かえつ有明 対話によるEQとシステム思考の融合
★かえつ有明は対話に満ちていると前回述べました。今回は、その対話のプロセスについて考えたいと思います。かえつ有明は、2015年ころから共感的コミュニケーションとかノンバイオレントコミュニケーションとかを学内で研修し授業をはじめあらゆる教育活動に浸透させていきました。
★昨日見学させて頂いたとき、教師一人一人がそのような心理的安全を生み出すコミュニケーションができるようになっているのを見て、なるほど浸透しているのだと改めて実感しました。
★そして、さらにそれがマインドとして生徒自身も自分の中で生み出すことができるようになるまてのプログラム作りが常にされているのが今回のユニット制の共有会だったのだと。
★なぜなら、システム思考やEQを動かす対話ツールを共有し、生徒1人ひとりが自分を生み出していくレバレッジポイントを教師が対話することによって見出していっているからです。レバレッジポイントはかなり主観的なものです。非認知能力的なものです。
★ですから、数字やデータですぐに見えてくるものではありません。いかにスコア評価で私たちは生徒1人ひとり才能であるレバレッジポイントを見えなくしてきたことか。今、かえつ有明の教師は、その見えなくしてきたベールをはぎ取る対話をしているのです。
★私が見学した時には、理想と現実のギャップを相互に受けとめ、ポジティブに転換するレバレッジポイントについて対話していました。またそのベールをはぎ取るために氷山モデルという対話ツールをつかったり、そこにある根本的な社会課題を見出すためにループをつないでいくシステム思考の真骨頂である図を活用してプレゼンしている先生もいました。
★大事なことは、これらは対話ツールはあくまで互いにモヤモヤ思っていることや感じていることを言語化するときの触媒です。そのツールを活用することで何か正解が見えてくるということではないのです。
★対話ツールですから、ひとりで自問自答しながら活用することも、もちろんできますが、複数で対話する方が推論の梯子にならずにすむわけです。推論のはしごの図も、図書館「ドルフィン」にははってありました。
★このドルフィンには、自由に構成する対話空間が3か所くらいあって、今回の共有会もその一つで行われていました。そしてその隣の空間では、高校生の新クラスのプロジェクト科の授業が展開していました。隣で行われている教師の共有会のように、生徒がグループに分かれて対話をしているのです。ファシリテートも生徒が行っています。
★そんな中で、合理的配慮について研究しているチームが、「誰にとって」合理的配慮なのかについて対話していました。重要なテーマです。それだけに、公平な利益の透明性が求められる倫理的なモニタリングが必要です。合理的配慮の背景には、倫理的な効用の透明性がないために、いいことだと思って行っていることが相手を傷つけてしまうというパラドクスがあります。それを対話によって、合理的配慮の意思決定の透明性を高めていこうという対話でした。もちろん一瞬見ただけですから、全貌はわかりません。
★金井先生が、SELとかシステム思考をSEEという方法で取り組み始めていると語っていたことがなるほど実感できました。ソーシャルとエモーショナルとエシカルの循環ということでしょう。倫理的な切り口で政治経済的な社会課題への対応をしているのですね。
★EQにしてもSELにしてもシステム思考にしてもSEEにしても、研究者は心理学者だったり、科学者だったり、組織開発者だったり、文化人類学者だったり、宗教社会学者だったり、いろいろな学問が学際的に協働して積み上げられてきた、そしてこれからも変容していく学問です。
★このような学問知を教育現場に適用するようにアレンジするには、教師も生徒もみな協働する必要がありますが、それをかえつ有明は実践してしまっているのです。
★まさしく内生的技術進歩が続く対話システムが構築しているということでしょう。成長する組織の対話学の象徴的ケースです。
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