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2024年5月

2024年5月30日 (木)

私学の教育を支える私学財団

★私立学校を選択する受験生・保護者の方は受験の段階では、志望する学校単体の姿しか見えていない場合が多いと思います。各私学が、建学の精神に基づき、独自性・先見性・先進性ある教育を創意工夫し実践してきているのは紛れもない事実ですが、人は自分ひとりでは生きていけないのと同じで、私立学校もただ1校だけで経営運営ができているわけではないのです。一般財団法人東京私学中学校高等学校協会は、合同相談会などで知っている人も多いでしょう。私学は独自の路線を追究しながら、同時に協力し合ってもいるのです。

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★そして、私立学校の所轄は、知事ですから、都の私学部とも協力関係があります。

★なにより、受験生・保護者にとって関心の高い教育費負担の軽減事業を行っているのは「東京都私学財団」です。同財団は、東京の私学関係団体と東京都と協力して、所得制限を撤廃した教育費負担軽減の絶大なる支援をしている団体です。

★私立学校が不易流行を持続可能にできるのは、もちろん各私学が奮闘努力の気概をもって成し遂げているのですが、私学財団のような私学を支えてくれる団体があってこそなのです。

★残念ながら塾業界やメディアは、私立学校のトータルなシステムをみていないので、偏差値競争や学歴社会ゲームを推奨し過熱させているときもあります。そのことが、この私立学校トータルなシステムを支えている協力関係、つまりそれぞれの個性を生かした学びの場を維持しようという体制を壊すことになりかねない状況を作る場合もあるのです。

★もし、特定の私立学校しか残らないような競争の末路をたどったら、日本の教育全体にダメージを与えてしまいます。

★もちろん、私立学校当局は、そのようなことにならないように絆を深め、多くの団体と協力していますから、そのような受験市場が、私立学校全体の協力をするときのルールにネガティブな行為をする場合は、警告を出します。

★しかし、私立学校は学びのコモンズです。油断すると「コモンズの悲劇」が起こります。この悲劇は私立学校にとって悲劇であるだけではなく、日本の教育にとっても悲劇が飛び火します。

★受験業界すべてがネガティブな訳ではもちろんありません。私立学校トータルシステムを尊重して、健全な学びの自由市場を生み出しているところもあります。こういう健全な受験市場を形成していくことが、教育で日本社会を支えることにもつながります。

★私立学校も経営をしている以上、入試市場を健全なまま維持していく努力をしています。ですから、欲望の資本主義ではなく、倫理的資本主義を維持する努力をしているのです。

★今や時代はエシカル資本主義という言葉もでてきていますから、私立学校が未来を作る役割を果たし続けていることも確かです。

★何せ、私学のルーツである私学人の1人があの渋沢栄一です。日本資本主義の父です。渋沢翁の考え方は経済道徳合一主義です。「論語と算盤」は有名ですね。エシカル資本主義をとっくに見通していたというわけでしょう。

★この私学の精神のルーツを持続可能にする絶大なる貢献を私学財団は果たしているのです。

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2024年5月29日 (水)

駒女で伸びる理由

★駒沢学園女子(以降「駒女」)に入学した生徒の伸び率というものの測定器があるとするならば、その針は平均的な伸び率をはるかに超えることは間違いないでしょう。駒女の生徒が伸びるとは、いわゆる学力だけではなく人間力も含めその両方です。なぜそうなるのか?まず環境がよいですよね。自然豊かで施設も多様な学びができる創意工夫がされています。自分を見つめる坐禅をする空間もあります。近未来都市構想をするときに必要な庭園発想の空間もあります。このように、学力と人間力を統合するキャリア教育の環境が他校にはないほど優れているのです。

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★グローバル教育やICT教育も行われ、高大連携や海外留学など外部団体との連携も年々充実しています。このようなネットワークを広げていくことができるのは、実は授業と探究が有機的につながっているからだと先生方は語ります。つまり教科横断的にあるいは有機的に結合しているわけです。ですから、拡張する結合子がいっぱいできあがっています。

★それと中学の時の生徒支援の方法と高校からの生徒支援の方法が明確に意識されてデザインされいるのも驚きです。これができるのは、先生方が生徒1人ひとりの様子を心身の側面や人間関係づくりの側面、モチベーションの側面など多面的に理解しているからです。ただ、そうなると本当に生徒1人ひとりに違う学びの支援や成長の支援を考案し実施してくので、外から見ているとたいへんだなあと思うわけですが、教育とは大量生産の工場ではないのですから、1人ひとりカスタマイズするのは当然ですと先生方の気合に圧倒されます。

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★授業でも探究でも、中学の段階では、リサーチの方法、文章の書き方、対話の仕方、プレゼンテーションの仕方など学びの基礎を生徒1人ひとりが活用していけるようにアドバイスをしたり環境設定をしたりすることができるのは、1人ひとりのことがよくわかっているからだと思います。

★それから、おもしろいのは、「カタツムリには意識はあるでしょうか?」というようなケンブリッジ大学の口頭試問で出題されるような正解のない問題は喜んで生徒は取り組むというのです。そのようなマインドセットがされているのも、生徒1人ひとりに寄り添っているからでしょう。

★さらに、生徒同士話し合いながら、1人ひとりのアイデアをブレインストーミングしていくそうです。それは、それぞれの得意な能力を出し合っていくからできるというのです。それぞれ自分が好きだと思っていることや興味関心のあることを追究していく普段からの学びがあるからこそ得意な能力を発揮できるのですと先生方は語ります。

★One for All, All for Oneという有名な言葉がありますが、まさに駒女の生徒さん同士の関係性を現すのにぴったりの言葉だと感じました。そして、今回先生方のプロジェクトでの対話に立ち会わせていただいて、確信したのは、先生方の関係そのものがOne for All, All for Oneの柔軟で堅固な関係になっているということです。

★このように、トータルなシステムが循環して有機的に結合しているわけですから、受験生・保護者が訪れたときに、「学校の雰囲気」に魅了されます。「教育プログラム」も多様なものの見方や感じ方が内側から生まれてくるし、視点も高まっていくようにデザインされているのも魅力です。そして何より、教師と教師の関係性、生徒と生徒の関係性、教師と生徒の関係性が良好だというのは、学園生活が楽しいし安心感があります。

★学校説明会に参加すると、たくさんの有志の駒女生徒広報部の生徒さんがおもてなしをしてくれるので、その様子を見て感動することができるでしょう。

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2024年5月28日 (火)

学校雰囲気の生まれ方

★受験生と保護者が、学校選択をするときに、認知的能力でよりも、非認知能力で選ぶでしょう。快適、幸福感がある、ポジティブな空気、とにかくなんかよいという学校の雰囲気を感じるのです。受験生・保護者からは、どうしてその学校の雰囲気が生成されているのかなかなかわかりません。

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★ですから、共感してもらえるプレゼンテーションやパフォーマンスを学校当局はするのです。

★そのとき、次の5点の良好さが実感できると成功する可能性大です。

1)教師と生徒の関係が自由と規律の両ベクトルの合力になっている。

2)あらゆる教育活動が有機的に結合していて、それが教師と生徒の関係に良い影響を与えている。

3)キャンパス内の施設や空間が有機的につながっていて、それが教育活動や教師と生徒の関係に良い影響を与えている。

4)高大連携や探究活動など外部団体との連携がうまくいき、学内の有機的結合にうまくつながっている。

5)グローバルな視野の教育が全球の幸せをつくる活動につながっている。

★これら5つが化学反応を起こして、学校の良い雰囲気を生んでいるのでしょう。そしてその触媒は、経験と対話です。さらに経験と対話をつなぐものは何か?それが問いの生成力です。

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経験の連続の原理~有機的関連(1)経験の理論=経験を科学する

★ジョン・デューイは、教育を科学的に考えようとしました。彼の教育哲学は道徳哲学でも人生哲学でもないのです。あくまで科学的に哲学し、ギリシャ時代や中世の時代にもあった、そしてそれが連綿と続いている教育の本質を見出し、実践していくことにあるのです。その過程こそが経験であり、本質が人為的に設計され複雑になり、子どもたちの才能を阻害して格差を生み出すアンチ本質的なことを回避しようとしたのです。

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★同時に、当時そのような伝統主義的教育に対しトレンドとなっていた進歩主義的教育に対しても、ただ経験が大事だと唱えているだけでは、シンプルに本質を汲み取る科学的な教育デザインをしていないと一刀両断するわけです。

★進歩主義的教育あるいは新教育の元祖デューイが、シンプルな本質を汲み取る経験を思索するものではない場合、このようにクリティカルシンキングを発動するのです。

★その上で、デューイは、こう語ります。

「私はよろこんで、新教育が原理上、旧教育よりも単純であることを認めるものである。新教育は成長の原理と調和しているが、他方、旧教育では教材や方法の選択や、その配列に人為的なものが多くはいり込み、その人為性が常に不必要な複雑性を導き出している。しかし、「易しいこと」と「単純なこと」とは同一の事柄ではない。真に単純なものを発見し、その発見に基づいて行動することは極めて困難な課題である。ひとたび人為的なものと複雑なものとが制度的に確立され、慣習や型にはまった仕事に深く根をおろすと、その踏みならされた通路を歩くほうが、新しい観点を採り入れたのち、その新観点のなかに実際に含意されているものを解き明かすことよりは容易である。旧いトレミーの天文学説は、その周期や周転円に関して複雑であった。しかし、コペルニクス学説に基づいて現実の天文現象が組織立てられるようになるまでは、もっとも安易な歩み方は、古くからの知的習慣によって用意され、しかも最も抵抗の少ない方向をとることであった。そこで、もとの考え方に戻るが、適切な教育の方法と教材を選定し組織化するような積極的な方向を提示するような、首尾一貫した経験の「理論」により、学校の仕事に新しい方向を与えるような試みが必要とされていたのである。ジョン・デューイ. 経験と教育 (講談社学術文庫) (p.28). 講談社. Kindle 版. 」

★デューイが20世紀初頭に批判した旧教育は、いまもそのまま引き続いています。それを20世紀型教育と呼んできたわけです。そしてデューイが批判する新教育ではなく、デューイが想定する新教育を引き継ぐのが21世紀型教育だとしてきたわけです。

★デューイの時代にAIはなかったですが、すでにそのような未来はSFでは想定されていました。ですからデューイもまた感覚を使わない経験の是非を経験の理論として問うています。

★デューイの時代は、民主主義を生み出すための社会関係を創り出す教育が考案されていました。現在は、民主主義の危機(そもそも民主主義自体が過渡期)を回避するための社会関係を創り出す教育が必要とされています。

★イノベーションの発達は全く違いますが、デューイがギリシャ時代や中世の時代に学んでいるように、21世紀型教育実践者がデューイに学ぶことが古臭いなってことは全くないのです。

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2024年5月27日 (月)

湘南白百合 学びのニューコモンズの拠点(3)授業も探究も多様な教育活動も有機的に結合をするギミック 教科横断から有機的結合へ

★当日同席していた中学受験業界の重鎮N氏に「変化し続ける私学を感じ、襟を正す」と言わしめた湘南白百合。私も同感です。それはなぜか、私は、やはりあらゆる教育活動が有機的に結合し、その結合子が新たな結合子と結びついていくため、その都度化学反応が起こり、有機的結合体全体がパワフルになっていくからだと感じています。

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★たとえば、水尾先生は

①学びの実践の場としての学校行事=主体性,リーダーシップ,コミュニケーション能力,創造力,共感的,粘り強さ

②確かな学力を育む学習サイクル=少人数制で状況把握,小テスト,個別指導,理解,次の授業

➂演習と問題解決型授業で展開する数学の学び=問題演習で数学的な知識定着,ひとりで・仲間と考え確かな理解につなげる

④探究的な学び=問題解決力,協働する力,意思決定スキル,批判的思考,創造的思考,コミュニケーション力,ITリテラシー,計画する力,やりぬく力

➄答えのない問いに、自分なりの答えを=身近な課題を発見し、考える,平和について 調査方法,環境問題 課題設定 調査,論文を書く

⑥環境論文=課題設定,情報収集,整理・分析,まとめ・表現

⑦高大連携=探究的な学びの論文を書くサイクルに適用

★この7つの基本的な学びのサイクル(関数)をつなげているのが「プランニング手帳」を介して生徒と教師が対話する日々です。

★湘南白百合の国内外及び高大連携による大学並みの学びのベースには、以上の7つの有機的結合があり、循環しているのです。まるで化学記号のシクロペンタンやベンゼンのような環境構造が幾重にも結合しているかのような教育環境デザインがなされているのです。

★このことについては、「授業と探究と教育活動の有機的結合」と称して、今年の夏の福島の中高協会の研修でご紹介したいと思います。「教科横断から教育の有機的結合へ」という教育の質の高い学びを構築してきた学校にとっては当たり前だけれど、湘南白百合のように言語化はしてこなかったなおです。すてきな発見だと私は思います。水尾先生!ありがとうございます。

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2024年5月25日 (土)

湘南白百合 学びのニューコモンズの拠点(2)これほど教育活動が有機的につながっていることが言語化されているとは!

★湘南白百合の具体的な教育活動については、教頭水尾先生がプレゼンをしました。参加した方々はトータルに理念が行き届いたすばらしい教育に感動していました。嘆息がもれていました。そして、その後の学校案内で、なるほどこのトータルな教育が学びのニューコモンズという環境の中で見事に有機的結合を果たしているとその雰囲気に感動したことでしょう。

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★私も同じです。しかし、今回は不思議とこの有機的結合のシステマティックなつながりの全貌が見えた気がしたのです。一般の説明会では、教育コンテンツの羅列です。こんな凄い画期的な教育内容があるのだというわけです。グローバル教育はどこに誰とコラボして行っていて、こんな成果がありました。探究ではこんなやり方でどことコラボして素晴らしい成果を上げました。外部コンクールで優勝賞を獲得しましたなどと。

★それで十分、そこの学校の教育活動のクオリティの良さはわかるのですが、それぞれの活動を運営している教師がどんなチームワークで実施しているのかは意外とわかりません。結構一人の先生が強烈に回しているということも少なくありません。それだとその先生がいなくなるとその教育内容は消滅します。

★教育は持続可能であると同時にアップデートしていく必要があります。ですから、緻密にシスマティックにプランされチームワークも十分である必要があります。

★つまり教育プログラムのマネジメントと組織マネジメントの一体化なのです。

★教育プログラムのマネジメントは、一つ一つのプログラムの運営のシステム化だけではなく、プログラム同士のつながりがシステム化されている必要があります。このつながりは、教師という人的資本を豊かにしていくことでもあるので、組織マネジメントも重要なファクターになります。

★こういうシステムをカトリック学校ではぶどうの木のシステムと呼んでいます。愛の循環システムです。これを湘南白百合は教育と組織の両方がつながるようにマネジメントしています。しかし、それは学校の先生方には気づかない場合も少なくありません。

★いつの間にかそうなっていたと。しかし、そんなことはないのです。里山や人間の身体もそうですが、放置しておいて良好な状態が持続可能になるわけではないのはご承知の通りです。

★やはり手入れをしたり、メンテしたりしているのです。教育も同じです。とはいえ、日々先生方が対話をしながらつなぎ合わせてきた結果ですから、当事者にとっては暗黙知になっています。

★しかし、入試広報部というのは、その学校の特徴を最も現しているその暗黙知を可視化する役割を果たしています。水尾先生のプレゼンは、その暗黙知としての教育プログラムと組織マネジメントが一体となっている循環システムを見事なまでに多様なサイクル図で示しているため、聴いている側は、勝手にそのサイクル図をつなげて循環させてワクワクしているのです。

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2024年5月24日 (金)

湘南白百合 学びのニューコモンズの拠点(1)今までとは違う私立中高一貫校

★本日、湘南白百合で教育関係者対象の学校説明会がありました。同校は、ここ数年神奈川エリアの私立学校の中で最も重要で本質的なことを真正面から唱え、なおかつその本質を実現るために新しい教育環境デザインをし、生徒たちも自らの才能や能力を自ら見出し自ら開発し、その結果社会に貢献するマインドとスキルを見事に実装しています。

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★そして、今年も着々と不易流行よろしく、進化が続いています。そんなとき、今春4月新校長岩瀬有子先生が就任したと聞き及び、これ以上何が始まるのかと不思議に思っていました。教頭水尾先生にいつも同校の現在進行形の不易流行をお聞きしていて、十分凄すぎると思っていただけに、いったい何がさらに起こるのだろうと。

★水尾先生とはいつもバーチャル上で出会っていたので、リアル湘南白百合の教育環境の中でお聞きしたいと思ったのです。

★というわけで、久しぶりに訪れて、やはり改めて驚いてしまいました。予定より1時間30分前(意外と近かったのです)に着いたので、最初の30分くらいは入口から事務室までのキャンパス内にしばらく佇んでいました。すると「あめのみつかい」と「キリエ」などミサ曲が響いてきました。トビの鳴き声も響いていて、音楽と自然の豊かさにしばらく癒されていたわけです。

★社会課題を扱う探究が充実していて、言語活動の視野が広く深いのは知っていました。また学芸大の先生方と幾つかの私立学校とコラボして数理モデルのシミュレーションをする問い作りをしていることも水尾先生からいつも教えて頂いていたので、言語、数学、そして音楽がこんなに豊かに循環している学校なんだと、つまりリベラルアーツが通奏低音としてい響いている学校であることを実感した30分間でした。

★そんなことを想いながら、会の始まるのを楽しみに待っていたのです。そして始まるや、非常にフラットに岩瀬校長が話をはじめました。フラットでフェアでフリーといった感じのプレゼンテーションに、いわゆる古いカトリックの学校の校長とは全く違う雰囲気に驚きました。水尾教頭も同じ雰囲気ですから、これは2025年度入試も湘南白百合はまたまた高人気だろうなあと思いました。

★それにしても、学びのニューコモンズとAIと数学的ものの見方・考え方について自然体で語っているのは、実に興味深かったのです。これは、一般に校長が紋切り型の未来ビジョンを語るのとは全く違うのです。ついにこういう校長がカトリック校からも現れたのかと感動しました。

★金融機関のSEも経験していて、社会課題を考える過程の中で数理モデルを生徒と共に創ってきたという探究活動も実際にやってきたうえで、しっかりAI時代における新しい教育として、キャンパス、教育プログラム、メディアスペースとしての図書館、新しいコンピュータ室、教科の授業は1人1台のクロムブックをグループワークで結んで個別最適化とコラボレーションができるICT環境を創り上げています。自然と社会と精神の分断が起きている現代社会の課題を解消するための学びのニューコモンズが湘南白百合全体の教育環境デザインとしてトータルに構築されているのです。

★このようなニューコモンズのコンセプトは、一般に今の学校の理事長・校長はほとんどもっていないでしょう。情報として知っていて話すことはできても、そのコンセプトを社会実装している校長はレアケースです。しかし、これからはどんどん出てくるのかもしれません。

★ニューコモンズの発想は全球的なウェルビーイングの発想と通じるものですが、コモンズの悲劇と言われるように、倫理が崩れる時、恐ろしいことが訪れます。ですから、学校で実践するのは難しいのです。しかし、湘南白百合はカトリック学校です。エシカルな教育は十八番なのです。ですからパラドキシカルですができるのです。

★一般の学校なら、まずはルールはどうするセキュリティはどうするという議論が先で、なかなか進まないでしょう。

★ですから、岩瀬校長がAIを使って学びのニューコモンズで生徒たちが学んでいる様子をさりげなく語っていたのは、極めて革命的です。そしてそれをすでに具体的に実践して成果をあげていく現場の教員と校長のコンセプトを架け橋する水尾教頭。最強ですね。

★このような組織は、当面首都圏の私立学校では出現しないので、中学入試市場で圧倒的な支持を確立することでしょう。

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東京私立中学高等学校協会 定期総会 開催 東京私学の意義

★昨日(5月23日)、一般財団法人私立中学高等学校協会の定期総会が開催されました。東京の私立中学と私立高校合わせて424校が一堂に会し、東京の私立学校の教育の質を高め東京、日本、世界に貢献する役割を果たす理念を共有する会です。

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★東京の私立学校は、一つの都市に私立の中高が400校強もある世界でもたいへん珍しい存在です。特に東京の公立高校と私立高校に通う生徒は、私立学校の方が多いのです。したがって、知事所轄の私学ですから、都政における教育においても私立学校の教育のビジョンや質は良い影響を与えています。

★東京というグローバル都市と私学のグローバル教育は、相乗効果を生み出しています。また、政府も文部科学省も東京にありますから、国の政策に対しても影響力があります。

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★高い学力を生み出すだけではなく、グローバルリーダーを生み出し、世界と日本の架け橋を構築していく高いレベルでの人材育成の拠点ともなっています。

★そして、それを実現するために、私学助成法にのっとって、助成金や多様な補助金の交渉を、父母の会、私学部、私学財団など多くの団体と協力し提案をしていきます。その意志を確認し、一丸となるために、大きな総会が年に二回開催されています。

★常任理事会と12支部(東京は12エリアに分かれていて、密に情報共有ができるようになっています)の代表が集まる理事会は、月に2回行われ、各支部の会議が月に一度開催されています。

★したがって、受験市場から見ているような、偏差値競争をしているのではなく、互いに高め合い、東京私学全体の質を維持し、未来のグローバル人材がトビ立てる拠点を一丸となってつくろうとしているのです。

★受験生の保護者には、この部分が見えにくいので、受験市場がつくる情報で学校選びをされることが多いでしょう。しかし、それはほんの一部の情報である可能性があります。

★では、どこを見ればその姿がわかるのか?それは、年に3回国際フォーラムで行われる合同相談会などに足を運んでいただけるとありがたいですし、協会の部署である東京私学教育研究所のサイトを見て頂ければ、東京の私学の先生方が協力して創り上げている研修の様子がわかります。ここは、私学の教育の粋を集めた教育プログラム作りや経営のあり方を考える場です。私学の先見性・先進性の動向がわかります。

★そして、各私学の説明会に足を運んでいただければ、その先見性・先進性を共有しながらも、各学校の建学の精神という魂を土台に独自の教育が成立していることが了解できるはずです。

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2024年5月23日 (木)

1%の世界で起きていること 中高の大学化(3)ヘルバルト主義からデューイ主義へ

★100年以上前に、J・デューイ自身が、ヘーゲルからプラグマティズムに発展し、ヘルバルト主義からデューイ主義を確立していきました。この動きは、法律にもあてはまります。当時はドイツでは、ヘーゲルは近代国家の哲学的礎には実はなっていなかったのですね。哲学者はその後も今もヘーゲルを引きずっている方もいますが、もはや法実証主義がベースなのが特に日本ですね。したがって、日本の教育の制度的枠組みは、見えないところで法実証主義です。

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★ところが、教育哲学者は、カントやヘーゲルをベースに、法実証主義の制度を問い返すことなく、思想を広げます。その思想は別に問題ないのですが、現場では実態として有効ではないのです。

★民主主義を維持する制度として、ヘーゲルやカント、もゥ少し遡るとルソーなどの啓蒙主義などの制度構築だけではなかなかうまくいかないのですね。そのことをデューイは民主主義を形成する教育を考えていったとき気づいたのでしょう。

★法実証主義の教育的置換は当時も今も実はトレンドであるヘルバルト主義です。デューイは最初大いに刺激を受けます。ヘーゲル主義を改めていくのは、ヘルバルト主義の影響もあったかもしれません。しかし、ヘーゲルを離れるけれど、かといって法実証主義的な権威主義が拭えない枠組みでは、民主主義は形成できない、そう考えたのでしょう。

★それゆえ、今の指導案のような予め設計して授業を行うのは、「教師の学び」であり「子どもの学び」ではないのだとPBL型の経験や対話、生産をする学びに変えていったのでしょう。そして、その際に「道具」を活用します。ノートと黒板と教科書もツールではありますが、そこには対話を促進する「道具」がないのに気づくわけです。

★今でいう、FabラボやICTは学びのツールです。そしてPBLですから協働的な学びです。チームビルディング。なんとも民主主義です。それにinter-esseを大事にしました。学びは興味関心という関係性が本質なのだと。

★100年以上前にデューイ(もちろん、パースやジェームズやキルパトリックや多くの進歩主義者がかかわっています)が考えたことは不易流行として一部の学校では継承されています。東京の私立学校だと30%は、デューイ型教育を継承しています。

★もちろん、意識はされていないかもしれません。システム思考とかMITメディアラボの方法が継承されているというのが現代的ですが、おそらくデューイのように、欧米の学問的成果をインテグレイトしてプラグマティックな理論と実践を創り上げているのと同じで、広く深い融合的な理論と実践をしているのだと思います。

★デューイの理論というより、デューイのこのような学問の融合という発想に基づいている教育をデューイ主義と呼んで起きます。逆にそのような複雑な理屈ではなく、今でいうPDCAのような設計や計画主義の発想がヘルバルト主義だと呼んでおきましょう。

★こうして考えるとデューイの学びは、リサーチ(研究)型です。ヘルバルトは、配列型で、大学に接続するように合理的に階段を上っていく発想なのです。大量生産型のT型フォード主義といってもよいかもしれません。

★デューイ主義の学びを行っているとしたら、中高でも大学レベルの学びを行っているということになります。

★探究は、実はヘルバルト主義でも行えます。ただし、問いは設定されているので、リサーチ型ではない場合が多いのです。したがって、雑駁ですが、ヘルバルト主義とデューイ主義を対比しておくと1%の動きが見えやすくなります。

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2024年5月22日 (水)

1%の世界で起きていること 中高の大学化(2)哲学対話を生徒と共有してしまう田中歩先生 工学院大学附属中学教頭

★東京で私立中高一貫校と言えば、23区が活況を帯びています。しかし、東京の西の都「八王子」に、驚きの私立中高一貫校があります。そしてその中学の教頭田中歩先生は、さりげなく風のように小さな旋風を巻き起こしています。やがてトルネードになるでしょう。

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(22世紀型教育研究センターも立ち上げた。所長田中歩先生)

★今や21世紀型教育というと当たり前のことばになりましたが、このことばを前面に出して学校の改革を行って世の中の教育の転換にインパクトを与え成功した学校が10校あります。その学校の1つが工学院大学附属で、2013年から11年目の今春、海外大学合格者や医学部に進む生徒が多数出ました。別に大学合格実績を目的にはしてこなかったのですが、自分を深く見つめ、そのやりたいことを6年かけてやってきたらそれを実現するための機関としてそういう大学があったということなのでしょうが。

★田中歩先生は常識はことごとくあっさり覆していきますが、質の高いコモンセンスの持ち主です。アダム・スミス流の心の基準がしっかりあります。英語の教師でもあるし、Aレベルやラウンドスクエア環境を整備する尽力もしました。ですから、実にイギリス的啓蒙主義者、あるいは市民性主義者でもあります。ちょこんと髭がありますが、実にイギルス風ですよね。

★授業も自らIBLを行っています。同校では、プロジェクト型学習は授業や多様な行事で展開されていますから、そのコアになる対話型思考力・判断力・言動力を生徒自身が内蔵してしまうような学びです。

★英米の分析哲学的な背景をもっているので、対話の中でおこるヘーゲリアン的な弁証法的な圧はないのが大きな特徴です。

★生徒も教師も共感し合いながらも、コンフォートゾーンで満足するわけでもないのです。

★自分を見つけるには、一人自分の中にもぐるのではなく、いっしょにいろいろな体験をしながら思考することによって自分とは何者か、他者とは何者か、社会とは何者か、それらすべてを包括する世界とは何者かなどの経験値積み上げていきます。そうして自分の好きな分野に向き合っていくわけです。

★生徒中心主義なので、それを阻害する権威に対しては無手勝流でいつの間にか退けていきます。

★偏差値大好き、権威主義者、学歴主義万歳の方々には遠く理解が及ばない学校です。

★それでいて、難関大学に進学できてしまう生徒のみなさん。

★英語を自在に活用し、ICTも当然使いこなし、対話はアートそのものなのです。アートは共感を呼びながら世界の痛みを共有し、払拭する創意工夫を発案していきます。

★もし、政府が高度人材が足りなくてなんとかしたいと思うのなら、工学院をリサーチすることをお勧めしますが、大事なことは見ても見えないものです。権威主義を払拭できる普遍的市民性の心の眼があればみえるかもしれません。

★そういう本間には見えるのか?と言われるかもしれません。カントのものそれ自体と同じで、見えないけれど在るのです。大事な物とはそういうものだと歴代の偉大な思想家たちも考え続けているわけですよ。

★そうそう、海外の大学って田中歩先生のような対話が当然のようにあるところが多いですね。

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1%の世界で起きていること 中高の大学化(1)新しい高大連携 富士見丘とか湘南白百合とか

★高大接続改革、高大連携、IB、AP、Aレベルなど大学と中高の接続が激しく変化しています。大学側からは学生数の確保、高度人材の確保、中高側からは、進路指導先の確保、生徒の能力を高める機会など多様な考え方が絡み合っています。しかし、一方で、なかなか国内における大学と中高の関係は変わりません。

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★それは偏差値と学歴社会が強く結びついているために、多くの才能や能力が覚醒しないまま終わっているという知のリソースのもったいない状況が続いているからです。

★しかし、この鉄鎖を砕く動きが出ているのも確かです。それは、富士見丘や湘南白百合など中高がすでに日本の大学の1年なみの学びの基盤を創っているからです。イギリスでいえば、ギャップイヤー段階のものだし、アメリカでいえばリベラルアーツなみのものです。

★大学を目指して階段を上っていくというような感じではないのです。すでに大学なみのリサーチを行っているわけです。

★高大連携という名称でくくられてしまうと、大学を目指して階段をステップバイステップという感じでしょうが、学問的リサーチの基礎を中高で学び、しかもそこに大学の教員や大学院生もかかわっています。

★もはや、これは大学のゼミに相当する動きです。中高の先生方が名付けているゼミではないのです。そこに大学の教員がかかわるのです。大学院生がチュータリングをするわけです。

★外から見ていてはおなじような高大連携に見えます。IBやAPと同じように、大学を目指して階段を上がっていくように見えます。IBやAPは、難関大学のための階段をのぼっていくプログラムです。

★ところが富士見丘や湘南白百合は、すでに大学のゼミ形式の高大連携が根付いているのです。

★同じような動きをしている学校が首都圏には30%ぐらいはあります。

★首都圏の私立中学受験者は、全国の同学年の人口の3%ですから、そのような動きをしている学校に通う生徒は、さらに1%の動きです。

★この1%に希望があるのです。小さな動きが、世界を大きく変えるのは歴史の法則ですね。

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2024年5月20日 (月)

時代を変える≪私学の系譜≫

★明治時代は私立学校というのは、実は表舞台にでてこない学校組織でした。もう一つの近代路線を守ってきた系譜です。そしてその守り方は時代によって変わりました。そしてそのことがその都度時代を変えるターニングポイントでした。

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★信じられないでしょうが、明治時代はなにかと政府は私学を潰そうとしてきたのです。

私学撲滅法

★そんな法律があったんですね。しかし、戦後民主主義が日本に導入されたとき、

戦後教育基本法

★ができて、≪官学の系譜≫が再び目覚めないように、≪私学の系譜≫に希望の自由が保障されたのです。しかし、学歴社会は猛威を振るいました。≪私学の系譜≫も一時期低迷しはじめます。

私学助成法

★しかし、再び経営の安定を確保し、競争のためにではなく、他者のために学びをする本来の≪私学の系譜≫が目覚めます。

ベルリンの壁崩壊

★そして、時代は私学にグローバル教育を開き始めます。

教育基本法改正

★したがって、教育基本法改正で私学を教育委員会に統合しようという動きは世界的視野をもった私学は抗いました。

3.11

★そして3.11の時に、黄金律という私学共通の普遍的理念に回帰し、学歴社会のような権威主義的教育を無化する≪私学の系譜≫が前面に出てきます。

主体的・対話的な深い学び×探究

★ようやく民主主義的な学習者中心主義の学習指導要領が生まれ、≪私学の系譜≫はさらに権威主義を無化する未来の学びにシフトしていきます。

パンデミック

★新型コロナウィルス感染を乗り越えるために、権威主義的な目的に抗い、私学なりの自由をパンデミックのさなかに守りました。

生成AI

★グローバル探究×生成AIによって、生徒1人ひとりのリサーチ&フィールドワークベースのプロジェクト学習が広く深く浸透しました。

ムーンショット計画

★その学びのベースで、中高の大学化が生まれ始めています。さて、2050年はどうなるのか。

 

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2025年からはじまる越境的リサーチの広がり 中高大の動き

★東京の私立中高一貫校を眺めていると、70%は東大を頂点とする学歴社会を無視できないカリキュラムマネジメントをせざるを得ない状況であり、30%は世界的視野をもってカリキュラムマネジメントする私学が出現しています。世界的視野をもったからといって、何か善なる理想に燃えているかというと、もちろん燃えていますが、70%の学校だって理想に燃えています。ただ、30%の学校が実行していることは、その理想に水をかけたり、歩むべき道の障害になったりするもの=アンコンシャスバイアスを無化しようというアグレッシブな動きだといういことなのです。

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(共愛学園前橋国際大学のサイトから。同大学のデジタルグリーン学部の新設は文科省も特筆すべきと評価している)

★その障害となっている壁は、もちろん制度的なものもありますが、その制度さえもアンコンシャスバイアスによって言説化され構築されているという側面もあるくらいですから、たとえば、大学が「女子枠」を設けなくてはならい、それを文科省も推奨するのは、ジェンダー問題に潜むアンコンシャスバイアスを払拭しようという動きとセットになっているわけです。

★ですから、私立学校もそこに思い切りチャレンジすればよいのです。30%の学校はそうやって、偏差値や学歴社会を無化する動きにでてきたのです。もちろん、それは私立中高だけのチャレンジではないのです。総合型選抜の動きや大学・高専機能強化支援事業など文部科学省も高等教育機関を支援し始めているということもあるでしょう。

★高大連携の広がりもあります。もちろん、学生の人口減少に対する生徒獲得戦略としてのねらいもあります。しかし、リベラル資本主義の国であれば、経営のことを考えるのはむしろ当然です。補助されるのが当然だという権威主義的なものは、無化しなければというのが、資本主義のそもそも原理で、そのプリンシプルを追究しているだけでしょう。

★ただ、このリベラル資本主義がエシカル資本主義になるかエゴ資本主義になるかは、人間次第なのです。シンプルにそうです。エゴ資本主義は権威主義になっていきますから。

★だから、偏差値や学歴社会を無化する動きは大事であると同時に警戒もしなければなりません。その外皮をかぶりエゴ資本主義を進める可能性もあるからです。

★さらに、この権威主義的な偏差値や学歴社会を無化する動きが私立中高や文科省の推奨する高等教育の制度の枠組以外から起こってもいます。

★それは、

①インターナショナルスクールが続々日本に上陸

②ミネルバ大学が日本をフィールドワークの場とする

➂ZEN大学の開校予定

★インターナショナルスクールは、富裕層の私立中高からのシフト。ミネルバ大学は高度英語の学びに拍車をかける。ZEN大学はN高などの通信制高校の新しい道をさらに開くという動きを作っています。

★インターナショナルスクールに対しては、私立中高は、その機能を超える教育を開発するようになっています。むしろメリットの方が多いですね。外国人日本人という教育インバウンドにも拍車をかけるでしょう。そして、これは明らかに海外大学への道が大幅に広がります。

★ミネルバ大学は、私立中高の教育にC1英語とPBLとSTEAMを盤石のものにする影響を与えてきました。フィールドワークとオンラインというハイブリッド空間での教育に拍車をかけるでしょう。メリットの方があります。

★ZEN大学が本当に稼働するとしたら、私立中高にも既存の大学にも打撃を与えます。もはや高校卒業資格に74単位も必要がなくなるし、大学もミネルバ大学のオンライン教育をデフォルメするわけです。政府のムーンショット計画の時空を超える生活というものとマッチしてしまいますから、従来の学びや研究の常識を覆すことになります。これはだれにとってメリットなのかデメリットなのか熟慮・熟議するのが良いでしょう。未来はしかし、この方向を進める可能性の方が大です。

★そこで全日制は、74単位のうち36単位は柔軟に活用できるようになりました。しかし、まだ実際には動けていないですね。もっとも、柔軟にせざる得ないでしょう。

★このような時代です。経済道徳合一説の≪私学の系譜≫が再び動き出しています。社会の不安や壁を無化し希望に変える私立学校の動きです。

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2024年5月19日 (日)

立教大学 2026年度から環境学部を新設 文理融合、国内外のフィールドワーク、リベラルアーツ、リーダーシップ、etc.

★今月、立教大学は、2026年度から「環境学部」を新設するとリリース。文理融合ということですが、理系的技術というより理系的発想がベースのような感じです。文科省の理系人材不足解消の政策「大学・高専機能強化支援事業」の一環でもあります。

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★グローバルリスクの中の地政学リスクや気候変動リスク、またそれらも含む複合的な理由による「不安」に囲まれた人間関係のハラスメントリスクなど解決が切迫しています。新設の環境学部は、環境分野のリーダーシップを発揮できる人材の育成を目的にしているようですから、これらすべてのリスクを回避する政策やアクションを想定しているでしょう。

★したがって、国内外のフィールドワークも予定されていて、本格的なリサーチ・リーダーシップを発揮しようという学生が集まってくる期待が高まります。

★香蘭女学校は、すでに立教大学と系属校推薦における推薦枠数を2025年度立教大学入学予定者から160名に増員する締結をしたことを発表しています。1年タイミングがズレていますが、香蘭女学校にとっても環境学部新設は知の選択肢が増えるのですから大歓迎でしょう。

★文理融合というのは、リベラルアーツ的発想が前提ですから、立教大学にとっても、文科省の政策は大歓迎ということでしょう。

★これで、ますます中高時代は、PBLなどによるリサーチの基礎、高度英語力、ICTなどDX力などは盤石にしておく必要があるということでしょう。できれば、PBLはリベラルアーツを背景に埋め込んでおいて欲しいということでしょう。

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経済の世界でも現代思想がわかりやすい社会を読み解くコンセプトレンズになっている 教育の世界でも

★舟津昌平(東京大学大学院経済学研究科講師)さんの新刊「Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち」が軽快なノリで、社会の深層にダイブしているのがおもしろい。そして、そのときの切り口を表現するコンセプトレンズが、かつて小難しいと思われていた現代思想の切り口を表現することば(記号)。

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★著書のサブタイトルが、すでにボードリヤールの「消費社会の神話と構造」を思わせないでもない。1970年代以降の哲学や社会学ではやった現代思想のことば(記号)が、経済学や経営学、最近では田内さんのように金融教育でも軽快に活用されている。

★舟津さんは、「ニーズ」とか「欲求」から組み立てられる経済や経営を「不安」というハイデガー的な雰囲気のことば(記号)をつかって読み取っていく。その際、経済や経営を取り巻く社会を構成している「言説」に巻き込まれているZ世代のことばや行い、感情を現代思想のことば「記号」をコンセプトレンズとしてぶつけて、その「言説」のリバタリアン的資本主義の構造を暴いていく。

★私の周りにいる、Z世代は、舟津さんが描くような考え方も感じ方もしないけれど、コスパやタイパ意識は、働き方改革やライフシフトの文脈で自分なりのアイデアをもち、意志決定しながら学んだり生活しているから、同書と必ずしも共振も共鳴もするわけではない。

★ただ、一般的にはたぶんそうなのだろうと了解しながら、そのZ世代のメンタルモデル的な定義よりも、世界で20億人いるZ世代とその0.8%くらいしかいない日本のZ世代との違いには興味と関心がある。舟津さんも最後に語るが、あくまでZ世代を通して現在の社会の構造を見抜くことが目的だということには、それはそうだと思う。

★その際に、その見抜くコンセプトレンズとして、現代思想のことば(記号)を軽快に活用するのがおもしろいのだ。1970年代以降の世界の現代思想は、20世紀の社会構造とその構造を作る側だったり巻き込まれる側だったりという人間の現存在のあり方を分析し、その背景にある、あるいは深層にある本来的な存在を明らかにしようとした。

★しかし、それは哲学者や社会学者の言論の枠組に収容されていて、世間一般では通用されていなかった。むしろ社会は「英語」を広げることで手いっぱいで、20世紀社会の社会課題はファクトとしてつかみ、それに対する対症療法的な小論文構造で語って満足してきた。多少倫理的な正義は付加され、実はそれがぎりぎり社会秩序を維持するエッジだったともいえるかもしれないが。

★公共的な情報提供も、そのファクトがベースで、その背景の根本的な課題について語ることは一般にはなかった。それはあくまで、哲学や社会学でのお話で、一般的な世間という世界では、顧みられてこなかった。

★したがって、21世紀になって、特に文化人類学的なフィールドワークとインタビュー形式のリサーチがおそらく世間にもわかりやすくうけいれられていったということもあって(「探究」という学びはまさにそれを地でいっている)、現代思想のことば(記号)の両義性などの小難しさは括弧に入れられ、わかりやすく哲学と社会学の領域を越境して活用されるようになった。

★アンコンシャスバイアスなどという言説も広く使われるようになり、おそらくそのルーツであるフッサールの現象学的還元などという小難しいことば(記号)が簡易化されてきたということもあり、心理学や経済学というより経営学や金融工学に拡散されていった。

★それに、SNSの功罪として、20世紀ではまだまだ神秘のベールに収まっていた「無意識」のケイオスの状況が、可視化され、サイバースペースに拡散された。それゆえ、そこを世間もどうとらえるか緊迫状況が生まれ、同時に「不安」の生まれるシステムも可視化され、対応方法について誰もが語り得る状況になってしまった。

★それゆえ、それを捉えるアイテム言語として、現代思想のことば(記号)がようやく活用されるようになったのかもしれない。

★1989年生まれの舟津さんの生きた青春時代は、まさに現代思想がファッショナブルになっていく時代でもあり、Z世代誕生前夜時代でもある。

★最近ようやく教育界でも、30代後半から40代前半の教師が、「グローバル」や「探究」プログラムのリーダーシップを発揮するポジションにつきはじめ、田内さんや舟津さんの活用する現代思想のことば(記号)を活用するようになってきている。

★もう一つ世代前だと、その言葉を哲学や社会学の領域の専門用語として幻惑的に活用していたから、広まることはあまりなかったが、それぞれの領域の説明用語として専門的な言説で固められてきたいわばダンジョンを攻略するためのアイテムとして現代思想のことば(記号)を活用するようになったのが、今の30代後半から40代前半の世代だろう。

★それが、今教育界でも水面下ではあるが、ようやく広まっている。まだ、舟津さんのように教育を語る書籍には著わされていないが、もうすぐその時代もやってこよう。

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2024年5月18日 (土)

ようやく≪私学の系譜≫が動き始めるとき

★あらゆる格差をなくすために、その元凶である学歴権威主義を崩す真正≪私学の系譜≫が動き始めています。

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★2030年にそれは全面的に展開されるでしょう。

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八雲学園からリアル・グローバルリーダーが広まるわけ

★最近の八雲学園は、その柔らかさと気魄の合力が凄まじいと感じないわけにはいかないのです。教師も生徒も実にウェルカムの精神を大切にしているのですが、その一方で世界を見据えている目線の高さが形づくる凛とした姿勢の気魄は、空手部だけのものではないのです。

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★昨日開催された八雲バラザミーティングを見学(その様子は21世紀型教育機構のサイトにも掲載されています)に行きました。そのときに、八雲学園の榑松先生から少しお話をお聞きすることができました。榑松先生は、RSの名誉会員(世界でも数名しかいません)ですから、RSの国際会議に八雲学園の生徒たちといっしょに行って、多くの加盟校の先生方と対話をして、八雲学園にそのネットワークを強くつないでいきます。

★いっしょに行った生徒たちは、その後ろ姿見ていますから、オープンに自らRSの会員校の生徒たちと対話しネットワークを創る動きをするようです。深圳のグローバル会議で見た榑松先生の姿は、すさまじかったようです。

★おそらく、今回彼らがRS運営委員会を結成し、八雲バラザ会議を再生したのは、その姿がロールモデルだったのかもしれません。

★それは、どんな様子だったかというと、RSの最も大事にしているバラザの機能をもっと活発にして欲しいと提案したことだそうです。榑松先生は、「これは今回に始まったことではないのです。世界的に、リベラル資本主義が少し分断気味で、自由な発言というより権威主義的な構えを作る方向性が少し強くでている傾向があります。バラザは、本来このような風潮を打破するために、IDEALS(Internationalism,Democracy,Environmentalism,Adventure,Leadership,Service)という理念を掲げ、それを各加盟校が実践しようというコミュニティです。ですから、私が感じたことをオープンに言えるわけです。そうするとやはり一緒に来ていた他の学校の先生も同感だと主張し、一気呵成にバラザ活性化の動きが生まれ、最終的に国際会議は目的を十分に果たすことができたのです」と。

★IDEALSという理念を貫徹するためには、反論もお互いにリスペクトすると同時に、であるならばどうするのかすぐに動くという言葉と行いの両立が重要だというのです。

★その加盟校の先生方の姿を見たし、そのリーダーシップを榑松先生がとったのを見たわけです。八雲学園の生徒は、自分たちがバラザミーティングを主催し、IDEALSを学内外に広めていきたいと思い行動に出たのでしょう。

★八雲学園で、RSのIDEALSについて熱く語るのは、副校長の菅原先生です。今回も、こうやってリアル・グローバルリーダーがたくさん育っていくように私たちも尽力するのだともの凄い気概を体中から放っていました。

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成立学園 新たな海外大学進学教育 国際クラスなど設置せずに

★昨日、成立学園の宇田川先生から驚くべき新ビジョンをお聞きしました。来年100周年を迎えるにあたり、新たなる不易流行型の土台のしっかりした教育システムが完成しています。今回のGLICC Weekly EDU 第173回「成立学園の新ビジョン」では、まず1時間しっかり宇田川先生の講演をお聞きして、そのあと対話をするというスタイルの番組になりました。

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★そのシステムは複雑ですが合理的にシンプルに有機体になっているのが見事です。その中で、特におもしろいのは、高校のコースを完全に総合型選抜で進路を考えるコースと一般選抜で進路を考えるコースとを分けているということです。

★これを可能にしているのは、探究型の学びと個別最適化の自習体制や先輩がメンターになって指導する「れいわ汎愛塾」が整備されているからできるわけです。

★そしてIELTS認定校でもあるので、その探究や総合型選抜で進路を切り拓くシステムとそのIELTSが結びつくことによって、今年海外大学も23校合格できるようになっているのです。

★THEランキングで、日本の大学は、世界大学ランキング200位以内には、3大学しかランク入りしていません。にもかかわらず、その3大学ですら同日日受験なので、国立大学であれば1大学しか選択できません。ところが、世界に視野を広げれば、同レベルの研究ができる大学の選択肢が広がります。

★もはや、開成であれ成立であれ、海外大学という基準で見れば、進路実績の差はなくなるでしょう。

★ところが、日本の教育は、日本という閉じられた箱の中で序列をつくり、そこで椅子取りゲームを行わせて、ストレス疲労を生み出し、自己肯定感あるものが消耗しているわけです。前提が生徒にとっての学問の自由を制約しているわけですから、日本社会が低迷するのは当然です。

★今後成立学園のような学校がどんどん現れてきます。BOX学歴社会を解放する時がやってきたのです。

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2024年5月17日 (金)

進化する東京私立中高一貫校(12)保護者が感じ取りたい雰囲気はどのようにして生じるか?

★前回、合同説明会で各学校のブースに行ったとき、保護者が知りたいことナンバー1は、「学校の雰囲気」だと述べました。果たしてその雰囲気とはなんでしょう。これは保護者1人ひとりによって違うのでよくわかりませんね。しかし、だからこそ重要なのです。多様な感じ方が生まれてくる学校の存在って魅力的ですね。画一的で、どこに行っても同じだと感じるとしたら、そもそも合同説明会に行く必要がないのですから。

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★学校の雰囲気が何であるかは、かように感じる人によって様々なのですが、雰囲気を生み出す影響力ある要素はおよそ5つあります。

①教師力

②人間関係

➂価値観

④強い絆と弱い絆のバランス

➄学校時空

★がそれです。教師力と言っても様々ですが、認知能力と非認知能力のバランスがどうかということで、かなりその学校の教師力の特徴が見えてきます。

★人間関係も、水平的か垂直的か、両立しているかなどで、かなりその学校の関係性の特徴が伝わってきます。

★価値観も個人主義か利他主義かによってずいぶん学校組織のビジョンの立て方や教育活動の方向性が変わってきます。

★強い絆と弱い絆のバランスがどうかということですね。親密でいつでもどこでもいっしょに活動する濃い絆と必要とするときに機能を十分に果たす弱い絆か。どちらかに偏っているのか、両立しているのかによって、ずいぶん学校の雰囲気は変わりますね。

★学校の時空は、時間割とキャンパスですね。柔軟だったり余白があったりする時空なのか、目いっぱい詰め込んでいる時空なのか。

★どのような組み合わせの適用がよいのかは、意外と経験的直観によってわかるものです。

★私学は、最低限この5つの要素の傾向を決めておく必要がありますね。

 

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進化する東京私立中高一貫校(11)保護者の志向性

★今回の合同相談会でもアンケートをミライコンパスで集計。その中に「各校のブースで知りたい内容を順に3つ選んでください」というクエスチョンがあります。結果は、「学校の雰囲気」と「教育プログラム」、「進学実績」がいつも通り多いのですが、2018年からの推移はこんな感じです。

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★「施設や環境」も多いのですが、これは「学校の雰囲気」にも関係しますね。

★これは、進学実績へのニーズが減少しているというわけではなく、説明を聞きに行くのだから、当然教師のプレゼンから伝わってくる雰囲気や教育プログラムの機能性を知り、なるほどこれならこのような結果がでるなと納得したいということでしょう。

★志望校を決める要件についてのクエスチョンでは、やはり進学実績は大きなポイントになっているのです。

★6年間通う学校です。身体、メンタル、人間関係、コミュニケーションなどが醸し出す雰囲気は極めて重要です。そして学園生活で最も時間を費やすのは学びです。教育プログラムが心地よく役に立つかどうかも大切です。

★それらが進学実績につながるかどうかも当然重要です。

★保護者は、実に合理的な視点かつ心地よさという感覚で学校選びをしているということが改めてよくわかります。

★ただ、2019年以降のパンデミックの期間以降、何かが変わったのは確かですね。

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進化する東京私立中高一貫校(10)三田国際 相変わらずの人気

★三田国際のブースは黒山の人だかりが絶えませんでした。相変わらずの人気です。

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★AERA with Kids+2024.5.16の記事「首都圏の中高一貫校で「グローバル教育に力を入れている」のはどこ? トップの学校は海外大進学者も増加【独自ランキング】」では、トップは三田国際学園でした。

★海外大学進学も飛躍的に伸び、東京大学合格者もでていますから、教育のプログラムの優秀性が注目の的といういことでしょう。広尾学園と同様、エリート教育とプログレッシブ教育の融合教育が行われている独自のポジショニングを構築しています。

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進化する東京私立中高一貫校(09)国士舘中学校 夢なき者に成功なし

★合同相談会のブース国士舘に100組以上の受験生が訪れていました。今春の中学入試で人気急上昇で、脚光を浴びた私学です。新入生のオリエンテーションで神山教頭の講義は、吉田松陰の「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に夢なき者に成功なし。」という言葉から始まります。

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★とにかく教師の面倒見が格別です。生徒はワクワクしながらドンドン学んでいきます。なぜでしょう。それは神山先生は、序破急の「序」の部分を丁寧に生徒と歩んでいくからですと語ります。

★世の中は急ぎすぎますと。すぐに解決を求めます。ところが国士舘は、夢を生徒が抱くところからじっくり見守りながら、生活習慣や学習習慣や道の心などの型が身体にしみこんでいくところから始めるのだと言います。

★夢を持ちなさい、あれをしないさい、これをしなさいと「型はめ」をいくらやっても、自分の想いや思考、行動にならないのですと。面倒見がよいとは、急がせることではなく、人生を切り拓く型を自ら入れていくことをいっしょに体験しながら見守っていくことのようです。

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★同校の剣道・柔道。書道という道の学びは、まさに夢がうまれてくる型が入ってくる学びのモデルです。そして高校生ごろにようやく、序破急の「破」に到達する生徒も出てくると言います。しかし、まだまだ「序」の段階の生徒もいます。

★しかし、教育は6年で完成するのではないと、社会に出るまでに「序破急」という成長の過程を経験していけばよいのだと。時短というタイパの高ストレスの時代に、本来的な魂のエリートを育成する教育は、時代のトレンドには左右されないで、自らの夢を見つけ、実現すべく活動していくということです。

★時代が忘れないように求めているものを国士舘中学校は、長い間、そしてこれからも大事にしていきます。不易流行です。

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2024年5月16日 (木)

進化する東京私立中高一貫校(08)海城学園・大妻中野 グローバルリーダーがブースに立つ

★合同相談会で海城学園と大妻中野は隣同士。私が通り過ぎたとき、海城学園は同学園教育研究所所長中田先生、大妻中野は学校長の諸橋先生がプレゼンしていました。お二人とも勤務されている学校の改革を牽引してきたリーダーです。

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★海城学園と大妻中野がどのような教育を行っているかは、説明するまでもないでしょう。非常にアグレッシブで、本来的なエリート教育を行っている先進的学校です。そのような成長する学校に仕上げてきたお二人の共通点は何でしょう。

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★それは自分の学校だけうまくいけばよいというエゴリーダーではなく、日本の教育はもちろんのこと世界の教育にも影響を与える教育システムを創り上げようという高い視点と広い視野と実践力をもったグローバルリーダーだということですね。

★もちろん、グローバルリーダーは、個人として優れているだけではなく、世界を巻き込み支えるサーバントリーダーでもあります。

★このようなリーダーのいる学校と出会えるとよいですね。

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2024年5月15日 (水)

進化する東京私立中高一貫校(07)富士見丘 世界学校として国内外から注目を浴びる

★今や富士見丘は、国内外の受験生から注目を浴びています。論文を書けば優秀賞を獲得し、テニスの大会にでれば、インターハイ出場権をゲットし、受験情報誌を開けば、レバレッジポイント第一位に位置し、模擬国連に出場すれば大健闘し、コンテストに出れば、ビジネスプラングランプリに入賞し、海外大学に挑戦すれば世界大学ランキング100位内の大学に5名が合格し・・・と生徒の活躍と成長が目に見えるカタチになっています。

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★イギリス、グアム、ハワイ、オーストラリア、アメリカ、シンガポール、マレーシア、台湾など全球的な範囲で行う破格のグローバル探究プログラムが展開しているからですが、実は中学から個人研究「5×2」が28年間も続いているのです。ある意味、富士見丘の学びの原点です。

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★たとえば、「法と社会の相互連関~主体的政治的参加の重要性」というテーマで、社会の変化に応じて変容すべき法を改善するのは社会に生きている私たちであるという趣旨をリサーチして論文を書き上げる生徒もいます。実に深く学んでいます。

★このリサーチをした生徒は、別の論文でも、小泉信三賞で次席入賞を果たしているほどです。

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2024年5月14日 (火)

進化する東京私立中高一貫校(06)佼成学園女子 中学にグローバルコースとリベラルアーツコース

★佼成学園女子のブースの前を歩いていた時、一枚のブローシャーをいただきました。2025年4月からグローバルコースとリベラルアーツコースを設置するということです。

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★もともと英語には力を入れている同校です。男子校の佼成学園とともに注目を浴びていますが、さらにブラッシュアップということですね。

★ブローシャーには、「言葉で人とつながる」「思考で未来とつながる」「体験で世界とつながる」という言葉と時間と空間のつながりのコンセプトを明記していました。

★リベラルアーツを前面に出すはずです。

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進化する東京私立中高一貫校(05)北豊島 リベラルアーツを前面に

★北豊島中学校・高等学校もブースは、「海外大学に4年連続70名以上の合格者を輩出!」がど真ん中にはってあり、その両隣に茶道などの日本的教養のプログラムの紹介、リベラルアーツ教育がドーンと表示されていました。

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★いただいた資料によると、2023年度は、THEの世界大学ランキング200位内に、30人が合格していました。2022年度は、35人、2021年度は、19人、2020年度は、11人ですから、確実にパワフルになっています。

★THEの世界大学ランキング200位以内に入っている日本の大学は、東大、京大、東北大だけですから、北豊島の生徒さんが全球的視野で、国内大学の才能開花を制約する壁を見事に乗り越えていることがよくわかります。

★北豊島は、言うまでもなく、3タイプの私学進化座標では、第Ⅰ象限に位置していますね。日本の教育の未来モデルの一つであることは間違いありません。

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進化する東京私立中高一貫校(04)校長自らブースに立つ成長する私学

★午後、工学院大学附属の中野校長と島田副校長がブースに立って、グローバル×イノベーティブ教育について語っていました。二人で制服ブレザーまで着こんでのパフォーマンス。いかに学内の管理職と教職員がフラットであるか、生徒ももちろんフラットであるか伝わってきます。もちろん、中野校長はビジョンをボトムアップ的に巻き込みながら創りあげ、出来上がるとそのベクトル作りに邁進します。横の軸ばかりかちゃんと縦の軸もクロスしている組織です。

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★早々にパンフレットはなくなり、ポスターセッション的プレゼンをして、あとは住所を書いていただいて後程お送りするという案内まで丁寧にされていました。同校の前のブースは攻玉社です。ここも黒山の人だかり。中野校長は、工学院にたくさん訪れて頂けたのは感謝いたします。そのうえで、私たちもあのような黒山の人だかりをと闘志を燃やしていました。東京は東西に長く、23区と西の八王子とはマーケット状況が違うのですが、それはそれ、これはこれという意気込みが凄まじいですね。

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★文大杉並も青井校長と染谷理事長補佐がブースに立って熱弁をふるっていました。高校のDD(ダブルディプロマ)コースが中学にまで接続して、今では破格の海外大学進学実績がでているのですが、その学びの豊なプロセスについて受験生と保護者と共有されていました。

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★神田女学院の芦澤校長も情熱溢れるプレゼンをしていました。日本版APを思わせる64の大学と高大連携を組んで、探究=進路=研究直結の独自の取り組みは、知的好奇心溢れる学園づくりのエンジンになっているのだと。

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★広尾学園の理事長校長池田先生もブースに立ち、受験生と保護者を柔らかい語りに包んでいました。同校も海外大学や医学部に生徒が進んでいますが、プログレッシブであると同時にエリート校です。少しそこは豊島岡女子や海城とは違います。第Ⅰ象限と第Ⅱ象限にまたがっています。両方の志向性の家庭から支持されている稀有な学校の1つかもしれません。

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★和洋九段女子の中込校長と新井教頭もブースに立ち、多様な団体と連携してプロジェクトを創発しながら生徒が大きく成長している様子を受験生と保護者と共有し、共感を生み出していました。生徒の精神的成長と知的成長の統合ができている女子校ですね。

★ここでご紹介できなかった多くのプログレッシブスクールは、校長が何らかの形で先生方と一緒に協働して相談会をっ組み立てていました。かえつ有明の新校長小島貴子先生は、資料を受験生に他渡す作業をしていました。本来的エリート教育校である豊島岡女子の校長竹鼻先生も、早朝からブースの組み立て作業を先生方といっしょに行っていました。竹鼻先生は協会の役員で、この合同相談会の実行委員の1人ですから、ほかの委員の先生から、そろそろこちらに来てくださいと呼ばれるまで、集中して取り組んでいたのです。

★成長する組織の校長は横のつながりと縦のマネジメントを変幻自在に行うものです。以上のようなシーンにもそれが見え隠れしているのがおもしろかったです。

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進化する東京私立中高一貫校(03)豊島岡女子と八雲

★豊島岡女子は黒山の人だかり。女子教育がゆえに、本来的なエリート教育が行き届いています。世の中を善くする人格が育ったうえで、東大を含む難関大学に進み、医学部に進みと。そんな中、来春「算数・英語資格入試」を新設。文理融合の時代の象徴的な新入試。今の中高生は≪Z世代≫と≪α世代≫。理系志向だし、One Earth感覚。とはいえ、リベラル資本主義は、分断されつつある地政学リスクあり、地球規模の気候変動リスクあり、先行き不安でメンタルリスクなどが強い世代。強い意志とビジョンとそれを実現する未来永劫に使えるテクノロジーを身につけ、何よりOne Earthに貢献できる全球的資本力が必要。豊島岡女子に娘をもつ家庭が期待をするのは当然か。

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★豊島岡女子の3タイプ私学進化座標軸でいえば、第Ⅱ象限に位置しますが、一方で第Ⅰ象限に位置する八雲学園も人気。用意したパンフレットはすべてなくなってしまったほど。八雲学園は、もともと英語入試は実施していましたが、やはり2025年入試から「英語資格利用」をすべての2科・4科入試に導入する予定。

★同校は、もともとは小学校で英語を学んでいないのだから、中学入試の段階で英語力を問うことはしてこなかったのですが、高学年で英語が教科として導入されたことから、英語入試を実施。今春共学1期生が卒業して、海外大学に20名以上合格したこともあり、「英語資格利用」を入試に導入したのでしょう。

★ラウンドスクエアという世界のZ世代のリーダーが集結する世界の私立学校同盟の一員として、八雲学園の教育では英語という言語能力は欠かせないということもあります。

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★エリート教育を実施する豊島岡女子も、プログレッシブ教育を実施する八雲学園も、4教科知識・理解という限定的能力(=認知能力)を測る偏差値だけで、学校の教育を選択するのではなく、もっと多様なグローバル×探究の教育内容のあり方も調べて欲しいというメッセージを発していたことは共通していました。

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2024年5月13日 (月)

進化する東京私立中高一貫校(02)3タイプの進化

★1日、会場にいると、多くの先生方と話をする機会があります。もちろん、受験生と保護者にプレゼンをしなければならないわけですから、長話はできません。しかし、それがゆえに貴重なお話をお聞きすることができます。あるいわゆる名門校の先生と話したとき、私たち名門校は、教育のパラダイムを変える使命があるのだというのです。偏差値競争にあけくれているわけでは決してない。むしろ、それによって本来小学生の時に育ってきているはずの人格形成の段階が、部分的に阻害されている。そこを回復するには、入学後に教育すればよいではなく、社会的な教育の構造を規定しているパラダイムを転換する教育の必要性をカリキュラムポリシーのみならず、アドミッションやディプロマなどのすべての局面で実施していくことが必要なのだと。

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★いわゆる歴史的名門校は、東大を頂点とする学歴社会の中で、本来的なエリートを養成し、彼らが日本社会をよりよくしていくことを目標にしていました。しかし、上記の図のⅢの領域は、今や偏差値競争による偏った人間力を育てることに疑問を持たない世間ができてしまい、日本の社会的資本力や人的資本力の衰退を招いているわけです。

★そこで、そこを脱するために、偏差値が全く稼働していない(とはいえ階層構造はあるのですが)海外大学にまで視野を広げて、教育を行うグローバル・キャリア教育を実施するエリート名門校が出てきたわけです。③の変容がそれにあたります。

★一方、そもそも教育そのものを変える学校が登場してきました。非認知能力を養うべく、ディスカッションや探究ベースの学びに変容させるプログレッシブ教育を行う私学も登場したのです。もし、名門校が格差をつくるなどの弊害のある教育観を転換させる使命を負っているとするなら、このようなプログレッシブ教育を行う学校もまた名門校と呼んでいいのです。もし、偏差値の高い学校を名門校と呼ぶとするなら、その発想自体すでにパラダイム転換などできない壁に囲まれていることを意味します。

★このような進化くを、矢印①が示しています。

★そして、このⅣにシフトしたプログレッシブ教育を行いつづけていくと、当然多様性の重要性に気づきます。多様性のもつ光と影の問題性は、偏差値競争という日本の独特の問題性に気を取られているうちに、実は見逃していきます。

★やはり外に出ようという破格のグローバル・キャリア教育に、プログレッシブ教育を実施する私学は行きつくのです。これが矢印②が示しています。このⅠ象限に位置する私学は、歴史的名門校ではないかもしれませんが、海外大学に大量の合格者がでる新しい名門校になっているのです。

★私立学校は多様です。ざっくりこの3つのタイプの進化をたどっていますが、それぞれのタイプの在り方も実に多様です。今後少し具体的にみていきましょう。

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進化する東京私立中高一貫校(01)東京私学が団結するわけ

★昨日12日(火)、東京国際フォーラムで東京私立中学合同相談会が開催されました。開会のあいさつの中で、主催者の一般財団法人東京私立中学高等学校協会会長近藤彰郎先生(八雲学園理事長校長)は、建学の精神に基づいた独自性・先見性・先進性ある各私学の魅力を訪れた受験生と保護者に共有してもらうと同時に、私立学校にはこれほど多様な教育があるということを互いに確認し、さらに進んでいきましょう。このような魅力に未来を感じる貴重な場をこれからずっと続けていくことの価値を高めていきましょうと。そして、そのためには、私学の経営権が守られていなければ独自の自由な教育ができないのですと。だから、この大事な経営権を侵害する大阪府のような政策に対しては、一丸となってはねのけていこうと宣言しました。

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★私学は、建学の精神という理念とそれを時代に適合させたビジョンを軸に進取の気性に富んだ教師が教育を行っていきます。それは、自分たちが創意工夫して考案していく自由があるからこそで、そのような人的資本力を豊かにしていくには、経営というマネジメントが必要です。とはいえ、一つ一つの私立学校は、小規模経営ですから、行政的なダイナミズムには、一致団結が必要なのです。

★受験生獲得のために競争しつつ共生することの必要性。5月と8月のこの大きなイベントで、東京私学が一堂に会してそれを確認することは、大変重要です。

★この私学主導の行事は、競争的共在ですが、受験市場では偏差値競争だけがデフォルメされて、そこでは認知能力に限定される競争がおこるため、実は各私学で大事にしているもう一つの生徒の能力である非認知能力を阻害してしまうおそれがあります。多くの場合は、入学後、オリエンテーションや行事、部活、プロジェクトで修復していくのですが、できない場合もあります。

★ですから、そうならないように、生徒の多様な能力を大切にすることの重要性を東京の私学全体が協力して伝えていくのです。

★私立学校の経営は、人口減少による影響、政治的行政的政策の影響、経済的な影響、子供をとりまく偏狭な限定的な能力競争主義の影響など、複合的な危機にいつも直面しています。

★この危機意識共有と打開策を、同協会は、月に二回東京私学すべてと確認する理事会や支部会を運営しています。その意思をイベントとして確認し、相互に勢いづけようというのがこの合同相談会なのです。

★さて、この開会のあいさつで、実行委員長である平方邦行先生(一般財団法人日本私学教育研究所所長&東京私学教育研究所所長)は、協会役員の経営する4つの学校だけをみても、海外大学合格者の数は100名である。これは本当に東京の私立中高一貫校が不易流行をアップデートさせている象徴的な動きであると。競争的共在が、私学全体の変化を促進するエンジンであると高らかに謳い、合同相談会は始まりました。

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2024年5月12日 (日)

本日 東京私立中学合同相談会 東京国際フォーラムで

★本日5月12日(日)、10:00~17:30 東京国際フォーラムで、「東京私立中学合同相談会」が開催されます。完全予約制で、30,000人弱が訪れます。主催は、一般財団法人東京私立中学高等学校協会。

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★本日、2025年度中学入試の入試要項変更及び新しい教育内容について公開するところもあります。

★ここから、本格的に2025年度中学入試のダイナミズムが始まるのです。

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2024年5月10日 (金)

成長する組織の「対話学」⑧倫理的あり方か功利主義的あり方か

★最近、エシカル経済が話題になるようになっています。ステークホルダー資本主義がダボス会議で提案され、世界の大企業や政治家や官僚はこの延長線上で語られています。岸田政権の「新しい資本主義」もそうかもしれませんが、日本の場合は、明治時代の私学人渋沢栄一の「道徳経済合一説」があるので、その回帰かもしれません。このエシカル経済も、渋沢栄一的な発想があるかもしれません。

★単に利益を追求するのではなく、地球環境や社会全体の福祉を考慮に入れた持続可能な発展を目指すものですし、企業だけでなく、消費者もまた、購入する製品やサービスの背景にある倫理的な価値を重視することが求められます。これにより、経済活動が社会的、環境的な問題解決に貢献することが期待されているのです。シカルな消費行動は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも寄与するとされています。

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★しかし、一方で明治の私学人には福沢諭吉もいます。イギリス経済学の考え方を取り入れていますから、どちらかというと功利主義的なあり方を重視します。かといって、功利主義は利益追求主義ではないのです。その極地はリバタリアニズムですから、福沢諭吉は儒教もベースにあるので、ミルあたりの功利主義かなあと。いずれにしても、私学の建学の精神は、渋沢栄一的な倫理的あり方ベースの市場観と福沢諭吉的な功利主義的あり方の市場観の両方があります。

★それゆえ、個人Cタイプは、上記の図のように倫理的在り方ベースのCタイプと功利主義的あり方のCタイプに分かれます。建学の精神の捉え方がこの両タイプでは異なります。

★建学の精神は変えず、時代の流行を並行して新しい価値観市場で支持を得ていくというのが、倫理的在り方に多いCタイプです。一方建学の精神の理解は未完であり、時代と共にその理解は深まり、その理解を促進するのが時代の要請に合わせた流行であるとするのが、功利主義的在り方に多いCタイプです。

★渋沢栄一は儒教とカトリックの影響を受けているので、素朴に真理は真理だ。だから正しきものは変わらない、不変だということになる。今の流行りは福沢諭吉的功利主義です。

★ただ、新自由主義的な利益追求型のリバタリアン型の功利主義は、結局そんな普遍的なものは機能していないということで、不易を見捨ててしまいます。

★私立学校は、ここは保守するのかどうか。基本自分のあり方がハッピーで、その結果組織に貢献するであれば、倫理的あり方とあまり変わらないよねと彼らは語ります。

★私は、カトリックのトミズムの流れなので、交換価値と使用価値の相互補完を考えてしまいます。倫理的功利主義なのです。。。。トミズムの祖トマス・アクイナスは、欧州では今でもものの見方や考え方は生きていますが、日本ではほとんど知られていないかもしれません。資本主義の入口を開いたのは、中世の都市における彼の市場における公正価格の近代的決定論からだと言われています。驚くべきことにそれまでは、神様が公正価格を決めるということになっていたんですが、トマス・アクイナスは神様の名前を借りるんじゃねえ!と論じたのですね。

★利子もそれまで禁止されていましたが、当時の遠隔地商人は、傭兵雇って商売やってましたから、そりゃあそれに見合う対価は支払うべきだと限定的に認めてしまった。

★すかさず、メディチ家は、限定を解除して金融資本主義の初歩的道を開いてしまった。ここらへんは、フィレンツエにおける軍事と商人と修道会のイデオロギー闘争がおもしろいところですが、結局軍事力と経済力に信念は負けてしまいます。時の修道院のリーダーであるドミニコ会士のサヴォナローラは処刑されてしまいます。禁欲なんて近代の入口ではいらないと。もっとも、プロテスタント時代に、禁欲と資本主義がむずびつくのだから歴史はおもしろい。

★この三つ巴の闘争を背景に、そのときの軍人を理想の君主として書いたのが、あの「君主論」です。そして、その軍人の軍師がダ・ヴィンチです。このとき、芸術もまた大輪の花を咲かせていました。

★今後の私学人はどんなあり方で臨めばよいのでしょう。功利主義的倫理市場で進むしかないのでしょう。諸刃の刃ですが。もちろん、啓蒙主義的な市場もありです。しかし、これもイギリス啓蒙主義なのか、フランス啓蒙主義なのか、どれにも属さないルソー的な啓蒙主義なのか。

★≪私学の系譜≫の中で、忘れてならないのは、内村鑑三ですが、彼は経済を大いに認めているのですね。ただ、それよりもっと大事なものはあるんだよと。

★歴史は繰り返します。トマス・アクイナスが壮大な理論を創ったのは、当時の巨大な勢力イスラムの思想と対峙していたからなのですね。その片方で、ヨーロッパは、覇権争いを行っていたわけです。軍事と経済と精神の関係をどう循環させるか、当時の喫緊の課題でした。そのためには、ドミニコ会士は、大学で教授になって知を広めなくてはならなかった。そこで修道士たちの養成マニュアルとしてあの壮大な「神学大全」を書いた。これが、今日のディベートシステムの元祖プログラムです。

★ともあれ、渋沢栄一や福沢諭吉、内村鑑三が生きた明治時代も、まさに軍事力と経済力と教育力の三つ巴の混迷した時代でした。

★そして、今もその構造自身は変わっていません。どうする私学人というわけですね。

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成長する組織の「対話学」⑦個人と組織の成長の関係性

★学校組織に限らないと思いますが、学校の場合、他の団体のような目に見える利益をあげることが第一目的ではないので、組織が成長するというのは、少し独特かもしれません。しかし、他の団体と共通する軸を探すと、「市場支持度」と「時間」で表せるかもしれないなあと。

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★モデルを考える際に、教師のタイプをざっくり3つに分けてみます。

個人Aタイプ:専門知識が豊かで客観性を重視するタイプ

個人Bタイプ:論理的思考を重視し、組み立てる時に必要だと思うたびに知識を同時並行的に学び、主観と客観を使い分けるタイプ

個人Cタイプ:クリティカル&クリエイティブ思考を重視し、知識も新しい知識に変えていったり、主観と客観の境を揺るがす新しいパラダイムを創るタイプ

★それぞれのタイプの人数比が違うし、どのタイプがリーダーになるかで、このようなタイプの教員がいても、組織の成長の仕方は、これもざっくりわけて組織Nと組織Pに分かれます。

★市場から支持されるということは、時代と共に市場の価値が変わるので、それに合わせて、3つの個人のタイプの関係性を柔軟に変えていく必要があります。

★ただし、既存の市場に適用する組織と新しい市場を創出しようという組織と2通りありますから、どのタイプをたくさん雇用すれば、成長するのかということは固定的ではありません。

★現状の受験市場は、学歴価値観が揺らいできていますが、まだまだです。しかし、その揺らぎを創っている新しい価値観の市場を創出する動きも勢いを得てきました。学歴市場で支持されるか、新しい価値観市場で支持されるのか、市場の規模はもしかしたら、7対3くらいになっているかもしれません。

★個人Aタイプが経営陣だと、学歴市場の支持を得ようとします。そのとき、個人Cタイプは、少数派です。個人Bタイプが経営陣だと、少数派の個人Cタイプを生かします。プロジェクトをつくりそのリーダーにして実験的な場を形成するでしょう。いざというときは、舵を切れるように準備しています。

★個人Cタイプが経営陣だと、いろいろな離れ業をやるでしょう。一見学歴市場での支持も得ながら、新しい市場創出もしてしまう。それができるのは、個人Bタイプと個人Cタイプの人数は同じくらいにして、個人Aタイプは新規採用はしない人事マネジメントをするでしょう。

★個人Cタイプは、軋轢があるとライフシフトを素早くやりますから、個人Aタイプとの軋轢は個人Bタイプに任せます。ただ、CタイプとBタイプは相互にリスペクとするように対話の場を設けます。その対話は、戦略的な対話の時が多いでしょう。Cタイプは、大学に行くことが目標ではなく、「生き方」や「在り方」が大学に優先します。Bタイプは、現実的ですから、すべての生徒がアントレプレナーになれるわけではないのだから、手堅く「やり方」重視で、大学に行くことが目的になります。

★しかし、Cタイプも生徒が行きたいと思うキャリアを応援しますから、大学に行く意思があれば支援します。動機はともかく大学への指導は協働できます。そして、結果がでれば、その絆は固くなります。海外大学や総合型選抜はCタイプが任せろとなるし、国内一般選抜はBタイプが任せろとなります。そして、その部分でAタイプも活路を見出せます。

★そして、Cタイプの人数も半数はいるようになると、BとCの戦略会議、Bだけ(Aも含まれる)での共有会儀、Cだけのブレスト会議が学内に広がります。つまり、対話の雰囲気が3つあり、それぞれが互いをリスペクトするので、学歴市場からも、新しい価値観市場からも察知され支持されるようになります。

★市場が支持するには、学内の対話を察知できることが条件です。学校組織の成長とは内面的駆動力の勢いですから外部に伝わる勢いになります。サイトなどの情報共有が活発になりますからね。するとメディアも取材に行きます。外部の団体もなんとかネットワークを結びたいと思うし、そのためにはどんな応援ができるか創意工夫してくれます。

★逆に対話が生まれないところには、市場が察知できないので、支持は下がっていきます。Aタイプが多い学校で、そこで戦略会議を頻繁にやり結果も出していれば、学歴市場は察知します。その市場では支持を得られます。

★どの成長の仕方がよいのかは、それは私にはわかりません。選択の価値は神々の闘いですから。

★ただ、私の仲間は、Cタイプが多く、リーダーでもあります。そういう意味では、学歴市場でも新しい価値観市場創出でも支持を得られるように両方に取り組んで楽しんでいます。

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2024年5月 9日 (木)

自分を生み出す時空 香蘭・駒女・かえつを例に

★各私立学校には、生徒ももちろん教師も自分を生み出す時空の拠点があります。授業でも部活でも生徒会でも多様なプログラムにおいてでも、自分を生み出しているのですが、それらは目的が明快ですから、その目的と自分の関係性の中で自分を生み出していきます。一方で、いったんあらゆる目的を解除して、そのうえで世界全体に結びついていく自分を生み出す時空の拠点が私立学校にはあります。

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(左から、香蘭女学校のチャペル、駒沢学園女子の照心館、かえつ有明のBLOOM)

★香蘭女学校のようなキリスト教系の学校は、チャペルとか聖堂とかがあります。礼拝やミサをあげる場であるととともに、ひとり瞑想して世界と自分のギャップを感じながら、そのギャップをいかに縮めていくか洞察する場であると同時、世界の痛みを感じ自分をどうするか想いを馳せる場所でもあります。

★駒沢学園女子のような仏教系の多くには坐禅をする場所があります。ここも内省の場です。外国人には魅力的なパワースポットです。

★かえつ有明のように宗教系でない学校でも、あらゆる教科活動を越境する対話をしたり自分を見つめたりする場がああります。やはり世界と自分の関係性に気づいていく場でしょう。

★もちろん、あらゆる場所が自分を生み出す時空に変容できます。しかし、私たちは旅をしたり、山登りをしたり、森に入っていったり、非日常的な物質的な時空という型に守られながら、自己内省する場も求めます。その時空の中で、新たな自分に出会えます。

★もともとあった自分なのですが、それに気づいていなかったという場合が多く、気づいたときにその瞬間新たな自分が生まれているという感覚になるでしょう。もちろん、こんな自分が在ったのかと思うような変容もあります。それでも、もともとなければ生まれてくることはなかったでしょう。

★人は、未完の自分を完成に向けて生き続けると考えることもできるし、本来の自分に帰還していくと考えることもできるし、自分の才能の発見と開花への道行と捉えることもできるます。このように自分が生まれてくるという感覚は、様々なのですが、人は、ふだんは小さな目的から壮大な目的まで、いろいろな目的に向かって走っています。ときに、立ち止まって、すべての目的から放たれて、世界の響きに心身が包まれる時間と空間はなぜか必要です。人それぞれパワースポットは違いますが、それを探すシミュレーションとして、上記の写真様な時空が私立学校にはあるものです。

★パワースポットとは、あらゆる目的に向かって走る時の「やり方」へのこだわりから解除され、新たな「在り方」を覚醒し、再びそこに向かって「やり方」を見出す時空です。マインドとスキルの永劫回帰ですね。

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かえつ有明 対話によるEQとシステム思考の融合

★かえつ有明は対話に満ちていると前回述べました。今回は、その対話のプロセスについて考えたいと思います。かえつ有明は、2015年ころから共感的コミュニケーションとかノンバイオレントコミュニケーションとかを学内で研修し授業をはじめあらゆる教育活動に浸透させていきました。

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★昨日見学させて頂いたとき、教師一人一人がそのような心理的安全を生み出すコミュニケーションができるようになっているのを見て、なるほど浸透しているのだと改めて実感しました。

★そして、さらにそれがマインドとして生徒自身も自分の中で生み出すことができるようになるまてのプログラム作りが常にされているのが今回のユニット制の共有会だったのだと。

★なぜなら、システム思考やEQを動かす対話ツールを共有し、生徒1人ひとりが自分を生み出していくレバレッジポイントを教師が対話することによって見出していっているからです。レバレッジポイントはかなり主観的なものです。非認知能力的なものです。

★ですから、数字やデータですぐに見えてくるものではありません。いかにスコア評価で私たちは生徒1人ひとり才能であるレバレッジポイントを見えなくしてきたことか。今、かえつ有明の教師は、その見えなくしてきたベールをはぎ取る対話をしているのです。

★私が見学した時には、理想と現実のギャップを相互に受けとめ、ポジティブに転換するレバレッジポイントについて対話していました。またそのベールをはぎ取るために氷山モデルという対話ツールをつかったり、そこにある根本的な社会課題を見出すためにループをつないでいくシステム思考の真骨頂である図を活用してプレゼンしている先生もいました。

★大事なことは、これらは対話ツールはあくまで互いにモヤモヤ思っていることや感じていることを言語化するときの触媒です。そのツールを活用することで何か正解が見えてくるということではないのです。

★対話ツールですから、ひとりで自問自答しながら活用することも、もちろんできますが、複数で対話する方が推論の梯子にならずにすむわけです。推論のはしごの図も、図書館「ドルフィン」にははってありました。

★このドルフィンには、自由に構成する対話空間が3か所くらいあって、今回の共有会もその一つで行われていました。そしてその隣の空間では、高校生の新クラスのプロジェクト科の授業が展開していました。隣で行われている教師の共有会のように、生徒がグループに分かれて対話をしているのです。ファシリテートも生徒が行っています。

★そんな中で、合理的配慮について研究しているチームが、「誰にとって」合理的配慮なのかについて対話していました。重要なテーマです。それだけに、公平な利益の透明性が求められる倫理的なモニタリングが必要です。合理的配慮の背景には、倫理的な効用の透明性がないために、いいことだと思って行っていることが相手を傷つけてしまうというパラドクスがあります。それを対話によって、合理的配慮の意思決定の透明性を高めていこうという対話でした。もちろん一瞬見ただけですから、全貌はわかりません。

★金井先生が、SELとかシステム思考をSEEという方法で取り組み始めていると語っていたことがなるほど実感できました。ソーシャルとエモーショナルとエシカルの循環ということでしょう。倫理的な切り口で政治経済的な社会課題への対応をしているのですね。

★EQにしてもSELにしてもシステム思考にしてもSEEにしても、研究者は心理学者だったり、科学者だったり、組織開発者だったり、文化人類学者だったり、宗教社会学者だったり、いろいろな学問が学際的に協働して積み上げられてきた、そしてこれからも変容していく学問です。

★このような学問知を教育現場に適用するようにアレンジするには、教師も生徒もみな協働する必要がありますが、それをかえつ有明は実践してしまっているのです。

★まさしく内生的技術進歩が続く対話システムが構築しているということでしょう。成長する組織の対話学の象徴的ケースです。

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2024年5月 8日 (水)

かえつ有明のwell-being

★本日かえつ有明を訪れました。佐野先生に新校舎<BLOOM>を案内してもらいながら、「ユニット制の共有会」を見学させて頂きました。その共有会には、40人くらいのサイエンス科とプロジェクト科の授業を担当している先生方が集まり、それぞれ共通のテーマについてシェアしていく会議です。

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★たとえば関係性のスキルをテーマに実施した授業において、生徒がどのように反応し、試行錯誤し、感じたかなどプレゼンしていきます。今日は、中学で行っているサイエンス科の授業のプレゼン。プロジェクト科の授業を行っている高校を担当している先生方はよく耳を傾け、状況をイメージしたり受け入れたりしながら、質問したりフィードバックしたり。

★対話の雰囲気は、次の授業につながるデザインを創発している感じでした。

★関係性のスキルをテーマに、システム思考の氷山モデルやループといったツールを生徒と共有しながら展開していった生徒の学びのプロセスを多様な視点から語り合っています。それぞれのツールは、生徒が本質的なものに気づいたり気づけなかったりという反応を生み出します。

★その具体的状況を先生方が共有しながら対話することによって、生徒1人ひとりの現状においてどのようなツールやことばが心に勢いを生んでいくのか洞察する静かな情熱が生まれていました。

★そして、なんといってもよい笑顔。写真の佐野先生と金井先生の至福の笑顔は、かえつ有明の生徒も教師も対話をベースにしている時空が広がっているからでしょう。この笑顔は学内の教師と生徒全員が共有しています。これをwell-beingと言わずして何というのでしょう。

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2024年5月 7日 (火)

成長する組織の「対話学」⑥「ことば」の背景にある素材を形にすると世界が拡張する

★対話とはそもそも何か?これは哲学やTOKに任せ、「対話学」は、日常生活の中で「ことば」がどんな作用をしているのか観察することで、ことばの機能やことばをカタチにする事象を知るわけです。すると、ことばを豊かに真善美の循環ができるように活用できるようになります。その状態をすてきな「対話」だと「対話学」は認定するのです。

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★ことばは、音を発します、この音は「音楽」という美に拡張します。はじめは実用的な機能ですが、それが美学的な機能にトランスフォームします。すると、ことばは響きになります、響きは空間と時間をつくりだします。空間芸術や数学的な発想を生み出します。

★ことばは、文字となる場合が多いですね。文字ははじめ実用的ですが、それは美学的には絵に拡張します。

★ことばは、意味を生み出します。意味はそれを格納する知識になります。知識ははじめ実用的ですが、知識間のつながりは、科学を生み出します。

★また、科学のような事実ベースではなく、フィクションとしての物語も生み出します。

★物語は、心を生み出します。内省的な世界に拡張していくわけです。

★ことばは、身体感覚に届くや身体を躍動させます。

★かように、ことばは変幻自在ですし、変幻自在になったものから逆に新しいことばを生み出すことも少なくありません。

★このようなことばのトランスフォーメーションや生み出されたものどうしの相互作用を豊穣に生み出していくのが「対話」です。

★しかし、「客観的」と言説によって言葉の躍動感が切り捨てられる時があります。「主観的」という言説によって、事実がゆがめられるときもあります。

★ことばは、捕まえたと思った瞬間からスルリとぬけ落ちていくものでもあります。人は何度も何度も真善美の世界をつかみ取ろうとして「対話」をします。これが日常生活や学園生活で行われると、5Tは飛び放たれ、CODはコンコンと湧き出でるのです。

★真善美の循環がなければ、「対話学」は成り立たないでしょう。「対話学」のない人生の旅は、つらい日々となるでしょう。

★世間で騒がれる「受験」がつらいのは、真はあるけれど、善と美がない場合にそうなります、総合型選抜が楽しくなる可能性が高いのは、真善美が稼働しないと成就しないからです。

★対話学が哲学や文化人類学とつながると、叡智の翼は大きく広がるでしょう。対話学が科学技術とつながると、山に海に天に時空が限りなく広がるでしょう。対話学が物語や内省につながると人間の本質が洞窟の奥に見えてくるでしょう。対話学が・・・・。というわけです。

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2024年5月 6日 (月)

成長する組織の「対話学」➄なぜ「対話学」で「哲学」ではないのか?

★対話と言えば、哲学ですが、それは、みんなができるわけではありません。ですから、成長する組織がアドバイスを求めたりするとき、哲学シンキングができる専門家に頼むことはありますが、普段は教師も生徒も「対話学」としての対話を行えばよいのです。

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★とはいえ、「対話学」もトレーニングが必要です。私ははじめ、哲学シンキングならだれでもできるかなと思っていましたが、やはりこれは専門家やそれなりにトレーニングを積んだスペシャリストである必要があります。

★しかし、スペシャルであるだけに、特別な対話空間がないと難しいですね。それは坐禅や瞑想と同じです。そのような殿堂がないとできないというのであれば、だれでもがというわけにはいかないのです。ですから、誰でもができるために、坐禅や瞑想やマインドフルネスも、簡易バージョンが世の中にはいっぱいあります。

★であれば、「哲学」もだれでもができる「対話学」があってもよいかなあと思ったのです。それに気づいたのは、工学院大学附属中学校の教頭田中歩先生と対話を何度かしているうちに湧いてきたのです。

★歩先生は、まさにダイアロジスト(dialogist)で、すでに哲学シンキングの持ち主ですが、それは暗黙知として機能しています。目に見える部分はむしろ「対話学」ですね。

★工学院では、英語で哲学をする先生もいるし、哲学シンキングを展開する数学の教師でもある教務主任もいます。歩先生は、どれも包摂して学としての哲学からはみ出る対話を自然体で行っています。

★ですから、歩先生と話していると自然と「対話学」のトレーニングができてしまうのです。もちろん生徒もすですね。それから、歩先生は環境設定コミで対話をします。対話はことばという言語ばかりではなく、環境という言語も活用するわけです。ですから、哲学の枠を超えています。

★Dialogy(ダイアロジー)という新しい現場からの学問ができる可能性があります。

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成長する組織の「対話学」④なぜPBL(Project based Learning)か?

★成長する組織自体がプロジェクトですから、成長する組織内の多様なチームがPBLを展開するのは当然です。PBLというと昔から行われてきていて新しい学びではないと叫び出す人がいますが、何を言いたいのかわかりません。プラトンやアリストテレスに学んでいると、そんなの古いと言っているのと変わりありませんね。たしかに、もともとどんな組織もプロジェクトだったと思います。

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★織田信長だって、組織の作り方がかなり暴力的で恐怖政治ですが、信長一人で戦国の世の中を乗り切ったわけではないでしょう。高度成長時代の組織だってプロジェクトです。ただ、フラットでフェアでフリーな雰囲気の人間関係は信長と一握りの武将だったり、社長とその参謀だったりと非常に限られていたわけです。

★21世紀時代のPBLは、そのような限られた範囲を創ってきた壁を砕き、広く組織内に拡張したわけです。学校の場合、教科授業の中にPBLを入れることによって、5TやCODを恒常的に生み出す環境にしてきたわけです。

★学校によっては、教師と生徒のプロジェクトもあります。そうなってくると、成長する組織には、5TやCODが満たされますね。

★そんなことやって、大学合格実績がでるのかとずっと主張している人もいますが、あなたのやり方で、全員が東大に合格するわけではないでしょう。あなたのいびつな基準の大学ランキングに入る生徒とそうでない生徒を分断することが人権侵害だということに気づかない恐ろしい発言です。

★PBLを学内全員の道具として手渡すことは、大学が目標なのではなく、生徒1人ひとりにとって5TやCODが内面からコンコンと湧き出てくる人間のあり方が目標なのです。結果的に行きたい大学にいけばよいわけです。

★実際、PBLを学内に浸透させている工学院大学附属やかえつ有明、富士見丘、聖学院、文大杉並、八雲学園などは大学合格実績もでています。だから、たしかに、大学合格実績だけが目標であれば、PBLの授業などやる必要もないでしょう。しかし、生徒はマイプロジェクトは行っているわけです。

★プロジェクトとは人生の探究の道行ですから。

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成長する組織の「対話学」➂COD(好奇心・開放的精神・疑問)

★誰もがナチュラルリーダーでありフォロワーシップを発揮する組織。そこには5Tが循環していると前回書きました。5TのうちのTalentについて、それが生まれるにはどういう状況が設定されているかということについて今回触れましょう。

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★それは、好奇心、開放的精神、疑問(COD:Curiosity,Open mindedness,Doubt)を抱ける環境設定。いずれにしても、対話学は、こうすべきだというルールは実はない。環境設定による雰囲気を生み出すことができるかということなのです。

★開放的精神になれば、おのずと好奇心は湧いてくるし、あれ?これはなんだろう?という気持ちも生まれてきます。

★あれ?なんだろう?という気持ちが生まれてくるということは、好奇心が旺盛になっていることだし、その灯が消えないというのは、そこにはオープンな人間関係があるからでしょう。その疑問が自問自答であれ、他者との間のことであれ、疑問は関係性の信頼があるからです。信頼。そうここで5Tがでてきますね。

★5TにしてもCODにしても、成長する組織の雰囲気を違う角度から見ている視点にすぎず、その視点をどのように身につけるか?そういう環境があるからとしかいいようがないのです。

★ただ、大事なことは、5TもCODも互いに関係しているということであり、一つの視点からはいったとき、他の視点も探り当てる学びの積み重ねが、成長する自己、成長するお互い、成長する組織を持続可能にします。

★探究とは、そういう自己や仲間や組織を生み出すことが目的かもしれません。たしかにオブジェクトは必要です。何かを創るという媒介を通して、成長する自己、仲間、組織が生まれてきます。それを持続していくためにオブジェクトを変更していくというのが連綿と続く歴史なのかもしれません。

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2024年5月 5日 (日)

成長する組織の「対話学」②5T

★豊かな対話が成り立っている組織は、メンバー全体がナチュラルリーダーでフォロワーシップを同時に発揮できるようになっています。そして、この状態が対話を行う度にメンバー全員がレベルがあがっている実感を得るようになっているには、5つの要素が循環しています。経験上の話ですが。

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(Bing作成)

★それは次の5Tです。

・Talent

・Technology

・Tolerance

・Trust

・Transformation

★では、どうやってTalentが生まれるのでしょう。それは対話の状態があるからですが、そういってしまえば、循環論法になってしまいますよね。Talentが生まれる状態はどんな状態か、そのときの対話を分析してみるとよいわけです。それは、他の4つの場合も、同じです。

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成長する組織の「対話学」①リーダとフォロワーの協力 メンバーみんなが

★成長する組織は、「対話」が豊かです。しかし、今までその「対話」が豊かになる理由は、そうなるリーダーがいたから、そしてそのリーダーを支えるフォロワーがいたからという話で終わっていたと思います。経験上、私もそうだと確信しています。ただ、そのリーダーやフォロワーがいなくなった場合、その組織の持続可能性がなくなるでは困ります。

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(Bing作成)

★だから、リーダーやフォロワーは、次世代のリーダーやフォロワーを在任中に見出すという次世代開発や次世代教育を行うのが一般的かもしれません。

★しかし、それは20世紀日本型組織作りのセオリーだったかもしれないなあとずっと思っています。

★タイトルリーダー(肩書きリーダー)である限り、組織はもともと対話はそんなに豊かではなかったのです。合理的で効率よく生産性の高い話し合いはできていたし、それ以上は望まれなかったでしょう。

★ところが、今はそんな時代ではないのです。生産性や合理性や効率性は、本当にAIが代替してくれる時代になっているからです。

★ですから、メンバー全員がナチュラルリーダー(肩書きに関係なくリーダーシップを発揮できる)であると同時にフォロワーシップも可能な状態になっていることが重要だと私は思っています。

★私立学校の場合だと、経営は理事長率いる理事会で行うのですが、教職員は、理事会にお任せとか、上が決めるとか言っていないで、自分たちでも経営的アイデアも教育的アイデアも出せるし、発揮できるようになっていることが肝要です。

★魅力ある学校づくりは、そういう対話に満ちている学校づくりだし、それは成長する組織の状況です。

★さて、では、ナチュラルリーダーやフォロワーシップがチームメンバー全員でできるようになるにはどうしたらよいのでしょう。これを探究するのが「対話学」です。

★まずは、実際には、ナチュラルリーダーやフォロワーシップが機能している組織をつくること。それは最初は経験的直観によるしかないでしょう。しかし、その後内省して、そこで行われている「対話」を洞察してみるのです。そして同じように対話が豊かで成長している組織と比較研究をして、対話の仕組みを精査していくわけですね。これを「対話学」と呼びたいと思います。

★もちろん、大学の先生が研究しているような学問的理論ではなく、あくまで現場的理論です。それを学問的理論にするかどうかは大学の先生方の問題だし、現場の教師が大学で教えるようになったとき、学問的理論にまで仕上げて頂けると、社会には貢献できると思います。

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2024年5月 4日 (土)

2024年度海外大学合格実績がたくさんでている学校

★大量に海外大学合格実績をだしているといえば、開成、広尾学園、三田国際、北豊島がメディアで騒がれていますが、工学院大学附属、富士見丘、八雲、文大杉並も凄まじいです。

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★サイトで公表されている2024年度の海外大学合格実績をそのまま貼り付けてみました。

工学院大学附属
Williams College 1
University of Debrecan 1
University of Pecs 1
University of Szeged 1
Semmelweis University 1
Queen's University Belfast 1
University of East Anglia 1
The University of Western Australia 1
The University of Manitoba 1
Thompson Rivers University 1
Temple University 1
Lakeland University 1
Auckland University of Technology 1
高麗大学校 1
延世大学校 1
漢陽大学 1
成均館大学校 1
北京大学(医学部) 1
北京経済貿易大学 1
ハルビン工業大学 1

富士見丘
Glion Institute of Higher Education (スイス)1名​
The University of Manchester(イギリス)【第32位】​1名
University of Bristol(イギリス)【第65位】​1名
The University of Glasgow(イギリス)【第76位】​1名
University of Birmingham(イギリス)【第84位】 1名​
Temple University(アメリカ)1名
北京大学(中国)1名【第17位】

八雲学園
Mars Hill University マーズ・ヒル大学 アメリカ
Bethel University ベセル大学 アメリカ
Milligan University ミリガン大学 アメリカ
Union College ユニオンカレッジ アメリカ
University of Tennessee Southern テネシー・サザン大学 アメリカ
University of the Cumberlands カンバーランド大学 アメリカ
The University of Sheffield シェフィールド大学 イギリス
University of Leeds リーズ大学 イギリス
University of Exeter エクセター大学 イギリス
Cardiff University カーディフ大学 イギリス
Manchester Metropolitan University マンチェスター・メトロポリタン大学 イギリス
Arts University Bournemouth ボーンマス芸術大学 イギリス
University for the Creative Arts UCA芸術大学
BA Fashion Design with Integrated International Foundation Year イギリス
University for the Creative Arts UCA芸術大学
International Foundation in Creative Practice イギリス
University of the Art London ロンドン芸術大学 イギリス
Newcastle University ニューカッスル大学 イギリス
慶煕大学 韓国
釜慶大学 韓国
建国大学 韓国
弘益大学 韓国

文化学園大学杉並
Capilano University 1名
Carleton University 1名
Concordia University 1名
Queen's University 1名
Simon Fraser University 5名
Toronto Metropolitan University 1名
University of Calgary 1名
University of Ottawa 1名
University of Toronto 3名
University of Victoria 1名
Vancouver Island University 1名
Fraser International College 1名
Durham University 1名
University of Birmingham 2名
University of Bristol 1名
University of Leeds 2名
University of York 1名
Monash University 1名
The University of Melbourne 1名
University of Szeged 1名
国立成功大 1名
国立台湾師範大 1名
Temple University Japan 2名
Lakeland University Japan 1名 

★こうして眺めると、すでに時代は大きく変わっていますね。C1英語、PBL、STEAM、リベラルアーツ、哲学などを基礎に、各学校独自のグローバル探究が拡張しています。これらの学校の国内大学の合格実績も飛躍しています。各学校のサイトをご覧ください。

★そうそう、大事なことは、大学合格実績がゴールではなく、世界叡智を身につけることがゴールの1つであるのがこれらの学校の共通ミッションです。大学合格学力をはるかに超える世界叡智を身につけるから、グローバルリーダーとして1人ひとり様々な人間的あり方を豊かにしていくというわけです。

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2024年5月 3日 (金)

駒沢学園女子の「会食」 この瞬間に地球の本質が染みわたる それが世界への可能性を開く

★駒沢学園女子の世界は、あのGAFAMのスタッフが自分の子弟を留学させたくなる学校です。もしも生前ジョブズが知っていたら間違いなく支援したでしょう。ぜひビル・ゲイツに知ってもらえるとよいですね。というのも、ジョブズをはじめGAFAMのメンバーは、マインドフルネスやZEN、哲学シンキングを大切にしているからです。そもそもジョブスは駒澤大学出身の曹洞宗のお坊さんの弟子さながらでした。その精神のエッセンスは、駒沢学園女子の教育そのものです。

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★たとえば、「会食」。shuTOMO4月号で紹介させて頂きましたが、今回同校サイトでその様子が公開されている記事を読み、私の理解はいかに浅いか反省。同時に新たな気づきも得ました。詳しくはサイトをご覧いただきたいのですが、会食する時、五観の偈(ごかんのげ)という食する心構えを唱えます。サイトには、その五つの短い経文の意味が説明されています。それを読んで、人間のあり方の本質がすべて詰まっていることに気づき驚愕。

 ◯一には、功の多少を計り、彼の来処を量る

この食物が、この食卓に運ばれるまでには、多くの人々がかかわりました。その苦労に対して感謝します。

◯二には、己れが徳行の全欠を忖って供に応ず

日ごろの行いを振り返って、この食物をいただくのに、ふさわしい行いができているか、反省していただきます。

◯三には、心を防ぎ過を離るることは、貪等を宗とす

心を清浄に保ち、誤まった行いを避けるために、貪りや怒り、愚痴の三毒、特にお腹が減ることで、必要以上に暴飲したり、イライラして物に当たったり、つい愚痴が多くなってしまったり人を傷つけてしまったりするので、そういった過ちから離れるためにいただきます。

◯四には、正に良薬を事とするは、形枯を療ぜんが為なり

食事は良薬なので、身体を養い、正しい健康を得るためにいただくのです。

◯五には、成道の為の故に、今此の食を受く

食事を喜んでいただいて、りっぱな人間になるように努力します。

★つまり、①は関係性への感謝、②は内省の姿勢、➂人間の両義性を知り正しき道を歩むあり方、④身体性を持続可能にする循環、➄は喜びというウェルビーイングへの第一歩は食からと置き換えられます。もちろん、置き換えると、もっと重要なことが置き忘れる危険性がありますが、最低限、これらのことは汲み取れます。

★そして、これだけでも、自然と社会と精神の分断がもたらしている世界の紛争や気候変動、ハラスメントを修復し、自然と社会と精神の循環がもたらす政治経済そして世界の平和の条件が揃うのです。

★地球上の人間が食事をするときにこの「会食」の5つの心の眼を意識しつづければ、世界は平和になると実感。大げさなと思うでしょうか。私たち一人一人の瞬間瞬間の想いと言動が世界を創る実感こそ希望と幸福の時間ではないでしょうか。

★自分がいくらがんばんったって世界を変えることはできないと思うか、自分の瞬間瞬間の想いと言動がこの5つ眼を通して実現することが世界に貢献することになると思うかは、もちろん自由意志です。で、どちらを選んで私たちは生きるとハッピーでしょうか。

★5つの眼は、身体の健康、心の健康、人間関係の健康を維持し、内省する自分を創ります。小さな自分の言動と思いは、身体を通して自然に、心を通して世界精神に、人間関係を通して社会につながっていきます。そして内省を通して、自然と精神と社会の本質的なあり方に導くでしょう。

★そんなふうに、GAFAMのメンバーは世界経済戦争さながらの中で痛みを感じながら救いを求めているということではないでしょうか。しかし、世界の痛みはもっと凄まじいのです。そこに希望をもたらすのは駒沢学園女子です。そういえば、校長先生も教頭先生も英語の先生でもあります。ぜひ、ビル・ゲイツ財団と連携していただきたいと思います。

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香蘭女学校 不易流行をベースに生徒の希望を持続可能にしている

★香蘭女学校の不易流行は普遍流行といってもいいわけで、世界標準のエスタブリッシュスクールです。イギリス聖公会のチャプレンが創設した学校です。創設当時の校舎はイギリス人のあのジョサイア・コンドルが設計しています。コンドルの建築様式は、その国の文化と自身の英国風の建築様式の融合にありました。東京駅の丸の内の赤レンガの建物にその面影があります。設計したのはコンドルの弟子だった辰野金吾ですが。それよりももっと日本的な建築だったのが香蘭女学校の木造建築だったようです。

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★コンドルは、ジャポニズムがウィーンで流行っていた時の影響を受けています。そのときのウイーン分離派やアール。ヌーヴォーは日本の美も包摂していますから、同時代のコンドルは当然影響を受けていたのでしょう。チャプレンもコンドルとコミュニケーションをとっていたわけですから、イギリス庭園と日本庭園の両方を大切にしていたようで、その面影は香蘭女学校のキャンパス内にも維持されています。小さいエリアですがイギリス庭園のエリアと日本庭園や茶室のエリアがあります。

★そして、今注目を浴びているのは、昨年のリリースですね。2023年9月6日、香蘭女学校は立教大学と系属校推薦における推薦枠数を2025年度立教大学入学予定者から160名に増員する締結をしたことを発表しました。1951年に2名の推薦者から始まり、2020年に97名、2025年立教大学入学予定者から、学則定員数と同数の160名に増員になったわけです。

★これについては、とても重要な理由があります。鈴木校長によると、キリスト教の学校として平和を作る人を育てることを使命としているので、全員が行ける機会がないと、他の人を蹴落とすような事態になり、矛盾することになるので、そこを解決したかったということのようです。あくまで、自分との戦いであり、自分を高めるための制度にしたかったということです。ですから、ハードルはきちんと設けますと。英検2級が最低限のベースで(他の検定試験の場合は、換算)、それ以外にも、学内でいろいろなハードルを設け、自分を磨いて立教大学に進学できる機会を作ったということです。

★香蘭女学校は、いまのところ、帰国生入試も英語入試も行っていませんが、カリキュラムはグローバル教育がしっかり根付いているわけです。まさに不易流行=普遍流行なのです。

★さて、今「いものところ」と言いました。不易流行=普遍流行ですから、本質を追究することによって、その本質を実現するために変わることは大いにあるということなのです。

★医学部と理工学部は立教にはないですから、実はその対策もカリキュラムの中では行っています。そして、何より立教自身がグローバルなプログラムを大いに仕掛けていますから、そこにつながる高大連携はこれからどんどんできてくることでしょう。

★立教大学に留学している学生がインターンシップのように香蘭女学校にくるなんてこともあるでしょう。この「流行」の部分は「可能性」と置き換えてもよいと思います。

★ですから、入試段階での改革より優先順位は、立教大学に全員が行ける機会を作ったという「流行」にいかに「不易=普遍的本質」が癒合できるのかを見極めてから次の動きに転じるのでしょう。

★2027年の東大の秋入学のグローバルプログラムが開始するころには、来年春から実施する豊島岡女子や八雲学園のような英語資格利用入試を行うニーズが受験生からでてくるでしょうから、変わる可能性はあるでしょう。やろうと思えばいつでもできるけれど、香蘭女学校のファン層はかなり多いので、その受験生にどれだけニーズがあるかをまず見極めるでしょう。

★大事なことは不易流行=普遍可能性を実現し、生徒の内面に希望の光がいつも輝いている状態にすることが香蘭女学校の想いでしょうから。

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2024年5月 2日 (木)

富士見丘の智慧育成システム グローバル教育の土台

★富士見丘と言えば、SGHやWWL認定校で、破格のグローバル教育を行っていることで、帰国生に高人気ですが、大学合格実績がこれまたレバレッジポインットで毎年日本一ということで、一般入試でも人気急上昇。模擬国連クラブの活躍やグアム、シンガポール、マレーシア、ハワイ、台湾などの都市でミネルバ大学さながらグローバルシティープロジェクトが活発に動いています。

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★しかし、SGH認定校になる前から、探究という新指導要領の教育活動が始まる前から、久しい間行っている「5×2」(自主研究)が富士見丘の教育の土台になっていることは、意外と気づかれていません。

★「5×2」(ゴカケルニ)とは、平日5日間の授業と休日2日間の自主研究の相乗効果を期待した名称で、中1~高2が取り組む探究学習です。高1から行っているグローバル探究とは違い、個人探究です。個別最適化と協働的学びの一体化とは、実は文科省が、富士見丘の「5×2」の自主探究とグローバル探究という協働的な探究の統合教育をモデルに思いついた発想です。

★新学習指導要領や高大接続改革の答申が行われている最中に、富士見丘学園の理事長校長吉田晋先生や副校長の吉田成利先生は、中教審のメンバーだったり様々なワーキンググループのメンバーだったりして、文部官僚の方々に見学などを通して、日本の教育のあり方をアドバイスしていたのです。

★また、吉田晋先生は日本私立中学高等学校連合会の会長でもありますから、直接文科大臣や文部官僚と喧々諤々日本の教育行政改革について意見を交わして、中等教育学校の教育と財政面の第一人者としてリスペクトされているのです。

★そんなわけですから、富士見丘は日本の未来の教育のロールモデルだったのです。

★そのモデルが、中学入試市場で支持されているというのは、最高によいことですね。

★さて、4月20日(土)に「5×2セレクション」(自主研究の優秀者発表会)が行われました。富士見丘の教育の土台である英知の育成の様子を同校サイトでご覧ください。

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2025年中学入試 広がる英語入試・英語資格利用入試 偏差値ランキングの無化が加速

★2025年から豊島岡女子、八雲学園(英語入試は既に実施)は、英語資格利用入試を行います。2015年ころから聖学院、工学院、文大杉並、和洋九段女子、富士見丘、八雲、順天、大妻中野、慶應湘南藤沢、昭和女子大附属中などは、すでに英語入試や英語資格利用入試は行っていますが、3年前ほど湘南白百合が英語入試を行い、一気に増えています。聖ドミニコ学園や駒沢学園女子、成立学園、神田女学園なども英語入試あるいは英語資格利用は実施しているでしょう。

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★今までは、英語入試と言えば、広尾学園や三田国際学園でしたが、サレジアン国際学園グループや芝国際などにも広がり、今回の豊島岡女子や八雲学園の動きは、さらに2月1日以降の一般入試における英語入試・英語資格利用入試は広がる大きな契機になるでしょう。

★この効果があることは、以上の学校が、世界大学ランキングで200位以上の海外大学(THEによると、日本の大学は、東大、京大、東北大学しかはいっていません)にたくさん進学の道を切り拓いていることから明らかでしょう。

★私立学校の入試は学校の顔ですから、英語入試・英語資格利用入試を実施するということは、カリキュラムそのものに優れたグローバル教育が展開しているということを示唆しています。

★2020年4月から、新たな学習指導要領が導入されたことで、英語の授業が小学校3・4年生を対象に必修化、5・6年生を対象に教科化されましたし、大学入試において英検2級以上、つまりCEFRでB1以上取得しているとアドバンテージが高くなっていることもあり、英語入試・英語資格利用入試は増えることはあっても、減ることはないでしょう。

★帰国生入試だけではなく、一般入試においても英語の力がポイントになってくる中学入試の動きは加速するでしょう。同時に英語一教科だけの入試や英語と国語か算数の組み合わせが主流になってくる可能性があります。

★おそらくこれに対し、いわゆる高偏差値の学校は、あくまで4教科入試にこだわるかもしれません。そのように仕向ける大手塾も存在するでしょう。何せ、ICTを使っている学校は東大の実績がでないとか、英語入試や思考力入試など新タイプ入試をやっている学校は大学合格実績が出ないというフェイク広報をするぐらいです。そんな因果関係少し考えれば噓だということがわかりそうなものです。

★とにも、そのことが言語学習という権利やイノベーション進化への侵害を行うハラスメントだということに気づいていないのですから、困ったものです。私立学校が、4科目入試をやろうが、英語入試や思考力入試のような新タイプ入試をやろうが、私学経営権の自由なのです。その権利を阻害するような言動に対しては、受験生の保護者は警戒しなくてはなりません。

★4科目入試をやっていれば大学合格実績はでて、新タイプ入試をやるとそれは出ないという因果関係を証明するエビデンスはないのです。

★むしろ多様な新タイプ入試を6年前以上から行っている学校から世界大学ランキング200位以内の海外大学に大量に進むようになっています。国内の大学合格実績もそれに伴い増えています。東大も出るようになっています。

★したがって、偏差値を無化する動きがどんどん加速するのが2025年以降の中学入試です。

★だいたい、英語のレベルがB2以上いなると、英語で、開成や麻布の思考型問題以上の思考をトレーニングしているというのが現状なのです。偏差値が無化される流れは加速するのは論理的必然でしょう。他人と比べて優勝劣敗のストレスをかかえるのではなく、自分を高めるための学びを行える入試を選択するということが主流になるでしょう。

★それに、湘南白百合が、2月1日に一科目入試を設定したことによって、神奈川エリアの偏差値ランキングに衝撃を与えたように、万が一にでも豊島岡女子が、2月1日に一科目入試などを持ってくると、東京エリアの偏差値ランキングが総崩れになる可能性があります。もちろん、4科目を1日に持ってくると、自身の偏差値を下げるので、そこは慎重になるでしょう。しかし、一科目入試を設定したら、そのインパクトは大です。

★これは私の妄想にすぎませんが、新タイプ入試を湘南白百合や豊島岡女子は中学入試地図をガラリと変える可能性を秘めています。横浜雙葉のように新タイプ入試ではなく、従来型の入試を2日に分けましたが、それほど効果がなかったことを豊島岡女子はしっかり分析しているでしょう。やるなら新タイプ入試です。

★2025年以降の中学入試は何が起こるかわからないでしょう。いずれにしても英語と国語と算数とこれらの通奏低音である思考力は、これからの中学入試の主軸になることは間違いないでしょう。

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2024年5月 1日 (水)

多摩大目黒 教科授業と探究の画期的な接点 コンピテンシーベース

★新学習指導要領において、教科の授業と探究を切り離すか統合するか、そのグラデーションがここのところ議論になっています。

①コンテンツでつなぐ

②教科横断的につなぐ

③学びのプロセスを共有する

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★だいたい①のコンテンツでつなぐというカリキュラムマネジメントが一般的ですが、このジグゾーパズルはななかなか難しいわけです。②はそもそも教科横断とは何かで躓くわけです。③は実際的のように見えるのですが、圧倒的に単元をこなす時間が足りなくなるというわけです。

★しかし、多摩大目黒の今回の発表は、コンピテンシーに注目して教科の授業と探究を統合するという画期的なものです。

★探究を通して、生徒たちの伸ばしたいコンピテンシーを見出します。たとえば、創造性というコンピテンシーを伸ばそうという結論になったら、社会や国語、英語などの授業を通して、そのコンピテンシーを伸ばす仕掛けを創意工夫するわけです。

★これだと、単元の学習を果たしながらその背景で同時並行的にコンピテンシーを伸ばす仕掛けを創意工夫することができるわけです。授業の背景にコンピテンシーベースの仕掛けが組み込まれるわけですから、授業の密度が濃厚になる、つまりクオリティがアップします。画期的な取り組みです。

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多摩大目黒 成長し続ける組織の条件

★前回、多摩大目黒で研究発表会が行われたことは紹介しました。その様子をみて、私は10個の多摩大目黒が成長し続けている条件に気づきました。アトランダムに列挙しておきます。

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①ツール:コンピテンシー測定ツール モニタリングの鑑 チーム教師で対話しながら正当性・信頼性・妥当性を見極めていく
②ロール:学びのメタモルフォーゼ:教師が教える時間と生徒が学ぶ時間 往還する 教師 ファシリテーター メンター チューター 役割は変容
➂ロールモデルエフェクト:授業の中山モデルなど→オリジナルのモデル 好奇心が旺盛になる思考方法 その思考の環境は仮説推理(abduction)をベースとした三角ロジック トウールミンモデル
④ルール(目標の自覚):ルーブリック 大学と教師と生徒が相互に作るような仕掛けの予感
➄ネットワーク:学内で創ること×外部団体×保護者 
⑥組織全体の利益:自己探究からプロジェクトに移行することができるというのは個人の利益と組織の利益が統合されること
⑦痒いところに多が届く思考:氷山モデル、対症療法ではなくなどシステム思考が暗黙知としてある 最近接発達領域への気遣い
⑧強みを生かす:ドラマエデュケーション 演劇やなりきりインタビュー 表現の方法は多様なのが世界標準
⑨アウトプット(結果):ポスターセッション モチベーション向上 これでよいのか自問自答 チュータリング、外部聴衆者に発信する
➉情熱:好奇心×オープンマインデッドネス×ジレンマを乗り越える 

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