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2024年6月

2024年6月30日 (日)

デザイン思考そのものは終焉しないけれど・・・ 龍安寺石庭で

★先週の金曜日に京都で研修が終了して、久々に幾人かの友人と会い、飲みました。友人と言っても教育関係者ですから、結局はこれからの学校の新しい姿を描く話ですが。リアルには、限られた友人なのですが、並行してSNSで他の知人や友人から情報が上がってきますから、その情報も交えながら対話します。直接ビジネスの話ではないので、あくまでフレームストーミングで、次元をいかに変換していくか。対話の次元を上げるという発想も、その対話の中から生まれてきて、なかなかよい余白でした。

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★だいぶ飲みすぎたので、そのことを予め予想して、チェックアウトが11時までOKという宿をとっていました。何せ、新幹線も混んでいて、夜になるとたいへんだろうと思いながら、チェックアウトしたら早々に帰ろうかと。とはいえ、京都の北エリアの寺は一つみたいなあと。金閣は外国の方でいっぱいだと聞いたので、友人と龍安寺の石庭で待ち合わせました。

★本当は龍の和室から見たかったのですが、はいれません。外国人の方と並んで、私たちも縁側に座って1時間以上対話してしまいました。お昼時だったので、なぜか空いていたのです。近況について語りながら、どうしても私たちの考案している(すでに特許はとっています)学びのコンセプトの通用性や汎用性、レバレッジポイントになるかどうか等々話していました。

★その一方で、私は、昨年末米IDEOの事業縮小・日本やミュンヘン撤退の報道があってから、「デザイン思考終焉論」がメディアで語られていることが気になっていて、時々この方丈庭園を数学的思考で解き明かすとどうなるのかねと友人に尋ねたりしていました。幾何的な話や視点の話など、それから庭園上空が昨日の大雨と打って変わってさわやかだったので、そっちの話になったり。特に正解は、いつもながらないのですが。

★ただ、おもしろかったのは、方丈全体の絵柄は、15個がいっぺんに見えないねという定番の話をしながら、小さな砂のような白い石が敷き詰められ、宇宙的な模様が描かれているのが、やはりこれはアート思考だなと。

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★そして、一つ一つの島のような石を眺めているうちにこのフォーカスされた造作はデザイン思考だなと。そして石庭の上空は、人工的な石庭を包むような大空と雲がくっきり。水蒸気と湿度と気温が京都の琵琶湖とつながっている地下水脈と循環しているのが描かれている驚きのシーンが石庭とマッチしているのに二人で感動していました。

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★これはシステム思考のアナロジーになるなと。アート思考もデザイン思考もシステム思考も世界の切り取り方がちがうだけで、その切り取られた世界を認識したり、あるときは石庭や寺の杜のように人工的に創ったりするときに、それぞれの切り取られた世界ごとに適切な方法なのだと。

★よって、なぜIDEOが撤退するのか、わかりませんが、デザイン思考そのものがなくなるとかという話ではないだろうなあと感じた次第です。ただ言えることは、今トレンドの探究ですが、デザイン思考だけで押し通すことはやはり限界があります。それはアート思考もシステム思考も同様です。

★学びの系譜をたどっていくと、やはり方法は多様ですから組み合わせることが大事です。

★ただ、問題はこの組み合わせるアイデアが何であるのか?私たちは、そこをコンセプトレンズと呼んで、細々とずっと高校生や先生方とワークショップを行ってきました。アブダクションして、モデルをつくり、実際に授業などやってみて、テストをして。。。あれッ?デザイン思考使っていますね(笑)。

★ともあれ、なんか幸せな気分だったので、京都駅にまっすぐ向かい、久々に食したいと思っていた東洋亭の「まるごとトマトサラダ」つきランチを食べて新幹線に乗りました。やはり混んでいましたが、なんとか座席は確保できました。帰宅したら、孫が玄関から飛び出て歓迎してくれました。いっしょに風呂に入り、寝床でカブトムシやクワガタ、スズメバチなどについて描かれているドラえもんの漫画を二人で読んで、はしゃぎました。3歳の孫は、カブトムシになったり、クワガタになったり、スズメバチになったりして、布団の上を跳ね回り、私のお腹に勢いよくぶつかってきます。

★文字など読めないはずなのですが、絵を見ながら勝手にス―トーリを描きながら飛び跳ねているのです。のび太やドラえもんの表情や行動から推測しているようです。すでにコンセプトレンズは作動し始めているなあと思ってふと横を見ると睡眠の世界に没入している孫でした。

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2024年6月29日 (土)

対話の密度をあげるとアイデアとそれを実行するアイデアが生まれる 授業でも可能

★確かに「対話」は大事だけれど、中高段階でファクトとオピニオンを語り合うだけでは、新しいものが生まれてこない。これは幼児期に、すでに行われていることだ。少なくとも小学校低学年では行われている。だから高学年になるとその次のステージの対話を学ぶ必要がある。中学受験の算数は、この役割に適している。中学受験の新タイプ入試、特に聖学院やかえつ有明で行っている多様な思考動(情緒×思考×行動)入試は、次の次のステージぐらいの対話を行っている。

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(Bing作成)

★ところが、中学受験の国語・社会・理科は、小学校で学ぶコンテンツよりハイレベルだが、対話の次元は変わらない。だから、中学受験の算数が得意だった生徒や新タイプ入試を体験した生徒が中学に進み、英語もそこそこ力をつけれると、対話の次元が世界基準になっている。大学入試をクリアするのは当然のことながら、社会に出て、自分の持ち場でアイデアリーダーになっている。しかも、その世界基準の対話では、アイデアを実現するアイデアまで求められるから、単なる評論家では終わらない。

★このような数学的思考を活用し、最近接発達領域をどんどん埋めては新たな最近接発達領域を見出し埋めていく回転速度を上げていく生徒たちがいる。彼らの対話の次元は世界基準を振り切る時もある。

★その生徒たちは、中学入学時や高校入学時、あのいわゆる偏差値というものは必ずしも高くない。対話の回転速度を徐々に加速していけば、思考動の回転があがる。これが対話の密度をあげることだ。

★コンテンツの難度にこだわる学びは、回転速度をあげず、じっくり解くことが善になるので、対話の密度はたいして高くならない。

★すべての生徒は能力を持っている。その能力はいつ開花するか、それは見ているだけではなかなかわからない。数学的思考を使いながら、対話の回転速度をあげていく。数学的思考とは、難しい問題を解ける力ではない。文理関係なく共通している数学的ものの見方・感じ方なのだ。

★また対話の回転速度を上げるとは、早口でしゃべるということでは毛頭ない。三角ロジックという3つのロジックを相互に使い分けながら、統合するという回転の速度を上げることである。これ自体も数学的思考である。

★この数学的思考を回すエネルギーになる数学的思考は、オズボーンの9つのチェックリストだ。これがどうして数学的思考なのか?これが了解できるかどうかが、中学受験で算数が得意になるかならないかの分岐点であり、ラィティングが得意になるかならないかの分かれ目である。

★ギャップを見つけて、それを埋める美しいストーリーのオチはいつも感動を誘う。気の利いた学校の教師はそれを多用するが、別の思考法もあるだろう。それをみんなで対話して探すワークショップはもちろんよいし大切だ。なぜならオズボーンの9つのチェックリストが数学的思考なのだと実感できるかどうかは、体験してみなければ、多くの場合身体化しない(腑に落ちない)。

★学びのベーシックスキルは、この「数学的思考(オズボーンの9つのチェックリスト)を活用しながら、対話(三角ロジックの分解と統合)の回転速度を上げる方法とその過程で普遍的精神を感じる学びのあり方を身体化することなのである。基礎とはこんなふうにシンプルだというわけだ。学びの基礎と世にいう学力の基礎は似て非なるものである。

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2024年6月28日 (金)

まじにヤバいかな日本の教育 智の密度をあげる場で学ぶように 孫たちに

★私たちの愛すべき孫たちよ、自分の能力にはやめに気づくのがよいよ。興味や関心が今一歩わからないんだよね、はもちろんいいけど、それは動きが足りないからだと思う。動くというのは、その過程の中で目まぐるしく興味と関心が入れ替わりながら、自分のコアの興味と関心が見つかるというより、得体のしれない活力が結晶化していくという感じかもしれない。

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(作成はBing)

★私たちは、動くことによって何かを作っているはずだから、その積み重ねが自分の能力を高めていくはずだ。何かを作る時、思考するし、判断するし、集中するし、ふと周りを見渡し、新たな視界がみえたりする。そんなときその視界の中に対話する友が現れる。

★いまここでという永遠の瞬間を見つけることだ。この永遠の瞬間の連続体が過程であり、たった一点の永遠の瞬間を分解し、それを組み立て直すのに、長時間かけているのが学習指導要領や単元などというシステムだよ。

★この枠組みから高校までは日本では逃れられない。でも、だからこそ、その冗長な時間の中に動きを入れ込む自由はたんまりある。そのレールは問われなくなった概念の干物の羅列だから、その概念にちょっと息吹をあたえてやる。するとそこに永遠の瞬間が現れる。

★それをやっていくと、やはり学校の生活では収まりきれない自分がいることに気づくんだろう。

★そんな君を受け入れる学校がある。大学がある。とても数少ないけれど。

★知識でないとか、考えることが大事だとか、そんなつまらない干物になった言説を開いてしまうことだね。知識は作られたものだから、作り直すこともできるし、新しく創ることもできるのだ。それはもう考えることだ。

★ワクワクするだろう。ああでも、ワクワクしているなんて思っているうちは、まだワクワクしていると言わされているだけだよ。

★世の中には、いろいろな道具がある。自分が気に入った道具は実は道具ではない。自分の身体拡張能力だ。

★身体というのは、脳と神経と肉体の関係態だから、そこに道具がつながると、それはもう自分の身体そのものだ。言葉はよくツールだと言われるけれど、それが自分のものになったとき、もはや道具ではなく、自分の身体そのものだよ。

★興味と関心とは、そんな道具を見つけ装着し、創造的な動きをするときにうまれるだろう。

★高校卒業単位は74単位だけれど、生きる自分の能力にとって、それはわずかばかりのものだ。それなのに、大変な想いをさせられているか、さらりとそこを超えて莫大な智を身につけられる時間になっているか。与えられているうちはわずかなものしか得られない。動こう。すると同じ1時間でも100倍違う智が身体化する。

★学びとは、与えられた干物のような知識を食べて終わりではない。それを開き新たな息吹を生み出すことだ。そのためには動かなくてはね。動くと自然と社会と精神が自分にからんでくるはずだ。それが学びの密度を高くするのは簡単にイメージできるだろう。

★この密度を上げるには、1時間という授業は内的加速がなされ、永遠の瞬間の微分とその連続が積分を同時に行うことになるだろう。

★わかりやすさとは、干物の展覧会だ。魂のない知識を長時間かけて身につけても、一滴の智にもならない可能性がある。

★道具を見つけ身体感覚・身体精神・身体智の密度を上げることが質だ。この質を向上させる教育を行っている学校こそが君を待っているのだろう。そのような意志の力をもった君たちが集まる場があれば。そこに集う皆が、この世界を何とかするだろう。(孫たちに)

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2024年6月27日 (木)

全国私立中学高等学校 教育課程部会の研修始まりました。in 京都

★本日から2泊3日京都で、全国私立中学高等学校 私立学校専門研修会 教育課程部会の研修が行われます。テーマは<「深い学び」を追求する~個別最適で協働的な授業づくりと思考力の究め方>。登壇者が、京都大学の松下佳代教授、東京学芸大学の西村圭一教授、藤村祐子准教授であり、明日の視察校が立命館宇治中学高等学校ということもあり、120名の定員を超える132名が参加しています。

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★開会の挨拶をされた吉田晋先生(一般財団法人日本私学教育研究所理事長・日本私立中学高等学校連合会会長)と森涼先生(教育課程専門委員長)は、今回のプログラムがまさに時代の要請にマッチングしているものが作成されたため、全国からたくさんの私学の先生方に集まって頂けたと感謝されていました。

★同時に、何より、この日本の教育の危機にあって、私学人としてどう立ち向かっていくのか、学び続ける先生方の情熱こそがそうさせたので、そこに深い感謝と頼もしさを感じると語っていました。

★その日本の教育の危機についてですが、少子高齢化という経済的な危機も当然あるのですが、今生まれている多様な学びのあり方について危機感を共有されました。つまり、玉石混交の多様な学びが、実際には学びの格差が広まりつつあるということです。この状況は世界の中でどのような問題を生み出すのか、火を見るより明らかです。

★私学人が、本質的な「深い学び」の方法やあり方を学び続ける姿こそ希望なのだと高らかに謳われ、研修会が開会されました。

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Deschool化進む向こうはどうなるのか?独り言

★イギリスのパブリックスクール、インターナショナルスクールが日本にどっとやってきていますが、一方でN校は、S校に続きR校をつくるということです。さらにいくつかの自治体で公営塾をAIを使って開始しました。文科省も、現行学数指導要領を実施するのお並行してIB200校計画を実施してきたし、今年の4月から、省令改正で高校の74単位のうち36単位を柔軟に活用できるようにしました。今や日本の学校は脱構築の過程を歩み始めているのです。このことを「Deschool化」と呼びましょう。

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(制作はBing)

★この動きは、明治以来の国が主導の学校制度の制度劣化を補完する動きとして始まっているのでしょう。しかし、国による教育改革ではなく、現実の問題に対応するために、また問題があるから、そこから、いろいろな動きが生まれているのですから、教育改革というよりは、なし崩し的に生まれているのです。それゆえ、Deschool化と私の独断と偏見ですが呼んでいるのです。

★この流れはどういう方向に進んでいくのでしょう。善い方向に進むことを期待しますが、歴史は紆余曲折あります。その過程は結構悲惨な状況が起こるのも歴史のセオリーです。そこで、私立学校はこの絶望的状況を希望に変える不易流行を保守していくでしょう。

★一方公立学校は、教師不足、財政不足が深刻です。私立だって同じですが、経営時の自由と教育の自由があります。したがって何とかしよと各学校が動けます。

★しかし、公立学校は、自治体次第です。公設民営の学校はすでに生まれています。今始まっている公営塾は、やがて、教師不足ですから、午前中、体験ベースの授業が行われ、午後からは公営塾に知識の理解と活用を委ねるでしょう。財政的支援はするものの少ないですから、公営塾はAI教師と少ないスタッフで賄っていくでしょう。この先は、公立学校全てが公設民営という流れだってあるわけです。

★一方N校のような通信制高校は、もはや一つの自治体の高校生を集めているようなものです。もっと加速するでしょう。もはやデファクトスタンダードは確立されていますから、大学によっては、IBやAレベルを認定するように、N高卒業資格(必ずしも文科省が規定している日本の現状の卒業資格ではなくなるかもしれません)を入学試験の条件に入れるところがでてくるでしょう。これを決めるのは、大学次第です。

★文科省の制度の及ばないところで、つまりそれは法律で禁止されていないという論法で、Deschool化が進んでしまうのです。

★しかもグローバルと生成AIを活用することによって日本ではいろいろあるのですが、世界の学校はダイレクトに結びついてしまいます。

★私立学校自身も、学習指導要領をちゃんと守りながら、発展的なことをすでに行っています。善い意味でのDeschool化を行っているのです。

★そもそも、「探究」だとか「主体的・対話的で深い学び」とか「CEFRベースのCLIL」だとか導入したのは国です。Deschool化の多様化の時代はそこから始まっている、いや仕掛けていると言っても過言ではないでしょう。

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2024年6月26日 (水)

中村中学校が注目されているわけ

★清澄庭園と隣接しているすてきなキャンパス中村中学校(以降「中村」)の今年の中学入試の応募者総数は、953名(首都圏模試センター調べ)で、前年対比は147.5%、前々年対比は189.9%。大注目を浴びている私立女子校の1つです。その理由は、1人ひとりが飛躍的に伸びるという確信が受験生・保護者に共有されているからでしょう。

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★同校の教育資料集をいただき、中を開くと、上記のようなページがありました。この冊子は、学校説明会の時に受験生・保護者に配布されます。100人弱の生徒1人ひとりの入学時の偏差値と6年後の大学進路先の偏差値の伸び方を図のように表現しています。わかりやすいですね。

★中村は、アートや道の学びとボランティア精神がベースになり、それゆえ国際教育が伝統的に豊かだったわけです。それに今では「探究」とデータサイエンスをベースとした「理数系」のプログラムもしっかりしています。

★どこの女子校にも先駆けて、生徒中心主義を貫き通してきました。先生方の今でいうコーチング力やファシリテーション力は絶大です。しかし、早すぎた欧米型のエスタブリッシュ私立学校の中村の教育は、学歴社会受験指導が当たり前だと思われていたついこの間まで、なかなか理解されてきませんでした。しかし、パンデミック以降、世の中のものの見方や考え方が大きく変わりました。

★より現実的になりましたが、その現実をつくる方法は心の豊さありきの方法の模索です。ウェルビーイングのあり方の模索です。

★それは中学受験も同じでした。

★ようやく中村の教育が生徒にとって最も重要であると、ようやく世の中が気づいたのです。

★特に娘さんを持ったご家庭は、このハラスメントリスクの高い時代、まだまだジェンダーバイアスがはびこっている社会にあって、この現実を乗り越える精神力と技術力と教養とグロバールな視野を身につけられる中村の教育、そしてなんといっても生徒が楽しく好奇心に満たされ人を想う心が溢れている学園生活を享受できる中村は価値ある学び舎だと気づいたのだと思います。

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2024年6月25日 (火)

不易流行としての≪学びの系譜≫ 探究を巡る多様な方法の深層にあるコア

★昨今探究型授業や教科横断型授業のプログラムをデザインする場合、多様なプログラムデザイン手法が使われています。封建社会から近代国家が生まれる時にヘルバルト主義の教授法が生まれました。紆余曲折変遷はありますが、今も一方通行型の授業は、なんだかんだといってヘルバルト主義が息づいています。

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(≪学びの系譜≫のコア=不易を探究している田中歩教頭)

★その後、近代国家がまだまだ権利の保障が一部の階層にしか適応されていないことに抗い、さらに民主主義近代国家の動きが進みます。そこでデューイが登場し、今まさに活用されているPBLの原型をつくりました。実験学校を作り、そこで実践もされました。しかし、2つの大きな世界大戦の過程では、そう簡単ではなかったですね。

★戦後、IBとラウンドスクエアが誕生し、PBL型の授業が再び重視される一方で、一般的な公立学校では、ヘルバルト型の授業が行われていきました。

★一方、戦後、アメリカは、イノベーション経済になっていきます。創造的思考を経営学の側面から生み出していきます。今もよく使われている汎用性の高いプログラムはブレインストーミングですね。A・オズボーンが開発して広めました。1950年前後の話です。

★しかし、それはある意味クリティカルシンキングを回避するので、1972年に「成長の限界」で、倫理なき創造的思考は地球を破滅させると警鐘がなされ、システムダイナミクスが活用されたわけですが、それはプログラミングによって作成されたので、まだ一般には理解が広まりにくかった時代です。そこでドネラ・メドウズはそれをシステム思考に変換させました。今もピーター・センゲらドネラの仲間たちによって受け継げられ昨今の学校でも活用されています。

★経営学の分野やマーケティングの分野からは、デザイン思考やOSTなどが生まれてきます。世界が止むことのない戦争や紛争で心のケアを必要としはじめたからでしょう。

★心理学の分野からは、MITメディアラボから探究型の3Xプログラムが推奨され、それがレゴシリアスプレイⓇになり、それが今もさかんに探究の授業で活用されています。

★MITメディアラボの動きは、当然GAFAMに連動していて、コンピュータサイエンスの世界では、マイクラやメタバースの世界に突入していき、STEAM教育が生まれてきます。そのときしかし、マシーン的なあまりにマシーン的なという状況ですから、ZENが広がり、マインドフルネスが注目されるようになります。仏教の出番です。

★それは心理学のEQなどと交差し、SELという心理的安全を基盤に自分を超える創造性を自然に生み出していくプログラムが動き出します。これも活用している学校があります。

★というわけですが、結局これらの≪学びの系譜≫の中で、コアになるのは、デューイのPBLという考え方とオズボーンのブレインストーミングなのだと私は思っています。この両者の共通点であるコンセプトレンズが、これらの≪学びの系譜≫の不易の部分です。

★かくして、≪学びの系譜≫の不易流行という見方をすると、学校の教育も整理され、その不易を土台に独自の教育を各学校は作れるのです。しかもコンセプトレンズを内面に設置することによって、生成AIなど新しいイノベーションも適性に効果的に新しい次元を拓くIBLを生み出すことができます。

★このことにしかし、気づいているのは数名で、その1人が工学院大学附属中学校の教頭田中歩先生なんです。いずれ歩先生のIBL授業を取材したいと思います。

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2024年6月24日 (月)

女子校の大切な意義 「鴎友・大妻・田園調布 三校校長座談会」新しい風が吹く

★先週の土曜日に、田調布学園の清水校長と大妻の梶取校長に別々の件でお会いしました。そのときに、5月30日に大妻講堂で、「鴎友・大妻・田園調布 三校校長座談会」を開催したのだというお話を奇しくも両校長からお聞きしました。内容についてまではお聞きしなかったのですが、お二人とも話題にしたというのには、よほどのインパクトがあったのでしょう。急遽定員の数を増やしたほどですから。

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★おそらく、女子校の多くの意義について、大いに語り合ったのだと思います。私は直接お話したことはないのですが、鴎友学園女子の校長柏先生については、私の信頼すべき教育ジャーナリスト市川理香さんの朝日新聞EDUAでインタビュしている記事を読んで、まっすぐに慈愛と創造と誠実という理念を教師と生徒と具体化している方であると推察します。同校には園芸という教育活動がありますが、まさに人を育てる知恵がここには凝縮しています。白い大根を掘り起こして本当に幸せそうな顔をしている生徒をこれぞ鴎友学園女子のキリスト教教育の象徴なのだとはっきり語りそうな雰囲気が伝わってきます。

★まさしく女子校の王道の先頭を歩んでいるわけです。実は清水校長も梶取校長もそれぞれ前任校は、男子名門校です。だからこそ女子校の善さや使命を十分に感じ取って話されたはすです。ですが、梶取先生は「柏先生には、僕らが気づかない話もされ、その大胆さに、なんかペースをすっかり持っていかれた感じだったよ。たいしたものだ」とボソッと微笑みながら語ってくれました。

★というわけで、すてきな鼎談だったのでしょう。さて、女子校の意義ですが、まずは一般的なことについても話されたでしょう。それについては、女子校の意義ついて調べてほしいと生成AI❝Bing❞に聞いてみました。するとこう回答してきました。

自己肯定感と自己実現:
女子校は、性別に関係なく自分らしさを思い切り出す環境を提供します。異性受けを気にせず、自己肯定感を高めることができます。
男女の成長カーブが異なる時期に女子に手厚いケアができ、思春期に様々な経験を積むことで、その後の人生に大きな影響を与えます。

リーダーシップの育成:
女子校は、女性のリーダーシップを育てる場です。男子学生と比較して、女子学生はネットワーク型の組織を作る傾向があり、自己発信力が高い。無意識の性別役割分担がないため、女子校での経験が、女性のリーダーシップを後押しします。

ジェンダー平等と理系分野:
理系分野の女性をエンパワーするために、女性の研究者・教員が必要です。また、中高の理科や数学に女性の先生を増やすことも重要です。
女子校は、女性が自己実現し、理系分野での進学を選ぶための環境を提供します。

受験生との関わり方:
受験が終わっても子どもとの関わりを続けることが大切です。テスト結果よりもプロセスを褒めることで、良好な関係を築りましょう。

女子校は、個々の成長と社会への貢献を支える重要な場所と言えるでしょう。

★これらは、いろいろな記事で書かれていることですね。おそらく3校長は、これらについても語りながら、AIの最後の一文について掘り下げて話されたと推察します。「個々の成長と社会への貢献」というところです。

★清水校長は、「教科横断」のことについて語られたのではないでしょうか。田園調布学園の「教科横断」は実は個々の精神の成長を促すためのものでもあるのです。たとえば、国語が得意で理科が不得意な場合でも、2つの教科が横断的に展開されることによって、自分が気づかなかった理科の面白さについて気づくということがあるそうです。このような体験こそ、心の壁を崩して成長することの本質的な発見なのですが、これを社会に対しても適用したらどうなるか。多くのアンコンシャスバイアスが解除されていくことでしょう。女子校ならではの知性の柔軟性ということでしょう。

★梶取校長は、声楽家でもあり、学びを言葉と身体性の相互関係からアプローチしています。実利主義や実益主義や受験主義ではなく、リベラルアーツをベースにした体験した事柄を多角的に見て、対話しながら理解を深めていくプロセスを丁寧に行う女子校ならではの教育について語ったでしょう。男子校の場合、客観的で科学的な知に偏りがちですが、内面から湧き出てくる主観的な思いも大切にできる豊かな非認知的な能力を発揮している生徒の姿を見守っている感じです。

★柏先生は、隣の学校の創設者河井道のようなタフな女性像と重なるし、神谷美恵子のような献身的活動と大きな知恵を有した女性像に重なります。どちらも鴎友学園女子の人間像に重なります。新渡戸稲造や内村鑑三に薫陶を受けた創立者がつくった学校はいくつもありますが、まっすぐに彼らの精神を継承する学校は鴎友学園女子なのです。それを再び想起させてくださるのが柏校長だと推察します。

★いずれにしても女子校の意義の一般論を超えてそれぞれの独自の女子校論を語る3校長座談会。次回チャンスがあれば参加したいと思います。

 

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中学入試 新市場シェア30%定着か!?

★6月15・16日、首都圏模試センターと協賛する塾が「スタート模試」を小3から5年生対象に実施しました。その際に配布された資料の1つ「中学受験・新時代」という冊子を頂きました。驚いたことに新タイプ入試やPBL、STEAM、グローバル教育に持続的に取り組んでいる私立学校101校の事例が紹介されています。

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★ものすごいリサーチ力に感服です。そして時代がメリトクラシーや学歴社会を乗り越えようとしている新しい教育の世紀=21世紀型教育に突入しているダイナミズムが伝わってきます。

★2011年に、新しい中学入試時代のかすかな響きを聞き逃さなかった首都圏模試センターのメンバーはさすがです。慧眼というか慧耳というか。もちろんその響きを拡大したのは首都圏模試センターの功績でもあります。

★私立学校も、30%は明らかにこの響きに共鳴して高らかに新時代を謳っています。

★101校以外にも、工学院大学附属、駒沢学園女子、湘南白百合、新渡戸文化、北豊島、昭和女子、聖ドミニコ学園、トキワ松、桐蔭などまだまだ新時代を開いている学校があるなあと。

★新時代を開く市場のシェアが30%というのは、そりゃあ時代は動きます。

★また、一見従来型の70%の市場でも、「思考型」問題を4科目試験の中に大幅に入れている学校があって、そこからも新時代の音が響いています。

★メリトクラシーや学歴社会は、当面なくなりません。海外大学に行ってもむしろ厳しい序列主義や階級構造はあるでしょう。

★ただ、大事なことは、その枠の中でクリティティカルシンキングを稼働させられるか、新しい枠組みをクリエイティブシンキングしてしまうかどちらを選ぶかです。

★私立学校の70%は前者で、30%は後者ということでしょう。どちらにしても幸せな社会づくりに貢献する人間力を育んでいることは確かです。

★知識順応型自己、クリティカルシンキング型自己、クリエイティブシンキング型自己という3つの自己の要素を組み合わせて人間力は生まれてきます。そのどこが濃いかそして、その濃さは人様々ですから、豊かな個性的な人間力が私立学校から生まれています。

★それにしても、20世紀初頭にすでにハーバード大学が、知識型人間ではなく、創造的人間を生み出すぞと宣言していたわけです。日本の教育は100年遅れです。しかし、先進諸国の中で近代社会に仲間入りしたのは一番遅れてからでしたから、それはあたり前です。

★また、それがゆえ、100年のズレの中でいろいろな課題も見えていますから、アクセルを踏むことも可能でしょう。日本の教育は、ようやく本格的に始まったのです。そんな時代に立ち会っているのが私たちです。ワクワクしませんか!

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2024年6月22日 (土)

田園調布学園 建学の精神があらゆる教育活動で鼓動しているギミックが緻密

★本日、田園調布学園中等部・高等部の学校説明会に参加しました。受付が始まる少し前に行ったのですが、すでにたくさんの受験生・保護者が訪れていて、説明会が始まるまで、キャンパス内を自由に歩き回っていて良いということのようでした。校内MAPが資料の中にあったので、自由にいろいろな場所を見学しているその姿は自由闊達な雰囲気にあふれていました。午前中土曜授業があったため、午後からの説明会・クラブ体験の準備に在校生も大忙しでしたから、アクティブな雰囲気が一層キャンパス中に広がっていました。

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★学校説明会は、柔らかい雰囲気を生み出す司会を教頭先生がゆったりとそれでいてきっちり45分で収まるようにナビゲートしていました。今回は学校説明会の後にクラブ体験がありましたから、受験生がたくさん参加していたのです。それで、学校の授業時間に合わせて設定したようです。

★清水豊校長が20分くらいお話になったのですが、わかりやすくそれでいて建学の精神が生徒にとって自分事になるような意義深い話をされていたし、ルーブリックの話もしていました。建学の精神があらゆる教育活動に浸透するには、認知能力3つの視点と非認知能力3つの視点を掛け合わせた9つの視点でできるルーブリックの基準があるからでしょう。

★この基準が一気通貫している代表的な教育活動として、「探究」「教科横断」「グローバル教育」について概要を話されました。いずれも建学の精神「捨我精進」という自分に向かい合い自分の枠をその都度超えていくための体験というギミックが緻密にデザインされているのが伝わってきました。

★そして、校長先生の話を引き継ぎ、入試広報部長の細野智之先生が、具体的にプレゼンしていきました。探究では「デザイン思考」というスタンフォード大学などで開発され東京大学などでも活用され、結果日本の中高にひろまりつつあるプログラムエンジンですが、田園調布学園はそれをすでに自在に活用しているのです。

★教科横断についても、感動的なのは、不得意な教科も、教科横断によって知的刺激を受けて、生徒は新たに興味関心っをもつきっかけになるのだというとらえ方でした。その知的好奇心は、さらに170種類もある土曜講座で学ぶことによって拡大するのだというのです。

★そして、このような学びはすべて「捨我精進」という自らの枠を壊し続けて成長するギミックが埋め込まれているため、自分とはいかなるものかを追究していくキャリア教育に結びつくのだと。

★結果的にものすごい大学合格実績が出ているわけです。

★実に合理的に同時に生徒の人生そのものを非常に重視した教育がデザインされているということが伝わってきました。

★説明会終了後、受験生と保護者はそれぞれのクラブ体験に向かっていったのですが、歩きながら「非常にわかりやすい説明会だったよね」と親子で話し合っている声が聞こえてきました。全くその通りだと思います。

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文化学園大学杉並中学・高等学校50周年記念祝賀会 燃えよ価値あるものに!

★昨日、文化学園大学杉並中学・高等学校の50周年記念祝賀会が盛大に開催されました。松谷理事長、青井校長、DDコースのBC州から就任されているTimothy McGreer校長、相澤常任理事が、一堂に会した150人を超える教育行政・学校・教育関係者などに50周年を迎えられたことに感謝の意を心のこもったおもてなしの精神で語っていました。それぞれに未来の文大杉並とその教育の社会的使命について高らかに謳っていました。

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★文大杉並のスクールモットーが「燃えよ価値あるものに」というWhatやHowの生まれる根底にあるValueを掲げているハイセンスにいつも新しさを感じていたのですが、50周年というのは、私立学校としては新しい学校なのだと改めて感じたわけです。

★逆に言えば、50年という歳月で、こんなに新しい教育を構築したとは驚きでもあります。祝賀会の各テーブルには同校の先生方が1人ずつおもてなしをしてくださったのですが、私たちのテーブルには若き高3学年主任で地歴公民科主任の鈴木直紀先生がついてくれていました。

★鈴木先生は次世代教育開発部のメンバーで同開発部部長の染谷先生と企画戦略的な仕事もしているということでした。

★青井校長が、21世紀型教育(DDコースやPBL、STEAM教育)を完成させてきたからいよいよ22世紀型教育に向けて準備を進めていくと語っていた言葉通り、鈴木先生はそのビジョンを共有し、それでいて実ほど頭を垂れる稲穂かなのごとく謙虚でポジティブな笑顔がすてきな、いわゆる好青年でした。

★かつて、当時理事長だった相澤先生が、「本間さん、うちには柔軟で優秀な頼りになる若い教師がいっぱいいるから、まあ見ていてください」と語ってくださったことを思い出しました。染谷先生は有名人ですが、たしかに、この間お会いした進路指導部長の篠塚先生、そして昨日お会いした鈴木先生は、相澤先生が語っていた先生方のメンバーなのでしょう。

★それに、鈴木先生が文大杉並で最も明るく未来思考の持ち主だと教えてくれた入試広報部長の西田先生も若いですね。

★松谷理事長が、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の常任理事でもあるので、アルカディア市ヶ谷(私学会館)でお会いする機会も多いのですが、「学校は人的資本経営でないとね」と満面の笑みを浮かべる時があります。

★文大杉並の不易流行の「不易」そのものが新しいし、「流行」は常に最先端で、ファッショナブルで本質的な知性溢れる人材を集めているし、経営陣がクリエイティブクラスであることに改めて気づきました。吹奏楽部の奏でる響きと薙刀部の舞いが巻き起こす息吹に感動した祝賀会でした。

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2024年6月21日 (金)

新しい高大連携の兆し 高大連携アントレプレナーシップ

★本日の日経の記事「大学発スタートアップ、5年で9割増 地方にも起業の波」(2024年6月21日)にはこうあります。「大学の研究成果などを生かして起業する「大学発スタートアップ」が増えている。経済産業省の調査では、2023年度は4288社と5年前より9割増えた。学校数あたりの企業数は富山県が最も伸びた。民間出身知事のトップダウンによる支援体制の強化などが奏功しており、これまでの大都市中心から全国へと起業の裾野が広がる。」

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★富山に限らず、北海道でも広がっているようだ。地方創生は、大学がハブになるということか。政府は、大学だけではなく、高校にもグローバルアントレプレナーシッププログラムを支援している。

★したがって、今流行っている高大連携は、高大アントレプレナーシッププロジェクトに進化していくだろう。

★医療機器などのイノベーションは、クリエイティビティを発揮する最近の探究型プロジェクトは親和性があるだろうし、総合型選抜も即戦力が大学につながる可能性も大きくなってきた。

★メガバンクも大手株式会社の株を放出し始めているようだし、新しい資本主義は学問知とイノベーション知の化学変化によってさっさと生まれるのだろう。

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中学入試で「シンプルな考え方=コンセプトレンズ」を身体化する学びができる

★中学入試準備の学びはいろいろなやり方があります。中学入試問題から逆算して、小学校低学年にもできるようにブレイクダウンして、徐々にハードルをあげるカリキュラムデザインが一般的でしょう。これはできる子にとっては、どんどん難問に挑戦していき楽しめます。しかし、一方で、躓き始めると、進めなくなります。ここで必死になるわけですから高ストレスになるのは当然です。

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★これは実は何も中学入試に限らず、大学入試準備の学びも一緒です。つまり、学習指導要領も同じなのです。ですから、個別に補習することが必要だったり、ピアインストラクション(PI)などの創意工夫がされています。あっ!PIは意外と実施されていないかもしれません。

★もしPIをやると、考えるコツみたいなものがそれぞれの生徒の中に宿り始めます。身体化されるわけです。ただし、これは、自分でどんどんできる子も宿っています。PIによって宿ることもあります。個人指導でも宿ることはあります。

★しかし、このコツ、つまりシンプルな考え方=コンセプトレンズを身につけられるようにというビジョンがあれば、多くの生徒が自覚的に身体化していくことになります。

★そして、このコツは、1人ひとりによって微妙に違います。最大公約数の5つの視点はあるのですが、それを教えても身体化しないのです。

★3歳の子どもがラジコンスタントカーで楽しんでいる場合、ここに「0」「1」の真偽の計算を自動化しているなと教師が意識し、コントローラの操作を対話しながら、楽しみます。もちろん、真偽の論理を教えるわけではありません。

★小学5年生とスマホの通信の波形を見える化して、直角三角形とどうかかわるか尋ねてみたりしてみます。別に三角関数を教える必要はありません。しかし、この教師の意図は、やがて真偽の論理や三角関数を理解できるようになることではないのです。その単元に出会ったときに、経験が結びついたり、結構シンプルな考え方で解けるなという感覚が身に付くことが必要なのです。

★この感覚が、あらゆる局面で活用できるようになることがポイントです。もし、それができるよういになったら、コンセプトレンズが見事に身体化したことになるでしょう。身近なものには、電子顕微鏡にそのコンセプトレンズを装着して考えるとよいし、遠くのものには電子天体望遠鏡にそのコンセプトレンズを装着するとよいわけです。

★そんな自分なりのコンセプトレンズを身につけることを、GLICCでは、国語と算数と英語で学びながら実施しているのです。本日21時から、盟友のGLICC代表鈴木裕之さんと対話します。GLICCで学んでケンブリッジや東大、一橋、早稲田などに進学した帰国生が身体化していったコンセプトレンズですね。

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私立中高の不易流行の位置づけ➋ 東京私学教育研究所の考え方をきっかけに

★よく私立学校は、伝統と革新の統合という考え方を提示します。それはイギリスのイートンも同様です。もともと私立学校は、イギリスのイートのような私立学校としてのパブリックスクールの影響を受けています。アメリカのプレップスクールもそうです。ですから、この場合の伝統を意味する「不易」の部分は、「普遍」と置き換えたほうが私立学校の系譜としては自然かもしれません。

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★イートンのような私立学校は、近代国家誕生前夜から存在していますから、もしかしたら国家を超越した精神構造を持っている可能性があります。私学の建学の精神は、世界に目を向け国をどうするかという視点があったと思います。そして「流行」は、建学の精神が抽象的な普遍の表現になっているので、そこは時代を牽引していくときのイノベーションを取り入れ、普遍的具体を表現していくということなのでしょう。

★私立学校の場合、「不易流行」=「普遍的抽象×普遍的具体」といえるかもしれません。

★公立学校は、近代国家が制度上つくりあげた学校なので、あくまで国民を育成するためが理念になっていて、憲法が変われば、不易の部分も変わるでしょう。

★ただし、公立学校の教師は、クリティカルシンキングは民主主義国家の憲法上は保障されていますから、国の制度上、行政上の動きはモニタリングすることはできます。不易流行の精神構造の制度的な位置づけがそうなっているだけで、教師一人ひとりの精神の豊かさや深さに優劣は当然ありません。

★私立学校であれ、公立学校であれ、教師一人がひとりがどのようなマインドを発揮するかは、自由です。とはいえ、いろいろな制約の種類が私立と公立とでは違うので、その違う制約の中で、どのように創意工夫して教育出動をするかは、やはり教師一人ひとりの力量に任されます。

★それゆえ、東京私学教育研究所では、東京の私立学校の先生方と協力して教師のマインドとスキルを磨く研修を実施しているのだと思います。

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私立中高の不易流行の位置づけ❶ 東京私学教育研究所の考え方をきっかけに

★東京私学教育研究所の【研究所ブログ第25回 全国夏の初任者研修】で初任者研修で提示される内容が一部公開されています。その中に以下のような図があります。当然ですが、建学の精神から私立中高の教育は生まれ進化しているということがわかります。まさに「不易流行」なわけです。おもしろいのは、建学の精神はマインドであるはずなのに、建学の精神とは別にマインドが設定されています。

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★これは、初任者のマインドを示しているというのがブログを読めば了解できます。建学の精神と初任者に限らずですが教師のマインドはその在り方や価値観は全く同じではありません。相互に尊重し、化学反応が起こり、良好なベクトルがたくさん生まれるという仕掛けになっているようです。

★組織によっては、組織の理念に自分のマインドを合わせる同調圧力的な事態もありますが、私立学校の場合は、不易流行という精神構造になっていますから建学の精神の不易の部分と出会った教師や生徒、保護者それぞれのマインドと信頼性のある適合的な化学反応が起こる対話システムによって不易が流行になっていくというエンジンが重要だということでしょう。

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2024年6月20日 (木)

聖パウロ学園 ソウルシップ(魂のリーダーシップ)が生まれつつある

★昨日は、聖パウロ学園高等学校校長小島綾子先生といっしょに四谷にある聖パウロ修道院を訪れました。私も副理事長なので(汗)。聖パウロ学園は、もともとは修道院が創設した学園です。しかし、長い歴史の間に、法律ができて、宗教法人と学校法人は別法人なりましたから、今は経営的には互いに独立しています。しかし、聖パウロという精神的支柱は当然同じですから、ミサの時には神父がやってきてくれ。

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★今回お会いしたのは聖パウロ学園の卒業生でもある前管区長の澤田神父です。日本のカトリック教会も世界と事情は同じで、聖職者の数は少なくなってきています。ですから、世界を飛び回っています。日本にいないときは、サレジオ会の神父様にミサを依頼します。

★神父の皆さま方は、当然忙しいのですが、ミサ終了後、上智を受験する生徒や哲学や社会学に興味がある生徒と対話をしてくれます。

★昨日も澤田神父と対話をした後、小島校長は急いで高尾に戻りました。探究ゼミでサレジオ会の関谷神父がワークショップをすることになっていたからです。

★信者はほとんどいません。聖職者も常駐していません。しかし、幾つかの修道会と連携して、カトリック学校の軸を持続可能にしています。そんな中で、澤田神父が、なぜ聖書や神学を学ぶのかと問われました。それはおそらく哲学や社会学、今では経営学にも通じることです。AI世界ではますます重要です。

★世界の政治経済の軋轢がなぜ起こるのか、どうしたら解決できるのか、その知恵を無尽蔵に学ぶことができるからだというのです。

★さすがはパウロの弟子です。そうこなくては!聖パウロ学園に入学してくる生徒は、偏差値エリートではまったくないのですが、自分を変えたいという希望の火を灯して入学してきます。

★その静かな情熱をこのグローバルリスクが遠くの出来事ではなく、生活圏内に及んでいる今だからこそ燃やすのだと。聖パウロ学園のスクールモットーであるゴールデンルールを胸に探究という人生の道につながる学びを行っています。

★そして、数々のボランティアや未来都市構想コンクールなどで教育出動しています。その姿は魂のリーダーシップそのものです。私はそれを「ソウルシップ」と呼びたいと思います。

★もちろん、大学進学実績もなかなかななものです。たぶん、入学の時に比べるとちょっとあり得ない感じかもしれませんね(微笑)。

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富士見丘 高1 今年もグローバルワークショップ始まる

★富士見丘の中1から始まるグローバルエッセイ(「5×2」という自主探究)活動が、高1になるとグルーバルワークショップに能力が発揮され、高2になるとグローバルスタディーという海外でのフィールドワークをベースにしたグローバル探究に発展していきます。

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★その高1のグローバルワークショップがいよいよ今月始まりました。このワークショップは、慶應義塾大学大学院メディア研究科大川研究室とのコラボ授業で、今年度でもう10年目を迎えたと言います。

★今年度は「LEGO」を使い、創造力やコミュニケーションを養う「STEAM」の一環として実施されるようです。初回は、慶應義塾大学大学院の学生20数名がファシリテータとなり、英語で授業が行われたというのですから、いつものこととはいえ、驚きですね。コースに関係なく、全員がグローバル探究に取り組むのが富士見丘の特徴であり、言語も英語をガンガン使用していきます。

★LEGOは、あのGAFAMのブレインストーミングやフレームストーミングのミーティングでも活用されています。MITメディアラボとレゴ社が開発したプログラムで、世界中で活用されています。

★ただし、どのフレーム内で活用されるかで、効果は異なってきます。まさに多様なクリエイティビティを生み出す優れたプログラムです。

★富士見丘はグローバル探究というフレームで活用しています。グローバルな舞台では、「言葉」は最高の媒介ツールです。自分の想いや考えを表現するには「言葉」をベースにします。

★しかし、「言葉」はなかなか厄介な代物で、信頼関係ができていないと同じ「A」という単語を使っていても、感じ方や考え方がズレてしまいます。しかし、「A]という言葉を使っているのだから同じ意味を共有しているのだと錯覚してしまう場合はあるあるです。

★一方LEGOは、自分の想いや考えを形にします。そのときはじめてあった人でももともと同僚であった者同士でも、同じ形でも見る人によって違うという前提から出発することができます。違いがあるのは当然なのだから、そこを互いに対話してズレを修正したり、互いの考えがなかな噛み合わない時は、レゴを作り直して、第3のものを共に創ろうという流れになります。

★まさにブレインストーミングやフレームストーミングのきっかけづくりには最適だし、富士見丘のようにグローバル探究を軸にしている場合、「言葉」の大胆にして繊細な機能を身体化するには、ぴったりのツールでしょう。

★このような理論的な背景をルビンの壺のように「地」に置いて、「図」は大いに楽しもうというプログラムは、大学と連携することによってさらりとできます。

★富士見丘は、学問と教育現場をプロデュースする教師がたくさんいます。最近はやりの高大連携の中でも筋金入りの本質的な連携です。これは大きな富士見丘の特徴であり優位性です。

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2024年6月19日 (水)

21世紀型教育機構 着々と22世紀型教育の準備へ

★文化学園大学杉並のキャリア探究オープニングイベントの記事が、21世紀型教育機構に掲載されています。同機構は真摯に日本の教育を世界を作る智慧を共有するグローバルリーダーが巣立つ環境を創っている学校が加盟しています。文大杉並も加盟校の1つです。授業と探究とダブルディプロマを有機的に結合する学校になっているのですが、さらに外部のさまざな団体とビジネス的な取引ではなくコミュニティシップを発揮するつながりに成長しています。

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★各加盟校が建学の精神に基づいながら、そのエッセンスである<Men for Others>というマインドを共有し、基礎スキルであるC1英語、PBL、STEAM、リベラルアーツを共有する取り組みをしてきました。

★その共通マインドと基礎スキルを土台に、各加盟校が独自の先見性・先進性を発揮しているのです。

★同機構加盟校の2024年度海外大学合格者数も合わせると100大学は優に超えています。

★もちろん、大学合格第一の目的ではなく、大学を超えたその先の生徒1人ひとりの生き様(22世紀を彼らが作っています)を形成する過程が重要です。

★その過程の具体的な展開の1つが今回の文大杉並のプログラムです。

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2024年6月17日 (月)

文大杉並、和洋九段女子、駒沢学園女子 思いがけず利他

★先週、文大杉並のキャリア探究オープニングイベント、和洋九段女子のPBL体験、駒沢学園女子校長土屋先生がプロジェクトリーダーをしている研修を見学しました。この3つに何か共通しているコトがあるなと日曜日は孫と遊びながらモヤモヤリフレクソロジー状態でした。そうしているうちに、ふと孫が主体で私は受け入れているけれど孫が楽しくなくてはその受け入れはハッピーではないという状態は、まさにこの3つのイベントでの先生方の役割に通じるのではないかと感じたのです。

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★そんなとき、偶然にも東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授中川岳志さんの「思いがけず利他」という著作に出会ったのです。まさに❝思いがけず❞でした。

★中川さんは、「リベラル保守宣言」という著作も随分前に描かれていて、私学の精神とは親和性があります。そう感じたのは、ここのところ「リベラルアーツ」ということについて思い巡らしていたということもあるかもしれません。

★この著作の中で、与格構文についてのエッセイがあります。中川さんはヒンディー語も学ばれていたようで、この言語では主格構文と与格構文を使い分けているというのです。私がコントロ―ルできないことについては、私に与えられたという感じの与格構文で表現するというのです。

★コントロールできないということは、「思いがけず」出会ったり、直面したりということです。こういう状態を与格構文で表している状況を中川さんは「思いがけず利他」と呼んでいます。

★ああ、これだなと。どの国でもこの与格構文的な発想はあるけれど、文法として、つまり言語文化として身体的にルールになっているというのは確かに珍しいかもしれません。

★なんでも「私が~、私が~・・・・」は、ウンザリします。しかし、それは私たちが主体構文と与格構文を使い分けていないから起こることだったのかもしれません。ファシリテーターは与格構文的「思考動」の役割を果たしています。しかし、何か危機が訪れると、それはリスクマネジメントは自らが動かなければなりません。

★リスクによっては、コントロールできず、主格構文が与格構文的な最悪な事態になってしまうこともあるでしょう。

★したがって、中川さんは利他=善という図式はとりません。

★心地よい学校とは、学校の教師が主格構文と与格構文という両方の発想の平衡感覚が優れているということだと感じたのです。

★経営陣は、リスクマネジメントという安心安全な組織を形成し、その中でその平衡感覚が教師にも生徒にも保護者にも共有されていることがすてきな学校だなと。

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2024年6月16日 (日)

なぜ「英語・国語・算数」入試を推奨するのか。GLICC鈴木裕之代表。

★先週金曜日、<GLICC Weekly EDU 第176回「グローバル教育の第3の波ー言語の学び方」>で、GLICC代表鈴木裕之氏とGLICCの言語の学び方についてコンセプトについて対話しました。GLICCは、帰国生や英語をベースにした学びの方法で受験する生徒を応援しています。したがって、その応援の範囲も、中学受験も高校受験も国内外の大学受験もすべてにわたります。

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★もともとは、帰国生の大学受験から出発していますから、中学受験は英語入試が行われるようになってから開講しています。帰国生の大学入試は、C1レベルの英語力と小論文の指導が中心です。帰国生の多くは、IBやAレベル、あるいはそれに準じるカナダなどのハイレベルの教育を受けていますから。そのような帰国生は、対話型を望むので、なぜか口コミで少人数ですが、GLICCで学びます。東大、一橋、早稲田を中心に合格していくわけです。

★高校受験も帰国生が中心ですから、このようなGLICCの言語能力の学びをベースにすればよいだけです。

★一方中学受験生は、大学の帰国生が習得しているリベラルアーツ的な素養をまだ獲得していないので、そこから始めます。中学受験で「帰国生入試」と「英語・国語・算数」入試を推奨するのは、そういうわけなのです。

★帰国生入試を受験する生徒は、2通りあって、高い偏差値の学校を狙い、そこに合格して東大などの最難関の大学に入りたいという日本型大学進学タイプ。もう一つは、偏差値が高くなくてよいが、高偏差値の学校では学べないグローバル教育を行っていて、国内外のキャリア志向というグローバル大学進学タイプです。

★GLICCに通う生徒は、国内外に視野を広げているグローバル大学進学タイプの生徒です。

★ですから、中学受験の段階でも、すでにグローバル大学進学タイプの学びを行っていくことを推奨しているのです。そのようなキャリア教育を行っているあるいは実質的にそうなっている首都圏私立中高24校も鈴木さんとの対話の中でしました。今後は、このような学校に続いて海外大学実績を出していくと予想されるのは、和洋九段女子と駒沢学園女子、サレジアン国際グループだという話も加えています。

★さて、「英語・国語・算数」入試の準備のためにどんなふうにリベラルアーツを学ぶ教材を創っているのか?これはかなり企業秘密というか、おそらく中学受験でそんな深い学びをわかりやすく表現しているのかと驚かれるでしょう。学びは、やはり本質的なものです。公立の小学校で、そこまで行えないのですから、やらざるを得ないというのが、今の世界の中の日本の教育の現状です。

★「国語・算数・社会・理科」の中学入試の準備の学びにも実はそのような本質的な学びは塾によってはやっていますが、多くの場合、そんな小難しい話は保護者にはわからないから(実際には、保護者の方がよほど本質的なんですが)と、わかりやすさを前面にだしています。

★受験であろうが、一条校の学校であろうが、学びは本質的でなければ。そう思いませんか(微笑)?

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2024年6月14日 (金)

一部の生徒しか得意でないからそのカリキュラムはダメだというパラドクス

★以前から結構耳にする言葉「一部の生徒しか英語ができないようなカリキュラムはだめだ」「一部の生徒しかICTのスキルが向上していないようなカリキュラムはだめだ」というのは、ちょっと考えるとどこかがおかしいと思いませんか?

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★世の中、英語やICTだけではなく、国語でも数学でも、化学でも、歴史でも、みんなができるカリキュラムなんてあったためしかないのですから、もし先の言葉が本当なら、みなダメなカリキュラムですよね。でも、そんなことをいう人はこれまたいないのです。

★思考というのは、「置き換え」が得意なので、その視点で見ると、実は、「英語ってそんなに必要なのか」とか「ICTってそんなに必要なのか」といいたいところ、「公平性」というウケのよい考え方を部分的に適応して語っているレトリックにすぎないのです。

★そんなにすぐれたカリキュラムやプログラムだって、生徒によってはうまくいく場合もそうでない場合もあるわけです。

★だって、生徒一人ひとりは個性もあるし、才能もあるからです。個別最適化というのは、本来その生徒一人ひとりの個性や才能に合わせた学びの環境をデザインすることなのでしょう。

★ところが、個別最適化によって、デコボコの学力をみな同じにしようというようなお話ですから、個別に面倒を見て画一的な学力を身につけようという逆説的なお話に聞こえるのは私だけでしょうか。

★たとえば、ハワード・ガードナー教授による8つの多重知能は、みな8つの知能を高めようというわけではないのです。得意不得意があるよというはなしですよね。それをどのようにミックスしていくかは、本人や教師のサポートによって様々でよいはずです。

★資質・能力についてだって、多様であって、そのすべてを高めようというわけではないはずです。

★ところが、実際はそうなってしまうのが「公平性」という罠なのかもしれません。

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グローバル教育を実施している私立学校はリベラルアーツが前提

★グローバル教育を行って海外大学進学の成果を上げている学校は、国内の大学に入らないということはまったくないのに、そういういう先入観や偏見をメディアの中には流してしまうところがあることに、受験生・保護者はお気を付けください。

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★私立学校は建学の精神という価値を大事にし、そこから時代のニーズや新しい方法、そしてモノやコトをつくったりゲットしたりできる全人的な人間教育を行っています。

★英語資格入試を行ったからと言って英語の学びしかしないということはないのです。完全インターナショナルスクール的な話でもないのですから、英語がうまくいかなければ、その他の得意な学びや探究を生かせるクラスやコースに変更してもらう相談もできるはずです。もしも、完全インターナショナルスクール風の学校があるとしたら、それは例外ですから、その学校を選ぶときには、ちゃんと覚悟した方がよいということです。

★すべてのグローバル教育を行っている学校がそうなのではありません。

★それに私立学校である限り、上記の図のような総合的な教育を行っているのです。

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★それから、グローバル教育を行っている学校は英語が世界共通言語だなんて考えていません。リベラルアーツ(この用語を使わないにしても)という言語・数学・芸術・体育というトータルな学びが、世界共通の教養だと考えて教育を実践しています。その世界共通の教養があるから自然科学や社会・人文科学などを学際的に統合できる新しい研究視点を身につけられるのだと。

★そうそう、STEAMという言葉を掲げて教育実践をしているところも、これはリベラルアーツの現代版ですから、結局グローバル教育を行っているのです。

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2024年6月13日 (木)

受験生・保護者の方に 伸びる学校 経営とあらゆる教育活動すべてをつないでいるものがポイント

★福島で出会った理事長・校長の話を聞いたり、東京の私立学校の見学や先生方のお話をお聞きして、伸びている学校や2030年問題を乗り越えられる学校の特徴は共通しています。

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★建学の精神を気魄をもって実現しようとするときに、コンセプトアイデアがキラリと光っています。

★そしてそのアイデアの光は、「?」から来ているのです!

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2024年6月12日 (水)

実践研究の研修 実践報告との違い

東京私学教育研究所の英語の研修委員会の企画がおもしろいですね。英語の授業の「実践研究」のワークショップを青山学院大学教授の髙木亜希子先生を招いて実施するようです。

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★「実践研究」は、英語だけではなく、国語でも行われているし、そもそも教育の範囲をこえて行われている手法です。「実践報告」も重要ですが、ディスカッションや質的研究を通して、改善点を見出していけるのが特徴です。

★東京の私学限定の研修ですが、「実践研究」と「実践報告」の違いを認識するということだけでも重要だと思います。

★また、PBLやアクティブラーニングを行うことは量的研究と質的研究の両方を行うことですから、ルーブリック評価を作らざるを得ないのです。もしこの実践研究の方法を知ったら、教科横断とか探究とかで先生方が抱いている広く同じ悩みを払拭するヒントになるかもしれません。

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2024年6月11日 (火)

受験業界の重鎮のみなさんの私立中学を見る眼 AERA with Kids PLUSの記事をin vivo コーディングしてみると

★AERA with Kids PLUSの記事「男子御三家の志願者数がそろって減少 増えたのはどんな学校?【2024年中学入試】」は、受験業界の重鎮と呼ばれている方々の考え方をうまくまとめています。そこで、in vivo コーディングをして、生成AIでカテゴリー分けしてみました。こんな感じです。

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❶人口動態と受験率、志願者数、人気などの変化

・小6人口の減少が続くなか、首都圏の中学受験率が調査開始以来初の18%超えを記録。(A2)
・今年の特徴は難関校は志願者数を減らした学校が多く、ボリュームゾーンの中堅校で志願者が増えていることだ。(A2)
・最難関校が多様性を踏まえた入試改革を行った意義は大きい。(C1)
・男子校の人気も続いており、上位校では攻玉社が1242人から1411人、高輪が1974人から2238人、成城が2261人から2468人とおしなべて増え、受験生にとって厳しい戦いになっている。なかでも巣鴨は2年連続の増加で、今年は1870人から2019人に増加した。(A2)
・学習院女子は714人から918人に、大妻が1617人から1679人に、共立女子が1496人から1552人に、普連土学園は759人から1132人と大幅に増加した。(A2)
・自主性を伸ばしている元気のいい女子校が人気。人気が上がりすぎて敬遠された学校もありました。(C2)

➋大学合格実績

・駒場東邦は23年度に東大合格者を72人輩出し、そのうち理科三類に5人合格。早稲田は東大に39人合格し、うち3人は推薦入試だった。(A2)
・男子校では、東大や国公立大学の医学部の合格者数は、やはり高く評価されます。(C1)

➌私立学校の対応と信頼性

・コロナ禍において私立がオンライン授業をいち早く立ち上げ、心のケアをていねいにおこなったことで信頼が深まった。(C2)

❹教育プログラム

・中高一貫校が得意とする探究を柱に据え、国際バカロレア(IB)を取り入れたグローバル教育を行う。(C1)

➎保護者の意識変化

・上位以下の学校で志願者数が増えた要因は、保護者の意識の変化が大きい。偏差値だけではなく、我が子に合った学校を選ぶようになったからだ。(C2)

➏共学か別学か

・共学志向が一段落し、男女別学が見直されているのも近年の特徴だ。24年度は特に女子の伝統校の人気が復活した。(A2)

➐学校施設の影響

・新校舎も好感。 (C1)

★各項目に思考コードを振ってみました。AとCが多いですね。情報記事ですから、Aという事実とCという見識で構成されているのは非常にシンプルでわかりやすいですね。

★受験生・保護者の方も、これら7つの視点で学校選びをしていると思われます。重鎮のみなさんの私立中学を見る目の影響力は凄まじいです。一方、私立中学側も、これらの視点で広報をしつつ、❹の教育プログラムは当事者ですから熱く語ります。しかし、ここは目に見えない部分が占めているので、空回りすることも多く、相当意識の高い保護者でなければ理解が難しいところですね。❹と➎はおそらく連動しているので、何かここが伝わるような方法があれば、重鎮のみなさんには、その知恵をお借りしたいと私立学校側は思っているでしょう。

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2024年6月10日 (月)

東京私学の新たな動きと全国の私学の動きが連動し始めた

★東京私学教育研究所のサイトに次のような記事が掲載されています。「【研究所ブログ第21回】東京私立中学合同相談会 教育プログラムの新たな動き」がそれです。同研究所は東京私学の研修企画運営をサポートしています。年間60くらいの研修を実施しています。その研究所が私学の動向について記事にするというのはちょと驚きです。

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★しかし、記事によると、受験生・保護者の学校選択意識の中に、進学実績だけではなく、雰囲気や教育プログラムになるというデータが判明したので、考察してみたということのようです。

★というのも、研修の委員会は25種類あって、委員のメンバは、東京の私学の先生から公募で選ばれています。120名強のメンバー数です。その先生方は、合同相談会でも自校の教育プログラムをプレゼンしてるわけです。そのとき、研修の成果をアレンジして現場でも活用しているし、現場の成果を研修プログラムで紹介もしてくれています。そのような内容も合同相談会で語られているというのを当日運営メンバーでもあった東京教育研究所の所員が、フィールドワークよろしく感知したということのようです。

★それを研究所内でシェアしたために、このような記事が編集されたのでしょう。

★たしかに、研修委員のメンバーは、高度な学力形成のための研修プログラムも作成しますが、より広い探究型の研修プログラムもデザインしています。上記の図のように第三象限の小さな円が、座標全体に広がる円を描くようにプログラムはデザインされていますね。

★そして合同相談会でも、その円が示す学びの領域は、どの学校も広いものだったのは間違いありません。

★東京の私学がこのような動きをしていることは、全国の中学の2%弱を占めている小さい動きですが、結構影響力はあるかもしれません。5月の合同相談会では中学だけでしたが、高校となれば、数が増えますから、全国の高校の約4%シェアです。

★3%の穴という考え方があります。3%シェアは、一見世の中は気づかないような雰囲気ですが、気づかれるやそのシェアは一気呵成に拡大します。

★福島の一般財団法人日本私学教育研究所主催の研修会に集まった全国からの私学100校の理事長校長の意識は上記の図と同じような広がりで教育を運営していました。100校は全国の高校の2%ですが、様々なイベントなどの公務により参加できなかった私学もあります。

★全国の私学は、日本私学中学高等学校連合会で一丸となって教育のフロントランナーになろうとしています。2030年から転げ落ちるように激減する15歳人口を見据えて、動いていることは、福島の研修で大いに感じました。

★全国の高校の数に占める私学は約30%です。地域によって圧倒的に私学が少ないところもありますが、連合会がサポートしながら、私学全体で日本の不易流行型教育を牽引していくビジョンが最近明快に見え始めたのです。

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2024年6月 9日 (日)

学校法人石川義塾中学校・石川高校の教育システム その私学ならではの独自性 生徒が7つの習慣×ルーブリックを実装➋驚きの設計

★学法石川が7つの習慣を教科の授業でも取り入れているということは前回ご紹介しました。そして、これら7つの習慣は、明治以来日本で取り入れられたイギリス流のプロテスタンティズムや功利主義的な個人を磨き上げる習慣です。現在では、東大法学部や慶応義塾大学法学部、一橋大学法学部が、このハイエク主義的なリバタリアニズム法学が大きな流派になっている程です。もちろんJ. ロールズ的な公正的正義論も影響力を持っていますが、リバタリアン寄りのリベラリストの研究者のグループが多い可能性があります。

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★その流派は市場の自由主義的原理を尊重しますが、新自由主義のような保守的な権威主義は大嫌いですね。この例に象徴されるように、7つの習慣やコンピテンシー論は、どちらかというと背景にはハイエク主義があります。自由な個人の才能が利益をあげ、結果的に慈善事業などで社会貢献するという考え方です。ビル・ゲイツがスーパーモデルですね。現実社会で生徒が生き生きといきるには、このような能力が必要だという学法石川の意志決定は、不易流行の流行の部分でしょう。

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★一方で、建学の精神10項目と認知科学的基準を10項目つくりルーブリック化し、生徒が内省してノートに記録していくというリフレクションの軸づくりの機会をたくさん設けています。建学の精神は言うまでもなく不易流行の不易の部分です。そして認知科学的な側面は、現状で普遍的な学びの理論です。そういう意味ではやはり不易の進化の部分です。不変の不易と進化する不易の両面を持っているルーブリックです。西洋プロテスタンティズムやリバタリアニズムの成功主義の7つの習慣と掛け合わすことによって、理想と現実を統合する凄まじい人間力が形成される学びの場を学法石川は形成しています。

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★ここからは、私の独断と偏見ですが、上記のマトリクスのように7つの習慣と20のルーブリックを掛け合わせると、★印は共通して育成される資質・能力ですが、空白部分は共通していない部分です。特に凄いのが、青の欄です。ここは、7つの習慣で養うことができない精神の領域を表現しているのですが、なぜ7つの習慣で育成できないのか?

★それは、マズローの五段階欲求説で、実は第6段階目があるのではないか。それは悟りに近い境地だと言われています。またハワードガードナーも多重知能で8つではなく9つ目があるのではないかと。8つ目は実存的内省なのですが、それを超えるやはり悟りのような9つ目の才能を入れるべきかどうか迷っていました。GAFAMはそこは迷うことなく、マインドフルネスやZENを取り入れています。

★ですから学法石川の7つの習慣と20のルーブリックを掛け合わせて育成する人間力はプロテスタンティズム精神だけではなく、江戸以来武士が大切にしてきた「道」の精神も統合しているのではないでしょうか。

★あの澤柳政太郎が、公立学校でも教鞭をとりつつ大正自由教育のウネリをつくっていくのですが、私立学校も創らざるをえなったのは、公立学校は明治維新以降法律進化論をベースに富国強兵・殖産興業を促進するのが官学で、私学はそれだけではなく、福沢諭吉のように英国流儀の経済学を取り入れながらも儒学のベースをもっていたし、麻布の創設者江原素六も、儒学とプロテスタンティズムを統合しようとしていました。渋沢栄一も日本の資本主義の父ですが、道徳経済一元論で、「論語と算盤」はその象徴的な書ですね。実際実践しました。

★つまり、私学は、欧米化のみならず、江戸の学問と欧米の学問の統合をはじめから目指していたのでした。そのルーツは横井小楠でもあったのではないかと思っています。酒癖が悪く、世でいう大思想家とは呼ばれませんでしたが、日本の近代化路線の契機をつくった「国是三論」は読み返さなければと思っています。明治の私学人や坂本龍馬、勝海舟などにも影響を与えた人物です。暗殺によって命を落としますが。

★いずれにしても、ギブアンドテークの市場原理主義ではない、ギブアンドギブというフランス社会学が発見した贈与論が今再び注目されている世の中です。それは、無私とか無欲とか悟りのような言葉とも類義語でしょう。

★今目の前にいる生徒は、22世紀社会を創っていきます。ギブアンドテークとギブアンドギブの平衡感覚が必須の社会です。学法石川は創設当初から見通していたのです。バックスキャンというより、そのアンビバレンツな社会に平和と愛をもたらす本質を見抜く心の眼を養うことが、子供たちが自ら未来を開いていけるのだという信念と気魄です。

★それを7つの習慣と20個のルーブリックを掛け合わせてシステマティックな教育を構築しているのです。22世紀型教育の準備を構想している私たちの仲間には大変なロールモデルです。

★8月友人と一緒に福島で研修講師を担当することになっていますが、学法石川のケースも紹介しながら、さらにこのようなルーブリックをシンプルにすべての教育活動で行い、その相乗効果が22世紀型教育を生み出すイメージを共有したいと気合を頂きました!

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学校法人石川義塾中学校・石川高校の教育システム その私学ならではの独自性 生徒が7つの習慣×ルーブリックを実装❶

★一般財団法人日本私学教育研究所が福島で開催した私学経営研修会では、全国から理事長校長(財団の役員も含め)が100人強集結しました。前回までにその模様の一部のメモをご紹介しました。さて、ここでは学校法人石川義塾中学校・石川高校(以降「学法石川」)の視察で気づいたことをメモします。今回の視察は、驚愕でした。というのも学法石川は、2時間で教育システムをすべて見せてくれたからです。

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★132年の歴史のある学校です。創設者は森嘉種。当時の石川町長吉田光一と協力して石川町の発展のため教育を通して貢献してきました。それは今も4代目理事長校長森涼先生によってさらに進化し続けられています。森嘉種は、石川藩の武士でした。ですから、儒学や仏教などの日本の学問をベースに、明治維新ではいってきた西洋の学問も習得して、世界学問を目指していました。欧米の教育は世界基準において大きな価値を占めていますが、最近は文化人類学者の知見が広まり、経済社会の考え方がより広くなっています。その中に当然江戸時代の日本の学問も射程に入っています。

★教育界で講演者として引く手あまたの田内学さんの金融教育論にもそれは反映していますね。欲望の資本主義から贈与論的資本主義とか倫理資本主義とかというわけです。また海城学園の校長大迫先生も欧米中心のIBに日本的な学問や文化、哲学を融合させる教育を実践しているのもおもしろい流れです。その流れを学法石川は132年前から生成していたのですから驚きです。

★学法石川が私立学校として出発する際に、あの澤柳政太郎と森嘉種との対話が転換点だったようだという話も同様です。視察の時に、すべての授業がアクティブラーニングで展開していたのですが、澤柳政太郎は、当時のデューイをはじめとする進歩主義的な教育を取り入れのちに大正自由教育の大きなウネリを生み出した立役者の一人です。学法石川の新しいアクティブラーニングも、そんな歴史を継承しているのかと歴史の重さと進取の気性の壮大な統合を目の前で見て、ワクワク、クラクラしました。

★明治時代はサミュエル・スマイルズの「セルフヘルプ(自助論)」と福沢諭吉の「学問のすすめ」がベストセラーだったと言われています。現在の学法石川は、フランクリン・コヴィーの「7つの習慣」と森嘉種以来の建学の精神と新しい学力のコンセプトを反映した学法石川独自の「ルーブリック」を掛け合わせて、すべての教育活動で、生徒1人ひとりが内省できるシステムを構築しています。

★実際「7つの習慣」を身につける授業も見ることができました。また「ルーブリック」もすべての授業の展開の中に織り込まれていました。ただし、それは授業では目に見えない大事な視点として扱われていました(これについては生徒の内省用のノートでは見える化されています)。

★欧米の先端的な教育「7つの習慣」と江戸から未来に向けてインド、中国、欧米の教育を融合した学法石川の独自の精神「ルーブリック」を見える化することで、教師も生徒も全員が共有する骨太な精神軸を形成しているのに参加者はみな驚愕したことでしょう。

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2024年6月 8日 (土)

私学経営研修会 in 福島県石川町 理事長・校長意見交換会と学校法人石川義塾中学校・石川高校

★今回の福島研修で有意義だったことはたくさんありますが、その1つは、自治体の人口動態と私立学校の役割との関係が各地域によってかなり特色が多彩だということと地域と私学のつながりが濃厚だったということです。神奈川の私立学校から参加した校長とも話し合いましたが、首都圏は、1つの地域に私学はいくつもあるし、地域をまたいで生徒が入学するため、地域とのつながりとなると都や県単位になって大掛かりになってしまいます。単独私学では物理的にうまくいかない。そのためどうしてもグローバルという結局は多様点とのつながりになってしまうわけです。

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★そんな話をはじめ多くの話題が、理事長校長がグループに分かれて情報交換をしたときに出てきたのですが、4つのテーマのうち「私立学校の特色と広報発信」というテーマのグループのときでてきた話を上記の図のようにまとめてみました。たまたまそのとき司会をということでしたので、最初、それぞれの理事長校長が思うところを話した後に、簡単にメモ書き程度でしたが図にして共有して、そこからそれぞれ深く掘り下げて情報をだしあっていきました。ちょっとここにはかけないようなディープで羨ましい話もあり、目からウロコだらけでした。

★紺色の部分が、当日話された話題です。先生方の話が目に見える話と目に見えない話があり、先にそれを氷山モデルで分けてから話を進めました。生徒募集に効果的な教育の特色と最も伝えたい特色だけれど言語化しにくい部分と分ける流れは、理事長校長にはすんなりでした。ワークショップにも慣れている理事長校長が多かったので、ブレインストーミングというよりフレームストーミングで行こうという流れは阿吽の呼吸でした。学校にいる時とはまた対話の空気が違いました。実際に改革を進めて切る若い理事長・校長(40代後半から50代が多かったですね。私は当然その中で年寄です)が多かったということもあるでしょう。

★生徒が主体的に説明会で発信させることはかつてはあり得なったけれど、今は経験が重視されるよういになったため、経験者が語ることは受験生保護者は大いに共感を示すし、その発信の経験それ自体がその生徒の成長にもつながるという積極的な意義があるということもさらりと。自分の学校に誇りを持っている在校生の存在こそ口コミにもなるしと。そこはさすが経営陣ですね。

★何より大前提は、地域にいかに愛されるかだということでした。それの具体的な活動は上記図の左の楕円の下の白抜きのところに並べました。

★教育の特色については、21世紀型教育(という言葉がでていました)的な方法論はもちろんやるのは当たり前だが、基本は不易流行で何か特別なことをやっているというわけではないと。ここには不易流行の捉え方がいろいろあっておもしろかったですね。流行はあくまで手段で不易を重視する不易中心タイプ。不易は目に見えるものではないので、その時代その時代に受験生や保護者に伝わりやすい道具を扱うという意味で不易流行進化論タイプ。不易を生徒の未来においてどうとらえるかという不易流行バックキャストタイプ。未来がどうなろうともいまここでの不易流行で未来に活躍できる人間力をという不易流行永遠の今タイプ。

★理事長・校長それぞれの気魄が生まれる原点がこの不易流行に対する持論のいいところですね。

★さて、図をまとめている中で、さらに気づいたこともありました。それは、オレンジの部分で、コンセプトレンズとしてまとめました。教育の特色と広報発信の一体化を理事長・校長のみなさんは考えていました。これぞブランディングです。そして広報発信のところは、社会課題に対する教師と生徒の主体的な教育出動や教育活動を受験生・保護者・メディアと共有するということが多かったですから、これは最近流行のブランドアクティビズムであると感じ入りました。

★それから紫の吹き出しの部分は、意見交換の時ではなく、休憩の時間とかバス移動の時とか個別に話題になったことを付け加えておきました。

★なぜ付け加えたかというと、この図に書かれていることすべてを理事長・校長の森先生は予言していたかのように、先生の学校法人石川義塾中学校・石川高校視察の時にすべて見せてくれたのですから。授業もオールアクティブラーニングで、DX化が進んでいました。一人一台と電子黒板とグループワークといろいろなアプリ、生成AIなども活用されていたのです。

★地域との連携や信頼もあつく形成されていて、なるほど生徒募集が公立学校よりも圧倒的に成功しているのです。特に建学の精神と学力に関するルーブリックによるセルフリフレクションシステムがすさまじいわけです。

★東京の私立学校にも大いに刺激になる実践研究となり感動しました。詳しくはいずれまた。

 

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2024年6月 7日 (金)

私学経営研修会 in 福島県石川町 人的資本教育スマート都市づくりに貢献する

★福島県石川町の八幡屋で全国の理事長・校長が集まって研修を行っているのですが、意見交換会やパネルディスカッションを聴いていて、東京の私学よりも偏差値のこだわりを捨てているということに気づきました。基本公立高校が優位ですから、そこと偏差値で競うのは、経営戦略的には優れているとは言えません。

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(bibg作成)

★それに藩校の継承とか藩の軍師が創設したとか、筋金入りの建学の精神に基づいた独自性を出そうという気概が凄まじいのです。東京の場合は、公立vs私立というより、私立vs私立という受験市場が拡張しているので、どうしても偏差値を無視できません。独自性だけでは偏差値のクビキから逃れられないのです。そこで、その受験市場の枠組み自体をフレームストーミングする必要があったのです。

★それがグローバル教育だったし、海外大学進学準備教育だったのです。要するに偏差値というドメスティック基準から、学習歴を土台に人間力を判断するルーブリックという世界基準というグローバルフレームで教育をする戦略です。

★ところが、福島にきて、グローバルだとかICTだとかは当たり前なのですが、地域との信頼関係や地域貢献の意識が相当高いのです。したがって「グローカル」という気概であふれています。

★2030年になると転がるように15歳人口は激減カーブを描きます。東京と決定的に違うのは、限界集落都市になることを意味します。するとどんなに独自の魅力的教育を行っていても、生徒がいなくてははじまりません。

★したがって、地方創生への貢献を私立学校はしなくてはならないのです。そういう人間力を育てなくてはならないのです。つまり人的資本教育スマートグローカルシティーですね。

★大学と中高は連携し、人的資本教育を自然と経済と精神が循環するスマートシティ。しかも少子化は回避できませんから、海外の学習者を集める努力です。それには大学という知のハブとの協力が必要です。日本だけではなく、世界の都市化現象は進むといわれています。

★それを日本各地でロールモデルをつくる。そのとき私立学校が大きく力を発揮するわけです。

★もちろん、このロールモデルは、海外にだけ効果があるだけではなく、日本の公立学校にも役に立つでしょう。ただ、グローカル教育に関しては、世界の人脈とつながらなければなりません。この人脈は実はプライベートでありパブリックである両義性のバランスが必要です。

★日本の生徒や学生が海外で学ぶことは、実はこのねらいがあります。明治維新も戦後も日本を救ったのは、海外の人脈をプライベートにもパブリックにも持っていた人物です。

★地方創生とは、かくして地域に根差しながらも教育の基準を世界基準に合わせ、さらにそのルールを自ら創る力量を発揮しなければなりません。

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私学経営研修会 in 福島県石川町 「教育政策と私立学校」 衝撃走る 少子化の本当の意味

★長塚篤夫先生(日本私立中学高等学校連合会常任理事・運営役員、一般財団法人日本私学教育研究所副理事長/順天学校長)からは、「教育政策と私立学校」というテーマで、目が覚めるような新しい価値創造をする時がすぐそこに迫っている希望と警鐘についてスピーチがありました。

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★全国から集まった理事長・校長は、2030年に急カーブで下降する15歳人口の少子化の問題や助成金の問題に関してはかなり創意工夫、新しいアイデアを持っています。それは講演の後の意見交換会で改めて了解できました。

★したがって、長塚先生の、少子化の問題や助成金の問題に関しては、共感し、理解をさらに深めていました。

★しかし、その少子化が何を意味するのか、UNESCOの世界の大学生の数の比較の話に移ると、衝撃が走りました。というのも、世界の大学生の数は2億5000万人強(2022年現在:UNESCCO調べ)。中国とインドとアメリカでその半分弱を占める。そんな中で日本は1.5%。

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★人的資本経営という流れは、最近ようやく日本の経済界でも言われるようになりましたが、世界はとっくにそうなっています。その中で、大学生の数(大学院生も含めます)は、減っていくし、世界で太刀打ちできない知的財産の劣化の可能性があるわけです。

★量で勝負できなければ、質で勝負するしかないのですが、その質を創り出す新しい価値転換はいかにしたら可能か?呆然とせざるを得ないわけです。

★そこで長塚先生は、ご自身もワーキンググループのメンバーですから「高等学校教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ」からこれまた衝撃的な内容について語ったのです。それは高校卒業資格の74単位のうち36単位は、サイバー上の学びや通信制高校と連携するなどによって単位取得ができるように、省令改正があったというのです。学校教育法施行規則96条の規則改正です。すでに今年4月1日から施行されています。

★36単位を柔軟に対応できる機会ができたわけですが、それを各学校がどんなビジョン、どんな目的で対応するのか、にわかには動けないのは現場の事情を想えば、それは明らかです。

★しかし、ここに創発的な高い理想とそれを実現するスキル実装のチャンスがあることも直観的には了解できます。

★目の前の生徒募集や大学実績も大事です。しかし、それだけに集中して何も手を打たなければ、2030年から限界集落化する都市がどんどんでてきて、どんなによい教育を創っても、それを享受できる生徒がいなくなっているのです。

★そして、そのことは世界の知性から遠のく日本の教育の姿が出現し、それは同時に政治経済力の劣化を招くことになるでしょう。

★ここをどうするか希望の生まれるチャンスであると同時に、そのハードルの高さにどうしたらよいかわからなければ、希望は急に絶望になるのです。希望と絶望のアンヴィバレントな衝撃的な長塚先生のスピーチでした。

 

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2024年6月 6日 (木)

私学経営研修会 in 福島県石川町 始まりました。

★今年度の私学経営研修会が、福島県石川町八幡屋で開催。主催は、一般財団法人日本私学教育研究所、後援は、福島県私立中学高等学校協会、日本私立中学高等学校連合会です。したがって、全国から私立中高の先生方が集いました。100名強講演会場には参加しています。3.11以来、日本各地からの支援もあり、地方創生を着々と進めている(もちろんそう簡単ではないのですが)意味深い地で、私立学校の役割もまた重要です。

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★今回のテーマも、「教育のフロントランナーを目指す~新たな価値を生み出す経営戦略とは~」で、グローカルな大胆かつ細心の注意をはらった教育と経営のアイデアのフレームストーミングとブレインストーミングの両面からのプログラムになっています。

★講義とグループディスカッション、石川高等学校・石川義塾中学校の視察と対話が順次行われる2日間の研修会です。

★気づきが多いと思います。それについてはまたメモをしていきたいと思います。

★それにしても、日本のホテル・旅館百選の中で日本一にも輝いている八幡屋での研修。周りは自然豊かな農村都市です。未来のGXスマートシティーの感覚ですね。都心のビルの中での研修とはまた異なる刺激的な気づきがあることは間違いないでしょう。

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2024年6月 5日 (水)

海外大学進学準備教育校の3分類で3年後教育の景色が変わる学校を見つけることができる。

★海外大学進学準備教育を標榜していなくても、結果的にはその条件を満たしている学校があるとすると、その学校は3年後クオリティーは豊かになるし、生徒の視野は広く視点は高く探究心は深くなっています。特に女子校は、ジェンダー問題があります。実はこの問題は日本がとくにひどいと思われがちですが、そうではない先進諸国でも常に問題になっています。改善しては後退し、後退しては抗議をして女性は絶えることなく権利の闘争をしているのです。その中でも日本は表立って権利の闘争を仕掛ける文化は強くはありません。だから女子教育でわが子の未来を確かなものにする必要はまだまだあります。

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★もちろん、男子校であれ、共学校であれ、グローバル環境を整えているところは、世界的視野が広いですから、当然世界の数々の痛みを受容し、解決のための探究をしています。

★しかし、やはり女子教育はその点は他人ごとではないため先鋭的です。アンコンシャスバイアスへの気づきは半端ではないのです。もし、別に女子校でなくても可能なのだと放言したとしたら、すでにアンコンシャスバイアスによって大切なところが見えなくなっている可能性があると思った方がよいでしょう。

★ですから、女子校と協力して、自分たちはそんなつもりではないのに女性の権利を傷つけているかもしれないと謙虚になり、女子校と協力したり、NPOなどと協力してアンコンシャスバイアスを払拭する探究をしている男子校や共学校はすばらしいですね。それにはやはりグローバルな環境が必要です。なぜか?それは歴史を顧みればすぐにわかるはずです。

★さて、和洋九段女子や駒沢学園女子は、高い英語力を教育していますし、PBL型授業や探究に力を入れています。ICTも今や当然1人1台の環境です。グローバルクラスや英語クラスが設置されていて、オールイングリッシュの授業も多くなっています。中長期の海外留学のプログラムもデザインしています。

★グローバルな環境が充実しているので、女子生徒は多くの知的刺激を受けて、日々自分の才能や自分の意志、自分のやりたいことについて気づいていくでしょう。その気づきの連続は、生徒自身の変化だけではなく、自分もコースも超えて学内に化学反応が連鎖し、3年後には不易流行の「不易」の軸はもっと確固たるものになり、だからこそその軸の周りを大きく「流行」が転回しているということになっているでしょう。

★サレジアン国際やサレジアン国際世田谷ももともとは女子校でしたから、共学校になっても世界の痛みを受容しつつ解消しようという心は忘れていません。

★和洋九段女子と駒沢学園女子は、どちらかというというとリベラルアーツ型教育で、サレジアン国際グループは、三田国際がロールモデルですから、進路目標教育型でしょう。しかしその「型」は「流行」の部分ですから、「不易」の精神は変わることはありません。私立学校というシステムは不易流行で回転していますから。

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海外大学進学準備教育校の3分類

★海外大学準備教育を実施ている私立中高一貫校の種類はざっくりですが次の3種類あります。「リベラルアーツ教育型」「進路目標教育型」「新エリート教育型」。もともと私立学校は、本来的なエリート教育型です。国を支えることはしますが、国に支配されることのない自由な意思を貫き、その結果、国や社会、人々に貢献できる人間力の育成ですね。

 

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★しかし、それがいつしか東大を頂点とする学歴社会の競争に巻き込まれ、偏差値型エリートと間違えられるようになりました。そこから脱しようと海城学園は何度も改革を重ね、今や東大や医学部にも進みますが海外名門大学にも進学する新エリート教育型スクールとして進化しています。世界が視野に入っているので、国内だけでの学歴社会の箱の中で競争をするのではなく、全球という次元で鳥瞰し、判断し、行動できる人間力が明快に形成されています。

★いわゆる偏差値が高い名門校で、ここまでの境地にある学校は、湘南白百合と渋谷教育学園グループぐらいです。開成も、海外名門大学に合格はしていますが、やはり伝統的なエリート学校の頂にあると考える方が妥当でしょう。

★そして最近では、三田国際や広尾学園、開智日本橋のように、明快に進路先を目標にしてコース分けして東大や医学部、海外名門大学に合格できる進路目標教育型スクールも登場してきました。目標が明快だけに分かりやすく人気も高く、結果も出るのが速いのです。今までも進路目標はどこの学校もあったと思いますが、それはどこそこの大学に行くという目標で、実際のところ生徒1人ひとりの進路先を目標に教育していたわけではありません。生徒1人ひとりは、自分のやりたいことがあるのでしょうが、まずは大学に入ることが優先順位では高かったのでしょう。

★ところが、三田国際や広尾、開智日本橋は、どんな学問を研究したいか、そのために環境が十全な大学はどこかという順番で進路目標を立てるのです。明快で、生徒1人ひとりの目標と学校の目標が呼応するのでモチベーションも学校全体であがります。

★もう一つは、高校だけの学校にすでにモデルがあります。ICUですね。リベラルアーツ教育型スクールです。大妻、大妻中野、八雲学園、富士見丘、武蔵、北豊島、工学院大学附属、文化学園大学杉並、かえつ有明、佼成学園、佼成学園女子、聖学院、聖ドミニコ、頌栄、洗足、玉川学園、森村などは明白ですね。ただ、洗足は最近新エリート型になりつつあるかもしれません。

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イエール大学と音楽国際交流(7)Whim’n Rhythm コンサート

★昨日の午後、めぐろパーシモンホールで、イエール大学のWhim'n Rhythm(アカペラチーム)のコンサートが行われました。八雲のグリー部及び声楽部との共演もあり、イエール大学と八雲学園の音楽国際交流のクライマックスとなったのです。

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★2日前の朝から夕刻まで、イエール大学の学生(ただしくは5月に卒業しているので、卒業生。とはいえ、大学院に進む卒業生もいます)は、八雲の中3生と高2生と一日を過ごしました。卒業ツアーでもあるので、その後夜は浅草寺やスカイツリーを巡ったそうです。雨の降る中でした。日本に飛行機が遅れ夜中に着いたばかりでしたから、その日の朝から行動をして夜遅くまでと聞いて、コンサートは大丈夫かなと余計な心配をしましたが、昨日は早朝からリハーサル。さすがです。

★八雲学園での国際交流の時の服装はたいへんカジュアルでアメリカの学生そのものでした。しかし、昨日の朝のリハの時には、モードが変わっていました。練習用の服装だったのでしょうか。

★そして、午後の本番、登場してきたときには演奏会用の服装で別人という感じのモードチェンジに、目を見張りました。

★魂が1つになった響きはホール全体に、そして生徒(八雲生全員が参加、ROUND SQUAREからの留学生も)の心に響いていたのは、不思議なことに雰囲気で伝わってきました。

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★グリー部との共演も成功でした。ソロの1人の八雲生は、実は今回の司会者です。高2ですから英語は流ちょうです。なるほどこういうことなのかと思いましたが、ソロはペアでやっていたので、同じような生徒がたくさんいるのだなあと。たしかにリハの時、部員全員がパートごとに分かれて話し合っていましたから、英語で対話していたわけですが、司会の様子をみて驚きの表現力です。

★というのも、曲名を英語で読み上げるだけの司会では、言うまでもなく、ないのです。メンバーに今の気持ちを話しかけたり、曲のテーマやイメージを聞いてみたり。ユーモアも交え会場を沸かせたり。イエール大学のメンバーとは英語で語り合い、即日本語に変換して会場に伝えたり。

★時間制限の中でのアドリブであることは確実でした。

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★声楽部の生徒もイエール大学のメンバーと共演。もちろん英語の歌も歌いあげました。清涼感と哀愁。そして最後は八雲学園の校歌を会場全員で合唱。すばらしい音楽祭でした。八雲学園の数ある文化体験の1つとして、このようなクオリティの高い演出をサポートされる八雲学園の教師は、一般の学校にはいません。頭が下がります。

★そして近藤理事長校長の発想とその実現力もまた誰もできないでしょう。私が私立学校研究家を続ける大きな理由は、近藤先生の名言をいつも胸にしているからです。「本物、一流を生徒が体験すれば必ず善き影響を受ける。だからたくさんの本物、一流の体験を生徒ができるようにするのだ」と。多くの私立学校は、そういう気概を持っています。

★たしかに、2013年から始まったイエール大学との音楽国際交流の影響力はすさまじいわけです。このコンサートに触れて、グリー部が生徒有志によって、結成されることになったのです。そして、このグリー部は、英語に興味と関心を持っている生徒が集まるわけですから、自ずと八雲学園の英語の行事の英語劇や英語祭のパフォーマンスにこれまた善き影響を与えていきます。

★そして、このようなまず他の学校ではありえないイベントを作れる教師力をみて、ROUND SQUAREも加盟を認定していきます。RSはIBの創設者でもあるクルト・ハーンが、IBはプログラムがメインだが、そうではなく、ハイクオリティーの教育そのものを生成する世界の私立学校の連合体をつくろうという意志によって出来上がっています。近藤理事長校長は、この本物の教育、一流の教育と肩を並べる世界の学校になりたいという意思決定を即決し、またたくまに実現していったのです。

★RSの名誉会員である榑松先生が近藤先生の中学からの親友だったということもあるでしょう。一流・本物との出会いは、これまた一流・本物の出会いを数多くつくkるのでしょう。副校長の近藤隆平先生も米国大学出身で、八雲学園のここ10年間の破格のグローバル教育のシステムを先頭に立って、世界を飛び回って、全部自前で先生方と協力して制作してきたし、現在進行形でもあります。

★そして、RSの理念IDEALSの学問的な探究については菅原副校長の右に出るものはいないほど、深めています。それがRSのバラザを八雲に広める軸となっているわけです。そういえば、先日見学した八雲バラザミーティングのスーパーバイザーの役割を果たしていたのも、今回のコンサートの司会をした高2生でした。

★この高2生は、もちろんRSの国際会議に参加しているのです。ですから、イエール大学のメンバーと対話するのも本人は緊張していると語っていますが、実に柔らかくそれでいて対等に語っているわけです。

★実は、この国際会議に参加して八雲学園で活躍している生徒はたくさんいるのです。今回の声楽部の中にも同じ体験をしている生徒が部員です。ですから、イエール大学のメンバーと打ち合わせをするのも英語で行うのはわけもないのです。

★では、榑松先生と近藤隆平先生ばかりが奔走しているのかというと、そうではないのです。菅原先生が学年主任だったころの卒業生のボッサム先生が榑松先生や近藤隆平先生をサポートしながら世界を奔走しています。もちろん、今回のコンサートのサポートやイエール大学のメンバーの日本での生活もサポートしています。ボッサム先生だけでは13人ものメンバーをサポートするのはさすがに大変です。授業ももっていますから。そこで衛藤先生も協力します。衛藤先生と言えば、数学の先生なのですが、サンタバーバラのグローバルプログラムを創り上げるために米国と日本を年に何度も往復してます。当時は、ボッサム先生はまだ入学もしていなかったし、近藤隆平先生は米国留学中の学生だったわけです。

★ご紹介できませんでしたが、数多くの先生方がこのようにAll for One, One for Allの精神でスクラムを組んでこのような破格のグローバル教育を行ってきたのです。八雲も世界一の学校になるんだという近藤理事長校長の意志のもとに前進し続ける先生方と生徒の皆さん。この気概こそ、一流、本物です。

★1998年に、まだブリティッシュヒルズが立ち上がったばかりのころ、研修会を開催させていただきました。一泊二日の合宿形式でした。そこに参加してくださった当時若かりし横山先生に出会い、八雲学園の一流・本物の教育進化に魅せられ、同校をウオッチングし続けさせていただいています。八雲学園の一流・本物の軸を学んでいるからこそ、私立学校研究家(實吉先生に命名していただきました。そして實吉先生の出身校の同窓生に面白いと励まされ、≪私学の系譜≫を追っています)のコンセプトレンズを磨けるのだと感謝しかありません。

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2024年6月 4日 (火)

イエール大学と音楽国際交流(6)リハーサルのクライマックス

★コーラス部とWhim'n Rhythmのコラボ、グリー部とWhim'n Rhythmとのコラボのリハーサルが始まりました。いわば、リハ―サルのクライマックスです。

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★リハは、音声の響きの調整だけではなく、マイクの響きとの調整ももちろん重要です。ここはホールのスタッフの皆さんとのコラボです。

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★それから一人一人がどこに立つのかそのポジションの調整も欠かせません。手拍子などのパフォーマンスの調整も必要です。多角的な調整、多様なコラボレーション。

★そしてその調整はボディーランゲージと英語です。

★阿吽の呼吸作り。西洋も東洋もそれは共通しています。

★音楽が古来よりリベラルアーツの1つであることの実感を改めて抱けました。

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イエール大学と音楽国際交流(5) コーラス部 男女混声の新たな価値

★コーラス部のリハが始まりました。八雲学園が女子校の時代から続く同校の音楽を紡ぐ一翼です。繊細な美しいその声は、桜の花をめでる様な合唱です。しかし、今回は男子部員も増え、繊細な音と低音の響きが美しさと強さを生み出していました。

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★やはり、丁寧なリハーサルとチューニングを重ねながら、歌声の響きの微調整をしていきます。音響がホールにどのように響くのか、こんなときにも大局観という言葉を思い起こしてしまいました。美しく迫力あるコーラス。本番がますます楽しみです。

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イエール大学と音楽国際交流(4) めぐろパーシモンホール 早朝から念入りなリハーサル 成功の秘訣

★イエール大学のWhim'n Rhythmのメンバーは、本日のコンサート会場である「めぐろパーシモンホール」で、早朝から念入りなリハーサルを開始しています。八雲学園は行事が多いですが、重要なは実行委員会の存在とその役割です。行事の本番は一瞬にして終わります。それにむけてのバックヤードでの念入りな仕込みがその一瞬の成功をもたらします。

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★それはイエール大学の学生も同じです。この音楽国際交流は、本番の一瞬の永遠を成功させるために、念入りの仕込みとリハーサルを協働して行うところに外部からは目に見えない極めて価値ある行為があるのです。

★人生における成功の時間は、その仕込みと準備の時間に比べれば一瞬なのです。しかし、それが一瞬の永遠として、内面に一生ものの達成感をもたらすものは、この長時間のバックヤードの準備です。

★教育における最高に価値ある学びは、この準備の体験を通して試行錯誤することです。準備やリハーサルの時間は失敗の連続です。それをモニタリングしながら、調整していきます。

★学びは、この理想と現状のマッチングの絶えざる上昇の勢いを生みだすことなのです。

★今回のWhim'n Rhythmの選曲は、歌い継がれてきた曲以外に、八雲生の世代に適合するものも選ばれています。また、これは昨年からなのですが、ジェンダー問胃が世界でも議論されているので、本来女性だけのチームだったWhim'n Rhythmにも男性がメンバー入りしています。

★八雲学園が共学化した本当の理由もまたイエール大学のこの変化に呼応しています。

★久しい間続いている八雲学園とイエール大学の音楽国際交流のシナジー効果は、幅広く深いのです。このプログラムはビジネスコンサルタントには創り得ない八雲学園の教師力と生徒の協力あってこそ可能なのです。

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イエール大学と音楽国際交流(3) 八雲学園の生徒の英語力はイエール大学生と深い対話ができるレベル

★八雲学園の生徒の多くが、イエール大学の学生と英会話以上の深い対話ができます。今回の音楽国際交流では、イエール大学の学生と対話をするセッションもありました。高2生が、13グループに分かれて、シャッフルしながらイエール大学生と対話していきます。そこにROUND SQUARE加盟校からの留学生も交わります。

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★八雲生にとっては海外の大学の生活についての質問が多かったですね。メジャーは何を選んだのかなど質問すると、自分の関心や興味がどんな学問につながっているのか、そこを発見するのがイエール大学のポイントだと。そして、学部時代は、いくつか複数のメジャーを研究していると。大学は自分が何を研究していくのかそういう自分を見つける貴重な時間だと。迷えば、途中で専攻を変えればよいしという自分が求めている自分と自分の研究のマッチングの絶えざる軌道修正の話などを真剣に聞いて、日本の大学だと多分そう柔軟ではないなどと対話していました。

★また米国の大学に進学するための方法を尋ねている生徒もいました。もちろん、何が好きか、どんな映画を見るのか、どんな音楽を聴くのかなど趣味の領域の話は定番でした。たがいの心を開いて共感できる言葉を探しながら、核心に触れる様な展開になっていました。

★この手の対話が大好きなイエール大学の学生や八雲の生徒、及びROUND SQUAREの留学生は、バラザというミーティングの手法を知っているので、すぐに打ち解けたのだと思います。

※バラザについては、21世紀型教育機構の「八雲学園 八雲ラウンドスクエア・バラザミーティングを開催」をご覧ください。

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イエール大学と音楽国際交流(2) 八雲学園は英語があふれている

★今回のイエール大学のWhim'n Rhythmグループの歓迎会には、ROUND SQUAREの加盟校からの4週間留学生もジョイントしました。米国のイエール大学から13名、留学生はオーストラリアから2名、ヨルダンから2名の計17名が加わって音楽国際交流が始まったのです。

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★イエール大学の学生は、本日コンサートが終わったら、また移動しますが、ROUND SQUAREの加盟校からの留学生は7月上旬まで八雲生と学園生活を送ります。また6月の後半からは同加盟校から2名の留学生が加わります。

★そして、この間のグローバル会議の開催地だった深圳の加盟校から10名ほどが、日本学習ツアーで訪れるので、そのときに八雲にも訪問するそうです。

★八雲は八雲で、3カ月米国留学プログラムが今月から始まります。また9月にはコロンビアで開催されるROUND SQUAREの国際会議に10名ほどが参加します。この国際会議ツアーは、NYに立ち寄り、イエール大学に訪問するスケジュールも予定されています。

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★八雲学園の生活は英語が溢れる環境になっています。大学受験勉強のための勉強ではなく、リベラルアーツを共通基盤にした英語による対話が広がっています。

★近藤理事長校長は、この環境をもっともっと濃厚にし、日本の1条校だけれど、インターナショナルスクール以上の教育を行うのだという気概を抱き、着々と実現しています。インタナショナルスクールに対しグローバルスクールと呼びましょう。宇宙から見れば地球には国境などないのですから。

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海外大学進学準備校 24校 着々と増える

★各私立学校は、2024年度の大学合格あるいは進学状況についてかなり公開する時期になりました。首都圏の私立学校のサイトをざっとながめてみたところ、次の24校の私立学校(五十音順)は、海外大学進学準備をしていると推測できるほど海外大学に合格する生徒の数が多いですね。また毎年海外大学を受験する生徒がいるという文化ができているようです。

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(イエール大学の学生と対話をする八雲学園の高2生)

大妻
大妻中野
海城
開智日本橋
かえつ有明
北豊島
工学院大学附属
佼成学園
佼成学園女子
渋谷教育学園渋谷
渋谷教育学園幕張
頌栄
湘南白百合
聖学院
聖ドミニコ学園
洗足学園
玉川学園
広尾
富士見丘
文化学園大学杉並
三田国際
武蔵
森村
八雲学園

★これらの学校の海外大学合格者の数は300人くらいです。東大合格者の数の10%程度ですからまだまだ世の中は、この事態の重要性に気づいていません。

★とはいえ、今後、和洋九段女子、順天、成立学園、サレジアン国際、サレジアン国際世田谷、駒沢学園女子、神田女学園などから海外大学受験者がたくさん現れるはずです。

★私立中高一貫校だけの比較をしていると、海外大学進学は特別のような感じかもしれません。とはいえ、こんなに増えてきている潮流は無視できません。

★インターナショナルスクールの進出、通信制高校の新しい進路指導、このような学校からも海外大学合格者は現れてきます。それに、すでに日本の大学が、大学に入ってから留学できるシステムも作っています。

★その日本の大学も2027年には、留学生をもっと囲い込むでしょう。そのために海外大学のような水準のシラバスを組んでいくことでしょう。このような流れに対応するというプラグマティックな側面からいっても、海外大学進学準備教育のシステムを構築しておくことは2030年に崖を転がり落ちるような少子化に直面する時の備えになるのです。

★しかし、それ以上にリベラルアーツ的な大学に進学してからの研究の知の土台が海外大学進学準備教育には必須になるので、世界標準の知を日本の高校生がゲットすることにもなるのです。

★さらに、すべての高校生がもっている自分自身の才能や能力を発揮することができます。日本の大学入試制度は、最上階の階層は激しい競争になっていて階層が下がるにしたがって競争はなくなります。この競争は選択肢なき独占競争です。日本の大学入試の制度的呪縛が高校生1人ひとりの才能開花を妨げています。

★制度なんて関係ないという人も稀にいます。しかし、多くは制度の枠内で生きていて、その枠が自分の才能を開花させない足かせになっているとは気づきません。

★気づいた人は、さっさと海外の大学に行こうとするのです。かつては、このように気づいて海外に行くことを、独占競争から逃げているというハラスメント言説がふりまかれましたが、今はそんなことは言えません。そういう時代にもなりました。

★この学歴社会の制度を変えるのは時間がしばらくかかります。待ってはいられません。日本の枠の中だけで人生を考えるのか、全球(One Earth)の枠の中で人生を考えるのか。どちらがよいということではないのです。その分岐点を意識せざるを得ない時代が到来したということを確認したかったのです。もちろん、私自身は、全球型のキャリア教育を推奨しますが。

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2024年6月 3日 (月)

イエール大学と音楽国際交流(1) 八雲学園内は音楽であふれている

★本日から八雲学園は、イエール大学の❝Whim'n Rhythm❞というアカペラグループ13名を迎え、国際音楽交流を開催。8時30分に生徒全員でウェルカムイベントを行い、その後けん玉やだるま落とし、書道、調理などまずは互いの心をオープンにするワークショップを行った後、コーラス部とグリー部(ミュージカル部)、吹奏楽部と音楽国際交流を行い、明日のパーシモンホールでの「Whim'n Rhythm コンサート」のリハーサルも兼ねました。

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★コーラス部では、ソプラノなどパーツごとに音合わせをしたあと見事なハーモニーを歌い上げました。

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★Whim'n Rhythmのメンバーは日本の美しい歌もコーラス部の生徒と歌い、同時に米国の歌合わせもしました。ぴったりと息があったのには驚きましたが、ここに来るまで1年間、メールなどでやりとりをして今日に臨んだのです。もちろん、明日が本番で、リハーサルは明日の午前中微調整していく予定です。

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★グリー部も互いに得意のな歌を歌い合い交流を行いながら、明日共に歌うミュージカルのリハをしました。やはりコーラス部と同じように一年を通じてやりとりをしてきたのでぴったり息が合っていました。考えてみれば、毎年行っているこのコンサートの伝統が引き継がれている重みを感じました。

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★そして、最後には吹奏楽部との交流です。美しい吹奏楽の音色にスタンディングオーベーションでイエール大学のメンバーは感動を表現していました。映画タイタニック号のテーマ曲の演奏では、中学生の見事なサックスのソロ演奏。感動の渦でした。明日は、アカペラがゆえに、吹奏楽部はコンサートには出場しないのが多少残念ですが、早朝のウェルカム演奏と本日最後の明日に向けてエールを贈ったのはさすが八雲学園の吹奏楽部です。イベントの華です!

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★もちろん、Whim'n Rhythmのメンバーも最後に応援歌を歌って、互いにエールを交わしました。その応援歌とはイエール大学とハーバード大学の歴史的なフットボールの大会の時に歌う応援歌だそうです。榑松先生が、全米1位のハーバード大学との有名なイエール大学との大会は、THE GAMEと呼ばれていると説明すると、イエール大学のメンバーが全員笑いながらもブーと抗議をしました。すぐに榑松先生は、それは日本人の思い込みで、本当はイエールが一番なんだと機転を利かすと、イエール大学のメンバー、もちろんそうだと大騒ぎでした。もちろん、すべてジョークで、そもそもイエール大学の学生は、そのようなランキングの信頼性や正当性、妥当性そのものをクリティカルシンキングしています。

★八雲学園の放課後は、このように音楽であふれているのですが、年に一回この時期に行われるイエール大学との音楽国際交流をするという一つの目標があるからでもあります。

★イエール大学はもちろん、米国名門大学アイビーリーグの1員です。基本はリベラルアーツです。大学院で本格的な専攻に進みますが、それまでは、リベラルアーツをベースに自分にあった専攻を探す研究をしていくのです。リベラルアーツは、言語と数学と天文と音楽が中心ですから、Whim'n Rhythmというグループもそのリベラルアーツの延長上の活動なのです。

★メンバーの専攻は、生命医工学、公衆衛生、英語と教育学、政治学、哲学と言語学、コンピュータサイエンスと心理学、演劇、パフォーマンス、機械工学、神経科学など多様です。

★ 卒業公演で世界中を回る音楽旅行の旅路の1つとして毎年八雲学園と交流しているのですが、歌を歌いにだけ来ているわけではないのです。メンバーは多言語主義です、八雲学園も最近多言語を使う生徒が増えました。今回も英語だけではなく、中国語も活用されていました。

★その対話の中から、八雲学園の生徒は、自分の生きる道に大きな影響を受けています。その刺激を楽しみに、英語や音楽に励んでいる生徒もたくさんいるのです。いずれにしても、八雲学園は文化活動が多種多様です。イエール大学同様、リベラルアーツの一環でもあると近藤理事長校長は語ります。

 

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2024年6月 1日 (土)

教育活動の有機的結合を促進する「実践研究」と「最近接発達領域」の視点

★東京の私立学校は、独自性と先見性、先進性を不易流行という名の持続可能性を追究しています。したがって、先生方は、自らが創意工夫する教育活動のデザインをアップデートするために、個人研究、学内プロジェクト、学外研修で研鑽、学外プロジェクトなどに参加しています。東京私学教育研究所も東京私学の先生方と25の委員会をつくって、多様な研修を企画運営しています。

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★その企画のコンセプトやプログラム、実施運営の様子を拝見して、ずいぶん研修のコンセプトとが変化してきたと感じます。それは、コロナ前までは、講義形式のものが圧倒的に多く、事例報告、授業報告、実践報告などという「報告」ものが多かったけれど、現在はミニワークショップなど対話が必ず入る研修になっています。つまり、それは「実践報告」ではなく、「実践研究」の」研修になっているのです。

★両者の違いは、実践報告は、子ども等への働きかけとその結果をまとめたものです。特定の教育実践の結果を共有すること自体が目的です。分析は客観的な量的分析がメインです。

★一方、実践研究は、教師自身が研究の主体となり、教室という文脈の中で体系的な方法を用いて、実践の理解や改善を目指します。具体的には、子ども等への働きかけとその結果から、相関関係、因果関係を読み解き、新たな事実の発見や問題点の提起・方法の提案などが示されます。子どもの反応もそれを見る側も主観的なものの見方が前提になるので、測定の項目の信頼性や妥当性を議論しながら作成して分析をしていく質的分析がメインになります。

★したがって、リフレクション、ルーブリック、思考コードという作業がはいるわけです。しかし、最も重要なのは、子ども1人ひとりの現状の発達水準を知ることです。そして、発達水準が違うこどもどうしのチーム作りをして、対話をする環境を整えることが重要になってきすが、果たしてこれは以下にしたた可能か?

★この最近接発達領域を見出し、その領域が違う子供同士の対話の環境の作り方はどうしたらよいのか、この事例報告だけでは参加者は満足しません。その報告をきっかけに、自分たちの想いを語り合い、その中から新しいアイデアを生み出し、自分でやってみようと。そしてまた先生方と対話しようというサイクルが実践研究の一端です。

★ですから、研究所で行っている研修は、自ずとシェアリングとしての対話の時間が多くなります。

★こうしてみると、生徒同士の最近接発達領域の対話だけではなく、先生同士の最近接発達領域の対話も見事に交差するのが、授業における実践研究ということになります。

★これによって、生徒も教師もそれぞれの現状の発達水準の背景にある潜在的発達水準から新たな水準を汲み取りアップデートしていきます。

★実践研究には、対話の問いの多様さと最近接発達領域の目利きがポイントです。ではどうやってそれをトレーニングをするのでしょう。対話によってしかないのですが、ここに生成AIの活用がうまくいくとアップデートの速度が変わります。それがいいことなのかどうかは、見極めなければなりませんが。

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