テーマは「新学習指導要領とこれからの授業デザイン」です。それをうけて「問いの力~授業と探究と教育活動を有機的に結合する」という小テーマに焦点をあてて、5時間先生方と楽しみながら深まっていきました。

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★かつて聖パウロ高等学校で校長をやりながら当時の企画戦略室室長・広報部長・数学副主任の伊東竜先生(今は互いに違う教育研究所に勤務)とコラボして「数学の時間」や「探究の時間」、「総合型選抜WS」、「保護者との対話WS」を実施しながら、トリニティークエスチョンを、生徒自らが解決したり、自らそのようなクエスチョンを創ったりするメタ問いであるコンセプトレンズとしての「問いの力」を見出すWSを教育一般化して開発したプログラムを、福島の先生方が受け入れれくださり、行えました。

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★今年ムーンショット目標に10個目「フュージョンエネルギー(核融合エネルギ)」が加わり、いよいよ2027年以降の新学習指導要領の方向性が見えたこともあり、身体を動かしたり(ロボットアクティビティ)、クロスクエスチョン(トリニティクエスチョンの1つ)を考えたりとチームで行いながら、なおかつ、参加者一人一人が幾度も「プロンプトエンジニアリング」をしながら、WSを進めました。

★昨年プロンプトエンジニアリングはまだ活用しなかったので、参加者は少し腑に落ちない部分もあったようでしたが、今年リピートしてくださった先生からは、非常に腑に落ちたとフィードバックをもらえました。

★プロンプトエンジニアリングはセルフPI(ピアインストラクション)で、リアルPIとディスカッション、アクティビティという協働的な活動の中に織り込むことによって、参加しながら自分の軸が見えてくるようです。

★それも伊東さんが、グーグルフォームなども使いながら、生成AIのアドバイス(初めて活用される先生もいました)をしながら、スマートに進めてくれたからです。私は東大や京大などの先生方との経験やリベラルアーツ的な知の背景をゴツゴツした感じでところどころ講義をするだけでした。30歳の教師と70近い元校長とのコラボなのですが、その知性の新しさと古さの違いが分かり、それも参加した若い先生方に希望と勇気を抱いてもらえたのではないでしょうか。

★伊東さんと私の共通点は、数学的思考(コンセプトレンズの根っこ)と対話型授業を楽しめるということです。そして「思考コード」を共有しています。それがなければ、こういうコラボは続かなかったでしょう。そこに生成AIの登場です。それが使えたので、WSでの思・考・動(情緒と思考と行動)の回転速度を加速でき、この類のWSを開発できたと思います。来年は、さらにおもしろいことになりそうです。

★私自身は、青山学院大学教授の若き俊英香川秀太教授の研究に親和性を感じています。別の研修にもご登壇いただきました。そこに参加した聖パウロ学園の小島校長も共感し、さっそく学内の研修でお招きする話が進んでいます。

★AI時代になっても変わらない生き方があるというのが、香川教授の軸ですが、先生自身最先端の情報分野で研究されています。そして商業経済と人間経済との循環というか融合のアイデアを持っています。生成AIやICTをどこまで道具として人間は活用していけるのか?を研究テーマの一つとしていると勝手に思っています。

★私は人間の最高の道具は「記号(言語と数学の両方の言葉)」だと思っています。私たちは自在に使う言語を道具だとは意識しないでしょう。手などもまたものを掴む道具でありながら同時に私自身のアイデンティティの1つのあり方です。

★しかし、一方で私たちは自分の言葉に溺れ、数学的思考を日常生活では関係ない道具としてみなしてしまうことがあります。それはAIやICTについても同様です。そうなってくると、人間自身の本来的なあり方を創出していく「問いの力」もまた消失するでしょう。そのとき人類は危ないですね。ですから、そうならないようにウェルビーイングな地球を問い続けていける「問いの力」を多くの方といっしょに探していきたいというのが伊東さんと私の願いです。

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2024年8月23日 (金)

教育の研修デザインの要素

★今年の夏も小田原に木更津に郡山と宿泊研修が続いています。これらの教育関係の研修を通して、テーマや対象者が違っても共通しているプログラムデザイン要素があるなと感じましたので、メモしておきます。

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★やはり、リアリティのある本質的な対話(エッセンシャル・ダイアローグ)がなんといっても大事で、互いの苦悶が共有され、共感共振共鳴が生まれ、何とかしたいという欲求が生まれます。パトスですよね。これが生まれる環境設定がまずは大事だなあと。

★そして、パトスはそれだけでは目には見えないので怪しげなので、カタチにする編集が必要になります。

★そのとき数学的思考(マスソート)は数理的モデリングをしてデータサイエンス的な手法を使います。エンジニアリング的な最前線の発想も必要ですね。そして燃えるようなアーティスティックな創造性(クリエイティビティ)とマーケットの支持が得られるかもポイントです。

★教育における知は、知財の問題を回避できないので、リーガルマインドについても相互モニタリングできるようにしておく。

★いろいろな研修やワークショップの手法はありますが、これらの8つの要素というか視点が広がるようにプログラムデザインするといい感じかなあと。

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2024年8月22日 (木)

松岡正剛さん逝去 独自の関係総体主義

★編集工学研究所のサイトで、松岡正剛さんの訃報のお知らせが掲載されています。8月12日にご逝去されたということです。享年80歳ということです。1996年に単行本「知の編集工学」を手にとって、いずれお会いしたいなあと思いつつ、5年の歳月が過ぎたころ、Honda発見体験学習という宿泊系のPBLのプログラムをデザインした時に、Honda本社でセミナーをご一緒させて頂きました。

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(1996年に単行本として世に出て、2023年に文庫化)

★1990年ごろから1995年にかけて、私は、ある中学受験塾の国語のカリキュラムの大改訂編集作業にかかわっていました。ヴィトゲンシュタインやハーバーマス、ベイトソン、認知科学などの知見を具体化するにはどうしたらよいのかコンセプトを仲間と議論し提案書を長々と書いていました。要素還元主義から関係総体主義へとかものとことの相互往還や相互主観性が生徒のモチベーションにかかわるなあと思いつつ、廣松渉さんや宮台真司さんの知見をそのまま中学受験で表現することはできないと考えあぐねていました。「わかりやすく」と仲間から言われ、それなりに収めましたが、納得いかず、その後教育研究所に移行するにあたり、私立学校と今でいうPBLの授業勉強会を重ねていきました。

★95年にWindows95が世に出ていましたし、インターネットも世に出ていたので、PBLとICTを掛け合わせてるルーブリックをサイト上で集計できるシステムをつくっていました。

★そのときに、松岡正剛さんの「知の編集工学」に出合い、PBLのプログラムやディスカッション、プレゼンの内的関連性こそ知の編集工学で要素還元主義から関係総体主義へ学びを転換するレバレッジだと直感したのです。

★そんなこんなことを行っていったとき、Hondaのツインリンク茂木で宿泊体験学習のプログラムデザインのプロデュースをする機会に恵まれ、そのスタートセミナーに松岡正剛さんにご登壇いただいたわけです。

★その後も、幾つかの私立学校と松岡正剛さんのICTソフトを使った協働授業をコーディネートしたり、松岡正剛さんの「日本の文化」に関連するセミナーにも顔を出したりしていました。

★その後、独立して私立学校のサポーターとして先生方と21世紀型教育を創っていくわけですが、グローバル教育と今でいうSTEAM教育、現代化リベラルアーツ、英米の哲学の授業化、数学的思考による問い作りなどをしている間にも、ずいぶん松岡正剛さんの流儀とは離れてしまいましたが、「編集工学」的発想を持ち続けていたし今もいると思います。

★未来社会をバックキャストする時に落合陽一さんの発想にも学んでいますが、その落合さんと松岡さんの対話が今年流されているのを昨日しり、久しぶりに聞き入りました。その番組の最後に落合さんが、40歳の松岡正剛さんに言葉をおくるとしたらなんて言いますかという問いに、松岡正剛さんは「あの時、近江にいっていたら」とかなんとか言っていました。

★松岡正剛さんの巨大な知に遠く及ばないのですが、その番組で「ベイトソン」と「近江」への思いが共通しているのを改めて知り、嬉しく思いながら、せっかく頂いた出会いをきちんと持続できなかった自分の浅薄な知を反省しています。遅まきながらもうちょっとだけ深化させようと思うわけです。言うまでもなく、松岡正剛さんの知にはまったく近づくことはできませんが。私にとって数少ない憧れの日本人智慧者松岡正剛さんの魂がこれからも多くの方に分有されることを心から祈ります。

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2024年8月21日 (水)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(04)女子美と世田谷学園と日駒

★本日の日本経済新聞の春秋で、戦後79年を美術教育を通して語るエッセイが掲載されていました。ある展覧会で、小学生の優秀作品が展示されていましたが、自由な表現が評価されていたのを見て、明治からの歴史を振り返っています。日本の美術教育は、明治初期に欧米の影響を受けて始まり、産業に役立つ実用性が重視されました。太平洋戦争中は軍国主義的な教育が行われました。それが戦後は自由な表現が重視されるようになったと。おそらく平和な社会における教育とは何かを問い続けたいということでしょう。

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★私学展で、中学から美術のカリキュラムがしっかりしているところはありますかと受験生・保護者から問われるケースがたびたびありました。女子受験生の場合は、女子美が第一志望なんだですが、併願としてという質問でした。男子の受験生は、女子美のような美術のカリキュラムがある男子校もしくは共学校はないですかという質問が多かったですね。

★女子美は、明治以降まだまだ男性中心社会に女性の感性を世の中に発信し、芸術マーケットに寄与してきました。もちろん、芸術のマーケットがそもそも日本では英米や東南アジアの国々ほどないので、ジェンダー問題と学力偏重教育という二重のジレンマの中で逞しく道を拓いています。しかし、ストイックな本質的な心性はカワイイデザインやアートの背景の奥に置いて、めちゃくちゃ楽しく、それでいて集中した自分の時間を過ごせる教育環境デザインになっています。そこが人気なのでしょう。

★世田谷学園は、再来年に美術と工芸を融合した新しい「アトリエ」棟が建設される程、男子校では美術教育がしっかりしています。内面の静かなる炎を表出する自由が、世田谷学園の坐禅とシンクロしている雰囲気の人気の学校です。

★そして、共学校としてアートに力を入れられる贅沢な環境を持っているのが、日本工業大学駒場です。かつて工業系のコースもあったので、その当時の専門的な施設が今も活用されています。今は普通科で、グローバル教育や探究教育にもこのところ力を入れていますが、STEAM教育はもとから行っているという雰囲気です。そもそもすてきな空間の校舎自体がOBによる設計です。

★歴史に翻弄されながらも、自由と平和を持続可能にする教育とは何か、建学の精神を軸にブレずに問い続け、実践しているのが私立学校です。

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2025年中学入試 次の次元に進む私学(03)女子学院と聖ドミニコ学園

★今年の私学展の各学校のブースは、シンプルなものが多かったですね。たとえば、女子学院と聖ドミニコ学園。従来は宗教的な理念を前面にだすと生徒募集に支障をきたすとか言われてきました。今でもそういう傾向は残っているでしょうが、勇気をもってあるいは未来に導かれてか、キリスト教主義の学校はそこが今大事なのだと表現しています。強欲資本主義が生み出してきた人間の本質を損なう悲惨な事件が世界中で見える化されtきているということもあるでしょう。ドイツの若き俊英の哲学者マルクス・ガブリエルが「倫理資本主義」などという書物を書き上げているということも世の中の次への希望を希求しているという象徴かもしれません。

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★女子学院のブースでは、同校の探究活動の理念を表現していました。同校は学習指導要領が「探究」を打ち出すずーっと前から探究的な活動を行ってきました。論文編集作業とその論文を基に小説に転換するというリベラルアーツ的な学びは、プロテスタントの学校の面目躍如ですね。

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★マックス・ウェーバーは今も読み継がれていますが、プロテスタントの勤勉・禁欲というエートス(倫理的価値)が近代資本主義を生み出す大きな要因で、なおかつウェーバーは同時にそのシステムは、より無駄をなくし合理的で効率よくなるのは当然だったと。そして、その弊害は予測していたでしょう。ニーチェを意識していたでしょうから、本質がなくなったとき、そのシステムは暴走すると、だから「政治」は大事だと。しかし、その政治も本質を見失ったとき、元の木阿弥ですね。このシンプルなジレンマを調整する歴史が近代から現代社会にまで続いていて、その強欲資本主義に耐えられなくなってきてリスク世界が到来した限界点に気づき始めたのが、今の学習指導要領にも埋め込まれています。社会課題を主体的に発見し、対話をしながら解決への道を深めていく学びをというわけでしょう。まさに女子学院が行ってきたことです。

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★聖ドミニコ学園は、そのマックス・ウェバーが、プロテスタンティズムの倫理が資本主義を生んだモデルは、カトリックの修道院のシステムだと語っているそのカトリックの価値観をアリストテレスの哲学と融合させて言語化したのがトマス・アクイナスですが、彼はドミニコ会士です。そのトマス・アクイナスに影響を与えた修道院の創設者聖ドミニコの精神を現代化しているのが同校です。

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★ドミニコの精神をベースに探究活動を行っていますが、それを「ドミニコ学」と名付けています。女子学院の3分の1のスモールサイズの学園ですから、目立ちませんが、大学合格実績や海外大学進学も着実に成果をあげています。グローバル教育とSTEAM教育をドミニコの世界の歴史に影響を与えた「対話」を土台に実践しています。

★現行の学習指導要領や世の中の新しい学びのコンサルタントが「対話」が大事だと活用していますが、その本質的な「対話」のマニュアルは、トマス・アクイナスが言語化しています。すでに700年以上前に。そして、そのマニュアルがパリ大学をはじめ、当時の大学の言語活動を規定していったのです。そして、驚くことに今もなお。聖ドミニコ学園では「ドミニコ学」で生徒が言語化する活動は、この精神のエッセンスを大切にするのは言うまでもありません。

★この想いと考えと活動が、実は、修道院が創ってきたシステム(時計を開発し、鐘を鳴らしていたのも修道院)を現代化してモデルにすることにならざるを得ない世界のスマートシティー化(世界の70%は都市化すると言われている)の時にダイレクトに役立つことは今はまだ気づかれていません。

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2024年8月20日 (火)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(02)海城

★私学展の2日目早朝、海城学園御ブースでは塩田先生が準備をしていました。「15分で海城を知る」というスライドでポスターセッションを1日で18回行います。その準備です。塩田先生をはじめ、何人かの先生と手分けして行うわけですが、会場の暑さを上回る熱量でプレゼンする先生方の姿に、授業の時と同様だなと、素晴らしい本質的PR、つまりブランドアクティビズムの真骨頂だなと感じました。

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★初日は、大迫校長が先生方の様子を見守っているところに遭遇しました。久しぶりだったので、少しお話をきくことができました。日本にIB200校をという計画を文科省がたてたときの立役者の一人です。そのときに、IBと日本の教育の行方についてごく少数の仲間と先生を囲んで対話をしたことを思い出しました。21世紀型教育を創る会(現在「21世紀型教育機構」)を立ち上げたばかりのときで、新しいグローバル教育を生み出す大きなヒントを頂きました。

★大迫先生はいくつものIB校を創ってきましたが、それはIBを導入することによって、その学校が足りなかったものを補完し、よりよい教育を生み出すことにはなったけれど、海城レベルの日本の私立が校は、IBのエッセンスをすでに独自に開発して持続的に進化させてきたのだから、それはIB以上の教育だとフィードバックすれば、さらに学内で自分たちの教育の世界性を再認識できるのだと語るのです。

★なんでも海外の教育が日本の教育より優れているというわけではないのだという世界的視座を持った大迫校長。海城はまたもおもしろくなるなあと感じました。サイードではないですが、日本の教育者ももしかしたらオリエンタリズムの呪縛から解放される時が今なのかもしれません。

★何度か海城のブースに立ち寄ったのですが、同校の教育研究所の中田先生は、いつもポスターセッションでプレゼンしています。2日目の最終間際に、汗をタオルで拭いながらようやく私の出番は終了したということで、お話を聞くことができました。

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★海城は、もう30年以上も前から、専門的な知識と非認知能力、メタ認知能力、創造力など深くゆたかな思考動を生徒が身につけられるプログラムを言語化し実施してきました。海城の歴史をきっちり振り返り、そお建学の精神が歴史によって劣化しないように、時代の光と影を見極めながら強くて賢くて優しい海城生を輩出してきたわけです(海城は当然ながら昔から上記の座標Ⅰ象限に位置します)。

★この30年の改革を牽引してきたリーダーの一人が中田先生で、いつも対話していただき、時代を読み解き、次なる希望のヒントを勉強させて頂いてきました。今回も、すでにこの境地にいるのだからもう質の充実進化でよいのかなと思っていましたが、それは私の浅薄な考えであるとすぐにわかりました。教育研究所の3つの新たな目標があるのだというのです。それについては、いずれ公開対話をしたいと思っています。乞うご期待。

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2024年8月19日 (月)

2025年中学入試 次の次元に進む私学(01)文化学園大学杉並

★2日目の私立学校展早朝、準備のため会場を歩いていると、文化学園大学杉並のブースで理事長松谷先生と入試広報部長の西田先生がスタンバイしていました。ダブルディプロマに中学から接続できる体制を整え、非認知能力も認知能力も、メタ認知能力も身につけて、社会の困りごとを生徒の興味関心ある学びの分野で解決してくリーダーがたくさん輩出されている学校として、人気が高い学校です。

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★現行学習指導要領に変わる議論が行われる前夜である2013年あたりを機に、私立学校は、難関大学に合格するための知識力という認知能力を豊かにする学びだけではなく、モチベーションや情熱、考える力、行動する力といった思・考・動の非認知能力やメタ認知能力を豊かにする学びも開発していきました。

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★文大杉並も同様です。生徒がⅠの教育環境の中で学び時期は、久しくたちました。

★ですから、同校は、このⅠの領域を足場に、いよいよ新たな次元にシフトする準備ができたと認識しているようです。それが何であるかは、これからのお楽しみだそうです。それにしても、不易と流行の循環が次元を変えていく広がりに転ずる仕組み、そのコアは何でしょう。松谷理事長は、1つは何といっても人材戦略ですねと語る。確かに、今人的資本を豊かにすることは、教育の世界を超えて共通の課題です。

★私立学校の経営者として松谷先生の手腕はさすがです。

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2024年8月18日 (日)

東京都私立学校展2024 各私学の魅力が充実している雰囲気になった 新たな次元への準備ができたというコト

★昨日と今日東京都私立学校展2024が開催されています。多くの受験生・保護者が参加しています。各私学のブースのギャラリーはこれまでとはがらりと変わり、学校名をドーンと貼り出したり、建学の精神やその学校の象徴的なイメージを表現する写真をドーンと貼り出していて、ポスターセッションのようなアピールはかなり少なくなりました。各ブースで丁寧に対話をしたり、スライドで説明をしたり、要は眺めてわかるのではなく、対話をして理解を深めようというカタチが多くなったと感じました。

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★これは、何か売り物とか目玉は何かという従来型の広報戦略ではなく、それぞれの私学のトータルな教育を丁寧に対話し理解を深めようという熱のこもった雰囲気が広がっています。

★さらに、ある意味残念ながら、受験業界側からまだまだ偏差値によって学校が輪切りされているため、知識量や知識の活用速度がそれぞれの私学によって偏りがあるのは、今も事実です。しかし、その知識量や知識速度の差異はあるけれど、思考の速度や深さはかならずしも偏差値に比例しないということも一方で事実です。したがって、それぞれの偏差値層の生徒が1人ひとり思考力や表現力、行動力という基準で大きく成長することができる私学が増えてきました。

★大学入試も総合型選抜で、知識量<思考力の質で合格できる制度改正が行われているため、どの私学でも東大を狙えるし、海外大学も合格できる時代になりました。2027年にはそのような動きは加速します。

★それゆえ、現段階の入口では偏差値的な差異はあるのですが、入学してからは、偏差値にかかわりなく、生徒1人ひとりの具体的な状況に合わせて、成長のシナリオを生徒と一緒に教師が歩んでいける自信が各私学に広がっています。

★そして、それがゆえに、生徒が自分のやりたいことを追求できる様々な教育プログラムやデザインがされていますから、それぞれの私学が、自身の学校のトータルな教育を丁寧に語っていくというカタチに移行したのでしょう。

★この各私学の自信と気概の充満。これは新たな次元へ移行する準備ができたということだと思います。

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2024年8月16日 (金)

極めて当然だけれど改めて重要な「個性」の質の大きさ フュージョンの時代へ

★工学院大学附属の教頭田中歩先生が同校中3のオーストラリアの研修から帰国して、メールを頂きましたが、やはり生徒のリアルな成長がすばらしかったようです。今度詳しくお聞きしますが、歩先生の生徒中心主義的な学習観(学習者中心主義と学校の公式用語では言っていますが、歩先生の教育活動は先鋭的な生徒中心主義だと勝手に思っています)はゆるぎないなあと感じました。徹底的に生徒が成長がする教育環境デザインをするのだけれど、歩先生の「知」は教師側から見た「学校知」ではないのです。経験的な知も学校知に回収されがちですから、そのような経験も大切にしていますが、学校を超える“One Earth”としての「超学校知」の環境もデザインしています。

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★学校知はクリエイティブティを支える基本的な世界の原理を学ぶところです。学習指導要領だけでは足りないので、工学院は破格のグローバル教育やSTEAM教育を実施しているし、その両方を探究活動にうまくつなげています。その基本原理を使うわけですから、生徒は同じように思い、考え、行動するはずなのですが、当然そうはなりません。

★それぞれ個性がありますから、それぞれ独特の思いと考えと行いが表出してくるのです。そこにクリエイティビティが生まれているわけです。しかし、学校知はやはり日本の国の制度的な制約は免れません。しかし、海外大学など進学する時、それ以外の知が必要になります。

★しかし、それは世界の基礎原理が足りないということではないのです。原理は世界共通ですから。では何が違うのか、それは「個性」です。当たり前のことを言うようでなんだということなのですが、でも実際は、その個性は主観的なことで、客観的な原理を優先するというアンコンシャスバイアスが意外とあるものです。

★歩先生は、生徒中心主義という活動を身体を張って遂行しているのは、この「個性」の質の大きさを大事にしているからです。だから、オーストラリアで成長する生徒の姿に感動できるのでしょう。もちろん、オーストラリアにもオーストラリアの学校知があるのですが、日本とはまた違うところもあるのです。世界を経めぐる工学院は、このズレを生徒が感じ取る対話力を育てています。

★このズレの融合体が、「超学校知」になるわけです。超学校知×学校知が、個性と社会貢献を生み出す工学院の教育なのだと改めて感じるわけです。フュージョンの時代です。

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2024年8月15日 (木)

2027年東大が創設するCollege of Design(仮称)の文理融合的な実用的変革 中学入試に静かに影響

★今年2月に、東大は2027年秋に文理融合型の新教育課程「College of Design(仮称)」を創設する発表をしています。学士課程4年間、修士課程1年間の5年制で、秋入学。1学年100人程度。グローバル入試により、国内外から才能豊かな学生を獲得しようとしているということです。

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★発表から約5カ月が過ぎ、だんだん見えてきたのが、2027年学習指導要領改訂に影響を与える伏線になっていること、高度人材を本格的に中高段階から養成する動きになることなどなどです。

★東大総長の藤井教授も、初等中等教育段階での、グローバル教育とSTEAM教育を強く要望しています。もっというなら、グローバルアントレプレナーシップということでしょう。もちろん、そのベースにはAI社会に対応するスタートアップの想いがあるのでしょう。

★基礎学力は当然必要ですが、それに加えてグローバルな実用的なスキル、STEAMに関する実用的スキルが求められています。それは大学に入ってからというのでは、この新しい文理融合型のシステムは受け付けないでしょう。

★これは、他の大学にも影響を与えます。おそらく総合型選抜の条件や中身が大きく変わります。

★今までのは、まだまだ発想や思想的な側面が濃かったのですが、もっとプラグマティックな総合型選抜になるでしょう。

★この動きに速く乗り出すのが、公立中高一貫校のようにまたまた公立です。モデルグループをつくってすぐに動く資金が教育委員会にはありますから。

★もちろん、私立学校はそれを見通していますから、それを上回るプラグマティックな動きをしますが、資金は潤沢ではありません。ところが、この東大の文理融合的な実用的変革は、受験勉強にあまりお金がからないのです。

★従来型の塾・予備校では対応できないので、学校が独自にまず開始しなくてはなりません。その準備ができている学校が、私立公立問わず、注目されるようになるでしょう。それは中学受験においても同じです。それはどこか?台風の影響が少し心配ですが、17日と18日、私立学校の合同悦明会が国際フォーラムであります。今日の15時で締め切りますが、ぜひ参加してリサーチしてみましょう。

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2024年8月14日 (水)

22世紀社会の最近接進化領域を導く田中歩教頭

★今年の4月工学院大学附属中学校の教頭に就任した田中歩先生とは、大学の同窓ということもあるし、21世紀型教育機構で生徒中心主義的な新しい学び(グローバル教育×PBL型教育×STEAM教育)を共創する盟友(と私が勝手に思っている)ということもあって、「対話の連続」状態です。がしかし、教頭という役割があまりに多忙でかつ同僚と生徒との対話の銀河系の渦にいます。今もオーストラリアに中野校長と中3の異文化体験研修に行っています。それゆえ、対面で会ったのは5月に一度で、メールとか携帯でとでしか対話ができていない状態です。

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★田中歩先生は、21世紀型教育機構の22世紀型教育研究センターの所長でもあるので、今の目の前の生徒が、2101年には、すでに高齢期に達しているのだから、生徒自身が22世紀社会を創っていく教育環境デザインをどうするかを常に試行錯誤して活動しています。

★私も、それは同じ想いでいろいろ思案しては、歩先生とこんなのはどうかなあと、あっ、それは生徒中心でいいですね、自分のIBLとも共振するので、やりましょうとかなんとか対話しています。

★ここのところ、私はムーンショット目標とプレ22世紀型教育をどうつなげるかという話を書いてきましたが、改めて「2024年中学校新教頭、田中歩先生インタビュー」を読んでみると、すでに4月の段階で、歩先生はわかりやすく22世紀型教育とその生み出す効果を俯瞰しているのがわかりました。さすがです!

★田中歩先生の考えとムーンショット目標について私が考えていたことを合わせると、次のような図になると思います。すでに歩先生は、グローバル教育×探究×STEAM教育の学校文化を先生方と生徒と共創してきました。今はIBLによって、対話による生徒自身の問い生成とそれを生み出す泉である「知」を言語化するまたも新しい学びに挑戦しています。「道徳」に着目しているのは、同世代の新進気鋭の哲学者ドイツのマルクス・ガブリエルの「倫理資本主義」と共振しています。

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★帰国後、どこかで対面で対話しようと約束しているので、そのときにまたこの図はこう変えようということになるでしょう。無事ご帰還を!

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2024年8月13日 (火)

2027年新学習指導要領 経済面が強く影響?

★2027年に改訂予定の新学習指導要領。中教審の動きを見ながら推察していくと、基本現行の学習指導要領の内容を変えるつもりはなさそうです。ただ、STEAM教育(積極的に中教審では、この言葉は使われていませんがDXと使っているし、文理融合も唱えているので、この教育を想定しているとみてよいでしょう)とグローバル教育という名の時空を超える教育は、多様性の背後にしっかり位置付けられていくでしょう。しかも、この多様性は、国の違いだけをいうのではなさそうです。

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★こうなってくると、この2つの教育の背景には、イノベーションによる経済活動への寄与ができる人材づくりというのが見え隠れしてきます。教科学習の是非は、教育的価値よりも経済原則によって決定されているというのがよくわかります。

★人間の在り方をカタチづくる教育に各教科の基礎学力が必要だというのは、実は今までの資本主義経済活動を動かすために必要だっただけで、人間の本質的な在り方を支えるための基礎学力ではどうやらなかったということかもしれません。

★ですから、つい先ごろ行われた令和6年8月9日(金)中央教育審議会初等中等教育分科会(第 145 回)で配布された資料の中に、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024 年改訂版(主な初等中等教育関係記載の抜粋)」があったわけです。

★これはいうわまでもなく、デジタル田園都市構想の一環の話です。

★ここにきて、2050年を目標とした10個のムーンショット目標が定まり、「ムーンショット目標8」のシンポジウムでは、東京都教育委員会が後援するといころまできています。

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★そして、「ムーンショット目標2」のプロジェクトの図が示すように、どの目標も学際知という文理融合的な科学技術が展開されるわけですが、そこに共通して現れてくるのが数理モデルというデータサイエンスです。

★現行学習指導要領の「探究」という学び方は「グローバル教育」「STEAM教育」の両方で重要な方法論です。地球規模の課題を解決するイノベーションを生み出すクリエイティビティ創発のトレーニングがより強調されます。

★そのための継続審議項目が、昨年出された「高等学校教育の在り方ワーキンググループ 中間まとめ」(令和5年8月31日)で次のように明記されています。

 • 生徒の多様な学習ニーズに応えるための遠隔授業配信センターの体制等の在り方について
• 全日制・定時制・通信制という課程の区分に関して、実態等も踏まえた、その在り方の見直しについて
• いずれの高校においても、全ての生徒の可能性を引き出し、生徒が、社会の一員となるための多様な資質・能力を身に付けた上で次のステップに移行することが可能となる教育システムを一層構築するために、必要な取組とその支援の在り方について
• 「総合的な探究の時間」を教育課程の基軸に据えながら各教科等における学びを充実させるとともに、文理横断的な学びや実践的な学びを一層進める上で必要な体制・環境について
• 次期高等学校学習指導要領に関して、内容をおおむね堅持しながら学校現場への浸透に時間をかけていくべきなどの各種意見等も踏まえた、今後の望ましい在り方について
• 高校がやるべきことの整理・明確化、学校における働き方改革の推進や、教職員の配置を含む高校の指導体制の充実のための方策について

★さりげなく書かれていますが、ここには、柔軟にSTEAM教育、グローバル教育、文理融合、実用的な学びとしての教養、人的資本経営などを押しすすめていく制度的な体制づくりをしていくよというねらいが見え隠れしています。日本経済再生のために。それは前回もご紹介しましたが、「ムーンショット目標10」が付け加わったことで、より強まったと思います。

★私立学校は、この新しい資本主義体制に対して、明治近代化の影をモニタリングしてきたように、本当にウェルビーイングな新しい資本主義になるかどうかモニタリングはし続けながら、日本の教育に貢献していく構えになると思います。

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2024年8月11日 (日)

ムーンショット型研究開発が進み始めている 結びつくか初等中等教育

★2020年から順次ムーンショット目標が設定されその目標に向けて科学技術開発プロジェクトが立ち上がっています。2023年には、目標10が設定されました。このムーンショット目標について、内閣府のサイトでは次のように記載されています。

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ムーンショット目標
全ての目標は「人々の幸福(Human Well-being)」の実現を目指し、掲げられています。将来の社会課題を解決するために、人々の幸福で豊かな暮らしの基盤となる以下の3つの領域から、具体的な10個の目標を決定しています。[総合科学技術・イノベーション会議決定(目標1~6:令和2年1月23日、目標8,9:令和3年9月28日、目標10:令和5年12月26日)、健康・医療戦略推進本部決定(目標7:令和2年7月14日)]


①社会:急進的イノベーションで少子高齢化時代を切り拓く。[課題:少子高齢化、労働人口減少 等]
②環境:地球環境を回復させながら都市文明を発展させる。[課題:地球温暖化、海洋プラスチック、資源の枯渇、環境保全と食料生産の両立 等]
➂経済:サイエンスとテクノロジーでフロンティアを開拓する。[課題:Society5.0実現のための計算需要増大、人類の活動領域拡大 等]

★そして、昨年設定されている目標10については、次のように内閣府のサイトには掲載されています。

ムーンショット目標10
2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現

ターゲット
・2050年までに、様々な場面でフュージョンエネルギーが実装された社会システムを実現する。
・2035年までに、電気エネルギーに限らない、多様なエネルギー源としての活用を実証する。
・2035年までに、エネルギー源としての活用に加えて、核融合反応で生成される粒子の利用や要素技術等の多角的利用により、フュージョンエネルギーの応用を実証する。
注:フュージョンエネルギーは、軽い原子核同士(重水素、三重水素)が融合して別の原子核(ヘリウム)に代わる際に放出されるエネルギー。太陽や星を輝かせるエネルギーでもある。 

★このムーンショット型研究開発制度は、SDGsを継承するものです。2030年から2050年にかけて達成する目標が掲げれているところからも明らかでしょう。また、Society5.0の社会からSocietyXへ転換させる政策でもあります。大学やシンクタンク,企業が連携して研究開発しているので、知財の問題もあり、具体的な技術が必ずしもメディアによって公表されてこなかったこともあったのでしょう。わりと静かに進められてきましたが、ここにきていろいろな成果やその周辺技術が次々と発表されてきました。

★医療や気候変動、経済格差、メンタル、都市政策など多様な側面で研究されているわけですが、これらの研究が乗り越える最大の地球規模の課題は、化石燃料をできるだけ使わなくてもエネルギー問題を解決できるかです。

★化石燃料をめぐる政治経済的な奪取闘争が、経済格差や世界紛争に結びつく根本の問題です。もし、日本がフュージョンエネルギーを実用段階にもっていけたら、日本経済の再生もありますが、なんといっても地球規模の様々な問題を解決します。

★未病を発見することができたり、人口光合成の実用化ができたり、フュージョンエネルギーが実用化ができたりすると、健康問題、食糧問題、環境問題、経済格差問題などが解決する可能性があります。もちろん国際政治経済問題も解決するし、これらの解決にAIは欠かせないので、労働問題も解決するでしょう。

★そんな夢みたいな話と思う方もいるでしょう。しかし、生成Aiの誕生を考えれば、ディストピアとユートピアは表裏一体です。どちらの道を選ぶか、意思決定の問題ですね。

★このような意思決定に寄与できる教育を初等中等教育で育成することそれが、マルクス・ガブリエルの提唱する「倫理資本主義」の実現への1つの条件でしょう。2027年の学習指導要領の改訂は、そろそろ、このムーンショット目標実現へのメインドとスキルに直結する教科や学び方を組み立てることが必要です。

★実際今年4月に文科省が省令改訂した高校卒業単位の36単位の柔軟な活用は、現状あまり大きな動きがありませんが、2027年の改訂には寄与することでしょう。ムーンショット目標だけではなく、それ関連する多様な最先端の技術に直結する学習指導要領改訂を政財官学で考えているはずです。

★それは東京大学の総長藤井教授や経団連、幾つかの自治体の組長が、すでに「グローバル教育」「STEAM教育」「リベラルアーツ教育」という言葉を次世代教育の共通キーワードとして使っていることからも推察できます。

★こういうことを言うと、技術のために教育があるわけではないと語る方もでてくるでしょう。その気持ちはわかりますが、思考なきエンジニアリングに関しては警鐘を鳴らしつつ先の見識者は語っていて、当然メリット、デメリットの比較衡量はしています。その両方の議論をラジカルアクセプタンスして変えるものはかえていくことがいまさら言うまでもなく必要でしょう。

★ムーンショット目標10の背景には、根本的な近代社会の光と影の「影」の部分をようやく明らかにすることでもあります。この技術が本当に実用可能かどうかも重要な問題ですが、化石燃料を巡る根本問題がいつも回避されて気候変動の問題解決の方法が語られてきたことに対するクリティカルシンキングが生まれるティッピングポイントでもあるということを考えていきましょう。

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2024年8月 8日 (木)

日々の暮らしに希望の持続可能性を(02)聖学院の2つの契約概念

★パリオリンピックを多くの方が応援しています。一方で、見ないという価値判断をしている見識者もいるということが話題にもなっています。選手がメダルを獲得したら称えつつも、それが目的ではなく励まし合い楽しむことが一番だと中高生のスケートボード選手がハグし合い笑顔で語ったりするすてきなシーンに感動しないわけにはいかない世界をメディアミックスよろしく私たちは共有する毎日ですね。

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(聖学院の夜静かに姿を現す真理)

★実際にパリでリアルに観戦している方もテレビやSNSで観ている方も、このような様々な心の動きがあるのですが、この動きはどうして生まれるのでしょう。それは価値の相克が世界中で起きているからですね。このことは普段日常の中で世界中で起きていることなのですが、このメディアのイノベーションによって、一望共有することができてしまいます。

★それが、特別なオリンピックの時だけではなく、日々日常の中で起きているというコトを考え、想い、言語化し、自分の行動規範を生み出す価値意識をリフレクションするにはいい機会です。

★私が、聖学院の先生方をリスペクトするのは、このリフレクションを毎朝、毎授業、毎ホームルームなどで行っているからです。

★私立学校というのは、現行社会システムの中に立ちながら、遵法精神は持ちながらも、時の政治判断に迎合することはありません。だからといって反対勢力ということもありません。そういう20世紀の革命論みたいなものは考えていません。

★むしろ、マイクロアグレッションの逆のマイクロアファーメーション的な言動を教師も生徒もとることにより、身近な社会やがては世界にピグマリオン効果やハロー効果を生み出す教育出動をしています。

★なぜこれができるのか?私立学校というのは、オリンピック運営と同じように、創設者の理念、法律、道徳、団体独自のルール、メンバーや支援者のセルフスタンダードの総合的なルールの体系で運営されています。

★聖学院の場合は、建学の精神は、キリスト教主義です。しかもプロテスタンティズムですから、カトリックと違い、法律の上に自然法はありません。即神の法が存在します。とてもわかりやすいでのす。ストレートに社会的自由を守りながら真理を追究する互いの契約という信頼を作りながら生きていこうということになります。

★法律も道徳もセルフスタンダードも、微妙に環境や歴史や経済的側面が違うので、ちょっとずつズレがあります。建学の精神もそうです。ですから、そのそれぞれのズレを調整する動きが重要です。オリンピックの運営も日々その調整の話が喧々諤々メディアを経めぐっているわけです。

★聖学院に限らず私立学校も、日々同様の多様なルール社会でおこるそれぞれのルールのズレを調整しているのですが、最終的意思決定の際に、法律における人間関係の背景にある「コントラクト(契約)」と建学の精神、つまり聖書の「カベナント(契約)」の両方から意思決定をしているのが聖学院です。この意識を持っている学校は意外と少ないですね。

★民主主義社会では、悪法も法ですから、法改正の運動しながらも改正されるまではその法を遵守します。しかし、それでいいのかというクリティカルシンキングは、コントラクトではなく、カベナントの真理が基準にあるからです。

★聖学院の校長伊藤大輔先生の朝の礼拝のとき、行事のときに語られる言葉に力があるのは、その背景にカベナントを守る意志があるからでしょう。コントラクトは期間がきたら終了しますが、カベナントは永遠の関係性なのです。

★世界が平和になるには、コントラクトからカベナントを結ぶ言葉の力と行動力がポイントということなのです。それは日常の生活で行うことができることでもあるのですね。

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2024年8月 6日 (火)

PLIJサマーキャンプ2024 STEAMがコアテーマ

★昨日から3日間、東大駒場ⅡキャンパンスでPLIJ(一般社団法人学びのイノベーション・プラットフォーム)サマーキャンプ2024が開催されています。

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★日本私立中学高等学校連合会の会長吉田晋先生も顧問としてかかわっているので、新しい社会や教育について学んでくるようにと促され、オープニングの講演に参加させて頂きました。テーマは「STEAMを通じた探究力とグローバル人材の育成」でした。

★産官学が協力して立ち上げていて、初等中等教育段階でグローバル人材及び高度人材を育成する新しい学びを広げていこうという感じのコミュニティです。私たち東京私学教育研究所では、教育の枠内ですが、知の創造とそのスキル及びその知財を守るうリーガルマインドについてどうしても中心になるのですが、今回登壇された有識者の方々は、大学人、財界人、自治体の組長がキーノートスピーチをしていました。

★知の側面、経済の側面、行政の側面から広くグローバル人材や高度人材をいかに育成していくのかそれぞれがビジョンと具体的な取り組みについて語られていました。そして、知の側面は、かなりおもしろかったです。

★というのも、大学人は2人登壇され、1人は東京大学総長の藤井輝夫教授です。もう1人は東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授だったからです。藤井総長は、めちゃくちゃおもしろいOMNIプロジェクトの話をされました。

★この海洋観測技術は、まさにSTEAMの結晶で、地球と人類社会の課題を解決するグローバルSTEAM人材が活躍するプロジェクトです。麻布出身らしい発想だなと。というのも麻布の理科の中学入試で、深海では光が届かないが、植物の光合成に変わるシステムがある生物現象を素材にしていたことがあって、一般には光合成の定番の問いが出題されるのに、そのことは既知として未知を拓く問いを出す発想と親和性があるプロジェクトの話です。

★深海には「地球の電池」という鉱物に酸素が生成されているかもしれないというような謎がまだまだあります。そこに挑む発想は、麻布の中学入試でも示されているように、中高段階で十分に育めるという格好の事例です。

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★一方小泉准教授は、あの小泉先生です。テレビのコメンテーターで有名人です。Youtubeでもロング対談をいくつもされています。実に面白いのは、社会をみるときに、私たちは教育の場面で、軍事的アプローチはあまりしないでしょう。平和教育の中の一部として捉えていると思います。それは政治も実は同じです。公共を中心とする社会科の中の1情報として捉えています。

★教育に政治や軍事力の話を持ちこむのはあまりに高度な政治上の問題が横たわりセンシティブだからです。

★ところが、近代民主主義の国際政治のダイナミズムの中で生きていく時、軍事力、経済力、教育力は3点セットです。ただ、1989年ベルリンの壁崩壊後、日本の場合は戦後からですが、国際政治は、軍事力から経済力、経済力から知(教育力)へと変遷しているという理想が現実にあるかのような未来社会が描かれてきました。それぞれをマッスル、マネー、マインドと置き換えて、3Mの変遷といった感じで、語られてきたものです。

★しかし、地政学的リスクが高度になっているところから、再び軍事面から国際政治を問う時代がやってきて、そこで一躍有名になったお1人が小泉准教授です。

★小泉准教授が語ったテーマは「物騒な世の中の眺め方」でした。インテリジェンスという意味での情報を収集し国際政治のダイナミズムを読み解くそのスキルについての講演でした。国際政治の動向を読み解くには、スーパーハイレベルな人工衛星情報は欠かせないし、多言語の理解は必須です。

★まさに小泉准教授自身がグローバルSTEAM人材の典型なのですが、実におもしろいのは、何か重要な情報がICTによって得られるわけでもないし、どこかのシンクタンクがいち早く新情報を教えてくれるから、それらを頼りに読み解くわけではないというのです。

★あらゆる情報を徹底的に読むことによって、未知の既知情報や既知の既知情報の背景に未知のものがあることに気づくというのです。何よりも不確実で得体のしれない未知の未知情報に気づかないでいるのがもっとも危ないわけで、そのためには情報をアナログだけれど徹底的に読みまくる。

★そのうえで、ICTやフィールドワークで別角度のアプローチに出会えればさらに読み解きの確率があがるというわけですね。

★世界中に流れている多言語のニュースをどう処理できるかがカギなのだと。

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★東京の私立学校が行っている探究やPBLも実はそのことに気づいています。大学入試の総合型選抜も、そのような広さと深さと仮説的思考とその検証の方法など必要とするところが増えてきました(SFCの大学院で研究し、学究的な探究や総合型選抜の対策など小手先ではない本質的な学びを押し進めている神崎史彦先生の著作が増刷りされているのはこのことを示唆しています)。

★今私の周りで行われている多様な研修は、今回もそうでしたが確実にグローバルSTEAM人材をつくる教育環境デザインが描かれています。今回のサマースクールは、6つのワーキンググループに分かれて、しかもそれぞれWG6チームずつですから、かなりの多くの政財官学の先生方が集結して、今回のテーマについて熱い議論を交わしています。「参加者の見解集」も事前に配布されています。STEAMの新たな考え方やコンセプト、実践例などが豊富です。

★こんなに創造的な教育が行われているのかと驚き、希望がもてました。

★それから、キーノートスピーチの財界側からの登壇者は、日本経済団体連合会副会長でアサヒグループホールディング株式会社取締役会長兼取締役議長の小路明善氏でした。日本の経済の再興を果たすべく初等中等教育における具体的なビジョンとアクションプランについて語られました。米国の小説家レイモンド・チャンドラーが代表作で書いた「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」という言葉を最後に語られたとき、驚きました。具体的な教育プランといい、最後のこの言葉は、まさに私立学校の建学の精神と親和性のあるマインドだったからです。あまりにプロテスタンティズムの発想に、日本の財界の奥行きの深さを感じました。

★そしてもう一人、大分県知事佐藤樹一郎氏。あまりに有名で、大分県を教育キングダムにしている具体的な手腕の事例は圧巻でした。まるで東京の私立学校で行っている留学制度やDX・GXプロジェクト、ハーバード大を中心とする米国大学の学生との連携プログラムなどが公立学校全般に完備されているかのようです。しかも、時空を超える学びの教育環境デザインまで挑戦しています。これは今年4月省令改正によって示された高校の柔軟な36単位の画期的な活用のモデルになる可能性があります。

★大分の地経学的な戦略もなるほど有効だと思いました。おそらくこの成功事例は他の自治体にも影響を及ぼすでしょう。

★今回のサマーキャンプで感じたことは、STEAM教育やグローバル教育によって、生徒1人ひとりが地球の自然と社会と精神の循環リソースをいかに活用できるのかというヒントがいっぱいあったということです。One Earth Projectをゆっくりではありますが進めている私にとって本質的な学びになりました。

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2024年8月 5日 (月)

日々の暮らしに希望の持続可能性を(01)聖学院の伊藤大輔校長の言葉の力

★今私たちは未来から今を考えようとするのが当たり前のようになっています。私もこのバックキャストの手法を限定的に活用しています。未来を理想として、現実とその理想のギャップを見出し、未来に向けて行動を起こす。このことは希望であるようで同時に徒労に感じないわけでもないのです。だから教育現場で、未来に向けて改革しようというモチベーションが、大山鳴動して・・・ということわざのような感じになることも多いですね。

★にもかかわらず、今親鸞が見直されたり、米国でマインドフルネスが注目されたり、マルクスガブリエルが、日本を起点に倫理資本主義を説いたり、金融教育家田内学さんが、贈与経済の見直しをしたり、東大の現国の入試問題に商業経済と人間経済を比較する文化人類学的な文章が課題設定されたりしています。そんな中で驚くべきことに、このような事態を勇気をもってさらに飛び越えているのが聖学院の校長伊藤大輔先生の言葉です。

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★伊藤先生は、ご自身の聖学院のサイトで校長ブログをアップしています。その更新率は、どの学校の校長によりも凄まじい勢いです。同学院では毎朝礼拝が行われています。同学院の先生方も物語りますが、伊藤先生は本多記念教会の牧師でもありますから、当然物語る回数は多いはずです。ですから、語る行為と書く行為は表裏一体なのです。この凄まじい言葉の力がそれを傾聴している生徒に大きな影響を与えていることは、同学院のここ数年の冷めやらぬ息吹の勢いに示されています。

★そんなことをいつも思っていたところ、7月28日本多記念教会での主日礼拝での伊藤先生の言葉をSNSでお聞きして、驚きました。実は次の週の主日礼拝の言葉をお聞きして同じように驚くのです。

★というのも、今世の中が希求している未来社会への改革の徒労感を払拭し、私たちが日常の生活の中に希望を生み出すことを持続可能にする言葉の力だったからです。

★エントロピー増大という世界によって立つと、たしかに未来へ向けての努力もまた徒労感に直面するかもしれません。しかし、聖学院の息吹のようにエントロピーが増大しないということがあるのです。

★パンデミックを経験した私たちは命を大事にすることの重要性について再認識しているし、パリオリンピックの背景でテロや戦争が起こり、命の尊さを祈るしかない自分たちの無力さを思い知らされています。

★伊藤先生は、その命がまさにエントロピーの法則だけでは捉えられないことの証であることを語ります。衝撃的です。未来に向かうことは、命の根源に回帰して何を感じ、何を考え、何を行い、何を生み出すのか。。。

★聖学院の思考力入試や探究などが他校と何か違う次元にあるのはなぜかと思っていましたが、このようなキリスト教精神に基づいていたのであれば、当然ですね。宗教とサイエンスの結合点は、ふだんは微分化されていて見ることはなかなか難しいのですが、聖学院の場合、朝の礼拝の時空の中で、息吹として姿を現しているのです。学校が成長するとは、エントロピーの時空を超えるということであり、それが私立学校の不易流行を生み出すヒントであると思った瞬間でした。伊藤大輔先生、ありがとうとうございます。

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2024年8月 3日 (土)

伸びる学校 世界の経験をした教師同士が、授業の中で社会的自由を謳歌している

★教頭部会の朝食で同席だった先生と教務運営研究会の朝食で一緒の席についた先生の勤務校が偶然にも同じ学校でした。その学校もトータルで伸びている学校ですが、とにかく毎年驚くような企画が実践されている学校です。

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★話していて、お二人の先生に共通しているのは、何らかの海外経験があって、個人的自由ではなく社会的自由を教育活動で謳歌している話をたくさん聞けたことです。それとその学校の校長自身が自由だし、ルーティンを外しながらおもしろいことを行うキャラクターであることが、自分たちに社会的自由を謳歌する支えになっているというのです。

★私の目には、戦略家でもあるように見えるけどと尋ねると、それはもう確かですと笑顔で。

★私が親しくしている先生方の学校も、同じように社会的自由を先生方は謳歌しているし、この夏も海外飛び回っていますね。もちろん生徒の海外研修プロジェクトにいっしょにいっているのですが、得るものは大きいと、帰国後お土産話は満載です。

★かつて、自由と言えば「麻布」が象徴的な学校でしたが、「自由」の意味も多様ですから、東京の私立学校はそれぞれの「自由」を教育活動の中で発揮するようになっているのでしょう。いやもともとそうだったのでしょう。

★パリオリンピックをみていて、世界経験とマインドやスキルを磨き上げる独自の創意工夫のトレーニング。「自由」の質と重さを感じないわけにはいきませんが、そのような意味での自由を発揮している学校はオリンピック選手のように伸びていくのでしょう。それに「自由」をめぐり、選手の中には、自分の国と葛藤しているシーンが報道される時も少なくありません。「自由」は選手が伸びるときにいかに必要か物語っています。

★そうそう、最初の学校の話に戻りますが、その学校の校長は、かつては大学合格実績を出すことにも懸命だったけれど、今では、合格の出し方はルーティンとして当たり前で、そのこだわりから解放されて生徒が自身の生き方を自由に豊かにしていけるような多様な環境を作っているのですよと学校説明会で語っていたのを思い出しました。随分前ですけれど、実際今ではそうなっています。戦略家で自由人で、どこか超越的なマインドの持ち主です。たしかに、その学校の建学の精神がよって立つ日本人は歴史的な超人でした。

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2024年8月 2日 (金)

伸びる学校 確かな外部組織との連携 連携の正当性・信頼性・妥当性の視座の確立

★教務運営研究会の委員長井上実先生(足立学園校長)と話しながら、外部組織との連携の際、その連携の正当性・信頼性・妥当性を大所高所からリサーチし意思決定するわけだが、その視座の確立が各学校創意工夫があるということです。そして同研究会の委員の先生方が、今回の研修でお招きした講師の先生方もそのような多角的な視点で議論されていて、たいへん勉強になったし、実際にすばらしい講師の先生方に大いに刺激を受けているということでした。

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★たしかに、教師は自分が外部のセミナーなどに参加すると、それを学校に結びつけたくなります。しかし、それが学校全体にプラスの影響を与えるものであるかどうかを判断する必要があります。

★栗田教授のワークショップは、参加した先生方は大いに共感しました。委員の先生方は、自分たちが多角的に話し合ってお招きしたのだから予想通りだという感触だったと思います。

★ですから、参加した先生方の中には、栗田教授を自分の学校にお招きしようと考え始めてもいます。

★こういう流れは東京私学教育研究所は大歓迎です。

★伸びる学校というのは、この委員会のように、外部組織と連携する際に正当性と信頼性と妥当性を大所高所リサーチしたり議論したりする学校文化があるわけですね。やはり学習する組織ということです。

★栗田教授をお招きする提案をされた先生の学校はやはり学習する組織というコミュニケーションの好循環が大前提です。学校づくりというのは、こういう視座も必要なのだと再認識させられました。東京私学教育研究所も学ぶべき重要なポイントだと気づきました。委員の先生方、ありがとうございました。

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伸びる学校 教師と卒業生の強い絆 人的資本の輩出と蓄積

★これもまた直接テーマとはあまり関係しないかもしれないけれど、伸びる学校の特色のもう一つは、人的資本の輩出とその蓄積。簡単に言えば「同窓力の強度」があります。伸びる学校とは何かは、前回書いた通りですが、要するに「学習する組織」になっているということですが、この組織は理念を共有する組織で、私立学校の場合、建学の精神は教師も生徒も共有します。そしてチームワークも同様に教師だけのものではありません。さらに、卒業後も同窓力はこの学習する組織と強い絆となって結合している場合があります。伸びる学校は、この強い絆を創り続けています。

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★今回も私が注目している学校の先生が研修の講師として招いた先生は、その先生の卒業生(かつ教え子の可能性があります)です。母校である私学出身で世の中で活躍している見識者が、私学の先生方の研修に登壇する。いやあ、これぞ私学の不易流行の有効なサイクルです。

★TPチャート作成WS(ワークショップ)を実施してくださった栗田教授は、教師のあり方あるいは魂の注入という話をしていましたが、これは生徒にも同様なのです。TPを受け入れる真摯で学究的なその先生がその生徒に伝播する精神と技術は、一生もののだったということが証明された瞬間だと思いました。

★そもそもその先生の母校も私学で、そこの同窓力は凄まじいですから、そのような教師がいろいろな私学で果たす役割は、私立学校の世界精神レベルの教育文化を広く深くしていくことだなと改めて思うのです。

★さて、話はまた違いますが、私の本ブログの書き方は、ほとんどがポジティブな側面が多いのですが、実は、現場の先生方は日々のともすればネガティブな雰囲気やジレンマの中で、それをひとまずポジティブにひっくり返すという意味で絶望を希望に変える努力をしているのです。とはいえ、答えのない事態ですからそれに耐えながら(ネガティブケイパビリティー)教育を行っています。それは前提なのです。だからこそ、教務運営研究会のような対話の分科会は必要です。その運営をしている委員の先生方には本当に頭が下がります。

★私は、その水面を美しく泳いでいる白鳥の姿を描いていますが、水面下では当然バタバタです。そこはセンシティブなのでそっとしておくのがよいのです。とにもかくにも、コスモスとカオスは一体というのが私が敬愛するその先生方の生き様で、私立学校の教師のロールモデルです。

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伸びる組織 リーダーの主体的活動 教頭のインパクト

★3つの夏期合宿に参加して、研修のテーマからは少し外れますが、伸びる組織の実際とはこれだなと実感したので、書き留めておこうと思います。理事長校長部会、教頭部会、教務運営研究会の3つのうち、教頭部会と教務運営研究会の2つに参加された教頭先生にお会いしました。めちゃくちゃ校務でお忙しいだけではなく、大学でも講義されていますから、想像を絶する多忙な教頭先生です。

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★その姿を拝見していて、なるほどその学校は伸びるなあと感じたのです。伸びる学校というのは、生徒募集もうまくいき、大学合格実績も伸び続け、当然その両者に大きな影響を与える教育の魅力が絶大だということです。教育の魅力とは、外から見ていてわかる現象としては、高い学力保障だけに満足するのではなく、非認知能力も豊かになり、生徒が自己変容していくキャリアデザインプログラムの存在や生徒による主体的な探究活動が活気に満ちているなどなどでしょう。その教頭先生の学校もそうで、私は注目していたところです。

★しかし、今回その教頭先生の真摯な研究の姿勢を拝見して、まさにピータ・センゲの論じる「学習する組織」を作っているなあと感じたのです。この学習する組織は、「理念共有」「チームワーク(対話)」「システム思考」「メンタルモデル」「自己マスタリー」の好循環組織です。

★今回の栗田先生のTPでは、理念を生み出すワークショップでもありましたが、授業を通して理念を生み出せるのです。その教頭先生はおそらく組織的なアイデアをお持ちですから、理念共有はただ文言を共有するのではなく、チームで生み出していく共生的過程そのものであると考えていると思います。その教頭先生は、教頭部会で「成長し続ける組織」についても教頭先生方と対話をしていました。

★そして、教員一人一人の価値観の根っこであるメンタルモデルも互いに受け入れ合うという心理的安全も今回のTPワークショップで再確認されているわけです。何より、多様な問題を解決するには対症療法ではなく根源まで内省していくというのは、教頭部会でも教務運営研究会でも共通していたシステム思考流儀です。

★その教頭先生にとっては、新しいものを学ぶというより、すでにご自身が行ってきたことを対話によって新たな表現を見出し、新たな言語化に出会えれば、ご自身の研究がパワフルになるという思いで参加されているのだと思います。まさに教頭になっても自己マスタリーを欠かさない。簡単に言えば、向学心が燃え続けているという状態なのでしょう。

★その学校の校長先生も同じように眼張(頑張)っているということですから、そのような学校組織は伸びるはずです。そしてそういえば、ときどき研修などでお会いするその学校の理科の先生のクリエイティビティとプラグマティズムの二刀流の躍動感は見事なのであることを思い出し、まさに理念を共有する学習する組織なのだと改めて感じ入りました。

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私立学校の先生方の対話型自己マスタリー 栗田教授のTPチャートの作成WS

★昨日の教務運営研究会は、90人の東京私立学校の先生方が栗田佳代子教授のTPチャート作成WSにどっぷり浸りました。このTP(ティーチング・ポートフォリオ)は、米国では大学がすでに研究実践しているものだということです。栗田教授がFDの研究の一環としてリサーチしにいき、論文も発表して(もちろん英語で)、その成果を日本の多様な教育現場(大学や中高、看護系の学校など)で実用できるように開発したものです。タイトで緻密なプログラムで、ある意味修行のようなすばらしいプログラムです。

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★心理的安全を保ちながら、静かに基本情報→責任→改善・努力→成果・評価→(シェア❶)→方法→方針→方針→理念→対応づけの確認→(シェア➋)→エビデンス→(シェア➌)→目標—短期→目標—中期→感想→(シェア❹)を展開していきます。

★自己マスタリーが中心ですが、パートナ同士すてきなTPチャートが出来上がるようにサポートし合います。これはある意味、自分の中の自分以上の自分を発見するダイアローグ型の省察の過程でもありましょう。

★栗田先生の講座に参加し、多くの先生方が自己研鑽しているわけですが、東京私学教育研究所の佐瀬氏率いるスタッフの皆さんは、東京の私立学校の先生方が、組織的に自己研鑽できる機会を生み出す「研鑽」を東京私立学校の先生方でつくっている委員会組織をサポートしながら行っています。私も、そのアドバイス(年寄りの口出し:汗)をする機会をいただき、老いの役割にまだ意味があるかもと勇気づけられています。感謝です。

★What・HowだけではなくWhy(価値の部分)を見出し、共有して、建学の精神の再認識・再発見とそれを実現する時代のイノベーションとの融合(不易流行の現代化)を東京私立学校全体でいかに行っていくのか、先生方と対話しながらまさに「研鑽」を積んでいるのです。頭が下がります。

★ふと思ったのですが、TPの興味深いことは、米国のGAFAMが考えているイノベーションを生み出すクリエイティビティ生成のシステムと親和性があるということです。東京私学教育研究所の数学の委員会で行っている「生徒自身の数学的実践活動をとして行っていく数学的モデリング」の研修も、課題設定、問題解決、創造性の生成の諸関係を創り出すプログラムを行っていますが、これにも親和性があります。

★また同研究所の英語の委員会が行っている授業報告ではなく「授業実践」という研究プログラムにも親和性があります。社会科の委員会の美術館やイノベーション創出コミュニティのフィールドワークの過程も親和性があります。挙げていけばきりがないほど、どの委員会もシステム思考やデザイン思考などの多様な方法のインテグレイトをしながらプログラムを企画して進めています。

★そんな中で、どの教科にも通じる一つの方法は、栗田教授のTPであることは間違いありません。

★栗田教授は心理学をベースにしていますから、心理的安全を維持する対話の条件方程式を確認しながら行っていきます。現状と理想とエピソードを区別する付箋の使い方も、ドネラ・メドウズのシステム思考と親和性のある発想が横たわっています。

★またWSを通して、自己変容していく信念も持っています。そういう意味では事実と理想のギャップを解決するダイナミックなセンス・メーキング(意味作成)もするわけです。

★その際に、しっかりチャートで言語化したうえで、対話するので、なんとなく自分の中にこもっていたネガティブファンタジーの霧が晴れていく変化を体験することができます。言語の限界は世界の限界だと誰か言っていましたが、その限界を自ら対話しながら超えていくというロマンがありますね。ネバ―エンディングストリーさながらです。

★授業改善を通して、実は教師自身の人間のbeingをwellに変容していく過程が経験値をあげていくわけですね。

★と感動していたら、栗田教授は魂の注入だけでは終わりませんよと、スキルが大事なんですと。インタラクティブ・ティーチングの紹介をしてWSはいったん終わりました。そして、その後の夜までの分科会で、栗田教授と先生方の対話は続きました。

★インタラクティブ・ラーニングの内容については、教務運研究会の委員の青柳圭子先生(成城学園)が、栗田教授のオンライン上の新しい講座で自己マスタリーする予定というので、また教えてくれるそうです。青柳先生は、ご自身栗田教授のもとで学び、TPを作成しながら授業を展開しています。東京私立学校の教師の生き様として興味深いし、ひとりの教師が自己変容する時世界を変えるインパクトを生み出すモデルでもあります。いずれ別の情報媒体で触れたいと思います。

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2024年8月 1日 (木)

教務運営研究会始まっています(01)類例のない研究会

かずさアカデミアホール・オークラアカデミアパークホテルで令和6年度の教務運営研究会の宿泊研修会が始まっています。この研修会はいわゆる教員研修の中でも類例のない特色を有しています。教科研修でもないし、探究の研修でもないし、生徒指導の研修でもないのです。経営研修でもありません。教員自身の自分の中の自分以上の自分を発見するために、他校の教員同士が協働し、その自分以上の自分の言動を発揮することを阻害する多様な壁が何で、それを乗り越えるにはどうしたらよいのかアイデアを出し合うのです。

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★今回も東京大学大学総合教育研究センター副センター長の栗田佳代子教授によるワークショップ <ティーチング・ポートフォリオ(TP)の講演および実践>とおにざわ法律事務所の弁護士鬼澤秀昌先生による講演会<合理的配慮~法律的な観点から~>と分科会・情報交換会による対話の3部構成のプログラムになっています。

★栗田教授のワークショップは授業改善のための振り返り以上に自分にとって教師のあり方とは何か、その価値はすごいじゃないかという自分の中にすでにあったけれど気づかないでいた新たな自分を対話によって互いに発見していくワークショップです。

★弁護士鬼澤先生の合理的配慮についての講演は、たんにリスクマネジメントではなくリーガルマインドやスキルを経営陣のみならず、教師一人ひとりが体得することの価値や意義も学ぶことになると教務運営研究会の委員である金子孝太郎先生(本郷中学校・高等学校副校長)は語ってくれました。

★このような研修に多くの東京私立中高の先生方が参加するというのは、希望があります。もちろん、この希望は、簡単には生まれてきません。分科会や情報交換会で対話をしながらネガティブな壁をどうしていくのかジレンマ克服のためのヒントを各人が気づいていく過程の中で生まれてくるものでしょう。ネガティブをポジティブに、絶望を希望に転換する東京私立学校の教員の心意気をもっともっと発信しなくてはと感じ入りました。

★その実現方法については、委員長の井上実先生(足立学園校長)と対話することができました。井上先生の気概と情熱に感動しました。

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