教育活動の有機的結合を促進する「実践研究」と「最近接発達領域」の視点
★東京の私立学校は、独自性と先見性、先進性を不易流行という名の持続可能性を追究しています。したがって、先生方は、自らが創意工夫する教育活動のデザインをアップデートするために、個人研究、学内プロジェクト、学外研修で研鑽、学外プロジェクトなどに参加しています。東京私学教育研究所も東京私学の先生方と25の委員会をつくって、多様な研修を企画運営しています。
★その企画のコンセプトやプログラム、実施運営の様子を拝見して、ずいぶん研修のコンセプトとが変化してきたと感じます。それは、コロナ前までは、講義形式のものが圧倒的に多く、事例報告、授業報告、実践報告などという「報告」ものが多かったけれど、現在はミニワークショップなど対話が必ず入る研修になっています。つまり、それは「実践報告」ではなく、「実践研究」の」研修になっているのです。
★両者の違いは、実践報告は、子ども等への働きかけとその結果をまとめたものです。特定の教育実践の結果を共有すること自体が目的です。分析は客観的な量的分析がメインです。
★一方、実践研究は、教師自身が研究の主体となり、教室という文脈の中で体系的な方法を用いて、実践の理解や改善を目指します。具体的には、子ども等への働きかけとその結果から、相関関係、因果関係を読み解き、新たな事実の発見や問題点の提起・方法の提案などが示されます。子どもの反応もそれを見る側も主観的なものの見方が前提になるので、測定の項目の信頼性や妥当性を議論しながら作成して分析をしていく質的分析がメインになります。
★したがって、リフレクション、ルーブリック、思考コードという作業がはいるわけです。しかし、最も重要なのは、子ども1人ひとりの現状の発達水準を知ることです。そして、発達水準が違うこどもどうしのチーム作りをして、対話をする環境を整えることが重要になってきすが、果たしてこれは以下にしたた可能か?
★この最近接発達領域を見出し、その領域が違う子供同士の対話の環境の作り方はどうしたらよいのか、この事例報告だけでは参加者は満足しません。その報告をきっかけに、自分たちの想いを語り合い、その中から新しいアイデアを生み出し、自分でやってみようと。そしてまた先生方と対話しようというサイクルが実践研究の一端です。
★ですから、研究所で行っている研修は、自ずとシェアリングとしての対話の時間が多くなります。
★こうしてみると、生徒同士の最近接発達領域の対話だけではなく、先生同士の最近接発達領域の対話も見事に交差するのが、授業における実践研究ということになります。
★これによって、生徒も教師もそれぞれの現状の発達水準の背景にある潜在的発達水準から新たな水準を汲み取りアップデートしていきます。
★実践研究には、対話の問いの多様さと最近接発達領域の目利きがポイントです。ではどうやってそれをトレーニングをするのでしょう。対話によってしかないのですが、ここに生成AIの活用がうまくいくとアップデートの速度が変わります。それがいいことなのかどうかは、見極めなければなりませんが。
| 固定リンク
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(14)問いの循環思考が行われる授業 すてきです。(2025.02.18)
- 2026中学入試準備(10)富士見丘の突出型グローバル教育 チームワークと自分の言葉としての英語へ(2025.02.15)
- 2026中学入試準備(08)MiddleからCreativeへ ようやく(2025.02.13)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
「中学入試」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(15)今年から2027年にかけて変わる慶應義塾大学の入試問題 才能創発型入試とシンクロしだす (2025.02.19)
- 2026中学入試準備(12)3Fマインドと3Tスキルを大切にする教師がいる学校を探そう(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(06)知られざる工学院と聖学院の思考力セミナーものすごいバックボーン(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(05)すべてが才能創出型入試の中で海外進学準備もしている学校は(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(04)すべてが才能創出型入試へ(2025.02.11)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(13)東京私立中高の理数教育の教科横断性 実に深い(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(07)東京都 本来の人間とは何かをどうとらえるか議論が進み始めている(2025.02.12)
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
「創造的破壊」カテゴリの記事
- 本田由紀教授の短いメッセージにも日本の根本問題を暴く(2024.10.29)
- 日経ビジネス 禅と哲学 駒沢学園女子の教育がグローバルなわけ(2024.10.22)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(了)2050年以降の社会は、だれもが創造的才能者になる(2024.10.01)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(7)2050年以降の社会を創出する創造的才能者を生み出す教育(2024.10.01)
- 2027年に向けて動く世界と私立中高一貫校(6)いわゆる高偏差値学校の教育と筑駒湘白型教科教育(2024.10.01)
「高校入試」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(26)日駒 コンパクトでパワフルなカリキュラム(2024.12.03)
- 2025年中学入試動向(22)文大杉並 interactionからtransactionへ突き抜ける(2024.11.30)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
最近のコメント