« 2024年東京大学と社会(08)GLICC代表鈴木裕之さんのシンプルな本音・本質の語りで思考の酸欠状態を回復 | トップページ | 2025年変化する中学入試(34)工学院の2024年度の大学合格実績 医学部、海外大学の道開かれる 文理融合型進路の新しいポジショニング »

2024年3月15日 (金)

2025年変化する中学入試(33)国士舘が人気の理由 時代が追いついたから

★今年の国士舘中学校の入試は、総出願数500名を超え、前年対比約390%。中学受験業界に激震が走りました。その人気の理由は、「楽しい学校だから」だと受験生は回答するのですと神山教頭先生は語ります。入試広報の河野先生は、毎回説明会を行う度に、ふだんの授業を見学してもらいます。国語、数学、理科、社会、英語、体育、武道、書道など全部見せますとさらりと語るのです。

Img_6297

(左から河野先生、神山教頭)

★何か新しいことを打ち出したりはしていないのです。ただ今まで実践してきたことを丁寧に受験生と保護者と共有してきただけなのだと。しかし、説明会の度に、科目を変えてすべて見学できるというのは、それだけでワクワクしますし、だいたい普通は相当手間がかかるので、そんな柔軟なことはやらないでしょう。

★その常識を覆すということは、新しいことをやっているということを意味します。でも国士舘の先生方にとっては、当たり前のことのようです。それに授業も教師も生徒も問い合う弾けた授業だというのです。道徳の授業もグループワークで、一つのテーマをみんなで考えていきますよとさらりと。

★それを新しいと言わずして何と言うのかと思ったが、松陰神社と隣接していて、創設者柴田徳次郎が吉田松陰の生き様に倣って創った学校だというのをすぐに思い出しました。幕末の松下村塾では、若者同士、世界の中で日本はどう進むのか、自分たちはどう生きるかという命をかけた探究が行われていたのです。そのときのあふれる気魄(きはく)を想像してみれば、そもそもデューイ以前からPBLのような学びは行われていたのでした。それに階層構造をぶっ壊す気魄で生き抜いた吉田松陰たちの弟子たちを想えば、フラットでフェアでフラタニティを大事にした若者のソールが脈々と国士舘に受け継がれてきたと想像するのはそう難しいことではありません。

★書道と武道を大切にしている国士舘。あのジョブズは、書道を好んだし、禅という道を歩みました。河野先生は、剣道と禅の道は相通じるものがあると語ります。国士舘とジョブズは共振する気魄があるのでしょう。時代を変える気魄、時代を創る気魄、自分を変える気魄。

★中学受験生は、純粋がゆえに、その気魄を感じワクワクするのでしょう。そもそも鬼滅の刃も大好きですからね

★「体験」重視の教育観。体験を通して自分に向き合い、自分の思い込みを払拭するたびに、新しい自分が生まれてくる。書に向かい合う自分の気持ちを静かに響かせる、竹刀をもって力任せにふれば見失う大胆だけれど細心の注意をはらって見えてくるもの、そんな道をいっしょに歩いてくれる教師。

★それをファシリテーターというもよし、コーチというもよし、メンターというもよし。しかし、何より松陰とその弟子たちの誠実で気魄のある見識に満ちた関係。その関係を保つために勤労勤勉に日々を送る。それこそが「楽しい」生きる価値だと、中学受験生が直観するのでしょう。

★明治以来、私学人たちは、日本の古典と儒学とキリスト教、欧米の文化学問を融合してきました。欧米リベラルアーツを飲み込む地球全体のリベラルアーツを夢見ていたのかもしれません。もちろん、二つの戦争では、その読み違いをしました。地球全体の覇権を握る小さな日本を目指してしまったわけです。

★戦後、その誤りに世界から気づかされ、その呪縛から解放されますが、経済で欧米に追い付け追い越せという戦略に変わっただけで、地球全体の見識を創り出したわけではありません。

★ところが、今の国士舘の学びは、ここに対する挑戦をしていたのです。「道」は険しいかもしれませんが、人が敷いた道で競争にあくせくするのではないのです。道は自分でのみならず、友と共に創っていくのです。あるときは教師と共に歩きます。そんな冒険の旅が学園生活の毎日なわけです。たしかに「楽しい」に違いありません。

★国士舘の先生方が個別最適化した学びを行っている実践は、書き尽くせないほど集積しています。先生方にとっては当たり前の教育ですが、中学受験業界から見れば新しいものばかりです。今年一年、折に触れメモしていきたいと思います。そのためには、実際に学校に行ってみなければなりません。4月に立ち寄らせて頂けるということです。また報告します。お楽しみに。

|

« 2024年東京大学と社会(08)GLICC代表鈴木裕之さんのシンプルな本音・本質の語りで思考の酸欠状態を回復 | トップページ | 2025年変化する中学入試(34)工学院の2024年度の大学合格実績 医学部、海外大学の道開かれる 文理融合型進路の新しいポジショニング »

創造的才能」カテゴリの記事

中学入試」カテゴリの記事

創造的対話」カテゴリの記事