細田眞由美さんの書「世界基準の英語力」 日本の政治経済社会の難局を乗り越える実践の希望書
★首都圏模試センターのサイトで、「世界基準の英語力: 全国トップクラスのさいたま市の教育は何が違うのか 時事通信社 – 2024/2/20」の紹介記事が掲載されました。これは何かメッセージだなと思い、kindleをポチりました。というのも、首都圏模試は、私立中学入試と公立中高一貫の適性検査両方の模擬試験を実施している会社であり、教育情報センターでもあるので、教育を見る目が鳥の目だし、虫の目だし、魚の目だし、コウモリの目だし、なにより心の目でもあります。そういう目を持った編集者の層が厚いから、これは何かあるなと。
★そして驚きました。前さいたま市の教育長である細田眞由美さんのワードが、いわゆる日本の行政の教育の専門家とは破格に違うのです。英語が多用されているのです。新鮮というか、私自身カタカナ語が多いと今でも揶揄されていますが、行政の方がカタカナを超えて英語表記を活用して執筆しているのです。3Gというためには、その方がいいし、わかりやすいのです。なぜわかりやすいのか。なぜ日本語だけだとわかりにくいのか。それは英語表記を使えばわかりやすいというのではないのです。純日本人の私が翻訳することができないからカタカナを使っているのとは違うのです。
★細田さんは、ご自身がアメリカに留学して文化としての英語のレンズを自然体で活用しているからです。このレンズを自然体で活用しているというのは、文法が日本語と違うからというより、パラフレースの使い方が巧みだということです。構造的な文章の組み立てがうまいなあということです。パラフレーズとは言い換えということなのでしょうが、日本語の言い換えは、どちらかというとレトリックです。細田さんの書かれれている文章は、具体的な事例やデータが豊富ですが、それを抽象的にパラフレーズしているのです。
★具体と抽象の関係がきちんとあるので、論旨が読み取りやすいだけではなく、IBの学びで必要なコンセプトレンズのレベルの抽象化がなされているということです。ビジョンが明快、簡明で感銘を生み出します。さすがは、「世界基準の英語」です。同書の中で、生徒がエマニュエル駐日大使と対話するシーンで、大使が、生徒に「洞察力」があるねとフィードバックするところがあります。
★これが「世界基準の英語」の面目躍如のところだと思います。一般に「世界基準の英語」というと英検で高いレベルを狙う学びだと思われるでしょう。いやもちろん英語資格をとるのは当然なのですが、4技能を学ぶだけではなく、4技能は「洞察力」をアウトプットするためのツールなのです。生徒たちが、自分が英語を学ぶ多様な経験をするさいたまメソッドがあるのですが、その肝は、学んだ経験を次々とツールに変容させて、洞察力を発揮するハイヤーオーダーシンキングを生み出すわけです。
★このようなコンセプトをケースメソッドとエビデンスで論拠づけ、実績をあげる説得力ある根拠を生み出しています。
★さいたま市は幸せです。公立の小中学生10万5000人が、このようなさいたまメソッドというか組織的な仕組みを活用できるのです。機会均等というのが従来の痒いところに手が届かない形式的な公平主義の政策でしたが、機会が用意されるだけではなく、生徒の好奇心、生徒も教師もオープンマインデッドネスになり、互いに探究の問いを生み出すようになるカリキュラムまで埋め込まれているのです。実績がでるはずです。
★しかも、細田さんは、このロールモデルをどこの自治体でも活用できるようにしているわけです。とはいえ、風通しの良いフラットでクリエイティブな組織マネジメントのやり方が前提となるでしょうが。
★いやそれにしても、何かといえば、フィンランドだシンガポールだと隣の芝生はなんとかという無責任な教育評論家が多い日本です。細田さんは違います。フィンランドやシンガポールなどは、総人口が550万人前後です。
★少子化と言えども、日本の小中高の児童生徒の人数は、ざっくりですが1300万人いるのです。もし細田さんのさいたまメソッドを各自治体が活用したら、1300万人が中3までに英検3級、高3までに英検2級はみないくでしょう。世界基準の英語とは世界基準の思考力、意志決定力、行動力、倫理観にまで発展するでしょう。
★そうなるために、大事なことは、インプット→アウトプット→もっとインプットという循環だといいます。そのとおりですね。このプロセスは論理的思考や批判的・創造的思考力を養うだけではなく、生き抜く力である「洞察力」を生徒が体得できるのです。高度人材を海外から受け入れるのは大いに結構ですが、日本の生徒自身がそうなれる可能性を細田さんは実践したのです。
★このような破格な教育力は公立学校だけではなく私立学校にも善き影響を及ぼすでしょう。公立学校としてのPublic Schoolと私立学校としてのPublic Schoolということになって、2つのPSの相乗効果が生まれることになると思います。
★もちろん、細田さんは、不登校問題などケアフルなシステムにも挑戦しています。そのうえで、「世界標準の英語」なのです。実践例も掲載されていますが、その授業はすでにInquiry based Learningになっています。同時にICT based Learningにもなっていて、ここでも2つのIBLが経験済みなわけです。
★このような複眼思考は、細田さんの能力と世界経験のなせる業/技です。ようやく教育界にも緒方さんのような女性が出現したと。戦後の希望の光は、今直面している新たな複合的クライシスに対しても消えることはなかったのです。
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