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2024年1月 7日 (日)

2024年中学入試(35)女子美の人気の理由 新しいデザインの社会実装への道が開かれている

★昨日世田谷美術館で開催されている「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 2023.11.18 - 01.28」を訪れました。土曜日であり、まだ年始休みのところも多かったということもあったのでしょう、多くの鑑賞者が集っていました。ただ、若い人が多く、作品を見ながら議論しているその姿に、いわゆる美術作品の展覧会とは雰囲気が違っていました。

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★作品の説明に倉俣さんの言葉もたくさん展示されていて、まるでコンセプチュアルアートの展示のようだなあと作品と文章を対照させながら観て回ったのですが、作品だけではなく、文章の展示の前も黒山の人だかりでした。こんなに真剣に多く鑑賞者が集まってきていて、みな考えたり、想いを馳せたり。

★なんとも不思議な感覚で、読みながら観ながら進んでいくにつれて、倉俣さんが、デザインという表現方法でアートの力を映し出すという哲学があるんんだと気づきました。

★実際、倉俣さん自身、アートや映画、哲学、音楽、建築など多くの分野を学び、その影響を受けていて、アートとデザインのどちらかではなく、デザインよりの表現をしていると語っています。

★バウハウスでも1年間学んだけれど、メンフィスのグループに参加したのが大きな影響だと。なるほど。バウハウスは機能的なアートやデザインだけれど、メンフィスは機能性を樹脂していないデザインと言われています。倉俣さん自身、商品を創っているのではなく、自分の好きなものを創ってそれが結果的に商品になるという感じなのだと。

★アートとデザインの違いをはっきりさせることが、昨今の大学入試の小論文では求められてきたけれど、そこはボーダレスだし、欲望の資本主義では区別されていたけれど、倫理資本主義では倉俣さんの言葉を使うと浮遊感という感じなのだろう。どこか曖昧というか、グラデーションというか。。。

★どうやら、デザインとアートの関係は、枠組みを砕いていくという根本的なところでは共通していて、その柔軟さこそ変わらないのだということなのだろう。倉俣さん自身、様式を変えるとか変えないとかではなくて、無意識層から自由の壁になっているものを見出してそれを打ち砕いていくということではデザインもアートも不変的。その表現方法や市場の文脈が違うということなのだろう。

★そんなことを考えながら観ていると、ふと女子美大付属中高が人気があるのはそういうわけなのだと。たしかに、ICT環境は充実しているし、ハイレベルな英語力を身につける環境もあります。人気の要因でしょうが、なんといっても、このような新しい流れのデザインの社会実装の道が開かれているということなのだと。

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★女子美付属中高から女子美大学にほとんどが進学するのですが、その学科を見ると、アート系の学科が27%で、デザイン系が73%です。女子美付属中高を受験する場合、そこまで考えているということでしょう。もちろん漠然としてでしょうが、小6の受験生は、すでになんらかのアート活動をしています。最近のアート関連の習い事教室も、アート思考やデザイン思考を導入しています。芸大、多摩美、女子美など美大出身者が専門的に子供のためのアート教室を開いていて、かなり専門的なプログラムもデザインされているようになっています。

★女子美付属中の入試は、一般入試と変わらないので、そこだけ見ていると、一般にはこの辺の事情はよくわからないかもしれません。前回、成城大学の経営学の境新一教授のアート・プロデュース論を紹介しましたが、どうやらアートやデザインは、AI時代にあって、極めて重要なコンセプチュアルなテクノロジースキルとして注目を集めそうです。

★女子美中高の人気は、その未来を見通した受験生・保護者が選んでいる可能性があります。もちろん、今のところ倉俣さんではないですが、無意識なのかもしれませんが。

 

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