公立中高一貫校の新タイプ入試と私立中高一貫校の新タイプ入試の違い
★昨日7月7日、首都圏では、合判模試(首都圏模試センター主催)が実施されました。それと同時開催されたのが各会場での保護者会です。首都圏模試センターの中学受験の豊富なデータからみた2025年中学入試の傾向や各学校の学びの特色など、同センターの登壇者がそれぞれユニークなトークをします。そのデータのうち、公立中高一貫校の受検者人数の推移や新タイプ入試実施校の件数推移のデータを、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんから頂きました。この推移グラフやデータを見ていると、両中高一貫校の違いが推察できます。
★まず受検者数の推移グラフです。2013年まで爆増しています。しかし、2014年から減少傾向になります。ときどき増えていますが、千葉県の公立中高一貫校が立ち上がったりして増えるということはあったかもしれません。しかし、基本は徐々に減少です。あまりに高倍率だったので、受検生が見極めたということもあるかもしれません。公立中高一貫の適性検査市場は安定したということでしょう。
★このきっかけは、3つくらい理由があるかもしれません。
❶意外と問題視されないかもしれませんが、2015年から都立中高一貫校は、独自問題と共同作成問題がミックスされるようになりました。公平性などの配慮でしょうが、おそらく教科横断型で思考型の問題をそれぞれの公立中高一貫校で作成したり採点基準を作成するのは、教員に負荷がかかるというのが、背景にあるかもしれません。これは一気に標準化され、勢いが減退します。逆に都立高校入試で、日比谷など独自入試問題を作成するところは勢いを持続可能にします。入試問題と教育力の相関を、なんとなく察知しているのが受験業界なのではないでしょうか。
➋高校から始まった保護者の教育費負担軽減政策が、高校から私学は公立並みの教育費になるかもしれないという期待値が、中学ぐらいはがまんしようという経済原則が働いているのかもしれません。昨年から東京は私立中学も10万円補助が出るようになりました。一方で、私立中学も適性検査型入試を実施するところが飛躍的に増えました。公立中高一貫校と私立中高一貫校の教育力を比較して、それほど偏差値が高い学校ではなくても、公立中高一貫校以上の教育環境があるのなら、入学準備は同じですから、最終的に併願せずに私学を選択するという受験生の行動選択が生まれているのでしょう。極めて合理的行動です。
➌コロナ以降、公立中高一貫校の教育力は進路指導に大きくベクトルシフトをし、STEAM教育やグローバル教育は、圧倒的に私立中高一貫校に軍配があがってしまったということも考えられます。STEAM教育は、公立中高一貫校の場合は、情報というカリキュラム以上のことはやれないでしょうし、グローバル教育も英語教育にプラスアルファがあるぐらいで、大胆なものは難しいですね。IB認定校になってやっと私学と肩を並べられるというのが現実です。
★一方首都圏の私立中高一貫校の新タイプ入試と英語入試を実施ている学校は、首都圏私学全体の50%に迫る勢いです。新タイプ入試も公立の適性検査型に合わせたものも実施しますが、私学のクリエイティブなカリキュラムを反映した思考力入試やプレゼン入試など生徒1人ひとりの才能にマッチングする入試の開発もどんどん増えています。
★英語入試も同様です。算数が不得意でも、英語が得意な場合、言語能力に才能がある可能性が大です。中学からは数学で、言語能力の抽象思考ができる生徒は、算数のような具体的な思考は難しくても、数学のような数理モデルを考えるような抽象思考は転移できる場合が多いので、英語入試は、今までにない才能発掘テストになっている場合もあります。
★表にあるように、私立中高一貫校の新タイプ入試や英語入試を実施している学校の件数は急激に伸びています。それだけ、多様な才能とのマッチングシステム(私はMIGRIT型入試システムと呼んでいます)を積極的に私立中高一貫校が開発しているということでしょう。基礎学力競争選抜試験から才能マッチング試験にシフトし始めているのでしょう。
★AI時代にあって、新しいタイプの資質能力や才能に期待されています。私立学校はその時代の要請にしっかり対応しているわけです。そこが公立中高一貫校と私立中高一貫校の大きな違いだと思います。
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