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2024年4月

2024年4月30日 (火)

多摩大目黒 探究とコンピテンシーの結合 生徒と教師の成長の合力が作る魅力的教育

★昨日4月29日(祝)、多摩大学目黒中学校・高等学校で、教育実践発表会がありました。題目は<「探究型学習の教育効果の最大化に向けた教員研修~教員の資質・能力が探究指導に与える可能性の考察>。連休中にもかかわらず、多くの私学の教員が参加しました。

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★探究のやり方というより、探究を通して生徒も教師もどのようなコンピテンシーが立ち上がり、それが成長するか、経年変化まで測定するツールを活用していました。ルーブリックは、生徒や教師が自らのコンピテンシーの変化を認識してから、コンピテンシーやスキルをどのように成長させるかのビジョンを立てて作成していきます。

★学年団が協働して、外部団体や保護者ともリンクしながらその輪が広がりながら展開していったのですから、それだけで成長や達成感があったはずですが、そこは科学的に測定しようということだそうです。

★科学的検証によって、共通言語が生徒と教師と学年団の間に生まれ、かつ外部ともリンクできる言語化もでき、生徒も教師も才能の熱量をかなり高めているというのが伝わってきました。

★探究とコンピテンシーの結合という斬新なコンセプトの共有からはじめたわけですから、つまり議論しながらコンセプトレンズを磨いていったわけですから、先生方の発表は情熱的でした。しかもフラットでオープンな感じがあったので、こうでなくては、このような斬新なアイデアを行う合意形成はできないなあと感じ入りました。

★5月には、この研究発表に到る、データエビデンスつきの紀要ができます。今回はそのデータは一部だけ報告されたので、全貌が見られるのを楽しみにしています。

★発表終了後、短い時間でしたが、3校の先生方とリフレクションができました。大いに刺激を受け、どうしたらこのような成長する組織にしていけるのかモヤモヤリフレクソロジーとなったのです。

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2024年4月28日 (日)

豊島岡女子 新タイプ入試「算数・英語資格入試」の中学入試における影響大

★リセマム(2024.04.26)によると、「豊島岡女子学園中学校高等学校は、2025年2月2日・3日・4日に行う2025年度の中学入試において、従来の4教科入試と並行して「算数・英語資格入試」を実施する」ということです。

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★おもしろいというか画期的なのは、選抜方法。

「選抜方法は、算数の得点を2倍したものに、英検取得級による、みなし得点を加えた300点満点で判定。算数は、4教科入試の算数の時間に同一の試験を実施する。受検には、2022年第1回以降に取得した英検CSEスコア証明書の提出が必要となる。みなし得点は毎年見直す予定。2025年度は、英検3級(CSE1456以上)50点、英検準2級(CSE1728~1979)70点、英検準2級(CSE1980以上)80点、英検2級(CSE1980~2303)90点、英検準1級以上(CSE2304以上)100点とする。」

★併願できるらしいから、今まで通り4教科を受験し、英語資格を証明する書類を提出しておけばよいわけです。

★同校は医学部や理系、東大に進もうと考えている生徒がたくさんいます。大学合格のためというより、その先に進むときに英語はもはや当然必要になるわけです。

★つまり、これからの学びには、PCが必須なように、英語が必須になるということです。実は数学もなのです。

★したがって、「算数・英語資格入試」に絞ったというのは、豊島岡女子のカリキュラムマネジメント上、当然だということです。

★とはいえ、この入試形態、受験生の学び方にかなり変化を促しますね。英語は基本楽しく学ばないと身に付かないので、受験に対する一般的なイメージを払拭することになるでしょう。

★もちろん、相変わらず国語がまず大事だとか言う方もいるかもしれません。

★しかし、世界を見渡せば、ヨーロッパでは国際結婚はかなり多いでしょうしアメリカのような移民大国では、実際には国を超えて結婚しているわけです。日本は厚労省の統計上は、ハーフは出生数の2%くらいになっていますが、これからは増えていくでしょう。

★欧米では母国語は大事にしますが、基本多言語主義です。そうでなければ、多様性の人権を守ることはできません。いつまでも国語ができなければと踏ん張っていると、そのこと自体、人権問題につながりかねないのです。

★国語も英語もほかの言語も受け入れる入試が中学入試に広がることは、民主主語の国としては健全だと私は思いますが。

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2024年4月27日 (土)

八雲学園 UCサンタバーバラと高大連携

★昨夜、<GLICC Weekly EDU 第171回「八雲の2024ビジョン」>で、菅原久平副校長と近藤隆平副校長から、今春卒業した共学1期生のすばらしい成果がでるまでの多様なグローバル教育の積み上げについてお話を伺いました。

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★八雲学園と言えばRS(ROUND SQUARE)ですが、RSを軸に、多様なグローバル教育プログラムがらせん構造になって中1から高3まで連なっています。

★高3まで?と思う方もいるかもしれませんが、今春卒業した共学1期生の進学先に多くの海外大学があったことを思い起こせば、高3生にとっても当然グローバル教育のプログラムが展開しているのです。

★そして、このらせん構造としてRSの軸を回りながら上昇している多様なプログラムの大きな特徴は、実はUCサンタバーバラという大学との連携です。そしてこの連携による学ぶシステムは随分前から立ち上がっていました。ここ2,3年私学の教育でトレンドなのは高大連携ですが、八雲学園は随分前からグローバル高大連携を積み上げてきたのです。

★海外大学だけではなく、慶應大学など総合型選抜タイプの入試で合格していますが、実はこのタイプに合格するには対話力と論述力が、大学のゼミで通用するぐらいになっている必要があります。

★螺旋構造になっているので、上昇するにつれて対話力も論述力のレベルも上がっていき、RSの国際会議で模擬国連以上のディスカッションを行っていくわけです。またRS加盟校との交換留学が数多く行われていくのです。

★このような世界を中高時代に見てしまえば、国内大学だけではなく海外大学も選択肢になるのは当然です。

★八雲学園は、このグローバル教育で生徒が学べば、進学先だけではなく、「生き方」という側面で豊かに逞しくケアフルになっていくという確信を持っています。

★ですから、そこをさらに進化させていくために、来春の中学入試はすべての入試で、英語資格のスコアを加点するという画期的な入試改革をするということです。ますます八雲学園の生徒はグローバルリーダーとして活躍すべく飛翔していくでしょう。ぜひご覧ください。

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2024年4月26日 (金)

真善美の対話 工学院や駒沢学園女子

★工学院大学附属も駒沢学園女子もグローバル教育のプログラムが充実しています。CEFR基準で英語を学ぶことは、とても意味深いのです。というのもCEFR基準は英語のためだけの基準ではなく、言語のための基準だからです。フランスで日本語を学ぶフランス人がいますが、その学生たちの日本語の能力のクオリティはCEFRで測られるのです。しかも母国語であるフランス語もモニタリングします。

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(写真は工学院の生徒がオーストラリアの留学先で撮影したもの。同校サイトから)

★イートンから交換留学で日本にやってきた生徒に出会ったことがあります。彼のプロフィールを見せてもらったら、英語はC2、フランス語はC1、日本語はA2となっていました。

★これは、どういうことかというと、CEFRはリーディング、リスニング、インタラクション、スピーチ、ライティングの側面から評価をしていきます。英語であろうが日本語であろうが。つまり対話と書く力はどんな言語を使ってもトレーニングする必要があります。

★一般にCEFR基準を意識しないと、国語は、多くの場合リーディングに偏ります。CEFR基準を知ったうえでグローバル教育を行うと、英語でも日本語でも、駒沢学園女子はさらに韓国語とフランス語なども学べますから、これらの言葉も、対話と書き言葉の両方をトレーニングしているわけです。

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(駒沢学園女子の坐禅をする場「照心館」)

★言語に対する真善美の循環は、対話と書き言葉の循環の中で起きます。ところが、リーディングだけに偏ると、真善美の循環に分断がおきます。

★大自然を望み、自分の存在の小ささを知りAWE体験をする受容から新たな自分を見出す心の動きは「美」です。坐禅の中で、自分を世界のつながりの中で見つめ直し、新たなあり方に気づいていく瞑想や内省の心の動きは「美」です。

★生徒の皆さんは、その体験を対話してレポートにしてシェアします。真善美の循環する対話とライティング。

★これこそ質の高い教育です。世界が魅力を感じる学校です。

★日本にいると、当たり前の教育のように見えます。実際に学校の先生方自身がそう思っています。もったいないですね。

★東京の私学には、同じような学校がたくさんあります。世界から見れば超羨ましい教育。でも日本人はそのことに気づきません。日常に真善美が循環する対話がないからでしょうか。。。哲学をあまり重視しない文化であることは自ら認め、さてどうするかは一人一人が考えてみることですね。もちろん私もその一人です。

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成長する組織の対話のパラドクス

★真善美のうち「真」に偏った対話が学内に満たされている場合、組織は成長しないものですが、稀に指数関数的成長をする学校組織もあります。

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★その場合、氷山モデルでいう水面下で「善」と「美」の対話が行われ、その学校文化の暗黙知となっている場合がほとんどでしょう。

★当の本人たちは気づいていないあるいは、校長か教頭は気づいているけれど、あえて掘り起こすのは野暮だと判断し、自然体に任せているといいうわけです。

★しかし、教師も歳をとります。永遠にその文化の伝承者であり続けるわけにはいきません。

★そのときは、見える化や言語化する学内の改革論議が生まれます。うまくいけば継承され、成長は持続可能ですね。

★このような対話のパラドクスを読み解くには、氷山モデルやルビンの壺、あひるうさぎなどの哲学は役に立つでしょう。

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成長する組織の対話の構成要素 真善美

★成長する組織としての学内の対話は真善美という構成要素をすべて満たしています。

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★もちろん、美がなくても生徒募集や進学実績はあがります。しかし、世界で通用する人材は、この三要素が必須です。

★最近では、社会科の教師や数学の教師が美術館を活用したり美術作品で教科の学びを展開する「真善美」型授業が活況を帯び始めています。

★倫理経済主義の学校というのは、この真善美を豊かにするアイデアと活動に満ちています。大学入試問題には、なかなか「美」の部分は出題されないですね。ですから、大学入試問題がゴールの学校では、「美」の部分が欠落する可能性があります。

★ただ、美の部分は現代美術的な要素を組み込まないと、形骸化するおそれもあります。

★教科も組織も道具を新しくしても、ものの見方考え方の枠組が時代の要請に応じて柔軟に変容できるかどうか、そしてそれを導く対話に満ちているかが結局は組織の成長の決めてです。

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2024年4月25日 (木)

功利経済主義的な学校の成長

★私学の建学の精神は、功利経済主義的な精神と倫理経済主義的な精神の二つがあります。いずれも明治期に生まれています。これに対して国家経済主義的な精神は、官学の系譜で、現代では教育行政がコントロールしています。最近では、いずれの経済主義でもない贈与的経済主義が語られ始めていますが、現状私立学校はそこまでの学校はありません。まずは功利経済主義的な学校組織の成長については、下記のような図を描いてみました。

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★改革を考えている功利経済主義的な理事長と全体道徳主義の校長がいる場合、理事長は功利経済主義的教頭を設定します。学内にいなければ外部から雇用します。この教頭によって、新体制を創るようにコントロールします。校長は全体道徳主義だから、その新しい体制に不安を感じ、伝統を守ろうとしますが、このタイプは物語りますが、行動的ではありません。

★功利経済主義は戦略的に動くので、その隙に、校長の引退の道を用意します。校長を支える全体道徳主義の教員は、校長と共感するもやはり動かないのです。功利経済主義は、そのような状況を破壊するために自分たちと利害が一致するエゴ道徳主義の教員を臨時雇用します。

★改革の見通しが立った時、全体道徳主義の校長は花道を歩くように仕掛けられます。その後、理事長と同じ功利経済主義の教頭が校長に収まります。さらに、改革が軌道に乗った時点で、エゴ道徳主義の教員の契約は更新されず、少しトラブルになったりします。学校を安定させるため、倫理経済主義の教頭と教員を雇用。革新的な体制を持続可能にするために功利経済主義の教員も雇用。全体道徳主義の教員は、新教頭にコントロールされ、定年を待つか、辞職していく道になります。

★功利経済主義的な学校組織として成長し続けるには、教頭が倫理経済主義的で、学校を安定させる必要があります。このタイプの学校組織の理事長や校長は、コンサル型の素養があるので、ほかの学校の理事や学園長になり、同じようなタイプの学校づくりの野心を燃やします。

★全体道徳主義的な学校組織は、受験市場でサバイブしにくいので、彼らがコンサルに入ろうとします。すると、上記の図と同じような循環が生まれます。

★彼らは、倫理経済主義的、つまり渋沢栄一型学校組織にも「倫理」を全体道徳主義と錯誤して、アプローチしますが、いなされる場合が多いのです。しかし、自分が錯誤していることには気づかきません。この功利主義タイプが、極端にリバタリアンの場合は、現状の受験市場では信用されません。

★企業の場合だと、莫大な利益を獲得すれば、リバタリアンであろうとデファクトスタンダードになるので、勝てば官軍ですが、学校は定員が決まっているので、莫大な利益を生むことはできないので、デファクトスタンダードを作れず、一過性の話題を呼んで終わることが多いですね。

★しかし、それは現状の受験市場の枠内にいるからであり、ある広域通信制の学校のように万単位で生徒を集めてしまえば、私立学校はなすすべがないのです。行政による規制に期待するしかありません。

★成長のタイプにはいろいろあるわけで、どの成長が自分の価値意識と響き合うかは、受験生・保護者次第です。

 

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2024年4月23日 (火)

駒沢学園女子 多摩川水系のパワースポット

★駒沢学園女子のキャンパスを歩くとなぜか力が湧いてきます。なぜでしょう。実は近くに桜の名所でもある三沢川が流れていますから、同校はそこにつながる丘陵地帯にあるのです。しかも、三沢川は多摩川水系で、この地帯には神社仏閣も点在しています。そのようなパワースポット地帯であることにふと気づきました。

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★この三沢川右岸丘陵地自体がパワースポットですが、いわばその要にあたる場所に同校があり、そこには広大な池と坐禅をする照心館があります。パワースポットの中のパワースポットなのです。

★坐禅をしながら、自分の内側を見つめ深まりゆくことによりこの世ならざるエネルギーがわいてくるわけですが、その心の中に静かにしかし響いている波を可視化するかのような池の面は、心の動きを表しているかのようです。

★風が吹いて激しく波立つときもあれば、陽の光を反射して輝いているときもあれば、冬空に鏡さながらの姿を現すときもあります。

★この池の面の波の表情を感じながら坐禅をするわけです。

★自分の内面は、一見見えないようですが、この池の面のように実は表情や身のこなし方に現れていて決して閉じられているものではないのだということに気づくかもしれません。

★内面は池の波のごとく現れるものです。

★駒沢学園女子の生徒は学園生活の中で快活な日々を過ごします。同時に内面を見つめる集中した永遠の瞬間を感じ入る時空を経験します。

★AI時代は、テクノロジーの進化が目覚ましいのですが、この人間の「あり方」を生み出す自然と聖なる空間というテクノロジーに代わることはできないでしょう。

★ジョブズをはじめ、GAFAMなどIT産業で働く人々が、駒沢学園女子のような内的時空にあこがれるのは、そういうことなのでしょう。日本もどんどんAI時代にはいっていきます。駒沢学園女子の教育の存在意義はますます注目されるようになるでしょう。

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成長する組織の学校メンバーのメンタルモデル 理想と現実 私立と公立

★学校は、ざっくり理事長と校長と教頭と教員というメンバーで構成されています。副校長とか主幹とか主任は、ここではカッコにいれておきます。副校長とか主幹とか主任は、基本教頭のメンタルモデルにほぼ一致するからです。またきわめて重要な事務スタッフもここではかっこにいれておきます。というのも、事務職員は、基本理事長と校長のメンタルモデルを尊重しているため、理事長と校長の分析に含まれると考えます。

★さて、組織を作るメンバーは様々な価値観を持ち意思決定の指向性をもっていて、それに基づいて言動がアウトプットされます。それをメンタルモデルとここでは呼んでおきましょう。

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★私立学校と公立学校の組織のメンバーのメンタルモデルで、大きく違うのは、私立学校は各人のメンタルモデルは素のまま現れます。公立学校の場合は、個人のメンタルモデルは、教育委員会の示す教育行政型メンタルモデルを優先するので、素のメンタルモデルは、学校内では現れてきません。

★したがって、私立学校は互いのメンタルモデルの調整がなかなか難しいので、教員採用の時が極めて重要です。ここがうまく機能しないと、学校はいつもカオスで、組織はなかなか成長できません。みな同じメンタルモデルだとコンフォートゾン一色になり、それはそれで成長は停滞します。

★ですから、メンタルモデルの構成の理想的なものは、上記の図のように、理事長、校長、教頭は倫理経済主義的なメンタルモデルを有し、教員は、ほぼ倫理経済主義的メンタルモデルで、若干功利経済主義、全体道徳主義といったメンタルモデルを有している教員が採用されることが重要です。これによって、伝統と革新の相互関係がうまく回ります。

★私立学校は、教育と経営の両方を考えますから、どうしても経済主義的な考え方がないと学校が成り立ちません。しかし、その経済を考える軸が功利主義的か倫理的なのかでは大きな違いが出てきます。現在様々な社会課題が山積していますが、それを解決するヒントが倫理資本主義などにあるといわれています。

★私立学校は、本来そのメンタルモデルを明治以来、もう一つの近代教育をという路線で走っていました。ところが、必ずしもそうでない場合もでてきました。エゴ道徳主義者が理事長に就任するや、学内組織がカオスになり、校長が辞めたり、教員が別の学校に移動したりということもあります。

★また全体道徳主義の理事長の場合、理想を追い求めすぎて経済的な要素を軽視し、生徒募集がうまくいかない場合もあります。

★公立の場合、教育行政的なメンタルモデルを受け入れられない場合は、教師を辞め、私学にシフトするという場合もあります。また、エゴ道徳主義の場合は、トラブルを発生するということもあります。

★多様な面あtるモデルをどのように組織化しチームワークを形成していくか、その方法も様々ですが、これができているところが成長する組織であることは間違いないでしょう。

 

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2024年4月22日 (月)

AI時代に残る仕事のやり方・人間のあり方が変わる 認知能力と非認知能力の融合がAIと人間の共生に

★❝Are You Developing Skills That Won’t Be Automated?by Stephen M. Kosslyn❞という論考が2019年9月のハーバード・ビジネス・レビューに寄稿されていました。今はdeepl翻訳ですぐに読めるので、便利ですね。スティーブン・M・コスリン教授(スタンフォード大学出身の心理学者で、ミネルバ大学やハーバード大学などで活躍)によれば、AIによってなくなる仕事の話も重要ですが、残っている仕事のやり方がどう変わるか?それによって人間のあり方がどう変わるか?について洞察しておくことも大事だと。

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★この論考が寄稿されたときには、ChatGPTはまだ世間には公開されていなかったので、もしかしたら、今では役に立たないのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、最近私たちが、多様な生成AIを使うようになって、むしろコスリン教授の洞察に共感できるようになっているというのが実際のところでしょう。

★認知能力と非認知能力の融合が最近議論されていますが、認知能力の部分は生成AIがだいぶ代替してくれます。しかし、非認知能力である、情緒や言葉の背景にある表現されていない文脈の読み取りには非認知能力が関係します。人間関係は、言語で表現されている部分だけで成立するものではなく、なかなか語り得ぬ気持ちや文脈の理解の気遣いが必要になります。

★もちろん、生成AIが、個人の生まれてからすべての経験の記憶をデジタル化でき、その経験のたびに島皮質が反応するAWE体験やモチベーションや欲求を増大させ、それに歯止めをかけようとする他の皮質との反応関係をすべてデジタル化できるのであれば、生成AIは感情や背景文脈を推理することはできるかもしれません。その推理を人間の場合はイマジネーションと言うのでしょうが、今のところ、それは難しいなあというのが、実際に生成AIを使って仕事をしていて感じている人が多いでしょう。

★ただ、認知能力の一部はパートナー生成AIにやってもらいながら、自動化による時間短縮しながら、空間を超えながら仕事ができるようになるのも事実でしょう。それでも、認知能力をすべて代替してもらうわけにいかないのです。

★非認知能力は、実際には認知能力が脳内で機能するので、稼働するのであって、認知能力が働かないのに、非認知能力だけが働くということはないのではないかと思うからです。

★基本的な認知能力はやはり必要であり、対話を行う時に、その認知能力と非認知能力の交差が対話によってどんどん紡がれていくので、内発的モチベーションは豊かになり、ポジティブな状況が生まれてくるのでしょう。

★したがって、生成AIによって、仕事のやり方も変わりますが、人間のあり方に対する価値観もかなり変わってくるでしょう。今まで、認知能力で格付けされてきた社会が無化され、ルビンの壺の地の分だった非認知能力が図として前面に出てくる時代がやってきました。ようやく、人間の本質にただ想いを馳せる時代から、日常の中でその本質的なことを実現していく時代がやってきたのでしょう。

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2024年4月21日 (日)

教育と社会の新しい関係を構想する教師チーム

★最近私立中高の先生方と対話していて、人口論ベースの経済成長を土台とした教育改革の話は、もはや成り立たないので、根本的な問題として新しい社会と教育の関係の構想を創出しなくてはという議論と一方でこの社会が続いたときにすでにやってきている人口減少における教育のあり方も対症療法として考えていかなければという議論が同時並行で進んでいます。

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★私の周りの私学の現場の先生方は、何か変化を求める時に、そんな対症療法ではなく、もっと根本的な解決が大事だとか、根本的な解決は向こう10年で起こらないのだから、目の前のことが大事なのだというこれかあれかという議論はしません。

★両方議論します。そして、いまここでの一見対症療法に見える日々の思考と行動が、22世紀社会をウェルビーイングになるようにつなげていくにはどうしたらよいのかという対話をします。というのも目の前の生徒が22世紀社会を創っていくからです。

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★ですから、C1レベルの英語をベースにしたグローバル教育は、一見すると目の前の改革のように見えるかもしれませんが、そこで奮闘努力している現場の先生方は、外国人日本人と共生する社会は法的にも経済的にも政治的にもどうなっていくかという構想も同時に考えているものです。そんなことを構想する時間などどこにあるという教師もたしかにいるようですが、忙しいプレッシャーを乗り越えて、短時間の中でも考え続け対話しています。

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★PBLをどうやるかというよりは、現場の先生方は、そこにおける生徒の言語能力や数理能力、芸術的能力をいかに融合して、叡智を身につけられる教育環境デザインはいかにして可能か奮闘努力しています。なぜなら、その叡智は、22世紀社会を創るベースになるからです。人口が減少しても経済成長を続けられる新しい社会はどんなものがあるのか、生徒が探究活動ができるようにプログラムをデザインしています。

★また、STEAMや生成AIを単に、人口減少の穴埋めのために活用するという対症療法的な解決方法も実践しつつ、人間の潜在能力開発のためのプログラムはいかにして可能かを議論し、人口減少がかえって幸福な生き方を生み出す社会はないかも構想しています。

★新しい社会のあり方は、今では政財界学も激しく議論され、つぎはぎではありますが、様々な政策が考案され行われたりしています。ただ、大きな流れはまだ始まったばかりです。基本的な考え方—倫理的資本主義、ステークホルダー資本主義、クリエイティブ資本主義、脱炭素コミュニズム、贈与論的システム社会などなどーは、実際には1970年代から議論されていたものと違いがありません。

★ですから「贈与経済2.0」などのタイトルがついているわけです。しかし、それはユートピア論ではなく、web3.0や生成AIの時代にあって、現実味が出てきたという話でしょう。

★経済的政治的法的社会の新しい構想について教育の世界では、今まではあまり語られてきませんでした。しかし、ここ最近は、先述したように対症療法を繰り広げながらそれが来るべき新しい社会につながるように、そしてその新しい社会がどのようなものかも同時に構想しはじめている現場の先生方が増えてきたという実感を抱いている今日です。

※「負債と信用の人類学」の中から、今年東大の現代文の入試問題で出題されています。田内学さんは、公立私立問わず多くの学校で講演しています。これらは、贈与論に活路を見出していますが、その贈与経済を真正面から展開しているのが、荒谷大輔先生です。私は、アリストテレスやトマス・アクィナスがまだ資本主義的社会がなかった時代に、市場システムと贈与システムを融合させたすでに新しい資本主義社会を構想していたという彼らの描いていた未来社会という現段階で未完の資本主義から考えていますが。市場システムを等価交換ならしめる叡智のシステムということなのかもしれません。

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2024年4月20日 (土)

駒沢学園女子と内田樹さんの発想の共振

★駒沢学園女子の優れた教育について、全く別の文脈で内田樹さんが語っています。PRESIDENT Online2024/04/19 9:00で、内田樹さん(神戸女学院大学 名誉教授、凱風館 館長)は、<学校は本来の役割を忘れてしまった」日本の学校が子どもにとって"しんどい場所"になってしまった根本原因~かつての日本人は「子どもは壊れやすいもの」と知っていた>という記事を寄稿しています。

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★内田さんは、駒沢学園女子の話をされていませんが、内田さんが同記事で語っている「学校本来の役割」を全力で行っているのが駒沢学園女子なのです。いったい内田さんは、今の学校が本来の役割を忘れ、どうなっているというのでしょうか?少し引用します。

「今の学校は子どもたちを格付けする評価機関のようなところになっている。それは本来の学校教育の目的ではない。子どもというのは『なんだかよくわからないもの』であるということから始めるべきなのだ」 

★『なんだかわからないもの』とは一体何か?それについてはこう語っています。

 「かつての日本人は、子どもは壊れやすいもの、傷つきやすいものだと知っていたので、丁寧に扱った。異界にまだ半身を残している「聖なるもの」だと知っていたので、子どもを「敬する」仕方をわきまえていた。

それはもう現代社会の常識ではない。それでも、直感にすぐれた教師たちは、学校教育が子どもたちにとって外傷的経験になるリスクを感知して、子どもたちを傷つけないことを優先的に配慮している。けれども、そのような配慮が人類学的な深い意味を持つことを理解している人は教育行政の要路にはたぶん一人もいない。」

★まさしくこどもは聖なるものであることを駒沢学園女子は知っています。内なる光を大切にする精神を坐禅や様々なプロジェクトによって持続可能にする教育です。内田さんは別の個所でこんなことも語ります。

 「射は「弓を射る」、武道的な身体運用のことである。先に述べた通り、「この世ならざるエネルギー」を調えられた心身を通過させて発動する技術のことである。

御は「獣を御す」、野生獣を馴致させて有用な働きをさせる能力である。牛飼いがそうであったように、御の術もまた「異界」と「この世」の境界線上に立つ能力である。

日本では武道のことを古くは「弓馬の道」と言った。射と御を合わせたものが武道に当たる。」

★まさに駒沢学園女子はこのような意味での武の道も追究しています。この世ならざるエネルギーに満ち幼児の行動を、18歳成人はさすがに日常の生活の中で発揮するわけにはいかないでしょう。しかし、それを内なる精神にともし続けることは大切です。思春期を丁寧に乗り越えることによって、それが完成します。

★しかし、内田さんの語るように、「この世ならざるエネルギー」を内側に転換しないまま、切除してしまい、外部から評価されるスコアによって外発的にモチベーションを燃やす疑似主体的な人間作りがなされている教育も知らず知らずのうちに拡大しているのかもしれません。

★AI時代には、内なるこの世ならざるエネルギーこそ重要な時代でしょう。GAFAMや日本の大企業で哲学が重視され始めたのは、そこを蘇生し、AIという異界をコントロロールできるクリエイティブな才能を生み出そうとしているのかもしれません。

★しかし、駒沢学園女子の教育は、すでにそこを大切にしているのです。

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和洋九段女子 生徒のプレゼンの姿はスプレッツアトゥーラ

★和洋九段女子のPBLは多くの中学受験生に注目されるようになりました。というのも、すべての授業がPBL型だし、教育活動すべてもPBLです。PBLという学びをすると当然最後はプレゼンテーションをすることになります。この循環が、学外の団体とコネクテッドしたり、学内で学年横断的にコネクテッドしたりすることによって、クラス内のプレゼンは、その輪を広げ公共的な場で行われるようになりました。

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(GLICC Weekly EDU 第170回「和洋九段女子 生徒の成長力」)

★その結果自ずとコンテストやコンクールでの受賞の数が半端ではないのです。修行式の日に中込校長が賞状を渡すセレモニーの時間がどんどん長くなると嬉しい悲鳴をあげているほどです。

★そのプレゼンの様子を動画で拝見したり、高3生が後輩にプレゼンをする「探究発表会」を拝見して、ふとこのあまりに自然体で格式ばっていない姿、それでいて気品があるその姿に感動するのです。

★この姿は、イタリア語で「スプレッツアトゥーラ」というそうです。欧米のエスタブリッシュスクールの生徒の姿を象徴する言葉の1つです。欧米と日本の文化の融合の粋を極めている和洋九段女子ですから、それは当たり前です。

★しかしながら、このスプレッツアトゥーラの本意は、そこだけではないのです。何気なく湖面を泳いでいる美しい白鳥の姿と水面下では足をバタバタしてその気品を保っていること全体を示唆する言葉が「スプレッツアトゥーラ」という言葉だそうです。氷山モデルと同じ構造ですが、氷山の一角が必ずしも白鳥のような美しさを象徴するかは賛否があるので、白鳥の姿でスプレッツアトゥーラを説明するほうがしっくりきます。

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★そして、今回、<GLICC Weekly EDU 第170回「和洋九段女子 生徒の成長力」>で新井教頭先生および菅谷先生のお話をお聞きして、和洋九段女子の生徒のプレゼンする姿がスプレッツアトゥーラさながらなのは、普段から教師と生徒が共に学んで成長しているその過程にヒントがあるということが了解できました。

★そのPBLの物語は、大胆にもチャレンジして、そのたびにぶつかる壁というゲートを潜り抜けていくたびに、成長していく教師と生徒のチームワークがあったのです。壁を超えるたびに新たな不安が襲ってきますが、教師と生徒のチームワークと学外の多くの方が共に解決策というか解放策のカギを考えます。この体験と思考と不安を乗り越えるGRIT精神のバタバタのプロセスが、湖面の美しい白鳥の姿を映し出すのです。

★和洋九段女子の生徒は、海外から見るとまさしくスプレッツトゥーラなのです。同校のグローバル教育の真骨頂でもあります。

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2024年4月19日 (金)

学校選び 成長する組織づくりをしている教師と生徒の関係➂叡智を共有する

★教師も生徒もXタイプに成長する学校組織は、実は大学入試なぞは何ら人生の壁ではないのです。壁だとメディアは思わせる記事が多いし、それが学歴社会という政治的経済的無意識の枠組という壁なのです。中高は叡智を学ぶ権利があるのです。18歳成人はその権利を行使できるようになっていなくてはなりません。これが近代法の精神ですが、理想はまだまだ実現していません。

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(このタイプの成長をする学校は、東京にはたくさんあります)

★私が言っているのは、法律の知識のことを言っているのではありません。判例が変わっているのをみて了解できるように、法律は近代法の精神をまだまだ実現できていないのです。悪法も法である段階を改善している発展途上です。よく学校において校則問題が論じられます。校則をなくすべきだとか言われ、それがすばらしい学校改革だと。メディアも騒ぎます。

★近代法の精神までないかのようにふるまう生徒や教師。法の精神に反する校則はそもそも論外ですが、法の精神を遵守する校則までなくす必要はないのですが、18歳成人の教育として大人としての精神論や経済法規などに違反しないようにする金融教育がもてはやされたりします。それはもちろん大切ですが、なぜ違反なのかは近代法の精神に学ぶと見えてきますが、意外とこの近代法の精神に触れる機会はあるようでないのです。学習指導要領の中にはきちんとあるのにです。歴史とは、過去の出来事の羅列ではありません。過去は過ぎ去りしいまはなき事実の配列ではないのです。不易流行史観も大事なのですが。。。

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★そんなわけで、いつの間にか、中高は大学入試の壁をクリアすることが目標になっています。そしてその目標が、叡智を学ぶ権利を身につけない壁になってしまっているのです。

★だから一般選抜が王道だなんて叫んでいると、叡智を学ぶ権利なんか社会に出て学べと18歳成人を否定するネガティブな発言をしているということに気づかないのです。

★一方、総合型選抜が生徒の才能を伸ばすのだと、単純に一般選抜否定のためだけに叫んだとしても五十パ百歩です。そこで止まったら叡智を学ぶ権利に届かないのです。

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(仮に組織が成長しなくても、生徒が勝手に成長していく学校があるとするなら、それはそれでよいわけです。働き方改革によって、このタイプの学校組織が増える可能性があります。東京にはこのような学校は、2校あります。たしかに生徒の成長はすさまじいですね)

★そんなことはないという人は、では大学入試を活用しない500万人弱の高校3年生の権利はどうなるのでしょう。たしかに学力は大切ですよ。でも基礎学力は叡智の一部です。それだけにこだわっていると、高3生が獲得すべき叡智を学ぶ機会は失われます。それでいいわけがないではないですか。いい加減にして欲しいものです。

★叡智をしっかり1000万人の小中高生が学び、18歳成人になって、就職しようが、大学を一般選別で受験しようが、総合型選抜で受験しようが、選択の自由なのです。しかし、あたかも大学に行かないと何か教育格差があり、学歴社会で損をするような社会構造を是としている集団がいるのです。

★学習指導要領は、その叡智を学ぶ権利を積極的に保障しているのか、いやいや学習指導要領もそこを学ぶことを否定はしないし盛り込んでいるよ現場の問題だと消極的保障なのか。はっきりしたほうがいいですな!

★というわけで、叡智を学ぶ権利を体得できる十分な教育をやっている成長する組織としての学校を選んで欲しいというのは、私の主観的な想いです。いや学歴社会があるのだからしかたがないと思う人がいても、私は否定しません。

★どのような価値意識がその都度社会を創っていくかは、私は市場に任せた方がよいと思っているからです。正義や愛を語る人が市場の原理に対しネガティブな考えを持っている人結構多いですが、毎日ニュースになっている戦争をみてください。いかに危ないか。戦争は市場の原理を破壊するします。それを実行しているトップの言葉は正義と愛に溢れています。恐ろしい。。。。

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学校選び 成長する組織づくりをしている教師と生徒の関係②

★学校に限らずですが、組織には、前回ご紹介したA1、A2、B、C、Xの5つのタイプのメンタルモデルの人がいます。もちろん、タイプですから、一つ一つのタイプには無限に差異があるので、その差異に気づき、アテンティブニなるリーダーシップが必要ですが、さしあたりここではざっくりと。この多様なメンタルモデルの持ち主が、互いにオープンマインドで尊重し合えば、役職などのタイトルに関係なくチームワークが作れます。

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★しかし、大切なことは、1人ひとりが成長するモチベーションを失わないことです。図のようなチームメンバーが、それぞれ自分の知の枠組を脱構築していくとチーム全体もまた成長していくわけです。

★とはいえ、いまここで自分を見つめ、自分を変えるにはどうしたらよいのか。対話しかないのです。自問自答という対話と仲間との対話と書物などを通して時空を超えた他者との対話、オンラインで遠くの仲間との対話。様々あります。書く行為は、この対話をすべて想定して書きますから、複合的な対話ですね。

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★したがって、メンバー1人ひとりが成長できる協働関係がPBLや探究などの活動に付加されています。仲間の成長を応援する非認知能力的な素養が必要ということです。

★最近、個別最適化と協働的学びの一体化と呼ばれていますが、それはチームや組織が成長することも含まれているはずですが、その組織の成長を気遣えない個別最適化と協働的学びの一体化は、作業分担の効率の良い活動ということで終わります。生産効率は一見よいのですが、長時間は耐えられません。役割分担が役割固定になり、不満が生まれ、一体化にやがて亀裂が生じるでしょう。

★そのような作業分担の効率の良い活動を促進する道具立てを外生的技術進歩と言います。逆に発想やパラダイムシフトを生み出す、システム思考やメンタルモデルの変容システムなどを内生的技術進歩と言います。

★成長する組織には、この内生的技術進歩が必要不可欠です。

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学校選び 成長する組織づくりをしている教師と生徒の関係①

★学校を選ぶとき、成長している組織かどうかは結構ポイントだと思うと最近繰り返しています。説明会に行くと、その学校の教師の姿と生徒の姿を見ることができます。直観的に、教師と生徒の見えない関係を感じることができます。教師と生徒がいいチームワークをつくっているなあとか、教師主導で生徒が動いているなあとか、教師も上司に言われて動いているなあとかなどすぐに感じます。もちろん、チームワーク組織なのか統率がとれているピラミッド組織なのか、フラットな関係とリスクマネジメントの縦の関係の共感組織なのか、どれがいいということではありません。私の好みは、共感組織ですが。

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★さて、組織は当然人が作るわけですが、所属メンバーは様々なタイプがあるのは当然です。Aタイプ、Bタイプ、Cタイプ、Xタイプ(X:transformation)。A、B、C、は、思考コードの軸に対応しています。ですから、Aだけ、A1タイプとA2タイプと分けておきました。あとは世界と自分の知の大きさの違いだけなのでざっくりBとCと。

★なぜ、A1とA2とあえてわけてみたかというと、世界と自分の知の関係は、はじめだれでも、世界の部分しか知ることができないでいますが、理解を拡大していくと、当然その部分が広がります。やがて、その世界の部分と自分の知が等しくなった時、人間が賢く生きるか愚かに生きるかの第一分岐点にぶつかります。

★世界は自分の知の限界であって、その向こうにまだまだ世界があると了解し、自分の知の限界を超えようと「思考」するか、すべて世界を「理解」したと「思考停止」するかの違いですね。

★私たち多くの人間は、私ももちろん含めてA2タイプで止まっているものです。無知の知とか汝自身を知れとか、哲学対話が大企業の患部の中で最近行われるようになっているのは、ここを少なくともBタイプにしようということですね。論理的思考とか批判的思考とか〇〇思考がたくさんあります。垂直思考とか水平思考とか。しかし、基本は論理的思考、批判的思考、創造的思考の3つくらいです。論理的思考と批判的思考は数学的には、dedution、induction、abductionが対応するでしょう。しかし、創造的思考はやはりアート的精神、つまりパラダイムシフト思考が相当すると思っています。

★いずれにしても、〇〇思考の名称は、ときどき、類似しているものでも、商品名と同じで、名前が違うだけでということがあるので、そこは相対化してあるいは俯瞰して整理しながら読み解いていくのが肝要です。名前を変えたがるのは、マーケティング効果をねらっってということもあります。ブランディングとか、書評登録とかのねらいもありますね。コーラとペプシという名称は違っても同じような飲料商品ですし、ファミマやセブンイレブンなどもコンビニという点では同じです。もちろん、微差異はそれぞれあるでしょうから、そこは意外と大事なのですが。

★まあ、ともあれ、この世界と自分の知の関係を上の図のように分けて、目の前の組織のメンバーを見てください。学校の場合だと、校長をはじめとする管理職がどのタイプかということです。それから、第一分岐点でどちらを選んでいるかです。

★私のように年老いた人間が校長だった場合、もうテクノロジーの知識では明らかに追いつかないわけです。ですから、私は自分の知が世界の限界で、それはあくまで自分の範囲にしかいない。だから自分の知を超える世界を知っているメンバーにどんどん企画を立ててやってもらおうとします。

★アリストテレスートマス・アクイナスの世界は、多少知っていますから、その世界を通じて現代化した叡智システムをベースに哲学対話をしながら、そのような正義や愛や倫理的資本主義のものの見方についてアイデアを広げてくれる生徒や教師が生まれるの待つわけです。不思議なことにアイデアとコモンセンスで合力をつくる生徒や教師が出現するわけですね。

★一方、校長が自分が全て知っている完璧だと内心思っていると、BタイプやCタイプ、Xタイプの教師の才能の芽を摘んでしまうということもあります。

★校長がCタイプの場合、他の教師がバカに見えてしまうときもあります。もちろん、表立ってそうはいいませんが、ことあるたびに一言ネガティブな言葉を吐きます。

★A2タイプでのそのような発言は、もはや論外ですが、ともあれ、そのような発言はハラスメントの恐れがあり、実はCタイプであろうと論外です。

★かくして、このようなタイプがどのように互いに関係し合うかによって、その組織の成長の具体的状況は変わってきます。

 

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2024年4月17日 (水)

学校選び 成長する組織と成長しない組織

★学校選びのポイントはいろいろな視点が複合的になるけれど、説明会などに参加してすぐにわかることは、ああ、この組織は成長し続けているなあとか逆に成長しない組織だなあということです。成長はリスクテイクしているので、不安もつきものですよね。成長しない組織は安定感があるので、今ある成果はでそうです。さて、どちらを選択するかは、選択者の価値意識の問題で、どちらでもよいのですが、成長しない組織を選ぶ価値意識が大きなシェアを占めたとき、日本という国の希望は。。。という感じです。まあ、50年後の話だから、今はいいやという人もいるでしょうね。

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★私としては、成長する組織が好みです。成長する組織の特徴は、ポジティブな教員が多いということですね。これは説明会にいけばすぐにわかります。成長しない組織は、そういうポジティブな教師を、新しもの好きだとか、スタンドプレイだとか、表面的だとか非難したり、口では言わないけれど、サイレントキラーの主みたいな人が多いですね。もちろん、そういうかたもいるかもいsれませんが、そういう先生がそのような組織からほかの組織にシフトしてから本物になっているケースは少なくありません。

★それに成長する組織を支えているポジティブな教師の姿は、湖面を美しく泳ぐ白鳥さながらなのです。見える部分は魅力的ですが、水面下では足はバタバタです。そこを見せずにポジティブに進む。

★人間のあり方を知っているがゆえに、生徒の悩みや保護者の悩みにATTETIVEになれる。美しいビジョンの体現と痒い所に手が届くアテンティブな姿勢。こういう教師がたくさんいる成長する組織はすてきですよね。

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2024年4月15日 (月)

教師の在り方 多様なあり方を生み出す共通するエネルギー

★「シリーズ 学びとビーイング 4.学び続ける教師のあり方(Being)とは? 」(りょうゆう出版 2024/4/17)がいよいよもうすぐ世に出ます。一足先に本をいただき、少し目を通し始めました。32人の教師を中心とする教育関係者が「学び続ける教師の在り方(Being)」について語っています。

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★どの論考も、自分自身がどのように変容したか、学び続けたかなどその体験を深く内省し、様々な壁を友人、同僚、先輩教師、何より生徒と共に乗り越えてきた教師物語が描かれています。ノンフィクションである物語だけに、リアリティと切迫感と同時にポジティブなビジョンが織りなされ、まるで短編小説を読んでいるかのようです。事実は小説より奇なりです。

★どの物語も、self-beingではなく、多くの人のかかわりの中で開かれてきたアイデンティティというinter-beingが語られ、客観と主観、絶対と相対などの分断が包摂されている発想を学校現場中で学内外のかかわりの中で砕いている様子に、希望を感じました。

★中には、そのかかわりが世界にかかわっている方もいて、グローバル教育だとか、とかく技術的な側面がアピールされる昨今の流れを、本質を深めていくという角度で新しい変化の流れに転換させていく兆しが見え隠れしています。

★32人のプロジェクトが大きな流れを生み出すビッグ・プロジェクト。それを編集者の5人の先生である河口竜行先生、木村剛先生、法貴孝哲先生、皆川雅樹先生、米元洋次先生と合同会社りょうゆう出版代表社員の安修平さんが仕掛けているわけです。

★実際にお手に取ってお読みいただくと「新しい教師像」が目の前に浮かんでくると思います。

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香蘭女学校 鈴木弘校長 日本の学校はまだ始まったばかり、不易流行のダイナミズムはいよいよこれから

★文科省は、「令和の日本型学校教育」と表現を使って、現行学習指導要領の実現を促進しようとしていますが、「日本型」というところが、私立学校と大いに違うところです。香蘭女学校の校長鈴木弘先生のインタビューをしに先日行きましたが、日本の近代教育は国と私立学校の両方が紆余曲折しながら、現在進行形で、完成などしていない。まだまだ200年もたっていない新しい領域なのだと。だからこそ不易流行のダイナミズムが必要だということです。

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★香蘭女学校は、英国宣教師が根づかせたイギリス聖公会の学校です。初期の校舎は木造でしたが、その建築設計は、鹿鳴館を建設したジョサイア・コンドルです。今旗の台にある校舎は赤レンガづくりのかわりらしい校舎です。ジョサイア・コンドルの作ではありませんが、丸の内駅舎をはじめ、その界隈は、赤レンガづくりの建物が当時ひしめいていました。コンドルとその弟子によるものです。

★ジョサイア・コンドルの鹿鳴館は、アールヌーボ的な繊細で優雅で自然と調和した建物だったらしいのですが、建築をアートとして理解できなかった国が、威風堂々と列強を迎え撃てるるような、つまりマウントをとれるようなものでないから、コンドルを排除してしまったのです。

★しかし、建築とアートを愛し、なおかつ日本のアートに造形が深く、英国と日本の文化や精神を融合したコンドルのアイデアにほれ込んだのは、当時の三菱で重責を担っていた慶應義塾出身者です。となると当然英国正教会の宣教師も慶應義塾とは縁が深いわけですね。

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★もちろん、現在大学としては同じ聖公会の立教大学との連携の絆が太いですが、要するに、国とはまた別の私学の精神をベースにした教育を不易流行よろしく130年以上も脈々と続けてきたのが香蘭女学校です。

★日本の国がようやく大きな壁にぶつかり、国の教育も変わろうとしています。私学も不易流行の精神をテコに変わらないものを深く追求し、変わるべきものは大胆に変えていくのだという鈴木校長の気概は実に痛快でした。詳しくはshuTOMOに投稿しようと思います。

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学校選び 生徒も教師も学校も成長する未来組織としての学校が増加

★今までの学校選びの中心は、偏差値や大学合格実績でした。別の角度から見ると、わが子が大きく成長できる学校はどこかということでもあります。偏差値とか大学合格実績とは、その成長の1つの症状にすぎません。ですから、「成長」という目で学校選びを進めるようになっている昨今。偏差値や大学合格実績以外のものも求めるようになってきました。それは何でしょう?

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★たとえば、ウェルビーイングだと言われたりします。これはもちろん間違いありません。しかし、ウェルビーイングは必ずしも学校でなくても得られるわけですから、これもまた学校における成長の1つの側面です。

★それに学校が、一生もののウェルビーイングを創り出すと標榜するなら、それは少し経営陣は驕りがあるかもしれません。

★一生もののウェルビーイングを自ら生成する環境を教師が設定することはかなりの部分学校でなければできません。

★しかしながら、まだまだかなりの部分にすぎないのです。もちろんどこまでいってもかなりの部分なのですが、ウェルビーイングを生み出すマインド、環境設定、人間関係、社会課題解決意志、実現方法論など生徒が自ら、そして協力して生み出す内生的技術進歩を体得する教育を行うところは、さらにかなりの部分学校でしかできないでしょう。

★つまり、1人ひとりの生徒が成長するには、仲間も教師も学校も成長する組織になっているはずなのです。もともと学校はそういう場でした。しかし、新しい学びと言いながら、新しい学びのツールばかりに目が行き、そのツール活用の優れた生徒にばかり評価が集中している世の中です。その生徒を取り巻く、仲間や教師や学校が同時に成長しているからそのような生徒が生まれているのだという「地(=背景)」の部分に目はあまり開かれていなかったのです。

★ところが、2024年度は、私立中高一貫校の人事異動が激しく、役職者も若返っているため、ルビンの壺よろしく、「図(=氷山の一角)」ばかりではなく、「地」の部分を自覚的に掘り起こしている学校が増えてきました。

★私が、ケースメソッドとして、本ブログで取り上げる工学院、文大杉並、八雲、富士見丘、順天、聖学院、和洋九段女子、成城学園、駒沢女子、成立、かえつ有明、湘南白百合、共立女子などは、生徒も教師も学校も成長する未来型組織です。まだまだたくさんあります。公設民営の大阪水都国際も未来型組織です。今年度は、そのような未来組織型学校も探していきたいと思います。

★もちろん、未来組織型学校は不易流行です。未来の革新性は、人類の歴史が進化という名の、宇宙の謎に接近するマインドとスキルの成長です。この宇宙は、人類誕生以前から存在していたのです。未来はこの宇宙の原理に向かって進化しているというわけです。日々Awe体験→思考→経験値のループが拡大していくというのが成長です。この発想は工学院の教頭田中歩先生に影響をうけました。

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2024年4月14日 (日)

和洋九段女子 知の社会貢献スタート

4月13日(土)、和洋九段女子は、「PBL型授業体験会」を開催。受験生だけが対象ではなく、興味と関心のある方に開かれた体験会です。同校では、もはや生徒自身が数多くのプロジェクトを実施しています。しかも外部団体と連携する本格的なプロジェクトで、コンクールなどで数々の賞を受賞するなど、目に見える成果も生み出しています。

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(写真は同校サイトから)

★したがって、このPBL体験も、ファシリテーターには生徒も参加しています。

★卒業式で、代表生徒の感謝の言葉の中で、PBLの環境が溢れている学校で育って自分を見つめられ、仲間と共に成長できたことはかけがえのない財産なのだと語られるくらい、それぞれの授業、行事、探究、プロジェクトはPBLが広く深く豊かになっています。

★同校のPBLの目標の一つに他者と共に社会課題を解決し貢献するというのがあります。

★ですから、こんなに自分自身が成長し、仲間も共に豊かになってウェルビーイングになるのに、PBL型授業への理解がまだまだ広まっていないという社会課題に気づき、だったら、受験生のみならず多くの人にPBL体験をしてもらおうとなったに違いありません。

★自分たちの持っている目に見えない無形資産をシェアしようという心の勢いが和洋九段女子の中で生まれていることは、つい先日高3の探究の発表会に参加し、感じました。それは先輩と後輩のコミュニケーションでした。その種を外部の方にもシェアしようという動き。さすがです。

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工学院大学附属中学校3.0 学べる組織づくりアップデート 田中歩教頭のアンビシャス

★工学院大学附属中学校3.0がスタートしています。先日同校中学の新教頭田中歩先生からお話を聞きましたが、すでに同校は、A=PBL×思考コード×STEAM→B=A×ラウンドスクエア×ケンブリッジインター×海外大学準備教育×探究論文×グローバルプロジェクト→C=A×B×学べる組織へとアップデートしていることが了解できました。

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GLICC Weekly EDU 第169回「工学院大学附属中のビジョン」 

★上記の動画をご視聴していただくと、いきなり中1のオリエンテーションの話から始まるのに驚くと思います。学年全体が目標を工学院思考コードというメタルーブリックで共有しているところから始まります。さりげないけれど、オリエンテーションからルーブリックがきちんとあるというのは、世界標準の組織だということです。

★そして、次にオリエンテーションの始まりのところの写真からはじまります。そこから数時間後、生徒と教師が学べる集団になっている様子が映し出されています。そのシフトの仕掛けである幾つかのアクティビティも紹介されています。この「行動(アクティビティ)→思考→経験(集合知)=個人の成長×集団の成長というワンセットの中に、ルーブリックの広がりがすべて実施されています。この「行動→思考→経験」という学びのモデルが、たとえば2日間のプログラム全体で1回行われるのではなく、複数のセッションで回転しているプログラムになっているのが工学院です。

★この学びのモデルを生徒も教師も共有し、どんどん拡大していくことで学べる組織が成長していくことになります。高校の教務主任時代、歩先生は、もともと生徒1人ひとりの成長をきめ細かく見守ってきました。同時にその見守りは、先生方と協力して行ってきたのです。その「経験」を教頭として俯瞰すると、生徒の成長×集団の成長=組織の成長になっていることに気づいたのだと思います。それを「学べる集団」という言葉で歩先生は言語化しています。

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★組織が成長するには、学び続けることだとはよく言われますが、「行動→思考→経験」の螺旋が続く学びのデザインをしていくことだと具体的にビジョンが見えているところはなかなかないでしょう。

★しかもその学びの枠組には、ケンブリッジインターとラウンドスクウェアとMicrosoft Showcase Schoolという世界が認める教育環境デザインがあるわけです。外生的技術進歩と内生的技術進歩の融合により工学院大学附属3.0の時代が着々と進んでいます。これが田中歩教頭のアンビシャスなのだと感じ入りました。ぜひご視聴ください。

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2024年4月12日 (金)

佐野先生と金井先生と対話 あの瞬間のシーンが文化圏を生み出し続けている

★かえつ有明といえば、佐野先生と金井先生を想い浮かべる方も多いでしょう。学内外でマインドフルネスの時空を生み出し、自分を見つめ、自分に気づき、自分を開いていくリズムとストーリーがいつの間にか重ね着していた鎧を解除し、清々しい本来の自分に帰っていく。そんな経験をみなさんも佐野先生と金井先生の研修プログラムに浸って感じたことはあるでしょう。

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★私の場合は、そのプログラムを参与的観察はしたことはありますが、浸っていないのですが、実はとても贅沢なことに、お二人と対話する時空に浸る機会が多いのです。昨日は2時間半という、いつもと比べるととても短い時間でしたが、やはり覚醒するアイデアやヒントが湧いてきました。

★「湧く」というのは、命の水をもらって勇気づけられるという意味なのかもしれないなあとしみじみでした。

★お二人の話に耳を傾けていると、かえつ有明の様子が目に浮かびます。今まで、この「自分を見つめ、自分に気づき、自分を開いていくリズムとストーリー」は、研修を受けたとき永遠の瞬間というべきもので感動するわけですが、持続可能はなかなか難しかったと思います。ですから、同校の先生方は、佐野先生と金井先生のオープンカウンセリングよろしく参加しては、勇気を立ち上げていたような気がします。

★ところが、今や教師も生徒も自らプログラムを創り出し、互いにそのプログラムを楽しむ雰囲気ができているというのです。金井先生も自分で創るだけではなく、学内中あちこちでプログラムの泉が湧いていて、その相談に乗る側にすっかり回っているというのです。佐野先生は、この雰囲気を大切に持続させるように管理職としてマネジメントするということのようです(微笑)。

★そして、それはあの永遠の瞬間が、持続可能な文化圏をつくっているということのようです。

★このとき、あの「自分を見つめ、自分に気づき、自分を開いていくリズムとストーリー」における「自分」は、もはや一人自分ではなく、「自分以上の自分」に成長しているということです。重大問題に自分事になるとき、そこでフロー状態になっているわけでしょう。そのとき仲間ひとりひとりが、自分以上の自分になっている。仲間のために自分を犠牲にして自分を無くすのではなく、自分以上の自分に互いになることによって何かを生み出すエネルギーがそこに生まれる。

★そんなマインドエネルギーの生成が持続可能になっている精神文化圏。それが今のかえつ有明で、この精神文化圏を学外にも生成し続けているのが佐野先生と金井先生です。

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2024年4月10日 (水)

青柳先生の教師のあり方=Beingは構造論的実存主義

★昨日、成城学園の青柳圭子先生のところに伺いました。東京私学教育研究所で実施した「私学教員のための組織マネジメント研修」の研修コードについてご意見を聞くためでした。研究所の研修コードは、ベースが「思考コード」で、同研修の委員である青柳先生は「思考コード」について熟知されているので、研修中から対話していた経緯があります。組織マネジメントのメインテーマは、「自分が変わる」ことによって「他者も変わる可能性」を体感するワークショップでした。自分から自己へ自己から自分へという、主観と客観の在り方が対話的主観に変質していく自分。

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★そんなことをあちこち飛び回りながら対話していると、そういえばと、新刊「シリーズ学びとビーイング~学び続ける教師のあり方(Being)とは?」を頂きました。青柳先生ご自身も寄稿されていたので、対話しながら目を通すと驚きました。今対話していることがすでに青柳先生は論考しているのです。

★『子どもの学びを支える、私たちの「Being」』がタイトルですが、このタイトルが論稿のコアコンセプトでした。教師のあり方とは、ひとり教師のあり方ではないのです。もちろん、教師一人ひとりそれぞれの「あり方」なのですが、それは子供の学びのあり方と同僚のあり方、そして学校のあり方、社会のあり方など関係総体の中で、オリジナルの「あり方」が生まれてくるという息吹がタイトルを通して論稿全体に広がっていました。

★大変哲学的です。ハイデガーとかフッサールとか実存主義というか現象学的というかそんな哲学的な対話が青柳先生とは展開されるのですが、今回の論稿もそうです。

★しかし、一方で青柳先生はフィールドワークという現場に身を置いて感じたり考えたりする方ですから、構造主義的というか文化人類学的でもあるのです。

★さらに、韓愈の思想から、あり方とやり方と迷いを払拭する道/未知の探究の発想を取り出しています。まさにやり方と道/未知を探究する泉としてのあり方を語ります。

★そうして、その泉はどこから湧き出るのか。生徒と同僚など多くの人との対話から生まれるのだと。互いの主観を大切にしながら対話的に主観が成長していくわけです。主観と客観の二項対立が生み出す個性の無化を対話的主観によって取り戻す生き様というあり方。「私たちのBeing」となるわけです。ここは現象学的ですね。

★AI時代は「やり方」はもしかしたらAIにかなり任せることができます。しかし、AIは道/未知を探究することは今のところありません。既存の情報を分解し統合することは得意です。しかし、教師は道/未知を前にして不安になりながらも希望を同時に生み出す泉が内面にコンコンと湧いています。それが枯渇せず豊かになっていくことが今後大事になるでしょう。

★いかにしてか?その解答の大きなヒントを青柳先生は経験的に直観しています。そして、今後中高と大学で授業を通して生徒と学生と対話していくことによって、言語化されていくことでしょう。楽しみです。

★それにしても、韓愈とトゥールミンを青柳先生は大切にしていますね。両者とも思想家であり哲学者です。青柳先生の深い学びのあり方の源泉の1つでしょう。特に韓愈はいわば思想のルネサンスを巻き起こした詩人でもあります。

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管理職が英語を活用できる学校が増える流れ!?

★2024年度は、東京の私立中高の人事異動が激しいと感じますが、その中で英語を活用できる管理職が増えているような気がします。富士見丘の理事長校長吉田晋先生はもともと英語が堪能ですが、今年度就任した副校長吉田成利先生は、英米大学で研究して法学博士を取得している程の英語の達人です。文大杉並の新校長青井静男先生もDDを立ち上交渉を英語で成就させたほどです。工学院大学附属の新教頭田中歩先生もラウンドスクエアやケンブリッジインターナショナルスクールとの連携をプロデュースしている程の英語の達人です。水都国際の新校長太田晃介先生もIBティーチャーの多くが外国人ですから、英語を日常使っています。昨年聖パウロ学園の教頭に就任した大久保圭祐先生も海外の大学で学んでいます。すでに八雲学園の副校長に就任されている近藤隆平先生も米国の学んで、ラウンドスクエアをはじめ、八雲学園の多様で多次元のグローバル教育をプロデュースしています。

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★おそらくこのような学校はまだまだあるでしょう。1つの流れかもしれません。というのも、英語のスキルはもとより、グローバルな視野を持ち、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングもでき、経営戦略のビジョンというものの重要性を海外との交流の中で体得し、国内外における「交渉力」を持っている人材です。ですから、英語の教師という枠組みは超えていることが前提です。

★日本語でも、同じような資質は発揮できるのですが、決定的な違いは、ハラスメント対策へのアンテナの感度が英語の場合は高いのです。おそらく日本語だけで組織マネジメントをしている場合、ジェンダー問題やマイクロアグレッションに対する感知能力に問題がある自分に気づかないという日本語の構造的な問題があるのです。本人の能力の問題ではなく、日本語の構造上の問題ですね。それが日本の社会構造に影響をあたえてもいるわけですし。

★グローバル教育が発展すればするほど、英語のスキルや異文化理解だけではなく、グローバルの光と影の両方を熟知しながら、希望の松明を生徒とシェアし、引き継いでいく必要があります。

★逆にグローバル教育なんてと嘯いていると、日本社会を光輝かせるのとは反対のベクトルの応援者になりかねません。中高の教育は、それほど社会に影響を与える役割を担いつつあります。18歳成年とはそういうことだったわけですね。

★もちろん、日本の教育にも光と影があるわけです。あらゆるものに光と影がつきものです。それを相互にモニタリングして光をもっと光をというわけでしょう。このあらゆる領域の光を束ねていく教育観がグローバル教育の真骨頂です。

★しかし、まだまだマイクロアグレッション言説が飛び交っている日常です。私自身もおそらく気づかないだけでいるでしょう。哲学シンキング的な対話ができる仲間がいることに感謝です。

 

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富士見丘学園 副校長に明海大学教授吉田成利先生が就任 学問とグローバル探究の螺旋教育ますます

★2024年4月1日、富士見丘学園の副校長に明海大学教授吉田成利先生が就任しました。これまで吉田成利先生は、理事長補佐・校長補佐として、富士見丘のグローバル探究のプログラムのアドバイス、いやプロデュースを行ってきました。ロンドン大学King’s Collegeの指定校推薦枠を取得したり、イギリスの姉妹校のコーディネート、米国やオーストラリアの海外研修などのコーディネート、模擬国連部のサポート、なんといっても、マレーシアやハワイ、グアム、シンガポール、台湾などの現地の自治体や学校と連携してグローバル探究を進化させてきたわけです。

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(写真は、吉田成利先生のfacebookから)

★もちろん、同校の先生方とチーム富士見丘を生み出して進めてきました。組織マネジメントにおけるリーダーとしては、英米で学んだ法学博士として戦略とコモンセンスを両立させていて、筋金入りです。富士見丘の近年の人気と成果が右肩上がりに、吉田先生のリーダーシップは寄与していることは間違いないでしょう。

★吉田先生のプロフィールは明海大学のサイトによると、次のように記載されています。

 学位
博士(法学)2015年10月 ロンドン大学キングス・カレッジ
修士(法学)2016年6月 シカゴ大学
修士(法学)2010年12月 ロンドン大学キングス・カレッジ
修士(法学)2007年3月 慶應義塾大学
学士(法学)2005年3月 慶應義塾大学

主な業績又は職務実績等
The case for abolishing jury trial in the English legal system (2015年、博士論文)
Jury Duty(2014年、King's Law Journal)
Comparison of the Status of the Monarch's Speech in Parliament between the UK and Japan (2012年、King's Student Law Review)  Punishiment, Participatory, Democracy, and the jury (同)
Editor-In- Chief, King's Student Law Review (2013-14年)

★そして、海外大学のご自身の広い学問知ネットワークを同校のグローバル探究と結びつけ、一般にはあり得ない教育の化学反応を生み出しています。

★グローバル教育はどこの私立学校でも広まっています。しかし、校長及び副校長の両者ともが英語が堪能である学校は極めて珍しいでしょう。このことの重要性は、今の受験業界ではもはや容易に想像できるでしょう。

★通訳をつけずに、海外と交渉できるのです。海外からのお客様を生徒と一緒に英語で会話しながらおもてなしができるのです。そして、そのときに、教育理念「忠恕」に象徴されているように、大いに日本文化について共有できるのです。海外の教育パッケージをそのまま受け入れるのではなく、海外と日本の教育の交流ができる基盤が同校には作られているのです。

★「忠恕」を胸に、グローバルな視野のみならず、学問知まで有している副校長の誕生が富士見丘の外生的技術進歩と内生的技術進歩の統合を進めるでしょう。人気や成果の指数関数的な発展もとまりません。

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2024年4月 8日 (月)

和洋九段女子 高3総合探究発表会 PBLが根付き大輪の知と愛の花が咲く

★本日和洋九段女子の校長中込先生にPBL授業の新たな展開についてお話を伺いに訪れました。約束の時間より少し早めに着くと、中込先生がちょうどよいところに来ていただきました。あちらこちらで高3が探究の成果を、後輩とシェアしているところです。まずはご案内しますと、40分くらいワークショップを見て回りました。同校の生徒の自由闊達な発想と先輩と後輩の盛り上がりは、ちょとした知のコンサートでした。

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★探究活動は4年間行ってきて、今回はそのうちの最近2年間の探究の成果の発表だったようです。スライドで発表するのはお手の物ですが、動画もあり、シールなどのツールもありました。驚きなのは、ミニドラマを演じながら、普段気づかない存在の重さに触れるシーンを生み出すワークショップを多くのチームが行っていたことです。

★発表や演技をする息吹と見学する後輩との息がピタッとあっていて、協働的な絆を創り出す同校のふだんのPBL授業がここにもつながっているなあと感じました。

★中込先生は、中学の卒業式で、卒業生代表の言葉の中に、PBL授業が楽しく自分の成長の場であると述べてくれ、本当に根づいたと感動しましたと。

★実際PBL入試を受験する生徒も増え、学内外に浸透してきた確信を持っているようでした。

★その成果が、大学合格実績にも影響を与え、今春の卒業生は、海外大学やICUなどにも合格したそうです。

★中込先生は、今後は大学の統廃合もあるし、私立中高だって安泰ではないと、人口減の影響の危うさについて語っていました。そうなったとき、サバイブできる力とは何かが重要になるのだと。そのためのPBLや英語なのだが、最終的には文理融合的な理数的思考であると見通していました。そのために新たな仕掛けをしていくということで、それはいずれ公表したいと。

★それにしても、高3生の探究のテーマは、どのチームも実に人間の存在の重さの地平に立ち臨む非常に深刻な物でしたが、それを自由な発想で後輩とシェアする作品を披露し、その事実から何ができるか共に考えていこうと共感的な雰囲気が和洋九段女子の校舎から溢れ出ていた時間でした。

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学校選び 日常の非日常を発信している学校 サイトで授業の内容を発信

★私立学校の選び方で大事な盲点が2つあります。その1つはサイトや情報誌で「授業」に関しての発信が少ないということです。もう1つは、入試問題の内容について、分野や問題形式だけではなく、どのような問いがどのような生徒の才能を見出そうとしているのか発信している学校も少ないということです。

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(聖学院の国語の授業)

★なぜか?それは企業秘密ということもあるでしょう。一方で、日常的過ぎて広報の素材としては受験生の保護者は関心を示さないと誤解しているからでしょう。

★しかし、保護者にしてみれば、日常の授業が面白いのか楽しいのかそれでいて効果的なのかについて、興味と関心がないはずはないのです。保護者には難しすぎてわからないのでは?もし本当にそう思っているとしたら、とんでもないハラスメントです。

★保護者のほうがむしろ手厳しいかもしれませんよ。

★ともあれ、たしかに学園生活で生徒が最も時間を費やすのは、授業なのです。その授業がおもしろくなくてどうなのでしょう。好奇心が旺盛になり、自由闊達に意見を言い合い、問い合う授業。互いに得点をではなく、広い視野深い思考、人間的な大きさを感じあえるのは、日々の授業でこそなのです。授業は、日常の非日常というパラドクスだからサプライズを生み出すのでしょう。

★その結果ちゃんと大学合格実績も出ているという実感を保護者が抱ける学校がすてきですよね。

★そして、その授業と進路実績につながる最初の入り口は、入試問題なのです。となれば、入試問題にどんなメッセージが込められているか、とても大切です。

★その時に、どんな分野が出るとかという細部や時代の精神という入試問題にかかわらず大切なことを振り回すのではなく、子供にとって何を求めているのか、コンセプトを明快に語っているかはポイントです。

★それができている学校の例はといえば、聖学院と成立と湘南白百合とカリタスがすぐに思い浮かびます。まだまだあると思います。今後探していきたいと思います。

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工学院大学附属中学校 教頭に田中歩先生が就任

★工学院大学附属中学校の新教頭に田中歩先生が就任しました。歩先生は、英語科主任→高校の教務主任(他の学校の教務部長)を経て、この新年度から中学の教頭です。同校の組織はなかなかおもしろいのです。中学と高校それぞれに教頭と教務主任がいるのです。対外的に広報のリーダーは「部長」という名称が使われれますが、校務メンバーは「主任」なのです。他校では「部長」と呼ばれるのが通常です。ですから学年主任や教科主任と同じ「主任」なのですが、校務メンバーかどうかの違いはあり、非常にフラットな組織です。大学附属ということもあり、校長が慣例的に外から迎えられますから、学内のチームビルディングがしやすいようにということなのかもいれません。たしかに階層構造があり過ぎると、現場では動きにくいということがあるのは想像に難くないでしょう。

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★多摩エリアというのは、生徒募集という点では、23区に比べあまり有利な条件エリアではありません。同校は高校の定員が中学より多いので、まずは高校の生徒獲得の基盤作りが重要でした。都立優位のエリアで、私立学校で、いわゆる大学実績で突出している学校が多いわけではないので、いかに強烈な特色を出しつつ、大学実績も突出させていくか、が優先順位として高かったのです。

★このエリアで破格のグローバル教育で右に出る学校は、もうありません。そして大学合格実績も進路指導主任の鐘ヶ江先生と学年の先生方とガッチリ、スクラムを組んで、壁を突破し続けています。

★グローバル教育とPBLとその最終形態である探究論文×グローバルプロジェクト(これは有志ではなく全員参加の壮大なプロジェクト)が生徒の人間力を豊かにし大学合格実績も上昇するという手ごたえを先生方が感じるようになりました。

★この進化は止まらないでしょう。そう経営陣は考えたのだと思います。今度は奥津先生を高校の教頭に、田中歩先生を中学の教頭に据えました。

★奥津先生はもともとは数学科の主任で、中学の教頭と教務主任を兼務していました。実は工学院のグローバル教育は本当に破格で、23区の私立学校で工学院と肩を並べられる学校は文大杉並くらいです。どういうことかというと、ケンブリッジインターナショナルスクール認定校が工学院です。これもたぶん日本第1号ではないでしょうか。

★日本の英語教育をベースにした凄い学校はたくさんあるのですが、一部の有志の生徒が海外の高校とダブルディグリーをとるというのではなく、かなり多くの生徒がダブルディグリーに挑戦できるという環境があるのは、工学院と文大杉並くらいなのです。

★ただ、工学院は、工学院の教育=ケンブリッジイナターナショナルスクールの教育となっているので、ディプロマは工学院大学附属1つなのです。だから目だたないのですが、これもまた日本の教育と海外の教育の「融合」の在り方の1つなのです。

★この破格のグローバル教育のうち「言語的精神」の基盤をインターナショナルコースだけではなく、他のコースにも固めようと、田中歩先生がリーダーとして教頭に就任したのでしょう。

★そして、医学部と薬学、都市工学など、ソサイエティ5.0時代に必要な新しい都市創りの高度人材輩出が軌道に乗りつつあるので、文理融合的な「数理的精神」の基盤をさらに強くするべくリーダーとして奥津先生は教頭に就任したのでしょう。進路指導部主任の鐘ヶ江先生も数学科の主任でした。

★そして中野校長が、STEAM教育を中高全体の背骨にしようと担当者と仕掛けているわけです。生成AIとアートがポイントになるでしょう。

★同校は、リベラルアーツという用語は使いませんが、言語的精神、理数的精神、STEAM的精神は、リベラルアーツの現代化に相当します。この三位一体的な精神があるからこそ破格かつ学際的なグローバル教育が成り立つのです。

★そしてこの三位一体は、共感的コミュニケーションの素地があるからこそ循環します。歩先生のもっとも重要にしている教育は共感的コミュニケーションです。だからこそ生徒中心だと言い切れるのですね。工学院大学附属のミッションの言語世界的・工学宇宙的視野は壮大です。

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文化学園大学杉並 サイトで人的資本力を公開 染谷先生理事長補佐に就任

★文大杉並は、2024年3月28日に同校サイトで次のような記事を公開しました。『本校教員がヤフーニュースで紹介されました 本校「次世代教育開発部」部長の染谷昌亮教諭がヤフーニュースで紹介されました。染谷教諭の経歴や教育業界に携わる熱い想いが記事になっていますので紹介します。染谷教諭は本校の学校説明会でもよく登壇します。』と。

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★文大杉並は今年度ダイナミックな人事異動が行われています。6日に中学・高校の入学式が行われましたが、そこでは新校長青井静男先生が式辞を日本語と英語で語っていました。前校長の松谷茂先生は、理事長に就任しています。

★そして、染谷先生は理事長補佐に就任です。松谷理事長には、昨年末、校長の時にインタビューの機会を頂きました。そのとき「学校も人的資本経営だから」と語っていました。なるほどですね。

★DDコースの立役者青井先生が校長に就任し、染谷先生が理事長補佐であり次世代教育開発部長でもあるということのこれらの意味と人的資本経営という意味を重ねると、なんと凄まじい組織マネジメントなのだろうと驚愕せざるをません。穏やかな松谷理事長ですが、実際には燃やせ心をという気概の持ち主です。

★この意味は、従来の学校経営のパラダイムをシフトするよと言う松谷理事長の宣言でもありましょう。今後が楽しみでなりません。

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文化学園大学杉並 新校長 青井静男先生就任 DDコースの立ち上げからコーディネート 英語堪能な校長

★4月6日(土)、文化学園大学杉並(以降「文大杉並」)は中学・高校の入学式を執り行いました。今春の入試は、同校の人気は話題を呼び、メディアにも注目されました。同校のサイトではその厳かで温かい盛大な式典の様子が伺えます。そして、式辞は、新校長青井静男先生です。生徒1人ひとりが未来を創る可能性の教育への覚悟とそのことが平和な共生社会を生み出す確信を語ったことでしょう。

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★最近では、地政学リスク回避のため及び円安という経済的アドバンテージもあり、海外からインターナショナルスクールを設置する流れができています。学費も日本の私立の2倍、3倍です。しかし、1条校ではないので、IBかAレベルの大学受験資格を取得しなければならないケースが多いのです。そして、入学ターゲットは富裕層の外国人と日本人です。

★ところが、文大杉並のカナダのブリティッシュコロンビア(BC)州と提携したDD(ダブルディプロマ)コースは、一条校文大杉並に所属して同校の卒業資格とBC州の卒業資格の両方が取得できます。ですから、国内の大学も海外の大学も両方スムーズに受験することができます。このDDコースは、文大杉並が日本で初めて構築した日本と海外の教育文化を融合したシステムです。この「融合」のコンセプトはDDコース所属の生徒の保護者がよく語るキーワードでもあります。

★最初のころは、受験業界は理解ができなかったようですが、今では同校のDDコースの文化的学問的有効性をしっかり了解しています。それゆえ、今春の人気は絶大だったわけですが、このDDコースは高校だけではなく、中学にもそのプレDDコースともいうべきプログラムが毎年充実していて、その進化は止まりません。

★このDDコースの立ち上げから現在進行形のコーディネートのリーダーが新校長青井静男先生です。青井先生は英語が堪能ですから、通訳を介さず、BC州と契約関係を結び、今ももちろんBC州の教育関係者と密にかつ広くネットワークを拡大しています。式辞は日本語と英語の両方で行われました。さすがです。

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2024年4月 7日 (日)

八雲学園 今春共学1期生が卒業 生徒の人間力さらにタフに

★八雲学園は、2018年に共学化しましたが、その1期生が今春卒業しました。卒業するや先輩になった卒業生は、合格体験について在校生に物語るわけですが、そこには男子生徒がいるわけです。一見当たり前のシーンですが、卒業式やこのようなイベントも様相が一変しています。

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★ラウンドスクエアの国際会議にも、今回の深圳で行われているラウンドスクエアグローバル会議にも10人前後の八雲生が参加することも定着しました。

★世界のエスタブリッシュな私立学校の生徒と多くの在校生が多様な国際的な社会課題について議論するバラザという場にもすっかり慣れています。

★英語の高度技能だけではなく、英語を使って海外交流を音楽、文化、学びなど多次元の国際交流が大小さまざまなプログラムとして1年中行われるのもすっかりおなじみになりました。

★海外大学進学教育の環境なども整備され、グローバルリーダーとして活躍するために必要なタフな人間力を身につけられる環境がかなり充実していますし、これからさらに進化します。

★共学化して6年間の多様で効果的な教育プログラムの全貌が見えるようになりました。共学化のときに同校は80周年を迎えていますが、それから7年目、実はまだ新しい学校というわけです。八雲の本領発揮はまたも更新されるわけです。期待が高鳴ります。

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富士見丘 大胆な広報 時を読む

★富士見丘のサイトにはこんな記事があります。「“お得な中高一貫校” レバレッジ度ランキング第1位!」がそれです。同記事によると、

<『週刊ダイヤモンド(2024年4/6・13号)』において、「入学はしやすいのに6年間で学力を伸ばす」大学受験に強い「お得」な学校のランキング、いわゆるレバレッジ度ランキングの首都圏総合 第1位を獲得しました。記事の中で本校は、ここ数年のランキングで常に上位を占める「ランキング常連校」と紹介されています。また、実際の進学先に基づいた「大学別実進学率ランキング」でも、上智大学で第8位、青山学院大学で第10位となり、本校のグローバル教育の成果が示されています。>

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★富士見丘は、気品のある学校です。おそらく10年前ならこのような記事は載せなかったと思います。合格実績は生徒1人ひとりの問題で、それを学校の手柄のように宣伝するのは違和感があるという格式の高い同校はそう判断したものです。そこが塾業界からは近づき難く見られていたという状況があったと思います。

★ところが、今はそのような見方は塾業界にはまったくありません。このような見事な合格実績は事実ですし、なんといっても、卒業生全員で協働的な学びと個人の学びを一体化せてきた生徒たちの努力の賜物だということが学校もわかっているし、何より生徒自身が自らをそしてそういう自分たちが育った母校を誇らしく思っています。

★その一つの証であるなら、このような記事は学校の手柄ではなく、生徒とそして教師と共に創り上げてきた学びの結果の1つとしてたたえ合ってよいのだと学校当局も判断したのでしょう。

★それに最近の同校広報部隊は、したたかでもあります。この記事のレバレッジポイント算出方程式の要素の1つに中学時の偏差値があるわけです。この偏差値が伸びていくとレバレッジ1位はゆらぎます。それはしかたがりません。

★生徒数が倍になり、今のままと同じ実績だと安泰ですが。定員というのは固定したままです。人気と共にどんどん中学入試時点で偏差値も上がります。

★ですから、このような記事を公開するタイミングはまさに「いまここで」なのです。

★それに、人気がでて、今以上に大学合格実績がでてしまえば、このような情報誌の記事を気にしなくてよいわけです。ということはやはり思い切って今公開しようという判断が下されたのでしょう。

★気品と現実のギャップをしたたかに埋める大胆かつ細心の注意を払った広報戦略。さすが、教育理念「忠恕」とイギリス的戦略文化の融合が浸透しています。

★いずれにしてもハイパフォーマンスの強烈なグローバル教育のクオリティを年々あげている先生方です。その心の勢いは感動的です。

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2024年4月 6日 (土)

聖学院の生徒の精神も知性も成長する理由 実質9つの思考力入試に取り組む意義

★聖学院の入試と言えば「3つの思考力入試」が超有名です。後にも先にもこのような思考力入試を行っているところはそうないのですが、実は他の入試問題、すなわち国語・算数・社会・理科・英語特別・オンリーワン表現力なども思考力入試になっているのです。

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★4科目の入試は、思考力入試と違い、対話やディスカッションなど協働作業はありません。しかし知識・理解のみならず、論理的思考力を自分の考えや感じたことを表現するところまで活用する問いが出題されているのです。

★しかも入試問題の構造が、すでにその構造の中で生徒が思考力を駆使していく創意工夫がなされていて、客観的な認知能力だけででゃなく、非認知能力も活用するような問いが作成されています。

★上記の思考力の入試問題の領域とは、たしかにクリティカル・クリエイティブシンキングの量や幅や質は違いますが、その要素はきちんと入っています。

★したがって、聖学院の実質的9つの思考力入試に立ち臨む学びの準備を行ってきた生徒は、すでに精神も知性も伸びるスタート地点に立つことになります。「知識・理解」「適用・論理」「批判・創造」「アート的感覚」「直観的感覚」「他者への気遣い」「自由な発想力」など多様な潜在的能力を試すことができる入試問題は追随を許さないでしょう。

★男子校なので、女子生徒が入試の準備の学びのための思考力セミナーに参加できないのが残念です。思考力セミナーは、本当に潜在的能力の開花開発セミナーです。

★記念祭などで、男女問わず体験できるコーナーがあれば中学受験勉強を苦しい辛いものだと思っている生徒の救いになるでしょう。

★この時期に、広報部長の早川先生に、思考力入試以外の入試についても語っていただきたいとお願いしたところ、2つ返事で了解していただきました。この時期に話していただくことによって、中学受験版強をネガティブに捉えている生徒は解放されるでしょう。不安に思っている生徒は希望を見出すでしょう。

★詳しくは、次の動画をご覧ください。→「GLICC Weekly EDU 第168回「聖学院の入試問題の重要ポイント 一般入試×新タイプ入試」」

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不易流行の目に見える循環は整理できたが、目に見えない視点システムはこれから

★私立学校の建学の精神は、不易流行の「不易」の部分に当たりますが、それは外から見てのことで、実際には「流行」に染みわたっています。そこはどんな循環になっているのか、私学の先生方との対話や研修を通してみえてきたことは、こんな感じです。

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★不易のコアともいうべき建学の精神は言葉で表現されていますが、その意味や背景には歴史の重みがあります。しかも、その歴史の重みは過去のものではなく、生徒がいまここで自ら未来に向けての自己の存在価値と社会との関係性を映し出すビジョンです。昔からこのビジョンを同窓生がその都度映し出してきたのです。

★その関係を映し出すには、モチベーションが必要です。そしてそのモチベーションを生み出している潜在的可能性を実現へと導く意志は、「言語精神」「数理精神」「芸術精神」の融合体が引き出します。そうしてようやく、教育の「流行」の部分の「スキル」をトレーニングすることによって、効果的なプロダクトが生まれてきます。すてきな人材が生まれてきます。

★モチベーションのターゲットは生徒1人ひとり違います。また「スキル」は時代によってその最先端のツールが違います。よって、不易流行自体成長するのです。

★でも、建学の精神はコアとして輝き続けています。

★それは子供が成長しても一生その子はその子であるとアイデンティティを認定できるのと同じなのです。

★ところが、そのモチベーションが、外発的なものばかりだったり、最先端のツールを活用しなかったりすると、不易流行の成長は止まります。

★また、ツールをどんなんなに最先端の物を使おうとも、「言語精神」「数理精神」「芸術精神」の循環関係態がないと、不易流行は循環しないので、その成長はやはりとまります。

★学校は、生徒1人ひとりの存在価値を見失い、学校にとっての利益だけに目が行くようになります。しかし、その利益は生徒1人ひとりの存在価値を支えるものだという幻想を生みます。

★この幻想が建学の精神とすり替えられる可能性があります。

★言語も数理も芸術も「精神とスキル(非認知能力と認知能力に対応するかもしれない)」の一体化が重要なのですが、「スキル」のみに目が行くと、世界中の人々と心を分かち合うことができません。スキルを持っている者同士でしか語り合えなくなるからです。デカルトではないですが、目に見えるものは目に見えないエーテルのようなものでつながっているかのようなのです。

★私たちが共感する時、スキル同士で共感するのであれば、スキルを持っていない人とは共感できないことになって、そこに分断や疎外感を生み出すようになるのです。超絶技巧のピアニストの音楽に共感できるのは、そのピアニストと同じスキルを有しているからではありません。芸術精神を介して共感するというのは経験的に了解できるのではないでしょうか。

★とはいえ、このような図を正当化するエビデンスはまったくないのです。妄想に過ぎないのですが、対話を続け、共有しながら、ブラッシュアップしていくことで正解が見えていくのではなく、不易流行のシステム自体が成長していくのです。

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2024年4月 5日 (金)

ルビンの壺としての内発的モティベーションと外発的モチベーション 学問知を実践知に適用する時代

★学校に限らず、生涯通じていろいろな集団の中で大事にされているものは、知的好奇心、開放的精神、問い生成精神、GRITの融合体が内燃することです。内燃というわけですから、外から圧量をかけられたり、ニンジンをぶらさげられて動くのはどうよというのが最近の風潮です。たしかに、外発的モチベーションは持続しないですが、たいていの環境はカンフル剤さながらの外からの目に見える刺激です。

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★しかしながら、内発的モチベーションばかりに目を向けると、少しオカルト的な雰囲気が漂い、間違った方向にいくこともあるのです。そこはバランス感覚とか平衡感覚なのですが、そういうと妥協だとか、曖昧だとか声の大きい人が圧力をかけてきます。

★でも、多くの社会課題は、白黒はっきりしないものが多いし、最終的には第三審級に判断を委ねるということが実際のところです。

★最終的にはこのような手段は重要ですが、私たちはもう少し、その手前でがんばりたいものです。

★21世紀型教育というのは、20世紀の哲学者や文化人類学者、文学者、芸術家などが20世紀型社会のシステムの弊害を認識し、批判する切り口を教育にいかに実装するかという動きでした。

★しかし、それがいつの間にか、外発的モチベーションより内発的モチベーションが大事だと、20世紀型社会と同じ発想になってしまいました。もちろん、内容は違うのです。20世紀型社会は、内面など主観でわからないのだから、目に見える道具で外発的モチベーションを生産しようとしてきたわけです。そのもっとも代表的な道具は、「お金」です。

★欲望の資本主義は、無限に「お金」を貪り食い続けたのです。そのような20世紀型社会に加担するような教育から離れようと、内省したのが21世紀型教育だったのですが、外発より内発という「二項対立」の欲望の資本主義のシステムそのものを超えることができないでいます。

★しかし、この「二項対立」のシステム、簡単に言ってしまえば、「勝ち組負け組」の二項対立の枠組はようやくあらゆる領域で批判されるようになりました。

★ところが、教育の領域では、この「二項対立」はわかりやすいので、新しい目に見える環境設定は21世紀型教育風なのですが、それは「二項対立」を覆い隠す外皮として戦略的に使われているだけという学校もあります。

★ですから、そうならないように、20世紀の哲学者や文化人類学者、心理学者、芸術家が見出してくれた「二項対立」を創造的に破壊するレバレッジポイントを活用する時代がやってきたわけです。

★そのレバレッジポイントの1つが、「ルビンの壺」です。あらゆるものは二項対立ではなく図と地の関係性によって成り立っているという発想。ヴィトゲンシュタインなら「あひるうさぎ」というメタファーを活用したし、エッシャーはトリックアートで表現しています。

★ということで、上記の図を書いてみました。説明はまた。

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2024年4月 4日 (木)

聖パウロ学園 なぜ人気があるのか 「経営と教育」について教員研修

★先週の理事会、評議員会に続き、昨日教員研修を行いに聖パウロ学園に行きました。先週はまだ開花していなかった桜も、雨の中静かに咲き始めていました。入学式まで咲き続いてくれればよいなと思いつつ、研修に向かいました。

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★4月1日からパウロでは様々な研修が行われているようですが、私のはその中の1つで、90分の機会をいただきました。理事長、外部講師、校長と続いて私なのですが、何を教師のみんなとワークショップをやろうかと。建学の精神や理念的なことは理事長が語るし、探究の方法論は外部講師が行うし、今年度の教育事業の目標やビジョン、および包括的な教育課程などの戦略については小島校長が語るでしょう。

★なぜか副理事長の私です。初任者の先生もいるので、もう一度「経営と教育と入試問題」の3つの基本的なものの見方・考え方を確認するピアインストラクション型のアクティビティとレクチャー(ほとんど先生方が対話)にしました。理念は理事長、教育プランニングは校長はやっているので、私は東京の私立学校との関係性の中でのパウロの 現実的な経営的位置づけや教育的位置づけについて。要するに現実問題の話をどうするかという対話です。

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★東京都生活文化スポーツ局の作成した東京の私学の収支のざっくりとした内訳のグラフをもとに経営の対話をしました。東京の私学の平均的な収支をみて、何を考えるのか感じたのか対話していくと、生徒募集がいかに重要か、助成金がいかに重要か改めて分かったというのような模範解答がでてくるのですが、私は、パウロの理事会は、大学もないし、修道会も経済的支援はないよと指摘すると、みな給与はどうやって上昇するのかということに気づいたようです。

★こんなに人気がある聖パウロ学園でも、先生方は若いし、結婚している場合は、教師同士(どちらかはほかの学校の場合が多いです)のケースが多いので、そういう先生方は定着しますが、未婚の若者は30を超えるとライフシフトを考え始めます。これは時代の流れからいって当然です。

★しかし、一方で無形資産を大切にする若者もいます。というか残る先生方はみなこの無形資産に魅力を感じています。それがにじみ出たいるから人気が持続可能になります。その心の勢いは確かに魅力です。

★そうはいっても、給料は大事です。理事会は完全ボランティアですから、私財を投じるメンバーはいないのです。ということは、経営はみんなでやっていくしかないのです。パウロの経営こそある意味新しいアントレプレナー型私立学校として動けます。

★まあ、そこまで話を大きくしませんでしたが、給料を上げるにはどうするのかアイデアについて対話しました。もう答えは2つしかないのですが、そのためには、教育の質をとなるのは必然です。

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★そこで、上記のような多くの私立学校が実施している教師の実践と生徒の学びの共感図を描き、どこの学校もこれらは行っている。だから、この中で、特に突出した何かがパウロにはあるから人気があるのだろうと。では、それは何か?ピアインストラクション型対話をしていきました。大いに盛り上がったので、やはり魅力に気づいています。

★すばらしいと笑顔になったところで、それを続けて自分たちの給料は上げられるのか?と問うと。たしかにと。そこで、では新しい何かをあるいはもっと質を上げるには?という対話があふれ出たわけです。

★答えは出しませんでした。それはこの1年、先生方が折に触れ考えていくことだし、そのマネジメントをするのは校長・副校長・教頭・主幹・部長・主任です。私は、給料が企業のように上がらない原因を共有し、その原因を解消する動きをしてもよいのだと。ただし、長時間生徒を残してというのはやめようよというのは条件です。

★そのあと、250字の小論文、言語は日本語と英語の問題、キリスト教史の記述問題(東大)、数学(東大文系)の問題をグループに分けて、この問題を通して生徒は何を学ぶのか、さらにはどんな視点を身に着けるのかについて対話。

★それぞれ自分だったらこうするという対話になっていました。それぞれの経験値が語られ、解き方ではなく、その前提になる学び方の話が多かったですね。この3つの領域をつなぐものは何か?メタクエスチョンやコンセプトレンズは何か?それは主幹の松本先生によれば、暗黙知として先生方には身についているけれど、それを可視化して共有するのはこれから大事だと。

★エンカレッジの阿部先生は、自分の経験をいったんカッコにいれてみるとよいですよねと、あとで振り返ってくれました。さすがフッサールやメルロポンティの作法を生徒指導などに生かしている先生です。

★この3つの領域をつなげられれば、アントレとしてはうまくいくでしょう。そこまでいかなくても、この心の勢いで当面は学校はうまくいくでしょう。そして3年後、教師一人ひとりと組織としての成長が指数関数的になったとき、この3つをすべての先生方がつないでいることでしょう。

★ウグイスの声がこだまする桜並木を後に帰途につきました。頼もしい次世代の教師数人と話せたし、教育は大丈夫。自分の役目は、資金調達のみだなと途方に暮れながら(汗)。

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水都国際 新校長に太田晃介先生就任 巨大なPBLを準備から始めて実現!

大阪府立水都国際中学校・高等学校の新校長に太田晃介先生が就任しました。太田先生とは2014年ころに出会いました。PBLと思考コード、Growth Mindset、GRITなどについて語り合いながら問い合いながら研修を共に企画運営し学びました。2017年の夏だったか、太田先生は全くあたらしい公設民営でIB校である中高一貫校の立ち上げ準備室に招かれているという話を聞きました。多くの方々に相談した中に私もいたのは嬉しかったですね。あのバトミントン大会の会場のロビーで話し合ったのを鮮明に記憶しています。もちろん私は応援するよと。

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★準備室に入り、学校説明会も開始されたとき、私も参加させていただきました。レゴを活用しながら、受験生の発想の自由を開発している説明会。会場が一転して思考力セミナー会場になったのは感動しました。

★そんなアクロバティックな自由人ですが、公設民営です。公のルールがあります。今ではすっかりネクタイ姿が決まっていますが、かつてはGAFAMのコスチュームのりでしたから、多少は心配しましたが、そこは臨機応変に柔軟に対応されていました。

★立ち上げがたいへんなのは、一般の私学を立ち上げるのとは格段に違いました。制度的なものもそうですが、IBを日本の教育に接続するカリキュラム・マネジメントではなくカリキュラム・プロデュースをしなければならなかったからです。大胆に細心の注意をはらってGRIT精神でやり切りました。さすがです。

★バトミントンも続け心身のセルフマネジメントもしていました。それと、IBは日本語版ではないので、英語もマスターしています。今回の校長挨拶は英語版もあるのは、太田先生自身によるものでしょう。当時は同校の会議は英語が公用語になっていましたから。外国人スタッフの方が多かったのでしょう。

★大阪という文化は新しいだけではすぐには乗らないので、相当苦労したと思います。

★太田先生自身、IBティーチャーです。生物とTOKのファシリテーターです。おそらく今後IB機構でも活躍していくでしょう。何せ英語が堪能ですから!

★新しい年度が始まる時に、同校では辞令式があり、そのあと研修になったのでしょう。さっそくビジョンと目標共有のため、また先生方のクリエイティビティーの化学反応を生み出すためにレゴを活用したようです。かつてGrowth Mindset Schoolを創ろうと盛り上がっていたのを思い出します。そして、いまここに、それはあります。同校のサイトにその様子がレポートされています。

★私が開智国際大学の客員教授をやっていたとき、IBについて未来の教師である学生と学ぶ講座をもっていたので、IBの新しいプログラムについて、太田先生にご教示ただいたのも記憶に新しいです。

★それに私が聖パウロ学園の校長をやって2年目、おそらくパウロの組織の成長のための内生的技術進化の準備ができたので、校長はやめると心に決めていた時、だったらとわざわざ寄っていただきました。本間さんの校長の学園みておかないとと。広大な森や馬をお見せし、プレゼンしている授業も見てもらい、フィードバックもしてもらいました。そして、グローバル教育部のミーティングにも参加してもらい、やはりアドバイスももらいました。そのとき参加していたパウロのメンバーには、私が辞める時、校長、教頭、主幹になってくれたメンバーがいました。

★「心の勢い」は共鳴し合います。結局は、見学ではなく、ファシリテーターとして活躍していただいたのです。

★また、私がナビゲーターででているYotube番組❝GLICC Weekly EDU❞にも度々ご登壇いただきました。

★このように大変影響を受けている私です。太田先生が準備段階からアクロバティックにかつ緻密に創り上げた偉業=a giant PBLが認められ校長に就任されたことは実に幸せです。

★同時に、太田先生自身、the giant PBLではなくa giant PBLと言っています。、まだ❝a❞なのです。第2弾、第3弾の❝giant PBLs❞があるということなのですね。時代を動かす人的資本力のロールモデル。楽しみです!

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2024年4月 2日 (火)

22世紀型教育の準備に向けた「深い学び」のコンセプトの整理

★昨日一般財団法人日本私学教育研究所の所長平方先生と同研究所の伊東さんと今年度の日私教研が行う全国の初任者研修と教育課程部会の方向性の対話をしました。日私教研の場合は、基本は各地方の協会の先生方が創るのを尊重するわけですが、大枠は共有しておく必要があります。東京私学教育研究所の私も、なぜか東京エリアの初任者研修の研究所側の委員長(この研修を企画運営する委員会の委員長は更科先生です)なので、オフィスが近いので呼ばれたのです。

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★コンセプトとしては、「22世紀型教育の準備に向けた深い学び」です。これは日私教研ではすでに共有されていて、教育課程部会のブローシャ―にも「深い学び~個別最適化と協働的な学びの一体化」とあります。

★すでに上記の21世紀型教育にあるように、いろいろな言葉が使われてこのテーマについては語られています。しかし、表現が違っても大体同じような意味合いで話されているにもかかわらず、別々のオリジナルの考え方として語られる場合もあります。

★強引ですが、図のように整理してみました。これによって、どのような言葉を使っても、実は共通のものの見方や感じ方をしているのが確認できます。そのうえで、たんなんる二項対立なのか、共通点があるのか、両極を往還しているのかなど、それぞれの語り方で価値観やパラダイムに違いが出てきます。

★20世紀型教育は、A領域が中心で、B領域はメインではなかったので、両極が語られるのでは、確かに21世紀型教育を実践しているわけです。ですが、この中で、君のはなんちゃって21世紀型教育で、本物は私のだと語る方もいるのですが、そんな差別化をするより、きちんと整理するだけでよいのです。

★そして、どのようなタイプなのかわかれば、それはそういう考え方なのです。

★ただし、時代は、二項対立や共通点があるだけではなく、循環することが要請されています。そうでないと、無用な競争や議論が起きて、非生産的なのです。

★循環し始めると、文理融合になるし、MIがようやく学びの中に根づき始めます(今は理論としてはあります)。

★さて、問題はこの循環をどうするのかです。知識と発想をどの様に結びつけるかというのは、現場では今もモヤモヤしているはずです。深い学びはこの循環を生徒自身が自己組織化できることだと今は思っています。

★このA領域とB領域の循環を創り出す自己組織化はいかにしたら可能か?

★これに対するチャレンジは私たちは多くの学校の仲間と始めています。2024年度は、この奇跡を先生方と共に歩んでいくことになります。

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2024年4月 1日 (月)

大妻中野 諸橋隆男先生、新校長就任 世界を創る市民が生まれる教育加速

★新年度が始まります。大妻中野の諸橋隆男先生が、同校の新校長に就任しました。諸橋先生の燃える心は、同校サイトに詩として結実しています。ぜひご覧ください。感動!的です。

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★諸橋先生との出会いは、グローバル教育、高度思考力教育、文理融合教育、アート教育、ICT教育など、時代の要請の先を行く教育開発との出会いでもありました。

★今後は、これらの教育が融合し化学反応を引き起こす時代をけん引する最高の校長のロールモデルとして社会的インパクトを生み出すでしょう。

★実に楽しみです!!

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