進化する東京私立中高一貫校(02)3タイプの進化
★1日、会場にいると、多くの先生方と話をする機会があります。もちろん、受験生と保護者にプレゼンをしなければならないわけですから、長話はできません。しかし、それがゆえに貴重なお話をお聞きすることができます。あるいわゆる名門校の先生と話したとき、私たち名門校は、教育のパラダイムを変える使命があるのだというのです。偏差値競争にあけくれているわけでは決してない。むしろ、それによって本来小学生の時に育ってきているはずの人格形成の段階が、部分的に阻害されている。そこを回復するには、入学後に教育すればよいではなく、社会的な教育の構造を規定しているパラダイムを転換する教育の必要性をカリキュラムポリシーのみならず、アドミッションやディプロマなどのすべての局面で実施していくことが必要なのだと。
★いわゆる歴史的名門校は、東大を頂点とする学歴社会の中で、本来的なエリートを養成し、彼らが日本社会をよりよくしていくことを目標にしていました。しかし、上記の図のⅢの領域は、今や偏差値競争による偏った人間力を育てることに疑問を持たない世間ができてしまい、日本の社会的資本力や人的資本力の衰退を招いているわけです。
★そこで、そこを脱するために、偏差値が全く稼働していない(とはいえ階層構造はあるのですが)海外大学にまで視野を広げて、教育を行うグローバル・キャリア教育を実施するエリート名門校が出てきたわけです。③の変容がそれにあたります。
★一方、そもそも教育そのものを変える学校が登場してきました。非認知能力を養うべく、ディスカッションや探究ベースの学びに変容させるプログレッシブ教育を行う私学も登場したのです。もし、名門校が格差をつくるなどの弊害のある教育観を転換させる使命を負っているとするなら、このようなプログレッシブ教育を行う学校もまた名門校と呼んでいいのです。もし、偏差値の高い学校を名門校と呼ぶとするなら、その発想自体すでにパラダイム転換などできない壁に囲まれていることを意味します。
★このような進化くを、矢印①が示しています。
★そして、このⅣにシフトしたプログレッシブ教育を行いつづけていくと、当然多様性の重要性に気づきます。多様性のもつ光と影の問題性は、偏差値競争という日本の独特の問題性に気を取られているうちに、実は見逃していきます。
★やはり外に出ようという破格のグローバル・キャリア教育に、プログレッシブ教育を実施する私学は行きつくのです。これが矢印②が示しています。このⅠ象限に位置する私学は、歴史的名門校ではないかもしれませんが、海外大学に大量の合格者がでる新しい名門校になっているのです。
★私立学校は多様です。ざっくりこの3つのタイプの進化をたどっていますが、それぞれのタイプの在り方も実に多様です。今後少し具体的にみていきましょう。
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