« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »

2024年2月

2024年2月29日 (木)

22世紀型教育準備へ(23)東大の国語入試 小川さやかさんの文章から出題 時代を象徴?

★ここのところ、森千香子さんや田内学さんのラインでWMW(World Making Wisdom)の射程を考えていたところ、友人から今年の東大の現代文の一つが小川さやかさん(文化人類学者。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)の文章が扱われていたよと聞き及びました。この話ももう一つの資本主義の話で、やはり時代のラインはこれなのかと。

81f2q9qs3l_sy466_

★佐久間寛編『負債と信用の人類学:人間経済の現在』(以文社 2023年)に収められている『時間を与えあう―商業経済と人間経済の連環を築く「負債」をめぐって』から出題されています。

★市場における商品交換の話ですが、私たちの社会のように交換価値だけではなく、使用価値や贈与という行為価値がみな融合されている話です。ミヒャエル・エンデの「モモ」にでてくる時間泥棒は、現代社会の等価交換のシステムをクレジットシステムにして時間という余白をどんどん枯渇させていくわけです。それを取り戻すモモが物語に出てくるわけですが、そのモモの世界が、文化人類学的には、フィクションではなくて、タンザニアにはリアルにあるわけです。

★システム化されていないだけだととることもできるし、実は人間の生活としてはとても合理的だとみなすこともできます。等価交換するけれど、商品交換の時間えt気ずれは贈与としてみなされ、その行為が互いの信頼の気持ちや感情=使用価値を生み出しているなんてすばらしい。いやめんどうくさい。さて、どちらの価値意識を選択するのか?

★どちらの認識をするかは、経済社会に対するそんなような価値観の違いですが、現在は、どうやら小川さやかさんのような眼差しが注目されているような気がします。

★森さんにしても田内さんにしても小川さんにしても、しっかり現地で参与的観察者として文化人類学的社会学者だったり、文化人類学的金融教育家だったり、文化人類学的な文化人類学者だったり。。。

★東大には斉藤幸平さんもいて、人新生の「資本論」などという少し角度の違うラインもあります。

★ともあれ、欲望の資本主義(NHK的用語)の価値観は着実に変わってきているということでしょうか。大学受験勉強で新しい価値創出を学ぶというのも悪くないですね。

|

22世紀型教育準備へ(22)田内学さんに学ぶ~私学としての金融教育の可能性 教科「公共」的視点で

先日26日、東京私学教育研究所は<プロジェクト部会「金融教育研究会」 Well-beingを目指す金融教育の提言 -教科の枠を超える取組の可能性->が行われました。私は出られなかったのですが、後から仲間から話を聴くと、たいへん新しい視角から金融教育が議論されたというのです。「所報」を編集するので、動画をみてセルフリフレクションしていると、田内学さん(社会的金融教育家)の話は、「公共」という教科の中で教科横断的なというかいやもっと学際的な授業が展開でき、やはり「探究」が教科授業に回収される兆しがくっきりと見えました。

710y1nynvl_sy466_

★田内学さんのプロフィールは、「1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。著書に高校社会科教科書『公共』(共著、教育図書)、『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)、『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う。」と研修の実施案にはあります。

★私も「きみのお金は誰のため」を少し読んでみました。すると、驚いたことに、金融教育という視覚から、政治経済社会のありかた、欲望の資本主義から社会貢献循環が生まれる資本主義的な社会のことについて、難しい言葉を使わずに、日常生活世界の用語で、広く深く語られています。

★当然今の子どもたちが22世紀社会を創る未来のヒントも満載でした。なるほど、投資家でもなく金融教育家でもなく、「社会的金融教育家」なのですね。

★深い社会に関する包括的な理論を背景に自分自身の言葉で語っているのが共感もてました。

★私学の建学の精神と社会貢献的資本主義のような着想は交差するので、多くの私学が田内学さんを講師として招くことになるでしょう。

|

2024年2月28日 (水)

22世紀型教育準備へ(21)私学のWMWがジェントリフィケーション世界をなんとかする

★昨夜、池袋のジュンク堂書店4回のBook Cafeで、トークイベントがありました。満席でした。「ブルックリン化する世界~ジェントリフィケーションを問いなおす」の著者森千賀子さん(同志社大学教授)と安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)との対話でした。1時間30分くらい対話があったあと、質疑応答があるかなと思いましたが、すぐに著作のサイン会になってしまいました。主催者側が何かを察知して予定を変更したのだと思います。私は視力の問題でkindleで本を購入しているので、サイン会は出ずに帰途の道につきましたが、モヤモヤリフレクソロジーは続いています。

91nwmansvml_sy522_

★というのも、「ジェントリフィケーション」というコンセプトレンズは、見えすぎるのです。抑圧と被抑圧を生み出す分断とそれが生み出す新たな共生的絆。この「ジェントリフィケーション」というレンズは、美しすぎるベールで誰もが気づかない抑圧のシステムを築いているということと、被抑圧側の多様な人々が団結するという新たな共生が生まれるのですが、その共生が、ニュースを見ている側に、分断を見えなくするという美しいショートカット世界をメディアが広げるというダイナミズムを作ってしまうということを映し出してしまいます。

★到る所で、抑圧と被抑圧の互いが生きる力関係を持続可能にしているということが見え過ぎるのです。

★これはもう、一気呵成に阿頼耶識の平原に行き着いてしまう感じです。

★社会課題を解決するのではなく、その過程で、新たな対話のコミュニティが生まれては消え、再び生まれては消えていく持続可能性。世界の美しい花は、平和とかではなく、抑圧と被抑圧がぶつかり合って生み出すそれぞれの共生の花だなのだと。

★社会学もフォトジャーナリスムもグローバルな目が見えなくしているローカルのいまここでの事実を汲み上げることはできます。そこで起こっているダイナミズムを紹介することはできます。

★それはものすごく大事なことだけれど、そのような共生の花ではなく、平和が欲しいと医療従事者をはじめとするNGOの人々が、ケアフルなボランティアの行動をしていますが、それを事実としてしかとらえられないその境界線を突破できないものかと。ふとモヤモヤリフレクソロジー状態になっているわけです。

★私たちは、おそらく誰しもが無意識のうちでしょうが、阿頼耶識の平原に立ち臨んでいますから、どの領域にいてもジェントリフィケーションの世界に所属しています。

★しかし、そのレンズを私立中高のグローバル教育では生徒たちが自ら持ち始めています。どのようなキャリアを選択するかは多様ですが、それぞれの役割において、このジェントリフィケーションの世界をなんとかしようとすでに活躍しています。

★中学受験市場と中学入試市場という微差異を気遣うのは、この領域においてもジェントリフィケーションが起きているのを見落とさないためでもあります。塾歴社会などという言葉は、まさにジェントリフィケーション社会と同義でしょう。ですから、中学受験市場の中でそれについてリフレクションし問い返し、何とかしようという個別最適化塾がまさにコミュニティを生み出しつつあります。

★中学入試市場も、私立学校自体がそのジェントリフィケーションを生み出さないようにするにはいかにしたら可能か?日々リフレクソロジーをしています。ジェントリフィケーションの解消は、グローバルでもローカルでもものすごく複雑です。言葉の多義性がなぜか巧みに組み合わされていて、核になる信念が見えるようで見えないのです。

★今回のトークイベントで学問やジャーナリズムの重要性と限界を共有しました。私たちは学問を生きるのでもジャーナリスムを生きるのでもないと。つまり職業を生きるのではないのです。存在の叡智という存在そのものが生きるのです。その存在そのものの叡智=WMW(World Makig Wisdom)を私学の教師と生徒とエンパワーする学びを着々と進めていくしかないかなあと。

|

2024年2月27日 (火)

22世紀型教育準備へ(20 )2030年までのスモール・パラダイム転換

★昨日、湘南白百合の教頭水尾先生と対話をしました。結構じっくり。今の中学受験市場及び中学入試市場の実用的かつ本質的的な動きを突きとめようというグルグル旋回する対話でした。そして、その本質は生徒の存在そのものであることに変わりはなく、その存在の幸せの持続可能性を連綿と未来から今に生み出していくのはいかにして可能か。なかなかの哲学シンキングでした。そして、私のアンコンシャスバイアスを崩すことができました。水尾先生ありがとうございます。

2030_20240227083401

★ここのところ、工学院の田中歩先生や首都圏模試センターの山下社長とか一般財団法人私学教育研究所の伊東氏をはじめ多くの先生方と対話をしてきて、WMWについて、モヤモヤリフレクソロジーをしていたのですが、みなと共感しているようで、私がどこか置いていかれているような気がしていたのです。爺やだからと歳のせいにしていましたが、昨日水尾先生と対話をしていて、自分がまだまだ3Rから3Xの21世紀初頭のパラダイムにいたことを思い知らされました。

★水尾先生との対話で、学びのビッグバーンから始まるというのは、3Rと5Xの融合なのだと。3Xに2Xを新たに足すことによって、そして田中歩先生の哲学シンキングと伊東氏のクロスクエスチョンをその融合を生み出すメタローグにしていくことで、2030年までのWMWとしての教育のビジョンがくっきりと見えたのです。

★もちろん、まだ2050年にどうなるかは、見えません。ここは生成AIとかムーンショット計画とスマート社会のイメージが私の中ではっきりしないといビジョンイメージが降りてはこないでしょう。

★当面は、上記のスモール・パラダイム転換で、いこうかなと。WMWの方向性なので、そうズレはしないだろうと思います。

|

2024年2月26日 (月)

22世紀型教育準備へ(19)WMWが必要なわけ 実用的活用と実際的創発と本質的価値の化学反応

★WMW(World Making Wisdom) が必要な訳は、目の前の複合的クライシスを回避する実用的活用という対処療法だけではどうにもならないからです。ユーザー視点だけでは、複合的クライシスは新手の危機を生み出しますから、プラクティカルで新しいイノベーションを生みだす創発の力がどうしても必要になります。

Wmw_20240226083801

★しかし、そもそも複合的クライシスは少なくとも、地政学リスクや気候変動リスク、ハラスメントリスクなどを生み出す人間のヒエラルキー型組織化にあるわけです。その価値を転換しなくては解決はモグラタタキゲームになるだけです。

★本質的な価値の創造をする必要があります。

★多くのメディアは、どうしても実用的というか功利的な話にフォーカスしがちです。これは大事なのですが、これだけでは困ります。専門誌や専門書は、実質的な技術も生み出しますが、そもそもその必要性の信頼性や正当性、妥当性は誰が判断するのでしょう。暴走もよくある話です。実際に起きていますよね!

★それゆえ本質を創出する必要があります。私立学校は、この3つの実用性、実質性、本質性を大切にしています。そのコンセプトレンズが建学の精神です。

★公立学校も憲法や教育基本法のそれぞれの前文にそのコンセプトレンズが書かれていて、そこを大事にすればできます。

★学校の役割は、私立であろうが公立であろうが、ここにあります。

★ただ、現状では有用性や実用性がどうしても前面に出ていますね。そこで、私立学校は覚悟を決めて、最前線でWMWを生成しようとしているのです。その象徴的な場が中学入試なのですが、そういう見方をメディアはしません。そうしなければ売れないし視聴率あがらないからでしょう。

★それゆえ、そこはスルーして先に進むしかないですね。

|

2024年2月25日 (日)

22世紀型教育準備へ(18)WMWを生成していくシステム 21世紀型教育研究センター

★先日の21世紀型教育機構のカンファレンスの開会あいさつで平方邦行理事長が22世紀型教育の準備というのは、WMW(World Making Wisdom)を生徒の成長の核となるようなシステムを創っていく道のりであると述べました。C1英語とかPBLとかSTEAMとかグローバル教育は、一定水準のレベルまでできあがったので、次は、大学に行って学問を学ぶにしても起業するにしてもNPOで活躍するにしても政治家になるにしても何になるにしても、地球市民として当然のWMWを身につけようと。地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクなどがグローバルクライシスとなっている今、そしてそれはまだまだ続くと予想がされているわけで、それを回避したり解決したりするのは、学者だけではないし、企業人だけでもないし、政府だけでもないし、NPOの方々だけでもないし、医療従事者の方々だけでもなく、私たち一人ひとり地球市民としての叡智と言動が重要なわけです。この叡智や言動は、学問知よりもタフで幅広いダイナミズムを持っています。もちろん専門的深さは学問知に任せる以外にほかはありません。

Gwe_20240225072601

★そして、そのカンファレンスのディスカッションのセクションで、工学院の教務主任田中歩先生は、平方先生の話を受け、もう一度それをやっていくのだとさらりと宣言していました。歩先生は、21世紀型教育研究センターの主席研究員でもあるので、センターでWMWセミナーを21会加盟校の若手教師(SGT)と共に行っていこうとしています。アプリ的なところは一般財団法人日本私学教育研究所の伊東竜さんもサポートしてやっていくということです。

Wmws

★上記の図は、21会の学校の先生方がグローバル教育、PBL、STEAMでやってきたことを、私の独断と偏見で抽象化してみた図です。オレンジの環以外の部分は先生方がすでに行ってきました。ですから、オレンジの環、つまり哲学シンキングとクロスクエスチョンの循環をシステム化することで、このWMW創発の持続可能性が生み出せるという発想です。

★哲学シンキングは、おそらくトウールミンモデルと思考コードの内生的技術のシステム化になると思います。クロスクエスチョンはグッドマンモデルと思考コードの内生的技術のシステムになり、その両システムは当然融合します。極めてシンプルな発想ですが、世界初となるでしょう。しかも、21会の加盟校は、グローバルと言ったとき、欧米とアジアや他の文化も融合した発想を目指しています。このWMWはそんな位置づけになっていけばよいなあと思っています。

★実際にセミナーが始まったら、私も見学に行くので、いずれ報告します。

|

2024年2月24日 (土)

22世紀型教育準備へ(17)工学院の校長中野由章先生のインパクト in 教務運営研究会「講演会・情報交換会」

先日22日、アルカディア市ヶ谷(私学会館)会議室で、<教務運営研究会「講演会・情報交換会」 私学における教科「情報」のあり方と可能性>が開催されました。東京私学教育研究所がサポートする「教務運営研究会」の委員会は、工学院大学附属中学校・高等学校の校長中野由章先生にご登壇を依頼。中野先生は、情報分野でも広く活躍されています。学校のリーダーとしての視点と最先端の情報分野の視点の複眼的視野で「私学に求められる、特色ある、教科『情報』のあり方」についてラディカルな情報を共有して頂きました。中野校長先生は、実に柔らかく自由な発想でかつ緻密なデータに基づいて、深い考え方と一方で実用的で創造的破壊ともいうべきアイデアを語りました。

Photo_20240224121201

★参加された40人の先生方は、中野ワールドにすっかり巻き込まれていきました。DXハイスクールのアプリケーションの具体的かつ戦略的書き方は、手続きが煩瑣でハードルが高いからやめようと思っていた先生方にそんなアンコンシャスバイアスは捨ててしまえばよいのだという意志を生んでいました。

★何より、「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」は実質的には微差異の内容であることに気づかされてくれました。しかし、同時にその微差異な内容を受け入れるか受け入れないかによって、ICTのユーザーつまりコンシューマーに終わるのか、プロデュース側に立つかの大きな違いが生まれるし、文理融合ができるかどうかのレバレッジポイントであるコトを見逃すかゲットできるのかの差異が生まれるということが感動を呼びました。

★そして、当然その微差異を越境しようという意欲と意志を固めるのに、先生方が大きく頷きながら納得できる、情報に対する学習指導要領の見通しがどうなるのか初めから設定されていたことを丁寧な時系列と比較のデータ整理で示されました。

★今各学校で創意工夫されている探究学習を<Inquiry based Learning >として表し、それを<IBL>であると置換え、さらに結局<ICT based Learning>なのだと。つまり、<IBL>の二重の意味が2027年の新学習指導要領のグランドデザインになっていくことも仮説してですが示されたのです。

Img_6179

★そして、「だから、私学にとってはチャンスなのです。公立はこのようなIBLを実施するのはなかなか大変だというのは想像するに難くないでしょう。私学はやりましょう。ビッグウエーブに乗りましょう!」と高らかに謳い講演を終えました。

★その後、先生方は各チームに分かれてディスカッション。中野先生との質疑応答もありました。研修会終了後も、サイン会よろしく参加された先生方が行列をつくって質問されていました。うちの聖パウロの校長をはじめとする3人の先生方(皆女性教師です!)も駆けつけていました。

★とても実用的かつ実質的、そしてこれからの教師とは何かという本質的なところまで広く深く複眼思考ができた研修会でした。中野校長先生、そして委員の先生方、心から感謝申し上げます。

❖教務運営研究会 委員長・委員(支部・学校名)
委員長 井上実先生(⑥足立学園) 委員 星野稔先生(③目白研心) 大山智輝先生(④獨協) 足立満先生(⑥かえつ有明) 尾﨑威史先生(⑦朋優学院) 青柳圭子先生(⑧成城学園) 辰見憲先生(⑨中央大学杉並) 金子孝太郎先生(⑩本郷)小俣晶平先生(⑫吉祥女子) 
 研究所 教務運営研究会 担当:板澤純次さん・今村穂菜美さん

|

22世紀型教育準備へ(16)湘南白百合 4月からも不易流行としての進化をする予告

★湘南白百合の本質的教育というのは、不易流行としての進化をするその持続可能性にあると、水尾教頭先生のお話に耳を傾けながら感じ入りました。ですから、常に、新しい企画がその不易の土台の上にプロデューズされているのです。本日今年の同校合格者の招集日ですが、入学予定者は、いろいろなことにチャレンジできるのが楽しみだとか、探究講座が楽しみだとかすでに意欲と意識が高いというのがすてきです。そして、受験生が本質を学校説明会やオープンスクールなどで体験的直観で実感しているというのが実に高感度な心と頭脳を持っているなあと。

Photo_20240224082101

(GLICC Weekly EDU 第162回「湘南白百合ー本質的教育の実装」) 

★したがって、水尾先生は、その生徒のパッションに応えるべく、2024年4月から新企画を着々と準備しているということです。その具体的な生徒の皆さんの取り組みはまたご報告くださるということです。楽しみでたまりませんね。

S1_20240224082401

★いずれにしても、そのような本質的教育を実装し、不易流行としてその本質的教育の進化を止めないチャレンジングでワクワク学びをデザインする教師の魅力が受験生に伝わり、今年も総出願数は増えました。過去最大だということです。横浜雙葉が2月1日と2日の2回入試をスタートしたので、その影響がでるのかでないのか気になっていたのですが、まったく関係がないという結果になりました。他校との併願もありますが、まずは湘南白百合が第一志望というファンが圧倒的だということです。受験というのは選抜が避けられないので、湘南白百合と共通するような学校を探しているという受験生のまずは湘南白百合に行きたいという気持ちが高め定着しているということが明快に受験市場で示されたカタチになりました。

Photo_20240224083401

★さて、水尾教頭先生は、湘南白百合の本質的教育の実装というテーマについて、「球技大会」から始めたのは、またまた驚きでした。ストーリーテラー水尾先生のことですから、物語の構成には必ず仕掛けがあります。ですから、いったいどんな展開になるのだろうと期待が高鳴りました。

★果たして、想像を超えるすてきな物語になったのです。毎年最後のイベント「球技大会」。しかもここでは、縦割りのチーム対抗ではなく、クラス対抗ということです。チーム学級が一丸となる集大成という心憎い演出です。しかし、それ以上に、高大連携や探究などのリサーチから議論、編集、プロダクトの過程が実は「球技大会」に集約されているという話だったのです。

★湘南白百合は、長年、日々の自己内省を先生方と共有するノートや論文集編集などとにかく言語化して可視化する学びのルーチンが確立しています。それは思考のルーチンでもあるわけですから、卒業後も一生ものの思考や学びのルーチンです。このルーチンが生きる中ですぐに発動できる状況になっている。しかも建学の精神である「愛」が融合していますから、ミッションとして意思決定ができるようになっています。

★しかしながら、そのような意思決定とアクションのエンジンである思考と学びのルーチンは、ノートと論文編集の時だけでは、身に付く生徒もいればそうでない生徒もでてくるはずです。しかし、そうならないのは、この球技大会という身体性とメンタルとクラスというチームビルディングの包括的な学びの中でも球技大会日誌を書き込んでいるからなのです。

★優勝するためのコンセプト、そのためのアクションプランニング、戦略、戦術を議論しながらチームのメンバー全員のものの見方・考え方・感じ方を可視化していくのです。

★それと同様の思考と学びのルーチンが、普段の授業、探究活動、高大連携、多様なプロジェクト活動、ボランティア活動等々に染みわたっているのです。マルチスパイラルになっているカリキュラムマネジメント、いやカリキュラムプロデュースがなされているわけです。

S3_20240224084901

★詳しいお話は、ぜひ動画をご視聴ください。

★それにしても、多様なプロジェクトの中でも、「探究的な学びとICT」「理数系教育の充実」のさらなる進化を予告されています。この2つは、どこの学校も今やらなければと思いつつ、なかなかできないという領域です。受験生の期待は、しかし、ここにあることは明らかです。もちろん、今やグローバル教育は大前提になっています。これは湘南白百合はすでにそうなっています。そのうえで、次なる上記のような進化を果たそうと企図しているわけですね。

★本当に生徒にとってのこれからの教育として、そして日本の教育として、ここはチャレンジしなくてはならない領域です。逆に言えば、ここに挑戦できない学校はたいへんなことになります。生徒の未来のカギを握る教育のロールモデルとしても、ご視聴されることをおススメします。

|

22世紀型教育準備へ(15)成城学園 森の小径を歩いていくと世界が開かれる 随所に茶室の仕掛け

★先日、成城学園に伺いました。青柳圭子先生と同校創設者澤柳政太郎のアート・プロデュースの発想を不易流行とするプロジェクトについてお聴きするのが目的でした。成城学園のキャンパスは、大名庭園のランドスケープが埋め込まれています。大名庭園は、大きな池の周りを散策できるように設計されていて、その道行のところどころに橋が架かっていたり、茶室があったり、東屋があったり。もちろん同校のキャンパスのど真ん中に池はありませんが、広いオープンスペースがあるわけです。

Img_6107

★その広い敷地を歩いていくと、森の小径を抜けていくところがあります。まるで茶室の躙り口に向かって歩いていくような感覚です。そしてその小径の坂を上っていくと急にキャンパスが空にそびえ立つ感じでパッと開かれます。そして、また校舎に入ると今度は言葉の森の空間が広がっています。

Photo_20240224062601

★校舎の中の空間は、クリエイティブなスペースとロジカルなスペース(非日常空間と日常空間)が、伸縮自在に非対称的だったり対称的だったりと展開していきます。「未知」であり「道」でもある空間です。歩くという時間も加わりますから。時空デザインがすてきです。具体的にはいずれどこかで詳しく述べたいと思っていますが、一度拝見しただけでは捉えきれないですね。

★中高が、両翼になって建っていて、それをつなぐ架け橋であるデッキから眺める景色は山頂から眺めているような。まさに大名庭園ですね。大名庭園は、スモールコスモスのメタファーだし、未来の都市創りのメタファーでもあります。実際、世界は明治前夜に日本に出合い、江戸の大名庭園がひしめいているランドスケープを見て、ここはパラダイスだと感嘆し、現在にも影響を与えている環境都市建設の原型になりました。イギリスのレッチワースの田園都市が有名ですね。

Img_6114

★政府のデジタル田園都市構想のルーツは今は幾つかしか残っていない大名庭園だったのです。この田園都市構想は、そもそも国分寺崖線の延長上にある二子玉川を見下ろす瀬田に居を構えた政治家たちがイメージしたアイデアです。この瀬田から少し東にシフトすると五島美術館があります。もともと五島慶太翁の自宅ですね。この自宅も国分寺崖線の地形を生かした大名庭園になっています。

★それに、もともと田園調布を開発した渋沢栄一の息子と五島慶太翁の壮大な東急電鉄の構想自体が、都市の周りを電車や車が走り、都市の中は環境にやさしい環状型の理想都市レッチワースをモデルに構想していて、グランドデザインは五島慶太翁だったのです。いや、渋沢栄一の息子が見てきてレッチワースです。いやレッチワースの田園都市を構想したエベネザー・ハワードです。いやハワードがモデルにした大名庭園です。

★ハワードの生きた時代は、イギリスが産業革命後世界の覇者になっていく時代です。そしてその繁栄の光とは真逆の影が深く広がってもいた時代です。労働条件は最悪で、女性や児童の生活環境の悪さ、貧困格差、そして環境の悪化が進んでいた時代です。環境都市、貧困格差のない都市と農村(自然)と人間性の循環を果たそうとする理想都市をデザインし、田園都市を実際に構築しました。理想のコミュニティで、19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスばかりかドイツにも広がっていったのです。このとき、大名庭園やその中で営まれた日本文化の様々なツールや芸術作品がヨーロッパに広がり、ジャパノロジーがウィーン世紀末で広がります。

★その広がりにストップをかけたのが、2つの世界大戦です。しかし、戦後の世界人権宣言やWHOの健康概念の宣言から理想的都市計画が模索されました。何せ戦争によって荒廃した都市の脱構築は世界中で必至でしたから。特に1972年の「成長の限界」と「Only One Earth」という、現在のSDGsにつながるテーマが前面に出てからは、レッチワースは環境にやさしい都市創りの再びモデルになり、現在に到っているわけです。コンパクトシティーとかスマートシティーとかの源流は、そこですが、ルーツはなんと大名庭園。

★この理想都市構想が世界の息吹となっていた時、大正自由教育の拠点が成城学園です。国分寺崖線の延長上にある成城台地で学園都市構想が立ち上がった時期です。成城学園構築が先か成城学園都市構築が先か、調べていませんが、この国分寺崖線上にICU、成城学園、田園調布があるというのは何か発想のつながりがあるはずです。文化人類学的にはラインの構造というものでしょうか。

★そして、そのような壮大な日本の都市構築の不易流行としてのグランドデザインが、成城学園のキャンパスと校舎の時空に埋め込まれていることに驚いています。

★青柳先生の、成城の森を拠点に、他校の自然と都市と生徒の精神的成長をつなげていく壮大な教育グランドデザインは、ビジネスプロデュースとは違うアートプロデュースそのものです。大名庭園は、日本の建築業界を創った、実際に丸の内の赤レンガの東京駅やその周辺の街並みはジョサイア・コンドルが弟子と共に設計したのですが、そのコンドルが、ヨーロッパに報告して伝えたアート作品だったのです。

★そういえば、今は丸の内に移って、閉館されていますが、岩崎家の静嘉堂文庫は、国分寺崖線上の岡本の地に建っています。

★建築は、もともとアート作品だし、ランドスケープの中にどう配置するかというのはアートプロデュースです。もちろん、今ではビジネスモードの部分が前面に出ていますが、背景にはそういうことです。

★青柳先生は、ルビンの壺よろしく、ぞの図の部分と地の部分をひっくり返そうということ。つまりコペルニクス的転回をプランしているのでしょう。私立学校の教育を、ビジネス市場からアート市場に転換する。新しい学校都市構想ですね。今後が楽しみでなりません。

|

2024年2月23日 (金)

22世紀型教育準備へ(14)22世紀型教育を創る地球市民の出現の持続可能性

★21世紀型教育を創るコミュニティ(現「21世紀型教育機構」)を先生方と立ち上げたとき、つまり13年前ですが、当時出会った20代~30代の先生方は、今では21世紀型教育を創る学校の要職に就いています。先生方は肩書きリーダーではなく、ナチュラルな地球市民リーダーです。目の前の子どもたちが困っていたらすぐサポートに入ります。そして組織やシステムやチームなどをつくり、その支援環境デザインを可視化し持続可能にするスキルやタレントを持っています。学習者中心主義と言っていますが、オーセンティックな生徒中心主義です。

Img_6101

(市ヶ谷で7:00からの早朝ミーティングで)

★それぞれの世代でこのような肩書きリーダーの前に地球市民リーダーというナチュラルリーダーはちゃんといるもので、巧まずして出会える私は本当に幸せです。今まで、田中歩先生、染谷先生、太田先生といった今では要職に就いている若い先生方に出会え、いっしょに仕事ができたのは本当に楽しかったし、今も楽しいのですが、みなやはりそれなりに歳をとり、次世代を育成する役割を担っています。

★すると、不思議なことにそういう若き俊英にすぐにまた出会えます。私が聖パウロ学園の校長だったころ、本来は私が支えなければならないのですが、多くの局面で支えられ、今も仕事の場所が全く違うのに、仕事に行く前とか終わった後とか、よくアイデア出しに付き合ってくれる優れた地球市民に出会っているのです。

★それは、一般財団法人日本私学教育研究所の伊東竜さんです。数学の教師だったし、広報部長だったし、企画戦略室室長だったり、探究ワークショップのファシリテーターも共にやったりしてきました。昨年は福島の私学協会でもワークショップを一緒にしました。

★思考コードやクロスクエスチョン、生成AIの活用による新しい学びのシステム、22世紀型教育のビジョン、フォームでグッドマンモデルの数学的思考を文理関係なく共有できるプログラム作りなど、実に才能者です。

★今の田中歩先生ぐらいの歳になると、確実に22世紀型教育の基盤を企画運営実施していることでしょう。そのときには、歩先生も染谷先生も太田先生も最前線で大きなリーダーシップを発揮しているでしょうし、伊東さんも日本の私学のために未来の教育をデザインするリーダーになっているでしょう。

★それは10年以上先のことで、私自身はただでさえ爺やなのに、どうなっているのでしょう。孫が成人するまでは、元気な頭脳でいたいと思っていますが、そればかりは神のみぞ知るです。

★日本の未来や世界の未来は、たしかに紆余曲折あるでしょうが、私たち昭和の人間に比べてはるかに有為な地球市民の大勢の登場によって明るいでしょう。1930年、世界大恐慌の時、多くの見識者がネガティブな発言や心境を吐露して大騒ぎをしていたとき、ひとりケインズだけは、2030年を孫のために予測して、極めてポジティブな推論を展開しました。新たなリスクやクライシスは生まれ続けていますが、人間の営みは確実に進歩しています。リスクやクライシスの問題を解決することは不可能などということはないのです。目の前の彼ら地球市民と対話したら、それはすぐに了解できます。

|

22世紀型教育準備へ(13)21世紀型教育研究センターの先生方の魅力という「魂」が22世紀を開く

学校越境型のディスカッション形式のカンファレンス(前半は基調講演)を終え、つくづく越境の気概や気持ちがケミストリーやシナジーを生み出すなあと目頭が熱くなりました。文大杉並、聖学院、工学院、和洋九段女子の生徒の皆さんのディスカッションは、誰がみても圧倒的に魅力的でした。これについては以前書きましたね。先生方のディスカッションも魅力的で、先生方の魂が化学変化を起こす瞬間に立ち会えたことそのものがウェルビーイングでした。感謝です。幸わは感染するので、参加された方々やライブ配信をご覧いただいた方々にも幸せが染みわたっていることと思います。

Img_1573

★ディスカッション①:「2050年の教師像~SGTと共に」では、新井誠司先生(和洋九段女子教頭)、 染谷昌亮先生(文化学園大学杉並次世代教育開発部長)、早川太脩先生(聖学院広報部長)、 小仲井浩先生(和洋九段女子)、 菅谷真由先生(和洋九段女子)、宮井瞭先生(工学院)、 渡辺翔大先生(文化学園大学杉並)が、教える授業とか教えない授業とかがどうのこうのではなくて、第一義的には「支える」「自由な発想力が生まれる環境をアフォードする」というところに焦点を当てて議論していました。そして実は自分が「支えられている」のだというなんとも共感的な雰囲気は感動的でした。

G_20240223132201

★ディスカッション②:「22世紀型教育を予感させる2050年のグローバル教育」では、本邦初のIB以上のグローバル教育を行っている21世紀型教育機構会員校のそれぞれの特色あるシステムを語ってくれました。菅原久平先生(八雲学園副校長)、 近藤隆平先生(八雲学園副校長)田中歩先生(工学院教務主任)は、ラウンドスクエアという世界のエスタブリッシュな私学の同盟コミュニティに所属している教育力について語ってくれました。染谷昌亮先生(文大杉並次世代教育開発部長)はカナダのブリティッシュコロンビア州との連携教育DDで世界と内面の両方の成長を果たす生徒について熱く語ってくれました。佐藤一成先生(富士見丘副教頭)は、SGHとWWLという文部科学省肝いりのグローバル教育コンソーシアムのリーダー校としての教育力について語ってくれました。

★日本のグローバル教育は、数々の世界標準の教育を行っています。世界標準と日本独自の建学の精神を融合させた実は世界が憧れる教育をつくるチャンスは、21世紀型教育機構が歩んでいる道にあると思います。

★なぜ、日本が近代をアジアの中で最初に切り拓いたのか。その答えはまだわかりませんが、日本の大名庭園と茶室という外生的技術進歩と内生的技術進歩の融合された「精神」は、マルクス・ガブリエルに言わせるとインパクトがあるし、欧米のマインドとは違う質のものだそうです。ZENや坐禅、マインドフルネスがGAFAMなどに顧みられているのは、そんなところにヒントがあるのかもしれません。

★21世紀型教育研究センターの皆様、それから事務局としてセンターの主席研究員の田中歩先生を事前の話し合いなどからサポートしてくれた日本私学教育研究所の伊東さん、本当にありがとうございました!

|

22世紀型教育準備へ(12)PREXというケアフルで最強の国語専門塾出現の意味

★今月19日に「22世紀型教育準備へ(09)フェリスを注目する時代の眼差し」という記事を書いたら、まだ5日も経たないうちにアクセス数が急激に集中したので、なぜと自問自答してみました。フェリスという本質的な教育について注目が集まったからなのか?フェリスの記事を執筆したPREXという国語専門塾の塾長渋田先生の人気がそうさせてたのか?結論は両方なのだとすぐに至ったわけですが、この両方だということのもう一つ向こうに凄い意味があることに気づきました。

Photo_20240223103901

(タキソノミーの図は、PREXのサイトから。その周りのイラストは生成AIBing作成)

★どういうことかというと、フェリスはご承知のように、リベラルアーツベースの言語教育を行っています。その広く深い叡智を養うカリキュラムマネジメントの核が入試問題に反映しているわけです。

★渋田先生は、入試問題の分析の時に、その「核」を洞察し、塾生にそれを共有してインタラクティブに入試問題を思考し表現していく学びを展開しているわけです。

★この姿勢は、フェリスに限らず同じで、生徒が志望する学校の教育の「核」を洞察するわけです。その学校の教育の「核」をどうやって見通すことができるのか?それは学校説明会に行ってもサイトを見ても一般的な情報誌をみても、一般メディアを読んでもわかりません。渋田先生も執筆している「shuTOMO」は別格ですが。

★なぜなら、その学校の魅力を語るのに外生的技術進歩(物質的教育環境)を追いかけるのが常だからです。フェリスだったら、あの横浜の山の手の自然豊かなというか高級感あふれる外国の香りのする環境と大学合格実績と受験をするときの生徒の偏差値の高さ、伝統的な破格の論文編集作業、フェリス出身者の活躍、プロテスタンティズムの真髄(カトリックと違いプロテスタンティズムは倫理的資本主義の原点ですし、米国大統領は、ケネディを除き、すべてプロテスタント信者ですし)等々です。

★たしかに十分な情報収集なのですが、一点足りないのが、フェリスの入試問題に対するコメントですね。もちろん、各教科の点数配分や合否の分かれ目の点数、出題分野、問いの形式など言及されはしますが、それはすべて外生的技術進歩のお話です。

★ところが、渋田先生は、入試問題は学校の顔です、つまり教育の顔です。しかも、入試問題は在校生が最も学園生活で長時間を費やす授業のエッセンスを反映しているのです。しかもそのエッセンスは私学の場合は、教師の個人的な気概のみならず建学の精神が融合されたものです。しかも、その融合の配合は、長年かかって醸成されてきたカリキュラムマネジメントの核です。

★教師の個人的な気概と建学の精神の融合体としての核ですから、学校によって違いがあります。その核はいわば秘伝のタレのようなもので、各学校は可視化はしていません。というかまずできないでしょう。そこは西田幾多郎の行為的直観ともいうべき感覚でしか問いかけるしかないのです。ですから、その学校に勤務するか生徒になるかでもしないとつかめないものです。それが不易流行というもんでしょう。

★ところが、私立学校は、入試問題という形式で、その核を表現しているのです。しかし、それを洞察できるには行為的直観が作用する渋田先生のような方でなければできないのです。しかしながら、この行為的直観を学びの中にひそかに入れようとしたのが文部科学省なのです。「主体的・対話的で深い学び」。アクティブラーニングではなく、この表現にしたのです。

★カタガナ語は使わないという方針が学習指導要領にはあるのかもしれません。しかし、そんな単純なものではないでしょう。それに経産省も一枚も二枚も噛んでいます。最近IB(国際バカロレア)を取り入れるのがトレンドですが、IB機構ははっきり言っているのですね。IBのプログラムには東洋思想は組み込まれていないと。

★これは、IB側が、親切にも日本の教育行政に対するヒントを与えてくれたのです。最近NHKでドイツの哲学者マルクス・ガブリエルや開成出身者の落合陽一さんが日本のみならず世界のビジョンを語っています。またいろいろなメディアでジョブズが曹洞宗の僧侶に禅の世界に誘われたことが発信されています。GAFAMのマインドフルネスやZENの話もよく目にします。彼らはみな一つの地球を目指しています。西洋の思想に偏ることをメタ認知し、多様性を融合する発想を見出そうと。それゆえ西田幾多郎の哲学は見直されているのです。

★渋田さんはブルームの「改訂版」のタキソノミーを生徒の核を洞察する時の指標の1つとして活用しているようです。この「改訂版」のタキソノミーの最上層には「評価」とありますが、これはスコア評価ではないのです。生徒のなんらかの能力(才能でもよいし資質能力でもいいし技術でもよいし言語能力でもなんでも表現はよいのですが)を引き出すエンパワーメントする学びの状況のことを意味します。

★中高の保健体育の教科書にマズローの五段階欲求説があります。最上層は「自己実現」です。実はマズローも禅の文化も意識していました。ですから、この自己実現は、仏教用語でいう「上品、中品、下品」の「上品」に相当する可能性があります。マズロー自身は、第6層目があるのではないかと想っていたと言われます。とはいえ、まさか「悟り」とは心理学的に表現することはできなかったでしょう。

★最近、WHO健康概念で、身体、メンタル、社会性の3つの健康以外に、「スピリッチャリティ」というマルクス・ガブリエルの言う「精神」が追加されました。この「精神」はマインドとは意味が少し違い、ドイツ人や日本人が大切してきた精神性に近いとガブリエルは京都に立ち寄ったときに言っています。

★日本の私立学校は、明治以来紆余曲折していますが、日本的なるものと世界的なるものを融合させた建学の精神を核にしてきました。もちろん融合の配合は各私学によって違うというのは先述した通りです。

★渋田先生のライフプロフィールは知りませんが、フェリスの国語の入試問題を分析し「核」を洞察するときの眼差しは、この建学の精神を生み出した私学人たちの眼差しと交差しています。

★信頼できる中学受験塾と建学の精神を基に不易流行という「核」を生み出し続ける私立学校の中学入試がケミストリーを起こす時代。本質を選び選ばれる時代がやってきたのだと。ようやく来たのだと。2025年度中学入試に向けてこのような視角から中学入試をウォッチングしていこうと善きヒントをいただきました。

|

2024年2月21日 (水)

【速報】聖パウロ学園 奨励賞(3位)グリーンインフラ・ネットワーク・ジャパン ポスターセッションで

グリーンインフラ・ネットワーク・ジャパンのポスターセッションが、東京ビッグサイトで開催。聖パウロ学園のプロジェクトチームが「森の教室に関する活動」を、ポスター発表しました。そして、大学や企業の参加が多い中で、奨励賞を受賞したと校長小島綾子先生から一報ありました。おめでとうございます!

Photo_20240221181501

★京都産業大学と東京農業大学に続く3位のようです。実質2年間かけてプランニングと試行錯誤をしてきたボランティア&探究活動&SDGsアクションの一つの成果です。

★ボランティア活動は聖パウロ学園の日常であり、探究は3年かけて試行錯誤してきました。気候変動リスクやSDGsを達成する活動もここ数年チャレンジしてきました。

★これらの経験がひとつにつながった瞬間ですね。パウロの森を新しい角度からとらえ返し、活動拠点にしたパウロ生の「目からウロコ」の活動でした。

※ちなみに、「目からウロコ」のエピソードはもともと聖パウロからきています。

|

22世紀型教育準備へ(11)【独り言風】ラディカルな学びのツール 探究を教科が回収してしまう動きか?

★現在、生成AI関連の学びのツールの開発が多様に行われています。その中で優れているけれど見た目の費用で高いものは学校で避けられる傾向があります。しかし、その中で、いわゆる偏差値というものが高い東京と神奈川の学校が最終的なコスパを比較考量して高いもの(とはいえ生徒1人1000円しないのですが)を選択しているらしいのです。いずれ未来コンパスのようにどこの学校も似たようなツールを導入せざるを得なくなるでしょうが。

Photo_20240221154401

★当ブログのアクセス記事が、今までと違うのは、そのような新しい流れが反映しているからなのかもしれません。今までとは異なる種類の記事がいくつもアクセスが増えているのです。

★とにかく、何人かの親しい生成AI開発の企業のスタッフから、話を聴いていると、2040年から2050年までに到達目標が掲げられている内閣府のムーンショット目標にむかって、大学と企業の連携開発は進んでいて、そこに直結する生成AI関連ツールを活用した高偏差値学校グループが出現しています。

★そこがどこかなのは、4月以降にだんだん明らかになっていくと思います。

★そして興味深いのは、その動きの大きな特徴は、教科の中に探究が回収されていくのです。総合型選抜と一般入試も境目がなくなっていきます。

★早稲田大学と慶應義塾大学の一般入試の統合体が出現してきます。そして、それとオックスブリッジの口頭試問が加わってきます。ただ、生成AI関連の対話評価システムで採点シテムのスピードは加速度的です。現在もすでに小論文を生成AIが自動採点する創意工夫はいくつかの学校で先生方がチャレンジし始めています。来年の今ごろには、公開セミナーなどで公開されているでしょう。

★2027年ころから始まる新学習指導要領の改訂では、探究は教科に回収され、探究の時間は、すべて自由研究になりそのベースにツールとしてのSTEAMキットがセルフ生成AIロボに搭載されているでしょう。本当は、これが探究そのものなのかもしれません。ともあれ、ある区ではその第一歩を4月から開始しますね。今後は、多くの学校でそうならないと、ムーンショット目標は達成されませんから。

|

2024年2月20日 (火)

22世紀型教育準備へ(10)生徒の対話力 「チャット→メタ認知→弁証法のマルチスパイラル」

★先週18日(日)、和洋九段女子のFuture Roomで、21世紀型教育機構(以降「21会」)のカンファレンスが開催。リアルスペースとライブ配信の両方を合わせると多くの方が参加され、久々の対面型カンファレンスということもあり盛況でした。

21ceo_20240220095101

★テーマは、「22世紀型教育の準備は始まっている」でした。今の中高生が22世紀にはもう私たちの年齢以上になっています。ですから、21会の生徒自身が、カンファレンスの中で「自分たちが22世紀の社会をデザインしていく自覚を持っています。今日はその第一歩を踏み出していることを皆さんと共有したいと思います」と高らかに宣言しました。

★文化学園大学杉並、聖学院、工学院、和洋九段女子の4人の高校生が22世紀の教育は自分たちが創っていくのだけれど、いまどうすればよいのかというアドリブ型というかナチュラルな対話を披露しました。

★このようなパネルディスカッション風のものには、一般には教師が司会などするものですが、今回はありません。生徒自身がナチュラルでカジュアルでラディカルでそれでいてディープな弁証法的対話を展開していくのです。

Img_6099

★最初は、感覚的で主観的なチャットから始まり、次に問題を客観的な視点(メタ視点)で、ロジカルシンキングの問い合いをしていきます。しかし、で、自分たちはどうするのか?と弁証法という意味でのダイアローグ(対話)にブレークスルーしていくわけです。

★このようなソクラテスやヘーゲルに代表される弁証法的実装ができるのは、21会校が破格のグローバル教育を行っているという文化が共通しているからです。そして、生徒が教師の目を意識せず、自分の言葉を見せることができる仲間をつくり、ともに対話できる場をつくる教師がいるからです。そのような教師は21会ではSGT(スーパーグローバルティーチャー)と呼んでいます。

★それから、SGTのグローバルな教育観の肝は、もちろん、日本的な文化と世界の文化の融合をどう学びで展開していくかです。このへんの理屈については21会校のSGTが対話をしました。いずれご報告します。

★それにしても、登壇した4人の生徒を支え見守るべく、各学校から仲間がやってきていました。先生方の対話の途中、飛び入りで語った生徒もその中にはいました。マインドセットという言葉がよくつかわれます。シンプルには、教師も生徒も表現で自分を開いていける状況が生まれるような場の設定ということでしょう。

★SGTは、本当にそのようなアートプロデュース力がありますね。

|

2024年2月19日 (月)

22世紀型教育準備へ(09)フェリスを注目する時代の眼差し

★ここにきて、昨年12月12日に書いた「2024年中学入試(14)フェリスの国語と教養科 shuTOMO12月号の記事保存版」という記事にアクセスが集中しています。shuTOMO12月号の「フェリス女学院中学校・高等学校 この授業・この先生 文学を通して多様な思想や文化を知り、『世界の一員』という視点を持ってほしいですね。フェリス女学院 国語科 教養科 近藤華子先生」という記事について感想を書いたものです。執筆者は渋田隆之さんです。首都模試センター・中学受験サポーターで、神奈川の大手塾で中学受験セクションを立ち上げたり、国語専門塾を経営したり、教育コンサルタントなどで活躍したり、書籍や雑誌などで影響力を持っています。

Photo_20240219151601

★近藤先生のリベラルアーツをベースにしたプログラムが探究の授業だけではなく、国語の授業にダイレクトに反映していることについて書いたと思うのですが、このことに注目している時代の眼差しがあるのだなあと少し元気づけられました。

★また渋田さんのように、そのようなフェリスのリベラルアーツベースの言語能力育成のメカニズムが、学校の顔である入試問題に反映していることを鋭く見抜く洞察力を持っている方の存在に中学入試の世界に希望をもてたわけです。

★中学受験や中学入試は、まずは合格を目指します。その集中力はとても大事です。しかし、その集中力は入試問題の向こうにあるその学校のキャリア教育に結び付いた学びまで見通し、さらにその向こうに自分の生き様の像を映し出せるほどであるとよいですね。

★近藤先生及び渋田さんのような理想を現実にする学びのデザインや洞察力。中学受験のブームが終わったとメディアは最近言っているそうですが、中学受験のブームのために私立学校はあるのではないのです。

★生徒の人間としての生き様を生み出す教育の環境やシステム、仕掛けなどに取り組む私立学校の教師の営みに終わりはありません。それには渋田さんのような文学的なあるいは哲学的なプロデュースの眼差しが大いに頼りになるでしょう。

★22世紀型教育だって、不易流行に変わりはないのです。このようなフェリスの不易の部分こそが、もっと大事になるでしょう。

|

2024年2月18日 (日)

22世紀型教育準備へ(08)かえつ有明 人的資本広報活動 教育の魅力は教師の魅力

★昨日17日(土)夕刻、かえつ有明中・高等学校の広報主任内山誠至先生から、2月1日~2月3日に実施した中学入試報告資料が教育関係者に配信されました。同資料はA~Eの内容になっています。それにしても、短期間にこの膨大な資料をまとめるには、教職員一丸となって制作したことが伝わってきます。

A 2024年度中学入試レポート 

B 2024年度中学入試統計表(出願者、受験者、合格者数) 

C 2024年度中学入試データ(平均点、合格最低点) 

D 2月1日午前入試および午後入試(+2月3日午後AL思考力入試)における教科ごとのまとめ 

E 2月1日午前入試および午後入試の問題データ(国語、算数、社会、理科)

Photo_20240218074501

★A~Cは、入試の詳細なデータ。ふだんからのデータサイエンススキルの面目躍如です。

★DとBはすべての各教科及び思考力入試の問題の傾向分析、生徒の反応分析、来年度の指導のポイントがきっちりまとめられています。

★教育関係者や塾関係者は、これをさっと眺めるだけでも、同校の教育の魅力を支えている教師の人的資本の豊かさを感じるはずです。もちろん、このような入試が終わるや報告書をまとめる体制がここ何年も続いているわけで、教師の研修の内製化の一環でもあり、教師の魅力がアップデートされていくことは想像に難くありません。

★かえつ有明の人気が継続し、それとともに難しくなっていくのですが、それには、このような教師の人的資本を輝かせるシステムができていて、このような教師の魅力を内山先生は広報活動の一環として伝えているのです。

★ファンが増えるのも当然です。この人的資本広報活動は、私学の22世紀型教育の準備につながっていきます。

★とにもかくにも、学校の魅力は教師の魅力、教師の魅力は学校の魅力です。シンプルで最強です。

|

22世紀型教育準備へ(07)21世紀型教育機構のカンファレンス 新年の覚悟を共有して

本日18日(日)、和洋九段女子で21世紀型教育機構のカンファレンスが開催されます。コロナ禍でしばらくオンラインで機構会員校限定の勉強会を行ってきました。しかし、ようやく対面で行うことができるようになりました。もちろん、アフターコロナですから、対面で小さくそしてライブ配信で大きく同じ気概を持った方々と共有する無料イベントです。22世紀型教育への準備という教育アクションによって社会に貢献するアテンションをあげることによって、機構会員校のみならず日本のこれからの教育のブランドを創っていく動きです。ブランドアクティビズムの手法をとっています。一般的な広報活動とは違い、私立学校の覚悟と気概の教育が軸になっています。

Img_6027

(同機構理事長平方邦行先生:富士見丘のグローバル探究の成果発表会に出席されていたとき撮影)

★21世紀型教育機構では、会員校宛に、新年の挨拶として、機構の理事長平方邦行先生から、次のような文章が配信されました。本日のカンファレンスの前提の覚悟になります。ご参考にしてください。

21世紀型教育機構 新年のメッセージ
2024年1月10日
21世紀型教育機構
理事長 平方邦行

2024年は、自然と社会と精神が分断されることによって大惨事が起き、その痛みは遠くの出来事ではなく私たち一人ひとりに重くのしかかってくることを改めて受けとめなければならない覚悟の時代を迎える瞬間から始まりました。

思えば、私たち「21世紀型教育機構」は、2011年の東日本大震災の時にその覚悟を自覚し、「21世紀型教育を創る会」から始まりました。5年の歳月を経て、21世紀型教育の土台を同盟校は鋭意努力し、日本ではどこも行っていていない「アクレディテーション」によって21世紀型教育の持続可能性と質的進化を果たすシステムを作り、2015年に「21世紀型教育機構」としてバージョンアップしたのです。

2020年には、パンデミックに直面しましたが、本機構の同盟校は速やかにオンライン授業で対応し、生徒の命と精神と学びを守る21世紀型教育の持続可能性を証明し、「21世紀型教育」を行っている私立学校の存在が価値あることを示しました。一般財団法人日本私学教育研究所及び一般財団法人東京私立中学高等学校協会においても、全国に21世紀型教育を行うミッションを共有するに至りました。

そして2024年、再び東日本大震災と同レベルの能登半島地震に見舞われたのです。自然というのは、自然と社会と精神の循環を持続可能にするように、人間に畏敬の念を抱かせながら根源的な言動をかくも促すものなのだと感じない日はない今日を迎えています。多くの老若男女の命が失われるニュースを日々目にしています。また、こうしている間にも、ウクライナやガザをめぐる自然と社会と精神の分断が激しく、多くの人が貴重な命を落としています。もはやこの悲惨な有様と痛みは、遠くの出来事では済まされないのです。ですから、目の前の生徒の命と学びの機会を今まで以上に守ることが私たち21世紀型教育機構の使命であることを皆様と共有させて頂きたいのです。

2024年は、もし元号が昭和のままだとしたら昭和99年です。いよいよ時代は本格的に質量ともに21世紀型教育に移行すると同時に、目の前の生徒が100歳を迎えるときには、すでに22世紀になっていることに思いを馳せ、「22世紀型教育の準備をしていく転換点」でもあります。

地政学リスク、気候変動のリスク、精神不安のリスク、人工知能リスク、あらゆる局面での社会的結合のリスクなどを乗り越え好転に変換する知(知性・感性・身性・社会性・宇宙性などの包括知)はいかなるものか、自然と社会と精神の循環を修復し持続可能にし、人類の新しい平和と新結合を生み出す子供たちの叡智と行動と新しい価値を生成する「22世紀型教育」へ共に邁進していきましょう。

追伸:「22世紀型教育のモデル」を本機構の21世紀型教育研究センターの皆様に創発して頂きたいと思います。そして「22世紀型教育プロジェクト」を加盟校に広めて頂きたく、よろしくお願い致します。 

|

2024年2月17日 (土)

22世紀型教育準備へ(06)富士見丘の圧倒的グローバル探究力 全員が英語を公用語として探究活動②

★現在の富士見丘の高2が、40歳になるのは2046年です。2101年、つまり22世紀が始まる時95歳です。確実に高2の皆さんが22世紀社会を創り上げていくリーダーとして活躍します。「2023年度SGH・WWL課題研究発表」は、同校の理事長・校長もその期待と希望を胸に、高2生にエールを開会の言葉として贈るところから始まりました。そして、高2生の未来の活躍の様子が目に浮かぶようなパフォーマンスが繰り広げられたのです。2年弱かけてきた「台湾」「マレーシア」「グアム」のフィールドワーク・グローバル探究の成果を15チームが発表し合うコンクール形式のイベントです。

Img_6029

★予め生徒も共有しているルーブリックに基づいて、上杉恵子先生(明海大学ホスピタリティーツーリズム学部教授)と歌野寧先生(池田高等学校 広報主任・英語科教諭)が審査をしました。チームのプレゼンが終わるたびに、質疑応答が展開。2年弱の探究の成果を5分でプレゼンしますから、各チームは、いかに包括的な言葉や図、グラフなどで全体像を表現するか、具体を抽象化しつつも、イメージを膨らませる高度なシンボリックな表現をしています。

Img_6039

★お二人の先生の問いかけは、聴衆者にイメージの補強をする意味で教養ある問いだなあと感心させられました。リーサーチの場所はもっと他の場所もいったのではないか?提案を広める具体的なアクションは何か?インタビューの相手の反応に他にどのようなものがあったのか?探究のテーマの重要性や信頼性についてどのくらいの人が興味を抱いたのか?など。

★すると生徒の皆さんは、間髪を入れずに、質問に感謝し、インタビューや文献リサーチやアンケートの結果から回答していました。確かに、5分のプレゼンで、そのような膨大なデータを示すことはできませんが、質問されたらいつでもいろいろな角度から応えられるほど、エビデンスを用意していたのです。

Img_6041

★したがって、ルーブリクにある評価観点、たとえば、explore(インタビュー、フィールドワーク、アンケート、文献リサーチなど)、exchange(議論をしなが論理的構成、視聴者を世界に巻き込む表現や演出の編集工程)、トゥールミンモデル(意見、根拠、データ論拠、反駁など)など甲乙つけがたかったでしょう。

★特に問題解決の提案は、リーフレットやTikTokなどですでに実装しており、インパクトがみなあるのです。

Img_6047

★そんな中で、ハンドメイドの防災グッズをつくるワーックショップを各所でやって、リアリティのある防災教育を行っていくという提案をし、実際に保育園で実践した事例も報告するところもありました。サイバースペースとリアルスペースの交差が、さすがはSTEAN教育も行き届いている富士見丘だと感心しました。

Img_6046

★コンクールの結果は、本当に甲乙つけがたかったと思います。吉田理事長は、今までは、前もって選抜したチームの発表をしてきたが、今回は全チームが出場した。それだけ、英語の力においては本当に甲乙つけがたく、立派なものに今年はなっているのです。」と目を細めていました。何せ、理事長自身青年時代に留学しており、英語堪能ですから、そのことがよくわかるわけです。そういう意味で、帰国生は海外で経験した教育環境と何ら変わらないのです。理事長校長と英語で対話できるのですから。

★最後に、優勝賞の発表がありました。審査員の先生方は、論理展開、効果的表現、英語力ではおそらく点差がつかなかったのでしょう。最終的に1位になったのは、台湾フィールドワークの❝SDGs×Disaster Prevention~No one left Behind❞のチームでした。災害が起きたときの障がい者の防災について研究し、本当の問題は何か、解決するにはどうするかアクションプランイング、そして解決策を広めるリーフレット作成と実際の広報活動まで5分でプレゼン。

★審査員の先生方は、おそらく問題意識の信頼性、妥当性、深さなど、実際に能登半島地震でも大きな問題になっている緊急性など合わせて、このチームを優秀賞にしたのでしょう。しかし、それとて僅差だったと思います。

Img_6068

★最後に富士見丘の理事長補佐・校長補佐の吉田成利先生か富士見丘の生徒と池田高等学校の生徒にエールを贈る言葉がありました。成利先生自身、イギリスやアメリカの大学院で研究しPh.D.を取得しています。法学博士です。現在明海大学の准教授でもあります。

★ご自身のグローバルな経験や大学院での経験、何より本物の探究方法を生徒と共有しています。もちろん英語でです。

★そんな成利先生が、ご自身のことも含めて、探究という究める行為は一生かけて終わらないのだという意味のことを福沢諭吉の言葉から引用して語りました。

★私立学校は気概と理念を不易流行として継承していくことが求められそれは並大抵のものはではないのです。人気があって入ってみたものの、校長が変わって元の木阿弥という事態だって少なくありません。

★その意味で、富士見丘の今年の人気は22世紀にかけて安泰だと感じ入りました。

|

22世紀型教育準備へ(05)富士見丘の圧倒的グローバル探究力 全員が英語を公用語として探究活動①

★昨日、富士見丘では、「2023年度SGH・WWL課題研究発表会2024.2.16」が開催されました。同校の6年間の破格のグローバル教育の集大成ともいうべき公開イベントです。各所から見識者も駆けつけていました。また、同校は鹿児島のSSH校池田高等学校ともコンソーシアムを組んで、年間通じての知の交流をしています。そのため池田学園の理事長・校長はじめ2チームの生徒の皆さんも参加されていました。

Img_6030

★とにかく驚いたのは、高2の「グローバルスタディー演習」で探究活動をしてきた生徒15チーム全員が、英語でプレゼンテーションをしたということ、しかも私が知っている東大の英語弁論大会で2位(大学生も参加する大会)を受賞した女子生徒の英語能力や探究スキルなど以上のパフォーマンスを発揮したことです。

★発表内容の英語を、プレゼンのためにそのときだけ暗記したというのでは、このようなパフォーマンスは発揮できません。中学から入学してきた生徒はこの5年間、高校から入ってきた生徒はこの2年間、探究のときも公用語は英語だったわけです。そんなはずがないと思いますか?

★まず20%以上は帰国生です。最近の帰国生は日本語ケアを同校の先生方が丁寧にしなければならないケースが多くなっています。したがって、学校生活では、英語と日本語がまじりあっているのは想像がつくでしょう。吉田晋理事長・校長(自身が英語力堪能です)はパレートの20%法則について時々語っています。20%のポジティブな能力や言動がチーム全体に好循環を生み出すという法則で、GAFAMもこの法則を取り入れ、創発を生み出しています。

Img_6025

★そして、さらに、「グローバル演習」は、高大連携、海外団体との連携を行っています。高大連携では、慶應の大学院生などファシリテーターに来てくれますが、彼らは留学生です。また台湾、マレーシア、グアムをフィールドワークの地としていますから、現地に行ったときは当然ですが、ふだんからオンラインでディスカッションを続けています。このような環境ですから、当然公用語は英語になるのです。

★そのようなわけですから、英語のスキルも、高3の時には、ほとんどが英検2級以上(日本の大学入試の出願時に、アドバンテージになる英語力のポイントです)、28%は英検準1級以上(海外大学入試の出願書類において、必須の条件です)になるわけです。

★そして、英検以外の資格試験もあるし、すべての資格試験の共通尺度はCEFRです。CEFRテストというのは存在していないので、CEFRの本当の認定は、膨大な資料を自己申告し、海外大学の場合、インタビュー(口頭試問)で、その自己申告の信頼性、妥当性をチャックされます。おそらく、富士見丘の生徒は最終的に潜在的にCEFR基準C1(英検1級相当)になっていることでしょう。

★それにCEFR基準B2とかC1は、言うまでもないのですが、英文法の力だけではまったくないのです。リーディングやリスニング、エッセイライティングの力、論理的思考力、スピーチと言っても2種類あって、プレゼン型と対話型の両方の優秀性が求められます。

★日本語の小論文試験や口頭試問など突破する能力を英語で発揮するということです。これはもう、普段から英語を公用語として活用する環境になければできることではないのです。

★国連やEU議会に行けば、公用語は英語だけではないし、みな母国語だってリスペクトしています。つまりそこでは多言語が溢れていて、互いにどの言語で意思疎通できるのか選択しながらディスカッションするわけです。ビジネスの世界でもそうです。

★参加者の方々が、今回のイベントを見て、ショックを受け、こんなに高校の教育は変わっているのですかと。私はおせっかいにも、確かに、そうなんですが、富士見丘のようなグローバル教育の環境をすべての高校がもっていると認識しちゃうと、他の学校にいったとき、あまりのギャップにびっくりしますよとフィードバックしました。

★以上のような前提(最小限の情報ですが)を共有して富士見丘の高2のパフォーマンスを振り返ると、その突出した資質能力のレベルの高さが良く理解できると思ったわけです。

|

2024年2月16日 (金)

22世紀型教育準備へ(04)今東京私学の数学科の教員の数学的世界作りが凄い!

★東京私学教育研究所ブログに、【研究所ブログ第11回】「授業づくり合宿ー小田原 春の数学祭ー」の記事が掲載されています。研究所の研修委員会は25種類あって、数学の委員会もその一つです。委員は、すべて公募によって、東京私学中学高等学校協会の会員校の先生方が意欲的に手を挙げて形成されています。現在の委員は、次の通りです。学校はバラエティに富んでいます。

※委員名(支部・学校名・敬称略)
 委員長:武藤 道郎(③芝)、委員:鈴木 徹(⑦大森学園)・赤間 祐也(⑩武蔵)・及川 寿幸(⑫ドルトン東京学園)

Photo_20240216073701

★私学の先生方は忙しいのは周知の事実ですから、宿泊してゆっくりカジュアルにラディカルにディープに対話しようではないかという企画なのでしょう。最近の数学の先生方の大いなる関心は<日常の事象を数学をつかって解決する活動では、「目的に合わせて、生徒たちが自分たちで条件などを設定する」活動も要求され、たとえば、数学的モデル化の過程を経験していく授業づくりもそうである。そのような授業づくりを私学の先生方といっしょに取り組んでいまたい」ということのようです。

★何せビッグバーンが起こったときに、そこにあった法則は、まず「数学の法則」です。他の学問は、宇宙の進化と共に不変と変化のダイナミズムの中で生まれてきています。「数学の法則」は、不変/普遍なのです。それがゆえに、目の前の日常生活に追われていると、大学受験勉強もそうですが、その数学の本来的価値を見失ってしまいます。

★そこを回復しようというラディカルなアイデアが、数学の委員の先生方なのでしょう。もちろん、そのために、日常の授業の中にICTを取り入れたり、グラフ理論やデータサイエンス的な要素をいれたり、OSTという対話方法を組み込んだりして、授業を創意工夫することについて対話し、実践に取り入れていくわけです。

★ともあれ、数学は、そうした未来永劫不変/普遍の宇宙言語なのです。めちゃくちゃロマンがあります。

|

2024年2月14日 (水)

22世紀型教育準備へ(03)三田国際 MITaへ

★三田国際学園の副校長今井誠先生から、教育関係者に、2024年度の中学入試の結果データがリリースされました。今井先生によると、今年の入試の特徴としては、同時出願回数を5回から3回にする募集要項の内容変更により1)延べ出願数は若干減少したものの、実出願者数は増加。2)受験率の上昇 特に2/1第1回は最大で92.7%と平均しても90%を超えているということです。しかし、何より驚愕なのは、さらりと次の声明を出しているところです。

Mita_20240214194901

(イメージはbingが作成)

★来年度にはサイエンス環境をさらに充実させるために「ラボ棟(仮称)」を増築するというのです。そこでは、ロボット開発やデータサイエンスといった、これまでのラボとは異なるサイエンスの新しい拠点とするのだと。ロボティクスやビッグデータ解析に精通した教員も生徒たちとともに学べることを楽しみにしているということです。

★もう、大学になってしまおうということですね。

★これは22世紀型高大連携です。大学が高校に何か教えるという関係ではなくて、三田国際がある一定の大学の研究領域を学んでしまうということです。それに大学がついてくるという逆ベクトルが作用するわけです。資金調達はどうするのか?ハーバード大学流儀でいけばよいのでしょう。

★ともかく、医療系とコンピュータサイエンス、国際政治経済などは、高校生段階でどこまでも研究できるのです。

★三田国際は中高でありながら、MITaになるわけです。そんなことができるのか?AI時代とは、大学入試自体をショートカットするということを意味します。22世紀のビジョンが三田国際にあります。三田国際の中学生が人生百年時代ですから、22世紀でクリエイティブリーダーとして大活躍しているのが想像できますね。

|

22世紀型教育準備へ(02)新しいプロジェックト World Making Wisdomを求めて

★工学院大学附属教務主任田中歩先生や一般財団法人日本私学教育研究所の伊東竜さん、ノイタキュード代表の北岡優希さんとまだ現段階では言えない(4月中頃に告知)のですが、教育関係者の方々と新しいプロジェクトが始まります。このプロジェクトはいろいろな方と自然と社会と精神の循環を実装するWMW(World Making Wisdom:世界制作の智慧)を教師と生徒のみならず地球市民が共有します。そしてこのWMWは地球市民にとってNew Commonsになります。

Wmw_20240214065101

★このプロジェクトを運営実施していくというかメンバーと対話する時に、WMWコードを共有します。このコードはいわゆるルーブリックではなく、それぞれの内的な問いの生成の基盤です。

★対話とは、dialogueの訳語ですが、日本で最初に訳された時は「問答」だったそうです。

★「対話」は外から見える話している時の姿を映し出しますが、「問答」は内的な知恵の発動です。dialogueのイメージがいわゆる外生的技術と内生的技術の両面をもっていて、今この両面を融合するときがきました。その媒介がWMWになるでしょう。

★「問い作り」はたいへんだと、世の中では言われていますが、本当はそんなことはありません。少し瞑想して「空」にすると、すぐに問いたくなります。一人でいると対話したくなります。つまり問答したくなります。

★その問いがWMWコードのどの領域にあるのかメタ認知し(自分だけではできないので対話なのですが)、そこを深堀していく問いの構造はいろいろありますが、トウールミンモデルでいけるでしょう。この深堀する問いを、DQ(Deep Questions)と呼んで起きましょう。

★また、各領域を越境する問いもあります。ここはたぶんシンプルにグッドマンモデルでいけます。このような領域越境型の問いをCQ(Cross Questions)とプロジェクトメンバーは呼んでいます。

★DQは、最初はまず事実確認の問いが発動しますが、そこからその事実に関係する背景やつながりをめぐる問いが発動します。やがて、深く行き着くと他の事実につながる領域横断のCQが立ち上がるところまでいくときがあります。

★一方、CQは体験的直観で、深堀する前に直感的生まれる場合もあります。DQはロジカルですが、CQはカジュアル・ラディカルの場合が多いですね。

★初等中等教育では、学問知より、世界制作叡智をベースに持っておくのが先行します。みんなが学者になるわけではないからです。あらゆる活動の基盤であるWMWといニューコモンズを持続可能にすることが、新たなプロジェクトのミッションです。

21世紀型個教育機構のカンファレンス 2024年2月18日(日)「22世紀型教育へのレバレッジポイントを創る」の中でも、プロジェクトメンバーが話すので、少しWMWについて話されるかもしれません。

|

2024年2月13日 (火)

22世紀型教育準備へ(01)順天 新たなステージ 18日長塚校長が語ります。

★順天の学校長長塚先生と対話する機会がありました。今年の中学入試は爆増で、広く深い教育に対する考え方を持っている保護者がますます増えたということです。受験業界では、まだ従来型の学校と新しいタイプの学校という分け方をしていますが、学校の中から見たら、そのような分け方は保護者の学校選択にエラーやズレをつくる可能性があります。今や東京の私立中高一貫校で、新しいタイプの学びを取り入れていないところはないのです。もちろん、伝統も継承しています。伝統と革新のバランスや統合の仕方が各私立独特なのです。

Photo_20240213210201

(順天の生徒は、学内外で探究の成果をプレゼンしています。イラストはBing作成)

★順天は、知識を系統的に身につけるベクトルと経験をベースにした探究学習のベクトルのバランスがよい学校です。キャリア教育も受験勉強ももちろんするけれど、グローバル教育や筋金入りのボランティア教育といったグローバルリーダーの使命感が生徒の内面い生まれてくる教育を行っています。

★その使命感と北里大学の理念がマッチして、法人合併について昨年リリースされたのです。中学入試の出願数は爆増。しかも量的な増え方ではなく、順天のそのような教育に共鳴して増えたという質の話だと長塚校長は語ってくれました。

★しかも、今年の4月から教育関連法規が改正され、クリエイティブクラスを生み出そうと学校が意志決定すれば、おもしろいことができるのだと。意外とそのことについて知らない学校が多いし、教育関係者も半信半疑のようだと。それで、2月18日の21世紀型教育機構カンファレンスで、その新しいステージついて、そしてそれに伴い、新しい高大連携の兆しについて、ご自身の学校の例や文部科学省のワーキンググループのメンバーとしての視点から、一般化して話してくださるということです。

★実に楽しみです。大学入試が変わらなければ学校は変わらないなどという言い訳がきかなくなる、新しいステージが出現します。新しいステージを創ろうとするかしないか、もはや学校自身、教師自身の意志と意欲の問題になってきたのです。

|

2024年2月11日 (日)

2025年変化する中学入試(28)ザ・成城学園に期待

★2月6日、小澤征爾さんが逝去されました。そのことについて、成城学園のサイトでもご冥福をお祈りするコメントが掲載されています。成城学園の卒業生であると同時に、当時子供のための音楽教室が桐朋女子に移管されていて、反田恭平さんなどを輩出している桐朋女子高校音楽科設立のタイミングで高校から今の桐朋学園大学音楽学校に進んだということです。そして、貨物船に乗船し、スクーターを持参して渡欧したわけです。そこからは、もう破竹の勢いで、世界の小澤になっていくのは周知の事実ですね。

Ozawa

★当時は、まだ1ドル360円の固定相場制の時代です。今のように海外にだれでもが行ける時代ではありませんでした。私の叔父が小澤征爾さんと同世代で、今の芸大ではなく、まだ東京音楽学校のころそこで学び、どうやってイタリアに行ったのかわかりませんが、モナコというテノール歌手に弟子入りしていました。花は開かなかったのですが、イタリア国籍を取得して、当時留学事情は、今のように完備していなかったので、芸大の留学生はイタリアでパスポートやビザなどの関係で困ったら(当時の治安はよろしくなかった)、ローマの本間を頼りにせよといわれていたと、あとで叔父にお世話になったという建築デザイナーに聞きました。

★叔父はときどき帰国し、小学生1年ころ私にピアノを手ほどきしてくれました。残念ながら私はピアノはまったくダメで、すぐにやめてしまいました。ただ、その叔父のことや中学生になったときに知ることになる小澤征爾さんの今でいうグローバルなアクションは、今でも私のロールモデルの1つです。とはいえ、海外に飛び出すことはなかったし、こうして静かに生きているわけです。

★ただ、叔父に憧れて、高校は叔父の母校に進みました。母校は自由気ままな教育が行われていたし、下宿をしていたので、同じ下宿の先輩後輩とよく議論をしていました。大学は東京だったので、カトリックの寮で3年間過ごしました。愛光、静岡聖光、ヴィアトール洛星、六甲などのカトリック学校出身の寮生が多かったですね。先輩を頼って公立出身の私が混じっていたのは、異例だったかもしれません。

★しかし、自由な校風で高校生活を送っていたので、寮生活はすぐになじめハッピーだったし、いろいろな中高の教育があるものだとそのときに大いに刺激をうけました。

★それぞれの寮生が通う大学の授業もひょうこひょうとついていき、講義を聞いたり、そこの教授と話をしたり、牧歌的な時代でした。そんなとき、成城大学の先輩もいて、クラシックの話をよく聞いたものです。マーラーの2番復活は小澤征爾さんのLPレコードで聴いたと記憶しています。

★大江健三郎さんがノーベル賞を受賞した時、私の居住地が大江さんの自宅までバスを使えば1時間かからないので、なぜか拝みに行きました。ただ単に大江健三郎さんの若い時の私学論と自分のお子さんを私立学校に通わせてからの私学論がシフトしていたので、気になっていただけなのですが。そのときに、成城学園のあたりも歩きながら、なんともいえない学園都市の空間に魅了されたものです。

★その後島根県で小泉凡さんと出会うこともあり、成城学園出身だという話で盛り上がったりしたました。そのとき、凡さんが大江さんに今のノーベル文学賞受賞者のラインナップをみていくと、小泉八雲の時代が来ましたよと声をかけられたという話を聴いて、小澤、寮時代、大江、小泉という成城学園にかかわる何かを感じていました。

★そして、キーンツハイムにあるアルザス成城に立ち寄る機会があったり、アルザス成城が活用していた元修道院の場所を活用していろいろな教育プログラムを企画する仕事をしたりして、成城学園への憧れみたいなモデルが私の中にできたような気がします。今後のアルザスと日本の教育についてヒアリングに羽田孜元首相のところまででかけていったりもしたほどでした。

★また、お世話になった東京私立中学高等学校の副会長だった實吉先生が、よく「ゆるやかな理念共同体として私学論」を語ってくれたとき、江原素六や福沢諭吉、新渡戸稲造、内村鑑三、石川角次郎を≪私学の系譜≫のルーツとして論じるのはもちろんいいが、本間さんは公立出身だろう、私立と公立の融合点を探れる澤柳政太郎を忘れているんじゃないか、もっと勉強したほうがよいよとアドバイスをくれたときがありました。

★實吉先生は麻布出身なので、麻布の創設者江原素六を大切にしていましたが、私学と官学の現状で一線を画する時と未来を考える時では、区別していて、柔軟な視野を広げていました。

★澤柳政太郎と言えば、成城学園の創設者です。21世紀型教育でPBLをデザインしていく時、たしかにそのルーツである成城学園に学ぶことは必須でした。ただ、そのときは、まだ私は、ハワード・ガードナー教授とシーモア・パパート教授に影響を受けていたということもあります。またローティを通してデューイの重要性を知ってはいたのですが、ローティーの哲学をじっくり探究する時間がなくて、なにより難しくて、デューイは後回しになってしまいました。

★ところが、思考コードを制作している途中で、成城学園の青柳先生と対話の機会を頂けるようになり、高校に勤務するようになってから、さらに直接お話しできる機会を得ることができ、成城学園が近くなってきました。そして澤柳政太郎の文化遺伝子に直接触れる経験が持てたし、ダイレクトにデューイの本を読めばよいと気づくやそこからは、成城学園が、「ザ・成城学園」であるという認識が確立していったわけです。境新一教授のゼミの学生とも親交があり、ますます「ザ・成城学園」だなと。

★なぜ澤柳政太郎なのか。最近業界人や異業種のリーダーから2045年以降の学校の姿を具体的に問われることがあるのですが、そのときのロールモデルは「ザ・成城学園」ではないかと思っているからです。

★今年の中学入試の出願数では、昨年爆増でしたから、隔年現象でしたが、定員確保には全く影響がないわけですが、ただ帰国生入試の出願数が増えているのです。これは今年の帰国生入試は減少傾向で、2月1日以降の国際生入試が増加傾向という、外国語を学んでいる受験生の新たな胎動が生まれている中、逆に帰国生入試で人数が増えているのというは、「ザ・成城学園」のなんらかの魅力が海外に知れ渡り始めたということでしょう。

★「ザ・成城学園」。成城学園という一つの私立学校というだけではなく、私立学校全体そして教育全体、そして成城学園という都市と大学と初等中等教育学校、幼児教育という関係性の新しい世界都市モデルという意味で、今後の期待がかかります。

|

2024年2月10日 (土)

2025年変化する中学入試(27)学びの規制緩和 だから建学の精神が注目される!

★いよいよ学びの規制緩和が始まった。こども基本法の実現のために、いろいろな局面で規制があった子供たちの学びの機会を解放する動き!です。大いに歓迎すべきであるけれど、スーパーリバタリアンになるのは混とんを招きかねない。そこで、教育においては法実証主義的なリーガルスキルではなく、自然法論的なリーガルマインドが求めらられる時代になります。法実証主義だと、規制しすぎる場合もあるし、法律規定がないからその領域は無法地帯になるということもあります。

★自然法論だと、あくまで教育の領域の話ですが、憲法や教育基本法、こども基本法など価値観を生徒1人ひとりが内面の基準として社会が幸せになるための自己活動が行われます。でも、理想的過ぎます。そこで、私学ならではの建学の精神です。入学時に、この魂を尊重するという契約を交わして入るわけで、ルソー的な社会契約観なのです。私学はもともと啓蒙主義的価値観ですから。

Photo_20240210135101

★学びの規制緩和の動きとは何かというと、

①経済的制約からの解放

②偏差値基準からの解放

➂学びの規制からの解放

★ということでしょうか。①は、高校での所得制限を撤廃して実質無償化の方向に進むということが1つそうです。②は、渋谷区の小中学校のように、従来の教科授業は午前だけで、午後はみな探究にするといった政策や、高校の36単位は柔軟に対応できるとか、特例校はカリキュラムをかなり自由にできるということなどでしょう。従来の授業は、その背景にどうしても偏差値基準で評価してしまう暗黙の規制の存在が実態でしたから。➂は、海外からの学校が参入してきたり、外国籍の生徒が留学してきたりして、従来の学びのルーチンを解放していくということなどが例です。対話やディスカッションが学びのメインになってくる。実はこれは基本的人権の土台です。

★今年の中学入試も、帰国生入試と国際生入試の区別がきっちりすることで、国際生入試の機会が増えました。英語が得意な生徒に中学入試の受験の機会を増やしたという学びの解放がありました。また適性検査型や思考力入試などの受験生が増えたということは、偏差値で測れない新しい学力観が受験市場で支持を得てきたということで、偏差値基準からの解放という動きがでてきています。

★このような動きに対し、反動的な動きもあるし、従来の学力観から心配する声もあります。

★しかし、社会は変動します。変動を良い方向に持っていくには、ポジティブに建学の精神のような自然法論的なルールと倫理を実践しながら、知識から智慧へ、ハードパワーからソフトパワーへという動きに挑戦せざるを得ないでしょう。

★大事なことは、解放の行方をモニタリングするリフレクションのシステムです。政治的権力や学問的あるいは教育的権威に頼るだけではなく、こども基本法などにのっとり、生徒自身が教育政策をモニタリングするシステムを創ることですね。

★今の子どもたちは22世紀を自分たちの手で創らねばなりません。来年昭和100年です。社会が変わることに心配している人は、だれのために心配しているのかを自己モニタリングしたほうがよいでしょう。

★また、そのような心配をされている方は、自分自身が西田幾多郎のように考え抜いたか、戸坂潤のように権力に抵抗したか、田辺元のように新しい発想を持ち込めたか、田中美知太郎のように、良き社会の基盤を考え抜いたか、自問自答してみてください。もしそうでなければ、彼ら以上に考え行動しているに現代の西田幾多郎である落合陽一氏、現代の戸坂潤である斉藤幸平氏、現代の田辺元である古賀真輝氏、現代の田中美知太郎である納富信留氏のような若き俊英のみなさんの考え方をリスペクトしてください。

★彼らは、今の動きを促進しつつもきちんとモニタリングして、22世紀の社会を開こうとしているのです。もはや図のような方向性に向かうことをとめられはしないのです。もしとめようとすると、それは破壊行為になるでしょう。平和か破壊か?もう選ぶ方向性は平和ですよね。しかし、この覚悟は並大抵ではありません。実際破壊的行為を暴走させている現在の国々があるからです。私たちは、どちらの道を歩みますかということです。

|

2025年変化する中学入試(26)日駒 総出願数 前年を上回る そのインパクト

★日本工業大学駒場中学(以降「日駒」)の総出願数の前年対比は、116.7%。前々年対比は、187.2%(首都圏模試センター2024年2月7日現在)。昨日毎日新聞のインタビューで回答していた首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成氏によると、首都圏中学受験者数は、推定5万2400人で、昨年より200人減少という超微減だったようです。そんな中、日駒受験生増える一方です。

Img_4426

(同校図書館にはいるとこのサークルソファーがドーンっとあります)

昨年、日駒を訪れたとき、約束の時間より早く着いてしまったのですが、受け付けからすぐに入れる図書館で待たせて頂く機会を得ました。すると、中学生のみんなが、手に手に好きな本をとって、大きなサークルソファーの中心に向かってみんなでうつぶせになってゆったりとした状態で、語り合いながら本を読んでいました。

★心理的安全を象徴するようなサークルソファーで、遊びと学びが融合したその象徴的姿に微笑ましくなり、ついこの学校の魅力はどんなところと尋ねると、毎日楽しくてしょうがないと即答でした。

★校舎のデザインもOBが設計したというのですが、外界と接合している自然とキャンパスと生徒の息吹が一体となり、雪の日などは、ワビサビを感じつつも、自然の厳しさを感じることができる共生や共存の本来的な意味の気づきをアフォーダンスする計算になるほどすばらしいと感じざるを得ませんでした。

★新井先生の美術の授業を拝見しに行ったのですが、アートこそ探究そのものだし、文化や歴史の背景を日常につなげる世界性があるなあと感じ入ったのです。

★駒東や世田谷学園の美術の先生とも語り合いながら、深いアートの魂の現実態へ実践と制作の授業の設計をしている新井先生。教科横断的素養が身につくし、学際的な探究の構えが生徒1人ひとりに身につくにはいかにしたら可能か。そんな語り合いがあるのが目に浮かびます。

★自然というバイオと社会がどうつながるか都市計画と健康の心身をそこでつくるためのメンタルエンジニアリングなどがつなるには、基本はこのアートの探究スキルとマインドが必要だなあと新井先生のお話をお聴きしながら感じ入りました。

★それに図書館を少し眺めていたら、新書を活用した探究学習が根付いていることもわかりました。

★知識の意味と身近な社会への応用と社会課題に気づいて、知識が次の新しい知識を生む過程が、言語とアートによって、それから同校の十八番のエンジニアリングが結びつけば、たしかに未来を創る生徒が輩出されるなあと。

★アートとエンジニアリングと言語、どれも表現というところ、形にするということ、つまり潜在的能力を現実を自ら創る能力に転換できる教育環境がアフォーダンスされている日駒。ワクワク毎日遊びと学びを融合させて、そしてなんといってもサークル上で寝そべって仲間と語り合える日々。受験生にとって憧れの場になるのは当然です。

|

2024年2月 9日 (金)

2025年変化する中学入試(25)アートの魂:日駒、駒東、世田谷学園、女子美、富士見丘、共立、大妻、聖学院、八雲、工学院、文大杉並、和洋九段女子、三田国際、大妻中野、麻布、開成、武蔵・・・

★タイトルに挙げた学校は、たまたま私が知っているすばらしいアート活動をしている学校。私が知らないだけで、もっともっと他の学校もすばらしいアート活動を行っていると思います。ぜひ教育ジャーナリストの皆様、私立中高一貫校の美術や音楽の授業を取材して欲しいと思います。

71swlzvxd8l_sy522_

(結局、ハワード・ガードナーの創造性を養う多重知能に回帰するのかなあ。この本でレヴィ・ストロースを扱っている理由がなんとなくわかってきたかも)

東京私学教育研究所の実施している美術の研修を企画・運営している委員の先生方のミーティングや授業を拝見したり、学校づくり委員会のミーティングで座長梶取先生のお話を聴いたりしながら、ずっとモヤモヤしていました。確実にここにヒントがあると。

★STEAMだとかアート思考だとか、生成AIの話なども委員会の中では出てきます。それが直接研修会につながるかというと、それはそうではないですが、本来的な意味でダイナミックにつながっているというパラドクス。それをどう考えるのか、もやもや。学校づくり委員会がつくった造語「モヤモヤリフレクソロジー」が私の中で転回していたのです。

★先日も私学財団の方々と昨今の研修のテーマで必ず取り扱われる「探究と教科の接点」「ICTの授業の中で活用されると何が生まれるのか」などの話をしていて、思考を深める学びのツールの性格がエンジニアリング的だけれどアート的な話でもあるなあとモヤモヤしていたわけです。

★研究所に戻って、美術の委員会をサポートしている所員に委員会で行っている研修会の意図を聴きながら、教科横断的要素もあるし、エンジニアリングと違うアート的技術が明快であるなあと思いつつ。。。

★しかし、タイトルに挙げた学校の美術や音楽、工芸、エンジニアリングに共通するコンセプトX(いまだに未知なのでXとしておきます)があることだけはおぼろげながらみえてきたような。

★美術の委員会の研修は、すでに行った鎌倉彫体験や今度行うクロッキー体験です。どちらも学校現場で活用できると同時に理論的な視点も語り合うわけですね。

★ワークショップがどーんとありますから。

★素材→媒介→形になるプロセスがはいっている。あっ、これは、アリストテレスじゃんと。ここでまたアリストテレス。私のプロジェクトベースのプログラムは、ブリコラージュからエンジニアリングや編集に移行していくので、質料と形相、可能態と現実態の四肢的構造で組み立てていくのですが、素材=質料、形=形相、可能態から現実態に転回するのが媒介と置き換えるとアリストテレスだし、その媒介が最初はブリコラージュで徐々に構造化されエンジニアリング、アリストテレス的にはテクネーですよね。

★「アリストテレス×レヴィ・ストロース」モデルで、コンセプトXはみえてくるかなと。そんなことを考えながらググってみたら、アーティスト村山吾郎さんのブログに行き着きました。「制作哲学のために──ポイエーシス、ブリコラージュ、蛋白質」がそれです。STEAMそのものだなと。

★よく美術でコラージュを行います。意味が違うので、今まで結びつかなかったのですが、ブリコラージュと共通点がある。それはポイエーシスでありプラクシス。コンセプトXはそこらへんを統合するテオリア(考え方)のことだったのかと。ではそのテオリアとは?コンセプトXの領域がわかっただけで、何も内容はわかっていません。

★各私立中高のアートのポイエーシスとプラクシスの現場のリサーチ体験を積む以外にそこはみえてこないかもしれません。

★ああ、そうそう、数学的思考とは社会課題に結びつけるポイエーシスだとおもっていたけれど、どうやらテオリアとブリコラージュとエンジニアリングをモデル化して違いを明快にするプラクシスの考え方なんだということに今気づきました。

★「主体的・対話的で深い学び」を追究するのであれば、文科省と経産省のみなさん、アートに助成金いっぱい出してください。そういえば、フィンランドの教育は音楽教育にはものすごい支援していますよね。がんばってください、省庁のみなさん。ここに日本の新しい起死回生世界構想が誕生すると思います。

|

2024年2月 8日 (木)

2025年変化する中学入試(24)大妻中野 総出願数昨年を上回る 同校が注目される大事な意味

★大妻中野の2024年度の中学入試の総出願数の前対比は105.0%、前々年度123.9%(首都圏模試センター出願倍率速報)。昨年が爆増していたので、隔年現象になるかもしれないと思っていましたが、今年も出願者は多くなったわけです。同校がこのように注目されることはとても大事な意味があります。

Photo_20240208083601

(教務主幹高村先生が、同校の教養を支える数学的思考の突出性を語られています)

★大妻中野といえば、破格のグローバル教育がまず思い浮かぶと思います。それと音楽です。Nコンでも何度も賞を受賞しています。それからSTEAM教育も着々と進んでいます。

★そんなわけで、人気があるのは当然なのですが、副校長の諸橋先生や教務主幹の高村先生は、大妻中野の教育作りを通して、これからの教育をどうするのか実践的なロールモデルを提供するという地球市民教育全般へインパクトを考えていると語ります。

★この志の高さに共感する受験生が増えることはたいへんすばらしいことであるのは間違いありません。

★さらに、この大妻中野の教養のつくりかたですが。グローバル教育ですから、「言語の理論」がしっかりしています。そして「音楽」に代表される「アート」ですね。さらにとても重要なのは、文理融合的な「数学的思考」がその両者を結び付けているといういことです。

★教養というとどうも文系的な雰囲気を感じるのですが、大妻中野の教養はあのリベラルアーツの本道なのです。このような教育は、意外とないのです。なぜなら、日本の多くの数学は、理系中心だし、受験数学に直結する教育になっているところが多いからです。

★教科横断のベースに数学的思考の力の育成があるというのは、大事なロールモデルなのです。

|

2024年2月 6日 (火)

2025年変化する中学入試(23)大妻と共立女子 総出願数前年対比100%を上回る

★首都圏模試センターの出願倍率速報(2024年2月5日現在)によると、大妻の総出願数は103.8%で、共立女子は103.7%でした。両校はよく比較されるのですが、今や共通点こそおもしろい。それは「ラディカル」。

Festa

★「革新的」というとイノベーティブとなるかもしれませんが、両校はその訳語は「ラディカル」が当てはまるなあと感じます。

★イノベーティブはなんか世界をかえるツールを創出する感じなんですが、ラディカルは世界を創ってしまうという感じなのです。

★ツールを創るという媒介ではなく、生徒自身の息吹が世界を創るという感じです。

★幸い両校のイベントあるいは授業で生徒の皆さんの圧倒的なパフォーマンスを見る機会があったのですが、ラディカルがしっくりきました。

★圧倒的な人間の感性。もちろん、論理的思考もベースにありますが。

★思考は引き算の美学で、感性は圧倒的な迫力と豊かさ。

★このような学校が人気があるということは、日本にも希望があります!

|

2025年変化する中学入試(22)中学入試の算数の学び方を変えるとおもしろい 私学の数学教師が集う 春の数学祭り!

★中学入試の学びは、何かすさまじいストレスのように感じるような批判を浴びることがあるけれど、それは受験勉強だからです。国語は、論理的思考だけ学ぶのではなくて、目からうろこの考え方や価値観を学べます。小6になったら問いをトレーニングするけれど、それまでは、目からうろこを楽しむ読解やスピーチやドラマや創作などめちゃくちゃ楽しめます。そして自分を見つめる心理学もやれます。

810xe4aw17l_sy466_

★それに、中学入試の国語の授業デザインやカリキュラムを考えるとき、私立学校の先生方がどんな研究をされているのか思いを馳せてつくるのが塾予備校の先生方です。国語の場合、大学の研究者が、自分の研究を中学生にもわかるように書きます。詩人や作家も小学生対象に書くこともあります。かつては児童文学でしたが、最近はそうではなくなってきています。その著書から出題されるので、おのずと、塾予備校の先生方は、その著書の理論やコンセプトレンズを学びます。私立学校の先生方は、当然大学入試を研究しているので、そういう理屈を学んでいます。

★言語における大学の理屈=中高の理屈=塾予備校の理屈になっています。それを見破っている塾予備校の先生がいるところは、楽しいですね。

★同様にほかの教科もそうです。社会や理科は、いうまでもないでしょう。

★ところが、算数は、一見数学と違うので、この数学における大学の理屈=中高の理屈≠塾予備校の理屈になりがちなのです。算数は、数学をそれほど知らなくても解けるので、数学を学んでいなくても算数の講師になれます。すべてがそうだとはいえないのですが、その場合、難しい算数の問題が解けると達成感があるとうことになり、その達成感ばかり追うようになります。これについていける受験生は楽しいでしょうが、そうでない場合、苦痛です。

★ところが、麻布や開成や武蔵の問題を見ると、数学における大学の理屈=中高の理屈=中学入試の算数となっているのがわかります。中高の数学の教師は、もちろん、難しい問題が解けて達成感をもつことも大切にしていますが、もっと世の中の事象や現象を数学的モデルに置き換えるとどうなるか、社会課題などと結びつく授業を模索しているし、ICTを活用してグラフや図形の移動や空間シフトなど楽しいツールも活用しています。

★実はこのことに明快に気づいたのは、東京私学教育研究所の理数系教科研究会(数学)委員の先生方の活動を見ていて感じたからです。委員の先生方(名前・支部・学校名)は、次のような先生方です。
委員長 武藤 道郎先生(③芝) 委 員 鈴木 徹先生(⑦大森学園) 赤間 祐也先生(⑩武蔵) 及川 寿幸先生(⑫ドルトン東京学園)

★この委員の先生方と研究所の所員が協力して、「授業づくり合宿−小田原 春の数学祭−実社会と数学の交差点 ~数学的活動を楽しむために~」というテーマで合宿をします。残念ながら東京中高協会245校の会員校の先生方しか参加できないのですが、終わりましたらまたご報告します。

★そして、数学っておもしろいなあと思って、甲陽学院の数学の古賀真輝先生が執筆した「数学の世界地図」を眺めたら(読むことは私にはできませんでした(汗))、数学における大学の世界=中高の数学=中学入試の算数=宇宙というのがつながったのです。

★古賀先生は開成出身ですから、開成の文化遺伝子も有しているでしょうから、ますますこのつながりが濃く見えてきました。

★しかし、このようなつながりがなかなか見えないのが、中学入試の算数ですね。

★聖学院の「思考力入試」は数学の先生もたくさんかかわっています。トポロジーを活用したりレゴとデータを変換したり、写真と言語活動を置き換えたりして結構数学的思考が使われているのは、やはりこんなおもしろいつながりを暗黙知としてもっているからでしょう。

★中学入試を学校の先生の眼差しから見て考えてみると、実はこんなおもしろいことに気づいてほしいなというメッセージが聞こえてくるかもしれません。

|

2025年変化する中学入試(21)聖学院今年も総出願数100%を上回る。創造性と愛のしなやかでタフな教育システム

★昨夜からの雪で、東京もたいへんなことになっていて、現在進行形の中学入試の様子が心配です。受験生も学校の教職員の皆様もお気をつけください。聖学院は日曜日で、入試は終了しました。とはいっても歩留まりや手続きはこれからですから緊張感は続いていると思います。とはいえ、まずは総出願数をみてみると、前年対比112.9%(同校のサイトと首都圏模試センター出願倍率速報の両方から算出)。今年も人気でした。

Photo_20240206084301

★聖学院といえば、思考力入試ですが、なぜでしょうか?もちろん、聖学院の思考力入試の問いのラインナップや学びのツールが斬新だし、能力開発プログラムになっているし、同校の探究教育のエッセンスが反映しているし、実際この試験で合格した生徒の入学後トランジションがすばらしい成長をもたらしている等々だからです。しかし、それは目に見える部分の話なのです。

★聖学院の各入試の定員の割合は、一般:アドバンスト:思考力:英語特別=43.2%:35.1%:18.9%:2.7%なのです。そして、思考力入試の倍率は4.1倍、英語特別入試の倍率は3.0倍です。

★このことから、聖学院の創造性と愛を生み出す緻密でしなやかでタフな教育システムが推理できます。

★一般とアドバンストの入試の定員は8割弱で、思考力入試と英語特別入試を合わせると2割強です。つまり、思考コードでいうとA軸とB軸の思考ベースが得意な生徒が8割弱、B軸とC軸の思考ベースが得意な生徒が2割強という設定です。このB軸とC軸の思考ベースの入試が新タイプ入試と呼ばれている入試です。

★一般入試のほうは、聖学院の教科授業型です。新タイプ入試は聖学院の探究型プロジェクト型と言ってもよいでしょう。

★したがって、聖学院は探究だけが教育であるとは主張していないし、授業だけが大事だなどと主張してもいないのです。探究が中心の学校、教科授業が中心の学校はもちろん、あります。ですから、教育環境のデザインは、聖学院は聖学院らしい設計をしているというのがわかります。

★東京では、授業が中心の学校は、50%弱です。探究と授業のバランスをとる学校は50%強です。でも、内訳をみると、授業の中にC軸ベースの思考の機会を設けている学校もあります。探究と授業のバランスをとっている学校で、探究と授業の機能を分けているところもあります。つまり、授業はA軸とB軸、探究はB軸とC軸という風に。

★聖学院は、授業でも探究でも、C軸の思考は扱います。ただ、その比率が違うだけです。

★このように聖学院は、多様な才能の生徒がマッチングできるような中学入試を行い、A,B,C軸の比率をしなやにデザインしていくわけです。これによって個別最適化ができることと協働の在り方がシナジー効果が生まれるようにできています。

★つまり創造性と愛が生まれるしなやかでタフな教育システムが確立しています。

 

|

2024年2月 5日 (月)

2025年変化する中学入試(20)八雲学園 自己発見入試 新しい入試風景

★本日、八雲学園は「未来発見入試」を実施しています。同校の最終試験です。今年は、あの塾の応援がずらりと並ぶ風物詩はなくなりました。その代わり、学校の多くの先生方が正門前まででてきて、受験生にエールを贈る姿が温かかったですね。今までも学校の先生方はそうしてきたのですが、受験生は塾の先生方のところにまっしぐらでした。しかし、今は受験生と学校の先生方の互いの挨拶から始まります。入試本番から、学校が前面にでてくるのはある意味本来的です。

Img_6007

★公立の小学校は中学入試の準備はしませんから、そこを中学受験塾が補うのですが、それは入試本番前までのことです。もちろん、受験生は最終的に進路先が決まるまでは塾の先生方を大いに頼りにしますが、働き方改革とかハラスメントなどの問題に厳しい時代です。塾としての良好な関係を受験生と健全につくる方向性に進んでいるのは確かですね。

★塾主導の「中学受験市場」と学校主導の「中学入試市場」の良好な関係。新しい価値創造をする学びの場を創る「私立中学校入試市場」とそこにつなぐ架け橋をつくる塾の「中学受験市場」の相互の役割をリスペクトする時代がやってきました。

★1985年までは、塾は合格を請け負い、教育は学校だという役割分担がきっちりありました。それが1986年から始まる中学受験塾市場の圧倒的な拡大によって、塾の中には、キリスト教止めなければ生徒は集まらないよとアドバイス(今なら問題です)するところまででてくる有様でした。偏差値を振り回し、外圧をかけるところもありました。ICTなんてやっていては東大合格はでないよと言うところもありました。

★しかし、今は、塾もグローバルシフトの時代です。私立中学が新しい価値創造をするときに、応援する塾も現れました。偏差値や東大ばかりが学びの目的ではないのだと。パンデミック以降、医学部人気がとまりませんが、今の医学部受験生は、生活安定ももちろん考慮しますが、パンデミック下や戦争状況で命を懸けて働く尊い仕事に使命を抱いてもいます。

★予備校のキャリアガイダンスも大いに変わっているのです。

★基礎学力も、知識重視型から学力の3要素という総合的な基礎学力観に変化しています。

★保護者の価値観も変わっています。保護者自身がグローバル教育を海外大学で経験しているという方も多くなりました。IBやAレベルなどの見識も既に持っている保護者も多くなりました。新しい学び方とか探究の仕方を保護者自身が理解している時代です。

★丁寧な学校の教育の内容について説明を求めるようになりました。

★八雲学園自身、ラウンドスクエアの認定校ですから、その情報を予めリサーチして期待をかけて受験するようにもなっています。20世紀型教育のよさとデメリットを保護者は知っていて、古きよきものを持続しながら新しい21世紀型教育を行っているか鑑識眼も持っています。

★そのような保護者と対話するには、同校の先生方も日々勉強です。そう菅原副校長は語ってくれました。

★また、広報部長でもある横山副校長は、ご自身ラウンドスクエア経由の留学生をホームステイで迎え入れたり、八雲の英語の教師を指導するUCサンタバーバラからの外国人教師もホームステイとして迎え入れています。広報活動もインターナショナルな標準にならなければとそうやって学び続けているのです。頭が下がります。

★今日も、横山副校長は、受験生が試験を受けている間待機している保護者に説明会を行っている最中でしょう。

★この時期、入試問題の解説など説明するということはありますが、何度も足を運んでいる保護者に説明会を丁寧に開くというのは、11日まで大変重要な戦略でもあるのです。

★実は、複数合格したのだけれど、まだ決めていないという家庭もあるのです。最後の決定打が欲しいと、すでに合格している受験生といっしょに説明会に参加したいというケースも増えてきたのです。

★そのぐらい真剣に子供の進路を考えているのが最近の傾向なのかもしれません。偏差値だけで決めていた時代とは大きな違いです。そうであれば、実際の教育の具体的状況を語れるのはその学校の教師であるのは間違いありません。

★教師は真面目ですから、誇大広告はしません。丁寧に現場の真実を語るのです。同時に保護者は教育の一定のレベルを期待してきます。したがって、それが相乗効果になって、学校の先生は毎年アップデートしていくのです。もちろん不易流行としてのアップデートです。

★パンデミック前と後では、中学入試の風景はやはり一変しました。塾は新しい価値創造する学校に合格できるようにそれぞれの学校のアドミッションポリシーに合った合格力を鍛える。学校は保護者の期待に応える新しい価値創造のための学びのクオリティーをアップデートしていく。シンプルな良好な中学受験市場と中学入試市場の相補関係が生まれています。それが2025年もっと明快になるでしょう。

★具体的に、4月以降それが分かる動きが両市場に出てきます。お楽しみに。

|

2025年変化する中学入試(19)武蔵 社会 学際的問い

★2024年度の武蔵の社会は、地理も歴史も公民も統合して、「労働あるいは働き方とは何か?」という大テーマ主義で総合的に問いを投げかけています。そういう意味で傾向は変わらないといえば変わらないのですが、近代資本主義の生んだ課題について考察する骨太の問題という点では、角度といい、深さといい、それでいて、クリティカルシンキングで寸止めして出題というのは、奥深い何かを感じてしまいます。

71syqq5lvgl_sy522_

★ライフシフトの時代についてどう考えるのか、根本的なところをまず押さえようという姿勢が、なんとも武蔵の先生方らしいですね。昨今の中高の進路指導のあり方について、大学入試の形式にどう合わせるかではなく、もっと経済社会や政治社会やそれにかかわる生活者の視点を総合的にとらえたうえで、社会と自分の諸関係の将来を見つめるキャリア教育をとさりげなくメッセージを投げかけているような気がします。

★なにより、縄文時代の矢じりと土器の機能などについて問うところから始まるところが心にくいですね。

★単純に知識問題ですが、自然と縄文社会と生活の循環があるというインスピレーションから、徐々にその分断と富の偏り、多様な格差の問題に発展していく実に学際的な問いの連続に思考力とは何かを改めて考えさせられます。

★それから、説明する際に、事例を一つ選ぶという自由な設定が、入試という制約された枠の中に設定するというのも、いつもながらすてきですね。生徒の感性や知性や体験性などが広がるあるいは深まる自由とか余白の条件をいつも考えている武蔵の先生方の姿勢が反映しています。

|

2024年2月 4日 (日)

2025年変化する中学入試(18)成立 地球の希望を実現する私学

★首都圏模試センター2月2日現在の出願倍率速報によると、成立学園の総出願数の前年対比は109.2%。中学受験業界のシンクタンクの方々によるとどうやら中学入試は超微減のようす。横バイということでしょうか。その中にあって、成立は前年対比を100%上回ってきました。これはすてきなことです。なぜなら、成立は身体性・精神性・社会性すべてがウェルビーイングな健康主義の学校だし、自然と社会と精神の循環を実体験し、そこから探求心旺盛に学際的な学びを生徒がしていける環境設定を学校全体で実践している学校。それは地球丸ごとケアする学びです。

Photo_20240204200801

(見えない学力を大事しているそのシステムまで語る宇田川先生。それによって生徒の自己成長がすごいと誇りを持っている先生方の様子も語り尽くしています。)

★福田校長には叱られるかもしれないですが、小学校6年生というのは、まだまだ潜在的能力が覚醒していない子供らしい子供もいます。そのような子供が楽しい学びを求めて成立学園を目指します。だから、筑駒や開成、麻布に合格する子どもたちとは、まだ潜在的才能覚醒度がゆっくりな受験生が多いと思います。

★しかし、その子供たちが、6年後覚醒して羽ばたくのです。ですから、筑駒の水耕体験もはるかに超える破格な体験ができる広大な場所「成立田」を創っています。

★開成の体育祭は有名ですが、本格的なサッカー部のような活動は破格なのです。

★麻布の思考力生成環境も有名ですが、成立学園の学際的思考力生成をサポートする強烈な姿勢は、麻布の先生方以上です。麻布の先生がその姿を見たら、構いすぎだよとは言わないでしょう。自分たちには、スタートの覚醒度の違う子供たちをこんなに飛躍する状況にできるだろうかと感心するに違いないですね。麻布の教師とは、そういう評価ができる心性を持っているところがこれもまたすてきなのですが。

★それに、SGDs的な経済システムを実装体験するコンビニも開設しています!

★福田校長先生は、そのようなことをすべて理解したうえで、地球丸ごと、もしかしたら宇宙丸ごとかもしれないですが、そのような大きな視野でみているので、その視野から見れば、受験業界の偏差値のような小さな基準にこだわることはしない剛胆な教育リーダーです。

★将来、私学を丸ごと背負うリーダーになるでしょう。

|

2025年変化する中学入試(17)桜美林 総出願数前年対比増の私立中学入試市場における重要な意義 希望のシステム

★首都圏模試センターの2月2日現在の出願倍率速報で、桜美林はすでに総出願数前年対比100.3%。最終的にはもっと増えていると思いますが、微減と言われる今年の中学入試市場で、この状況はすばらしいと思います。スコアがよかったとかそうでないとかそんなことではないのです。桜美林のような日本の教育の歴史のみならず、戦後民主主義を支える人材を輩出してきたそのシステムが不易流行よろしく持続可能であるということが、とても日本の教育にとって宝物なのです。

Ob1_20240204192001

(中学入試直前にこんな深い話をする先生方はさすがです!)

★第二次世界大戦後の焼け野原の日本社会を救った教育者は大勢いますが、皆忘れられています。しかし、桜美林は、学校システムとして建学の精神を不易流行というカタチでそのときの希望の光を持続可能にしています。このことがもう100年たって振り返った時に、あの大きなリスクに囲まれていた2024年に踏ん張っていたのだと歴史的意義が語り継がれていることでしょう。

★年末にお話をお聴きしたときに、堂本校長と協働してこの希望のシステムを持続可能にする組織のすばらしさが、有馬教頭と宇野国際部長のお話から伝わってきました。

★このような学校が選ばれ続けることは、日本には希望があります。私はそう確信しています。

★桜美林の過去・現在・未来を円環する歴史的意義については、上記の動画をぜひご覧ください。受験生のみなさんは、今なら本質の光が射しているので、大いに響くと思います。

 

|

2025年変化する中学入試(16)サレジアン国際グループ、三田国際、文大杉並 似て非なる学校 それぞれの独自性が私学らしい

★サレジアン国際学園とサレジアン国際学園世田谷は、今年も大人気で2月1日現在の段階で、前年対比は100%を上回っています。三田国際は、すでに高め安定しています。そして文大杉並は、本ブログでも何度も取り上げています。爆増が当面続く元祖ダブルディプロマ校です。

2022bunsugi07

(文大杉並の同僚と生徒と協力して同校全体の人的資本を豊かにする次世代教育開発部部長の染谷先生、21世紀型教育機構の21世紀型教育研究センターの主任研究員で、SGT:スーパーグローバルティーチャーでもある)

★未来の教育を創出して、21世紀型教育型の生徒獲得する方程式を見出したこの4つの学校。私立学校が学ぶロールモデルの学校です。

y=a(C1英語)×b(PBL)×c(STEAM)×d(Grobal)×e(Human Capital)×Uniqueness

★もちろん、定数やパラメーターが学校によって違うし、Uniquenessのパラメーターの変化速度が違いますから似て非なる4校なのです。

★どう違うかは、学校に足を運べばピンときます。とはいえ、本質的なものを見失わないように教育環境をデザインしているという不易流行の部分は共通しています。グローバル市民的な共感的コミュニケーションをベースにしているかどうかは、微妙に違います。「西欧的なグローバル市民性」ベースの学校と「東洋と西洋のバランスが取れているグローバル市民性」ベースの学校と「徹底的なインディビデュアリズムの追究」ベースの学校と違いはあります。どの学校がどれにあてはまるかは、関心のある方は考えてみてください。

★中学入試の世界は良い悪いは括弧に入れると、階層構造の影響があります。グローバル市民の種類によっては、この階層構造を公平性に持ち込む価値観を重視する場合もあります。

★八雲学園がそうですよね。同校のように、この世界を分断する壁を突破するグローバルリーダーの気概と寛容性が育つグローバル市民性という特徴を持っている学校が、これらを見定める基準の1つです。判断は、保護者の方々ご自身のプロフィールやメンタルモデルを基準にしてみてください。たいていは、現段階では(成長するにつれ違っていたことに気づくのですが、そのとき親離れ、子離れできるかどうかです)、受験生と保護者のメンタルモデルは似ていると思いますが、中にはすでに違う場合があり、保護者の選択感性と子供の選択感性の違いが明快な場合もあります。

★6日でほぼ合格の見通しはつくと思います。最終的判断は、そこをご家族でじっくり対話してみてください。

|

2025年変化する中学入試(15)私学の人的資本の見つけ方 例えば、多摩大目黒や巣鴨

★首都圏模試センターの出願倍率速報(2024年2月2日現在)によると、多摩大目黒の総出願数は前年対比を100%超えています。巣鴨も1回目と算数選抜は超えています。2日目は微減でしたが、最終試験3回目は本日入試があるので、最終的には総出願数は前年対比100%超えるでしょう。

★地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスク(一般化すると国際社会リスク、自然リスク、精神リスク)の混迷がもたらす経済格差と少子化による波を好転させるために私立学校はがんばっています。その中でも生徒獲得に多少差があるのは、外生的技術進歩の差異もありますが、なんといっても、その外生的技術進歩を生み出す内生的技術進歩を生み出す人的資本豊かなリーダーの存在が強烈かどうかです。

Photo_20240204075001

★このリーダーは、必ずしも肩書きリーダーではないのです。自分の人的資本を内省して自己マスタリーをし続け豊かにしていき、その資本を仲間と共有していくナチュラルモードのリーダーです。人的資本リーダーと呼んでおきましょう。この人的資本リーダーは、もちろん活動していく中で、教科の主任になり、分掌の部長になり、主幹になり教頭になり、やがて校長になりますが、校長にちかづくにつれ、誰でもがなるわけではないので、結局肩書きリーダーではなく、あろうがなかろうが人的資本リーダーはナチュラルモードのリーダなのです。

★生徒獲得がうまくいっている学校や困難にもかかわらず何とか持続可能にしている学校には、この人的資本リーダーが必ずいます。校長が変われば学校は変わるというのはまあそうですが、その校長を支える人的資本リーダーがたくさんいればいるほど学校の外生的技術進歩と内生的技術進歩は相乗効果を生み出します。経験上確信しています。もちろん体験的直観にすぎませんが。

★この人的資本リーダーを、受験生の保護者のみなさんはどのように見つけたらよいのか。意外とすでに行っていますが、⑦番目を実施している方は少ないと思います。まずは①から紹介します。

①学校説明会で個別の対話があれば参加する。ピンとくる人的資本に出会う確率は高いですね。

②学校のサイトで、活躍している先生の話が掲載されていれば、参考になります。海城学園のサイトには先生のリアルな紹介ページがあります。さすがです。人的資本経営の教育版です。

➂私学の先生が出版している場合が結構あります。志望校の先生が執筆していたら、目を通しておくとよいですね。麻布は、自ら麻布文庫を出版しています。これも人的資本の教育版です。さすがです。

④受験情報誌でも取り扱われている先生がたくさんいます。中には、パンフレットで語られていること以上語っている先生がいます。そういうときピンとくる確率は高いですね。

➄GWE(GLICC Weekly EDU)というYoutube番組があります。湘南白百合の水尾教頭やかえつ有明の佐野副校長など学校教育について丁寧に深く語ってくださる先生方が登壇しています。学校を越えて対話してくださる工学院の田中歩教務主任、文大杉並の次世代教育開発部長の染谷先生など多くの人的資本リーダーが登壇しています。

⑥それからfacebookですね。若者は見ないとか言われていますが、学校の先生方はSNSを活用します。瞬間的な告知というより、自分や仲間の活動を紹介しています。自分のことだけではなく仲間の活動を紹介するところが人的資本の豊さんを感じるわけですね。

⑦以前ご紹介しましたが、受験業界では知られていない東京私学教育研究所のサイトが私学人的資本の宝庫です。25の委員会があって、その委員は、東京の各私学の先生方が公募で集まります。冒頭で出願倍率について触れた多摩大目黒の川端先生や巣鴨の船久保先生はその委員で、研修を企画するメンバーです。多摩大目黒の川端先生は、超忙しいのに学校づくり委員のメンバーでもあります。英語の新しい学び方の研究者で、かつ組織開発論や人材開発論にも詳しく、実践者でもあります。船久保先生は、有名人です。にもかかわらずこうして東京私学のために活動もしているのです。こうして一つ一つ見るのは大変かもしれませんが、受験業界では、受験指導の側面に偏りがちですが、東京の私立学校の現場では、探究と教科の接点はなにか、対話と言ってもそのメカニズムとはとか、生成AIの使い方とその近代教育の閉塞状況との関連はとか、合理的配慮の問題に対応する丁寧なコミュニケーションのコンセプトと技術はとか、各教科の新学習指導要領対応の実践例をシェアしようとか、その実践例に登壇される私学の先生方の強烈な人的資本力など、慣れてくると、中学受験市場と中学入試市場の共通点と相違点が見えてきます。

★もちろん、川端先生と船久保先生だけではなく、多くの私学の先生方が、自分の学校だけではなく、東京私学全体のクオリティを向上させるためにセルフレスで活動しています。多摩大目黒と巣鴨の出願倍率を見ていて、ピンと来たのでお二人を例として紹介したのです。このような私学における人的資本リーダーが増え続けることが明日の子どもたちの社会に貢献することは間違いないのです。

|

2024年2月 3日 (土)

2025年変化する中学入試(14)和洋九段女子 ジャパノロジーとグローバルとエンジニアリング

★2月3日、和洋九段女子の午後入試に立ち寄りました。田安門側から登っていくと、菅谷先生が受験生に声をかけながら迎えいれていました。受験生はこのような気遣いにホッとします。中には元気よく菅谷先生と対話している受験生もいました。すでに昨日合格していて特待入試にチャレンジしに来ているのですと。

Img_6003

★いつもは、九段北一丁目の交差点から坂を登ってくるのですが、中高協会側から来たので、菅谷先生がいるところに向かって登っていったのです。すると、ふと菅谷先生の視線を追うと、日本武道館が顔をのぞかせていました。武道館に近いというコトは知っていましたが、こうして望んでみると、何か和洋九段女子の教育文化がよりイメージできました。

★今年の入試で前年対比100%を超えるもののほとんどが、グローバルクラスの入試だったのですが、英語教育に力を入れているだけではなく、ジャパノロジーも学ぶグローバル教育なのです。なるほど、武道や音楽の殿堂である武道館がこんなに近いのであれば、大会やコンサートの時は、その雰囲気が一気に広がる場所になるのだとふとイメージが膨らみました。

Img_6005

★武道も音楽もある意味アートですから、その雰囲気の影響は大いにあるのだろうと。グローバルクラスが注目されているのは、おそらく、すでに保護者が外国籍の方だったり、海外大学出身者だったりというご家庭の娘さんであるケースが増えてきているということも関係しているかもしれません。

★本多教頭先生にもお会いできたのですが、保護者の視野の広さが変わってきたということです。もっとも、和洋九段女子の教育が海外と日本の文化を結ぶ広いネットワークを作っているので、そこに共感した保護者、そして受験生がチャレンジしているということなのでしょうが。

Img_6004

★かつて、先輩たちの「SDGsすごろく」で受賞した懸垂幕があった場所に、新たに「政策甲子園」で受賞した懸垂幕が掲げられていました。和洋九段女子の生徒は、コネクテッドスクールよろしく、どんどん外部とのネットワークを主体的に張り巡らし、他流試合やコンクールに挑みます。

★受賞するには、いまここで出会った人々と共感しあう対話ができることが前提ですし、そこにグローバルな視野を結びつけかつ未来という時間軸も結びつけなければ優秀賞を獲得できません。

★しかも、ただ提案だけしているのではなく、具体的なアプリや情報ツールを創ったうえでのプレゼンをするのですから、エンジニアリングまで社会実装する生徒もどんどん育っています。最近ではメタバースまで研究しています。

★和洋九段女子のかつてのイメージとはかなり違ってきていますが、ジャパノロジーとして伝統も不易流行として継承しています。

★そういえば、武道館をさらに南にたどれば、皇居を超えてすぐそこに国会議事堂があります。在校生の皆さんは自然とフィールドワークもしているのです。通学や帰宅の道々がすでに探究の世界です。しかもグローバル都市の中心のすぐ近くにいるのです。

★なるほどPBLが全面的になじむ学校であるはずだったのです。なぜ、こんなに社会を幸せにする提案やアクションが満載の学校なのか、改めて気づきました。この立地で身に着けた無形資産は、将来必ず宝物になるでしょう。

|

2025年変化する中学入試(13)八雲学園 出願総数前年対比132.5% 「超面白い文化体験」と「破格のグローバル教育」の相乗効果

★八雲学園といえば、なんてったって破格のグローバル教育。たしかにそうなのですが、他の学校にないアクティビティが、「超面白い文化体験」なのです。ほぼ毎月学園の外に出てエンターテイメントを思い切り楽しむのです。もちろん日本の文化を堪能し、カリフォルニア州に行ったとき、留学生がやってきたとき、国際会議に出席した時、ジャパノロジーについて共有できる素養が身につくわけです。がしかし、とにかく楽しい!のです。

Photo_20240203100101

★教育とは人生の準備期間ではなく、人生そのものだというのが八雲学園。真剣さと面白さは、人生において両輪です。毎朝黙想から始まる内省の時間という質素清貧体験と帝国ホテルでの謝恩会のようなゴージャスな体験のスリリングでアクロバティックな学園生活。なぜ今まで多くの人がこのことについて気づいてこなかったのでしょう。しかし、2024年、多くの人がそのことに気づいたようです。

★同校のグローバルリーダーとは知恵と勇気と教養とユーモアを備えているでしょう。八雲学園のグローバルリーダー像自体が破格なのです!

★とにかく、2024年度の中学入試の出願総数の前年対比は、132.5%(首都圏模試センター出願倍率速報2024年2月2日現在)になりました。中学入試市場で多くの人に支持される学園になっています。新設の入試でそのアピール力を増したという戦略的なこともありますが、かりにその新設入試の出願分を差し引いても前年対比は110.9%です。

★同校の広報戦略は、前年対比を更新するだけではなく、さらに認知度を広めようという使命感を担ったということでしょう。

★自分の学校に来たいと思っている生徒にだけ、同校のすばらしい教育が伝わればよいのだというのではなく、このようなすばらしい八雲の教育を多くの人に支持してもらうことによって、2030年の日本の教育の在り方を多くの人にシェアしてもらおうという、広報戦略によっても日本の教育をさらに前進させたいという日本の子どもたち全員に対する思いがそうさせているのでしょう。

★まだ、5日の「未来発見入試」のチャンスがあります。八雲のことをまだ知らなかったけれど、気づいてしまった受験生。考えてみてはいかがですか。いまこそ、自分の意志で扉を開くときですよ。国語か算数か英語かどれか一教科を選び、あとは自己アピール。自分の意志を表明するのです。入学して6年後は2030年。もう自分が日本社会を幸せにしていくのだというグローバルリーダーとしての意志を貫けるダイナミックな学校を見つけたのですから。

|

2025年変化する中学入試(12)駒沢学園女子 卒業時の2030年世界から注目される女子校になっている

★東京の私立中学入試はもう3日目。受験生全体の数が微減かどうかは、受験生にとって今は関心を持つ必要はないですね。現実は倍率が発生しているわけですから、合否がでます。この2日間でうまくいった受験生は本当によかったと思います。一方うまくいかなかったとういう受験生には、気持ちを切り替えて、受験勉強で学んだ「塞翁が馬」という話を想いだして欲しいと思います。この情報化時代です。必ず希望の自分の学校が見つかります。駒沢学園女子もその一つです。

★ちょっと発想を変えて、6年後高校卒業時の2030年に少し想いを馳せてください。SDGsで学んだように、2030年にグローバルゴールは設定されています。達成されるかどうか?前進はするでしょうが、受験をしている今も世界は戦争をやめていません。能登半島地震で被災された方々はまだまだ困窮した生活が続いています。2030年、そういうリスクがすべてなくなっているとは限りません。

★ただ言えることは、そのような困難に人類は今以上に立ち向かっているでしょう。そしてそのときの価値観に東洋の発想が広がっている可能性があります。アップルがMRというリアルとヴァーチャルをミックスした世界を可視化するゴーグルを製造しています。その発想は、半眼で、リアルと内面をつなぐ仏教のZENの発想です。

Img_5951

(半眼で世界と自分の結びつきを内省する空間。あのGAFAMが大切にするマインドフルネス体験の本物があります)

★世界は英語とか中国語、フランス語、スペイン語などの公用語と母語を話しながら「対話」をする世の中になっています。戦争は「対話」によって解決することが必須です。被災された方にとどくのは、やはり一人ひとりとの「対話」によってなのです。ICTやエネルギーエンジニアリングという理数系の学問は学際的学びになり、文理関係なく必要になる時代も2030年です。

★駒沢学園女子には、これらすべてが、いまここにすでにあるのです。知らなかったでしょう。だから今チャンスが目の前にやってきたのです。

Img_5937_20240203085201

(対話が満ち溢れている同校です)

★高校で本格化する英語によるグローバル探究に結びつく英語教育は万全ですが、実は中国語を学ぶプログラムもあるのです。

News_jh_23100_01

(中国語を学んでいる様子。ICTを使い対話したりプレゼンしたりする豊かな学びのシーン。同校のすべての教育活動に共通している風景です)

★まだ駒沢学園女子の情報を知らない方は、ぜひ同校サイトを開いてください。なぜ今まで気づかなかったのか驚愕するでしょう。5日から入試のチャンスはまだあります。希望はメーテルリンクの青い鳥さながらなのです。ふだん気づかないところにちゃんとあるものなのです。fight。

Img_5957

|

2024年2月 2日 (金)

2025年変化する中学入試(11)工学院大学附属中学校 困難に立ち臨む教師も生徒も人的資本豊か 2030年思いもよらぬ世界で活躍する力を手にする学校

★2024年東京の中学入試は、都心と多摩エリアとで格差が大きく開いた入試となる可能性があります。中央線でいうと23区から武蔵境までと武蔵境から八王子までのエリアでは、小学生の受験率が違いすぎます。今までもそうだったのすが、インフレ、円安など経済的な格差は東と西で明白です。また東京の小学生の人口が2024年から下降気味になりますが、23区はむしろ横ばい以上で、西のエリアは、減少率が凄まじいのです。そんな経済混迷と少子化の壁があるにもかかわらず、その困難な壁を乗り越えるチーム教員がいるのが工学院大学附属中学校です。

Photo_20240202171101

(今年の中学入試もやはり厳しいですが、卒業する2030年今思ってもいないような活躍ができるように成長する学校の1つが工学院です。破格のグローバル教育とSTEAM教育の充実は23区でもそうないでしょう。でも、この動画はそのような凄まじさの背景にある自由でクリエイティブで学究的な生徒たちの姿がわかります。そしてその生徒の羽ばたく姿を陽だまりの眼差しで見守りファシリテートしているチーム教師の様子がわかります。)

★同校の質の高い教育は、同校の頻繁に更新されているサイトを見れば伝わると思います。

★まだ工学院のことを知らず、ここにきて学校選択に迷っている受験生がいたら、一度工学院を調べてみてください。驚くこと請け合いです。昨年の出願数はあまりにも多かったので、今年は減っているように見えますが、前々年度と変わらなので、定員確保は大丈夫でしょう。

★ただ、インターコースの希望者は多かったようです。帰国生の資格が以前同様に戻ったので、どこの学校も国内インターも帰国生扱いしていた分、2月1日以降のインターコースや英語資格入試などに出願する国内インター生が増えたからでしょう。

★工学院はIBの学校ではなく、世界では当たり前、日本では例外的なAレベルの卒業資格も取得できるケンブリッジインターナショナルスクール認定校なのです。IBスクールとは違い、工学院のすべての生徒にAレベルを活用する機会があるのです。

★八王子を拠点とした世界標準の学校なのです。

★工学院の先生方は一丸となって、すべての生徒にいろいろな環境を設定し、一人ひとりの才能が花開く環境を創っています。

★そして、その環境が共感的コミュニケーションの時空なのです。

★共感的コミュニケーションの場は、心理的安全が広がているがゆえに、自由な発想の雰囲気が満ちています。すでに多くの生徒が創造的な提案やエンジニアリングを創り出し、多くの賞に輝いています。

★6年間大いに楽しみながら学園生活を仲間と一緒におくり、自分おやりたいことのできる大学のゲートを開くコトができる学校です。6年後の2030年は、今とはかなり違った世界が広がっています。そこで活躍できるかどうかは工学院のような教育の質や環境を持たっところでなければなかなか難しいでしょう。ぜひそのことにいまここで気づいていただけたらと!思います。

★教師も生徒も豊かな人的資本を有しています。ここが今後の教育のレバレッジポイントになるのですから。

 

|

2025年変化する中学入試(10)文大杉並 風に乗る

★本日2月2日(金)東京及び神奈川エリアの一般の中学入試は2日目を迎えました。ほとんどの学校が午前午後入試を設定しています。また即日合格発表も行います。応募者が増えることはよいに決まっているのですが、合格発表までに間に合うかどうか学内に嬉しい悲鳴という緊張が走ります。文化学園大学杉並(以降「文大杉並」)もそうでした。

Photo_20240202163101

★午後入試の方にそっと立ち寄ったのですが、広報部長の西田真志先生が気づいて駆け寄ってくれました。昨日も本日も実数がほぼ昨年の倍で、昨夜は採点が間に合うかどうか緊張しましたが、遅れずに合格発表できましたと。緊張というよりこんなにたくさん受験していただき教職員一同身が引き締まる思いでしたと。

★午後入試は、午前中他の学校を受験してきてギリギリになる受験生もいます。大丈夫ですよ間に合いますからリラックスしてください。一緒にいきましょうと案内をするのに忙しい中、私にまで対応していただき、申し訳なかったのですが、そんなときにも受験生を案内している生徒の思いを語ってくれました。

★自らも中学受験を体験している生徒たちが先輩の姿を見ていて、先輩から引継ぎ、今度は自分たちが後輩に伝えていこうという有志の生徒が、学校説明会の時からずっと受験生のケアをしてくれているのですと。目を細めて語るのです。

★丁寧なを通り越して心のこもった在校生の案内をしている姿を誇らしく思いながら温かく見守る西田先生の眼差し。いつも対話している次世代教育開発部長の染谷先生と同じ眼差しでした。それは松谷校長や青井副校長ともシンクロしています。

★そして感動したのは、それが生徒にも共有されているのです。

★心の風が吹いている文大杉並。松谷校長の重視している人的資本経営。学校の場合は、その温かさがすてきですね。

★一瞬、ダブルディプロマの超カリキュラムのエッセンスを中学にまで浸透させている凄腕教師集団のすさまじさを忘れてしまう程心温まりました。

|

2025年変化する中学入試(09)人的資本という視点から私立学校を観ていく時代

★(05)~(08)までは、それぞれの条件で突出した学校を観てきました。すでに中学受験市場の顔という学校もあるし、ずいぶん前から革新的教育を行って成功し続けている学校もあるし、ようやく市場で支持されるようになってきた学校もあります。いずれもそのようになるには、経営陣の采配の問題もありますが、現場で仲間を巻き込み、肩書きが無くてもリーダーシップの労を苦労とも思わず、困難を乗り越える精神的支柱であったり、創造的なアイデアを仲間の智慧を結集して持続可能にしていった人的資本が存在しているのです。人的資本は、学内外の研修で生まれてもくるですが、実は人的資本を有している教師どうしが響き合って、人的資本を形成していくというのが、経験上パワフルですね。

Photo_20240202112501

★これまで30位まで並べてみましたが、それはそこにそういうリーダーがいることを確認したかったからというのもあります。ですから、30位までのポジショニングにないから、そんな人的資本を形成するリーダーがいないということはないのです。

★むしろ凄いリーダーがいるものです。もちろん私が言うリーダーとは肩書きリーダーではないのです。ナチュラルなリーダーです。ですが、そのような先生に出会ったとき、何かピンと来るのです。私はこれを体験的直観と呼んでいます。

★私にも若造の頃がありました。そんな若造を1990年代から2007年にかけて、開成の当時教頭の橋本先生とか、麻布の氷上前校長とか、東京女学館の当時の渋沢雅英理事長とか、工学院の当時の城戸校長とか、逗子開成の徳間前理事長とか、女子学院の斎藤前前々理事長とか、本当に真正面に受け入れて対話を長時間してくれました。今ではそのような学校は中学受験の顔の学校として揺るぎませんが、そのときは、いろいろな革新的なチャレンジをしていました。開成の橋本先生には、今の開成の中学入試に到るまでの実験的作成方法について多くを学びました。授業についてもそうです。氷上校長には≪私学の系譜≫論を伝授していただきました。城戸校長からは徹底的にライティングとビジョン作り方です。高みに登って俗に還れよと。徳間前理事長には、教育は宇宙の時代だよと。まだ衛星放送時代でしたが、今でいう人工衛星とインターネットのネットワークの話ですね。渋沢理事長からは、渋沢栄一の論語と算盤と道徳経済合一論を学びました。論語に基づいたグローバル教育とICT教育の進化系を創りなさいと。そして面白い話ないかねと時々声をかけられました。斎藤理事長には、プロテスタント教育の革新性とその歴史を学びました。

★そして、2007年に独立して迷いまくっているところを平方邦行先生に聖学院の学校づくり委員会に呼ばれて道を開かれました。2011年に21世紀型教育機構の土台をつくるときにお世話になった多くの先生方には、今でも私の偏屈のビジョンを、モニタリングして頂いています。校長の経験もさせていただき、この歳になって、東京私学教育研究所で仕事をする機会を頂きました。

★私が迷い21世紀型教育機構の基盤を創る過程で、首都圏模試の北さんと山下さんにめちゃくちゃ眩暈がする激動の教育づくりを協働させて頂いたのは、何か決定的でした。

★本当にみなさんには感謝しかないのですが、顧みると、この偏屈で≪私学の系譜≫論者の頑なな発想を受け入れてくれるなんとも不思議なご縁の先生方は、4月になるともっとはっきりするのですが、最初は肩書きはない先生だったのですが、10年の間にナチュラルだけではなく肩書きもついてセルフレスなすてきなリーダーになっているのです。

★私が言いたかったことは、この私のプロフィールは、私立学校の人的資本のクオリティにピンとくる体験的直観を形成していただくことになったのではないかということなのです。私自身は非社交的です。内向的だし、ひきこもりタイプです。

★そんな私が、清水の舞台から飛び降りるように決断して、対話をしようとピンとくる学校の先生方や塾の先生方がいるのです。なぜかみなリーダーになっていくのです。ですからそのリーダーが困難に囲まれたときも見守ることしかできないし、ブログでエールを贈ることしかできないのですが、やがて乗り越えていくのです。そう確信しています。

★残された私の時間(何せとっくに引退の歳超えていますから)は、21世紀型教育の外生的技術進歩の土台はある程度できたので、今度は内生的技術進歩として人的資本を形成している出会ったリーダーたちのその仕掛けを見える化することです。その可視化したシステムが22世紀型教育の外生的技術進歩をまた生みますが、そこまでは見届けることができないでしょう。仮に100歳まで生きたとしても。

★(05)から(08)までのようなデータも活用しますが、私の得意とするところは、おそらく人的資本を形成するリーダーの生き方をお伝えすることだと思います。幸い偏屈な私と心からコミュニケーションをとっていただける先生方は少ないので、語る範囲が絞られます。そんなわけで、いわゆる客観的な受験情報誌のような記事ではなく、あくまで独断と偏見の目線で学校のリーダーに着目した私学ブログを書き続けようと思います。お付き合いいただいている方々には引き続きよろしくお願いいたします。

★困難な時代に教育のクオリティのアップデートにチームで立ち臨むリーダーの先生方を紹介していきますね!

|

2025年変化する中学入試(08)(05)~(07)のリストで、2つ以上重なっている学校

★(05)から前回の(07)までのそれぞれのリストをみて、2つ以上重なっている入試を五十音で書き出してみました。共栄、京華女子、佼成学園、サレジアン国際、桐朋女子、中村、文大杉並、文京学院大女子、三田国際などは、本ブログでもその魅力について触れている学校です。今後は、ここに挙がっている学校全てをリサーチしてみようと思います。東星のようにカトリック精神をまっすぐ教育に展開する学校に光があり続けるのは実によいことですし。

共栄学園 第1回 
国本女子 第1回 
京華女子 第1回/適性検査型 
京華女子 第1回午後/2科・4科型 
佼成学園 第1回一般/グローバル 
国士舘 第1回 
サレジアン国際 第1回 
サレジアン国際 第2回 
十文字 思考作文 
帝京八王子 第1回B 
貞静学園 第1回午後 
東京成徳大学 第1回特待選抜 
東星学園 国語1教科 
東星学園 第1回一般 
桐朋女子 Creative English 
中村 一般/2月1日 
八王子実践 適性検査/第2回 
文化学園大学杉並 第2回/英語特別① 
文京学院大学女子 探究プレ/英語インタラ 
三田国際学園 第1回(IC) 
三輪田学園 第1回午前/英検利用 
明星 特別選抜2回 
山脇学園 英語AL/A 
(日能研倍率速報2024年2月1日現在)

|

2025年変化する中学入試(07)東京私立中学2月1日出願倍率前年対比多い順30位

★今度は倍率の前年対比高い順で並べてみます。こういう並べ方はあまりしませんが、各入試の定員も異なります。また定員変更もあります。倍率の前年対比で見てみると、<中学受験市場>ではみえてこなかった魅力度みたいなものが見えてくる可能性があります。新タイプ入試が多くなっていますね。学校の顔である教育の質を表現する創意工夫が伝わってきますね。

 1 共学 宝仙理数インター 第1回プレゼン型 
2 共学 貞静学園 第1回午後 
3 共学 新渡戸文化 2/1午後 
4 女子 国本女子 第1回 
5 女子 三輪田学園 第1回午前/英検利用 
6 共学 新渡戸文化 2/1午前 
7 共学 東星学園 国語1教科 
8 共学 八王子実践 適性検査/第2回 
9 女子 東京純心女子 第2回/私立型 
10 女子 十文字 思考作文 
11 共学 東星学園 第1回一般 
12 男子 明法 第1回午前 
13 女子 山脇学園 英語AL/A 
14 共学 三田国際学園 第1回(IC) 
15 共学 サレジアン国際 第2回 
16 女子 文京学院大学女子 探究プレ/英語インタラ 
17 共学 明星 特別選抜2回 
18 共学 東京成徳大学 第1回特待選抜 
19 女子 桐朋女子 Creative English 
20 女子 京華女子 第1回午後/2科・4科型 
21 男子 佼成学園 第1回一般/グローバル 
22 女子 佼成学園女子 2/1午前 
23 共学 サレジアン国際 第1回 
24 共学 帝京八王子 第1回B 
25 共学 文化学園大学杉並 第2回/英語特別① 
26 共学 安田学園 第2回 
27 女子 中村 一般/2月1日 
28 共学 国士舘 第1回 
29 女子 京華女子 第1回/適性検査型 
30 共学 共栄学園 第1回
(日能研倍率速報2024年2月1日現在)

|

2025年変化する中学入試(06)東京私立中学2月1日出願数多い順30位

★前回同様の趣旨で30位まで並べてみます。今回は出願数多い順です。450名から1259名まで多くの受験生が集まる入試です。伝統的に<中学受験市場>の顔と言われれてきた学校が多くなります。そのような中、安田学園、国学院久我山、都市大等々力、広尾学園、東京電機大、かえつ有明、聖徳学園などは、かつて革新的な教育を行い新興の学校と呼ばれていたかもしれませんが、今ではすっかり<中学受験市場>の顔です。

1 男子 開成  
2 男子 東京都市大学付属 第2回 
3 共学 東京農業大学第一 第1回 
4 男子 早稲田 第1回 
5 男子 麻布  
6 男子 獨協 第2回 
7 女子 山脇学園 国・算1科 
8 共学 安田学園 第1回 
9 女子 女子学院  
10 男子 巣鴨 算数選抜 
11 共学 国学院大学久我山 ST第1回 
12 男子 駒場東邦  
13 共学 都市大等々力 第1回S特 
14 女子 吉祥女子 第1回 
15 男子 芝 1回 
16 共学 広尾学園 第2回(本科) 
17 女子 桜蔭  
18 共学 早稲田実業学校  
19 男子 武蔵  
20 男子 海城 一般① 
21 共学 東京電機大学 第2回 
22 女子 三輪田学園 第1回午後 
23 女子 鴎友学園女子 第1回 
24 男子 本郷 第1回 
25 共学 中央大学附属 第1回 
26 女子 恵泉女学園 第1回/午後2科 
27 共学 かえつ有明 2/1午後特待 
28 共学 明治大学付八王子 A方式第1回 
29 共学 芝浦工業大学附属 第1回 
30 共学 聖徳学園 2/1適性検査型 
(日能研倍率速報2024年2月1日現在) 

|

2025年変化する中学入試(05)東京私立中学2月1日出願数前年対比順30位

★東京私立中学の2月1日の入試は330ほどあります。そのほぼ10%の30位までをいくつかの視点(日能研倍率速報をもとにしています)で算出してみます。まず出願数前年対比多い順です。前年1名の出願で、今年2名だと200%になりますが、そのような状況も含めて並べました。学校によっては定員50名というところもあるし、300名というところもあります。生徒1人ひとりが選んだ学校です。何か必ず魅力がありますから、そのまま見てみます。いずれも、グローバル教育、ICT教育、探究教育など特色あるそして子どもの多様な才能を見出す創意工夫している学校ですね。

1 共学 明星 特別選抜2回 
2 共学 三田国際学園 第1回(IC) 
3 共学 八王子実践 適性検査/第2回 
4 共学 文化学園大学杉並 第2回/英語特別① 
5 女子 三輪田学園 第1回午前/英検利用 
6 共学 東星学園 国語1教科 
7 共学 武蔵野東 AO 
8 女子 文京学院大学女子 探究プレ/英語インタラ 
9 女子 十文字 思考作文 
10 共学 貞静学園 第1回午後 
11 女子 国本女子 第1回 
12 女子 山脇学園 英語AL/A 
13 共学 サレジアン国際 第1回 
14 共学 帝京八王子 第1回B 
15 共学 東京成徳大学 第1回特待選抜 
16 女子 桐朋女子 Creative English 
17 女子 京華女子 第1回午後/2科・4科型 
18 男子 佼成学園 第1回一般/グローバル 
19 共学 サレジアン国際 第2回 
20 共学 共栄学園 第1回 
21 女子 中村 一般/2月1日 
22 共学 国士舘 第1回 
23 女子 京華女子 第1回/適性検査型 
24 共学 順天 第1回B 
25 共学 東星学園 第1回一般 
26 女子 中村 特待生/2月1日 
27 共学 城西大学附属城西 第1回午前 
28 女子 日本体育大学桜華 第1回 
29 男子 佼成学園 第1回特別奨学生 
30 女子 富士見丘 WILL 
(日能研倍率速報2024年2月1日現在) 

|

2025年変化する中学入試(04)地政学リスク・気候変動リスク・ハラスメントリスクの困難な時代に東京の私立学校は質的競争/共創をする 2月1日の受験者数は前年対比98.1%。

★2024年は、昨年に引き続き、地政学リスクや気候変動など自然災害のリスク、ハラスメントのリスクやクライシスに直面する幕開けでした。このリスクは、自然と社会と政治の循環にエラーをいくつも造ります。それゆえ、インフレ急上昇、急激な円安、そのため少子化などシステム思考的なループを生み出します。それらが中学入試市場でダイレクトに衝撃を与える現象要因は、経済的混迷と少子化の2要因であることは言うまでもありません。

10man

★そのため、東京の私立学校は、協会の会員になり、また父母の会と一丸となって、市場を安定させるために国や自治体に働きかけ、授業料負担軽減のルールを交渉しています。2024年からは、私立中学校の保護者は年額10万円を支援される制度が変わり、所得制限が撤廃されます。これは私立高校においても同じです。

★こうして市場<共創>の足場を創る努力をしつつ、建学の精神に基づいて独自の先見性・先進性のある中学入試市場を形成しています。それゆえ、私学が主導する<中学市場>は、市場の公平性を持続可能にする一方で、独自の教育の質の競争をしています。

★その質は、結果的に大学進学実績を出します。私立中高一貫だけでみると、90%以上は大学進学という結果になるでしょう。それゆえ、偏差値と大学進学実績のデータで量的競争を形づくる<中学受験市場>とは見分けがつかなくなるときがあります。

★また、<中学受験市場>を創出する一翼を担う首都圏模試センターのように新しい学校選択や学力の指標を創って、<中学入試市場>を応援するセクターもあります。

★こうして、<中学入試市場>は多様な環境の中、多様な団体と切磋琢磨しながら、困難の時代をのり超えるべく、良質の教育を生み出し、質的な競争/共創をしています。

★その結果、東京の2月1日の受験者総数は、前年対比98.1%(日能研倍率速報2月1日現在から)にとどめています。これは、公立中高一貫校の受検者数の減少率より微減です。おそらく、私立学校と公立学校の併願者の減少分に相当するでしょう。

★<中学入試市場>と<中学受験市場>の子どもの未来を創る弁証法は、なかなか均衡を持続可能にしているでしょう。

★出願数の倍率などは見た目には減ったとしても、定員はきちんと確保する私立学校がほとんどだからです。

★しかし、くどいようですが、困難が教育の質をつくり、人気という好条件が教育の質をやはりつくるのです。それぞれの私学は困難な時代もあるし、人気があるときもあります。その弁証法で、それぞれの私学が独自の教育の質を向上させていくのです。

★おそらく2030年には、IBやAレベルに相当する日本流儀のグローバル標準の西洋思想と東洋思想の合流したすばらしい教育が東京から生まれるでしょう。

★東京は世界でも質量ともに評価の高い都市です。そして一つの都市に私立学校が中高合わせると400以上集結している都市は世界にはないのです。しかも学費は世界の私立学校の10分の1から5分の1です。

★そうそう少子化の分はどうするのか?だからグローバル教育に力を入れているのです。地政学的リスクを考えれば質が高く学費が相対的に安い日本の私学に留学させたい外国人がどんどん増えているのですから。そして、この戦略が、子どもたちの多角的な思考力と社会貢献的なアクションを生み出すアドーダンス環境になるのです。

|

2025年変化する中学入試(03)麻布、開成、海城の入試問題 不易流行としての思考力

★2月1日毎年、私は、東京の私立中学入試問題の中で、いまここの自然と社会と精神の循環を断絶させている問題に受験生をぶつけ、春から始まる6年間の学園生活とその後の未来を問いかける私立学校らしい問題を楽しみにしています。麻布の国語、算数、理科、社会の入試問題と開成の国語の説明的文章、海城の社会の問題、聖学院の思考力入試がそれです。聖学院の思考力入試はワークショップ型なのでこの段階ではまだわかりませんが、それ以外は、すでに多くの塾が解答速報を出していて、情報を共有できます。ざっとみたところ、自然と社会と精神の循環の断絶を行っている課題を問い、解決するにはどうするのか問う不易流行としての思考力を活用する問題が出題されていました。私立学校ならではの面目躍如の問題ですね。

31e2sgkpiil

★麻布の理科では「バイオロギング」という動物に環境を観察してログをとる装置を付けて、人間が経験できない環境と生物の生態の関係をリサーチする斬新な問題が出題されていました。生物の体重、体温、海面と深海の環境の違いの相関を見ながら、海洋環境をリサーチしていく視点をデータと結びつけながら考えていく問題です。記述問題はいつものようにシャープですが、選択肢の作り方が、ファクトとフェイクをメタ認知する仕掛けがあって、こんなところにもメタ認知とかクリティカルシンキングの視点を埋め込んでいるのかとワビサビを感じました。

★開成の説明的文章は心理学者佐々木正人さん(多摩美術大学教授)の書から出題。佐々木さんは身体機能を環境との関係で研究していて、「アフォーダンス」という認知心理学関係の書籍をいっぱい書いています。今回の書(写真の本)もそうです。

★麻布の「バイオロギング」も開成の「アフォーダンス」も自然や社会、身体という環境と生きる身体性と精神、社会性の相互関係の新しい気づきを知る仕掛けです。

★問いというのは、既成の知識を確認したり活用したりするだけではなく、新たな気づきや発見を見出す、まさにアフォーダンス機能を持っていますが、やはり興味があるこれらの学校の問題はそういう仕掛けが工夫されています。

★麻布の国語は、いつもながら子供のというか人間の自己変容物語です。自己内省的な思考を大事にしているのでしょう。この自己内省的な不易流行としての思考こそ、自然と社会と精神の循環を持続可能にするまるで哲学シンキングです。

★麻布の算数のなんのへんてつもない、1から順番に自然数を9999まで順番に並べる問題。ところが、そこに新たな気づきを発見する数の性質に気づく問い設定はさすがです。

★それにしても、麻布と海城の社会は、受験生に教育の問題性について論述させるクリティカルシンキングを発動させる問いでした。相変わらず凄まじいですね。麻布のは近代の≪官学の系譜≫の問題点、つまりは近代化の光と影の「影」の部分を抉り出す問いです。

★海城のは、共通テストの記述の採点の信頼性・妥当性を問うたり、大学入試の従来型入試と新型入試のそれぞれのメリット・デメリットを分析する問題。もちろん資料を分析してファクト分析がベースです。

★近代以降の教育という環境が実は自然と社会と精神の循環を限定的にしてきたというアフォーダンス的見出し方をするクリティカルシンキングを中学入試を受験する小学6年生に問うのです。エッ?!小学生にと思うかもしれません。

★ところが、地球市民性は、「こども基本法」の土台です。2023年4月に施行された法律です。不易流行の問いとはまさにこういうことですね。

★人気の聖学院の思考力入試はどうだったのでしょう。いずれリサーチします。今から楽しみです。

|

2024年2月 1日 (木)

2025年変化する中学入試(02)佼成学園 出願総数爆増 2030年が見えている教育

★佼成学園の中学入試における出願総数は、前年対比182.4%(首都圏模試センター出願倍率速報2024年1月31日現在)で爆増。その理由は、2年目のグローバルコースの動きが認知された、ICUとの高大連携、大学進学実績の向上、教師の面倒見の良さ・・・等々いろいろ挙げられます。しかしながら、このような外生的技術進歩のシステムは、今や多くの学校でもチャレンジされています。これだけではなく、やはり、それらのシステムのクオリティをあげ、クリエイティビティを生み出す内生的技術進歩が豊かになっているからでしょう。

9784910675053

★この内生的技術進歩というのは、もちろん自己内省的な生徒の内面的成長を促すのですが、それが生徒一人一人の努力によるだけではなく、きちんとシステム化されているところにあります。

★たとえば、上記の本に執筆している同校の探究学習推進委員長上野裕之先生にお会いしたことがあるのですが、実に学究的・学際的な頭脳の持ち主であると同時に、生徒の好奇心や主体性を生み出す現場の環境を形成する力を持っている先生です。

★とても大事なことは教師として優秀であると同時に、その優秀さが同僚や生徒に持続可能に共有されるシステムやプログラムを仕掛けるプロデュース力があるということなのです。

★上野先生だけではなく、そのような先生が佼成学園にはたくさんいて、人的資本教育経営がなされているということでしょう。

★2030年はまたまた学習指導要領が改訂されているタイミングですが、そこでは、外生的技術進歩はまた変わりますが、そのクオリティを上げる内生的技術進歩の人間力の内面的なメカニズムこそがレバレッジポイントです。

★2030年になってから、その内面的メカニズムに着手するのでは遅いのです。2030年の未来にある内生的技術進歩のメカニズムは、いますでにここにあることが必要です。

★それが佼成学園にはあるのだと思います。上野先生にお会いした時に、私の体験的直観センサーが作動しました。

★主観的と言われるかもしれませんが、大事なことはピンとくるかなのです。

|

2025年変化する中学入試(01)2月1日富士見丘 過去最高の人気!2030年に向けて新しい学びの価値創造へ

★本日2月1日から東京・神奈川エリアの私立中学の一般入試がスタート。今朝富士見丘に立ち寄りました。パンデミック以降、塾の応援行列はなくなっていますが、吉田晋理事長・校長(日本私立中学高等学校協会会長)、吉田成利理事長補佐・校長補佐(明海大学准教授)をはじめ、多くの先生方がウェルカム(忠恕)の心で、受験生を迎え入れていました。

★「中学受験」の風物詩である塾の応援から私学の先生方が柔らかく声を掛け心理的安全を伝える「中学入試」ウェルカム・マインドに変化していたのです。富士見丘は総出願数過去最高です。もちろん実人数も過去最高です。保護者の学校選びの価値意識が大きく変わる気配を体験的直観で感じ入りました。

Photo_20240201101201

★首都圏模試センター出願倍率速報(2024年1月31日現在)によると、総出願数の前年対比124.2%、前々年対比162.1%の爆増です。実人数が過去最高になる勢いが伝わってきますね。

★4年くらい前までは、帰国生に人気の学校でした。吉田晋先生も吉田成利先生も英語が堪能ですから、海外からの客人も多く、模擬国連部の活躍も有名だし、グローバル探究で在校生が海外で活躍している姿を、帰国生は、外国での学校の生活体験と重ね合わせることができます。

★しかもインターコースという特別なコースがないにもかかわらず、高2の段階でほぼ全員が英検2級以上で、高3卒業時には準一級、一級取得者がたくさん出るのです。

★富士見丘という学園は丸ごとグローバル市民に満ちた場所なのです。それでいて、富士見丘は日本語のサポートも先生方が丁寧にサポートします。一般に帰国生は日本語のサポートがないことに不安になるものですが、富士見丘ではそれはないのです。生徒の中には、日本語を学ぶタイムマネジメントアプリを制作するエンジニアなみのクリエイティブクラスもいるほどます。帰国生にとって、ストレスのない学校なのです。

★しかも、IBなど導入していないのに、IBを導入している学校以上に世界大学ランキングの高い海外大学に多数合格しているのです。はじめは、帰国生が海外ネットワークだけで富士見丘の評判がとどろいていたのです。少人数で快適な学園はそっと帰国生圏内にとどめていたかったのです。

★日本では、まだ海外大学に行くには、IBシステムがなければ難しいと思われているし、開成や海城などのような偏差値の高いところでなければ受験すらできないというアンコンシャスバイアスがあります。

★しかし、世界ではIBよりAレベルの方が普及しているし、富士見丘のようなC1英語、PBL、STEAM教育と海外では学べない東洋的な(儒教的あるいは禅的)な倫理観を育てる学校システムを海外大学は高く評価しているのです。GAFAM自体がZENに影響を受けているのですから。

★それに、海外大学では偏差値は無意味な評価尺度です。それに、ようやく日本でもハラスメントという人権無視の環境に批判の目が行くようになりましたが、1つの大学が結果的にせよ数校の高校だけに偏ってたくさん合格させてしまうシステムは、グローバルシチズンシップの観点からは実は問題なのです。2030年ごろには、このことは問題視されることになるでしょう。学歴社会というシステム自体変わる必要があるという時代はすでにやってきていますが、それを制度上見直そうとなるわけですね。

★そして、そのことをいよいよ富士身丘が示す時がきました。それだけ英語力や外国語教養が身につく富士見丘です。国内の大学にも目覚ましい実績を出すことになりました。さすがに、国内の受験市場はそれを無視できなくなってきました。

★中学受験情報誌でも、注目され続けたここ3年間です。今年の中学受験生の6年後は2030年です。またまた新学習指導要領のタイミングにもあたります。グローバルと生成AIベースのDHハイスクールの路線は圧倒的なトレンドになるでしょう。大学入試も海外大学のようなシステムをどんどん取り入れるでしょう。総合型選抜はその序盤戦です。

★地政学的リスクと気候変動リスクとハラスメントリスクを解消する社会課題を思考する本格的な「探究」カリキュラムになるでしょう。

★偏差値のようなスコア主義から、才能を見出し豊かにするコンピテンシーベールの評価システムになるでしょう。個別最適かつ協働的学びはその伏線にすぎません。生成AIは、マイウィズダムAI=マイWAIというマイウェイパートナーと共に生徒は学んでいるでしょう。

★これからの6年の間に加速度的に変貌する日本社会。世界は日本と共に新たなコミュニティを再編成するでしょう。中学受験バッシングをする教育ジャーナリストもでてきました。それは、この2030年に大きく変わることをなんとなく予感しているからでしょう。

実は、この未来予想は、富士見丘の高2の在校生が小泉信三コンクール次席を獲得して論じています。おそるべし富士見丘。彼女によると2030年以降の未来社会は、いまここに充実した高校生活としてすでにあるのだというのです。そして、それはポストモダン社会に対峙する新しい価値創造の場なのだと。

★今朝、富士見丘の正門で、受験生を迎える先生方の中に、同校のグローバル教育を牽引してきた佐藤副教頭、田中英語科主任をはじめ若い先生方にお会いしましたが、さりげなくPh.D.を取得していると吉田成利先生にささやかれた数学科の先生にも会いました。さらに成利先生からは、その数学科の先生をはじめミュージシャンの教師が多くなったと聞き及びました。

★この意味するところは、新しい本格的なSTEAM教育を展開しているんですよというサインなのです。言語と数学と音楽はリベラルアーツの重要な学びでもありますし。どうやら2030年以降の新しい教育は富士見丘からとなりそうですね。

|

« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »